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2011年から戦闘が続いているシリアに平和の訪れる見通しは立っていない。この戦いはバシャール・アル・アサド体制の打倒を目指すもので、西側の政府やメディアは「民主化勢力」の蜂起であるかのように宣伝してきたが、実態は外国からの侵略軍だ。 ジョージタウン大学のハイララー・ダウド教授によると、反政府軍のうちシリア人が占める割合は5%。残りの95パーセントは外国人傭兵だとしているが、シリアの北部、トルコとの国境に近いコバニでの戦闘で死亡した74名の反政府軍兵士の場合、15名はウクライナ、8名はチェチェンの出身者だったとシリア政府側は主張している。死亡した戦闘員が携帯していた身分証明書で確認したという。 チェチェンの反ロシア勢力はグルジアのパンキシ渓谷を拠点にしているが、そこでCIAは戦闘員をリクルート、軍事訓練してシリアへも送り込んでいると言われている。これは本ブログで何度か書いたこと。チェチェンの反ロシア勢力にはウクライナ人も参加している。 アメリカ(ネオコン/シオニスト)は遅くとも1991年にシリアの体制転覆を目指し始めている。この年、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)がシリア、イラン、イラクを掃討すると話していたと証言している。クラークによると、2001年9月11日から間もなく、ジョージ・W・ブッシュ政権は攻撃予定国リストを作成、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていたという。 すでにアメリカはイラクを破壊、シリアの体制転覆を目指しているわけだが、その中心にはネオコン/シオニストや戦争ビジネスが存在、軍の中にも同調者はいる。すでに退役しているが、スキャンダルでCIA長官を解任されたデイビッド・ペトレイアス大将、アフガニスタン駐留米軍の司令官を務めていたジョン・アレン大将もシリアの体制転覆を目指している一派。2014年9月、バラク・オバマ政権はIS(イスラム国、ISIS、ISIL、IEILなどとも表記)に対する空爆の「司令官」役にアレンを就任させた。 リビアでアメリカ/NATOが飛行禁止空域を設定した最大の理由は自分たちの地上軍であるアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)を守ることにあった可能性が高い。現在、LIFGはISの一部として活動中だと伝えられている。 シリアでも同じことをしようとしたが、これまではロシアの反対で実現できなかった。ISに対する空爆は飛行禁止空域の設定、つまりIS支援が目的だと推測する人もいるのだが、その作戦の責任者にシリアの体制転覆を目指すアレンが就任したことは興味深い。真の目的を示唆しているという見方もある。 カダフィ体制が倒された直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた。その様子を撮影した映像がすぐにYouTubeにアップロードされたほか、イギリスのデイリー・メール紙などもその事実を伝え、アメリカ/NATOとアル・カイダと同盟関係は多くの人が知るようになった。 リビアの体制を転覆させた翌年、2012年にアメリカの情報機関や特殊部隊はヨルダンの北部に設置された秘密基地で数十人とも3000人以上とも言われるISの戦闘員を訓練している。数字に開きがあるのは、訓練の時点で戦闘員がISのメンバーだったかどうかということにあるようだ。 本ブログでは何度かしてきしたが、戦闘集団の名称には大きな意味はない。その時々で使い分けているのが実態で、例えばアメリカから武器を提供され、軍事訓練を受けるときは「穏健派」で、戦闘に参加するときはISということがよくある。現在、ISは対戦車ミサイルのTOWを保有、戦闘機を撃墜する能力も獲得していると見られている。 現在、トルコ政府がISを支援しているが、基本的には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌に2007年3月5日付けで書いたように、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの三国同盟が中東や北アフリカ不安定化させている元凶。ISはイスラエルを攻撃せず、イスラエルはISを攻撃していないのは当然だ。 ISがアメリカやイスラエルとつながっていることはロシア政府の関係者からも指摘されているが、イスラエルも隠してはいない。イスラエル軍の幹部からアメリカが始めたとISへの空爆を批判する声が出ているほか、駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンは退任前の2013年9月、アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている。 戦闘員の動きを見るだけでも、シリアなど中東の戦闘はチェチェンなどカフカス、そしてウクライナの戦いと一体。アメリカの対ロシア戦争という側面がある。アメリカの好戦派はロシア、そして中国を見据えているのだが、世界制覇という彼らの野望は足下から崩れ始めている。
2014.12.31
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(PSE)がハッキングされ、アメリカ政府はすぐに朝鮮が黒幕だと断定、同国を批判した。当初は朝鮮とハッキングを結びつける証拠はないとしていたFBIも途中、根拠を示すことなく政府に同調したのだが、外部の専門家はこの結論に懐疑的。ここにきて内部犯行説が強まっている。 この騒動の結果、PSEが製作した映画「ザ・インタビュー」が注目され、アメリカでは大ヒットしているようだ。この映画は朝鮮の金正恩第一書記を暗殺する「コメディー」。本ブログではすでに指摘したように、少なくとも2名のアメリカ政府高官が映画のラフ・カットを、つまり編集途中の映像を6月の終わりにチェックして有効なプロパガンダだと賞賛していたという。第一書記の頭を吹き飛ばす場面は国務省の意向だったともされている。 今回の場合、西側の一部メディアもアメリカ政府の断定に疑問を投げかけているが、アメリカの有力メディアは基本的に朝鮮犯行説を宣伝、そこで働く「記者」や「編集者」の大半はそうした嘘を甘受していると言えるだろう。PSEのハッキングをめぐる騒動は、アメリカという国が嘘の上に成り立っていることを再確認させる出来事だと言える。PSEのケースに限らず、支配層にとって都合の良い嘘を広めているのが有力メディアだ。 なぜアメリカの有力メディアは駄目なのかを論じる記事や著作は少なくない。例えば、ノーム・チョムスキーとエドワード・ハーマンが書いた『同意の製造』(Edward S. Herman & Noam Chomsky, "Manufacturing Consent," Pantheon, 1988)は構造的な問題を指摘、ウォーターゲート事件を調べた記者のひとり、カール・バーンスタインは1977年にローリング・ストーン誌で「CIAとメディア」という記事を書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) ウォール・ストリート・ジャーナル紙は言うまでもなくウォール街の代弁紙。戦後、アメリカで始まった情報操作プロジェクト(一般に「モッキンバード」と呼ばれている)では、その中核にアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズと一緒にワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムも含まれていた。 このプロジェクトには他のメディア幹部も協力していた。CBSの社長だったウィリアム・ペイリー、タイム/ライフを発行していたヘンリー・ルース、ニューヨーク・タイムズ紙の発行人だったアーサー・シュルツバーガー、クリスチャン・サイエンス・モニターの編集者だったジョセフ・ハリソン、フォーチュンやライフの発行人だったC・D・ジャクソンなどの名前も挙がっている。一般にリベラルと見なされているニューヨーク・タイムズ紙やロサンゼルス・タイムズ紙なども体制派の新聞にすぎない。 例えば、1996年にサンノゼ・マーキュリー紙の記者だったゲーリー・ウェッブはロサンゼルスへ大量に流れ込んでくるコカインとニカラグアの反革命ゲリラ「コントラ」との関係にメスを入れた連載記事「闇の同盟」を同紙に連載したのだが、コントラを手駒として使っていたCIAは怒る。そしてワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ロサンゼルス・タイムズ紙などがウェッブを激しく攻撃することになった。その際、自分たちが以前に書いた記事に反する主張も展開している。後にCIAは内部調査でウェッブの記事が正しかったことは確認されるが、ウェッブを攻撃したメディアは訂正も謝罪もしていない。 こうしたアメリカのメディアがイラク戦の直前、好戦的な雰囲気を広げるために偽情報を伝えていた。中でも「活躍」していたのがニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラーだった。同じ頃にアメリカの有力メディアは、アメリカの巨大資本やベネズエラの傀儡に憎悪されていたウゴ・チャベスを中傷攻撃している。 その後、そうした傾向はさらに強まり、リビアやシリアの体制転覆プロジェクトを本格化させるさいには「民主化」という幻影を広め、偽情報でムアンマル・アル・カダフィやバシャール・アル・アサドを悪魔化する大キャンペーンを展開している。この辺の事情は本ブログでも繰り返し、指摘してきた。 今年に入ってからアメリカの好戦派はロシアのウラジミル・プーチンを偽情報で攻撃している。そのプロパガンダも有力メディアが実行している。この辺の事情も本ブログでは何度も書いてきた。 おそらく、ソ連時代のプロパガンダ戦略の失敗を反省したのであろう、今のロシアは事実を前面に出してアメリカに対抗している。勿論、メディアの力は圧倒的に西側が優位なのだが、ロシアが発信する事実の力はアメリカを苦しめている。そこでロシアを「嘘の上に成り立っている」と主張する記者が西側の有力メディアにはいる。自分が言われたくないことを相手に投げかけるのは嘘つきの常套手段。 アメリカではネオコン/シオニストをはじめとする好戦派は1991年にソ連が消滅した段階で自分たちが「冷戦」に勝利し、「唯一の超大国」になったと認識、潜在的ライバルを潰すという戦略を打ち出した。その戦略のベースになっているのが「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」(これについては何度も書いているので、今回は割愛する。) フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文の中で、アメリカはロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できると主張されている。ロシアや中国との核戦争で圧勝できるということだろうが、すでにそうした状況ではない。 それにもかかわらず、独立国として振る舞うロシアや中国を軍事力で押さえ込もうとしているのがアメリカの好戦派。アメリカがウクライナをクーデターで乗っ取ったのもロシアとの戦争を視野に入れてのことだろうが、ロシアや中国は主権を守るため、アメリカの攻撃を受けて立つ決意を示している。12月26日にロシアで承認された新軍事教義はそのひとつのあらわれだ。 以前から西側ではロシアがCIAの手先として動いているNED系のNGOのロシア国内における活動を認めていることの危険性が指摘されていたが、そうした団体への規制、監視も強めるだろう。当然の防衛策だ。「民主」とか「人道」というラベルに惑わされてはならない。こうした団体はCIAの道具にすぎないのだ。1980年代、ロナルド・レーガン政権が打ち出した「プロジェクト・デモクラシー」とは「民主」という看板を侵略に使うという宣言だった。
2014.12.30
2015年を前にしても、アメリカの支配層、特にネオコン/シオニストは「唯一の超大国」として世界を支配するという妄想から抜け出せず、時代の流れを見誤り、妄想と現実の乖離は広がるばかり。それを埋めようと世界を相手に脅しをかけているのだが、それが原因で中国とロシアを接近させ、最近ではEUの内部にもアメリカから自立しようとする動きが出ている。つまりアメリカは世界で孤立しつつあるわけで、アメリカに従属している日本にも同じ運命が待つ。基軸通貨を印刷する特権を失えば、アメリカを中心とするシステムは崩壊する。 自分たちの置かれた状況を理解しているのであろうアメリカのコンドリーサ・ライス元国務長官は、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないとFOXニュースのインタビューの中で語っている。EUのエリートはアメリカの脅しと買収でコントロールされているにすぎず、アメリカ(ネオコン)の嘘は熟知している。EUの内部でアメリカに批判的な声が高まるのは必然だ。 ロシアや中国にアメリカ支配層の脅しは通じない。そうした相手を力尽くで屈服させようと、2015年にネオコン/シオニストはブラフをエスカレートさせるのだろうが、その行き着く先は核戦争である。それをEUは認識し始めた。根っからのロシア嫌いでアメリカに従属しているドイツのアンゲラ・メルケル首相などの立場は微妙になる。 ネオコン/シオニストがアメリカの世界制覇を明確に掲げたのは1992年、ソ連が消滅した翌年のこと。この年、国防総省で作成されたDPG(国防計画指針)の草案にそのビジョンが書かれている。彼らは自分たちが「冷戦」に勝って「唯一の超大国」になったと浮かれ、潜在的なライバルを潰し、資源を支配すという方針を決めたのである。ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)が中心になって書き上げられたこの草案はメディアにリークされ、書き直されたようだが、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」として生き残って2000年にはPNAC(ネオコン系シンクタンク)の報告書「米国防の再構築」として再浮上、2001年から始まるジョージ・W・ブッシュ政権の基盤になった。 ソ連が消滅した後、ロシアでは西側の傀儡だったボリス・エリツィンが君臨、国民の資産を盗んで仲間内で分けて「オリガルヒ」を生み出し、西側の巨大資本もロシアを浸食していく。一方、中国は1980年代に新自由主義化が進み、エリートの子弟はアメリカへ留学して洗脳された。これでアメリカの支配は盤石だとネオコン/シオニストは思い込んだかもしれないが、ロシアではウラジミル・プーチンが傀儡勢力を押さえ込み、中国もアメリカに屈服まではしなかった。 ネオコン/シオニストが思い描いた予定とは違う方向へ世界は動き始めたのだが、それを彼らは認められなかったようだ。彼らの心理状態を推し量るヒントになりそうな論文がフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文。それによると、アメリカはロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できると主張している。ロシアや中国との核戦争で圧勝できると今でも思い込んでいる可能性は高い。 世界を戦争へ導くため、アメリカの支配層は情報操作を使ってきた。こうした動きにはポーランド生まれのズビグネフ・ブレジンスキーも共鳴している。彼はジミー・カーター大統領の補佐官だった当時から「危機の弧」という概念を使ってソ連の脅威を煽っていた人物で、1970年代の後半にソ連をアフガニスタンへ誘い込み、そこで自分たちが育成したイスラム武装勢力と戦わせるという計画を立て、実現させている。彼はアフガニスタンから中央アジアにかけての地域がユーラシア支配の鍵を握っていると分析していた。ロシアを支配するためにはウクライナを押さえるべきだとも考えていた。 こうした戦略はNATOの東方への拡大という形になって現れるが、その第一歩がユーゴスラビアへの先制攻撃。「人権」や「人道」をキーワードにした偽情報を流して戦争の下地を作り、1999年にNATOがユーゴスラビアを全面攻撃、その際に同国に君臨していたスロボダン・ミロシェビッチの自宅や中国大使館も攻撃、勿論、多くの市民を殺した。 ブッシュ・ジュニアが大統領に就任した2001年には「9/11」があり、これを利用して国内のファシズム化と国外での軍事侵略を本格化させる。2003年にイラクを攻撃する際には「大量破壊兵器」という偽情報を流し、あたかも「9/11」とイラクが関係しているかのような嘘も広めた。 2011年にリビアやシリアの体制転覆プロジェクトを顕在化させるが、これも「民主化運動」という嘘をメディアに宣伝させている。その実態はNATOとアル・カイダの連合軍による軍事侵略にほかならなかった。 2011年のうちにリビアの体制は崩壊、翌年からはシリアを集中攻撃するのだが、その際にシリア政府を悪魔化するためにシリア系イギリス人のダニー・デイエムを使った。ただ、この偽情報発信は2012年3月に内幕を明らかにする映像が漏れ、CNNやBBCなど西側メディアの嘘が発覚した。 2012年5月にはシリアのホムスで住民が虐殺され、西側は政府側は実行したと宣伝しはじめるのだが、この嘘も短期間のうちに明らかにされた。現地を調査した東方カトリックの修道院長も反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵が実行したと報告、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っていた。現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判している。ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も、キリスト教徒やスンニ派の国会議員の家族が犠牲になっていると伝えている。 シリアの体制転覆に手間取る中、2012年に米英エリートの利害調整機関と言われるビルダーバーグ・グループはアメリカのバージニア州で会議を開き、そこでロシアの体制転覆を話し合ったと言われている。 2013年3月になると西側はシリア政府が化学兵器を使ったと宣伝しはじめるが、これはイスラエルのハーレツ紙から疑問が出され、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言する。 7月31日にはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官がロシアを訪問、シリアから手を引けばソチ・オリンピックへの攻撃を止めさせるとプーチンを脅し、逆に起こらせてしまう。脅しは逆効果だった。 8月になるとダマスカス郊外のゴータで政府軍が化学兵器を使ったアメリカ政府は宣伝し始めるが、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使がすぐに反論、その後もアメリカの主張を否定する調査報告が出されている。 ソチ・オリンピックの競技は2014年の2月6日から23日まで行われた。その間はロシア政府も動きにくいわけだが、その日程に合わせてアメリカ政府はネオ・ナチを使ってクーデターを実行、2月23日にビクトル・ヤヌコビッチ大統領を憲法を無視する形で解任している。 このようにアメリカは嘘の上に築かれた国であり、その嘘を支えているのが西側の有力メディア。2015年も同じことを繰り返し、戦争への道を驀進するのだろう。アメリカの嘘を信じる、あるいは信じたふりをするなら、人類を死滅させることになりかねない。そうした人の中にはロシア嫌いの「リベラル派」や「革新勢力」も含まれているが、それは「嫌韓」や「嫌中」を唱えながら体制、強者に従っている連中と大差がない。特定秘密保護法にしろ、集団的自衛権にしろ、そうしたアメリカの好戦的なビジョンから生み出されたものだ。
2014.12.30
