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ネオコンを後ろ盾とするウクライナの暫定政権の首相に選ばれたアルセニー・ヤツェニュクはウクライナ国立銀行の総裁や外相を経験したことのある人物で、多くの人が予想していたことだろう。ウクライナの富を狙う「国境なき巨大資本」にとって必要な人材であり、ジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話で話した際、ビクトリア・ヌランド米国務次官補も高く評価していた。 興味深いのはネオ・ナチの「スボボダ」から3名が入閣していること。まずオレクサンドル・シクが副首相、アンドリー・モクニクがエコロジー相、オレクサンドル・ミルニーが農業相。それ以上に大きな意味を持ちそうな人事が司法長官。やはりスボボダのオレー・マクニスキーが就任したのだ。ネオ・ナチが検察を動かす意味は重い。 こうなると、アレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)やドミトリー・ヤロシュのグループによる犯罪的行為が公正に取り締まられるとは思えず、ビクトル・ヤヌコビッチ派狩りが本格化するのだろう。1973年9月11日にチリであった軍事クーデターを思い出す。このクーデターはヘンリー・キッシンジャーに操られたオーグスト・ピノチェトなる軍人を中心とする部隊が実行、新自由主義経済を導入する下地を作った。その際、障害になりそうな多くの人びとを逮捕、拷問、殺害している。このチリだけでなく、ウォール街を後ろ盾とするラテン・アメリカの独裁体制下では「死の部隊」が編成された。ウクライナでは「平和的な市民」による恐怖政治が始まるかもしれない。
2014.02.28
ウクライナのクーデターを象徴する人物のひとり、アレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)が検察官事務所に押し入り、スタッフを罵倒し、暴力を振るう場面がインターネット上を流れている。司法システムは機能していない。 もっとも、クーデター派は憲法を無視してビクトル・ヤヌコビッチ大統領を倒し、「西側」にとって都合の良い体制を築こうとしてるわけで、当然のことかもしれない。 本ブログでは何度も書いているように、ムージチコは1994年にチェチェンでロシア軍との戦闘に参加し、その残虐さで有名になった人物。1995年にウクライナへ戻ると犯罪の世界へ足を踏み入れたという。 クーデターの黒幕は「西側」の巨大資本やウクライナの富豪。その手先として傀儡政権を作るであろう人びとが「祖国」に所属するアルセニー・ヤツェニュク、「UDAR」のビタリ・クリチコ、そして「スボボダ」のオレフ・チャフニボク。「祖国」の看板になっているユリア・ティモシェンコは今のところ表舞台へは出てきそうもない。 この体制を作るため、キエフを混乱させ、無政府状態にしたわけだが、その最前線で活動していたのがムージチコやドミトリー・ヤロシュの率いるファシスト勢力だった。彼らがいなければ、ビクトル・ヤヌコビッチから主導権を奪うことは難しかっただろう。 忘れてならないことは、前回の大統領選挙でヤヌコビッチは僅差ながら勝ったということ。それだけ支持者がいるわけで、今回のような反民主主義的なやり方に反発を持つ人はクリミア以外にも少なくないはず。そうした反発を抑え込むためにはムージチコやヤロシュの暴力が作り出す恐怖が必要。当面、恐怖で統治するしかない。その現実をムージチコの検察事務所襲撃は示している。 「ロシア憎し」からファシズムの台頭を直視できず、「国境なき巨大資本」による略奪の企てを無視する人もいるようだが、「小沢一郎憎し」から検察やマスコミを動かして行われた「クーデター」が見えない人たちと似ている。ちなみに安倍晋三首相は東アジアの緊張を高めることが役割で、ロシアと何をしようが、ネオコンは気にしていないだろう。どうせ、安倍政権に大したことはできないと思われている。
2014.02.28
ウクライナでは2月27日に銀行家あがりのアルセニー・ヤツェニュクを首相とする暫定政権が発足したという。アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補が電話でジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使に語っていた通りの人選だった。「ヌランド総督」の新体制がスタートしたと言うべきかもしれない。 そのヌランドの下へ反ロシア派の3名、つまりユリア・ティモシェンコの「祖国」に所属するヤツェニュク、「UDAR」のビタリ・クリチコ、そして「スボボダ」のオレフ・チャフニボクが訪れている。ヌランドとパイアットとの会話がYouTubeにアップロードされた2日後のことだった。 何度も書いていることだが、ティモシェンコはジョージ・ソロスの影響下にあった人物で、「UDAR」の後ろ盾はウクライナのパイプライン業界に君臨する富豪のビクトル・ピンチュク、そして「スボボダ」はネオ・ナチ。 ウクライナのネオ・ナチ/ファシストはナチ時代のドイツだけでなく、歴史的に米英の情報機関と関係が深い。ネオ・ナチのメンバーは2004年以降、バルト3国にあるNATOの訓練施設で軍事訓練を受けていると言われている。 パイアットと話をしている際、ヌランドはEUの対応がソフトだと不満を口にし、「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉が飛び出したわけだが、ハードな行動でヌランドの不満を吹き飛ばしたであろうネオ・ナチのグループを率いていたのがアレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)やドミトリー・ヤロシュ。 このムジチコとヤロシュは暴走したのか、ヌランドの指揮下で動いていたのか、意見が割れているのだが、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領をキエフから追い出してからの展開を見ていると、役割分担ができていたような印象だ。いわば「悪い反ロシア派」。その後に「良い反ロシア派」が新政権を作るということだろう。 しかし、ヤヌコビッチ自身は自分が正当な大統領だと現在でも主張している。確かに、「新体制」は憲法を無視して作られようとしているわけで、法律的にはヤヌコビッチの主張が正しい。ただ、これまでもアメリカの巨大資本は選挙で民主的に選ばれた政権を軍事クーデターなど反民主主義的な手段で倒し、傀儡体制を樹立させてきた。今回もそうした体制転覆プロジェクトのひとつにすぎない。 しかし、今回は単にウクライナの体制を倒したというだけではすまない。ここにきて話題になっているのはロバート・ゲーツ元国防長官の回顧録『任務』に出てくるリチャード・チェイニーの発言。 チェイニーはジョージ・H・W・ブッシュ政権で国防長官、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めているのだが、ブッシュ・シニアの時代、ソ連が消滅した1991年に当時、ソ連やロシア帝国が消滅するだけでは不十分で、ロシアという存在自体を抹殺するべきだと話していたという。その流れの中にヌランドもいるのだろう。当然、ロシアもそうしたことを熟知しているはずで、対抗してくる。ネオコンはアメリカを使い、ロシアを殲滅しようとしている可能性がある。アメリカとロシアを戦わせ、両国を疲弊させようとしているかもしれない。ロシアはそうした視点からNATOのミサイル配備も見ているのだろう。
2014.02.28
ネオ・ナチの武装蜂起によってウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領は実権を奪われた。今回の政変はファシストのクーデターである。クーデター派は棍棒、ナイフ、火焔瓶だけではなく、ピストルやライフルを使い、警官隊を襲撃していた。この事実に触れないメディアがあるとするなら、記者なり編集者が怠慢なのか、その事実を隠して「民主化」を演出したいからだろう。 「西側」と手を組み、ウクライナをEUへ組み込もうとしている勢力は3政党が中心。投機家のジョージ・ソロスの影響下にあったユリア・ティモシェンコが率いる「祖国」、ウクライナのパイプライン業界に君臨する富豪のビクトル・ピンチュクを後ろ盾とするビタリ・クリチコの「UDAR」、歴史的にナチや米英の情報機関とつながるオレフ・チャフニボクの「スボボダ」である。 昨年11月にヤヌコビッチ大統領がEUとの連合協定締結に向けての準備を停止すると発表してから混乱が始まると、この勢力が抗議活動をはじめ、ビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員のようなネオコン(アメリカの親イスラエル/シオニスト派)が支援のため、ウクライナへ乗り込んでいる。 「西側」のメディアは「平和的」と形容した抗議活動だが、火焔瓶や石が投げられるだけでなく、ブルドーザーも持ち出され、日本から見るとかなり激しいもの。1月の下旬になると、アレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)やドミトリー・ヤロシュたちが率いる武闘色の強いグループが注目され始める。警官隊は「西側」に比べ、かなり平和的に対応しようとしていた。 ビクトリア・ヌランド国務次官補によると、そうした工作のため、昨年12月中旬の段階でアメリカは50億ドルをつぎ込んでいたようだが、メディアを使ったプロパガンダや火焔瓶を投げる程度の抗議活動でヤヌコビッチ政権の発表を覆すことはできなかった。 ソチで開かれていたオリンピックの閉幕が近づいてくると、警察や治安当局の施設が襲撃されて300丁とも1500丁とも言われるピストルのほか、ライフル、マシンガン、手榴弾などが盗まれるという事態が生じ、街頭での銃撃が始まる。 銃撃を始めたのはムージチコやヤロシュなどのファシスト団体のメンバーだと見られている。ムージチコは1994年にチェチェンでロシア軍との戦闘に参加し、その残虐さで有名になった。1995年にウクライナへ戻ると犯罪の世界へ足を踏み入れている。かなり物騒な経歴の持ち主だが、ウクライナのファシストでリーダー的な役割を果たしているのはヤロシュだという。 屋上からスナイパーが頭部を狙ったという報道もあるのだが、これはリビアやシリアの時と同じパターン。予想通りのことが起こったようだ。プロの狙撃だから政府派に違いないという話になっているようだが、チェチェンやシリアから戦闘のプロが「反ヤヌコビッチ派」に参加しているわけで、ヤヌコビッチ派が狙撃したと断定することはできない。むしろ、状況証拠は「平和的」な反ヤヌコビッチ派が怪しいと言っている。 軍事的な緊張を過度に高めることをEUは避けたいはずだが、ネオコン(アメリカの親イスラエル/シオニスト派)は戦争も辞さないという態度。ビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使との会話でもEUの「ソフト路線」をヌランドは批判、「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にした。 ファシストとはいっても、ムージチコやヤロシュのような人ばかりではない。そこで2004年、EUへ参加したばかりのバルト諸国にNATOは軍事訓練のための施設を設置、そこでファシストを訓練するようになったという。 こうした訓練を受けたネオ・ナチがキエフなどウクライナ西部で大きな影響力を持ち始めていることをロシアは警戒、大規模な軍事演習を行っているのだが、ファシストを訓練してきたNATOのアナス・フォー・ラスムセン事務総長はロシアを牽制している。ウクライナ侵略の邪魔をするなということだ。 ウクライナの庶民にとってEUへの参加は地獄への一本道。「西側」の巨大資本やその手先の食い物になるということだ。2004年以降、旧ソ連圏から多くの国がEUへ加盟したが、そこでは庶民の貧困化が進み、不満が高まっている。 こうした国々から仕事を求めて人が西へ移動、その先で賃金を引き下げる原因になり、そうした移民への反発からファシストを支持する人が増えた。ウクライナでは移民を増やす要因を作り、西の国々では移民に反対しているのがファシスト。いわば「マッチポンプ」。 そうしたファシストの背後に見えるのは、ネオコン/シオニスト、NATO、サウジアラビア。ブレーキをかけているのはロシア。おそらく、アメリカの非ネオコンもロシアと話し合いのパイプを持っている。 ネオコン/シオニストはウクライナの次にロシアを狙っている可能性が高い。2008年8月、イスラエルやアメリカから軍事訓練を受け、武器/兵器を提供されていたグルジアが南オセチアを奇襲攻撃したが、これもロシアを念頭においた作戦だった可能性がある。このときはグルジアやイスラエルが予想した以上にロシア軍が強く、追い返されている。
2014.02.27
ウクライナで「西側」の支援を受けたネオ・ナチがクーデターで主導権を握る中、ウラジミール・プーチン露大統領はロシアの西部や中部で11万人とも15万人とも言われる将兵が参加する軍事訓練を2月26日、あるいは28日から数日にわたって実施するようだ。地上軍、空軍、空挺部隊、そして航空宇宙防衛の戦闘準備状況をテストすることが目的だという。 すでにロシア軍はクリミア半島の近くにあるテムリュクから第328海兵大隊に所属する兵士約200名をアリゲーター級揚陸艦のニコライ・フィリチェンコフで半島にあるセバストポリへ運び、4機のイリューシンIl-76輸送機で第45空挺特殊部隊をクリミアに近いアナパへ派遣したという。セバストポリにはロシアの重要な軍港があり、ここを守るためなら、あらゆる手段を講じるだろう。 クリミア半島をはじめ、ウクライナの東部や南部は元々ロシアだった場所で、住民もロシア系が多く、キエフで引き起こされたファシストを中心とするクーデターに反発している人は少なくない。26日にはクリミアでクーデター支持派のタタール系住民がロシア系住民と衝突するという事態も生じている。 今のところロシア政府はウクライナに介入する意思はないとしているものの、それは「西側」が介入しない限りという条件付き。実際のところ、NATOはネオ・ナチを軍事訓練し、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)は資金を提供してきたわけで、介入どころかクーデターの黒幕だ。 リビアやシリアなど中東/北アフリカでネオコン、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタールといった国々は傭兵を使って体制転覆を図ってきた。その傭兵の主力はアル・カイダ(サラフィーヤ/ワッハーブ派)。イスラエルも敵視していない。 例えば、2009年7月から今年9月まで駐米イスラエル大使を務め、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に近いと言われるマイケル・オーレンはエルサレム・ポスト紙に対し、シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すためならアル・カイダを支援すると話していた。その一方、イスラエル政府はウクライナのユダヤ人共同体が危険な状況にあることに関して沈黙を守っている。 そして、ウクライナではチェチェンでロシア軍と戦ったり、シリアで政府軍と戦った人びともファシストのクーデターに参加している。状況によっては、EUで台頭しているファシスト勢力も合流、ヨーロッパ全域がファシスト体制になるという安倍晋三首相が喜びそうな事態もないとは言えない。
2014.02.26
「非民主的な強権体制」を「民主化を求めるウクライナ市民」が倒すというストーリーを信じたい人は少なくないだろうが、選挙で選ばれたウクライナの政権を倒したのはファシスト/ネオ・ナチの暴力。ウクライナの政変はクーデターであり、その背後には「西側」やウクライナの支配層がいる。 EUとロシアがウクライナをめぐって対立していると「西側」のメディアは伝えているようだが、ウクライナでクーデターを仕掛けたのはアメリカ、より正確に言えばネオコン。ビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員の言動を見聞きするだけでもわかるが、こうしたことを示す情報は、それ以外にも少なくないことは本ブログで指摘してきた。 今から10年ほど前、一度、ウクライナは「西側」に制圧されている。いわゆる「オレンジ革命」だが、この時のスポンサーがボリス・ベレゾフスキー(後にプラトン・エレーニンに改名)という富豪(オリガルヒ)だった。少なくとも一時期、イスラエルの市民権を持っていたという。 これまで何度も書いてきたことだが、ベレゾフスキーはボリス・エリツィン時代に不公正な手段でロシア国民の資産を私物化、巨万の富を築いた人物。エリツィンは心臓に持病があったこともあり、周辺をシロアリのような連中が囲んでいたのだが、その中心にはエリツィンの娘、タチアナ・ドゥヤチェンコがいた。 エリツィン時代のロシアでは「西側」好みの新自由主義に基づいて政策が決められ、貧富の差が急速に拡大して庶民は塗炭の苦しみをなめさせられ、ロシアは崩壊の危機に直面した。 当然、エリツィンの人気は急落し、メディアを使ったプロパガンダも効果がなくなる。1996年の選挙中、IMFはロシアへ100億ドルを融資してテコ入れを図るが、それまでの融資と同じように、エリツィンの取り巻きが大半を懐へ入れてしまったと言われている。そして登場したのがウラジミール・プーチンだ。 このプーチンはオリガルヒ対策に乗り出し、屈服させていく。そうしたプーチンの「強権政治」に反発したひとりがベレゾフスキーで、2001年にイギリスへ亡命する。オリガルヒ仲間の何人かは同じようにイギリスへ逃げ、イスラエルへ逃亡した人も少なくない。その結果、ロンドンやイスラエルへはオリガルヒと一緒に資金も流入することになった。 ところで、今回、ウクライナではファシストが前面に出てきた。NATOから軍事訓練を受けていたとも伝えられているが、NATOに破壊活動を担当する「秘密部隊」が存在するわけで、不思議ではない。イタリアのグラディオだけではなく、NATO加盟国全てにそうした組織があるとされている。(これについて本ブログでは何度も書いているので、活動内容に関する話をここでは割愛する。なお、この話は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』でも触れている。) アメリカン大学のクリストファー・シンプソン教授によると、1920年代の後半にドイツ企業への融資という形でアメリカから多額の資金がドイツへ流れ、アメリカ商務省の統計を見ても、アドルフ・ヒトラーが権力を握ってからアメリカの対ドイツ投資額が急増するのだが、その間、ヨーロッパ大陸全域におけるアメリカの投資額が激減している。 当時、ウォール街、つまりアメリカの金融界がファシストを資金面から支援していたのだが、それだけでなく、ニューディール政策を掲げるフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任すると、JPモルガンを中心とする勢力がファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画した。 この計画を議会で暴露したのはスメドリー・バトラー海兵隊少将。名誉勲章を2度授与された伝説的な軍人で、軍隊の内部で信望が厚く、クーデター派は抱き込みを図ったのだが、失敗して情報が漏れたわけだ。 クーデター派が描いていたシナリオによると、新聞を利用して大統領を攻撃、フランスの「クロワ・ド・フ(火の十字軍)」のような50万名規模の組織を編成、示威行動を展開して大統領に圧力を加え、場合によっては排除することになっていたようだ。ウクライナで行われていることと基本的には同じ。 バトラーがウォール街のグループにカウンター・クーデターを実行すると警告、さらに議会で証言したことで、この計画は未遂に終わったが、クーデター計画を追及していくとアメリカの金融界が混乱、あるいは崩壊する可能性が高く、ルーズベルト大統領は不問に付す形になった。 しかし、第2次世界大戦後にもルーズベルトが生きていたなら、どうなったかは不明だ。1945年4月、ドイツが降伏する直前に彼が執務室で急死したのはウォール街にとって「幸運」だったと言えるだろう。 アメリカの金融界がクーデターを計画していたとき、ドイツではヒトラーが独裁体制に入り、ヨーロッパを制圧し始めている。1941年6月になるとドイツはソ連に向かって進軍を開始、1942年から43年にかけてのスターリングラード攻防戦でドイツが負けるまでイギリスは様子を見ている。「西側」の支配層、少なくともその一部はファシストを使ってヨーロッパを統一し、ソ連も倒そうとしていたように見える。その戦略をネオコンは使っているのではないだろうか。
2014.02.26
