音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2012年08月29日
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『ヴィレッジ・グリーン』に続くコンセプト・アルバム


 ザ・キンクス(The Kinks)は、1964年から1996年まで活動したイギリスのロック・バンド。ビートルズとローリング・ストーンズばかりが注目され、日本ではザ・フー(The Who)と並んで過小評価を受けているが、イギリス4大バンドの一つである。このキンクスの過小評価の原因は、前にも書いたように(参考過去記事 (1)  および (2)  )、「ユー・リアリー・ガット・ミー」がすべてみたいに捉えられる風潮にあると筆者は思っている。しかし、これでは、ビートルズの中・後期をまるっきり無視して「ラヴ・ミードゥー」だけでビートルズの本質を評価するのと変わらない。

 キンクスの本領の一つは1968年の 『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』 以降、立て続けにというか、執拗なまでに制作されたコンセプト・アルバム群にある。当初、『ヴィレッジ・グリーン~』は世界中でわずか10万枚ほど(米国内では2万5千枚以下とされる)しか売れなかった上、一部では“想像力に欠け不十分にアレンジされた、ビートルズの貧しいコピー”と言うレッテルまで貼られた(現在ではキンクスの代表作として当時よりもはるかに評価されている)。そんな状況にもかかわらず、彼らはコンセプト・アルバム第二弾を翌1969年に発表する。それが本作『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡(Arthur or the Decline and Fall of the British Empire)』だった。

 前作同様、本作も問題含みの作品だった。グラナダTVのドラマのサントラとして企画されながら、TV番組の方は実現せず、アルバムだけがリリースされた。シングル発売された「ヴィクトリア」も大きな話題とはならなかった。まったくチャートアクションがなかった前作のシングル「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ」よりはましだった、といったところだろうか。

 内容的には、アーサー・モーガンなる労働者階級の人物が主人公で、二つの世界大戦を経た大英帝国に住むこの人物と家族の苦境を題材としたもの。アルバム半ばに6.「オーストラリア」という曲があるが、これはアーサーが息子のためにオーストラリア移住を決断するという筋書きのため。

 サウンドの面では、前作に比べて正統的ロック・サウンドへの回帰が見られる。1. 「ヴィクトリア」 や5.「ブレインウォッシュド」、12.「アーサー」がその典型である。とはいえ、これだけが本盤のいいところという意味ではない。ギターが効果的に使われているレイ・デイヴィス節全開の2.「イエス・サー・ノー・サー」や6.「オーストラリア」、さらには、郷愁ただよう3.「サム・マザーズ・サン」(特にこの曲は個人的にイチオシ)や7.「シャングリ・ラ」および10.「若くて純真な時代」が組み合わされて聴きどころになっている。こうやって毛色の違う楽曲をうまく組み合わせて1本の起伏あるアルバムに仕立てているところが、コンセプト・アルバム群の時代のキンクスの大きな持ち味だったということが実感できる。




[収録曲]

1. Victoria
2. Yes Sir, No Sir
3. Some Mother's Son
4. Drivin'
5. Brainwashed
6. Australia
7. Shangri-La
8. Mr. Churchill Says
9. She Bought A Hat Like Princess Marina
10. Young And Innocent Days
11. Nothing To Say
12. Arthur

1969年リリース。




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Last updated  2016年12月29日 21時26分48秒
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