2014年を象徴する出来事は2月22日に山場を迎えたウクライナのクーデターだろう。西側の巨大資本を後ろ盾にするオリガルヒやアメリカ/NATOの訓練を受けてきたネオ・ナチ(ステファン・バンデラの信奉者)が合法的に成立していたビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力的に倒したのだ。 ヤヌコビッチはウクライナの東部や南部を支持基盤にする政治家。2004年から05年にウクライナでは「オレンジ革命」があり、西側に支援されたビクトル・ユシチェンコが実権を握ったのだが、結局、一部の人間が国民の資産を盗んで巨万の富を築き、オリガルヒと呼ばれるようになっただけ。 こうした勢力の新自由主義的な略奪政策に対する反発が2010年にヤヌコビッチを大統領にしたわけだが、この軌道修正を西側の巨大資本は許せなかった。そして今年のクーデター、それに続く東部や南部での住民虐殺、民族浄化につながる。西側にとって目障りな人びとを殲滅しようとしているのだ。これを西側の政府やメディアは「民主化」と呼ぶ。 この間、アメリカ/NATOは中東/北アフリカでアル・カイダを使った体制転覆プロジェクトを展開していた。2003年にイラクからサダム・フセインを排除した後、リビアのムアンマール・アル・カダフィ体制を倒し、シリアに取りかかり、イランに対する工作も始めている。 ところが、シリアの体制転覆はロシアの抵抗で成功していない。アメリカ/NATOとアル・カイダとの関係が知られるようになってからIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)なる武装集団を登場させたが、その精鋭部隊としてグルジアのパンキシ渓谷でCIAから訓練を受けたチェチェン人も参加している。ウクライナのクーデターに参加した人物の中にもアレキサンダー・ムージチコ(別名、サーシャ・ビリー)のように、チェチェンで戦った経験のある人物も含まれている。 チェチェンの反ロシア勢力が拠点にしているグルジアはアメリカやイスラエルの影響下にある。2003年「バラ革命」で西側の傀儡、ミヘイル・サーカシビリ政権ができたのだが、その「革命」で黒幕的な役割を果たしたのは、グルジア駐在のアメリカ大使だったリチャード・マイルズ。 グルジアへは2001年にイスラエルの予備役将校2名と数百名の元兵士が「教官」として送り込まれ、無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどを含む軍事物資も提供されている。また、2008年1月から4月にかけてアメリカの傭兵会社が「元特殊部隊員」を送り込み、「アフガニスタンに派遣される部隊」を軍事訓練している。 その当時、グルジア政府には流暢なヘブライ語を話すふたりの閣僚がいた。元イスラエル人のダビト・ケゼラシビリ国防大臣と南オセチア問題で交渉を担当していたユダヤ系のテムル・ヤコバシビリだ。それだけグルジアとイスラエルとの関係が深いということである。 そのグルジアは2008年8月に南オセチアを奇襲攻撃する。サーカシビリ大統領が分離独立派に対話を呼びかけた8時間後の出来事だった。南オセチアに駐留していた「平和維持部隊」は軍事的な能力は低く、為す術がなかったのだが、すぐにロシア軍が反撃して侵攻部隊を撃退してしまった。 ロシア軍の反撃は想定外だったようで、アメリカやイスラエルを後ろ盾とするグルジア軍は惨敗、そのトラウマがウクライナでのクーデターでロシア軍が出てくることを前提とした作戦を立てた可能性がある。ただ、ウクライナの場合はロシア軍が国境を越えず、単に西側が偽情報を流すという形で終わった。 グルジアの南オセチアに対する奇襲攻撃はロシアを念頭においていた可能性があるのだが、西側のロシア制圧作戦は1999年3月、欧州連合軍がユーゴスラビアを先制攻撃して市民を殺害、スロボダン・ミロシェビッチの自宅や中国大使館も攻撃している。こうした攻撃を正当化するために「レイプ話」などの偽情報を流していた。 偽情報を流して好戦的な雰囲気を作るという手法は2001年のアフガニスタン、03年のイラク、そして2011年のリビア、シリア、今年2月のウクライナでのクーデターでも使われている。 ウクライナのクーデターではネオ・ナチのメンバーが棍棒、ナイフ、チェーンなどを持ちながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルを持ち出して撃っている。日本に比べても穏やかに対応していた治安部隊(ベルクト)の隊員の中には拉致、拷問、殺害された人も少なくない。中には目を潰されているケースもある。本来ならこれを平和的な民主化運動とは呼べないだろうが、西側のメディアはそう呼んでいた。 それでもヤヌコビッチ大統領と反政府派の代表は一旦、平和協定の調印にこぎ着けたのだが、そこで狙撃がはじまる。狙撃したのが西側を後ろ盾にするクーデター派だった。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は翌日、EUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で次のように報告している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 それに対し、その信用できないクーデター派をアシュトンは守ろうとする。「議会を機能させなければならない」と応じたのだ。 そのクーデター派によって作られた暫定政権のアルセン・アバコフ内務大臣は2月26日にベルクトの解散を発表、命の危険を感じる隊員はロシアに保護を求め、それに応える形でロシア外務省はロシアのパスポートを発行すると約束したと伝えられている。 現在、ウクライナではヌランド国務次官補から高く評価されていた銀行出身のアルセニー・ヤツェニュクは首相の座にあり、金融相にはシカゴ生まれでアメリカの外交官だったナタリー・ヤレスコ、経済発展相にはリトアニアの投資銀行家、アイバラス・アブロマビチュス、保健相にはグルジアで労働社会保護相を務めたことのあるアレキサンドル・クビタシビリが就任した。3名とも就任の数分前にウクライナ国籍を特例で取得している。「異例の登用」ではなく、「異常な登用」だ。いずれもアメリカが送り込んだ人物で、クビタシビリの妻はCIAの仕事をしているといわれている。 さらに「異常な登用」が噂されている。ウクライナの国立銀行総裁候補として投機家のジョージ・ソロスの名前が挙がっているのだ。ウクライナで誕生したオリガルヒのひとり、ユリア・ティモシェンコは2007年から10年まで首相を務めているが、その間、08年にはソロスからのアドバイスに基づく政策を実行すると発言している。それほどソロスもオレンジ革命に関与しているということだ。 ソロスはCIA系の団体とも連携している。つまり、CIAが工作資金の供給ルートとして利用しているUSAID、NED、NDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、さらにフリーダム・ハウス、アルバート・アインシュタイン研究所といったNGOと彼は手を組み、旧ソ連圏を自分たちに都合の良い国に作り替えようとしている。1983年にアメリカで「民主主義のための国家基金法」に基づいてNEDが創設された時から、アメリカ政府はNGOを体制転覆の橋頭堡とし利用し、そこに少数民族や労働組合などを絡めてくる。 アメリカはウクライナを露骨に植民地化、ロシアを再びボリス・エリツィン時代のように属国化しようとしている。ロシアのようにアメリカと対立している国がNGO、少数民族、労働組合をメディアと同じように警戒するのは当然だろう。こうした団体の頭には全て「エセ」がついている。
2014.12.28
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(PSE)のハッキング騒動は現在のアメリカを象徴する出来事だったと言える。プロパガンダによる国民の心理操作だ。アメリカは嘘の上に成り立っているのであり、その嘘を実践しているのが西側、特にアメリカの有力メディア。こうしたメディアに「社会の木鐸」を期待しても仕方がない。 この騒動で注目するように仕向けられた映画がある。金正恩第一書記の暗殺をテーマにした「ザ・インタビュー」がそれで、騒動は効果的な宣伝になった。デイリー・ビースト(ニューズウィーク誌系)によると、少なくとも2名のアメリカ政府高官はその映画のラフ・カットを、つまり編集の途中で見て、6月の終わりには映画を有効なプロパガンダだとして賞賛、第一書記の頭を吹き飛ばす場面は国務省の意向だったともされている。これが事実なら、この映画の製作にアメリカ政府が関与しているということになる。 専門家の間では「朝鮮犯行説」に懐疑的な人が多いようで、早い段階から自作自演説が流れていた。当初はFBIも朝鮮とハッキングを結びつける証拠はないとしていた。アメリカ政府が朝鮮を名指しで批判した後にFBIは根拠を示すことなく「朝鮮犯行説」に同調したが、この説に対する疑問の声は弱まっていない。アメリカ政府も朝鮮犯行説を裏付ける証拠、根拠は示していない。証拠を「見ずに信じる者は幸い」だと言うばかりだ。 前にも書いたことだが、問題の映画をプロデュースしたのはセス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、ジェームズ・ウィーバー、監督はセス・ローゲンとエバン・ゴールドバーグ、主役はセス・ローゲンとジェームズ・フランコ。 プロデューサー兼監督兼主役のセス・ローゲンは親イスラエル派として知られている。両親も知り合ったのがイスラエルのキブツで、2代続けて筋金入りの親イスラエル派だということになる。しかも、ジャーナリストのウェイン・マドセンによると、イスラエル軍がガザで行った虐殺を支持している。この点はもうひとりの主役、ジェームズ・フランコも同じだという。 アメリカには朝鮮へ軍事侵攻する作戦が存在している。例えば、OPLAN(作戦計画)5027-98は当時の金正日体制を倒し、国家として朝鮮を消滅させて韓国が主導して新たな国を建設することになっていて、CONPLAN(概念計画)5029(2005年にOPLANへ格上げされた)の目的は、アメリカ軍が朝鮮の核施設、核兵器、核物質を押収することにあり、CONPLAN 8022-02は空爆を電子戦やサイバー攻撃と並行して行うという内容で先制核攻撃を含んでいる。 アメリカの有力メディアは第2次世界大戦の前からプロパガンダ機関として機能していた。例えば、1933年から計画された反フランクリン・ルーズベルト大統領のクーデターでは、スメドリー・バトラー海兵隊少将らの証言によると、新聞を使って大統領の健康状態が悪化していると宣伝することになっていた。 大戦が終わるとすぐにウォール街/情報機関は情報操作プロジェクトを始めている。一般に「モッキンバード」と呼ばれているが、そのプロジェクトの中枢はアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハム。 ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士で、祖父が国際的な投資家であるヘルムズと同じようにOSS(戦時情報機関)やCIAの幹部。義理の父親が世界銀行の初代総裁であるグラハムはワシントン・ポスト紙の社主だった。同紙が影響力を持ち、有力紙と呼ばれるようになったのは、この人脈のおかげだと言われている。 このワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を明るみに出したカール・バーンスタインは1977年に退社、すぐにローリング・ストーン誌で「CIAとメディア」という記事を書いている。その冒頭、400名以上のジャーナリストがCIAのために働いているとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media,” Rolling Stone, October 20, 1977) この後、CIAはメディアの締め付けを強化、巨大資本によるメディア買収もあって気骨ある記者は排除されてきた。そうした犠牲になったひとりがサンノゼ・マーキュリー紙の記者だったゲーリー・ウェッブ。ロサンゼルスへ大量に流れ込んでくるコカインとコントラとの関係を指摘する連載記事「闇の同盟」を書いたのだが、間もなくするとワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ロサンゼルス・タイムズ紙といった有力紙がウェッブに対する攻撃を開始、生活の手段を奪い、最終的には自殺させている。なお、後にCIAは内部調査でウェッブの記事を裏付けているが、有力紙は訂正も謝罪もしていない。 1985年にはAPの記者だったロバート・パリーとブライアン・バーガーもコントラが資金調達のためにコカインを密輸しているとする記事をコントラの支援活動をしていた人物の情報に基づいて書いている。AP本社の編集者は彼らの記事をお蔵入りにしようとしたが、「ミス」でスペイン語に翻訳され、ワールド・サービスで配信されてしまった。その後、パリーは有力メディアの世界から追い出されている。 最近では、ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者でヘルムート・コール首相の顧問を務めた経験もあるウド・ウルフコテがドイツの腐敗した編集者や記者の実態を自著の中で告発している。 彼によると、ドイツだけでなく多くの国のジャーナリストがCIAに買収され、例えば、人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開、そうした仕組みを作り挙げるため、アメリカの支配層はドイツの有力な新聞、雑誌、ラジオ、テレビのジャーナリストを顎足つきでアメリカに招待、取り込んでいくと指摘している。日本と似たような手法だ。 そうして作り上げられた西側のプロパガンダ・システムが人びとを戦争へと導いていることは言うまでもない。ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、イラン、ウクライナ等々、アメリカ/NATOの軍事侵攻を正当化させるために全力を挙げている。こうした西側のメディアを有り難がっている人物が安倍晋三政権の政策、例えば特定秘密保護法や集団的自衛権を批判することは不可能。こうした政策はアメリカ支配層の戦略から出ているのであり、その支配層の宣伝部門が西側の有力メディアだからだ。
2014.12.27
中国で外国為替取引を担当している外滙交易中心によると、中国は12月29日にマレーシア通貨のリンギット、ロシアのルーブル、そしてニュージーランド・ドルと通貨スワップ協定を結ぶという。 ロシアの主要な輸出品である石油の相場が今年7月から下がりはじめ、10月から急落、11月下旬から1ドル当たりのルーブルが急上昇(ルーブル安)する中での決定だ。西側からは中国に対し、アメリカに逆らうなという恫喝があったようだが、ロシアや中国に脅しは効果的でない。アメリカ支配層の覇権戦略は破綻している。 アメリカの支配層、特にネオコン/シオニストが暴走を始めたのは1991年のことである。1980年代半ばに石油価格が急落、86年にはチェルノブイリ原発で事故が起こったこともあり、ソ連は1991年に消滅、アメリカは「唯一の超大国」になったと彼らは認識、潜在的なライバルを押さえ込もうとした。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、この頃、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官はシリア、イラン、イラクを含む地域を「掃除」すると語っているが、その翌年にウォルフォウィッツを中心とするグループが国防総省の内部でDPG(国防計画指針)の草案を作成、アメリカの覇権を確かなものにしようとした。この草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 この草案は外部にリークされて書き直されたというが、そのビジョンはビル・クリントン時代にも消えず、2000年にPNACの「米国防の再構築」として復活した。2001年から大統領を務めたジョージ・W・ブッシュの政策はこのビジョンに基づいている。アメリカが軍事侵略を本格化させるのは2001年9月11日以降だが、その準備は遙か前からできていた。 就任当初のブッシュ・ジュニア大統領は「中国脅威論」を振りかざしていた。この主張は国防総省のONA室長、アンドリュー・マーシャルに吹き込まれたようだ。マーシャルはシカゴ大学で経済学を学んだ人物で、元々は軍事戦略の専門家ではない。1949年に国防総省系の「ランド・コーポレーション」に入って核戦争について研究、リチャード・ニクソンが大統領だった73年にONAが創設されると室長に就任している。当時は「ソ連脅威論」を売りにしていた。 リチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚した後、政権を引き継いだのがジェラルド・フォード。この政権ではデタント派が粛清され、CIA長官にはジョージ・H・W・ブッシュが就任、CIAの内部にはソ連の脅威を誇張する目的で設置された「チームB」が始動する。このチームBの中にウォルフォウィッツも含まれていた。ドナルド・ラムズフェルドやリチャード・チェイニーが台頭してくるのもこの政権だ。 21世紀に入るとロシアでアメリカ支配層を震撼させる出来事が起こる。自分たちの傀儡だったボリス・エリツィンをウラジミル・プーチンが排除、ロシアを独立の道へ導いたのだ。1917年3月にロシアではロマノフ朝が倒されたが、この革命で成立した臨時革命政府は産業資本家が主導権を握っていた。臨時革命政府に反対する勢力からは「イギリスの傀儡」と言われていた。 この三月革命(二月革命とも言う)当時、ウラジミール・レーニンやレフ・トロツキーといったボルシェビキの幹部は亡命中か、刑務所に入れられていた。イギリス政府は特にレーニンとトロツキーが亡命先から帰国することを嫌っていたようだが、ドイツの助けを借りてレーニンやトロツキーは帰国する。7月にボルシェビキは武装デモを行うが失敗するが、8月にクーデター騒動でトロツキーの影響力が強まり、11月の革命につながった。プーチンの登場はこのパターンに似ている。 アメリカが東アジアで嫌っていることは中国と日本の接近、ヨーロッパで嫌っていることはロシアとドイツの接近だろう。すでに中国とロシアは手を組んでいるわけで、日本とドイツが加わるとアメリカの支配システムは崩壊する。 ただ、そのドイツで首相を務めているアンゲラ・メルケルはロシア嫌いで有名。アメリカの忠実な僕だと見なされている。母親がポーランド人で、本人は東ベルリンで育ったという経歴が関係しているようだ。 そうした政権ではあるが、閣僚の内部にもロシアを威嚇し、ドイツどころかヨーロッパ全域を破滅させかねない政策に反発する声も出てきた。同じ傾向はフランスに見られる。アメリカ(ネオコン)のやり過ぎがドイツとロシアを接近させることにも。
2014.12.26
ヨルダンはイスラエルから天然ガスを輸入しようとしている。イスラエルのグローブス紙によると、取り引きは15年以上、金額は150億ドルに達するというのだが、この取り引きについてヨルダンの国会議員、ヒンド・アル・ファイーズはテレビのインタビューで激しく批判。同議員と同じように考えているヨルダン人は少なくないはずで、大きな不安定要因になっている。 イスラエルが輸出する天然ガスは地中海の東側で発見された資源の一部。2001年にイスラエルの沖で調査が始まり、2009年に天然ガスが発見された。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。その発見に関係した会社のひとつ、ノーブル社のロビイストとして仕事をしているひとりがビル・クリントン元大統領だ。 この天然ガスが「アラブの春」を引き起こした一因であり、2008年12月から09年1月にかけてイスラエル軍がガザへ軍事侵攻した理由もここにあるとする見方がある。この侵攻では1400名以上のパレスチナ人が殺され、その際に白リン弾のような「化学兵器」やGBU-39(スマート爆弾)の使用が明らかにされている。国連調査委員会も、この侵攻で国際人道法に違反する行為があったとしている。 歴史的にヨルダンとイスラエルの支配層は関係が深い。例えば、1970年にはヨルダン国王の意向を無視して同国の軍幹部はPLOを攻撃している。ヤセル・アラファト議長は危ういところでエジプトへ逃れた。エジプトのガマール・アブデル・ナセル大統領はその直後に急死、後任は「元イスラム同胞団員」でヘンリー・キッシンジャーと親しいアンワール・サダトに決まった。 現在、中東を混乱させているIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)とヨルダンとの関係も注目されている。2012年にはヨルダンの北部に設置された秘密基地でアメリカの情報機関や特殊部隊がISの主要メンバー数十人を含む戦闘員を軍事訓練、トルコと同じようにヨルダンにISはシリアへの侵入ルートを持っていると言われている。 このISを率いているというアブ・バクル・アル・バグダディは2013年5月、シリアへ密入国していたネオコン/シオニストのジョン・マケイン上院議員と会っている。会談にはFSAの幹部も同席していた。 ネオコンは「イスラエル第一派」だが、このイスラエルでは軍の幹部からアメリカが始めたとISへの空爆を批判する声が出ている。シリアの体制転覆が重要なのであり、ISと戦うのは間違いだという主張だ。 こうした見方はイスラエル政府で広がっているようで、駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンは退任前の2013年9月、イスラエルはシリアの体制転覆が希望だと明言、バシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている。 ネオコンやイスラエルはイランやシリアの体制転覆が目標であり、ISも利用するということ。ニューヨーカー誌の2007年3月5日号に掲載されたシーモア・ハーシュの記事によると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作をその時点で開始していたとしている。2007年当時のアメリカ大統領はネオコンにコントロールされていたジョージ・W・ブッシュ。 ウラジミル・プーチン露大統領の側近、アレキサンダー・プロハノフはイランのプレスTVのインタビューでISはアメリカの道具であり、イスラエルの情報機関、モサドの訓練を受けている可能性を指摘している。ロシアの要人が口にするのは興味深いが、こうした話は以前から流れていた。 バラク・オバマ政権になって一時期は非ネオコン派が影響力を強めたが、ここにきて再びネオコンや戦争ビジネスが主導権を握った。アメリカでISを使っているのは国務省とCIAだと言われているが、アメリカ軍が主導している空爆でISにダメージを与えているかどうかも疑問。 9月23日に空爆を始めた直後、最初の攻撃で破壊されたビルはその15から20日前から蛻の殻だったとCNNのアーワ・デイモンは翌朝の放送で伝えている。情報が漏れているのか、最初から誰もいないビルを攻撃する計画だったのかは不明だが、いずれにしても攻撃の効果には首を傾げざるをえない。製油所を破壊しているのは、シリアの産油能力を弱めるためだと推測する人が少なくない。 そうした空爆に参加していたというヨルダン空軍のパイロットをISが拘束したと伝えられている。そのパイロットが乗っていたF-16戦闘機を撃墜したとISは主張しているが、アメリカ軍は否定している。 この撃墜の詳細は不明だが、イスラム教徒をも虐殺しているISを見るイスラム世界の目は厳しく、ヨルダンが本気でISを空爆しても大きな問題にはならないだろう。むしろ、ヨルダンを揺るがしかねないのはイスラエルとの天然ガス取り引きだ。