キエフは現在、「スボボダ(自由)」のようなネオ・ナチに制圧されているようだ。街では覆面をした一団が自動車を止めてビクトル・ヤヌコビッチ大統領の関係者を探し、議会ではビクトル・ヤヌコビッチ大統領が所属していた「地域党」の議員は殴られ、追い散らされ、コミュニストはリンチに近い暴力を受けていると伝えられている。 また、ウラジミール・レーニンの像、ドイツ軍と戦った兵士の像、そしてナポレオン1世を破った帝政ロシア時代の軍人、ミハイル・クトゥーゾフ元帥の像も破壊された。街には、スボボダが前に使っていたナチのハーケンクロイツを連想させるマークが落書きされている。 今回、クーデターを成功させた政党は「スボボダ」のほか、ユリア・ティモシェンコの「祖国」とビタリ・クリチコの「UDAR」。ティモシェンコは投機家のジョージ・ソロスの影響下にあった人物で、「UDAR」の後ろ盾はウクライナのパイプライン業界に君臨する富豪のビクトル・ピンチュクだ。 スボボダなどネオ・ナチのメンバーは歴史的に米英の情報機関と関係が深く、バルト3国にあるNATOの訓練施設で軍事訓練を受けている。つまりNATOはウクライナでの破壊活動を想定している。 こうした反ロシア勢力を操っているのがビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員のようなネオコン(アメリカの親イスラエル派)。このヌランドが「スボボダ」のオレフ・チャフニボク、「祖国」のルセニー・ヤツェニュク、「UDAR」のクリチコと一緒の写った写真が流れているが、象徴的だ。 このほか、今年1月にシリアからウクライナへ約350名が入ったと言われているが、イスラム教スンニ派の武装集団(サラフィーヤ/ワッハーブ派、またはアル・カイダ)を指揮しているのはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官。ウクライナのネオ・ナチはこうしたグループとも関係がある。 スルタン長官は昨年7月31日にモスクワを極秘訪問、ウラジミル・プーチン大統領に対し、シリアから手を引かないとソチで何らかの「テロ」を行うと示唆して怒らせたと伝えられている。実際はソチでなく、ウクライナへ戦闘員を向かわせたのだろう。 ウクライナからチェチェンへ渡り、そこでロシア軍と戦った経験の持ち主も今回のクーデターに参加している。本ブログでは登場済みだが、アレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)である。1995年にチェチェンからウクライナへ戻り、犯罪組織を率いていた。 シリアでもそうだが、「西側」は自分たちの手駒が碌でもない連中だということを隠しきれなくなると、「良いグループ」と「悪いグループ」、あるいは「穏健派」と「過激派」に分けて誤魔化そうとする。広域暴力団でも暴力担当と経済担当を分けているようだが、似たような手法だ。 かつて、シオニストはイスラエルを建国する際、デイル・ヤシン村を襲撃し、254名を虐殺している。村の住民は石切で生活、男が仕事で村にいない時を狙っての攻撃だった。実際に村を襲ったのはイルグンとスターン・ギャングで、後にイスラエル軍になるハガナは関係ないことになっているのだが、その3日前、ハガナの副官がイルグンとスターン・ギャングの幹部とエルサレムで会い、攻撃の相談をしている。「汚い仕事」をハガナは「下請け」に出した、あるいは「汚い仕事」をさせるために別組織を作ったとも見られている。 ネオコンがウクライナの体制を暴力的なクーデターで倒そうとしていたことは、ヌランドとジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使との会話でも推測できる。ふたりは新政権の閣僚人事を相談していたのだが、平和的に解決しようとしていたEUにヌランドは不満だったようで、「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉が口から出たわけだ。
2014.02.25
ロシア政府は黒海艦隊の所属するアリゲーター級揚陸艦のニコライ・フィリチェンコフを使い、海兵隊をウクライナ南部のクリミアに派遣したほか、4機のイリューシンIl-76輸送機で第45空挺特殊部隊をクリミアに近いアナパへ送り込んだという。クリミア半島の南にあるセバストポリには黒海艦隊もいる。クリミアをはじめ、ウクライナの東部/南部にはかつてロシアだった地域があり、住民もロシア系が多く、この地区を西部のようにネオ・ナチが制圧することは難しいだろう。 本ブログでも書いたように、「ビクトル・ヤヌコビッチ大統領の解任」は憲法に違反していることは明白で、ロシア政府もヤヌコビッチを合法的な大統領だと見なしている。この合法的大統領がロシアに支援を求めた場合、住民を保護するという名目でロシア軍が入ってくる展開はありえる。 クリミアやその近くにロシア軍を配置した大きな目的は黒海艦隊がいるセバストポリの防衛だろうが、今後の軍事的な展開の拠点を作るという意味もありそうだ。フィナンシャル・タイムズ紙によると、ウクライナが分裂した場合、ロシアはクリミアをまずおさえるとロシア政府の高官は語ったというが、そうした方向へ動いている。 クリミア議会のボロディミール・コンスタンティノフ議長はクリミアをウクライナから分離すると発言したとも伝えられているが、クリミアでも民族紛争が勃発する可能性もあり、主流の意見ではないようだ。今のところロシア政府はウクライナに介入する意思はないとしているが、「西側」がウクライナを制圧する様子を傍観することに反対する声は小さくないため、介入がないとは言い切れない。 ウクライナのクーデターで中心的な役割を果たしたネオ・ナチはOUN(ウクライナ民族主義者機構)の流れをくんでいる。第2次世界大戦の前、OUNはイギリスの情報機関MI6と手を組んでいたが、ドイツ軍が侵攻したときはナチの手先になって少数民族の殲滅を開始、約90万人のユダヤ人が行方不明になったとも言われている。 1943年にOUNは「反ボルシェビキ戦線」を設立、大戦後の46年にはABN(反ボルシェビキ国家連合)となり、東アジアで創設されていたAPACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)と合体してWACL(世界反共連盟)に発展した。 APACLは1954年、台湾の蒋介石政権と韓国の情報機関によって創設された。日本からは児玉誉士夫や笹川良一が参加、日本支部を設置する際には岸信介、つまり安倍晋三首相の祖父が推進役になっている。ウクライナのネオ・ナチと安倍首相の根は一緒だとも言えるだろう。
2014.02.25
ソチで開催されていたオリンピックの警備をしていたロシアの部隊がウクライナとの国境近くへ移動しているとする情報がイスラエルから流れている。 大会の期間中、ソチの周辺ではロシア軍の特殊部隊がイスラム教スンニ派の武装集団(サラフィーヤ/ワッハーブ派、またはアル・カイダ)に対する掃討作戦を展開していたとも言われ、そうした部隊がウクライナ対策に振り向けられる可能性がある。 現在、ウクライナではネオ・ナチを中心とする反ロシア派が主導権を握り、憲法の機能を停止させて「西側」の「国境なき巨大資本」にとって都合の良い体制を築こうとしている。その後ろ盾になっているのがネオコン(アメリカの親イスラエル派)だが、国外からスンニ派武装勢力の一員としてチェチェンやシリアで戦ってきた傭兵が入っているとも言われている。 チェチェンを含むカフカスの反ロシア武装勢力はソチ・オリンピックを襲撃すると言っていたが、その背後にはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官がいた。昨年7月31日、スルタンは秘密裏にロシアを訪問してウラジミル・プーチン大統領と会談、チェチェンのグループは自分たちの指揮下にあり、シリアから手を引けば冬季オリンピックの安全を保証できると持ちかけたという。 つまり、シリアから手を引かなければ、配下の武装集団にソチを攻撃させると脅したわけだが、これに怒ったプーチン大統領は「ここ10年の間、チェチェンのテロリスト・グループをあなたたちが支援していることを知っている」と言い放ったという。その後、ロシアの姿勢は強硬になった。 ウクライナで活動するネオ・ナチのメンバーを訓練するNATOの施設が、バルト3国、つまりエストニア、ラトビア、リトアニアにあるという。この3国は2004年にNATOへ加盟している。この施設へメンバーを送り込んでいるグループはサラフィーヤ/ワッハーブ派と協力関係にあり、1990年代からバルカン諸国だけでなく、チェチェンでも戦闘に参加しているようだ。 その象徴的な人物がウクライナ出身のアレキサンダー・ムージチコ(別名、サーシャ・ビリー)。1995年にチェチェンからウクライナへ戻ると犯罪組織を率い、今回のクーデターにも参加している。本ブログでもカフカスから多くの傭兵がシリアなどへ入ったことを紹介したが、その傭兵もムージチコの仲間ということになる。 ウクライナの「民主化勢力」がファシストだということは広く知られている話で、ヨーロッパのメディアでさえ報道している。(例えばガーディアン紙やチャンネル4)その背後にウクライナの富豪(オリガルヒ)だけでなく、「西側」がついていることも公然の秘密。この問題に触れないメディアがあるとしたら、それは単なる「西側」のプロパガンダ機関、あるいは「大本営」の宣伝部隊にすぎない。 その「西側」の中心的な存在がネオコン。この勢力に近いシンクタンクPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)が2000年に出した報告書「米国防の再構築」によると、ソ連消滅後にアメリカは唯一の超大国になり、その地位を守るため、アメリカ軍は核戦略の優位性を維持しつつ兵力を増強するべきなのだという。 彼らが重視している地域は、東南ヨーロッパ、アジア東岸、そしてエネルギーの供給地である中東。東南ヨーロッパや東南アジアへは恒久的に部隊を移動させるべきだとしている。安倍晋三首相を浮かれさせている背景はこの辺にありそうだ。 こうしたことも含め、アメリカの国防システムを根本的に変更する必要性をネオコンは説いているのだが、そのためには「新たな真珠湾」のような衝撃が必要だとも彼らは考えていた。PNACにとっては「幸運」なことに、2001年9月11日に「新たな真珠湾」が引き起こされ、彼らの暴走が始まった。その実行部隊は「アル・カイダ」だとされている。
2014.02.25
ウクライナのクーデターで主導権を握っているのはネオ・ナチの「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」だが、同じように反ロシア色を鮮明に出しているUDARも注目されている。元ボクサーで若者に人気のあるビタリ・クリチコが率いる政党だが、その背景が興味深い。 今回のクーデターでもヨーゼフ・ゲッベルスを彷彿とさせるプロパガンダが展開されたが、その片棒をウクライナのテレビ局も担いでいる。UDARを露骨に支援していたインテルTVもその一例。化学業界を牛耳るドミトロ・フィルタシュが共同オーナーに名を連ね、抗議活動も支持していた。 ビタリ・クリチコの弟、ウラジミール・クリチコは現役の人気ボクサーで、フォーブス誌によると、世界で最も稼ぐアスリートの第41位。ウクライナのパイプライン業界に君臨するビクトル・ピンチュクを後ろ盾にしている。 このピンチュクはICTVなど4チャンネル、つまりプロパガンダの手段を保有してる。ピンチュクも「西側」との関係が深く、ビル・クリントンとヒラリー・クリントンに多額の資金を提供しているスポンサーとしても有名だ。 ロシアでもそうだったが、こうしたオリガルヒは政府との不公正な関係を利用して巨万の富を築いたきた。ロシアの場合、ボリス・エリツィン時代に国民の富を私物化していたが、ウラジミール・プーチンが実権を握ってから力は衰えている。それに対し、ウクライナでは現在もオリガルヒは健在だ。 ピンチュクは第2代大統領、レオニード・クチマの娘と結婚してから蓄財が始まっている、つまり庶民から富を盗み始めているようで、UDARも不正蓄財の中から生まれたと言える。どのような看板を掲げていようと、庶民を豊かにしようとは思っていないだろう。 庶民を騙せても、富豪たちは安閑としていられない。勢力争いはあるらしいのだ。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領の時代になってから大統領の長男であるオレクサンドル・ヤヌコビッチを中心とする勢力がライバルとして台頭、対立しているという。 政治の世界では、クチマ時代の後、2004年の大統領選挙で反ロシア派のビクトル・ユシチェンコと親ロシア派のビクトル・ヤヌコビッチが争い、ヤヌコビッチが勝利している。その結果を翻すためにユシチェンコ陣営はゼネスト、デモ、集会などでヤヌコビッチを追い込み、実権を握った。これが「オレンジ革命」だ。 このとき、ユシチェンコのスポンサーだったボリス・ベレゾフスキー(後にプラトン・エレーニンに改名)はエリツィン時代のロシアで不正蓄財したオリガルヒだが、プーチンと対立して2001年にイギリスへ亡命している。イギリスではジェイコブ・ロスチャイルド卿や息子のナサニエル(ナット)・ロスチャイルドと緊密な関係を築き、ジョージ・ソロスとも一時期は手を組んでいた。そのソロスが後ろ盾になったのが富豪で元首相のユリア・ティモシェンコだ。 今回のクーデターにウクライナの利権が関係していることは確かだろうが、その背後ではロシアを制圧するという「西側」支配層のビジョンがある。中でもネオコン(アメリカの親イスラエル派)は強引で、武力も厭わない。 そうした姿勢を垣間見せてくれたのがビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使とのウクライナの閣僚人事に関する相談。アフガニスタン、イラク、リビア、シリア・・・といった国々を先制攻撃、破壊と殺戮の限りを尽くし、今でも戦乱は収まっていないのだが、ネオコンは懲りていない。 戦争で巨大資本は大儲けしているが、アメリカの国家財政には大きな負担。それでもネオコンはウクライナでクーデターを仕掛け、軍事的な緊張を高めている。プロパガンダで揺さぶり、ネオ・ナチを使って無政府状態を作りだし、クーデターを仕掛けたわけだ。 今の流れだとウクライナが東と西に割れることは避けられそうになく、場合によってはNATO軍とロシア軍の衝突もありえる。ヌランドはウクライナでの工作に50億ドルを投入したと昨年12月13日に公の場で語っているが、軍事衝突になれば、桁違いに資金が必要になり、最悪の場合は人類の存続が危うくなる。 安倍晋三首相はこのネオコンの影響を強く受けているようで、ロシアやイランと同じように「西側」の巨大資本に服ろわぬ中国と戦争を始める気かもしれない。ネオコンはアメリカのことを考えていないが、同じように安倍首相は日本のことを考えていないようだ。
2014.02.24
日本では安倍晋三首相が自らを憲法の上の存在だと言っているようだが、ウクライナでは議会で憲法の規定が無視される事態になっている。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領の解任が2月23日に議決されたが、ウクライナ憲法の第111条によると: 「ウクライナ大統領が国家反逆罪又はその他罪を犯した場合、ウクライナ大統領は弾劾により解任される」のだが、そのためには「ウクライナ最高議会の憲法に定める定数の過半数の議員の発案により審議される」ことがまず必要。 そして「調査を実行するためにウクライナ最高議会は特別弁護士及び特別調査官を含む特別臨時調査委員会を設立」し、「特別臨時調査委員会の結論及び提案はウクライナ最高議会で審議される。」 その後、「ウクライナ最高議会の憲法に定める定数の3分の2以上の賛成によりウクライナ大統領に対する告訴を決議できる」のだが、「解任は、ウクライナ憲法裁判所の判決及び弾劾に関する調査・考察を行った憲法弁護士の意見、ウクライナ大統領が告訴されている国家反逆罪又はその他犯罪に関するウクライナ最高裁判所の意見を考慮した上で、ウクライナ最高議会が憲法に定めた定数の4分の3以上の賛成で採択できる」ことになっている。 今回、こうしたプロセスは経ていない。「非常事態」だからという主張も成立しない。つまり、第157条は次にように定めている: 「人権、市民権および自由を廃止又は制限する、又はウクライナの独立を廃止又はウクライナの領土の不可分性を冒涜するようなウクライナ憲法の改正は禁ず。戒厳令下又は国の非常事態下でのウクライナ憲法の改正はできない。」 こうした条文を含む憲法を変えるための手続きは、第156条で次のように定められている: 「基本条理」、「選挙、国民投票」、そして「ウクライナ憲法改正手順」を除くウクライナ憲法改正案は、「ウクライナ大統領又はウクライナ最高議会の憲法に定める定数の3分の2以上の国会議員により、ウクライナ最高議会に提出され、ウクライナ最高議会の憲法に定める定数の3分の2以上の賛成で採択され、ウクライナ大統領の指揮する国民投票で承認される。」ことになっていて、「ウクライナ憲法改正案の同一内容での再審議は、次のウクライナ最高議会本会議においてのみ可能である。」と定めている。 要するに、今回の大統領解任決議は憲法違反。つまりネオコンをはじめとする「西側」勢力が黒幕のクーデターであり、民主的な手続きを経ているとは言えない。このクーデターを「西側」は「民主的」だと主張、「法治」を否定しているわけだ。ソチのオリンピックが閉幕する前に大統領を排除する必要があり、憲法を無視するしかなかったのだろう。 このクーデターで主導権を握っているのはネオ・ナチ系の「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」。2012年に実施された最高議会選挙の結果、この政党は450議席のうち37議席(8.2%)を獲得している。つまり、多数派ではない。統率され、武装していることで主導権を握ることができた。 ちなみに、第1党はビクトル・ヤヌコビッチ大統領が所属する「地域党」で、186議席(41.3%)を占める。ジョージ・ソロスの影響下にあるユリア・ティモシェンコの「全ウクライナ連合『祖国』」が104議席(23.1%)、元ボクサーのビタリ・クリチコが結成したUDARが40議席(8.9%)。 多数派ではないとしても、少なくともウクライナの西部ではネオ・コンが主役になっていて、ネオコン、つまりビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員のような親イスラエル派が後ろ盾になっている。 ところが、昨年のうちからイスラエルではウクライナでネオ・ナチが台頭している状況を懸念する声も出ていた。ユダヤ系やアラブ系の留学生がナイフで脅されるだけでなく、襲撃され、殺された学生もいるようだ。 親イスラエル派が支援するグループからユダヤ人やアラブ人が襲撃されていることを矛盾と考えてはならない。イスラエルとは「シオニスト」の国であり、親イスラエル派とはシオニスト。「ユダヤ人」はシオニストが正体を隠すために使っているだけのことだ。この隠れ蓑をウクライナのクーデターは暴くことになるかもしれない。 ウクライナで憲法が無視されている状況を批判的に報道できないマスコミが存在するなら、彼らは「法治」を否定しているということになり、安倍晋三の「改憲」にも反対しないだろう。
2014.02.24
ロシアのソチで開かれていたオリンピックが閉幕、ウクライナで新たな動きがありそうだ。 現在、ウクライナは誰が大統領なのかも明確でない状態。ネオ・ナチが武装闘争を開始している西部が反ロシアの姿勢を鮮明にする一方、東部や南部では反米の気運が高まり、このまま放置しておくと民衆レベルで軍事衝突に発展する可能性もある。 アメリカのネオコン、例えばビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員が後押しするネオ・ナチが今は主導権を握り、ウクライナ議会はアレクサンドル・トゥルチノフ議長に大統領権限を代行させることを決定したというのだが、この人物が議長になったのは2月22日。それまで議長を務めていたボロディミール・リバクの辞任をうけてのことだが、殺害の脅しをうけてのことだったと伝えられている。この議長交代もクーデターのシナリオにあったのだろう。 トゥルチノフは議長に就任するとユリア・ティモシェンコ元首相を釈放したが、この女性が投機家のジョージ・ソロスに操られていたことは本ブログで書いた通り。ソロスに従属することで巨万の富を築いたようだ。 これに対し、ビクトル・ヤヌコビッチは大統領の座から降りていないと主張、キエフで行われていることはクーデターだと非難しているようだ。ティモシェンコはヤヌコビッチを裁判にかけろと叫んでいるようだが、ウクライナの東部や南部では今回の政変についてヤヌコビッチと同じ見方をする人が多いようで、このまま混乱が収まるとは考えにくい。 今回の政変がネオコンの仕組んだクーデターである可能性は高く、ロシアは対抗策をとれないと高をくくっているのかもしれないが、EUは危機感を抱いているだろう。盗聴されたヌランド国務次官補の会話でも、EUの対応が生ぬるいと怒っている。 西部を拠点とする反ロシア派、つまりネオ・ナチやシリアから入り込んだ戦闘員が東部や南部に攻め込んだ場合、ロシア軍が介入してくる可能性がある。そうなるとNATO軍、あるいはアメリカ軍とロシア軍が衝突する展開になるかもしれない。 アメリカのスーザン・ライス安全保障問題担当補佐官はロシアの介入はウクライナ、ロシア、ヨーロッパ、アメリカの利益にならないとNBCの番組で発言したようだが、これも奇妙な話。介入しているのはアメリカにほかならない。ウクライナを制圧する邪魔をするなと言っているに等しい。ついでにIMFを持ち出したようだが、つまりギリシャなどと同じように、IMFを使ってウクライナの富を搾り取るということだ。 ウクライナ情勢についてロシアのウラジミール・プーチン大統領はドイツのアンゲラ・メルケル首相と話し合ったという。ヌランド次官補から愚弄されたEU、中でもアメリカに最も厳しい姿勢を見せているドイツとロシアは手を組もうとしている。このところファシストが台頭しているEUとしても、ウクライナ情勢は自らの問題でもある。
2014.02.23
