音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年12月08日
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 ベスト盤やコンピレーション(編集)盤というものは、一見、手を出しやすそうに思えるが実に危険を伴うものだと思う。例えば、ローリング・ストーンズはベスト盤から入るべきではないし( 『レット・イット・ブリード』 の項を参照)、ブルース・スプリングスティーンのベスト盤なども最初に聴くべきではない。早い話、ストーンズにしても、スプリングスティーンにしても、“濃すぎる”のである。アルバムでは押したり引いたり、緩急がついているはずのものが、ひたすら押しまくられることになるからだ。俗な喩えで言うならば、焼肉と餃子と唐揚に寿司が組み合わさって出てきて、次にラーメンを勧められたかと思えば、その後にまたステーキとカレーライスが待っているような感じである。それぞれ食べれば美味でも、これだけ一緒に出されれば食傷という結果に陥るのは当然だ。

 無論、編集方針がよかったり、たまたまアーティストの残した楽曲がベスト盤にも向いていたなどの理由から、例外となることが、時にはあり得る(例としては、 クリーム の項を参照)。しかし、一般論として言えば、ベスト盤というものは、そうした“何でもあり”もしくは“凝縮して詰め込む”という、無神経かつ無謀な編集姿勢のせいで聴きづらいものになってしまうのが通例である。

 ところが、上の食べ物の喩えを再び用いるならば、“寿司バイキング”だったり、“シーフード・バイキング”だったりするとどうであろうか。つまり、何でもかんでも詰め込むのではなく、テーマを絞っての編集盤ということである。それは場合によっては意外といいのかもしれない。そう思わせてくれるコンピレーション・アルバムの一つが、エリック・クラプトン(Eric Clapton)の『BLUES』である。

 リリースは1999年と比較的新しいものの、音源自体は古い。1970~80年のアルバムや同時期の未発表音源を集めたもので、表題のとおり、ブルース系の曲や演奏を集めたものである。1枚目はスタジオ録音、2枚目はライブ音源を編んだもので合計25曲というボリューム。ただし未発表音源はその4分の1ほどで、大半は発表済みの音源である。なので、よっぽど熱心なファン以外は、わざわざ未発表テイクだけのためだけに2枚組のこのボリュームのものを聴こうとは思わないかもしれない(ただし、発売後初期には未発表のジャム・トラック4曲がボーナス盤として追加されたものもあったので、コアなファンならこういうのを聴きたくなる)。

 そうは言っても、この盤については、結構お勧めなのである。70年代の人生紆余曲折の只中のクラプトンにとって、新たなものをひたすら想像するというよりも、既存のブルースをどう吸収して自分の音楽にしていくかという課題の軌跡をまとめた盤と言えなくもない。平たく言ってしまえば、テーマの絞られた編集盤なわけだ。

 ちなみに、音源はリリース時点で既発表のものと未発表音源だったものが入り混じっている。未発表トラックは、1枚目(スタジオ録音)では、1.「ビフォア・ユー・アキューズ・ミー(テイク・ア・ルック・アット・ユアセルフ)」(アルバム『バックレス』の未発表アコースティック・ヴァージョン)、7.「アルバータ」(『スローハンド』の未発表トラック)、10.「ミート・ミー(ダウン・アット・ザ・ボトム)」(『461オーシャン・ブールヴァード』の未発表テイク)、15.「ビフォア・ユー・アキューズ・ミー(テイク・ア・ルック・アット・ユアセルフ)」(『バックレス』からの未発表エレクトリック・ヴァージョン)。2枚目(ライブ盤)では、10.「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」が初出の音源。

 細かな注目点を挙げるといろいろあるのだけれど、ここでは以前の記事( 『ミー&Mr.ジョンソン』 )との絡みで一点だけ触れておきたい。Disc 2にはロバート・ジョンソンの曲が2つ収められている。6.「カインド・ハーティッド・ウーマン」と9.「クロスローズ」である。純粋に“ブルース”という意味では、オリジナルにかなわないのだけれども、これらの曲の解釈としては、クラプトンは優れたセンスを示していた。

 全体としては、決して未発表のテイクが多いわけではないので、これ目当てはよほど熱心なファンだけだろう。けれども、ブルース系のクラプトンを楽しみたい人には、十分お勧めできる編集盤だと思う。まあ、“バイキング”なだけに、通して聴いた後は“満腹”になるのはやっぱり確かなのだけれど(笑)。


追記: 本作については、1枚ものと2枚ものの2種が存在しているようです。1枚ものはここで紹介したうちのDisc 1 のみ。聴くには長いけど、Disc 2も合わせてこそ、この“バイキング料理”は生きてくるというふうに感じますので、2枚ものの方がお勧めです。



[収録曲]

~Disc 1 (Studio Blues)~
1. Before You Accuse Me (Take a Look at Yourself)
2. Mean Old World
3. Ain't That Lovin' You
4. The Sky Is Crying
5. Cryin’
6. Have You Ever Loved a Woman
7. Alberta
8. Early in the Morning
9. Give Me Strength
10. Meet Me (Down at the Bottom)
11. County Jail Blues
12. Floating Bridge
13. Blow Wind Blow
14. To Make Somebody Happy
15. Before You Accuse Me (Take a Look at Yourself)

~Disc 2 (Live Blues)~
1. Stormy Monday
2. Worried Life Blues
3. Early in the Morning
4. Have You Ever Loved a Woman
5. Wonderful Tonight
6. Kind Hearted Woman
7. Double Trouble
8. Driftin' Blues
9. Crossroads
10. Further on up the Road

1999年リリース。






Eric Clapton エリッククラプトン / Blues 輸入盤 【CD】





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