2014.12.25
12月14日が投票日だった衆議院選挙の結果、自民党と公明党は圧倒的な議席を維持した。日本全体でも個別の政策に関して国民が支持しているわけではなく、投票率も戦後最低の52.66%にすぎず、比例代表で自民党が得票したのは17.44%、与党合計で24.66%であり、小選挙区の場合、自民党は25.33%、与党全体では26.09%。 これで圧勝と呼ぶべきでないと主張する人もいる。野球で完敗したチームが、得点は圧倒されているものの、安打数では勝っていると強がるようなもので、選挙は議席数を争うものだということを忘れた議論。ともかく自民党と公明党は公示前と同じ326議席を獲得し、その議席率は68.63%に達した。「2年間の安倍政権に信任をいただいた」とは言えないが、圧勝したのだ。 今後、その議席数を利用して安倍晋三政権は自国の経済を破綻させ、社会を破壊し、国民と国土を侵略戦争を続けるアメリカに差し出す政策を打ち出してくるだろう。第2次世界大戦の前、1932年までと似たようなことをするということだ。 近代日本は明治維新で始まると言えるだろうが、徳川体制の転覆にイギリスが関与していることは否定できない。そのイギリスは18世紀の後半から生産の機械化を進めたものの、巨大市場だった中国で売れない。商品として魅力がなかったということだが、逆に中国の茶がイギリスで人気になって大幅な輸入超過。この危機を打開するためにイギリスは中国へ麻薬(アヘン)を売ることにしたわけだ。 当然、中国側はアヘンの輸入を禁止しようとする。そこでイギリスは1840年に戦争を仕掛けて香港島を奪い、上海、寧波、福州、厦門、広州の港を開港させたうえ、賠償金まで払わせている。これ以降、香港はイギリスやアメリカが東アジアを侵略する重要な拠点になった。 1856年から60年にかけてはアロー号事件(第2次アヘン戦争)を引き起こし、11港を開かせ、外国人の中国内における旅行の自由を認めさせ、九龍半島の南部も奪い、麻薬取引も公認させた。 イギリスが行った「麻薬戦争」で大儲けしたジャーディン・マセソン商会は1859年にトーマス・グラバーを長崎へ派遣し、彼は薩摩藩や長州藩など倒幕派を支援することになる。その邸宅は武器弾薬の取り引きにも使われた。 1863年には「長州五傑」とも呼ばれる井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)が藩主の命令でロンドンに渡るが、その手配を担当したのもグラバー。渡航にはジャーディン・マセソン商会の船が利用された。こうしたイギリスを後ろ盾とする人びとが作り上げた明治体制は「現人神」の天皇を頂点とする一種の宗教組織で、当初の天皇は飾り物にすぎなかった。 廃藩置県の後に琉球藩をでっち上げるという不自然なことをした後、日本は台湾、朝鮮半島、中国というように侵略していくが、その背後にはイギリスやアメリカの影が見え隠れする。日露戦争で日本はウォール街のジェイコブ・シッフから資金を調達、ウォール街と結びついていたシオドア・ルーズベルト大統領の仲介で何とか「勝利」している。 関東大震災の復興資金をJPモルガンに頼った日本はウォール街の強い影響下に入るのだが、1932年にその関係が揺らぐ。この年に行われた大統領選挙でJPモルガンをはじめとするウォール街が支援していた現職のハーバート・フーバーが破れ、ニューディール政策を掲げるフランクリン・ルーズベルトを選んだのである。 フランクリンは巨大企業の活動を規制して労働者の権利を認めようとしていただけでなく、ファシズムや植民地に反対する姿勢を見せていた。親戚だというだけでシオドアとフランクリンを同一視するのは大きな間違いだ。 そこで、ウォール街は1933年にクーデターを準備し始めるのだが、この事実は名誉勲章を2度授与された海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー退役少将の告発で発覚する。計画についてバトラー少将から聞いたジャーナリストのポール・フレンチはバトラーに接触してきた人物を取材、コミュニストから国を守るためにファシスト政権をアメリカに樹立させる必要があると聞かされたという。これも議会の記録に残っている。 皇室とウォール街を結ぶ重要なパイプだったのがジョセフ・グルー。1932年から41年まで駐日大使を務め、戦後はジャパン・ロビーの中心的な存在として日本の「右旋回」、つまり戦前回帰を主導した人物だ。 このグルーの親戚、ジェーン・グルーはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりモルガン財閥総帥の妻。またグルーの妻、アリス・ペリー・グルー(ペリー提督の末裔)は大正(嘉仁)天皇の妻、貞明皇后(九条節子)と華族女学校(女子学習院)で親しくなっている。言うまでもなく、昭和天皇は貞明皇后の子どもであり、昭和天皇はウォール街と結びついていたということにもなる。 戦後、「日米同盟」の仕組みを作り上げる上で昭和天皇が重要な役割を果たしていたことを豊下楢彦教授は明らかにしたが、その背景にはこうした事情もあった。吉田茂首相とマッカーサー司令官ではなく、天皇とワシントンとの間で軍事同盟の青写真が描かれていったのである。「悪いのは全て軍部だった」で内務官僚をはじめとする役人、学者、新聞記者などは責任を回避、その結果が現在の日本につながっている。
2014.12.24
アメリカの支配層、特に好戦派にとって朝鮮は大切な存在である。アジア大陸の東側は彼らにとって警戒すべき潜在的なライバルであり、友好的な関係を深められてはたまらない。この地域を不安定化させる道具として朝鮮は重要な仕掛けだ。 ロシアとEUの接近を阻もうとしているように、アメリカの支配層は東アジアでも対立を煽っている。そのために利用されているのが差別意識を埋め込まれた日本と挑発に乗りやすい朝鮮。その挑発に乗りやすい朝鮮を挑発する映画をソニー・ピクチャーズエンタテインメント(PSE)が製作した。 その映画が金正恩第一書記の暗殺をテーマにした「ザ・インタビュー」。デイリー・ビースト(ニューズウィーク誌系)によると、少なくとも2名のアメリカ政府高官は映画のラフ・カットを、つまり編集の途中で見て、6月の終わりには映画を有効なプロパガンダだとして賞賛していたとも報道されている。つまり、この映画の製作にアメリカ政府が関与していた。CIAが関与、DVDを朝鮮へ密輸しようとしていた可能性も高い。 今回のハッキングに関し、朝鮮側は共同調査を提案しているが、勿論、アメリカ側は拒否している。アメリカ政府はハッキングを問題にしているのではなく、ハッキングを口実にして東アジアを不安定化させようとしているだけのことだ。ロシアや中国の存在感が高まっていることをバラク・オバマ政権は懸念しているだろう。 ところで、問題の映画をプロデュースしたのはセス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、ジェームズ・ウィーバー、監督はセス・ローゲンとエバン・ゴールドバーグ、主役はセス・ローゲンとジェームズ・フランコ。映画の中心的な存在はセス・ローゲンだと言えるだろうが、この人物の両親はイスラエルのキブツで知り合ったという親イスラエル派。セス・ローゲン本人も筋金入りの親イスラエル派で、ジャーナリストのウェイン・マドセンによると、イスラエル軍がガザで行った虐殺を支持、もうひとりの主役であるジェームズ・フランコも親イスラエル派だという。 ネオコン/シオニストと同じ立場ということだろうが、このグループはイスラム世界で自立の道を歩み、アル・カイダのような武装集団と対立していた体制を暴力的に倒してきた。ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けたのもこの勢力だ。そして今、東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。 彼らは遅くとも1990年代、ソ連が消滅した後に東アジアを警戒するようになる。ネオコン/シオニストのブレーン的な存在で、冷戦時代にソ連脅威論を布教していた国防総省のアンドリュー・マーシャルONA室長はソ連消滅後、中国脅威論を主張している。ソ連を消滅させ、旧ソ連圏は自分たちの属領になったとでも思ったのだろう。 そうした判断の延長線上に1992年に作成されたDPG(国防計画指針)の草案や、ネオコン/シオニスト系のシンクタンク、PNACが2000年に公表した報告書「米国防の再構築」につながる。ジョージ・W・ブッシュ大統領も就任直後、2001年9月11日までは中国脅威論を叫んでいた。 ところが、属領になったはずのロシアはウラジミル・プーチンによって傀儡勢力が粛清され、自立の道を歩き始めた。ロシアを制圧したという前提で中国に向かっていたわけだが、ロシアと中国を相手にしなければならない展開で、アメリカは迷走を始めている。今は1980年代に成功したプランを持ち出し、とにかく力で押さえ込もうとしているが、打つ手は裏目に出ている。 そうした中、出してきたのが朝鮮をテーマにした映画の問題。この騒動を宣伝に利用、プロパガンダの効果を高めて映画を公開するらしいが、思惑通りになるかどうかは疑問。すでに映画の背景が知られ始めている。
2014.12.23
バラク・オバマ米大統領はサイバー攻撃を展開してきた。イランの核施設を制御しているコンピュータ・システムに対する攻撃は有名だが、それだけでなく全世界の政府、国際機関、巨大な銀行やメーカーなどを監視、情報を盗み出してきた。要人、組織、国などの弱みを握るだけでなく、相場操縦も行い、技術を盗んでいる可能性が高い。 世界で最もサイバー攻撃の能力が高いのはアメリカであり、アメリカは実際に攻撃してきた。その中でも有名なものが「オリンピック・ゲームズ」。イランの核施設を制御しているコンピュータ・システムに対する攻撃で、ジョージ・W・ブッシュ政権が始めたのだが、オバマ政権は攻撃を強化している。発見が遅れれば、大きな核惨事になるところだった。 この作戦はアメリカとイスラエルの電子情報機関、つまりNSAと8200部隊の共同して行った作戦で、その武器はコンピュータ・ウイルス。侵入したコンピュータ・システムに関する情報を入手して外部に伝える不正プログラム「フレーム」とフレームのプラグインである「スタックスネット」だ。この攻撃をニューヨーク・タイムズ紙が初めて伝えたのは2012年6月のことだが、ウイルスが発見されたのは10年のこと。攻撃が始まったのはその前年だと見られている。 アメリカの通信傍受が初めて明るみに出たのは1972年のこと。ランパート誌の8月号に元NSA分析官をインタビューした記事が掲載され、その中で全ての政府をNSAが監視していると語っているのだ。 NSAはイギリスの電子情報機関GCHQとの関係が深く、両機関を中心にUKUSAという連合体を組織している。この2機関の下にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関がある。言うまでもなく、この5カ国はアングロ・サクソン系だ。 GCHQの存在が明らかになったのは1976年のこと。ダンカン・キャンベルとマーク・ホゼンボールがタイム・アウト誌で発表したのだが、この記事が原因でホゼンボールは国外追放になり、キャンベルはMI5(治安機関)の監視下に入った。 その数年後、キャンベルはタイム・アウト誌のクリスピン・オーブリー記者と電子情報機関の元オペレーターを取材、この3名は逮捕されてしまう。オーブリー(Aubrey)、元オペレーターのベリー(Berry)、そしてキャンベル(Campbell)の頭文字をとって「ABC事件」とも呼ばれている。そうした弾圧を跳ね返してキャンベルは電子情報機関の暗部を暴き続け、1988年にはECHELONの存在を明らかにした。 1970年代から電子技術が急速に進歩、そのひとつの結果として監視能力も飛躍的に強化された。通信の傍受だけでなく、不特定多数の個人情報を集めて分析できるようになったのである。 例えば、アメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が進めたTIAプロジェクトでは、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆるデータの収集と分析が目的。支配層は庶民の全てを監視したがっている。 それに対し、支配システムが隠している情報を暴こうとする行為は厳しく罰せられる。キャンベルたちもそうだが、エドワード・スノーデンのような内部告発者、あるいは内部告発を支援してきたWikiLeaksのような存在を決して許そうとはしない。日本でも「特定秘密保護法」を強行導入した。支配層は被支配層の全てを知りたがり、自分たちの全てを隠したがるわけだ。 不特定多数の個人情報を収集、分析、保管するシステムの開発が始まった頃、アメリカの民間企業(開発者はNSAの元分析官)がPROMISというプログラムを開発した。このシステムに日本の法務総合研究所も注目、1979年3月と1980年3月、2度にわたって概説資料と研究報告の翻訳を『研究部資料』として公表している。 ロナルド・レーガン政権の米司法省はこのシステムを自分のものにし、アメリカとイスラエルの情報機関、つまりCIAとLAKAM(科学情報連絡局)へ渡した。ロバート・マクファーレンからLAKAMは手に入れている。 CIAはカバゾン先住民保留地(南カリフォルニアの保養地パーム・スプリングスから東へ約40キロメートル)へ持ち込んでトラップドアを組み込み、ダミー会社を介して全世界に売り、LAKAMも同じようにトラップドアを組み込んでミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルの会社を使って売りさばいた。その会社ではジョン・タワー元米上院議員も働いている。つまり、タワーはイスラエルと緊密な関係にあった。 サイバー攻撃でいの一番に非難されべき国はアメリカであり、そうした攻撃による損害を賠償すべき国があるとすれば、それはアメリカ。この国は自分のやりたいことをやるため、偽情報を流してきた。証拠の改竄が日常茶飯事だということは本ブログを読むだけでもわかるだろう。アメリカはたちの悪いゴロツキのようなものだ。言いがかりをつけてカネを巻き上げようとする。
2014.12.22
来年、2015年はナチス時代のドイツが降伏してから30年目にあたる。本ブログでは何度か書いたことだが、事実上、ドイツ軍はソ連軍に敗れたわけで、ソ連の中心的な存在だったロシアとしては強い思い入れがあるはず。それを記念してロシアは来年、記念式典を開催するようで、その式典に朝鮮の金正恩第一書記を招待したという。ここ2年ほど、ロシアは朝鮮との関係を緊密化させようとしている。 ドイツが攻め込む前、ソ連はそうした攻撃を予想していなかった可能性が高い。ヨシフ・スターリンが権力を握る過程、1936年から38年にかけて大規模な粛清が行われ、政敵や古参党員が排除されただけでなく、赤軍(ソ連軍)の幹部将校も根こそぎ粛清されて軍隊は機能不全の状況になっていたのだ。戦争を計画していたならできなこと。そうした中、ドイツ軍は1941年に東へ向かって進撃を開始した。バルバロッサ作戦だ。 当初はドイツが優勢でソ連軍はスターリングラードまで後退、そこで1942年から43年の初めにかけて激しい攻防戦が展開された。フランクリン・ルーズベルト米大統領はソ連を支援する意思があったようだが、国としてはイギリスと同じように傍観した。 アメリカ軍を中心とする部隊は1944年の初夏にノルマンディーへ上陸するが、これはドイツ軍が総崩れになり、ソ連軍が西に向かって進撃を開始したのを見てあわてて実施した作戦だった。ハリウッドはこの作戦を大々的に宣伝しているが、所詮はそうした程度のもの。 イギリスのウィンストン・チャーチル首相のソ連に対するメンタリティーを示す出来事がある。1945年5月にドイツが連合国に降伏すると、チャーチル首相はソ連に軍事侵攻するための作戦を立案するようにJPS(合同作戦本部)へ命令したのだ。5月の後半には作戦ができあがり、7月初頭に数十万人の米英軍が再武装したドイツ軍約10万人を伴って奇襲攻撃することになっていた。実行されなかったのは参謀本部が計画を拒否したためだ。 アメリカではドイツが降伏する前の月に反ファシスト派のフランクリン・ルーズベルト大統領が急死、反コミュニスト派がホワイトハウスで実権を握っていた。そのアメリカではソ連に対する先制核攻撃の準備が始まる。 また、1944年に米英両国はゲリラ戦部隊のジェドバラを組織している。それまでドイツが占領していた地域で展開されていたレジスタンスの主力はコミュニストで、ドイツの敗戦が必至の情勢になったのを見てのことだろう。 この部隊は戦後、CIAの秘密工作(テロ)部隊になる。イタリアのグラディオに代表される「NATOの秘密部隊」もジェドバラの流れだ。今年2月にアメリカ/NATOはネオ・ナチを使い、ウクライナでクーデターを成功させたが、そのクーデターにも「NATOの秘密部隊」が参加していると言われている。 ところで、ロシアと朝鮮との関係だが、2年前にロシア政府は朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をすると提案している。ロシアは天然ガスを韓国へ送るパイプラインのほか、鉄道も建設したい意向のようだ。これが実現されると、朝鮮半島はロシアと中国を中心とするグループの影響下に入ることになり、アメリカとしてはあらゆる手段を使って潰したいことだろう。 そうした中、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(PSE)のハッキングが引き起こされた。同社の製作した金正恩第一書記の暗殺をテーマにした「コメディ」、「ザ・インタビュー」の封切りが中止されたのだが、バラク・オバマ米大統領は根拠、証拠を示すことなくハッカー攻撃に朝鮮政府が関与していると断定、PSEの決定を批判した。 例によって、アメリカは自分の言うことを信じろと強要するわけだが、このハッキングについては西側のメディアも怪しげな背景を伝えている。例えば、デイリー・ビースト(ニューズウィーク誌系)によると、少なくとも2名のアメリカ政府高官は映画のラフ・カットを、つまり編集の途中で見て、6月の終わりには映画を有効なプロパガンダだとして賞賛していたという。つまり、この映画の製作にアメリカ政府が関与しているということであり、第一書記の頭を吹き飛ばす場面は国務省の意向だったともされている。 アメリカは朝鮮へ軍事侵攻する計画を練り上げてきた。例えば、1998年に改訂されたOPLAN(作戦計画)5027-98は当時の金正日体制を倒し、国家として朝鮮を消滅させて韓国が主導して新たな国を建設することになっていた。 その翌年に検討され始めたCONPLAN(概念計画)5029(2005年にOPLANへ格上げされた)の目的は、アメリカ軍が朝鮮の核施設、核兵器、核物質を押収することにあると伝えられている。 アメリカがイラクを先制攻撃した2003年に作成されたCONPLAN 8022-02は空爆を電子戦やサイバー攻撃と並行して行うという内容で、先制核攻撃を含んでいる。そのターゲットとして想定されているのは朝鮮やイランだ。 言うまでもなく、集団的自衛権はこうしたアメリカの作戦と密接に関係している。つまり、アメリカの軍事侵略を支援することが目的である。
2014.12.21