2007年12月から2010年3月までウクライナの首相を務め、2011年10月に懲役7年を言い渡され、収監されていたユリア・ティモシェンコが釈放されたという。2008年、経済的な苦境から脱するために投機家のジョージ・ソロスから受けたアドバイスに基づく政策を実行すると発言していたのがこのティモシェンコだ。 ティモシェンコが首相だったときの大統領、ビクトル・ユシチェンコは2004年から05年にかけて実行された「オレンジ革命」で実権を握った人物で、そのパトロンはロシアからイギリスへ亡命していたボリス・ベレゾフスキーだった。ボリス・エリツィン時代のロシアで不公正な手段を使って巨万の富を得たひとりだ。途中までソロスはベレゾフスキーと手を組んでいたようだが、途中で仲違い、ユシチェンコにも批判的な姿勢を示すことになる。 2010年に行われた大統領選挙の投票結果は第1位がヤヌコビッチで得票率は35.32%、第2位がティモシェンコで25.05%、ユシチェンコは第5位で、5.45%にすぎなかった。上位ふたりで行われた決選投票でヤヌコビッチが48.95%、ティモシェンコは45.47%でヤヌコビッチが勝利している。 そして現在、ティモシェンコの影響力は小さく、主導権を握っているのはネオ・ナチの「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」ように見える。昨年12月、そのネオ・ナチのリーダーとジョン・マケイン上院議員は会っている。言うまでもなく、マケイン議員はベレゾフスキーと人脈が重なるネオコン(親イスラエル派)だ。 ヤヌコビッチ後の閣僚人事をジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と話し合っていたビクトリア・ヌランド国務次官補。彼女は昨年12月13日、工作資金として50億ドルをウクライナに投入していることを明らかにしている。他国の体制を転覆させるために50億ドル、ざっと5000億円を使っていると公言しているのだ。政権転覆の企てはソロスも続けているようで、2011年の段階でリビア方式を彼は考えていると言われていた。 リビアでは、反政府活動から内戦へ発展、最終的にはNATO軍が登場している。その際、地上軍の主力として動いていたのがアル・カイダだった。ウクライナにもイスラム教スンニ派の武装勢力は入っているようだが、主力はネオ・ナチで、失業者が日銭稼ぎで参加している。多くのウクライナ人に支持されているのかどうかは不明だ。 ウクライナの西部は反ロシア感情が強く、主権をなくそうと、欧米の巨大資本の食い物にされようと構わないという人もいるようだが、東部や南部では違い、反米感情が高まっている。少なからぬ人がウクライナの分裂を予想、グルジアにおける南オセチアのような状況もありえる。そうなるとロシア軍とNATO軍が衝突する可能性も否定はできない。
2014.02.23
ウクライナの西にポーランドがある。ウクライナで蜂起した反政府/ロシア勢力の負傷者は現在、このポーランドへ運び込まれ、治療を受けているという。シリアへの攻撃拠点になっているトルコやヨルダンからの連想で、ポーランドがウクライナ攻撃の拠点になるのではないかという見方もある。 ポーランドはCIAの秘密刑務所が設置された国のひとつで、歴史を振り返るとアメリカの東欧戦略と深く結びついていることがわかる。1980年8月に反体制派労組「連帯」が創設され、ソ連を揺さぶる震源地はこのポーランドだった。 「連帯」の後ろ盾になったのは、ポーランド出身のローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世。1978年8月にローマ教皇となったヨハネ・パウロ1世が在位1カ月余りで急死、新たに選ばれた人物である。 ヨハネ・パウロ1世の前に教皇を務めたパウロ6世は第2次世界大戦前、ジョバンニ・バティスタ・モンティニと呼ばれていた時代からアメリカの情報機関、つまりOSS(その後身がCIA)と緊密な関係にあったことが知られている。OSS/CIAでモンティニを担当していたのがヒュー・アングルトンとジェームズ・アングルトンの親子。両者ともアレン・ダレスの側近だった。 パウロ6世の右腕と呼ばれ、IOR(宗教活動協会。通称、バチカン銀行)の頭取を務めたのがシカゴ出身のポール・マルチンクス。ヨハネ・パウロ1世はこのマルチンクスと対立関係にあった。 頭取時代、マルチンクスはマフィアにアメリカ財務省証券を偽造するように注文したり、「連帯」へ不正融資を行ったりしている。この不正融資ではイタリアの大手金融機関アンブロシアーノ銀行が関与、スキャンダルが発覚後、アンブロシアーノ銀行の頭取だったロベルト・カルビはロンドンで変死体となって発見された。 カトリックの内部には1930年代からコミュニストを敵視、バルト海からエーゲ海までを「カトリック国」にしようという団体、「インターマリウム」が存在した。創設者はフランスに亡命していたロシアの王党派で、イギリスやフランスの情報機関が支援、後にドイツにも協力したと言われている。大戦後はCIAと協力関係を結び、ナチ残党の逃走を助けている。 1981年になるとイタリアの財務警察隊がマルチンクスやカルビの不正融資を捜査、秘密結社P2の会員名簿が発見されて大きな問題になった。1979年の段階でその名簿には、43名の将軍、8名の提督、36名の国会議員を含む953名が載っていて、情報機関のトップや元トップも含まれていた。 1990年にジュリオ・アンドレオッチ首相はNATOの秘密部隊が存在、イタリアでは「グラディオ」と呼ばれていることを明らかにしたが、その秘密部隊を指揮していたのは情報機関のトップであり、「右翼団体」が手駒として破壊活動を実行していた。 1960年代から1980年頃までイタリアでは「極左のテロ」が続いたが、実際はグラディオの工作だったことが明らかになっている。人脈から見て、P2とグラディオは結びついていると考えられ、ポーランドから始まった東欧の「民主化運動」はNATOの秘密部隊が関係していたということになるだろう。 現在、ウクライナではネオ・ナチやアル・カイダが中心になって銃撃戦を始めているようだが、突然、こうした蜂起が起こったわけではない。大戦前から続くプロジェクトの続きであり、最終的にはロシアを乗っ取るつもりだろう。 しかし、思惑通りになるとは言えない。シリアでもネオコン(アメリカの親イスラエル派)はロシアを過小評価し、出方を見誤った。湾岸戦争の時と同じように、ロシアは軍事的に対抗してこないと考えたわけだが、艦隊を出して対抗している。「西側」が発射したミサイルをジャミングで海中へ落とした可能性もある。状況は変化している。イスラエルやアメリカの支援を受けたグルジア軍が奇襲攻撃したときも、ロシア軍は押し返している。ウクライナでも、オリンピックが終わるまでにネオコンが押し切れなければ、緊迫した場面があるかもしれない。 ネオコンの好戦的なプランを知り、安倍晋三首相の一派は高揚しているのかもしれないが、そうだとすれば、危険だ。
2014.02.22
ベネズエラで反政府活動が過激化、ウクライナと似た状況になってきた。そうした中、ニコラス・マドゥーロ大統領は2月20日にCNN取材班から取材許可証を剥奪するのだが、翌21日にその決定を撤回して取材活動を認めることにしたという。 カタールのアル・ジャジーラやイギリスのBBCと同じように、アメリカのCNNはリビアやシリアなど中東/北アフリカで体制転覆プロジェクトを推進する立場から偽情報を流してきた。ベネズエラでは、マドゥーロ政権のイメージを悪くするため、シンガポールで撮影された写真がベネズエラで撮られていたことをそのCNNも認めている。 これ以外にも、インターネット上では、エジプト、チリ、ブラジル、ブルガリアなどで撮影された写真、気温が24˚Cだというカラカスとは思えない極寒の地でかぶるような帽子の警官やマドゥーロ派の負傷者もマドゥーロ政権攻撃の材料として使われているようだ。中にはポルノ・サイトから持ってきた写真もあるという。 世界の支配層は過去の失敗を学ぶ。知られたくない自分たちの言動が暴露されて痛手を被ったことを反省、今度はそれを攻撃の手段として使っている。 ウォール街からの自立を目指すウーゴ・チャベスが大統領に就任した1999年以来、アメリカ政府はクーデターを試みてきた。2002年のクーデター計画では、イラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテが黒幕。この計画は、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わった。 WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入し、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。 クーデターでチャベスを排除することにアメリカは失敗したが、2013年3月、チャベスは癌のため、58歳の若さで死亡する。その後継者になったのがマドゥーロ。そして今、アメリカ資本とつながる富裕層はマドゥーロを排除しようとしている。 ベネズエラに限らず、アメリカは体制転覆プロジェクトなどの工作を大使館から指揮することが多い。2月17日、ベネズエラ政府がアメリカの外交官3名、副領事のブレアン・マリー・マックスカーとジェフリー・エルセン、そして二等書記官のクリストファー・リー・クラークを国外へ追放した理由もその辺にある。 もっとも、カラカスにあるアメリカ大使館には200人以上の外交官がいるそうで、代わりはいくらでもいそうだ。その中で、ベネズエラを不安定化する工作の中心的な役割を果たしてきたのはケリー・カイダーリング・フランツだという。 ベネズエラのディオサド・カベジョ国会議長はマドゥロ大統領を排除する計画の背後にルイス・ポサダ・カリレスがいるとしているようだ。ポサダはキューバ出身で、1961年にはCIAを黒幕とするキューバ侵攻作戦に参加している。 1976年にキューバの旅客機、CU-455便が爆破される事件があったが、その際に実行犯として拘束されたふたりのベネズエラ人の取り調べからポサダとオルランド・ボッシュの名前が浮上、ポサダはベネズエラで逮捕されている。 ポサダとボッシュはベネズエラで起訴されるのだが、1985年に脱獄、その直後にCIAのフェリックス・ロドリゲスと会っている。このロドリゲスは副大統領だったジョージ・H・W・ブッシュと親しく、コントラを支援する秘密工作で重要な役割を果たしていた人物。ポサダもコントラ支援工作に加わることになった。 逮捕された際、ポサダは武器、爆発物、無線機のほか、1976年9月にワシントンDCで暗殺されたチリの元外相、オルランド・レテリエルの移動経路が書き込まれた地図も押収されている。この暗殺をCIAは事前に知っていたと言われている。ちなみに、当時のCIA長官はジョージ・H・W・ブッシュ。 その後、ポサダは1994年にキューバのフィデル・カストロの暗殺を企て、94年と95年にはホンジュラスで軍の右翼将校に協力して十数回の爆弾事件を起こし、97年にはキューバのホテルやレストラン、11カ所を爆破している。 2000年11月にポサダは逮捕され、04年に8年から9年の懲役が言い渡されたが、特赦となり、メキシコ経由でアメリカへ不法入国、アメリカへ「亡命」することに成功した。つまり、アメリカはテロリストを匿っている。現在、彼はマイアミにあるテロ組織本部の指導的地位にあるという。
2014.02.22
アメリカ陸軍はバージニア州に軍事訓練用の町を作った。広さは約121万平方メートルで、5階建ての大使館、銀行、学校、地下鉄と駅、モスク、フットボールのスタジアム、ヘリコプターの離発着ゾーンなどがあり、地下鉄は実際に動かすことが可能で、客車のロゴはワシントンDCの地下鉄と同じだという。アメリカの都市、例えばワシントンDCでキエフのような蜂起があった場合、鎮圧するための訓練をするということだろう。 すでにアメリカ軍は「政治活動家」を拘束する計画を立てている。この計画は「I/R(強制収容再定住)作戦」と呼ばれ、戦後、CIAやFBIが行ってきたことを考えると、ターゲットは戦争に反対、平和を求める人びとになるだろう。2001年9月11日の出来事を利用して「愛国者法」が成立、憲法が機能不全になっているアメリカでは近い将来、現実になりそうだ。 強制収容所では心理戦を担当している軍人が「再教育」、つまり「洗脳」するらしい。アメリカの軍や情報機関では1950年代からマインド・コントロールの研究、「ブルーバード」、「アーティチョーク」、そして「MKウルトラ」と呼ばれている。議会が情報活動を調査した1970年代に重要な文書は証拠隠滅のために廃棄されたと言われているものの、その成果はどこかに保管され、研究も継続されているだろう。 アメリカでは現在、銃の規制が叫ばれている。犯罪で使われたり、暴発や誤射で死者が出ているためだというが、この問題は1776年に採択されたアメリカの独立宣言と関係があり、「刀狩り」としての側面があることを忘れてはならない。 独立宣言には次のような記述がある:「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったときには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有する」。 いわゆる「革命権」だが、すでにアメリカはこの権利を行使すべき段階、つまり独立宣言が革命を求める状況になっている。政府がこの革命を阻止しようとすれば、武装蜂起をしなければならないということだ。銃規制には、この権利を庶民から取り上げるという意味もある。そうした意味で、「銃犯罪」は権力者にとって悪いことではない。人びとが治安を望むようになるからだ。
2014.02.21
ウクライナの情勢に関し、アメリカのバラク・オバマ大統領は2月19日にメキシコで興味深い発言をした。反政府/ロシア派と警官隊の衝突で死傷者が出ている責任はウクライナ政府にあり、その事態を収束させるため、警官隊を引き揚げさせるべきだと主張したのだ。 ニューヨーク大学のステファン・コーエン教授も指摘しているように、オバマの主張は「恥知らず」なもの。もし、ワシントンDCで群集が火焔瓶を投げ、議会に向かって行進、ホワイトハウスの出入り口を封鎖、ホワイトハウスの警備員に投石しているとき、オバマ大統領は警官隊を引き揚げさせるだろうか、ということだ。現在、ウクライナでは石や火炎瓶が投げられているだけでなく、トラクターやトラックが持ち出され、銃撃が始まっている。 本格的な内戦へと発展する様相を見せているのだが、その中心には「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」のようなネオ・ナチや、シリアからウクライナへ入った戦闘員がいると見られている。NATOに「秘密部隊」が存在していることは1990年に発表されたイタリア政府の報告書で明確になっているが、その部隊は「右翼団体」を手先として使っている。スボボダも歴史的にCIAやMI6と関係があり、NATOの意思が反映されている可能性は高い。 そうした勢力の反政府/ロシア行動にアメリカ政府が指示を出している可能性が高いことはビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使との電話での話し合いがYouTubeにアップロードされ、明らかになった。 民主的な選挙で選ばれた現在のウクライナ政府を倒すことを前提にして、新たな政権を作るときに誰を閣僚として入れるかを話し合っているのだ。これは「期待」とか「推測」ではなく、当事者の人選として行っている。「品定め」ではない。ウクライナを自分たちのものとして扱っているのだ。 そうした体制転覆プロジェクトを遂行する上で、EUの姿勢が生ぬるいとヌランドは感じているようで、その不満を口にしている。そして「EUなんかくそくらえ(Fu*k the EU)」という表現が出てくるわけだが、これはヌランドが下品な人間だということを示しているだけで、大きな問題ではない。問題は他国の政権を作り替える、つまり一種のクーデターの相談をしていることにある。「内政干渉と受け取られかねない発言」などという生やさしいものではない。 こうした体制転覆プロジェクトの資金について別の場所でヌランドは語っている。昨年12月13日、工作資金として50億ドルをウクライナに投入していることを明らかにしたのだ。演壇の後ろには巨大石油企業、シェブロンの看板も掲げられていた。 現在、アメリカを拠点とする「国境なき巨大資本」は「国」というシステムを支配下に置く新秩序を築こうとしている。「グローバル化」とはそういうことだ。世界の「エリート」たちは自分たちの好きなように法を作り、操り、民主主義を蝕んでいるわけだが、その結果、NGOのOxfamによると、世界の富は半数近くが1%の人びとに独占され、低所得側の半数が所有している富は上位85名が保有する富と同じ程度でしかないという。 こうした状況に抗議するため、2011年にはウォール街で「占拠運動」が始まったのだが、この文字通り「平和的な抗議活動」をアメリカ支配層はウクライナとは比較にならないほど暴力的な手段を使って弾圧した。その弾圧には地元警察だけでなく、FBIや国土安全保障省が参加している。勿論、そうした「西側」権力の暴力に対し、「西側」のメディアは寛容な姿勢を見せていた。 ネオコンを中心とする「西側」の支配層がウクライナの体制を変えようとしている理由は、ウクライナやロシアを「グローバル化」し、富を奪うことにある。当然、中国やイランも狙っている。アメリカに反旗を翻していたベネズエラも現在、攻撃されている。TPPもそうした戦略の一環。つまり日本の富も狙われている。
2014.02.21
ウクライナの反ロシア派が警官隊に対して銃撃を開始、リビアやシリアと同じように狙撃も始まっているようで、「内戦」の様相を呈してきた。死者は70名とも100名とも言われ、その中には多くの警官も含まれているようだ。黒幕が「アラブの春」と同じため、手口が同じになり、展開が似てきたのだろう。[配布されたパンフレット:左の赤枠がエジプト、右の黄枠がウクライナ] はがした敷石、あるいは火炎瓶を投げるだけでなく、棍棒やナイフで武装していた反政府/ロシア派はここにきてピストルやライフルを使い始めているが、そうしたグループの中心にはスボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」のようなネオ・ナチがいる。しかも、今年1月にはシリアから約350名の戦闘員がウクライナへ入ったと言われ、内戦化する恐れが大きくなっている。 中東/北アフリカのときと同じで、こうした中、「西側」はプロパガンダを展開している。シリアではサウジアラビアやカタールに雇われたイスラム教スンニ派の武装集団(いわゆるアル・カイダ)が潜入して戦争を始めたが、それと並行する形でCNNやBBCのような「西側」のメディアはプロパガンダを展開していた。 例えば、2012年2月にホムスのババ・アムルでパイプラインが爆破された際、CNNやガーディアン紙などは政府軍の航空機が爆撃したと伝えていたが、後に事実でないことが判明する。放送では煙の出ている映像が流されたのだが、その前、削除された部分には煙も航空機も写っていなかったのだ。政府軍機による空爆、飛行禁止空域の設定、NATO軍による空爆、というリビア方式を「西側」は考えていたのだろうが、実現しなかった。 「西側」のメディアに登場する「活動家」や「人権団体」の情報も正しくなかった。シリアで「政府軍による弾圧」を宣伝するスター的な存在だったシリア系イギリス人のダニー・デイエムなどは典型例。 欧米の有力メディア(例えばBBCやテレグラフ紙)に「証人」として登場、外国勢力の介入を求める発言を続けていたのだが、「シリア軍の攻撃」をダニーや仲間が演出する様子を移した部分も含めた映像が流出して嘘が発覚する。ところが、それでも「西側」メディアは反省していないようだ。 そして現在、ウクライナではリビアやシリアと同じ戦術が採用されている。例えば、2月10日に「Whisper Roar」の名義でYouTubeにアップロードされた映像「I Am a Ukrainian」では、ウクライナの蜂起は「自由」と「民主主義」のためだと若い女性が語る。1980年代、ロナルド・レーガン政権が始めた「プロジェクト・デモクラシー」を思い出させる内容で、ウクライナについて興味のない人には効果的だろう。 この映像を製作したのはベン・モーゼズという人物。1987年に公開された映画『グッドモーニング、ベトナム』の共同プロデューサーで、2012年には『A Whisper to a Roar』というドキュメンタリーを作っている。この作品はラリー・ダイアモンドなる人物に刺激されて製作したのだというが、このダイヤモンドはCFR(外交問題評議会)のメンバーで、CIAの工作資金を扱っているNED(ナショナル民主主義基金)やUSAID(米国国際開発庁)と関係の深い仕事をしているという。 勿論、ジョン・マケイン上院議員やビクトリア・ヌランド国務次官補の扇動、暗躍も忘れてはならないが、彼らだけで体制転覆は不可能。国務次官補だけの力でウクライナの体制を転覆させるために50億ドルもつぎ込むことはできない。背後は巨大だ。
2014.02.20