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(PSE)がハッキングされ、同社の製作した「ザ・インタビュー」の封切りが中止されたという。朝鮮の金正恩第一書記の暗殺をテーマにした「コメディ」で、同第一書記の頭を吹き飛ばす場面があるという。 封切りされないとなると、大半の人は映画を見られないのだが、デイリー・ビースト(ニューズウィーク誌系)によると、少なくとも2名のアメリカ政府高官は映画のラフ・カットを、つまり編集の途中で見て、6月の終わりには映画を有効なプロパガンダだとして賞賛していたとも報道されている。これは外部に漏れた電子メールで発覚した。つまり、この映画の製作にアメリカ政府が関与しているということ。第一書記の頭を吹き飛ばす場面は国務省の意向だったともされている。 映画の製作に関与していたアメリカ政府のボス、バラク・オバマ大統領はPSEの封切り中止を批判、根拠、証拠を示すことなくハッカー攻撃に朝鮮政府が関与していると断定したという。FBIもハッカーの背後で朝鮮の政府が関与していると断定したそうだが、当初、そうした根拠はないとしていた。最初に送られてきた11月21日付けのメールには朝鮮や「ザ・インタビュー」には言及されていなかったようだ。何か情報をつかんだなら、明らかにすべきだ。 今月上旬、アメリカ政府がロシアとの戦争を目指して「偽旗作戦」を計画しているという噂が流れ始めていた。PSEに対するハッキングがその作戦なのかどうかは不明だが、少なくともハッキングを利用して東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。そもそも映画の製作自体がそうした目的だった可能性が高い。 1970年代のアメリカ上院の「情報活動に関する政府工作を調査する特別委員会」(フランク・チャーチ委員長)や下院の「情報特別委員会」(ルシアン・ネッツィ委員長、後にオーティス・パイクへ変更)がCIAの違法活動を調べ、その中でCIAとメディアとの関係が出てきた。ウォーターゲート事件を追及したことで有名なカール・バーンスタインも1977年、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)その後メディアに対する巨大資本の支配度は強まり、気骨のある記者は排除されてきた。 アメリカの映画界、いわゆるハリウッドも先住民の虐殺を正当化する映画を作り続けるなど支配層のプロパガンダ機関。イスラエルを批判することは許されず、イスラム世界は悪役として描かれる。そのハリウッドを象徴する映画賞が「アカデミー賞」だ。 そのアカデミー賞で助演男優賞を受賞したハビエル・バルデム(2007年公開の「ノーカントリー」)や助演男優賞を受賞したハビエル・バルデム(2008年公開の「それでも恋するバルセロナ」)がイスラエル軍のガザにおける虐殺を批判したところ、ハリウッドのプロデューサーの逆鱗に触れ、「ブラックリスト」に載せられると言われた。 ハリウッドを支配する人びとの背後にアメリカやイスラエルの情報機関が存在することは有名な話。例えば、ハリウッドの大物プロデューサーだったアーノン・ミルシャンはLAKAM(イスラエルの科学情報連絡局)とつながっていた。1985年にジョナサン・ジェイ・ポラードという男がイスラエルのスパイとしてアメリカで逮捕され、有罪判決を受けて服役中だが、このポラードを動かしていたのがLAKAM。このミルシャンに協力していた人物のひとりが映画監督のシドニー・ポラックだ。 今回のハッキングは誰が行ったか不明で、少なくとも朝鮮が実行したことを示す証拠は皆無に等しい。ただアメリカ政府が朝鮮を名指しで批判しているだけだ。そのアメリカ政府は嘘をつき続けてきた。アメリカ政府の嘘を暴くような映画は許されない。イラクを先制攻撃する口実にされた「大量破壊兵器情報」をテーマにした映画「グリーン・ゾーン」も偽情報を流したことへの弁明にすぎず、「ダメージ・コントロール」の域を出ない。
2014.12.20
ブレント原油の価格が1バレル60ドルを切った。6月中旬には115ドルをつけていたので、半値近くまで売られたことになる。 アメリカとサウジアラビアがロシアを攻撃する目的で仕掛けていると言われているのだが、ロシアだけが相場下落の影響を被るわけではない。マーガレット・サッチャー政権以降のイギリス経済を支えてきた北海油田、あるいはアメリカのシェール・オイルやシェール・ガスが採算割れしているはずで、産業自体が崩壊する可能性も出てきた。 OPEC加盟国政府が今年、予算を組む際に想定していたのはイランが140ドル、ベネズエラが121ドル、イラクが106ドルというように100ドルを超し、ペルシャ湾岸の産油国でもサウジアラビアが93ドル、クウェートが75ドル、アラブ首長国連邦が70ドル、カタールが65ドルといった具合になっているようだ。こうした数字を下回る水準になっている。 サッチャー政権でイギリス経済が安定したのは彼女の政策が原因ではなく、北海油田が利益を出すようになったからだ。むしろ、サッチャーの政策は国の仕組みを破壊するもので、その影響は現在も暗い影をイギリス社会に落としている。すでに北海油田の採掘量は減少、イギリスにとっては深刻な事態になっているのだが、相場下落は状況をさらに悪化させる。 北海油田が利益を出すようになった理由は原油相場の上昇にある。この値上がりは人為的なものだった。サウジアラビアで長い間、石油鉱物資源相を務めたシェイク・ヤマニによると、1973年5月にスウェーデンで開かれた秘密会議でアメリカとイギリスの代表が400%の原油値上げを要求した結果だというのだ。値上げに反対したサウジアラビアに対し、イラン国王はヘンリー・キッシンジャーに聞けと答えたという。この秘密会議を開いたのはビルダーバーグ・グループ。アメリカとヨーロッパの支配層が利益を調整するために設立された集まりである。 ビルダーバーグ・グループは2012年にアメリカのバージニア州で会議を開き、そこでロシアの体制転覆を話し合ったと言われている。ウラジミル・プーチンを排除し、ボリス・エリツィンのような傀儡を大統領にしようというわけだ。 昨年7月末にサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官(当時)は秘密裏にロシアを訪問、シリアから手を引くように求めた。その際、同長官はプーチン大統領に対し、チェチェンの武装勢力をサウジアラビアはコントロールしたうえで、ソチ・オリンピックの襲撃を止めさせられると語ったという。つまり、シリアから手を引かなければオリンピックを襲撃させると脅したわけだ。この脅しは逆にプーチンを怒らせることになった。 昨年9月にヤルタで開かれた国際会議でも同じ問題が話し合われ、11月にウクライナのキエフで反政府活動が始まる。ビン・スルタン長官が口にしたソチ・オリンピックは年明け後の2月6日から23日まで競技が行われたが、キエフではネオ・ナチが前面に出てきて棍棒、ナイフ、チェーンなどを片手に持ちながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルを撃ち始めた。 その際にビルの屋上から狙撃があったが、スナイパーを指揮していたのはアンドレイ・パルビーというネオ・ナチだった可能性が高いことは本ブログでも書いてきた。アメリカ/NATOが後ろ盾になっている勢力が狙撃したことはエストニアのウルマス・パエト外相がEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ報告している。憲法の規定を無視してビクトル・ヤヌコビッチ大統領の解任が強行されたのは2月23日、ソチ・オリンピックが閉幕した日。ロシアが動きやすくなる前日とも言える。 その後、アメリカ/NATOが挑発してもロシアは自重、そこで存在しないロシアの侵攻部隊の話を西側メディアは流すが、嘘はすぐにばれ、事実を見る能力や見ようとする意思のある人からアメリカは信用されなくなっていく。今でも偽情報を信じているのは西側メディアへの信仰心の厚い人か、根っからのロシア嫌いくらいだろう。 言うまでもなく「アメリカ国家は嘘の上に成り立っている」のだが、それを甘受しているアメリカ人や日本人は少なくない。その事実に気づかない、あるいは気づかないふりをしている「リベラル派」だか「専門家」もいる。自戒を込めてい言うのだが、「好き嫌い」で物事を見るのは情報の素人である。ゴールデン街あたりをたむろしていた「全共闘崩れ」にはこうした人が多かったように記憶している。 「アメリカ国家の嘘」を広げる役割を負っているのは、言うまでもなくアメリカの有力メディア。これまで何をしてきたかを振り返れば自明のことだが、それでも疑問があるなら、手始めに、ウォーターゲート事件を調べた記者のひとりとして知られるカール・バーンスタインがローリング・ストーン誌に書いた「CIAとメディア」という記事(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)を読むように勧める。 そして夏から石油価格の急落が始まる。今年9月に紅海の近くでアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王が秘密裏に会談、下落のピッチはあがった。事実は明確でないが、原油相場の急落にアメリカとサウジアラビアが関係していると多くの人は推測している。 ロシアを追い込むことが目的だとしたら、これは失敗だ。原油価格とロシアの通貨が下落する中、ロシアは中国との関係を深めている。しかも相場下落の影響はロシアよりも北海油田に頼っているイギリスやアメリカが推進しているシェール・ガスやシェール・オイルの産業に重くのしかかる。産油国はサウジアラビアやアメリカに冷たい視線を送っていることだろう。この2カ国にイスラエルを加えた「三国同盟」が中東/北アフリカだけでなく旧ソ連圏で体制転覆プロジェクトを進めているが、この3カ国は孤立しつつあり、アメリカの足下は揺らいでいる。
2014.12.19
アメリカ/NATOはウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させ、ロシアの周辺における軍備を増強、その一方で経済戦争を仕掛けている。石油相場が大幅に下落、1ドル当たりのルーブル価格が急上昇(ルーブル安)し、ロシア嫌いの人びとは大喜びのようだが、ここにきて中国が通貨スワップでロシアを支援するという動きが伝えられている。アメリカの攻撃がロシアと中国との関係をさらに強めている。ロシアは金を売り始めたという噂があるのだが、その金が中国へ流れ、中国の通貨「元」と結びつくという展開もありえるだろう。 石油相場の下落には国際的な経済活動の停滞という要素もあるようだが、ルーブル安の主な理由は相場操縦にあると見なければならない。今年春先から仕掛け始め、夏以降、本格化している。こうした操作に日銀が協力している可能性は高い。 ロシアに対するアメリカの攻撃は独立国に大きな影響を与えているはず。ドルに依存していると自立、独立を維持することは難しいと学んでいるだろう。ドル依存は危険ということだ。 そうした独立国のひとつが中国であり、ロシアを支えることが自分たちの独立を維持することにつながると認識しているはずだ。同じことはBRICSに参加している国々にも言える。 そうした道を歩もうとすれば、アメリカ/NATOは軍事的に圧力を加え、弱いと思えば攻撃してくる。ネオコン系シンクタンクPNACが2000年に公表した『アメリカ国防の再構築』でも押さえ込むべき潜在的ライバルとして東アジアを最重要視している。海兵隊のオスプレイもそうした戦略に必要だとされている。 実際、中国に対し、アメリカは日本を巻き込みながら軍事的な圧力を強めてきているわけで、軍事的にアメリカと対抗できるロシアは中国にとって重要なパートナー。両国の軍事的なつながりを示す一例として、ロシアの最新鋭の地対空ミサイルS-400の中国への売却をウラジミル・プーチン露大統領が今年3月に許可したということをあげることができる。このミサイルが配備されると、アメリカが中国を空爆しにくくなることは確かだ。 ソ連が消滅して以降、アメリカ/NATOは支配地域を拡大してきた。1990年に東西のドイツが統一される際、ジェームズ・ベーカー米国務長官(当時)がソ連の外務大臣だったエドアルド・シュワルナゼに対し、NATOは東へ拡大しないと約束していたのだが、この約束を破ったわけだ。ミハイル・ゴルバチョフ政権は西側の支配層を信用しすぎた。 1991年6月にロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の大統領に就任したボリス・エリツィンはアメリカの傀儡。就任から2カ月後に「保守派のクーデター」を口実とした「反クーデター」を成功させて実権を握り、半年後にソ連を消滅させた。 エリツィンは1993年9月に憲法を無視して議会の解散を宣言、議員が抗議して議会ビルに立てこもると、そのビルを戦車に砲撃させる。10月3日から4日の出来事だが、その攻撃で少なくとも100名以上、議員側の主張では約1500名が殺されている。こうしたことを行ったエリツィンを西側の政府やメディアは受け入れる。その理由は言うまでもないだろう。 その後、エリツィン政権は新自由主義に基づく政策を実行する。エリツィン本人は飲んだくれで仕事のできる状態だったかどうか不明だが、その娘であるタチアナ・ドゥヤチェンコと手を組んだ一部の人間が国民の資産を盗み、巨万の富を築いていく。 そうして誕生したのがオリガルヒと呼ばれる人びとで、その象徴的な人物がロシアとイスラエルの二重国籍だったボリス・ベレゾフスキー(イギリスへ亡命してからプラトン・エレーニンへ改名)。金融だけでなくメディアもこのグループが支配した。カネと情報を握る人間が権力も握るのは古今東西を問わない。 ゴルバチョフが西側に門を開いたとき、冷戦時代にアメリカで訓練を受けてきた東ヨーロッパやロシア系の人びとが一家の出身国へ戻り、アメリカのエージェントとして活動し始めた。また、CIAの工作資金を供給する機関だとされているNED、NDI、IRI、CIPE、国際労働連帯アメリカン・センターなども国の体制を西側の巨大資本にとって都合良く作り替えるために活動している。 エリツィン時代、西側の支配層はロシアを手に入れたと思ったはずだが、プーチンは西側の傀儡を粛清することに成功する。ただ、西側が張り巡らせたネットワークはまだ生きていて、プーチンを排除するための工作を準備をしているはずだ。 それに対し、ロシアは中国やインドのBRICS仲間だけでなく、NATOの一員であるトルコと経済的な関係を深めている。今年7月にはラテン・アメリカ諸国を歴訪した。その際、ロシアはキューバが負っていた債務の約90%、320億ドルを帳消しにしているが、その代償としてソ連がルルデスに持っていた電子情報活動の基地を再びオープンさせることが認められたとも言われている。 そのキューバと国交正常化に向けた交渉を始めるとアメリカ政府は12月17日に発表した。ジョージ・W・ブッシュと同じようにネオコン/シオニストに引きずられているバラク・オバマ大統領から民主党の支持者が離反する中、党の立て直しを図っているという見方もある。 しかし、ロシアや東欧で行ったようにNEDのネットワークを侵入させ、反革命キューバ人を送り込んで体制転覆を狙うのではないかとも言われている。ロシアとの核戦争を想定しているアメリカとしては、キューバにロシアの基地があるのは嫌なはず。かつては軍事侵攻で制圧しようとしたが、今は「カラー革命」で傀儡政権を樹立させようとしている可能性がある。
2014.12.18
アメリカ政府がロシアに経済戦争を仕掛けていることは言うまでもない。その国の経済に問題が生じた場合にも通貨は売られ、暴落するのだが、金融が肥大化して投機資金が世界を駆け巡っている現在、経済の実態には関係なく相場は動く。仕手戦というより相場操縦であり、レートを引き上げても大きな影響はないのが実態。そうした市場の操作に電子情報機関のNSAが加わっているとも言われている。 相場を操作することでターゲット国の経済を混乱させることも可能なわけで、経済戦争の一環としてアメリカは原油価格やロシアの通貨(ルーブル)を下落させていると見られているが、こうした光景は「ドル」という視点から見てのもの。石油価格がドル建てで半値になっても、1ドルと交換される通貨が倍になれば変化はないということになる。 アメリカとロシアの財政状況を見ると、ロシアが遥かに健全。金の保有量を増やすなどロシアはアメリカからの攻撃に備えてきた。アメリカの連邦準備銀行は金を保有していないだけでなく、預かっていた金もなくした疑いが濃厚。経済戦争でアメリカはロシア経済が崩壊の瀬戸際にあると宣伝しているが、疑わしい。 本ブログでも書いてきたことだが、ロシアや中国などはドル離れの動きを見せてきた。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のほか、ラテン・アメリカの国々やイランなども同じ方向へ動いている。リビアのムアンマル・アル・カダフィ政権やイラクのサダム・フセイン政権もドル離れを画策していたが、軍事的に倒されてしまった。貿易の決済をドル以外の通貨、手段で行うようになれば、ドルという視点で経済を語る意味が小さくなる。 ロシア金融相は市場で70億ドルを売る意向だと言うが、アメリカの財務省証券の保有額を昨年より減らしていることは明らか。ロシアは今年8月に1181億ドルまで戻していたが、2カ月で100億ドル分を売却している。中国も減少傾向にある。日本が増やし続けているのと対照的だ。日本がアメリカの軍事侵略や経済戦争を支えているとも言える。こうした姿勢の結果、円建てで考えれば日本が多額の損失を出している。こうしたことは少なからぬ人が指摘してきた。 2014年10月 2014年3月 2013年10月 2013年3月中国(本土): 1兆2527億ドル 1兆2721億ドル 1兆3045億ドル 1兆2703億ドル日 本: 1兆2224億ドル 1兆2002億ドル 1兆1744億ドル 1兆1143億ドルベ ル ギ ー: 3481億ドル 3814億ドル 1803億ドル 1884億ドルロ シ ア : 1089億ドル 1004億ドル 1499億ドル 1530億ドル アメリカで主導権を握っているネオコン/シオニストはソ連消滅後、自国を「唯一の超大国」になり、世界制覇の日は近いと信じた。ロシアには飲んだくれのボリス・エリツィンを大統領に据えて略奪、中国の場合は若手エリートをアメリカへ留学させて洗脳してきたが、思惑通りには進んでいない。 ロシアではウラジミル・プーチンがアメリカの傀儡を粛清、アメリカから離れられないとネオコンが信じていた中国はロシアへ接近した。日本を巻き込んだ中国封じ込めを中国は容認しないだろう。アル・カイダ系武装集団を使った体制転覆、ネオ・ナチを使ったクーデターなどを目撃、新疆ウイグル自治区でアル・カイダの脅威にさらされている中国を刺激したのかもしれない。さらに、ロシアはトルコやインドとの経済関係を強めている。 ロシアと中国が通貨でも手を組んだなら、ドルは大きな影響を受ける。アメリカは攻撃しているつもりで、自分の足場を崩しているようだ。ドルが基軸通貨の地位から滑り落ちたとき、世界は新しい時代が始まる。
2014.12.17
ウクライナ東部、ドンバスの情勢を話し合うためにロシアのウラジミル・プーチン、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、フランスのフランソワ・オランド大統領、そしてウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が電話会議を行ったとロシア政府が明らかにした。 今月6日にはフランスのフランソワ・オランド仏大統領がカザフスタンからの帰路、ロシアを突然訪問してプーチン大統領とモスクワの空港ビルで会談しているが、この頃からアメリカ政府がロシアとの戦争を目指して「偽旗作戦」を計画しているという噂が流れ始めていた。アメリカの傀儡になっているEUの「エリート」だが、さすがにアメリカの暴走を懸念し始めたようだ。日本とは違い、EUにはその程度の知性は残っているのだろう。 今年7月のマレーシア航空17便の撃墜は本ブログや一水会の機関紙「レコンキスタ」でも書いたように、キエフ側の戦闘機が撃墜したとみられ、偽旗作戦だったと推測する人もいる。一貫して西側は撃墜に関する調査に消極的で、ブラックボックスもどこにあるか明らかでない。BBCをはじめ、西側メディアも情報の隠蔽に必死だ。 オランド大統領がロシアを訪れた2日前、アメリカ下院はロシアを非難する決議を411対10という大差で可決しているのだが、ロン・ポール元下院議員の言葉を借りると、これは「向こう見ずな議会がロシアに宣戦布告した」と言える代物。すでにアメリカ/NATOはロシアとの国境近くにおける軍事を増強、その延長線上にある決議だ。アメリカの政界は好戦的な雰囲気が広がっている。11日には上院がウクライナへの軍事支援を容認する決定をした。 こうした雰囲気を広めているのはネオコン/シオニストや戦争ビジネスの手先たち。今年2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターを現場で指揮していたのもネオコンのビクトリア・ヌランド国務次官補だ。彼女が結婚した相手のロバート・ケーガンはネオコンの大物で、ジョージ・W・ブッシュ政権が政策の基盤にしたPNAC(ネオコン系シンクタンク)の報告書「米国防の再構築」を執筆したひとりである。中東/北アフリカやウクライナで戦争を煽っているひとり、ジョン・マケイン上院議員もネオコン。安倍晋三政権はこうした勢力に従属している。 本ブログでは何度も書いているように、こうした アメリカの戦争マシーンを動かしてきた戦略は1992年に書かれたDPG(国防計画指針)の草案(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)。1991年にソ連が消滅、自分たちが「冷戦」に勝ち、「唯一の超大国」になったと浮かれ、潜在的なライバルを潰し、資源を支配すという方針を決めたのである。「米国防の再構築」もDPGに基づいて書かれた。 ソ連の中心だったロシアは西側の傀儡、ボリス・エリツィンが大統領に据えられた。飲んだくれだということもあり、西側とつながった勢力がクレムリンを支配、不公正な手段で国民の資産を私物化、巨万の富を築いていく。そうした富豪をオリガルヒとも呼ぶが、その象徴的存在が、少なくとも一時期はロシアとイスラエルの二重国籍だったボリス・ベレゾフスキー。そうした動きの中心にはエリツィンの娘、タチアナ・ドゥヤチェンコがいた。 こうした勢力に接近し、粛清してロシアを独立国へ復活させたのがプーチン。そこで西側支配層の怒りを買っている。特に怒っているのが米英のエリートで、2012年の5月31日から6月3日にかけてアメリカのバージニア州で開かれたビルダーバーグ・グループの会議につながる。 西側にとって厄介なのはプーチンが国際ルールを遵守していること。そこで、西側の政府やメディアはプーチンを「悪魔化」して自分たちを正当化するため、嘘をつき続けなければならなくなった。メディアを使い、大多数の人びとを騙すことには成功しているようだが、一部の人には嘘を見抜かれ、信頼を失っている。 そこで、コンドリーサ・ライス元国務長官がFOXニュースのインタビューの中で語ったように、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないということになる。アメリカの「同盟国」だというEUのエリートも脅しと買収でコントロールされているわけだが、彼らもアメリカ(ネオコン)の嘘は熟知しているわけで、ロシアとのつばぜり合いが長引くとEUも離反する可能性が高い。 クリミアの住民がネオ・ナチとオリガルヒのクーデター政権を拒否してウクライナから離脱することを決めた際、西側の政府やメディアはロシア軍の侵攻を叫び、それを真に受けた「専門家」もいた。西側のメディアは権力を監視しているという妄想に取り憑かれているのかもしれないが、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなどで彼らが伝えてきた話を調べれば単なるプロパガンダ機関だとわかるはず。いい加減、ワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙のような西側の「有力メディア」を信奉するのはやめるべきだ。 そもそも、1970年代には議会の調査やカール・バーンスタイン(ウォーターゲート事件で有名になった)がCIAとメディアとの癒着を明らかにしている。クリミアの場合も、その嘘はすぐにばれた。MH17を「親ロシア派」が撃墜したとする宣伝も崩壊状態。アメリカは経済戦争で攻勢をかけているようだが、こうした流れを考えると、ロシアを早く服従させるため、新たな偽旗作戦を練っているという噂の信憑性は低くないと言わざるをえない。現在、アメリカが行っている攻勢はEUだけでなくアメリカ自身も傷つけているわけで、負けるわけにはいかない勝負だ。 少なからぬ人が懸念しているのは、ネオコンが冷戦で勝ち、世界の支配者になったと信じていること。フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文は、アメリカはロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できると主張している。しかもアメリカにはエリート向けの巨大シェルターが100カ所以上存在すると言われている。「唯一の超大国」という妄想が「核戦争で圧勝できる」という過信と結びつき、何があっても自分たちは生き残れるとネオコンは信じているように見える。安倍政権の愚かさを笑ってはいけない。首相の言動が日本の国土を破壊し、国民を死滅させかねないのだ。(14.12.17)
2014.12.17
資産の略奪が横行するウクライナでは経済が破綻しているにもかかわらず、来年の軍事予算を今年に比べて100%増の500億グリブナ(約32億ドル/3700億円)にするのだという。IMFから借りた資金は東/南部での民族浄化作戦に投入しているが、それでも返り討ちにあってしまったが、懲りていないようだ。 西側の巨大資本を後ろ盾にするオリガルヒやアメリカ/NATOの訓練を受けてきたネオ・ナチの命令で自国民を殺す作戦のために正規軍の士気は上がらず、ネオ・ナチや傭兵の部隊も惨敗、殺した住民を埋めた「集団墓地」を残して引き上げている。アメリカ/政府はそうした部隊を再編成、武器も補充して新たな作戦に備え、アメリカの上下両院も軍事作戦を支援する姿勢を鮮明にした。 2010年12月に始まった「アラブの春」は年が明けるとリビアやシリアへも波及するのだが、すぐにアル・カイダ系の武装集団が体制転覆を目指して活動していることが判明する。リビアで西側の地上軍として戦闘の軸になっていたLIFGのリーダーは自分たちとアル・カイダとの関係を公然と認めていた。 ムアンマル・アル・カダフィが惨殺された後、反カダフィ派の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられている。YouTubeに映像がアップロードされたほか、その事実を伝えた西側のメディアもあるが、無視したところもある。これを伝えないということは、自らをプロパガンダ機関だと認めているに等しい。 シリアでもリビアより若干遅れて武装蜂起が起こり、その中心になったFSAはトルコ領内にある米空軍インシルリク基地で訓練を受けてきた。教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスとフランスの特殊部隊員。 当初からFSAはサウジアラビアやカタールに雇われた傭兵だと言われていたが、ジョージタウン大学のハイララー・ダウド教授によると、反政府軍のうちシリア人が占める割合は5%。残りの95パーセントは外国人傭兵だとしている。リビアで傭兵の中にはアル・カイダ系武装集団の戦闘員も含まれている。リビアでカダフィ体制が倒れた後、アル・カイダ系の戦闘員が武器と一緒にシリアやイラクへ移動している。 リビアで西側に騙されたロシアはシリアで体制転覆プロジェクトに立ちはだかる。アメリカ/NATOの空爆を阻止、西側の政府やメディアが流す情報が嘘だということも明らかにしていった。(その辺の事情は本ブログで何度も書いたことなので、今回は割愛する) シリアの体制転覆が困難になる中、2012年の5月31日から6月3日にかけて、アメリカとEUの支配層はアメリカのバージニア州で非公開の会議を開いている。議題は「発展途上国における民主主義の将来」、「エネルギーの政治学と地政学」、「中東の安定と不安定」、「西側はイランに何ができるか?」などが含まれていたというが、最大の問題はシリアとイランへの攻撃を妨害しているロシアのウラジミル・プーチンだったとも言われている。エネルギー源の取り引きによってロシアとEUが結びつき、アメリカを中心とする支配体制が崩れることを彼らは嫌い、サウス・ストリームの計画を妨害することになる。プーチンを最も嫌っていたのは米英の有力者で、エネルギー利権も絡んでいた。 会議にはロイヤル・ダッチ・シェルやBPのCEO、カナダに石油利権を持つジョン・ケリー上院議員(当時)、バークレー銀行の会長でBBC執行役員会の非執行役員でもあるマーカス・アギウスも出席していたという。アギウスの妻はエドムンド・ド・ロスチャイルドの娘、キャサリンである。そのほか、シリアの反政府派を代表してバッスマ・コドマニが出席していた。 コドマニはムスリム同胞団と関係が深い。この団体は1928年に創設されたとされているが、その源流は汎イスラム運動で、19世紀にイギリスの情報機関や外務省が関与して始まったという。1930年代から40年代にかけてはドイツがムスリム同胞団に目をつけた。イギリスやフランスに対抗する手駒として使おうとしたのだ。1940年代にはソ連の情報機関員も同胞団の内部にエージェントを潜入させていたという。 ドイツが降伏すると同胞団はイギリスがコントロールするようになるが、1950年代からはアメリカのCIAが使うようになる。この時代、米英両国の情報機関はエジプトのガマール・ナセルを暗殺しようと計画、1953年10月には同胞団がナセルを銃撃、同胞団のメンバーは国外へ逃亡する。CIAはサウジアラビアへの逃亡を助けているが、その結果、ムスリム同胞団に刷り込まれたナチスの思想がサラフィ主義者(ワッハーブ派)へも伝わる。アル・カイダは戦闘員のデータベースだが、そこに登録されている人にはサラフィ主義者が多い。 ナセル銃撃の3カ月前にはイスラエルがエジプト人を装ってイギリスやアメリカの映画を上映している映画館や郵便局に爆弾を仕掛け、ナセルを排除させようとした。1960年代に入るとイスラエルはジョン・F・ケネディ大統領に対し、エジプトを攻撃するように強く求めるが、拒絶されている。 サラフィ主義者はチェチェンでも活動、グルジアのパンキシ渓谷を拠点にしている。シリアの体制転覆に成功すれば、その矛先はロシアへ向かうと考える人は多い。すでにウクライナでアメリカ/NATOはネオ・ナチを使っているが、ナチズムとサラフィ主義は歴史的に結びついている。そこにシオニズムがつながるわけだ。こうした勢力を軍事的に支援するとアメリカは宣言している。こうしたアメリカの戦争に荷担するのが安倍晋三政権が強硬導入した集団的自衛権だ。
2014.12.17
ジョージ・W・ブッシュ政権が拷問を容認していたことは以前から知られている。その拷問に関する6000ページを超す報告書をアメリカ上院情報委員会が作成、その要約525ページが公表されたのに対し、ブッシュ・ジュニア政権で副大統領を務めたリチャード・チェイニーらは全く反省の色を見せず、ジョン・ブレナン現CIA長官は拷問を支持している。ピート・ホークストラ元下院情報委員会委員長などは、拷問を「強化尋問技術」だと言い換えて正当化しようとしている。アフガニスタンで拘束した人びと(大半は非戦闘員)から条約や法律で認められた権利を奪う理由にするため、「敵戦闘員」なる用語を作り出したのと同じだ。 アメリカ政府が拷問を政策として取り入れていることは早い段階から判明していた。例えば、元CIAオフィサーのジョン・キリアクーはCIAが収容所で拷問していると告発、イラクのアブ・グレイブ刑務所の管理責任者だったジャニス・カルピンスキー准将は、そうした現場にイスラエルから来たという尋問官がいたと証言している。また、同准将によると、虐待を実行したのはアフガニスタンやグアンタナモで訓練を受け、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の命令でイラクへ来ていた人びとだ。 自分たちの国を「民主主義国家」だと主張しているアメリカの支配層にとってこうした情報を外部に伝えることは許しがたいようで、キリアクーは懲役30カ月(2年半)の判決を受け、カルピンスキーは大佐へ降格になった。それに対し、拷問を命令、また実際に拷問を行った人びとは何の咎めも受けていない。 こうしたアメリカの秘密体制を日本も真似したのか、安倍晋三政権は特定秘密保護法を強硬導入した。その法律によると、「特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する」ことになっている。支配層にとって都合の悪い情報を被支配者であるべき国民に漏らすことを許さないという強い意志を示している。言うまでもなく、民主主義の否定だ。 CIAは世界中に秘密刑務所を配置、拷問を行ってきた。EUやNATOへの憧れからポーランド、ルーマニア、リトアニアはそうした刑務所の国内設置を認めたという。いずれもアメリカ/NATOのロシア攻撃を支持している。 インド洋に浮かぶ島、ディエゴ・ガルシアにも秘密刑務所が存在していると言われている。イギリスが所有しているが、実態はアメリカの重要な軍事基地。今年3月、マレーシア航空370便が消息を絶った際、この基地に降りたのではないかと噂されたことを思えている人も少なくないだろう。 この旅客機は乗員12名、乗客227名だったが、特に4名の中国人が注目された。彼らは中国の研究者で、飛行機を100%見えなくする技術で特許を取得していたという。積まれていた2453キログラムの貨物のうち221キログラムはリチウム・バッテリーだが、そのほかの内容が明らかにされないことも疑惑を招いた。 4名の中国人研究者は中国宿州の出身で、アメリカのテキサス州にある会社、「フリースケール半導体」に所属していた。特許は4名と会社が保有、その権利の割合はそれぞれが20%だった。4名の中国人がいなくなれば特許の権利を100%、フリースケール半導体が握ることになる。MH370に乗っていた同社の社員は4研究者のほかに16名いたとも言われている。 フリースケール半導体は2004年にモトローラから分かれた会社で、電子戦やステルス技術が専門。ブラックストーン・グループのほか、ブッシュ家が関係しているカーライル・グループやイスラエル系アメリカ人の富豪デイビッド・ボンダーマンが会長を務めるTPGキャピタルが2006年に買収している。 グレイストーン・グループはジェイコブ・ロスチャイルドの金融機関。密接な関係のある会社のひとつ、ブラックロックを経営しているラリー・フィンクはアメリカとイスラエルの2重国籍。そのほか、投機家のジョージ・ソロスやキッシンジャー・アソシエイツも仲間のようだ。 そのほか、MH370にはアメリカ国防総省の20名も搭乗、いずれも電子戦の専門家で、レーダーの探知を回避する技術に精通していたという。しかも、そのうち少なくとも4名は不正なパスポートを使っていた疑いが持たれている。 1987年11月29日にもMH370と同じように消えた旅客機がある。イラクのバグダッドから韓国のソウルへ向かっていた大韓航空858便だ。朝鮮の工作員に爆破されたとされているのだが、「朝鮮ならやりかねない」ということで納得した人が多く、真相が明らかになったとは言い難い。 今年7月にウクライナで撃墜されたMH17の状況を見てもわかるように、1万メートル程度の高度で飛行している航空機が墜落しても多くの残骸や遺体を残すのだが、MH370やKAL858は違う。わずかに回収されたといっても、不自然な形でだ。両機もディエゴ・ガルシアに降りた疑いがある。MH17の撃墜に関する調査も進展具合が不明で、本ブログでも以前、書いたが、情報を隠蔽する合意ができているとも言われている。アメリカが日本に「秘密」を強く求めるのも事実が彼らにとって都合が悪いからだろう。
2014.12.15
12月14日は衆議院選挙の投票日だった。投票率は52%程度で、戦後最低だった2012年の59.32%を下回ることは確実なようだ。そうした中、安倍晋三政権を支える自民党と公明党が圧勝したが、沖縄の4小選挙区では与党が全敗している。 日本全体でも個別の政策に関して国民が支持しているわけではなく、有権者の諦めと無関心がなせる技。「2年間の安倍政権に信任をいただいた」とは言えない。それでも与党が圧倒的な勝利を収めたのは怒りの度合いが沖縄に比べて小さいからだろう。高を括っている。地獄はこれから始まる。 そうした雰囲気を作り出したのは勿論、マスコミ。2009年の総選挙で小沢一郎の率いていた民主党が総議席の3分の2に迫る議席を獲得すると、東京地検特捜部と手を組んで小沢潰しを始めた。小沢と近い鳩山由紀夫の政権ができると、その政権を激しく攻撃して潰してしまった。その後に登場した菅直人や野田佳彦は自民党政権を誕生させる下準備をしたにすぎず、安倍は復活する。 安倍政権はアメリカ支配層の意向に従い、日本の巨大企業や富裕層を富ませることに心血を注いでいる。庶民の実質賃金は下がり続け、円安や消費税の税率引き上げで庶民の生活は苦しくなり、福祉政策の水準は引き下げられ、特定秘密保護法で支配層の犯罪的行為がばれることを防ぐ体制を作り、集団的自衛権で自衛隊をアメリカ軍の下請けにするだけでなく、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の導入で政府や議会を無力化しようとしている。 日本人が差し出されようとしている相手、アメリカの支配層は経済の破綻に直面、それを暴力で打開しようとしている。アメリカは2001年9月11日以降、国外では軍事侵略で破壊と殺戮の限りを尽くし、国内では令状なしに逮捕、拘束、盗聴できる体制を整えてきた。侵略戦争を指揮しているのはネオコン/シオニストであり、資金を提供しているのはサウジアラビアなどのペルシャ湾岸の産油国、中東/北アフリカでアル・カイダ系の武装集団(ISを含む)が、またウクライナではネオ・ナチが侵略の手先になっている。日本はカネと兵隊を出そうとしている。 アメリカ政府はロシア政府の術中にはまり、軍事衝突/戦争ではなく経済戦争が展開されているが、ネオコン/シオニストは戦争の準備を進めてロシアを脅して屈服させようと必死だ。そうした中、戦争に否定的なチャック・ヘーゲル国防長官がホワイトハウスから追い出され、バラク・オバマ大統領はアシュトン・カーターを後任として指名した。 カーターは1994年にビル・クリントン大統領へ朝鮮を空爆するように進言して無視されたが、2006年にもハーバード大学での講演で朝鮮空爆を主張している。欠陥戦闘機として有名なF-35の開発プロジェクトに参加するなど、軍需産業とのつながりが強い。その意味で、ロッキード・マーチンの代理人と言われるヒラリー・クリントンとは近いと言えるだろう。 日本では集団的自衛権に反対だと表明している人でもアメリカがアル・カイダやネオ・ナチを使っていくつもの国を侵略している事実から目をそらしている。「民主化」という標語やロシア嫌いという感情が影響しているのかもしれないが、世界制覇を目指しているアメリカはロシアや中国を軍事的に脅して従属させようとしてきた。脅しに屈しないロシアや中国への脅しをエスカレートさせていけば本当の戦争になる。その戦争を支援、参加しようというのが集団的自衛権だ。
2014.12.14
国の経済という視点から見れば、安倍晋三政権の政策は破綻している。倒産が大きく増えているのもひとつの結果。何しろ、金融市場を支えて投機に参加している富裕層や巨大資本を儲けさせるために自国の通貨や債券市場を破壊し、国民の実質賃金を引き下げようとしているのだ。挙げ句の果てにTPP(環太平洋経済連携協定)に参加、そのISDS(国家投資家紛争処理)条項によって、経済活動にともなう参加国の政策が「国境なき巨大資本」にとって利益になるかで決められる仕組みにしようとしている。東京商工リサーチ ISDS条項によって、直接的な生産活動やサービスのルール、労働条件、環境汚染、食糧の安全などに関する規制、あるいは健康保険や年金など社会保障の仕組みを決める最終的な権限を持つのは巨大資本であり、政府や国会はその支配下に置かれるということだ。つまり、形式的にも民主主義は終わる。 そうした破綻を見据え、アメリカは軍事力を使って世界を制圧しようとしている。計画を立案しているのはネオコン/シオニスト、資金はサウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸の産油国が提供、地上部隊として中東/北アフリカではアル・カイダ、ウクライナではネオ・ナチを使っている。日本は資金と兵士をアメリカへ差し出す体制を整えてきた。その最終段階が集団的自衛権。 そうした目論見の大きな障害になっているロシアのウラジミル・プーチン大統領を排除してロシアを再び属国にしようとしている。メディアを使ってロシアを「悪魔」として描く一方、ロシア政府を挑発して軍隊を使わせようとしている。 西側のメディアはクリミアにロシア軍が侵攻したと大宣伝していたが、真っ赤な嘘だった。最初から嘘は明らかだったが、それでも信じた人はいるようだ。それでも恥知らずな人たちは懲りない。ドネツクやルガンスクにロシア軍がいると証拠も示さずに主張している。 こうした宣伝は「予定稿」だった可能性がある。アフガニスタンでの「成功体験」があるほか、アメリカとイスラエルはグルジアに南オセチアを奇襲攻撃させた際にロシア軍に粉砕された記憶がトラウマになっていて、ロシア軍が国境を越えるという前提でプランを立てていたのではないかということだ。 今のところロシア政府はアメリカの挑発に乗らず、経済戦争へと誘導することに成功しているように見える。その経済戦争でEUは厳しい状況に陥った。原油相場が大幅に下落しても負債が少なく、金の保有量を増やしたこともあってロシアは安定しているが、アメリカはコストの問題で国内の石油産業が苦しくなっている。環境破壊で問題になっているシェール・ガスは採算的にも開発が困難な状況になってきた。追い詰められたアメリカは強引に戦争を始めると予測する人もいる。その戦争に日本は参加するのかしないのか、それも今回の総選挙で問われている。