ウクライナの反政府派がピストルやライフルで銃撃している様子がインターネット上で流れている。警察や治安当局の施設が襲撃され、300丁とも1500丁とも言われるピストルのほか、ライフル、マシンガン、手榴弾などが盗まれているという。 シリアからウクライナへ入った戦闘員も武器を携帯している可能性が高く、「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」のようなネオ・ナチと連携し、「西側」やペルシャ湾岸の産油国がリビアやシリアで体制転覆を目的に実行した戦術が使われるかもしれない。そうなると、これから警官隊やデモ隊が狙撃されはじめる。 ジェームズ・ベーカー米国務長官とエドゥアルド・シュワルナゼ・ソ連外相との合意に反し、アメリカはNATOを東へ拡大させて先制核攻撃の態勢を整えてきた。EUの拡大も同時に進められたが、その結果、賃金が引き下げられ、ファシズム化の波が西へ広がっている。 ナチがドイツで実権を握る前からアメリカの巨大資本はファシストを支援、1932年の大統領選でニューディール政策を掲げるフランクリン・ルーズベルトが当選した直後には自国でファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画した。この事実は本ブログで何度も書いたことだ。 そうしたつながりが戦後のファシスト保護につながり、その逃走先になった南アメリカでは軍事独裁政権の誕生に協力している。そうした独裁体制がアメリカの巨大資本の傀儡だということは言うまでもない。 ユーゴスラビア、イラク、リビア、シリア、ウクライナと続いている体制転覆プロジェクトだが、1990年代からはネオコン(アメリカの親イスラエル派)が描いたプラン通りに実行されている。ウクライナではジョン・マケイン米上院議員が反政府派を扇動、ビクトリア・ヌランド国務次官補が最前線で指揮している。彼女の結婚した相手はネオコンの大物、ロバート・ケーガンだ。 このヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使と電話でウクライナの閣僚をどうするか話し合っている様子が今月、YouTubeで明らかにされた。EUの対応が生ぬるいと感じているらしいヌランドは「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という下品な言葉を口にしている。 また、今年1月、シリアからウクライナへ約350名が入ったと言われているが、イスラム教スンニ派の武装集団(アル・カイダ)を指揮しているのはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官。現在、中東/北アフリカでの体制転覆プロジェクトはイスラエルとサウジアラビアが手を組んでいるが、この同盟がウクライナでも機能している。 イスラエルが2001年頃からロシアの体制転覆を目指していたことは本ブログで何度か書いたこと。ボリス・エリツィンを使ってイスラエルや「西側」はロシアを一旦は手に入れたのだが、ウラジミール・プーチンによって、主権をロシア人が回復してしまった。ネオコン/イスラエルはそのロシアを奪還しようとしている。 ウクライナでは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」が展開され、反ロシア勢力が主導権を握ったが、同じようにグルジアでは2003年に「バラ革命」があり、反ロシア勢力が実権を握った。 この「バラ革命」を裏から操っていたのが、グルジア駐在アメリカ大使だったリチャード・マイルズ。ベルグラード駐在大使としてユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチを倒した後、2003年にグルジアへ移動している。つまり、体制転覆プロジェクトはユーゴスラビアから続いている。 グルジアの反ロシア政権は2008年に南オセチアを奇襲攻撃したが、その政権にはイスラエル系の閣僚ふたり、ダビト・ケゼラシビリ国防大臣と南オセチア問題で交渉を担当していたテムル・ヤコバシビリがいた。ふたりは流暢なヘブライ語を話すという。 それだけでなく、2001年からイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将が経営する「防衛の盾」が予備役の将校2名と数百名の元兵士を教官としてグルジアへ送り込んでいた。イスラエルは武器も提供、その中には無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどが含まれている。 イスラエルの専門家は2007年からグルジアの特殊部隊を訓練し、重火器、電子兵器、戦車などを供給する計画を立てていたとロシア軍の副参謀長を務めていたアナトリー・ノゴビチン将軍は非難、ロシア軍の情報機関GRUのアレキサンダー・シュリャクトゥロフ長官は、イスラエルのほか、NATOの「新メンバー」やウクライナも兵器を提供していると主張していた。 南オセチアを奇襲攻撃はイスラエルが作戦を立てたとも言われているが、ロシア軍の反撃で失敗する。ロシア軍は予想外に強く、正面から軍事衝突するのは得策でないことが明確になった。そして現在、ウクライナではリビアやシリアと同じ戦術が採用されている。 安倍晋三政権が従属している相手は、こうしたネオコン/好戦派だと見られ、バラク・オバマ政権に対してヌランドのような言葉を吐きかけている。
2014.02.20
ウクライナで反政府派が抗議活動を活発化、警官7名を含む20名以上が死亡したとも伝えられている。ソチ・オリンピックの期間中のためにロシアが動きにくいこと、反ロシアの活動を続けてきたロシア駐在アメリカ大使のマイケル・マクフォールがオリンピック後に辞任する意向を示していたこと、そして今年1月にシリアからウクライナへ反シリア政府軍の戦闘員約350名が入ったという情報が流れたことなどから、少なからぬ人がオリンピック期間中に何らかの動きがあるのではないかと推測していた。予想通りの展開になったと言えるだろう。 これまでもウクライナの反政府派は石や火炎瓶を投げるだけでなく、棍棒やナイフを手にし、ブルドーザーなどを持ち出して警官隊を挑発してきたが、今回はこれまで以上に激しい。 反政府派には200から300グリブナ(ウクライナの通貨単位/日本円で約2000円から3500円)で雇われた人もいるようだが、活動の中心は「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」のようなネオ・ナチ。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領によると、反政府派の中で武装蜂起が呼びかけられているという。シリアで「西側」から軍事訓練を受け、実際に政府軍と戦ってきた人びとがウクライナへ入っていることを考えると、非常に危険な状態だと言える。 こうした動きの背景には、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)が抱いている世界制覇の野望がある。ソ連の消滅を受け、彼らは1990年代の初めにアメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、新たなライバルの出現を許さないという姿勢を鮮明にしていた。日本でもこうした見方が感染、その影響は今でも残っている。 1992年にアメリカの国防総省で書かれたDPG(国防計画指針)の草案には、西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアがライバルに成長しないように全力を挙げ、アメリカ主導の新秩序を築き上げるというビジョンを描かれている。 すでに南西アジアは破壊と殺戮で疲弊している。アフガニスタンへアメリカ軍が先制攻撃したのに始まり、「アラブの春」で北アフリカから地中海沿岸の地域に戦乱が拡がっている。 東アジアでも日本の挑発で軍事的な緊張は高まり、ウクライナでの工作でロシアを含む旧ソ連圏だけでなく、EUも危険な状況になっている。自分たちもターゲットだということをEUの支配層は認識していなかったのだろうか? こうした世界制覇を実現するための暴力装置で中心的な役割を演じるのがNATO。この危険性を感じていたのか、1991年にフランスのフランソワ・ミッテラン大統領とドイツのヘルムート・コール首相は「ヨーロッパ軍」を創設し、NATOの影響力を弱めようとしていたが、こうした動きはアメリカやイギリスに潰された。 当然のことながら、フランスやドイツ以上にNATOを警戒していたのがソ連/ロシア。そこで、1990年に東西ドイツが統一される際、ジェームズ・ベーカー米国務長官はソ連の外務大臣だったエドゥアルド・シュワルナゼに対し、NATOを東へ拡大させることはないと約束したことが記録に残っている。その後、NATOが東へ拡大し、ロシアの隣国であるウクライナを奪おうとしているのが現在。次はロシアを狙っているのだろう。 ベーカー長官の約束を真に受けたのか、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領はドイツ統一に関して譲歩した。間抜けな話だ。ゴルバチョフがウラジミル・レーニンの「帝国主義論」を信じていなかったのかどうかは知らないが、資本主義国の支配層を信用しすぎていたことは確かだろう。無邪気なものだ。 ウクライナでの動きにも関係しているであろうマクフォールが大使としてモスクワに到着したのは2012年1月14日。その3日後にロシアの反プーチン/親アメリカ(親ウォール街)派のリーダーがアメリカ大使館を訪れる様子はYouTubeでも流された。 サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官がモスクワを秘密裏に訪問し、ウラジミル・プーチン大統領に対し、チェチェンのイスラム武装グループは彼の指揮下にあり、ソチで開かれる冬季オリンピックを守ると保証できる、つまりオリンピック会場を攻撃することが可能だと口にしたのは昨年7月31日のこと。そして今、約350名の戦闘員がシリアからウクライナへ移動している。 ロシアやイランと同じように、中国も欧米を拠点とする「国境なき巨大資本」が思い通りにできない国。中国を支配するために工作も強まってくるだろうが、その手先として動く可能性の高い人びとが新疆ウイグル自治区に住む少数民族。カフカス地方からの影響を受けているようだ。経済的に破綻寸前の欧米巨大資本としては、支配システムを維持するため、ロシア、中国、イランなどを制圧しようと必死だ。
2014.02.19
ベネズエラ政府は2月17日、アメリカの外交官3名に対し、48時間以内に出国するよう通告した。その外交官とは、副領事のブレアン・マリー・マックスカーとジェフリー・エルセン、そして二等書記官のクリストファー・リー・クラーク。 エリアス・ハウア外相によると、ここ数年間、アメリカの大使館員からワシントンに対し、ベネズエラの学生組織への支援を要請していると思われる電子メールが送られているとしている。そうした学生グループのリーダーは、ハーバード大学で学んだ経験のあるレオポルド・ロペスだという。アメリカ大使館は毛沢東主義者やトロツキストのセクトも利用しようとしてきた。 ターゲット国の体制を転覆させるプロジェクトで学生や労働組合を使うのはアメリカの常套手段。例えば、1965年にインドネシアのスカルノ政権を倒したクーデターでは、アメリカへ留学した学生が使われている。貴族階級出身の若者をカリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、コーネル大学などへ留学させて懐柔、体制転覆の中核部隊へと育てている。後に「バークレー・ボーイズ」とか「バークレー・マフィア」と呼ばれることになる学生たちだ。インドネシア国内の大学に通う学生は軍内部の親米派から軍事訓練を受けている。 1965年9月30日に小集団の若手将校が6名の将軍を誘拐のうえ殺害、ジャカルタの主要箇所を占拠し、自分たちはCIAの支援を受けている反乱軍の一部だと放送、スカルノから権力を奪取すると宣言する。この反乱を鎮圧したのが反スカルノ派のスハルト将軍が率いる部隊だ。スハルトたちはアメリカにとって邪魔な勢力の粛清を開始、30万人から100万人が殺されたと推計されている。このクーデターで「バークレー・ボーイズ」は重要な役割を果たした。 世界有数の産油国であるベネズエラをアメリカから自立した国にしようとしたウーゴ・チャベスが大統領に就任したのは1999年。それに対し、アメリカでは2001年にネオコンを後ろ盾とするジョージ・W・ブッシュが大統領になる。この年、ブッシュ政権はアフガニスタンへの先制攻撃を実施、イラク侵略に向かって走り始めるが、その一方でチャベス排除の工作も始めた。 そして2002年、クーデター計画が始動するのだが、その黒幕と指摘されているのはイラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテ。このクーデター計画は、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わった。 WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入し、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。 そのチャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡した。癌の原因が人為的なものかどうかは不明だが、生前、キューバのフィデル・カストロから暗殺に気をつけるよう、経験に基づいて警告されていたことは確か。さまざまな暗殺手段が存在するが、癌を引き起こすウイルスも使われていると言われている。
2014.02.18
安倍晋三首相が靖国神社を参拝して以来、欧米の政府やメディアの日本を見る目が厳しくなっている。この神社は日本がアジアを侵略した象徴的な存在であり、そこを参拝するということは侵略を肯定していると解釈されて当然。日本がアジアを侵略、その責任を連合国は極東国際軍事裁判(東京裁判)で問い、「民主的」な憲法に基づいて日本は再出発したということになっているのだが、そうした仕掛けを靖国神社参拝は破壊することになりかねない。 欧米諸国もこれまで侵略を続けてきた。ソ連が消滅してからだけでも「西側」はユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアなどを先制攻撃、ベネズエラやホンジュラスでクーデターを試みてベネズエラでは失敗したが、ホンジュラスでは成功した。最近ではウクライナで体制転覆プロジェクトを実行中だ。 こうした侵略行為の目的は巨大資本の利権を守り、拡大することにある。そうした利権にとって邪魔な存在は物理的に排除、つまり拘束したり虐殺したりするわけだが、その手先としてファシストやアル・カイダのような民主主義とは無縁の存在を使ってきた。 つまり、安倍政権がいかにファシスト的な体質であろうと、欧米支配層は驚かない。安倍政権を見る目が厳しいのは、この政権が反民主主義的、国粋主義的だからではなく、その愚かさによって欧米の支配システムを揺るがしかねないからだ。 昨年11月と12月に安倍首相が任命したNHKの経営委員のうち、小説家の百田尚樹は南京大虐殺を否定、東京裁判について、東京大空襲や原爆投下を「悲惨な大虐殺」を「ごまかすための裁判だった」と主張している。 東京裁判は日本が降伏し、その戦争責任を問い、「新生日本」をスタートさせるための儀式だった。日本の支配層は自分たちが降伏した意味を理解していなかったようだが、当時、連合国の中には昭和天皇の戦争責任を問うべきだとする声があった。天皇制が廃止される可能性も小さくはなかったのである。 そうした展開になることを恐れたのがアメリカの巨大資本。本ブログでは何度も書いていることだが、彼らは関東大震災のあった1923年から日本に大きな影響力を及ぼしはじめ、皇室とも緊密な関係を築いていた。この日米関係を戦後も維持するためには、天皇制を存続させる必要があり、早い段階で天皇制の維持を盛り込んだ「民主的憲法」を成立させ、戦争責任をとらせたという形を作りたかったのである。 つまり、百田の主張は単に事実を無視しているだけでなく、そうした天皇制維持の仕掛けを否定するもので、天皇をはじめとする「皇族」の戦争責任を問う議論を蒸し返し、アメリカ支配層が日本を支配するシステムを揺るがしかねない。 やはりNHKの経営委員に任命された埼玉大学名誉教授の長谷川三千子は「大悲会」の会長だった野村秋介に対する追悼文の中で、野村の自殺によって「わが国の今上陛下は(『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神となられたのである」としている。「人間宣言」は天皇の戦争責任を問う声を封印し、天皇制を維持する仕組みのひとつだった。 NHKの新会長、籾井勝人は「従軍慰安婦」について「どこでもあったと思いますね、僕は」と根拠を示さずに断言、だから日本だけが非難されるのはおかしいと主張、韓国を恐喝犯であるかのように表現して周辺国を挑発した。これも、昭和天皇をはじめとする日本人の戦争責任を問う声を高めることになりかねない発言だ。 ウクライナではネオ・ナチの「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」を使い、欧米の支配層、特にネオコン(アメリカの親イスラエル派)は内乱に近い状況を作ろうとしているが、ナチを連想させる党名や党旗を変更して「本音」を隠している。そうすることで欧米の支援を得ようとしているわけだ。 ところが日本のファシスト、つまり安倍晋三の一派は「本音」、イデオロギーをあからさまに主張している。これでは、手先として使い物にならないとアメリカの支配層は考え始めているだろう。特定秘密保護法、国家安全保障基本法、TPP、集団的自衛権などの実現、いわば汚い仕事を仕上げさせたうえで処分するつもりではないだろうか?
2014.02.17
シリアの体制転覆を目指す動きは続いている。アメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO諸国、またサウジアラビアやカタールといったペルシャ湾岸の産油国は反シリア政府軍を編成、資金や武器を提供し、戦闘員を雇って軍事訓練を続けてきた。トルコ、サウジアラビア、カタールなどが送り込んでいる傭兵はアル・カイダと呼ばれている。 そのサウジアラビアは最近、ロシア製の対戦車ミサイルや中国製の携帯防空システムを反政府軍に供給、現在はヨルダンやトルコの兵器庫にあるという。NATO軍の直接的な軍事介入は実行されていないが、傭兵を使った戦闘は続けられている。 NATOの直接的な軍事介入を正当化するために作られたシナリオが「政府軍による化学兵器の使用」という話だった。ダマスカス郊外のゴータで8月21日未明に政府軍が化学兵器のサリンを使ったという情報が流されて軍事攻撃は時間の問題だとされたのだが、流れはすぐに変わる。 まず、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使は文書と衛星写真に基づき、反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを国連の臨時会合で示したという。この話が伝えられた後、シリア攻撃を主張する声は急速に小さくなる。 8月29日には、サウジアラビアが反政府軍に化学兵器を提供したと報道され、その直後に筆者のひとりが記事を否定するのだが、掲載したメディアの編集長は原稿を持ち込んだのはその記者であり、ふたりの遣り取りは記録に残っていると主張、記者からはそれ以上の反論はなかったようだ。 何らかの事情でアメリカがシリアへの直接的な攻撃を中止した後、10月になって「ロシア外交筋」から、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れてくる。また、アフガニスタンの反政府軍支配地域で「第三国」がアル・ヌスラなどシリアの反政府軍に対し、化学兵器の使い方を訓練しているとする報告があるとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語った。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュも化学兵器と反シリア政府軍を結びつけるレポートを書いている。反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるという趣旨の記事だ。 さらに、国連で兵器査察官を務めた経験のあるリチャード・ロイド、そしてマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も、シリア政府軍が化学兵器を発射したとするアメリカ政府の主張は、ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないとする報告を明らかにしている。 シリアへの直接的な攻撃を実行しなかったアメリカのバラク・オバマ米大統領に対し、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)は怒っている。何しろ、彼らは遅くとも1991年の段階でイランやイラクと伴にシリアを殲滅するとしていた。 イスラエルと緊密な関係にあったイランのパーレビ体制が倒れた後、イスラエルやネオコンはイラクのサダム・フセインを倒して親イスラエル体制を樹立、ヨルダン、イラク、トルコという親イスラエル国帯を作り、イランとシリアを分断させようとしている。 そうした中、ペルシャ湾岸の産油国、クウェートはイラクを挑発しはじめる。両国の国境付近にある油田でクウェートは盗掘、OPEC(石油輸出国機構)で決められた価格より安い値段で石油を販売していた可能性が高い。両国の関係は緊張し、イラン・イラク戦争が停戦になった1988年の段階でアメリカは軍事衝突を予想していた。 にもかかわらず、アメリカは緊張緩和を図ろうとしていない。例えば、1990年に国務省はクウェートを守る義務はないと主張、イラク駐在大使はアラブ諸国間の問題には口を出さないとイラク側に伝えている。クウェートなどペルシャ湾岸の産油国はイラクの軍事力が増強されたことを懸念、アメリカに相談していたとも言われている。 イラクがクウェートを攻める前、PLOのヤセル・アラファト議長はイラク政府に対し、アメリカ政府の内部に不審な動きがあるので挑発に乗らないように警告、その一方でクウェートに対して緊張感亜のための提案をするが、クウェート側は聞く耳を持たなかったと言われている。 詳しい話は割愛するが、ともかく1990年8月にイラクはクウェートへ軍事侵攻、91年1月にアメリカ軍はいくつかの国を引き連れてイラクを攻撃する。イスラエル/ネオコンはアメリカ軍がそのままフセインを排除すると期待していたのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領はその前に停戦してしまう。 その決定に起こったネオコンのひとりがポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)で、その直後にシリア、イラン、イラクを殲滅すると語っていたという。これは1997年から2000年まで欧州連合軍の最高司令官を務めたウェズリー・クラーク大将の話だ。 そうした経緯を経て始まったシリア攻撃であり、バシャール・アル・アサド体制を転覆させようというプロジェクト。ネオコンは執拗だ。そのパートナーがサウジアラビアなど湾岸の産油国で、武器の提供だけでなく、傭兵を送り込み続けている。21世紀になり、地中海の東側、エジプトからギリシャにかけての地域に膨大な量の天然ガスが存在することが判明し、この地域を侵略したいという「西側」や湾岸産油国の欲望は強くなった。勿論、その中にイスラエルも含まれている。 最近では、そうした中にカフカスや欧米諸国からも戦闘員としてシリアへ入っている。ヨーロッパ全体では1800名程度、アメリカからも50名以上がシリアへ渡り、戦闘訓練を受け、実際に戦闘を経験しているようだ。 シリア攻撃に積極的だったフランスのフランソワ・オランド大統領は自国から約700名が戦闘員としてシリアへ向かったと語っているが、対テロ判事のマルク・トレビディクによると約2000名だという。この2000名という数字が正しいなら、ヨーロッパ全域からシリアへ渡った人数もかなり増える。 また、イギリス検察庁で対テロリズム部門を率いているスー・ヘミングは、戦闘を目的にシリアへ渡った場合、帰国したなら終身刑を求めると発言しているが、そのイギリスから「人道支援」だとしてシリア入りした若者は自爆攻撃を実行している。 欧米から中東/北アフリカへ渡って軍事訓練を受け、戦闘に参加した人びとも出身国へ戻るときが来る。そうした人びとを欧米の支配層はコントロール、例えばイタリアで実行されたような「緊張戦略」に使うのか、あるいはコントロール不能になるのか、いずれにしろ血の臭いがする。