2014.12.14
今から77年前、1937年12月13日に日本軍は中国の首都だった南京を占領、女性や子どもを含む市民を虐殺、レイプ、略奪などを行ったと報告されている。その年の7月に日本の傀儡、冀東防共自治政府の保安隊を日本軍の飛行機が爆撃(誤爆だという)、それに怒った保安隊は北京近郊の通州で日本人を殺害、それに刺激されて日本兵が南京で暴走したとする見方もある。 少し前にも書いたが、南京での出来事について少なからぬ日本軍の将兵が陣中日記の中で軍命によって捕虜を射殺したと記録している。また、支那派遣軍の岡村寧次総司令官は部下からの報告に基づいて「南京攻略時、数万の市民に対する略奪●姦等の大暴行があたのは事実」と書き残している。 また、外務省の石射猪太郎東亜局長は「南京に於ける我軍の暴状」の報告があり、そこには「略奪、●姦目もあてられぬ惨状」と書かれていたと日記に記している。中支那方面軍司令官兼上海派遣軍司令官だった松井石根大将が師団長クラスの退廃ぶりを嘆き、三笠宮崇仁が著書の中で「日本軍の残虐行為」や「毒ガスの生体実験」について触れたことは有名な話だ。 松井は1878年の生まれなので、事件当時は59歳。一応、明治になってから生を受けたわけだが、まだ徳川時代の文化、伝統の影響を強く残していた。それに対し、退廃していたという師団長より若い人びとは明治政府によって作り上げたと言える。1890年に発布された「教育勅語」で「忠君愛国」と「儒教的道徳」がたたき込まれた人たちだ。 事件当時、特務機関員として活動中だった中島辰次郎は、南京市内で「虐殺」と呼べる出来事があったことは間違いないと明言、総数については市内をくまなく調べたわけではないので総数はわからないとしたうえで、死体が山積みになった光景を見たと中島は話していた。 虐殺がなかったという主張は論外として、殺害された市民の数を中国側は30万人、日本では10万から20万人と言う人が多いようだ。被害者側は攻略戦を含めて大きく推計、加害者側はできるだけ少ない数字を出してくるため、数字に開きがあるのは当然。 例えば、1982年にイスラエル軍がレバノンへ軍事侵攻した際、虐殺事件があった。イスラエル軍が包囲していたサブラとシャティーラ、両難民キャンプでイスラエル軍の手先として動いていたファランジスト党の戦闘員が手を下したのだ。 犠牲者の数をレバノン政府は460名としていたが、国際赤十字が確認した死体だけでも663体あるのでこれは論外として、イスラエルの報告書は700名から800名、PLOは死者と行方不明者を合わせて5000名から7000名、現地を取材したジャーナリストによると、ブルドーザーなどを使って隠されたり運び出された死体があり、それを加えると3000名以上が殺されただろうとしている。 南京を攻略した際、憲兵隊が組織的に略奪を行ったとする報告もある。政府が保有する資産を奪っただけでなく、銀行や裕福な家に押し入って金や宝石などを奪ったというのだが、この攻略戦を指揮していたのは事実上、上海派遣軍司令官だった朝香宮鳩彦、昭和天皇の叔父にあたる人物で、松井石根は戦後、朝香宮の身代わりになって処刑されたと言われている。 安倍晋三政権は集団的自衛権を強引に導入しようとしている。この問題を考える上でも日本が明治以降、東アジアで何をしてきたのかをきちんと考えなければならない。(注)●:強
2014.12.13
前回も書いたように、アメリカでは「1%」に富が集中する時代は終わり、今は0.01%が富を独占する時代に入っている。庶民階級の間では「ワーキング・プア」は過去のものになり、「ワーキング・ホームレス」が問題になっている。そうした状況であるにもかかわらず、政府や大手メディアは「景気回復」を主張する。その理由のひとつが失業率の低下だが、実態は低賃金労働者の増加や就職活動の断念にすぎない。当然、記者や編集者も実態を知っているが、見て見ぬ振りだ。 ジョージ・W・ブッシュは大統領時代、アルゼンチン大統領だったネストル・キルシュネルに対し、「経済を復活させる最善の方法は戦争」であり、「アメリカの経済成長は全て戦争によって促進された」と力説していたという。この証言はオリバー・ストーンが制作したドキュメンタリー映画「国境の南」に収められている。 このブッシュ・ジュニア、ベトナム戦争の最中に兵役に引っ掛かり、テキサス州の州兵になっている。第147戦闘航空団。そこには政財界の大物、例えばロイド・ベンツェン、ジョン・コナリー、H・L・ハントの息子が所属していた。 この航空団はベトナム戦争へ行くことのない「シャンペン部隊」で、名簿の上でだけ在籍している「幽霊兵」も存在していたとする証言がある。(Russ Baker, “Family of Secrets”, Bloomsbury, 2009)ブッシュ・ジュニアたちもそうした「幽霊兵」だったのではないかと言われている。 この証言をしたビル・バーケット中佐の調査内容を裏付ける証拠があった。数百名の州兵の支払い状況を記録したマイクロフィルムだが、1997年頃にこのフィルムが再生不能なダメージを受け、98年にはバーケット中佐がパナマへ異動させられてしまい、そこで重病に罹ってしまう。 戦争で軍需産業や金融機関は儲かるが、政府は疲弊する。ただ、アメリカの場合は2度の世界大戦で本土が戦場にならず、生産設備や耕作地などが破壊を免れ、金融システムが未発達だったこともあって巨大資本の儲けも社会に循環した。第2次世界大戦でドイツや日本が略奪した財宝をアメリカの一部支配層が手に入れた可能性はきわめて高く、その恩恵にも浴したはずだ。 日本の略奪プロジェクトは「金の百合」と呼ばれ、一部は日本へ持ち帰っているが、少なからぬ財宝が中継基地だったフィリピンで隠されたと言われている。その実態はフェルディナンド・マルコスがアメリカ軍によって拉致された後、アメリカで裁判が起こされて少しずつ明らかになった。この資金は日本の支配層を潤し、「復興」にも貢献した可能性がある。この問題を日本では「M資金話」という呪文で封印しているが、その理由は言うまでもないだろう。 日本は第一次世界大戦でも物資の略奪で儲けている。ロシア革命後、シベリアを占領して1922年までそこに留まっているのだが、その際に日本軍がロシアから金塊を持ち帰ったと言われている。この問題を最初に取り上げたのが中野正剛。その時に持ち帰った金塊は1万2000キログラムに達すると推測されている。 こうした略奪だけでなく、日本には「戦争特需」を期待する人もいる。戦場では破壊と殺戮が繰り広げられるのであり、日本が戦場になる可能性もあることを考えていない。原爆を落とされた広島や長崎、激しい地上戦が展開された沖縄、焼夷弾で多くの人が焼き殺された東京などの都市に住んでいた人びと、中国で日本軍に置き去りにされた人びとなど戦争の現実を目撃した人の大半は戦争に反対してきたが、そうした人は少なくなった。ブッシュ・ジュニアのように、欲望だけで戦争を見る人もいるようだ。そうした状況が安倍晋三政権を暴走させる一因になっている。
2014.12.12
安倍晋三政権は自国の経済を破綻させ、社会を破壊し、そのうえ侵略戦争を続けるアメリカへ国民と国土を差しだそうとしている。経済政策の中心にいる安倍首相と黒田東彦日銀総裁は「狂気のコンビ」とも国際的に呼ばれているが、その理由はそこにある。その政権を支えるマスコミ、そのマスコミに踊らされている日本国民も「狂気」の世界で徘徊しているということだ。 アメリカは支配システムを維持するため、現在、あらゆる手段を使って相場を操作しようとしているが、日銀の金融緩和もそうした操作を助けてきた。1996年頃から金利を限りなくゼロに近づけ、少なくとも結果として超低金利の資金を世界中の投機家へ提供して金融バブルを膨らませた。この時から庶民の所得は下がり続けている。2008年に表面化した金融危機は日本政府にも大きな責任があるとうことでもある。 投機市場が肥大化するのは資金が流入しているからだが、この資金は実体経済から政策によって導かれている。庶民へ分配されるべき富を奪い、ごく一部の富裕層や巨大企業に滞留した資金が投機市場を支えているのだが、搾り取るにも限度はある。そして金融システムが破綻したのだが、そのツケを支払わされたのも庶民。破綻した金融機関は「大きすぎて潰せない」という理由だった。しかも責任者は「大きすぎて処罰できない」という。つまり法治主義を放棄している。 上位0.1%と下位90%の富(アメリカ) 富の集中が顕著なのは上位0.01%(アメリカ) ボリス・エリツィン時代のロシアと同じように、巨大企業や富裕層は政府より上の存在になろうとしている。すでに政治家やマスコミの人間を買収、場合によっては恫喝して支配しているが、それをシステム化しようとしているのがTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。農業は問題の一部にすぎない。これを強調するのは国民をミスリードするためではないかと思われても仕方がない。 2008年の金融危機に懲りず、日本銀行は10月31日に開かれた金融政策決定会合で追加緩和に踏み切ることを決めた。国債を月に8兆円から12兆円購入、長期国債の保有残高は年間約80兆円相当のペースで増加させるのだと伝えられている。株価のテコ入れ(相場操縦)も続けるのだろう。 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も株式の運用比率を倍増させるようだが、その一方で国債を売却すると言われている。巨大資本、富豪層の資金を運用しているファンドなどを儲けさせる、あるいは救済させるために年金資金を使うのだろう。要するに、投機集団にカモを提供するということ。外国人も短期勝負で資金を投入しているはずだ。 繰り返しになるが、金融緩和で供給される資金は投機市場へ流れ込む。相場を引き上げても、実体経済を立て直したり雇用を改善することはない。これはFRB(連邦準備制度理事会)に長らく君臨していたアラン・グリーンスパンでさえ認めている話。この政策で日本の経済を立て直せるはずはなく、むしろ悪化させる。すでに経済状況の悪化を隠しきれなくなったことが安倍政権の総選挙実施する理由のひとつだろう。 もっとも、景気の状況は富裕層/大企業と庶民/中小企業で全く違う。富裕層/大企業は潤っている。つまり安倍政権は目的を達成している。想定外だったのは景気悪化のペースが速く、消費税の税率を8%から10%への引き上げが間に合わなかったこと。そこで安倍政権は2017年に必ず10%へ引き上げると宣言した。その一方で法人税率を引き下げるわけだ。 TPPはアメリカの巨大資本が環太平洋地域を支配する仕組みなわけだが、この地域だけでなく、全世界を制覇しようと彼らは目論んでいる。このプロジェクトにはネオコン/シオニストも参加、その中心的な存在であるポール・ウォルフォウィッツはソ連が消滅した直後、シリア、イラン、イラクを殲滅すると語っていたという。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の話だ。 ソ連消滅でアメリカの好戦派は自分たちが「唯一の超大国」になったと考え、世界の支配者になる日が近づいたと思った。そして1992年に作成されたのがDPG(国防計画指針)の草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。これはメディアにリークされて書き直されたようだが、シオニスト系シンクタンクのPNACは、このドクトリンに基づく報告書「米国防の再構築」を2000年に発表した。2001年に始まったジョージ・W・ブッシュ政権にはこの報告書を書いたグループが参加、その年の9月11日の出来事以降、彼らがホワイトハウスで実権を握る。 彼らの妄想を打ち砕こうとしているのがロシアのウラジミル・プーチン。ロシアをアメリカの属国にすることを拒否、独立の道を歩いている。それに中国も同調、BRICSも続いている。ウクライナをクーデターで制圧しようとしたが、東部や南部の住民が反発、オデッサでの虐殺で自治権拡大の要求が独立へ変化、それを理由にアメリカや傀儡のキエフ政権は東/南部の人びとを分離主義者だと呼んでいる。 アメリカ/NATOはキエフに軍事支援をし、傭兵を投入、部隊をロシアとの国境近くへ移動させてロシアを挑発しているが、今のところプーチン政権は自重している。それを逆に伝えているのが西側のメディア。嘘が発覚しても平然としている。似たことは中東/北アフリカでも見られる。 その西側メディアを信用するのは「大東亜共栄圏」を信じて侵略戦争に賛成するようなもの。アメリカはウクライナでネオ・ナチを使い、中東/北アフリカではアル・カイダを使って侵略を続けている。そうした侵略戦争に日本を引きずり込むことが集団的自衛権の目的なのであり、「防衛戦争に巻き込まれる」という話ではない。日本はともかく、世界的にはアメリカの有力メディアがCIAにコントロールされている実態は1970年代から知られているわけで、そうしたメディアを有り難がるのは愚かすぎる。
2014.12.11
グアンタナモの米海軍基地に設置された強制収容所の実態を調査したアメリカ上院情報委員会の作成した報告書の要約が公表された。政府側の要請を振り切ったことになるが、拷問が行われてることは公然の秘密であり、情報収集に役立っていないこともわかっていた。そもそも拷問は情報を入手するために行われるのではなく、個人的な嗜好か、すでに存在するストーリーに合った証言を強制するためのものだ。本当に情報が欲しいなら自白剤を使う。 当然のことながら、報告書の要約はCIAに配慮した内容になっているはずで、実際、驚くような記述はない。そもそも、拷問がアメリカ軍の収容所で行われていることはイラクへ軍事侵攻して間もない頃、内部告発で発覚している。イラクのアブ・グレイブ刑務所の実態が写真(拘束された人を脅すための材料に使われたものだとも言われている)付きで明らかにされただけでなく、刑務所の管理責任者だったジャニス・カルピンスキー准将はイスラエルから来たという尋問官に会ったとも話していた。アブ・グレイブでの拷問を明るみに出したジャーナリストの情報源も、イラクにイスラエルの情報機関員がいることを確認したという。 2005年5月のジョージ・W・ブッシュ大統領はカルピンスキー准将の大佐への降格を認めたが、これはイラク占領の実態を暴露したことに対する報復だと見られている。その年の10月にカルピンスキーが明らかにしたところによると、虐待を実行したのはアフガニスタンやグアンタナモで訓練を受け、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の命令でイラクへ来ていた人びとだと語っている。 そうした人びとの尋問で拷問が使われているのだが、拘束されている人の大半は戦闘に無関係な人。そうした人びとを拘束し続けるのは、「無実」の人を拷問している事実を隠すため、秘密保護のためだとも言われている。拷問の責任が問われることはなさそうだ。
2014.12.11
アフガニスタンやイラクを先制攻撃して以来、アメリカ政府はをグアンタナモに設置した強制収容所などに多くの「敵戦闘員」を拘束、拷問を続け、中には殺された人もいる。こうした収容所についてアメリカの上院情報委員会が調査、約6200ページの報告書を作成、約480ページの要約を公表する段取りになっていたが、ジョン・ケリー国務長官は同委員会のダイアン・フェインスタイン委員長に電話して公表を遅らせるように求めたという。 報告書を公表するとアメリカの外交を傷つけ、国民や施設を危険にさらすとケリー長官は主張、公表の延期を求めている。中東/北アフリカではアル・カイダ系の武装集団、ウクライナではネオ・ナチ、日本では安倍晋三のような政治家を手駒として使っているわけで、本体がナチス張りのことをしても不思議ではないのだが、アメリカ政府は自分たちの国を「民主主義国」だと主張している。西側では政府も学者もメディアも、そうした主張を信じている、あるいは信じているふりをしているので、事実が明るみに出ることを怖がっている。 リビアの体制転覆作戦でアメリカ/NATOは地上軍としてアル・カイダ系の戦闘集団、LIFG(リビア・イスラム戦闘団)を利用したが、その幹部の中にはCIAの施設で拷問を受けた経験を持つ人物がいる。つまり、そうした集団への影響が大きいとは考えにくく、各国政府が知らないとも思えない。庶民に事実が知られることを恐れているのだろう。 戦争捕虜ならジュネーブ協定で保護され、犯罪の容疑者なら刑事訴訟手続きに基づいてい扱う必要があるのだが、ジョージ・W・ブッシュ政権は工作された人びとを捕虜でも容疑者でもなく「敵戦闘員」だから何をしても構わないという「言葉遊び」で国際協定や自国の法律を無視、それをバラク・オバマ政権も引き継いでいるわけだ。しかも、そうした収容所に拘束され、拷問を受けてきた人びとの大半が「無実」だと言われている。 アメリカ国内でも令状なしに当局が国民を盗聴し、信書を開封、住宅へ侵入、さらに予防拘束できるようにしたいと同国の一部支配層は昔から考えていて、1970年にはそうした憲法を無視した行為を合法化する法案が作成されている。それを止めたのがリチャード・ニクソン政権のジョン・ミッチェル司法長官だった。ウォーターゲート事件でニクソン政権が倒された一因はここにあるとも言われている。 こうした計画を再始動させる動きが始まるのは1978年。そうした動きの中心には「文明の衝突」で知られ、「民主主義の行き過ぎ」を主張していたサミュエル・ハンチントンがいた。そして創設されたのがFEMAであり、その延長線上にCOGがある。このCOGを始動させたのが2001年9月11日の出来事。実体化した法律が愛国者法だ。グアンタナモの問題はアメリカのファシズム化と密接につながっている。 グアンタナモはアメリカのラテン・アメリカ支配を象徴する存在。19世紀にアメリカでは先住民(いわゆるインディアン)の殲滅が一段落、支配層の目はスペインが支配していた南に向いた。そうした中、1898年にアメリカは軍艦「メイン号」をキューバのハバナ港へ派遣、そこで爆沈する。 この爆破をスペインによる工作だとアメリカ政府は主張し、宣戦布告した。これが米西戦争。この戦争に勝利したアメリカはキューバを「独立」させ、「保護国」にする。つまり植民地化した。1903年に結ばれた条約でアメリカの海軍基地が作られるが、その場所がグアンタナモ。1956年から59年にかけての革命でフィデル・カストロを中心とする体制になるが、その海軍基地はそのまま。アメリカはキューバからの返還要求を無視している。グアンタナモ以外にも、CIAは28カ国に約50の秘密刑務所を設置、船を利用した施設もあると推測されている。 グアンタナモに関する報告書の公表を延期、あるいは中止、つまり闇に葬り去る理由のひとつとして、IS(イスラム国、ISIS、ISIL、IEILとも表記)が拘束している捕虜の安全を挙げる人もいる。確かに、捕虜を殺し、アメリカの施設を襲撃する可能性もあるだろう。何しろ、ISはアメリカの好戦派がNATOの同盟国やイスラエルやサウジアラビアと共同で作り上げた化け物であり、こうしたグループの意向に沿ったことを実行する。
2014.12.10