2014.02.17
アメリカの親イスラエル派、一般に「ネオコン」と呼ばれている勢力はウクライナでも体制を乗っ取ろうとしているわけだが、その手先として最前線で活動中のビクトリア・ヌランド国務次官補は昨年12月13日、工作資金として50億ドルを投入していることを明らかにしている。ウクライナの体制を転覆させるために50億ドル、ざっと5000億円を使っていると公言しているのだ。 ジョン・マケイン上院議員と同じように、ヌランドはウクライナで公然と反ロシア勢力を支援してきた。こうした工作の担当として国務次官補に任命されたとも言える。何しろ彼女が結婚した相手はネオコンの大物、ロバート・ケーガンだ。 このヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使と電話で話し合っている内容が今月、YouTubeで明らかにされた。その中でヌランドの口から「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という下品な言葉が飛び出し、話題になったが、問題は別のところにある。ウクライナの閣僚をどうするか検討していたのだ。 また、オランダのロバート・セリー元駐ウクライナ大使が国連特使としてキエフへ派遣されるとジェフリー・フェルトマン国連事務次長から聞いたともヌランドは話している。その決定をヌランドは歓迎、そして「EUなんかくそくらえ」という表現が出てくるわけだ。EUより国連の方がネオコンの意向に沿った動きをしているということなのだろう。確かに、シリアなどでもそうだった。 また、欧州対外行動庁(EEAS)のヘルガ・シュミット事務次長と駐ウクライナEU大使のヤン・トムビンスキーとの会話もアップロードされ、その中でシュミット事務次長はアメリカからEUの対応が生ぬるいと言われていることを明らかにしている。 EUを生ぬるいと批判しているネオコンが何をしているかというと、ファシストを使った暴力行為だ。ネオ・ナチの「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」は反政府行動で棍棒、ナイフ、火焔瓶を手にし、ブルドーザーを持ち出してウクライナ政府を挑発、警官隊と衝突してきた。抗議行動を撮影した映像や写真の中に3本指の旗を見つけたなら、それはスボボダのものだ。ちなみにスボボダの旧党名は「ウクライナ社会ナショナル党」であり、ナチは「ナショナル社会主義党」。 ウクライナのナショナリストはOUNという団体の流れをくんでいる。この団体は1929年に創設され、イギリスの対外情報機関MI6と結びついた後、1938年頃にナチと手を組み、1941年にドイツ軍がウクライナを占領すると「新秩序」の障害になると考えられていた人々、つまりユダヤ人、ロシア人、知識人、コミュニストなどの虐殺していった。このときにOUNは勝手に独立を宣言、ドイツとの関係が悪化するが、1944年にソ連軍と戦うため、ドイツ軍へ合流している。 戦後、OUNの幹部は再びMI6に結びつく。OUNのリーダーだったステファン・バンデラが1948年にMI6に雇われているが、その2年前、1946年にバンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコはMI6のエージェントになり、ABN(反ボルシェビキ国家連合)の議長に就任している。この団体は1966年にAPACL(アジア人民反共連盟/後のアジア太平洋反共連盟)と合体し、WACL(世界反共連盟)になった。 反政府行動ではスボボダのほか、アフガニスタン、チェチェン、グルジアといったカフカス地方での戦闘を経験したグループも参加しているようだが、そうした中にはシリアで反政府軍に加わっていた人もいるようだ。今年1月、シリアからウクライナへ約350名が入ったという情報もあり、オリンピック期間中に何らかの動きがあるのではないかと考えている人もいる。
2014.02.16
昨年11月に大使として日本へ赴任したキャロライン・ケネディにNHKはインタビューを申し込んでいたが、今年2月になって断りの回答があったようだ。大使本人やワシントンの意向だという。NHKを通じてメッセージを伝えることで得られるメリットより、番組に出ることによるデメリットの方が大きいということだろう。 こうした判断をした理由は、言うまでもなく、安倍晋三首相が任命した経営委員や、その新委員を含む経営委員会によって選任されたNHK会長の発言にある。 そうした新委員のひとりで昨年11月に任命された小説家の百田尚樹は、極東国際軍事裁判(東京裁判)について、東京大空襲や原爆投下を「悲惨な大虐殺」を「ごまかすための裁判だった」と主張しただけでなく、南京大虐殺も否定したという。事実を見ず、妄想の世界へ入り込んでいる。 また、12月に任命された埼玉大学名誉教授の長谷川三千子は「大悲会」の会長だった野村秋介に対する追悼文の中で、「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」としたうえ、野村氏の自殺によって「わが国の今上陛下は(『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神となられたのである」としている。完全にカルトの領域へ入っている。 NHKの新会長、籾井勝人は「従軍慰安婦」について「どこでもあったと思いますね、僕は」と根拠を示さずに断言、だから日本だけが非難されるのはおかしいと主張した。しかも、韓国を恐喝犯であるかのように表現している。 前にも書いたことだが、東京裁判に問題があることは確かだが、アメリカの支配層はこの儀式によって日本の戦争責任を問う声を封印し、支配構造(天皇制官僚国家)を維持しようとしたのだ。身代わりを立て、昭和天皇や朝香宮鳩彦(昭和天皇の叔父)たちを助けたということ。この儀式を否定するということは、戦争責任の問題を蒸し返すことに通じ、昭和天皇や朝香宮鳩彦の問題も議論され、靖国神社を存続させた理由も問われる可能性が出てくる。 靖国神社が日本の東アジア侵略を象徴する存在だということは否定できない。日本が降伏し、占領されていた時代、GHQ/SCAPの内部では将校の多数が靖国神社の焼却を主張していたという。そうした意見を封じ込めたのがイエズス会(カトリックの一派)のブルーノ・ビッテル(ビッター)やメリノール会(同)のパトリック・J・バーンだった。ビッテルはCIAとつながっていた可能性が強く、「闇ドル」を扱っていた。 東京裁判を否定するということは、その前提になったポツダム宣言の受諾、つまり日本の降伏を否定することになり、戦後日本を否定することにもつながる。ポツダム宣言の前からやり直すということは、降伏するのか戦争を続行するのかというところから再開することになり、昭和天皇や朝香宮鳩彦の戦争責任も問われ、靖国神社の存続も議論されることになるだろう。勿論、国連からは追放だ。 新しい会長や経営委員の発言に問題があることは確かだが、それがなくてもNHKの報道は信頼されなくなっていた。東電福島第一原発の事故で偽情報を流して批判されたが、それだけでなく、「特定秘密保護法」、「国家安全保障基本法案」、そして国から政策決定権を奪って「国境なき巨大資本」が支配するシステムを作るTPPについても、まともに報道していない。つまり、情報源としての価値はゼロに近い。 それ以上にひどいのが国際情勢に関する報道。リビアやシリアなど中東/北アフリカの情勢に関する「西側」の報道は「西側」やペルシャ湾岸諸国のプロパガンダで、そうしたプロパガンダの中からさらに自己検閲で選んだ話を日本のマスコミは流してきた。「西側」や湾岸諸国にとって都合の悪い話は伝えない。 「国境なき記者団」なるNGOが発表した2014年の「報道の自由度インデックス」によると、イギリスは33位、アメリカが46位、そして日本は59位なのだという。シリアへの軍事侵略を正当化するために明らかな偽情報を伝えていたイギリスとアメリカがこれほど上位にランクされているとは驚きだ。日本において「ジャーナリズム」は絶滅に近い状態なわけで、本来ならランキング外だろう。 シリアだけでなく、ラテン・アメリカ、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、イラン、リビア・・・イギリスやアメリカなど「西側」のメディアは巨大資本のためにプロパガンダを続け、巨大資本にとって都合の悪い情報は封印している。イスラエルやサウジアラビアが人権を無視した政策、虐殺行為、テロ組織支援などについても触れようとしない。そうした状態だからこそ、WikiLeaksやエドワード・スノーデンのような存在に意味があるわけだ。 このランキングを発表した「国境なき記者団」は1985年にフランスで設立され、「人権」や「言論の自由」を掲げている。活動資金の約4分の1は個人からの寄付なのだが、中身を見ると興味深いものがある。投機家ジョージ・ソロスのソロス基金、反カストロの姿勢が鮮明なCFC(自由キューバ・センター)、CIA(中央情報局)の秘密工作では常連のNED(ナショナル民主主義基金)が含まれているのだ。 国境なき記者団の創設者、ロベ−ル・メナールがCFCから資金を引っ張るときに交渉した相手はオットー・ライヒ。ロナルド・レーガン時代にはニカラグアの反革命ゲリラ「コントラ」を支援する秘密工作に深く関与していた人物で、ラテン・アメリカの軍人を訓練し、アメリカ巨大資本の傀儡である軍事独裁政権を作り上げてきたWHINSEC(治安協力西半球訓練所/かつてのSOA)にも関係している。 WHINSEC/SOAの出身者は帰国後、民主的に成立した政権を軍事クーデターで倒したり、巨大資本のカネ儲けにとって邪魔な人びとを虐殺してきた。ライヒは2002年にベネズエラ政府をクーデターで倒そうとしたチームの一員としてもオットーの名前は挙がっている。そのベネズエラのランキングは第116位なのだという。ある意味、納得できる。「国境なき記者団」とは、そういう団体だということだ。
2014.02.15
イスラエルに対するボイコットが世界的に広がっている。イスラエル政府はヨルダン川西岸へ違法移住を推進、ユダヤ系居住者は50万人を超しているという。そうした政策への批判が大きな原因だ。 移住者の居住地区は120を超しているようだが、パレスチナ人の土地を浸食、移住者を守る形で巨大な分離壁(堀、有刺鉄線、電気フェンス、幅60~100メートルの警備道路、コンクリート壁で構成)を建設、アラブ系住民の生活空間を分断している。そのように設計しているのだという。 かつて、「西側」の国々ではイスラエルが「弱者」と位置づけられ、ナチに弾圧されたユダヤ人が安心して住むことにできる場所であり、周辺は「強者」のアラブ諸国に囲まれて恐怖におびえているように宣伝されていた。つまり、イスラエルでは自分たちが旧約聖書に登場する青年ダビデ、アラブ人は巨人のゴリアテだとされたわけである。 勿論、実際は違った。まず強力な資金力。ユダヤ人のパレスチナ移住計画は19世紀の後半にスタートしているが、その資金源がフランスを拠点としていたエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドだったことは有名。この人物の孫、エドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルドはイスラエルの核兵器開発に対する最大の資金提供者だ。 1919年にはイギリスのアーサー・バルフォア外相がウォルター・ロスチャイルドに宛てた書簡(実際に書いたのはアルフレッド・ミルナー)の中で、「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と書かれている。 こうしたパレスチナへ入り込んだシオニストは1948年4月4日に「ダーレット作戦」を発動、9日午前4時半にデイル・ヤシン村を襲撃した。この村が選ばれたのは、仕事の関係で男がいなくなる時間があるからで、実際、そうした時間に襲っている。 そのとき、村にいた人の大半は女性と子どもで、しかも早朝のため、寝ていた。そうした人びとを惨殺、女性は殺される前にレイプされている。襲撃の直後に村へ入った国際赤十字の人間によると、殺されたのは254名で、そのうち女性は145名で35名は妊娠していた。イスラエルの建国が宣言されたのは5月14日だ。 そうした経緯があったのだが、「国際社会」はイスラエルの建国を認める。ドワイト・アイゼンハワーやジョン・F・ケネディなどはイスラエルに批判的だったが、親イスラエル派のリンドン・ジョンソンが大統領になり、ジェラルド・フォードの時代に親イスラエル派のネオコンがキリスト教原理主義者と手を組んで台頭、イスラエルのアメリカに対する影響力は強まった。そうした影響力が最も強まったのはジョージ・W・ブッシュ時代、2001年9月11日の出来事が切っ掛けだった。 イスラエル/シオニストは資金力があり、建国前から議会には大きな力を持っていた。メディアや映画界との関係も強い。その代表格がハリウッドの大物プロデューサーだったアーノン・ミルシャン。イスラエルの情報機関LAKAM(科学情報連絡局)の仕事をしていたようだ。1985年にジョナサン・ジェイ・ポラードという男がイスラエルのスパイとしてアメリカで逮捕され、現在もアメリカで服役中だが、このポラードを動かしていたのがLAKAM。 イスラエルには電子情報機関もある。「8200部隊」だが、そのネットワークは「民間企業」にも及んでいる。この部隊の出身者が会社を興し、アメリカなどに深く食い込んでいるのだが、この会社は「8200部隊」の指揮下にある可能性が高い。イスラエルはハイテク産業が盛んで・・・などと脳天気なことを言っている場合ではない。 ところで、ミルシャンがプロデュースした作品は多く、例えば「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」、「未来世紀ブラジル」、「ローズ家の戦争」、「プリティ・ウーマン」、「JFK」、「沈黙の艦隊」、「依頼人」、「コピーキャット」、「評決のとき」、「交渉人」、「ザ・センチネル」などが含まれている。 仕事の関係で、ミルシャンは多くの映画監督や俳優と親しくしていたが、そうした人びとが情報活動に協力していたかどうかは不明。ただ、映画監督のシドニー・ポラックはミルシャンのパートナーとして多くの工作に協力したという。ポラックが監督した作品も多く、「ザ・ヤクザ」、「コンドル」、「トッツィー」、「愛と哀しみの果て」、「ハバナ」、「ザ・ファーム」などがある。 こうしたコネクション、あるいは「ホロコースト」という強力な盾もあり、イスラエルは守れていた。この防御システムが揺らぎ始めるのは1982年のこと。1月にアリエル・シャロン国防相がベイルートを極秘訪問、キリスト教勢力とイスラエルが軍事侵攻した際のことについて話し合っている。その直後、ペルシャ湾岸産油国の国防相とも秘密裏に会い、石油を武器として使わないことで合意したという。 6月には、PLOのヤセル・アラファト議長と対立していたアブ・ニダル派がイギリス駐在のイスラエル大使暗殺を試みている。実際はアブ・ニダル派に潜り込んでいたイスラエルのエージェントが仕掛けたものだった。この事件を口実にしてイスラエルはレバノンへ軍事侵攻、1万数千人の市民を殺したという。 8月がにイスラエル軍は撤退、その直後にPLOもレバノンを離れる。その際、アメリカはパレスチナ難民の安全を保証していたが、PLOの撤退が完了した直後、9月14日にファランジスト党のバシール・ジェマイエル党首が爆殺され、その報復だとしてファランジスト党のメンバーがイスラエル軍の支援を受けながらサブラとシャティーラの難民キャンプを制圧、数百人、あるいは3000人以上の難民が殺されたと言われている。 その結果、イスラエルの責任を問う声が世界的に高まり、親イスラエル派だったイギリス労働党も例外ではなかった。そうした中、イスラエルの資金を使って影響力を強め、労働党の党首になったのがトニー・ブレア。彼の率いる党は「ニュー・レーバー」と呼ばれた。このニュー・レーバーを支援した団体の中にBAPがある。アメリカとイギリスとの関係強化を目的とした団体で、メディアの人間が多く参加していたことが特徴。そのため、メディアはブレアに対して寛容だった。 メディアや映画界に張り巡らせたネットワークを使い、政党を乗っ取ってイスラエルへの批判を押さえ込もうとしたわけだが、ジャボチンスキー派の「大イスラエル構想」はアパルトヘイト政策を伴い、ファシスト的な戦術が使われ、パレスチナ人の生存権を完全に否定している。こうしたイスラエルを批判する声は、親イスラエル派の工作でも抑えきれなくなった。 シオニストは巻き返しを図るため、ユダヤ人社会に大きな影響力を持つJCRC(ユダヤ共同体関係会議)は、イスラエル・ボイコットを行っている団体への資金を絶つためのキャンペーンを始めた。イスラエル政府も警戒を強めている。それだけ孤立しはじめているということだ。
2014.02.14
アメリカ海軍の空母ロナルド・レーガンに水兵として乗船していた79名が東京電力を相手に集団訴訟を起こしたようだ。要求額は10億ドル。東電は事故で破壊された原子炉から放出された放射性物質に関する正しい情報をアメリカ政府に提供せず、結果として乗組員が深刻な被曝を強いられたとしている。元乗組員によると、被曝後に甲状腺癌、睾丸癌、白血病、脳腫瘍といった症状が出ている。 東電がアメリカ政府にも正しい情報を提供しなかったと原告は主張しているわけだが、被爆直後に将校たちだけにはヨウ素剤が配られていたようで、高濃度の放射性物質に直撃された/ることを上の階級の人びとは知っていた可能性が高い。それに対し、水兵たちはヨウ素剤をもらえず、検査のために血液や尿のサンプルが採取されることもなかった。 その当時、日本にいて被爆した可能性のある米軍兵士や軍属、そしてその家族は7万人近いという。そうした人びとに対して予定されていた連邦政府の医療記録が中止されていることも、疑惑を深める一因になっている。情報を隠そうとしている。 第2次世界大戦後、1960年代の初めまでアメリカは核実験を繰り返し、多くの兵士を使い、事実上の人体事件が行われていた。福島沖で被曝した水兵にアメリカ軍が冷淡な態度を示すのも不思議ではない。 アメリカ軍以上に被曝の実態を隠そうとしているのは、勿論、日米の核利権集団だろう。ロナルド・レーガン政権は増殖炉計画に資金を投入するのだが、1987年に議会は予算を打ち切り、計画は凍結されてしまう。 そこで目をつけたのが日本。この計画で獲得した技術を日本の電力会社へ格安の値段で提供し、計画を継続しようとする。日本の電力会社が増殖炉計画のスポンサーになるということだ。 日本とアメリカは協定を結び、アメリカの高速増殖炉と再処理技術を日本へ移転し、アメリカから核物質を無制限に輸入し、再処理し、取り出したプルトニウムを他国へ再輸出する権利を日本に与えた。日本側が最初に要求した高性能のプルトニウム分離装置はリサイクル機器試験施設(RETF)へ送られた。 しかし、日本でも増殖炉計画は暗礁に乗り上げる。1995年に高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウム火災事故、97年には東海村の動燃(現在の日本原子力開発機構)東海再処理施設で火災爆発事故、また99年には高速増殖炉の実験炉である「常陽」の核燃料を製造していたJCOで臨界事故と立て続けに事故が起こったのである。 それでも高速増殖炉計画に執着する日本だが、一方でイギリスやフランスからプルトニウムを購入している。しかも、それらは兵器級だという。こうして入手したプルトニウムも含め、日本は70トンの兵器級プルトニウムを保有しているとジャーナリストのジョセフ・トレントは主張している。 1960年代からCIAなどアメリカの情報機関は日本の核兵器開発を監視、国防総省や原子力規制委員会も日本の動きに目を光らせてきた。どの段階にあるかは明確でないが、日本が核兵器を開発していることは公然の秘密であり、アメリカの核利権集団が結びついている。 こうした事情もあり、空母ロナルド・レーガンの元乗組員たちの集団訴訟がどうなるかは不明だが、安倍晋三政権の暴走を止めるために裁判が始まるかもしれない。もし実際に裁判が始まった場合、日本での被曝の深刻さが明らかになるだけでなく、核兵器開発に関する情報が浮上する可能性もあるだろう。
2014.02.13