キエフ政権のアメリカ色はますます濃くなってきた。12月2日に金融大臣となったナタリー・ヤレスコはシカゴ生まれで、1990年代まではアメリカの外交官。1992年から95年まではウクライナのアメリカ大使館に勤務していた。2004年から05年にかけて実行された「オレンジ革命」でビクトル・ユシチェンコが大統領に就任すると、その顧問として働いた。ウクライナ国籍を取得したのは12月2日、つまり大臣に就任したその日だ。経済大臣に就任した人物はリトアニアの投資銀行家で、保健大臣はグルジア人。ふたりともアメリカの影響下にあると言われている。このふたりも同じ日にウクライナ国籍を取得したという。 クーデターの前からウクライナは経済的に破綻していた。西側の巨大資本を後ろ盾にするユシチェンコ政権はウクライナの資産を一部の個人資産に移し替える政策、つまりエリツィンと同じことを行い、やはりオリガルヒ(一種の政商)を生み出した。このオリガルヒを介して富は西側の金融機関へ流れ、そこからロンドンを中心にするオフショア市場のネットワークへ沈み、投機市場で運用されているはずだ。当然、資産を奪われた国は疲弊する。 この疲弊を利用してウクライナを制圧しようとしているのがエネルギー会社やアグリビジネス。キエフ政権はIMFからカネを借り、東部や南部の民族浄化を進めてきたが、借金を返済するめどは立っていない。穀倉地帯のほか、天然ガスが出ると言われる東部や南部を西側の巨大資本は奪おうとしている。つまり、西側の手口は高利貸しと同じ。「客」を借金だるまにして尻の毛まで抜いてしまおうとしている。 ウクライナでクーデターが始動したのは昨年9月にヤルタで開かれた国際会議からだと言われているが、その下準備はソ連が消滅した直後から始まっている。昨年12月13日にはアメリカ(ネオコン/シオニスト)のビクトリア・ヌランド国務次官補は米国ウクライナ基金の大会で演壇に登場し、1991年からウクライナを支援するために50億ドルを投資したと発言している。その際、彼女の背後には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていた。 そうした流れの中、ユシチェンコが大統領に就任、その下で首相になったひとりがユリア・ティモシェンコ。彼女のパトロンは投機家のジョージ・ソロスである。ボリス・エリツィン時代にロシアで国の財産を盗んで巨万の富を築いたオリガルヒのひとり、ボリス・ベレゾフスキーもオレンジ革命の支援者だ。 クーデターが山場を迎える前、2月4日にヌランド次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使の電話での会話が明るみに出た。何者かが盗聴、YouTubeにアップロードしたのだ。 その中でヌランドに高く評価されていたのがアルセニー・ヤツェニュク。クーデター後に首相となっている。このヤツェニュクは東部や南部のロシア系住民を「劣等人類」と表現、またティモシェンコ元首相はウクライナにいる800万人のロシア人(ロシア系住民)を核兵器で皆殺しにすると口にしている。 アメリカは日本が中国やロシアに接近することを嫌い、「領土問題」という仕掛けを作り上げた。歴史を直視できない「妄想史観」の背後にも、おそらく、アメリカのが存在しているだろう。アメリカの好戦派自身、ヤルタでの合意を否定したがっているようだ。同じように、アメリカはロシアとEUとの関係が深まることを警戒している。ロシアとEUが手を組んだなら、アメリカの支配力は大幅に小さくなり、誰にも相手にされなくなる。 ロシアとEUを結びつける最大の要素はエネルギー源。今、アメリカが叫んでいる「制裁」の目的はロシアとEUを分断することにある。これによってEUは大きなダメージを受け、アメリカなしには存在できなくなるという読みだろう。 また、エネルギー源の販売先を潰すことでロシア経済を破綻させ、ウラジミル・プーチンを排除してエリツィンのような傀儡を大統領に据えようとしているのだろうが、パイプラインは中国やトルコへつながることになり、目論見は外れた。現在、石油相場が暴落しているが、これにもアメリカが介在していると見られている。経済戦ではアメリカが劣勢だ。
2014.12.09
イスラエルの戦闘機がシリアの首都、ダマスカス周辺の軍事施設を空爆したと伝えられている。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を始めていた2007年、ロシアはシリアへ防空システムのS-300を売る商談を成立させていたが、国連がシリアに対する武器の輸出を禁止したことにともない、配備は中断されているとされている。S-300が配備されるとシリアを空爆することが困難になるため、イスラエルは取り引きに強く反発していた。 2013年5月にもイスラエルはダマスカスの近郊を攻撃、大きな爆発が報告されている。まるで地震のようで、巨大な金色のキノコに見える炎が目撃されている。劣化ウランを利用した「新型爆弾」という説もあったが、小型核爆弾、いわゆる「スーツケース爆弾」が使われたという指摘がある。 アメリカとソ連はこの種の核爆弾を製造していることを認めている。当初はプルトニウム239の周囲をウラニウム238で囲むという仕組みだったが、最近はウラニウムを必要としなくなり、小型化が進んでいるという。 この攻撃の3カ月前、ホワイトハウスでは好戦的な閣僚が辞任していた。ロッキード・マーチンの代理人とも言われているヒラリー・クリントン国務長官が辞任したのだ。その3カ月前には、やはり好戦派でネオコン/シオニストと緊密な関係にあるデイビッド・ペトレイアスCIA長官も辞めていた。 クリントンが辞任した2013年2月に国防長官となったのがチャック・ヘーゲル。ネオコン/シオニストが激しく反対する中での就任だった。そのヘーゲルが辞表を提出、次の長官としてバラク・オバマ大統領が指名した人物は、2013年12月に国防副長官を辞めたアシュトン・カーター。2006年にはハーバード大学で朝鮮空爆を主張するなど、好戦的な姿勢を見せてきた。 例えば、アメリカが本格的な軍事侵攻の先兵として使う海兵隊が駐留している沖縄は脅威だと主張して中国が空爆したならアメリカや日本は報復を叫び、国連でも激しく非難さされるだろうが、イスラエルがガザへ軍事侵攻して虐殺と破壊を繰り返しても国連の非難は口先だけ。勿論、アメリカなどはイスラエルを擁護する。アメリカがウクライナでネオ・ナチを使ってクーデターを仕組んだことが明らかになっても国連は知らん振りだ。 2013年の夏には「化学兵器話」を西側のメディアは宣伝、アメリカ/NATOはシリアへ直接的な軍事介入を実行する姿勢を見せたが、嘘が明らかにされたこともあり、中止になった。中止になった後も「化学兵器話」の嘘を指摘する論文や記事が発表されていることは本ブログでも指摘してきた。 シリアをめぐる軍事的な緊張が高まっていた昨年9月、駐米イスラエル大使を務めていたマイケル・オーレンはエルサレム・ポスト紙のインタビューで、イスラエルは最初からシリアの体制転覆を望み、アル・カイダを支援してシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒そうとしてきたと言明した。アサド大統領とアル・カイダならアル・カイダを選ぶということだ。 アル・カイダ系の武装集団がリビアの体制転覆プロジェクトでNATOの地上軍として戦闘に参加していたことが明らかになっていたものの、イスラエル大使の口からこうした話が出たのは驚きだ。 このところアメリカ/NATOが「敵」として宣伝、軍事侵攻の理由にしているIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)だが、その母体になったのは2006年に編成されたAQI(イラクのアル・カイダ)。アメリカ/NATOとアル・カイダとの関係が知られるようになったので別の「妖怪」を持ち出してきたつもりだろうが、新味はない。このISをアメリカ/NATOが訓練し、サウジアラビアやカタールが資金を提供していることも明らかになっている。 最近では、ロシアのウラジミル・プーチン大統領の側近がイランのテレビ局に対し、ISがイスラエルやアメリカと結びついていることを公然と語っている。すでに広く知られた話ではあるが、プーチンの側近がこうした話をするということは、西側への希望をなくしたということだろう。 その側近は、モサド(イスラエルの情報機関)がISをシリアとイラクで訓練、アメリカはISを自分たちの手先として利用、EUに対し、アメリカに服従しないとISに攻撃させると脅しているのだという。そういえば、コンドリーサ・ライス元国務長官はFOXニュースのインタビューの中で、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないと語っていた。 また、昨年7月末、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官はロシアを秘密裏に訪問、ウラジミル・プーチン大統領と会談してシリアから手を引くように求め、要求をのめばソチで開かれるオリンピックを襲うとしているチェチェンの武装勢力を抑える、つまり要求をのまなければ襲わせると脅していた。ウクライナでクーデターを始めたのはそのタイミングだった。
2014.12.08
1941年12月7日午前7時48分(現地時間)にハワイの真珠湾に対する奇襲攻撃を日本軍は開始した。いわゆる偽旗作戦とは違って実際に日本軍が攻撃したのであり、例えばベトナム戦争へ本格的に介入する口実になったトンキン湾事件とは本質的に違う。野村吉三郎駐米大使らがアメリカのコーデル・ハル国務長官に最後通牒を伝えたのは攻撃開始から1時間後のこと。この攻撃で日本はアメリカと戦争を始めたわけだ。 当時の生産力、科学技術力を比較するだけでも日本がアメリカに正規戦で勝てる可能性はきわめて小さく、無謀な行為だったと日本ではマスコミに登場する「専門家」も口にする。日本はアメリカと戦争するべきでなかったというわけだ。 この主張を否定するわけではないが、その時点で日本が東アジアを軍事侵略していたことに触れない「専門家」が多い。アメリカと戦争したことは間違いだが、1872年の琉球藩設置に始まる東アジア侵略を肯定している、少なくとも否定していない。侵略戦争が泥沼化、真珠湾攻撃につながったことから目を背けている。 この辺の流れを振り返ると、1871年7月に廃藩置県、同年10月に宮古島の漁民が難破して台湾に漂着、何人かが殺され、72年に琉球王国を併合して琉球藩を設置したことに行き着く。明治政府の何者かが漁民殺害を口実に台湾を侵略することを思いつき、宮古島を日本領だと主張するために琉球藩をでっち上げたということだろう。 台湾に軍隊を送り込んだのは1874年、その翌年には李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦を派遣して挑発、紛争化に成功、「日朝修好条規」を結ばせて清(中国)の宗主権を否定させた。1894に朝鮮半島で甲午農民戦争(東学党の乱)が起こると、「邦人保護」を名目にして軍を派遣した。その一方で朝鮮政府の依頼で清も出兵、日清戦争が勃発している。 1840年から42年にかけてイギリスと戦争、敗北して「半植民地化」していた清との戦争に日本は勝つ。言うまでもなく、清とイギリスとの戦争は貿易で敗れたイギリスが清に麻薬のアヘンを売りつけようとして引き起こされた。資本主義は経済的に優位な仕組みではないということでもある。 1895年4月に「下関条約」が結ばれて日本は中国大陸での利権を獲得しているが、その半年後に三浦梧楼公使たちは朝鮮王朝の中で「親露派」と見られていた閔妃を暗殺している。そして1910年、日本は韓国を併合した。この年、幸徳秋水を含む社会主義者や無政府主義者が逮捕された。そのうち24名に死刑判決が出され、12名が処刑されている。いわゆる「大逆事件」だが、冤罪だった可能性がきわめて高い。 事件の翌年、1911年に警視庁は特別高等課を設置、1923年の関東大震災を経て25年5月に普通選挙法を公布されるが、6月には治安維持法が成立、思想統制の仕組みが出来上がる。震災の復興資金の調達を頼った先のJPモルガンはウォール街の巨大金融機関で、それ以降、日本はその強い影響下に入る。 その後、1927年に第1次山東出兵、翌年に第2次山東出兵、張作霖爆殺、31年には満鉄の線路が爆破された。関東軍参謀の石原莞爾中佐(当時)と板垣征四郎大佐(当時)が立案、今田新太郎大尉が用意した爆弾を河本末守中尉を中心とするグループが仕掛けたと言われている。これを切っ掛けにして「満州事変」が始まり、その翌年に日本の傀儡国家「満州国」の建国が宣言された。 その年、アメリカではウォール街を揺るがす事態が生じていた。大統領選挙で巨大企業の活動を制限し、労働者の権利を拡大、植民地やファシズムに反対するフランクリン・ルーズベルトが当選したのだ。 この結果を受け、JPモルガンを中心とする巨大資本の一部はファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画している。つまりJPモルガンはファシスト、あるいはそのスポンサーだということ。このクーデター計画は海兵隊のスメドリー・バトラー少将の議会証言などで明るみに出た。ウォール街がナチス時代のドイツへ資金を提供していたことも明らかになっている。 このJPモルガンと最も緊密な関係にあった政治家と言われているのが「適者生存」を信奉する井上準之助。親しくなる切っ掛けは1920年に行われた対中国借款の交渉だったという。1929年7月に誕生した浜口雄幸内閣で井上は大蔵大臣に就任した。 この政権の政策によって日本では庶民が貧困化、欠食児童、争議などが問題になり、東北地方では娘の身売りが増えた。こうした政策に対する不満は高まり、1930年11月に浜口首相が銃撃されて翌年8月に死亡、32年には井上が射殺されている。 1937年7月には盧溝橋事件が起こり、12月には南京を占領する。攻略戦の過程で日本軍は多くの市民を虐殺しているが、その裏で組織的な財宝略奪もあったと言われている。日本兵として参加、あるいは目撃した人びとが少なくなると、この虐殺を否定しようと必死な人たちもでてきたようだが、世界では通用しない。 その虐殺について、少なからぬ日本軍将兵が陣中日記の中で軍命によって捕虜を射殺したと記録、支那派遣軍の岡村寧次総司令官は部下からの報告に基づいて「南京攻略時、数万の市民に対する略奪強●等の大暴行があったのは事実」と書き残している。 また、外務省の石射猪太郎東亜局長は「南京に於ける我軍の暴状」の報告があり、そこには「略奪、●姦目もあてられぬ惨状」と書かれていたと日記に記している。松井石根大将が師団長クラスの退廃ぶりを嘆き、三笠宮崇仁が著書の中で「日本軍の残虐行為」や「毒ガスの生体実験」について触れたことは有名な話だ。 事件当時、特務機関員として活動中だった中島辰次郎は、南京市内で「虐殺」と呼べる出来事があったことは間違いないと明言、総数については市内をくまなく調べたわけではないのでわからないとしたうえで、死体が山積みになった光景を見たと話していた。 なお、この攻略戦は形式上、指揮していたのは中支那方面軍司令官兼上海派遣軍司令官だった松井石根だが、実際は上海派遣軍の司令官として参加していた昭和天皇の叔父、朝香宮鳩彦だとされている。皇室のメンバーを止めることは大本営でも不可能だ。関東軍が暴走できた理由のひとつはそこにあるのだろう。●:楽天の規制
2014.12.07
フランソワ・オランド仏大統領がロシアを突如訪問し、モスクワの空港ビルでウラジミル・プーチン露大統領と会談した。両国はいくつか問題を抱えている。例えばロシアから発注し、すでに受け渡し期日が来ているミストラル級強襲揚陸艦の引き渡しをアメリカの圧力でフランスは拒否、ロシアからEUへ天然ガスを輸送するパイプライン(サウス・ストリーム)の建設もアメリカの圧力でブルガリアが建設の許可を出さずに計画は中止された。 しかし、モスクワで両首脳が話し合った内容はウクライナ情勢のようで、戦闘を終わらせなければならないということで合意したという。当初からEUはウクライナの混乱を話し合いで解決しようとしていたが、それを許さなかったのがアメリカ。 今年2月上旬、アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使との会話がYouTubeにアップロードされた。次のウクライナ政府の閣僚人事をどうするか話し合っているのだが、その中でヌランドは次のようなことを言っていた:「あなたにも話したか、ワシントンに話しただけなのか覚えていないんだけれど、今朝、ジェフ・フェルトマン(国連事務次長)と話した際、新しい国連のヤツの名前を聞いたわ。ロバート・セリーよ。この話、今朝、あなたに書いたかしら?」 オランダのロバート・セリー元駐ウクライナ大使が国連特使としてキエフへ派遣されるとフェルトマンから聞いたヌランドは喜んでいる。EUが話し合いでウクライナの混乱を収束させようとしていることに不満を抱いていたヌランドは国連を引き込めることを喜んでいる。そして「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしたわけだ。 フェルトマンは2012年に潘基文国連事務総長が引っ張ってきた人物で、2004年から08年にかけて駐レバノン米大使を、09年から国務省で近東担当次官補を務め、イラン、シリア、ヒズボラを露骨に敵視していることでも知られている。アメリカ(ネオコン/シオニスト)、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟と同じ立場と言うことだ。 控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないとコンドリーサ・ライス元国務長官はFOXニュースのインタビューで語っているが、ネオコン/シオニストも同じ認識のようで、武力で相手を従属させようとしてきた。脅しだけで目的を達成できない場合は実際に軍事力を行使する。 彼らは同じ手法をロシアや中国に対しても使おうとしているのだが、この2カ国には通用しない。そこで脅しをエスカレートさせているのだが、無駄なことは無駄。このまま進めば核戦争になる。日本ではどうだか知らないが、世界的に見るとこれを懸念している人は少なくないようだ。 ネオコン/シオニストの強い影響を受けているアメリカの議会では好戦的な雰囲気が蔓延、12月4日には下院でロシアを非難する決議が411対10という大差で可決された。証拠を示さないだけでなく、明らか嘘を並べたプロパガンダにすぎない決議だが、戦争へ向かうための大きな一歩だとは言える。 こうした動きに連動するように、ウクライナはIMFのカネを投入して軍備を強化している。同国の大統領によると、Т-64 BV戦車、Т-72 B1戦車、Т-72UA戦車、Т-72A戦車、BTR-3e装輪装甲車、BTR-4e装輪装甲車、2S1(2C1)自走榴弾砲、Mi-8ヘリコプター、Mi-2ヘリコプターを受け取ったとしている。 経済的に破綻しているウクライナが兵器にカネを投入しているわけだが、その目的は東部や南部の制圧、民族浄化にある。2010年の大統領選挙における投票動向を見れば一目瞭然だが、アメリカ/NATOがクーデターで排除したビクトル・ヤヌコビッチを支持したのは東部や南部。西部や中央部は投機家のジョージ・ソロスを後ろ盾とするオリガルヒのユリア・ティモシェンコだった。キエフ政権のペトロ・ポロシェンコ大統領はヤヌコビッチを支持した地域を破壊しようとしている。2010年のウクライナ大統領選における投票動向
2014.12.07
アメリカ下院は12月4日、ロシアを非難する決議を411対10という大差で可決した。ロン・ポール元下院議員の言葉を借りると、「向こう見ずな議会がロシアに宣戦布告した」のである。すでにアメリカ/NATOはロシアとの国境近くにおける軍事を増強、その延長線上にある決議。今後、アメリカ大統領は議会を気にすることなく、ロシアと戦争を始めることができる環境が整いつつある。 好戦性という点では上院も負けていない。今年5月に上院で提出された法案は、ポーランド、エストニア、リトアニア、ラトビアなどの軍隊を支援、そうした国々でNATOの恒久的軍事基地を建設するように考えるとされている。 実際にそうした方向へアメリカ/NATOは動いていて、その前の月にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)の総司令官(SACEUR)、フィリップ・ブリードラブ米空軍大将はアメリカ軍部隊をロシアに近い東ヨーロッパの国へ入れるかもしれないと語っていた。すでに戦闘機は急ピッチで増強され、約100輌のエイブラムズ戦車や装甲戦闘車両のブラッドレーも東ヨーロッパへ配備される予定だ。 そうした中、バラク・オバマ政権の国防長官が交代する。ネオコンに批判的で戦争に消極的なチャック・ヘイグが、朝鮮への攻撃を主張していた好戦的なアシュトン・カーターと入れ替わるのだ。今の議会なら承認されるだろう。 ロシアの自立や中国の台頭はネオコン/シオニストにとって許しがたいこと。1991年にソ連が消滅してアメリカが「唯一の超大国」になったと浮かれた彼らは世界制覇へのビジョンを描いていたわけだが、その実現を妨げるからだ。 ネオコン/シオニストの好戦的なビジョンは戦争ビジネスだけでなく、そうしたビジネスの投資しているヘッジファンドや金融機関にとっても世界の不安定化は悪くない。そこで後押しすることになる。EUの場合は自らを破滅へ導く戦略なのだが、エリートはアメリカに従うことでカネと権力を手に入れてきたことから逆らえない。アメリカの意に反することをすれば激しい個人攻撃にあう。 ウクライナの不安定化は1992年に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリン(これまで何度も説明してきたので、今回は割愛)やズビグネフ・ブレジンスキーの戦略に基づいている。ブレジンスキーがソ連/ロシアの制圧プロジェクトを始動させたのは1970年代のこと。アフガニスタンやポーランドでの秘密工作から始まっている。 ウォルフォウィッツ自身はニューヨーク生まれだが、父親のジェイコブはブレジンスキーと同じポーランド生まれ。ポールは1970年代、ジェラルド・フォード政権がCIAの内部で分析部門に対抗する形で始動させた反ソ連派のチームBに参加している。この時のCIA長官がジョージ・H・W・ブッシュだ。 このブッシュを日本では「素人」だと説明していたが、実際はエール大学で幹部候補としてリクルートされたと信じられている。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された当時、彼がCIAの幹部だったことは公文書に記載されている。勿論、工作にはブレジンスキーも加わっている。 ポーランドでの工作は1970年代から80年代にかけて展開された。その中心に存在していたのが「連帯」。この「労働組合」がCIAやバチカンと連携していたことは広く知られている。 