東京大空襲や原爆投下のような「悲惨な大虐殺」をごまかすための行われたのが極東国際軍事裁判(東京裁判)だと主張、南京大虐殺も否定している小説家の百田尚樹。昨年11月、安倍晋三首相からNHKの経営委員に任命されている。この百田が東京都知事選で支援していたのが田母神俊雄元航空幕僚長。かつて、航空自衛隊のトップだった人物だ。 この田母神元航空幕僚長、「我が国は50年も原発を運転していて、運転中の原発による放射能事故で死んだ人など一人もいない」と主張している。通常運転での被曝、あるいは高速増殖実験炉「常陽」向けの燃料を加工していたJCOでの事故で死んだ人がいることを意識、そうした事例を排除する道を作っているつもりかもしれない。 田母神の「放射能安全論」は、外部被曝と内部被曝の区別をせず、自分に都合の良い「専門家」の意見を垂れ流しているだけ。東電福島第一原発が事故を起こした直後、マスコミに出てきた「専門家」が宣伝していた陳腐なもので、最近は聞かなくなった代物だ。 放射線被曝によって死者が出ていることを知った上での主張だとするならば、この人物は「原発さえあれば後のことは知ったことではない」と思っているのだろう。こうした人物が「愛国者」でないことは明白だ。 すでに国外から放射線の影響を疑わせる現象が報告され、事故当時に福島沖で被曝した空母ロナルド・レーガンの乗組員の間で甲状腺癌、睾丸癌、白血病、脳腫瘍といった症状が出ているともいう。この件では70名以上が裁判を起こそうとしている。田母神から見ると、こうしたアメリカの軍人は信用できないということになるのだろう。 勿論、日本でも放射線の影響が出ている可能性が高い。原発で作業している少なからぬ人が死亡しているという噂はともかく、福島県で甲状腺癌が増えていることは無視できない。事故当時に18歳以下だった子どもの甲状腺検査を実施中だが、現段階で、25万4000人のうち75名が甲状腺癌、あるいは癌の疑いがあると診断されたという。通常、調査対象の年齢で甲状腺癌になる確率は100万人に1〜9名と言われているので、桁違いに多い。 こうした結果に対し、県民の被曝の健康影響の調査のあり方を検討する委員会の星北斗座長は、被曝の影響とは考えにくいと言い張っている。チェルノブイリ原発の事故で子どもの甲状腺癌が増えたのは事故から4、5年後からだという。が、この説明に説得力がないことは本人たちも自覚しているようで、福島県立医大の鈴木真一教授は遺伝子異変、あるいは道の異変がないかを探すと発言している。 そのチェルノブイリ原発の事故でもソ連当局だけでなく、IAEAの調査団も甲状腺癌と原発事故との因果関係を当初は否定していた。「広島で小児甲状腺癌が出るまでに十数年かかっているのだから、こんなに早くチェルノブイリ被災地で多発するはずがない。」ということだったようだ。数字として甲状腺癌が増加していることについては「超音波診断の精度があがったから発見数が増えただけだ」と主張していたと報告されている。日本以外にも「核エネルギー利権」に結びついた「専門家」は少なくない。 田母神は航空幕僚長だった人物である。自衛隊を配下に従えているアメリカ軍の歴史を振り返ると、1950年代半ばから60年代半ばにソ連への核先制攻撃を計画していた勢力が存在する。核弾頭の運搬手段、つまり戦略爆撃機やICBMでアメリカが圧倒、ソ連から反撃されないと判断していたようだが、その結果がソ連によるキューバへのミサイル持ち込みだったのではないだろうか。 現在、アメリカの内部、例えばネオコン(親イスラエル派)はNATOを東へ拡大、ミサイルを配備してロシアを刺激している。1990年に東西ドイツが統一される際、当時の国務長官、ジェームズ・ベーカーは東へNATOを拡大することはないとソ連に約束しているのだが、この約束が守られていないとロシアは反発している。アメリカは「唯一の超大国」としての立場を取り戻すため、ロシアや中国を核攻撃できる態勢を整えているのではないかとロシアは疑っている。 本ブログでは何度も書いたことだが、日本も核兵器を開発している可能性はきわめて高い。そうした状況の中、田母神元航空幕僚長は放射線は安全だと発言している。核兵器で問題なのは破壊であり、放射性物質は問題でないと言っているに等しい。もし、田母神が本当に「放射能安全論」を信じているのだとすれば、似た考え方の自衛隊幹部が少なくない可能性が高く、由々しき事態だ。
2014.02.13
東京都知事選の結果について生活の党の小沢一郎代表は記者会見で「態勢を整えれば絶対勝てた選挙、残念に思う」と語った。宇都宮健児と細川護煕の得票数を合わせれば舛添要一の得票数に匹敵するということだ。 確かに、数字を見る限りはその通りなのだが、ふたりは基本政策が本質的に違うわけで、ひとりに絞ることには無理がある。小沢は細川を支持していたようなので、宇都宮に降りてもらいたかったということなのだろうが、宇都宮の支持者は納得しないだろう。実際、ひとりには絞れなかった。 宇都宮の支持勢力には共産党も含まれているが、この政党は東京地検特捜部の小沢攻撃を利用し、自分たちも小沢を攻撃していた。これも候補者選びに影響したのかもしれない。 小沢一郎の資金管理団体である「陸山会」に絡んで小沢が攻撃されたのは、2006年が最初のようだ。週刊現代がこの年の6月3日号で「小沢一郎の“隠し資産6億円超”を暴く」という記事を掲載、2009年11月には「市民団体」が陸山会の04年における土地購入で政治収支報告書に虚偽記載しているとして小沢の秘書3名を告発、翌年の1月に秘書は逮捕されている。また「別の市民団体」が小沢本人を政治資金規正法違反容疑で告発、2月に秘書3人が起訴された。結局、検察が「事実に反する内容の捜査報告書を作成」するなど不適切な取り調べがあったことが判明、この告発は事実上の冤罪だということが明確になっている。 そうした経緯もあり、共産党が支持する宇都宮を小沢が支持することは難しかったのかもしれない。宇都宮を囲い込みたい政党や団体にしてみると、自分たちのムラ以外の住民が入ってくることは嫌だっただろう。選挙の勝利よりも囲い込みを優先したいという心理が働いた可能性もある。 それはともかく、日本やアメリカの支配層にとって最も嫌な候補者は宇都宮。舛添を確実に当選させるために何らかの手を打とうとしても不思議ではない。そうした環境の中、「脱原発」を掲げる細川が立候補したのは願ってもないこと。反貧困はともかく、脱原発を支持する人たちは分断される。もし、細川で統一されれば、経済政策では問題がない。原発問題の場合、都知事の権限は限られているので何とかなる。万一の場合、スキャンダルで攻撃することも可能だ。
2014.02.12
生命に有害な影響を及ぼすことを示す研究も明らかにされているGMO(遺伝子組み換え作物)。これまでEUはGMOの栽培を厳しく規制してきたのだが、欧州委員会(EUのいわば政府)はEU加盟国多数派の意向を無視、デュポンとダウ・ケミカルが開発した遺伝子組み換えトウモロコシ「パイオニア1507」を認可する方向へ動いているという。 EU総務理事会でGMOの認可に反対したのは19カ国。つまり、オーストリア、ブルガリア、クロアチア、キプロス、デンマーク、フランス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア。賛成したのは5カ国で、エストニア、フィンランド、スペイン、スウェーデン、イギリス。そしてベルギー、チェコ、ドイツ、ポーランドの4カ国は棄権した。 賛成と反対を国の数で比較すれば賛成派が圧倒しているが、EUの投票ルールに従うと認可を拒否するには足りないのだという。EUにおいて民主主義は機能していない。 GMOに関し、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権からの強い働きかけがあることは、WikiLeaksが公表した外交文書でも明らかにされている。2007年、バイオテクノロジーの巨人モンサント社が生産した遺伝子組み換えトウモロコシの栽培禁止をフランスが決めたことを駐仏アメリカ大使だったクレイグ・ステイプルトンは憂慮、報復リストを作るべきだと進言している。このステイプルトンとブッシュ・ジュニアはテキサス・レンジャーズの共同所有者として名を連ねていたことがある。それほど親しい関係ということだ。 遺伝子組み換え作物の動物に対する影響に関する研究には、例えば、フランスのカーン大学でジル-エリック・セラリーニ教授が率いるチームが行ったものがある。2年間にわたり、200匹のラットの集団に対して実施したもので、その結果は2012年9月に「フーズ・アンド・ケミカル・トクシコロジー」(食品と化学的毒物学)で発表された。 それによると、モンサントが作り出した「NK603」系統のトウモロコシをネズミに与え、寿命に近い24カ月目の時点で調べると、腫瘍の発生率が対照群では30%だったのに対し、実験群のメスでは50から80%に大きな腫瘍が現れたうえ、早死にの傾向も見られたという。またオスでは肝臓や皮膚に腫瘍が発生し、また消化管での異常もみられたとされている。 2009年にEFSA(欧州食品安全機関)はモンサントのNK603ラウンドアップ耐性トウモロコシの認可を勧告していたが、その決定はモンサントが提供した情報やスペインの所轄官庁などの報告に依存していた。EFSAが承認を決める根拠にしたモンサントのラット試験は90日間で打ち切られたことになっているが、カーン大学の研究では、腫瘍の多くが18カ月をすぎてから発見されている。スペインの報告もモンサント社が提供した既存の情報やデータを参考にしている。 GMOの導入に前向きなEFSAのGMO委員会。この委員会に所属する専門家の半数以上はバイオ業界から研究資金を得ていたり、業界が資金を出している刊行物へ寄稿したり、バイオ業界寄り団体のメンバーや協力者だったりしているという。 カーン大学の研究発表を受け、EFSAは2012年11月に、セラリーニらの論文には、設計と方法論上、深刻な欠陥があり、条件を満たす科学的基準には合致せず、遺伝子組換えトウモロコシNK603の過去の安全性評価を見直す必要は無いと発表している。が、具体的な反論があったとは言えず、自らが長期にわたる実験をする意思は見せなかった。 今回の一件でEUの非民主的な一面が再確認されたが、それでもEUの場合は議会など、それなりに民主的な側面もある。民主的な側面が全くないに等しいのがTPPだ。この協定が成立すると、GMOであろうと原発であろうと、アメリカの巨大資本に従うしかない。
2014.02.12
2月11日は「建国記念の日」だという。1966年に祝日法が改訂され、祝日に加えられたのである。ポツダム宣言の受諾を決め、同盟通信の海外向け放送で降伏の意思を連合国側へ伝えた8月10日でも、「玉音放送」とか「終戦勅語」と呼ばれる放送があった8月15日でも、政府全権の重光葵と軍全権の梅津美治郎が降伏文書に調印した9月2日でも、また「日本国との平和条約」に吉田茂らが調印した9月8日でもない。「紀元節」を「建国記念の日」と言い換えたのだ。 この「紀元節」が定められたのは1873年10月のこと。『日本書紀』を引っ張り出し、神武天皇が即位した日を割り出し、1872年12月には1月29日だと決められたという。 ところが、1月29日では旧暦(太陰暦)の1月1日になってしまい、「旧正月を祝う日」だと考える人が多くなり、日付を変えることになったようだ。妹が徳川家茂(第14代将軍)と結婚していた孝明天皇が1867年1月30日に死亡しているので、紀元節と孝明天皇の命日が近いことも日付変更の一因になったとも言われている。 「人間が自らの命をもつて神と対話することができる」と埼玉大学名誉教授でNHK経営委員に選ばれた長谷川三千子は公言しているが、「建国記念の日」を定めた人びとの精神構造も似たようなもの。ただ、長谷川よりは多少、分別があったので呼び方を変えたのだろう。 長谷川と同様、安倍晋三首相からNHKの経営委員に任命された百田尚樹は『永遠の0』なる作品で2006年に小説家としてデビュー、昨年12月には映画化されたそうだが、この「0」とは「零式艦上戦闘機(ゼロ戦)」を意味しているようだ。(基本的にフィクションには興味がなく、読んでいないので小説の内容は知らない。) 言うまでもないだろうが、この「零」は戦闘機が正式採用された年からきている。運用が始まった1940年が「皇紀2600年」にあたり、下2桁が「00」であることから名付けられたということだ。 この「皇紀」は神武天皇が即位してから何年後かを表したもので、当然、日本書紀の記述が正確で、神武天皇が実際に存在したことが前提になる。日本書紀によると神武天皇が橿原宮で即位したのは「辛酉年春正月庚辰朔」(辛酉の年の正月1日、庚辰の日)、西暦では紀元前660年に相当し、今から2674年前、つまり縄文時代の晩期、あるいは弥生時代の前期ということになる。「邪馬台国」の主人公として卑弥呼が登場するのは弥生時代後期だ。 藤原不比等が「藤原朝」を正当化するために日本書紀を編纂させたのかどうかは知らないが、記述内容に問題があることは間違いない。そうした書物の記述を明治政府が手前勝手に解釈してでっち上げたのが「皇紀」だと言える。 その明治政府とは、イギリスを後ろ盾にした薩摩藩と長州藩を中心とする勢力が徳川幕府(徳川朝)を倒し、新たに作り上げた「王朝」。その新王朝を正当化するため、「万世一系ノ天皇」なる話を作り上げ、自分たちの正当性を主張したように見える。 イギリスは1840年から42年にかけて清(中国)に戦争を仕掛け、半植民地化することに成功していた。産業革命でイギリスは工業化が進んだものの、中国との貿易は大幅な輸入超過。茶をはじめ、木綿、生糸、絹織物、陶磁器などが中国からイギリスへ大量に売られる一方、ヨーロッパの工業製品は中国で人気がなく、売れなかった。つまり貿易戦争で資本主義は惨敗していた。 そこでイギリスが目をつけたのはアヘン。イギリスの綿織物をインドへ売り、インドでアヘンを生産して中国へ売り、中国から茶などを買おうとしたのである。当然、中国は麻薬の輸入を拒否したが、イギリスは軍事力を使い、強引にアヘンを売りつける仕組みを作り上げたわけである。 そのアヘン貿易で大儲けしたジャーディン・マセソン商会が日本に送り込んできたエージェントがトーマス・グラバー。イギリスが1863年に長州藩の若者5名を自国へ留学させた際、ジャーディン・マセソン商会やグラバーが協力している。その若者5人とは、井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)だ。
2014.02.11
東京都知事選で女性蔑視と原発信仰の舛添要一が当選、世界が日本を見る目は厳しくなりそうだ。日本のマスコミは選挙期間中、原発を争点化しないように誘導していたが、イギリスのガーディアン紙は舛添を原発推進派候補と表現している。 脱原発を訴えていた宇都宮健児と細川護煕は第2位と第3位、つまり「勝てる候補」だとされていた細川は宇都宮にも届かなかった。細川が「勝てる候補」でなかったことを認めなければならない。 細川を「勝てる候補」だと主張していた「有志」の中には「小異を捨てて大同につく」べきだとする人もいたが、細川と宇都宮の違いは大きく、「小異」とは言えない。だからこそ、細川も宇都宮を支援するのではなく、自らが立候補したのだろう。 今回、細川は小泉純一郎と手を組んだ。首相時代、竹中平蔵を使って強者総取りの不公正な仕組みを導入、庶民を貧困化させ、自分たちは郵政の資産を略奪しようとしたのが小泉である。それに対し、宇都宮は弁護士としてクレジット、サラ金、闇金と闘い、貧困問題にも取り組んできたわけで、細川と宇都宮は全く別の方向へ向かおうとしている。大筋で対立しているのだ。 大筋で対立しているふたりが唯一、一致していたのが脱原発の看板。実際のところ、細川に「脱原発」以外、政策らしい政策はなく、本当に細川が脱原発を望んでいるのならば、政策が明確な宇都宮と「一点共闘」する方が自然。あえて立候補したのは別の思惑があると見られても仕方がない。 すでに欧米支配層の内部にも日本の原発を懸念する人は増えている。発電施設というより、スタンリー・キューブリックが監督した映画「Dr. Strangelove(日本版のタイトル:博士の異常な愛情)」に出てくる「審判の日装置」として恐れられているのだ。 「審判の日装置」とは敵国に核攻撃を断念させることが目的の兵器で、核攻撃された場合、地球全域を放射性物質で汚染させる仕組みという設定になっている。日本で乱立している原発はまさにそれだが、問題は自爆の可能性が小さくないこと。すでに福島県にあった装置は放射能を大量放出しつつある。 東電福島第一原発の状況が深刻で、福島県内で甲状腺癌が増えているだけでなく、アラスカからカリフォルニアに至る北アメリカの西側で放射線の影響を疑わせる現象が報告され、福島沖で被曝した空母ロナルド・レーガンの乗組員の間で、甲状腺癌、睾丸癌、白血病、脳腫瘍といった症状が出ているようだ。すでに東電が福島で起こした原発事故は国際問題化しつつある。 事故から9カ月後の2011年12月に野田佳彦首相(当時)は「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」宣言、昨年9月にはアルゼンチンで開かれた2020年夏期オリンピックの招致演説で安倍晋三首相は、福島第一原発の「状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えることを許さない」、「汚染水の影響は原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で、完全にブロックされている」、そして「健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない」と断言した。 安倍がこの演説をする2カ月前、昨年7月に2号機のタービン建屋海側の取水口近くの観測井戸でくみ上げた水から1リットルあたり500万ベクレルの放射性ストロンチウムが検出されていたのだが、この数値を隠し、ストロンチウムを含むベータ線を出す物質全体の濃度を90万ベクレル程度と東電は発表していたことも判明した。 「ストロンチウムの値が高すぎる。計測が間違っている可能性が高い」という判断だったというが、90万ベクレルという数値が間違っている可能性もあるわけで、両方をチェックするのが常識。チェックしなかったとは考えにくい。ストロンチウムが500万ベクレルなら、全体は1000万ベクレル程度、これまで発表された数値の約10倍になる可能性が高いようだ。 原発推進派の推測はこの程度ということ。福島県の「県民健康管理調査」で甲状腺癌と診断された子どもは25万4000人のうち33名、「癌の疑い」は41名。調査対象の年齢で甲状腺癌になる確率は100万人に1〜9名と言われているので、桁違いに大きな数字が出ていることになる。が、「現時点では放射線の影響は考えにくい」と検討委員会の星北斗座長は主張している。ストロンチウムに関する東電の「判断」と同様、全く説得力はない。 日本国内で情報を統制しても、国外からは厳しい目が向けられ、さまざまな情報が飛び交い、日本へも入ってくることも忘れてはならない。すでに、人間や生態系への影響はチェルノブイリ原発が事故を起こした際より早く表れている可能性があることを隠しきれなくなっている。 チェルノブイリ原発より小さな事故なのに、という人もいるだろう。福島第一原発の事故で放出された放射性物質はチェルノブイリ原発事故の約17%だと東電は発表している。が、この数値には疑問があると主張している専門家もいる。 例えば、アーニー・ガンダーセンは東電の計算方法に問題があるとしている。計算の前提として、放射性物質は圧力抑制室(トーラス)の水で99%が除去されることになっているのだが、今回は水が沸騰していたとみられ、ほとんどの放射性物質が環境中に漏れ出たと考えるべき状況。その結果、チェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2〜5倍に達するというのだ。(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)沸騰を考慮に入れなくても、超音速で気体がトーラスへ噴出、水で除去できる状況ではなかったはずだと指摘する専門家もいる。 現実を見れば、欧米で危機感が高まるのは当然。ところが、日本では事故が収束し、危機は去ったかのような雰囲気が漂っている。重要な情報が隠されているとはいうものの、多くの人は福島第一原発の状況が悪いことは感じているだろう。ただ、その影響は福島県周辺に止まり、東京は関係ないと高をくくっている可能性が高い。米軍基地を沖縄に押しつけて平然としているように、原発事故の影響は福島県に押しつけて知らん振りを決め込めると思っているのだろう。
2014.02.10
いかなる人にも思想信条の自由は認めなければならない。そうした自由を認めないとしているのが安倍晋三首相や彼を担いでいる人びとだ。教育への介入強化、「日の丸」や「君が代」の強制はその一例。人びとが判断するために必要な公的な情報を官僚の都合で際限なく制限できることにした特定秘密保護法も思想信条の自由を国民から奪うものだと言える。 前にも書いたが、日本では「愚民化政策」が推進されている。「教育」や「報道」の力を使い、「エリート」の暗示に従って行動するような人間、お仕着せの「思想信条」を受け入れ、自分自身は考えない人間、「エリート」のために命を投げ出す忠実な下部を育てようというわけだ。そうした忠実な下部を「エリート」は「愛国者」と表現する。 かつて、日本の支配層は「愛国者」を操るため、彼らが心地よく侵略に協力できるように「大東亜共栄圏」なる物語を作り出した。一種の幻術だが、敗戦から69年を経た現在でもこの幻術から抜け出せない人も少なくない。その中には公的な役職に就いている者もいる。 例えば、安倍首相が任命したNHKの経営委員。昨年11月に小説家の百田尚樹、日本たばこ産業顧問の本田勝彦、12月に埼玉大学名誉教授の長谷川三千子、海陽学園海陽中等教育学校長の中島尚正が新たに任命され、中島と長谷川と一緒に九州旅客鉄道会長の石原進が再任された。この5名を含む12名で構成される経営委員会によって選任されたNHK会長があの籾井勝人。「従軍慰安婦」は「どこの国にもあったこと。」と根拠もなく言い切った御仁だ。 この籾井に続き、世界から驚かれる発言をしたのが百田。都知事選に立候補した田母神俊雄元航空幕僚長を応援しているのだが、その中で極東国際軍事裁判(東京裁判)について、東京大空襲や原爆投下という「悲惨な大虐殺」を「ごまかすための裁判だった」と語り、南京大虐殺も否定したという。 東京大空襲や原爆投下が非戦闘員の虐殺だったことは否定しないが、1937年12月に日本軍が南京を攻略する際に住民を虐殺したことは日本軍も認めている事実。証拠や証言も残っている。当時、特務機関員として南京の周辺で活動していた人物も、虐殺があったことは間違いないと話していた。 支那派遣軍の岡村寧次総司令官は部下からの報告に基づいて「南京攻略時、数万の市民に対する略奪強○等の大暴行があたのは事実」と書き残し、虐殺の責任を問われて極東裁判で死刑が言い渡された中支那方面軍司令官兼上海派遣軍司令官の松井石根は師団長クラスの退廃ぶりを嘆いていた。少なくとも師団単位で虐殺が実行されたことを示唆している。 しかし、より組織的な虐殺だった可能性も否定できない。この攻略戦を実際に指揮していたのは松井でなく、上海派遣軍司令官だった朝香宮鳩彦(昭和天皇の叔父)だと言われているが、この人物の指揮下、虐殺と略奪が実行された可能性があるのだ。 つまり、この件で有罪判決を受けて処刑された松井は冤罪だったと言えるかもしれないが、だからといって南京大虐殺が「幻」だったことを意味するわけではない。松井は朝香宮の身代わりとして殺された可能性が高いということだ。 極東裁判はアメリカ軍の「悲惨な大虐殺」を「ごまかすための裁判だった」わけではなく、日本とアメリカを結ぶ「深層海流」を隠し、「天皇制」を維持することが目的だったと考える方が合理的だろう。皇族を守る、つまり戦前から続くウォール街と日本の支配層との関係を隠し、天皇制を維持することにあったと考えるべきだ。(この件に関しては本ブログで何度か書いているので、ここでは割愛する) この裁判で戦争の最高責任者、昭和天皇の身代わりになったのが東条英機。日本国憲法をアメリカの支配層が慌てて作った理由もおそらく天皇制の維持にある。民主的な装いをした天皇制。当時、連合国の内部には、天皇に対して厳しい意見を持つ人が少なくなかった。そうした声が表面化する前に「戦後日本」の形を作ってしまいたかったのだろう。 百田は小説家であり、妄想は職業上、必要なことなのかもしれないが、埼玉大名誉教授で哲学者だという長谷川には当てはまらない。この長谷川は「大悲会」の会長だった野村秋介への追悼文を昨年11月に書いている。 野村は1993年10月に朝日新聞東京本社の応接室で拳銃自殺した人物。この野村について長谷川は、「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」としたうえで、野村氏の自殺によって「わが国の今上陛下は(『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神となられたのである」と書いている。 どうやら、この「哲学者」は、「人間が自らの命をもつて神と対話することができる」と信じているらしい。追悼文を書いたこと自体が問題なのではなく、こうした考え方、あるいは信仰の持ち主がNHKの経営委員としてふさわしくないだろうということだ。こうした人物を「名誉教授」にした埼玉大学の知的水準にも驚いてしまう。 野村が新聞社に銃を持ち込み、発射した真意は不明だが、マスコミへの脅しになったことは間違いない。その6年前、1987年に覆面をしたふたりが朝日新聞阪神支局の編集室に押し入り、散弾銃を発射して小尻知博記者を殺害、犬飼兵衛記者に重傷を負わせているが、この事件でマスコミ、特に上層部は完全に腰が引けてしまった。その出来事を野村の自殺は思い出させたであろう。こうした暴力による威圧を長谷川は賛美したということである。 議論ではなく暴力を前面に出しているという点で、長谷川は石原慎太郎元東京都知事とも似ている。石原は2011年3月、インディペンデント紙のインタビューを受け、日本は核兵器を作るべきだと主張、核兵器を持てば周辺の国々を恫喝でき、全世界に対して「強いメッセージ」を送ることになると語ったという。彼にとって、外交の交渉力とは核兵器なのだそうだ。(注)○は楽天の規制による伏せ字。
2014.02.09
舛添要一と同じような考え方をする男はヨーロッパにもいるのだろうが、首都の長を目指す有力政治家が口にすることはないだろう。口にした瞬間、政治家としての生命は絶たれる。ひとりの人間としても軽蔑されることになるだろう。 ということで、ヨーロッパ人から見ると、こんな人物が東京都知事の最有力候補だということはニュース。イギリスのガーディアン紙などが伝えている。東電福島第一原発の事故に関する情報隠し、特定秘密保護法の成立、そして安倍晋三首相の靖国参拝などによって、日本を「異様な国」と見る人が世界的に増えているようだが、舛添によって、そうした見方は強まるだろう。 この人物、何らかの強い劣等感を持っているのではないだろうか? その劣等感によって、「強さ」の象徴としての軍事、あるいは核兵器と密接に結びついた原発に傾倒させ、「マッチョ」に憧れて女性を蔑視する発言を繰り返しているように見える。憲法が「主権者」としている人びとを「衆愚」、国民の意思を尊重することを「独裁」と表現しているようだが、これも自分自身が「優れている」とアピールしたいだけなのだろう。 舛添は女性蔑視を正当化するため、「たとえば、指揮者、作曲家には女はほとんどいない。」(BIGMAN、1989年10月号)と言ったようだが、音楽全般を見れば事実に反していることがわかる。すばらしい曲を作った女性は多い。彼の頭にあるのはクラシックなのだろうが、そうした分野の名曲が書かれた当時の時代背景を考えねば意味はない。この辺の発想にも彼の権威主義が現れている。 また、舛添が21世紀に不可欠だとしている高速増殖炉は核兵器の開発と密接な関係がある。本ブログでは何度か書いたが、1980年代にアメリカが日本の核兵器開発を支援するようになった主因は高速増殖炉の開発問題にあった。舛添と似たタイプの人間には石原慎太郎元都知事も含まれるが、この人物も核兵器に執着していた。 舛添の発言を見ていると、政策はすでに存在しているものだと考えているようだ。主権者が意見を表明し、議論し、それによって政策ができるとは思っていない。基地にしろ原発にしろ、嫌なものは多数が少数に押しつけ、そうした政策の根幹を覆すことは許さないという「駄々っ子の甘えた」考え方だ。勿論、その政策を考えるのはアメリカの巨大資本を後ろ盾にする官僚たち。 以前にも書いたことだが、アメリカの広告業界ではクライアントの心をつかむフレーズは単純で浅薄なものが良いとされている。19世紀の終盤、ギュスターヴ・ル・ボンは群衆を「操縦者の断言・反復・感染による暗示のままに行動するような集合体」と定義している。産業革命以降、つまり資本主義化の中で人びとはそうした状況に陥ったと彼は主張する。その後、ヨーロッパでは状況が改善されたということだろう。 意識的に庶民を「衆愚化」した状態にできれば、一部の特権階級による支配が容易になる。日本で1890年に発布された「教育勅語」は、「忠君愛国」と「儒教的道徳」を子どもに植えつけ、天皇制の思想的な基盤を築くことを目的としていたが、ル・ボンが『群集心理』を表す前に実践していたと言える。 「衆愚」だから政策の決定に参加させられないのではなく、政策の決定に参加させたくないので「衆愚」を作り出しているのが実際の「エリート」たち。安倍晋三内閣の「教育改革」は庶民の「衆愚化プロジェクト」だとも言えるだろう。衆愚化された人びとから支持されるためには、単純で浅薄な主張を断定的に繰り返すべきであり、「論理構成をして様々なパーツを上手にワンパッケージにまとめる能力」などは必要ない。全体を瞬時に掌握し、理解する能力は脳の構造上、女性の方が優れているとも言われている。 「女は生理のときはノーマルじゃない。異常です。」と舛添は断定しているが、こうしたことを繰り返し、口にできる人間を支持するのは衆愚化された人びと。庶民が自分自身で考えるようになれば、舛添のような人物は政治家としても学者としても相手にされなくなるだろう。
2014.02.08
アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補は、マイケル・マクフォール駐露米国大使やジョン・マケイン上院議員と同じように公然と反ロシア勢力を支援してきた。アメリカをはじめとする「西側」は、中東や北アフリカでの体制乗っ取りプロジェクトでイスラム教スンニ派の武装勢力(アル・カイダ)を使ってきたが、東ヨーロッパではネオ・ナチを「突撃隊」として利用している。 このヌランドとジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使との会話内容がYouTubeにアップロードされ、話題になっている。何しろ、ウクライナの政権をどうするのかが話し合われているのだ。「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という下品な表現が問題なのではない。下品な人間が下品な表現を使うのは自然なことだ。問題は露骨な内政干渉。 ヌランドとパイアットが同意した内容は、「全ウクライナ連合『祖国』」の議会におけるリーダー、アーセニー・ヤツェニュクを次期副首相に据え、「UDAR(改革を目指すウクライナ民主連合)」のビタリ・クリチコは入閣させず、デモを内戦化させたネオ・ナチの「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」のオレーフ・チャフニボークは信用しないというようなこと。ちなみに、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領は先月、ヤツェニュクを新首相に、またクリチコを副首相にするという提案をしたが、拒否されている。 スボボダはネオ・ナチであり、反政府行動で棍棒、ナイフ、火焔瓶を手にするだけでなく、ブルドーザーを持ち出して警官隊と衝突した。こうした光景がインターネットを通じて全世界に広がっているため、とりあえず距離を置こうということかもしれない。 また、オランダのロバート・セリー元駐ウクライナ大使が国連特使としてキエフへ派遣されるとジェフリー・フェルトマン国連事務次長はヌランドに話したという。その決定をヌランドは歓迎、そして「EUなんかくそくらえ」という表現が出てくる。ウクライナの体制転覆に国連を利用するということ。ヌランドはEUのウクライナに対する対応が気に入らなかったようだ。 明らかにヌランド次官補やパイアット大使はウクライナを独立国として扱っていない。自分たちにとって都合の良い、つまり傀儡政権を樹立させようとしている。マイケル・マクフォール駐露米国大使も、このふたりの仲間だったが、先日、ソチ・オリンピック後に大使を辞めると発表している。 ウクライナへの内政介入の「謀議」を盗聴されたうえ、インターネット上で公開されたことでヌランドや仲間は怒り心頭だろうが、大声で文句は言えない。何しろ、各国政府の要人をアメリカが盗聴していたことが露見したばかりだ。ドイツは強く批判している。 ロシア側からすると「西側」の内政干渉はソ連時代からのもの。現在、「西側」が使っている戦術を最初に実行したのは投機家で大富豪のジョージ・ソロス。1979年にニューヨークで「オープン・ソサエティ基金」を設立している。その後、ハンガリー、ソ連、中国などでも同じような基金を作った。 ソ連消滅後、ボリス・エリツィン政権と手を組んで巨万の富を手にした人たちがいる。そのひとり、ボリス・ベレゾフスキーとソロスは共同でビジネスを展開したこともある。後にふたりは仲違いするが、2004年から05年にかけてウクライナで展開された「オレンジ革命」のパトロンは、このベレゾフスキーだった。 現在、ウクライナで体制転覆プロジェクトを実行しているヌランドやマケインはアメリカの親イスラエル派(ネオコン)。ベレゾフスキーも一時期はイスラエルの市民権を持っていた人物で、エリツィン体制が倒れた後、イスラエルへ逃れた彼の仲間も少なくない。
2014.02.07
安倍晋三首相が民意を無視できる最大の理由は、有権者の激しい物忘れにある。公約を守らなくても、庶民の利益に反する政策を実行しても、次の選挙では忘れてしまう。少なくとも政治家は、そう高をくくっている。 東京都知事選で細川某と小泉某のコンビを支援している人びとがいる。消費税率の引き上げ、つまり庶民からカネをさらにむしり取ろうとして反発を受け、総理大臣の職を投げ出した細川、郵政民営化と称して国民の資産をアメリカの巨大資本へ贈呈しかける一方、強者総取りの仕組みを強化し、深刻な貧困問題を生み出した小泉。こうした政策を支持しているならわかるが、そうでもないらしい人が支援声明を出しているから驚く。 細川と小泉は「脱原発」を訴えているから支持するのだというが、これは「目的のためなら手段を選ばない」という類いに話。そもそも問題のコンビが公約を守れるのかどうかが疑問だ。それほど信頼できる人物ではなく、首相時代に小泉が推進した強者総取りの新自由主義についても、またイラクへの先制攻撃に賛成したことについてもほとんど語っていない。 政府、議会、司法から国のあり方を決める権利を奪うTPPについてはどうなのかも曖昧だ。TPPの核心はISDS条項。この条項によって企業活動や金融システムに対する規制、食糧の安全、環境汚染の防止、労働者の権利保護などをどうするかは国境なき巨大資本が決めることになる。つまり、各国の庶民は政策決定に関与できなくなる。「脱原発」も巨大資本が「ノー」と言えばできない。 「脱原発」を実現するためには、かつて「一線を越えた」悪党とも手を組む必要があるという人たちもいる。実際に遣ろうとしていることは、「一線を越えたまま」の連中にすり寄るということだ。 そうした人びとの中には、南アフリカのネルソン・マンデラを引き合いに出す人もいる。アパルトヘイト時代にはヨーロッパ系が支配階級、先住民が被支配階級を形成していたが、アパルトヘイトの廃止後に大統領となったマンデラは人種間の対立を解消するため、報復ではなく宥和を打ち出している。細川/小泉にすり寄る自分たちを、このマンデラに準えようとしたわけだ。 しかし、この主張は少なくともふたつの意味で間違っている。 まず、マンデラが大統領になったのは、アパルトヘイトの廃止という国のあり方が根本的に変わる過程でのこと。日本で言うなら、東アジアを侵略した過去を真の意味で清算し、天皇制官僚国家から共和制へ移行し、官僚から特権を取り上げるようなものだ。つまりマンデラの宥和政策と細川/小泉へのすり寄りは根本的に違う。 また、マンデラの政策に大きな問題があったことも忘れてはならない。アパルトヘイトの廃止という形で政治的には大きく前進したが、経済の仕組みは大きく変えていない。つまり欧米資本の利権を温存し、植民地的な支配構造が残ったことから、被支配階級だった人びとの生活環境はほとんど改善されていない。 1994年に大統領となったマンデラは99年に退任してしまうが、経済面の支配構造が温存されたことから庶民の生活が改善されないことは見通せたはず。だからこそ大統領のポストに執着しなかったのだろう。その結果、欧米の政治家やメディアからマンデラは高く評価されているわけだ。 もし、マンデラが欧米の巨大資本から利権を取り上げ、自立した国を作ろうとしたならば、全く違った評価を受け、「西側」からは「独裁者」と呼ばれ、場合によってはムアンマル・アル・カダフィのようなことになっていただろう。
2014.02.07
リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制やシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、「西側」やペルシャ湾岸の産油国は自国の特殊部隊を潜入させるだけでなく、資金や武器と伴に傭兵を送り込んできた。主な傭兵集団はイスラム戦線、アル・ヌスラ戦線、ISILだと言われているが、そうした組織へ欧米からも参加している。 最も多くの戦闘員を送り込んでいるのはチェチェンで約1万4000名、サウジアラビアの1万2000名がそれに次ぐらしいが、ヨーロッパからも1800名程度、アメリカからも50名以上がシリアへ渡り、戦闘訓練を受け、実際に戦闘を経験しているという。そうした人びとが出身国へ戻り、「経験を生かす」可能性もある。 サウジアラビアでも「元戦闘員」を懸念してか、テレビ局MBCの人気番組でホストを務めるダブド・アル・シャリアンがシリアへの軍事介入に反対する聖職者を登場させている。その聖職者は、一部の聖職者がサウジアラビアの若者を洗脳してシリアへ送り出していると批判したという。 イギリス検察庁で対テロリズム部門を率いているスー・ヘミングは、戦闘を目的にシリアへ渡った場合、帰国したなら終身刑を求めると発言、アメリカのジェームス・クラッパー国家情報局長官もそうした状況を懸念している。カフカス出身の戦闘員はウクライナやオリンピックが開催されるソチへ向かうとも言われているが、それならかまわないのだろうか? イスラム戦線はサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官が昨年11月に諸団体を再編成して組織、アル・ヌスラ戦線はカタールに近く、トルコの司法当局や警察によると、ISILはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相が自国の情報機関に命じ、秘密裏に創設したのだというが、その背後にはアメリカ、イギリス、フランス、イスラエルなどが存在している。 欧米各国の政府が「元戦闘員」を危険視するのはわかるが、そうした人間を送り込む仕組みを作ったのは自分たちだということを忘れてはならない。「自由の戦士」は「テロリスト」なのだ。
2014.02.06
安倍晋三内閣に「民意」を受け止める気はない。自分たちの意思を「民意」として庶民に受け入れさせようとするだけであり、これまで庶民は支配層の意思を受け入れてきた。一部の利権集団に富が集中する仕組みを変えようとして貧乏くじを引くより、利権集団に取り入ることで「お零れ」を頂戴し、不正は見て見ぬ振りをする方が徳だからだ。 しかし、見て見ぬ振りのできない人たちもいる。沖縄占領の問題では圧倒的に少ないものの、原発に関しては相当数の人びとが声を上げている。自分たち、あるいは自分たちの子孫の命に関わる問題だからだろうが、利権集団はそれが気に入らない。 不公正な仕組みの結果、社会の歪みは大きくなっているが、不公正の度合いをさらに高めろと利権集団は叫んでいる。世界的に見ると、不公正な仕組みが社会を歪ませ、このまま放置すると現在の支配システムが崩壊すると危機感を持つ支配層も増えているのだが、日本ではそうした動きが見えない。 そもそも資本主義とは富を一部に集中させる仕組みで、19世紀には大きな問題になっていた。チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツイスト』など、そうした問題をテーマにした小説も書かれている。 富の集中を放置しておくと庶民の怒りが革命に発展する可能性がある。これを阻止するひとつの方策として採用されたのがファシズム。ドイツの巨大資本だけでなく、ウォール街から多額の資金がアドルフ・ヒトラーたちへ渡ったのは、そうした理由からだ。 巨大資本の横暴が目に余る状態になると、アメリカではそうした資本を規制し、労働者の権利を拡大しようというニューディール派が支持されるようになる。そして1932年の大統領選挙ではフランクリン・ルーズベルトが当選した。 ルーズベルトの当選に危機感を抱いたJPモルガンを中心とするウォール街の金融資本はファシスト政権の樹立を目指すクーデターを計画している。この計画はスメドリー・バトラー海兵隊少将やジャーナリストのポール・フレンチが議会で証言して明らかになったのだが、長い間、学者やメディアは知らない振りをしていた。広く知られるようになったのは、インターネット上で取り上げられるようになってからだろう。 ドイツがヨーロッパを制圧してソ連を倒す一方、アメリカでクーデターが成功したならば、欧米に巨大なファシズム帝国が誕生するところだった。必然的に中東やアフリカも制圧される。 さらに、関東大震災からJPモルガンの影響下に入った日本政府が東アジアを制覇すれば、この地域もファシズム帝国になった。つまり、全世界がファシズムで覆われるところだった。こうした流れにならなかった大きな理由は、ドイツがソ連に敗北、日本が中国で勝てず、アメリカでルーズベルト政権が1933年から45年まで続いたということにある。 戦後、一部の利権集団、いわゆる「1%」の人びとに富を集中させる仕組みが公然と主張されるようになったのは1970年代。フリードリッヒ・ハイエクやミルトン・フリードマンたちの「自由主義経済」を欧米の支配層が宣伝し始めたのである。 ハイエクは1899年にオーストリアで誕生、ウィーン大学で博士号を取得してからアメリカへ渡っている。1930年代にハイエクは私的な投資を推進するべきだと主張、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突していた。 その当時、ハイエクに学んだ学生の中にデイビッド・ロックフェラーも含まれている。フリードマンもハイエクの影響を受けたひとり。一方、ルーズベルトはケインズの政策を採用している。 1945年4月にルーズベルトが執務室で急死するとウォール街の逆襲が始まる。戦後日本の進む方向を決めたジャパン・ロビーで中心的な役割を果たしたひとり、ジョセイフ・グルーはJPモルガンの代理人だった。 フリードマンの「理論」が弱者に過酷なことは明らかだったため、通常ならば反対の声が高まる。最初にこの「理論」を実践したのはチリだが、その際に軍事クーデターで民主的に選ばれた政権を倒し、反対派を拘束するだけでなく、虐殺している。ナチスを使ってファシズムを広めようとしたことを思い起こさせるやり口だ。イギリスの場合はフォークランド諸島/マルビナス諸島をめぐるアルゼンチンとの戦争を利用した。 この時期、つまり1980年代にアメリカで憲法の機能を停止するためにCOGプロジェクトを始めたのも偶然ではないだろう。10年、20年の単位でファシズム体制へ移行する計画を立てている。実際、2001年9月11日にこのプロジェクトは始動、ファシズム化が急速に進んでいる。各国政府から政策の決定権を奪うTPPはプロジェクトの総仕上げに近いものだろう。「1%」の人びとは再び世界をファシズムで統一しようとしている。 安倍晋三にしろ、小泉純一郎にしろ、菅直人にしろ、野田佳彦にしろ、民主的な仕組みを破壊し、ファシズム体制を築こうとしている。こうした人びとにとって「民意」は雑音にすぎないのだが、団結した庶民の怖さも知っているようで、団結する前に反抗、あるいは反乱の芽を潰そうとする。そのため、監視システムを強化し、情報統制しようとするわけだ。安倍首相に民主主義のルールを守る意思はない。彼の頭の中はすでにファシズム色に染まっている。
2014.02.05
マイケル・マクフォール駐露米国大使が辞任の意向を表明した。スタンフォード大学の教授を務める一方、フーバー研究所に所属して反ロシア活動を続けていたことでも有名な人物なのだが、1996年にロシアで大統領選が実施された際にはボリス・エリツィン大統領からクレムリンに招待されている。 1991年以降、新自由主義で富を少数の利権集団に集中させ、ロシアを荒廃させていたエリツィンを多くのロシア国民は批判、選挙では劣勢が伝えられていた。クレムリンの黒幕的な存在になっていたエリツィンの娘、タチアナ・ドゥヤチェンコはロシアを私物化した利権仲間のアナトリー・チュバイスを引っ張り出し、金融やメディアを支配する富豪たちを集めてチームを編成、資金の提供やエリツィンに有利な報道を約束させている。そうした中、マクフォールも招待されたわけだ。 スタンフォード大学の学生だった頃、マクフォールはソ連へ留学しているが、その後、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学で学び、ソ連が消滅した1991年にそこで博士号を取得している。 この時期、同じようにスタンフォード大学からローズ奨学生としてオックスフォードへ留学していた人物がいる。国連大使から安全保障問題担当大統領補佐官へ移動したスーザン・ライスだ。ライスが博士号を取得したのは1990年のこと。 また、ライスの師と言われている人物がマデリーン・オルブライト。国務長官時代の1998年にユーゴスラビア空爆を主張した好戦的な人物で、アフガニスタンで戦争を仕掛けたズビグネフ・ブレジンスキーの教え子でもある。つまり、ライスはブレジンスキーの孫弟子であり、バラク・オバマ大統領と同じ人脈ということになる。 スーザンの母親、ロイスはブルッキングス研究所の研究員で、自宅にはオルブライトも訪問、その縁でオルブライトはスーザンと親しくなった。またスーザンの父親、エメットはコーネル大学で経済学を教えていたが、1979年に連邦準備制度理事会の理事に就任している。 イラク、イラン、シリア、レバノン、ソマリア、スーダン、そしてリビアを攻撃する計画をジョージ・W・ブッシュ政権がたてたのは2001年9月11日から間もない頃。ユーゴスラビアに対する先制攻撃を正当化するため、「西側」は「人権」に関する作り話を広めているが、リビアでも「人権」が口実に使われた。 2011年3月にアメリカやイギリスの情報機関や特殊部隊がリビア国内で秘密工作を本格化させているが、同時に「人権擁護団体」は「アフリカ人傭兵話」や「バイアグラ話」を広めている。バイアグラ話とは、レイプのためにバイアグラを兵士に配っているというものだが、証拠や根拠が示されたわけではなく、単なる作り話だった。このバイアグラ話の宣伝にライスも参加している。 こうした宣伝は国連人権調査団のシェリフ・バッシオウニ団長からもすぐに批判され、「人権擁護団体」の調査員もレイプの被害にあった女性を見つけることはできず、アムネスティ・インターナショナルは後に「カダフィが傭兵軍を雇った証拠はないと認めなければならない」と表明せざるをえなかった。 しかし、それでもサハラ以南出身者への差別を助長することになり、ムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊した後、サハラ以南出身の労働者が虐殺されるという状況を招く一因になった。「人権」の名の下に「人権」が否定されたわけである。 ところで、マクフォールが大使としてモスクワに到着したのは2012年1月14日のことだが、その3日後にはロシアの反プーチン/親アメリカ(親ウォール街)派のリーダーがアメリカ大使館を訪れている。これは本ブログで何度か書いたことなので、詳しい内容を今回は割愛するが、その後も反ロシア運動を煽っていたことは間違いないだろう。 ウクライナの反ロシア運動を煽っているグループにはネオコンも含まれ、ソチへの破壊工作を予告しているカフカスの反ロシア勢力はイスラム教スンニ派の武装勢力(アル・カイダ)と結びつき、その背後にはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官がいると言われている。そうした構図の一角を絞めていたマクフォールの離脱は、アメリカの戦略が変化しつつあることを暗示しているのかもしれない。実際に変化している場合、安倍晋三政権が対応できないと日本は厳しい状況に陥る。
2014.02.05
アメリカにとって最も緊密な同盟国だと自称しているイスラエルだが、その実態は疫病神にすぎない。イスラエルによってアメリカは中東の嫌われ者になり、世界的に信頼度は大きく低下してしまった。 最近、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官とイスラエルは頻繁に接触していると報道されているが、そのスルタン長官はアル・カイダ(イスラム教スンニ派の傭兵集団)の黒幕だと言われている。 しかし、こうした関係を気にしないのがイスラエル。昨年9月まで駐米イスラエル大使を務めたマイケル・オーレンはエルサレム・ポスト紙のインタビューで、イスラエルはシリアの体制転覆を望んでいるとしたうえで、イランを背景に持つ碌でなしより、イランを背景に持たない碌でなしを選ぶ、つまりアル・カイダを選択すると答えている。アル・カイダもイスラエルと戦ってこなかった。 そうしたシオニストにアメリカが奉仕するひとつの理由は議会への影響力。欧米の一部富豪がシオニスト運動のスポンサーで、そうした資金を議員が欲しがっていることが大きい。第2次世界大戦の前からそうした傾向はあったようだ。ただ、シオニストはユダヤ教徒の救済を真剣に考えているわけではない。 1930年代にドイツでナチスが実権を握り、1945年に敗北するまでの期間、ヨーロッパではユダヤ教徒を含む少数派やコミュニストなどが弾圧されていた。各地のユダヤ教徒は国外への脱出を始めるが、パレスチナへ向かおうとする人は少ない。 そうした中、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領がユダヤ人救済策を検討するのだが、アメリカのユダヤ系有力者は反対する。東ヨーロッパからラディカルな考え方をする人びとが入ってくることが予想されるため、多くのユダヤ人がアメリカへ移住してくることを嫌がったのだ。 こうしたラディカルなユダヤ人と対抗するユダヤ人組織として目をつけられたのがウラジミール・ジャボチンスキーの一派。ジャボチンスキーは第1次世界大戦でイギリス軍に参加、第2次世界大戦でもイギリスと手を組み、かれの武装集団ハガナはイギリスの対外情報機関MI6や破壊工作機関SOEから訓練を受けている。その間、ジャボチンスキーは「修正主義シオニスト世界連合」を結成、そこからリクードも生まれた。 シオニストとはシオニズムを信奉する人びとであり、シオニズムとはエルサレム神殿があったとされる「シオンの丘」へ戻ろうという運動。この用語はナータン・ビルンバウムが1893年に初めて使ったというが、近代シオニズムの始まった年とされているのは、セオドール・ヘルツルが『ユダヤ人国家』を出版した1896年だ。こうした運動を強く支援していた富豪のひとりがフランスのエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドだと言われている。 しかし、その前に「ユダヤ人」をパレスチナへ「帰還」させようという運動を始めた人物がいる。スコットランド人のジョン・ネルソン・ダービーだ。救世主の再臨を実現するために「ユダヤ人」をパレスチナに「帰還」させ、最終戦争を実現する必要があると彼は考えたという。 ダービーは1859年から72年にかけてアメリカで布教に努め、その流れの中から聖書根本主義派(キリスト教系カルト)が生まれた。ジェリー・ファルウェルやパット・ロバートソンもそうしたカルトに属している。こうしたキリスト教系カルトとジャボチンスキー派は1970年代に手を組み、アメリカでの影響力を増しただけでなく、イスラエルで主導権を握ることにも成功した。 議会はともかく、イスラエルに好意的なアメリカ大統領は多くない。例えば、ルーズベルト。アメリカで活動していたふたりのラビ(ユダヤ教の聖職者)、ステファン・ワイズとアッバ・ヒレル・シルバーがメディアを使ってルーズベルトはシオニストを支持していたという話を広め、それを信じている人もいるようだが、実際は違う。中東に混乱をもたらすとして、イスラエルの建国には反対していた。ドワイト・アイゼンハワーやジョン・F・ケネディもイスラエルには批判的だ。イスラエルが領土拡大を目指して第3次中東戦争を引き起こしたのは、議会で親イスラエル派を率いていたリンドン・ジョンソンが大統領になった後だ。 建国の直後、1949年からイスラエルは核兵器の開発に着手しているが、そのプロジェクトに協力したのはアメリカでなく、フランスだった。開発資金を提供していたのは欧米に住むユダヤ系富豪、例えば、アメリカのエイブ・フェインバーグやフランスのエドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルド。エドモンド・アドルフはエドモンド・ジェームズの孫に当たる人物で、ヘンリー・キッシンジャーと親しい関係にあると言われている。 かつて、アリエル・シャロンはユダヤ人がアメリカをコントロールしていると豪語していた。リクードにとって「公平」な姿勢とはイスラエルの意向に沿って動くことにほかならない。その基準から少しでも外れれば「偏向」ということになる。パレスチナ問題においてリクードは一貫して「大イスラエル」を考えているわけで、ガザやヨルダン川西岸だけでなく、ナイル川とユーフラテス川に挟まれた地域をイスラエルの領土にするつもりである。この計画の障害になる言動は全て「パレスチナ寄り」だと批判される。 しかし、こうしたジャボチンスキー派の横暴は反イスラエル感情をイスラム世界だけでなく、全世界へ広げることになった。「イスラエル・ボイコット」は広がっている。ジョン・ケリー国務長官がこの事実に言及したことを批判しても意味はない。アパルトヘイト国家イスラエルと奴隷制国家サウジアラビアの同盟に向けられた目は厳しい。 アメリカのジャボチンスキー派はネオコンと呼ばれている。そのネオコンに安倍晋三首相らは従属、自分たちが強くなったと錯覚しているようだ。かつて、日本がナチスと手を組んだときも、同じように考えたのだろう。
2014.02.04
今年1月25日から3日間、安倍晋三首相はインドを訪問した。落ち目の日米欧を脅かす存在に成長したBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の一角を占めるインドを取り込むことは経済的な側面だけでなく、軍事的にも日本やアメリカは重視している。 1951年9月8日、日本はサンフランシスコのオペラハウスで「対日平和条約」に、またその日の午後、プレシディオで安保条約にそれぞれ調印している。その1週間前には、同じプレシディオでアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国がANZUS条約を結んでいた。当初、吉田茂はサンフランシスコ平和会議への出席に難色を示していたようだが、7月19日に昭和天皇と会い、全権団を率いることに同意したという。 言うまでもなく、ANZUS条約と安保条約は深い関係にある。現在、ANZUS条約からニュージーランドが離脱した形になっているため、アメリカ、オーストラリア、日本の軍事同盟が形成されているということになる。ここにインドを巻き込もうということだ。実際、この4カ国は軍事演習も実施している。そのターゲットは中国。 この4カ国は歴史的にイギリスと関係が深い。つまり、イギリスの支配/影響下にあった国々だ。そこからイスラエル、そしてイギリス本国を結ぶラインでロシアなど大陸の国々に圧力を加えるという戦略もあったという。こうした背景もあり、安倍がインドにアプローチしていることを副大統領時代のリチャード・チェイニーは支援していたと伝えられている。このチェイニーの首席補佐官だったのがI・ルイス・リビー。その背後で軍事戦略を描いてきたのが「ONA(ネット評価室)」のアンドリュー・マーシャル室長だ。1949年に国防総省系のRANDへ入って核戦争を研究、ソ連脅威論を唱え、ソ連が消滅すると中国脅威論を叫び始めた。 ネオコン/ジャボチンスキー派シオニスト(つまりユダヤ系ファシスト)が行ってきたことを振り返ると、仮想的を作り、軍事的な緊張を高め、相手を挑発、適当な理由で先制攻撃している。安倍首相が領土問題をこじらせ、靖国神社参拝で挑発するのはネオコン/ジャボチンスキー派の基本戦術と言える。 大統領時代、ネオコン/ジャボチンスキー派に操られていたジョージ・W・ブッシュについて、思考するのではなく、刺激に反応していただけだと言う人がいる。安倍首相にも当てはまりそうだ。
2014.02.03
アメリカの支配層を一枚岩だと考えてはならない。ひとりの独裁者を頂点に、その下にピラミッド状の支配システムができあがっているという単純な構造ではなく、いくつかの勢力が対立、ある場合には協力しながら圧倒的多数の庶民を支配しているのが実態だろう。支配層内部の戦いが激化すれば相対的に庶民の力が強まるため、利害の調整機関もあるが、それで対立をなくすことはできない。 安倍晋三首相たちがリチャード・チェイニーの一派とつながっている可能性が強いことはすでに書いたが、では、小泉純一郎はどうだろうか? 首相時代、小泉がウォール街の意向に沿う政策を打ち出して日本を破壊へと導いたことは間違いない。興味深いのはその息子、進次郎の経歴だ。2004年に関東学院大学を卒業し、2006年にコロンビア大学大学院で修士課程を修了、すぐにCSISの非常勤研究員になっている。 ところで、CSISはCIAと関係の深いシンクタンク。このシンクタンクが1996年に設置した「日米21世紀委員会」は2年後、日本の進むべき方向を報告書としてまとめている。それによると、(1) 小さく権力が集中しない政府(巨大資本に権力が集中する国)、(2) 均一タイプの税金導入(累進課税を否定、消費税の依存度を高めることになる)、そして(3) 教育の全面的な規制緩和と自由化(公教育の破壊)だ。 小泉進次郎はコロンビア大学でジェラルド・カーティスに師事したというが、ジャーナリストのジョセフ・トレントが明らかにした「クローリー・ファイル」によるとカーティスはCIAの協力者。この情報が正しいなら、小泉親子はCIAの影響下にあるということになる。 トレントはCIAの上層部に情報源を持つのだが、往々にして、そうした人びとの話を検証せずに伝える傾向が強い。そこで注意する必要はあるのだが、何らかの事情で、そうした話がCIAから流された可能性はある。 エール大学とCIAとの関係は有名だが、コロンビア大学も無関係とは言えない。最も重要な役割を果たした人物と言えるのがズビグネフ・ブレジンスキーだ。ブレジンスキーはデイビッド・ロックフェラーと緊密な関係にあった人物。このふたりが中心になって日米欧三極委員会が創設されている。カーティスは同委員会のメンバーだ。ブレジンスキーとカーティスが無関係だとは言えない。 コロンビア大学でブレジンスキーに師事したと言われている人物がいる。バラク・オバマである。そこで、オバマはCIA人脈だとも噂されているわけだ。 こうした情報をつなぎ合わせると、小泉親子とオバマ大統領は同じ勢力に属している可能性が出てくる。オバマ政権と対立する道を歩んでいる安倍首相と小泉親子が対立しても不思議ではない。
2014.02.02
安倍晋三首相はリチャード・チェイニーやI・ルイス・リビーの属す勢力、ネオコンの影響下にある可能性が高い。これは前回のブログで書いたこと。 その戦略を示す文書DPG(国防計画指針)の草稿が1992年3月にリークされた際には大きな問題になった。一旦は取り下げられた形になったものの、2000年にはネオコン系のシンクタンクPNACがDPGをベースにした報告書「米国防の再構築」を公表している。 DPGが問題になった理由は、内容があまりに攻撃的だったため。アメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアなどでのライバル出現を阻止すると宣言しているのだ。こうした目的のため、軍事費を大幅に増やし、「予防的攻撃」、つまり先制攻撃も辞さないとしていた。他国との協調政策を放棄するということでもある。 この当時、アメリカはジョージ・H・W・ブッシュが大統領の時代。DPG作成の最高責任者は国防長官だったリチャード・チェイニーで、その下にはポール・ウォルフォウィッツ国防次官、I・ルイス・リビー、ザルメイ・ハリルザドがいた。実際に草案を書き上げたのは国防総省内部のシンクタンク「ONA(ネット評価室)」のアンドリュー・マーシャル室長だと言われている。 ネオコン系のハドソン研究所で安倍首相を紹介したのはリビーにほかならない。ウォルフォウィッツは1991年、湾岸戦争でブッシュ・シニア大統領がイラクからサダム・フセインを排除する前に停戦した直後、シリア、イラン、イラクを殲滅すると語っていたという。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の話だ。 1991年の段階では、アメリカ支配層の内部でもネオコンの戦略を懸念する人は少なくなかったが、そうした声を2001年9月11日の出来事が粉砕してしまった。それから間もなくして、ドナルド・ラムズフェルドを長官とする国防総省では、統合参謀本部の意見に関係なく、攻撃予定国リストを作成している。イラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンがそのターゲット。 石油パイプラインの建設でアメリカ系の企業を排除したアフガニスタンをまず攻撃、次いで1980年代からネオコン/イスラエルが望んでいたフセインの排除に着手して実現、リビア、シリア、ソマリア、スーダンへ直接、間接の軍事介入を実施、イランに対する秘密工作を実行している。その一方、「潜在的ライバル」のロシアと中国に対するプロジェクトも始まった。菅直人、野田佳彦、安倍たちは、その片棒を担いでいる。 リビアやシリアに対する軍事介入で明確になったように、「西側」やペルシャ湾岸の産油国はイスラム教スンニ派の武装勢力(アル・カイダ)を傭兵として使ってきた。その直接的な雇い主がサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官だということも公然の秘密。スルタン長官が頻繁にイスラエルと接触していることもわかっている。 当初の計画では、アル・カイダを投入して国内を混乱させ、NATO軍を投入して一気に殲滅することになっていたようだが、シリアではNATO軍の直接的な投入に失敗した。特殊部隊を潜入させているようだが、戦闘部隊の主力はサウジアラビアやカタールが雇った傭兵。最近はサウジアラビア系が力を持っているが、思惑通りには進んでいないようだ。 シリアでの戦闘が長引くにつれ、世界各地からさまざまな人間がカネや武器を求め、軍事訓練を受けるためにシリアへ流れ込んでいる。欧米からも少なからぬ傭兵が来ているようで、帰国してから、それぞれの国で破壊活動を展開するのではないかという懸念が「西側」の支配層で広がっている。 また、現在、ネオコンはロシアを見据え、ウクライナを揺さぶっているが、その手駒として使われているのはネオ・ナチと見られている勢力。スボボダをはじめとするファシストたちで、OUN(ウクライナ民族主義者機構)の流れをくんでいる。 OUNはイェブヘーン・コノバーレツィなる人物を中心として創設された反ポーランド/反ロシア組織で、ステファン・バンデラが引き継いだ。当初、ドイツに接近していたが、1930年代にソ連情報が欲しいイギリスの情報機関MI6に雇われている。第2次世界大戦が始まると、バンデラの一派はドイツと手を組む。ウクライナの独立を宣言したことからドイツとの関係が悪くなるが、1943年にOUNはドイツと再び同盟関係に入り、UPA(ウクライナ反乱軍)として活動を開始、「反ボルシェビキ戦線」を設立、大戦後の1946年にはABN(反ボルシェビキ国家連合)となり、APACLと合体してWACL(世界反共連盟)になった。WACL創設にはCIAが協力している。 ネオコンは現在、アメリカを利用して自分たちが世界を支配しようとしている。その手先としてイスラム教スンニ派の武装勢力(アル・カイダ)やネオ・ナチを使っているのだが、そうした勢力の矛先が「西側」や湾岸産油国に向かう兆候が見られる。日本の支配層はそうしたネオコンに従属しているわけだ。
2014.02.02
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