ポーランド工作で中心的な役割を果たしたのはロナルド・レーガン大統領とポーランド生まれのヨハネ・パウロ2世。レーガン政権でCIA長官だったウィリアム・ケーシー、リチャード・アレン国家安全保障問題担当大統領補佐官(1981年から82年)、ウィリアム・クラーク国家安全保障問題担当大統領補佐官(1982年から83年)、アレキサンダー・ヘイグ国務長官(1981年から82年)、バーノン・ウォルターズ元CIA副長官、ウィリアム・ウィルソン駐バチカン米国大使らも工作に参加しているが、この人びとはカトリック教徒だ。クラークの場合、妻がチェコスロバキア出身だということも本人の行動に影響した可能性が高い。 こうした戦争への道を整備することになる今回の決議だが、その中から事実を探し出すことは難しい。ポール元議員も例示しているように、プロパガンダ、あるいは嘘の羅列にすぎないと言うことだ。 例えば、決議は西側メディアのプロパガンダと同じように、ロシアがウクライナを侵略したと証拠を示すことなく非難しているが、今回の戦乱は今年2月にネオ・ナチのグループが始めたクーデターにある。そのクーデターの準備はソ連が消滅した直後に始まっていることをアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補は昨年12月13日に米国ウクライナ基金の大会で明言している。1991年から50億ドルをウクライナに投資したというのだ。その際、彼女の背後には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていた。 また、東/南部で行われた住民投票も非難しているが、これは人びとの意思を示す行為であり、その背景ではネオ・コンがキエフやオデッサで行った残虐行為がある。この非難は基本的な人権を否定する主張だ。オデッサの虐殺以降、アメリカ/NATOを後ろ盾とするキエフ軍は東/南部への攻撃を開始、破壊と殺戮を繰り返して約100万人の住民がロシアへ避難せざるをえない状況を作った。 ウクライナからロシア軍を撤退させろとも要求しているが、ロシア軍がウクライナへ侵攻したことを示す事実はない。もし本当なら、アメリカのスパイ衛星が撮影しているはずで、1962年のミサイル危機と同じように写真を公開すべきなのだが、そうしたことはしていない。メディアは証拠らしきものを伝えたが、すぐに嘘だと言うことが明らかにされた。 マレーシア航空17便を下院は「親ロシア派」が撃ち落としたと言い張っているが、その主張に根拠がないことは本ブログでも書いてきた通りで、キエフ側の戦闘機に撃墜された可能性が高い。ブラックボックスはキエフ政権の後ろ盾になった勢力が確保、情報を隠し、彼ら以外の調査を妨害している。 アメリカとイスラエルの支援を受けたグルジアが南オセチアを奇襲攻撃した出来事をロシアのグルジア侵攻だと主張するが、嘘も繰り返せば事実として受け入れられると考えているのだろうか? シリア政府への武器供給も非難しているが、これはアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの三国同盟に支援された武装勢力の侵略と戦うため。アメリカ/NATOは侵略軍、最近はIS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)の戦闘員を雇い、武器を供給、軍事訓練をしている。ISへの攻撃が茶番だということは本ブログで何度も書いた。 ロシア系のメディアがプロパガンダでアメリカを攻撃しているともしているが、事実は逆のことを示している。本ブログでも指摘してきたが、西側メディアが事実に反する報道を続けてきたのである。これはユーゴスラビアへの軍事侵略以降、システマティックに行われているが、イラクを先制攻撃する際の嘘は当時の米英政府高官も認めている。 こうした愚にもつかないことを書き連ねた決議を下院は採択、ロシアに対して開戦の脅しをかけているわけだが、こうしたことにロシアが屈するとはないだろう。ロシア国内で蜂起を演出しようとするかもしれないが、それが成功するとは思えない。 アメリカでは国民の意思とは逆に、戦争へ向かって加速しつつある。2006年にフォーリン・アフェアーズ誌が掲載したキール・リーバーとダリル・プレスの論文は、アメリカがロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できるとしていた。つまり、核兵器で先制攻撃すれば完勝できるというわけだ。この主張をアメリカの好戦派は今でも信じているのかもしれないが、そうだとすると危険だ。 アメリカが戦争体制へ入るのに合わせるようにして、日本では総選挙が実施される。集団的自衛権によって日米安保はNATOと連携することになりそうだが、NATOではひとつの国への攻撃を全体への攻撃と見なす、つまりひとつの国が侵略戦争はじめれば他の国も参加するということになっている。アメリカの戦争へ日本も自動的に参加することになるが、その戦争では核兵器が使われる可能性が高く、日本の位置を考えるとそこに住む人びとが死滅することもありえる。
2014.12.06
ロシアからEUへ天然ガスを輸送する新たなパイプラインになるはずだったサウス・ストリームの計画が御破算になった。ロシアから黒海を横断、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニア、そしてイタリアへいたるルートだったが、ブルガリアがアメリカの圧力に屈して建設の許可を出さず、ロシアは見切りをつけた。替わってトルコへ輸送するブルー・ストリームを建設する。EUにとって大きなダメージだ。サウス・ストリーム ブルー・ストリーム かつてネオコン/シオニストから好かれていたハンガリーのビクトル・アルバン首相は最近、アメリカから嫌われているのだが、その理由もサウス・ストリーム計画にあったと見られている。ジョン・マケイン米上院議員はアルバン首相を「ネオ・ナチ」と呼んだらしいが、ネオ・ナチを使っているのはマケインなどネオコン/シオニスト。自分の本性を相手に押しつけて攻撃するのは彼らの常套手段だ。 ブルガリアが計画を止める動きに出たのは6月。アメリカやEUからプラメン・オレシャルスキー首相が圧力を受けてのこと。計画の中止で仕事と相当額の利益を失うことになるが、EUも厳しい状況。欧州委員会のジャン-クロード・ユンケル委員長はパイプラインを建設できると述べているが、サウス・ストリームに替わるエネルギー源の確保は難しい。 アメリカのシェール・ガスやシェール・オイルが増産されるという人もいるが、これには問題がある。勿論、今年の冬は間に合わないということもあるが、フラッキング(水圧破砕)という手法に対する抵抗が強まっているのだ。 シェール(堆積岩の一種である頁岩)層まで掘り下げ、そこから横へ掘り進んで「フラクチャリング液体」を流し込んで圧力をかけて割れ目(フラクチャー)を作り、砂粒を滑り込ませてガスやオイルを継続的に回収するというのだが、この方法は自身を誘発すると言われ、化学薬品を使うために環境汚染が問題になっている。アメリカの農業を支えてきた地下水を汚染する可能性が高いのだ。 また、シェール・オイルの採掘予測が間違っている、あるいは嘘だという指摘がある。つまり、シェール・ガスやシェール・オイルの産出量は増えないということ。しかも最近は石油相場が下落、コストの問題でビジネス的にも成り立たないくなってきた。「シェール・オイル幻想」も消えかかっているのだ。 こうした状況の中、EUの支配層はアメリカの命令に従ってロシアとの商談を中断したのだが、そのひとつの結果としてサウス・ストリーム計画が中止になってしまった。EUの支配層は自分たちの魅力を過信し、ロシアは譲歩してくるとでも思ったのかもしれないが、惨めなことになっている。 すでに今年5月にロシアは中国と天然ガスの供給契約を結び、11月には「西ルート(またはアルタイ・ルート)」の施設を使った新たな天然ガス供給が明らかになっている。そしてトルコとの契約。ロシアに見限られたEUはアメリカに頼らざるをえないが、そのアメリカの状況も怪しい。EUは窮地に陥った。 かつてはヨーロッパに憧れていたロシアだが、ボリス・エリツィン時代に「西」の正体を知り、「民主化幻想」は消えている。今回、素早く「東」へ切り替えられたのは、そうした背景があるのだろう。 ただ、EUの弱体化はアメリカにとって悪くない話。「潜在的ライバル」が消えることを意味するからだ。次はロシアということになるが、ソ連や帝政ロシアだけでなくロシアそのものを消滅させたいとリチャード・チェイニーは1991年当時、つまりソ連が消滅した頃に語っていたという。これはロバート・ゲーツの著書、『任務』(Robert M. Gates, “Duty,” Alfred A. Knopf, 2014)には書かれている話。 ソ連を消滅させたクーデターで実権を握ったのがボリス・エリツィンで、その背後には西側の巨大資本が存在していた。エリツィンが台頭する前の段階でアメリカは秘密工作をスタートさせている。ひとつはアフガニスタンへソ連軍を引き込んでイスラム武装勢力と戦わせるという工作で、1970年代に始まる。これはズビグネフ・ブレジンスキーのアイデアだった。 同じ時期、IOR(宗教活動協会。通称、バチカン銀行)を使った工作も進められた。イタリアの大手金融機関、アンブロシアーノ銀行と連携してポーランドの「連帯」へ違法融資して「民主化」を煽っていたのだ。この工作の背後には非公然秘密結社のP2が存在、これはNATOの秘密機関のひとつ、グラディオとつながっている。 この当時、IORの頭取だったポール・マルチンクスはローマ教皇パウロ6世(ジョバンニ・バティスタ・モンティニ)の側近。モンティニは第2次世界大戦の前からヒュー・アングルトンとつながっていたが、そのボスがアレン・ダレスであり、ヒューの息子はCIAの防諜部門を指揮、秘密工作にも手を染めていたジェームズ・アングルトンだ。また、1978年、就任した直後に急死したヨハネ・パウロ1世から引き継いだヨハネ・パウロ2世(カロル・ユゼフ・ボイティワ)はブレジンスキーと同じポーランド出身である。 ロシア制圧の要石はウクライナだと考えていたブレジンスキーは今年1月の段階で反政府グループへの支持を明言、クーデター後の展開が思惑通りでないことを懸念したのか、5月にはクーデター政権へ軍事援助するように主張している。計算違いを武力で押し切ろうとしているように見える。
2014.12.05
安倍晋三政権の政策はアメリカ支配層の意向に従い、日本の巨大企業や富裕層を富ませることにある。首相の目に庶民は入っていない。だからこそ、実質賃金が1990年代の後半から下がり続け、貧富の差が拡大している中、低所得層への負担が大きい消費税の税率をさらに引き上げると宣言できたわけである。しかも福祉の水準は引き下げ、その一方で法人税の税率はさらに低くしようとしている。金融緩和が投機をテコ入れし、富裕層を富ませるだけだということはIMFでさえ認めている。 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の導入にも安倍政権は積極的な姿勢を見せているが、この中に含まれるISDS(国家投資家紛争処理)条項が参加国の政府や議会を無力化する仕組みだということも知られている。直接的な生産活動やサービスのルールだけでなく、労働条件、環境汚染、食糧の安全などに関する規制、あるいは健康保険や年金など社会保障の仕組みを各国政府が決められないようにする条項だ。 スキャンダルで失脚する直前、2011年4月にドミニク・ストロス-カーン前IMF専務理事は、失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないず、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと語った。そして、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと主張し、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だとしている。全くその通り。 閣議決定された集団的自衛権は日本の自衛隊をアメリカ軍の下請けにする仕組み。そのアメリカは2001年9月11日以降、国外では軍事侵略で破壊と殺戮の限りを尽くし、国内では令状なしに逮捕、拘束、盗聴できる警察国家を築きつつある。その警察は丸腰の市民を殺害、その装備は軍隊化している。本ブログでは何度も書いているように、中東/北アフリカでは侵略の手先にアル・カイダ系の武装集団(ISを含む)を、またウクライナではネオ・ナチを使っている。つまりアメリカはナチズム化した。集団的自衛権とは、そのナチズム国家の手先になることを意味すると言える。 こうした政策を推進すれば日本が破壊されることは明らか。環境は東電福島第一原発の事故で大きなダメージを受けているが、それだけでなく政治経済は腐敗、社会システムは崩壊しつつある。それを安倍政権は加速させようとしている。 それでも安倍政権が次の総選挙で勝利するとするならば、その「功績」はマスコミと東京地検特捜部にある。日本破壊を本格化させた小泉純一郎に続いた安倍(第1次)、福田康夫、麻生太郎の自民党政権を選挙で倒して成立した鳩山由紀夫政権を倒したのだ。 2009年の総選挙で民主党が総議席の3分の2に迫る議席を獲得したのだが、党の代表だった小沢一郎を彼らは潰しにかかる。秘書が逮捕されたのに続き、土地取得の時期が2カ月ずれ、土地の代金支払いの時期が2カ月ずれていたという理由で小沢自身も「強制起訴」されたのだ。小沢に変わって首相となった鳩山も激しく攻撃された。 鳩山が失脚した後に登場した菅直人や野田佳彦は自民党政権を誕生させる下準備をしたにすぎない。そして安倍の復活。アメリカの支配層は犯罪組織でも、テロリストでも、ネオ・ナチでも使う。どれほど愚かで狂った人物でも利用できるなら利用するだろう。そのアメリカ支配層のプロパガンダ機関が「有力メディア」なのであり、こうしたところから出てくる情報を有り難がるのは、「大東亜共栄圏」を理由にアジア侵略を支持することと大差はない。
2014.12.04
インターポールに国際手配されているイギリス人女性、「白い未亡人」ことサマンサ・ルースウェイトがウクライナで殺されたとする情報がある。この女性はソマリアを拠点とするイスラム武装集団「アル・シャバーブ」のメンバーだと言われているが、アメリカ/NATOを後ろ盾とするキエフ政権側の戦闘集団「アイダル大隊」で狙撃手として戦闘に参加、反キエフの人民共和国側の狙撃手に射殺されたというのだ。ただ、この話をアイダルは否定している。 この報道が正しいかどうかはともかく、アイダルはイスラエル系富豪とネオ・ナチ勢力が結びついてできた武装集団で、非武装のロシア系住民を虐殺してきたとは言える。例えば、今年9月にドネツク近郊で発見された集団墓地はその2週間前までアイダルや親衛隊というネオ・ナチ系の部隊が駐屯していた地域にある。 その墓地に埋葬されたのは地元の住民だとみられ、死体は手を縛られた状態で発見されている。頭部に銃弾の跡があることから処刑された可能性が高く、中には頭部が胴体から切り離されているものもあったという。アイダルとは、そうした集団である。 イスラム武装勢力のメンバーがウクライナで戦闘に参加していても不思議ではない。過去を振り返ると、1991年にソ連が消滅してからアメリカ/NATOはユーゴスラビアを公然と先制攻撃して国を粉々にしたが、その際にアル・カイダがボスニアへ入って戦闘に参加している。そうしたイスラム系武装グループの資金源は例によってサウジアラビア。この当時、チェチェン、タジキスタン、ウズベキスタン、ウイグルの戦闘員が一緒に訓練を受けたという。 チェチェンの反ロシア勢力がグルジアのパンキシ渓谷を拠点にしていることは本ブログでも何度か書いた。この地域へはチェチェンからの難民が流れ込んでいて、そこでアメリカのCIAはチェチェン人をリクルートしていると言われている。グルジアはアメリカやイスラエルの強い影響下にある国だ。 このパンキシ渓谷からシリアへチェチェン人が送り込まれ、ISの戦闘員として戦っているのだが、これは新しい動き。ロシアやウクライナで活動するのが普通だ。2月のクーデターで先頭に立ち、後にキエフ政権の内部で粛清されたアレキサンダー・ムージチコ(別名、サーシャ・ビリー)は1995年までチェチェンでロシア軍と戦っていたが、このように交流がある。 現在のキエフ政権は西側の巨大資本と結びついた「オリガルヒ」と呼ばれる富豪たちとアメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチ。このネオ・ナチとは第2次世界大戦でナチスと手を組んでいたステファン・バンデラを信奉する人びとで、その比率はウクライナ人の15から20%だという。実権を握ることもできる大きな勢力だ。 そうしたネオ・ナチの資金源になっているのがイスラエル系のオリガルヒ。東/南部の民族浄化で黒幕と言われているドニエプロペトロフスクのイゴール・コロモイスキー知事はウクライナ、キプロス、イスラエルの三重国籍。生活の拠点はスイスのジュネーブだ。アイダルのスポンサーもコロモイスキー。そのほかアゾフ、ドンバス、ドニエプルといった私兵を組織、さらにアメリカの傭兵会社から戦闘員を雇っている。ネオ・ナチの戦闘員を雇うために数千万ドルを投入していると言われている。 アメリカ/NATOによるウクライナ乗っ取り劇の第1幕は2004年から05年にかけての「オレンジ革命」。その背後には投機家のジョージ・ソロスなど西側の富豪だけでなく、ボリス・エリツィン時代のロシアで不公正な手段を使って巨万の富を築いたボリス・ベレゾフスキーもいた。「革命」後に首相を務めたこともあるユリア・ティモシェンコはソロスの手先として台頭した。 現在、ウクライナの体制を乗っ取るプロジェクトで最前線にいるのがアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補。その結婚相手はネオコン/シオニストの中心グループに属しているロバート・ケーガンだ。 ネオコンの思想をたどるとウラジミール・ジャボチンスキーへ行き着く。この人物はオデッサ(現在はウクライナだが、(当時は帝政ロシア)の生まれで、第1次世界大戦でイギリス軍に参加、1940年にアメリカのニューヨークで死亡している。イスラエルの現首相、ベンヤミン・ネタニヤフの父親、ベンシオンはポーランド生まれで、ジャボチンスキーの側近だった。 この地域にはユダヤ人が多く住んでいて、その中にはコミュニストも少なくなかった。その勢力に対抗させるため、イギリスは反コミュニストのユダヤ人としてジャボチンスキーのようなシオニストと結びついたとする分析もある。 こうしたヨーロッパ系のユダヤ教徒(アシュケナージ)はパレスチナから移り住んだのでなく、黒海周辺に住んでいたハザルの子孫だと言われている。これは学者の研究だけでなくイスラエル政府の結論でもある。そうしたこともあり、タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、ユダヤ教徒をクリミアへ移住させる計画があるようだ。 この移住を「第2のイスラエル」と表現する人もいるが、そのクリミアでは3月に住民投票が実施され、95%以上(投票率は80%)がロシアへの加盟に賛成してキエフ側は制圧に失敗した。 ネオコン/シオニストの影響下にあるキエフ政権はクリミア奪還を叫び、東/南部での民族浄化作戦を再開する動きを見せている。すでに戦闘機が急ピッチで増強され、約100輌のエイブラムズ戦車や装甲戦闘車両のブラッドレーも東ヨーロッパへ配備される予定。その一方、アメリカ下院はロシアを敵視、新たな冷戦の開始を宣言する第758号決議を採択しようとしている。 ネオコン/シオニストは「凶人理論」を使い、相手を脅し上げて屈服させようとするが、ロシアは受けて立つ構えだ。ドイツでは支配層の内部でもそうした「理論」を懸念する人が出てきたが、ネオコン/シオニストは狂気の度合いを引き上げようとしている。言うまでもなく、安倍晋三政権の集団的自衛権はそうした狂気とつながっている。
2014.12.04
チャック・ヘーゲル国防長官の有力な後任候補としてアシュトン・カーターの名前が挙がっている。2011年から13年にかけて国防副長官を務めた人物で、2006年にはハーバード大学で朝鮮空爆を主張するなど、好戦的な姿勢を見せてきた。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、ブッシュ・ジュニア政権はネオコン/シオニストが主導権を握り、国外では軍事侵略、国内ではファシズム化を推進しているが、そうした暴走を懸念した支配層の一部がひとつのグループを編成している。 そのグループで中心的な役割を果たすことになるのはジェームズ・ベーカー元国務長官とリー・ハミルトン元下院外交委員長。ヘーゲル長官はこの勢力に属すと見られていたのだが、カーターは反対の立場。 アメリカで朝鮮攻撃の気運が高まるのはビル・クリントンが大統領だった1990年代の後半。1998年に作成された「OPLAN 5027-98」は朝鮮に対する先制攻撃、体制転覆、傀儡政権の樹立を目的にしていた。その翌年には朝鮮の「金体制」が崩壊した場合を想定したCONPLAN 5029も作成され、黄海では朝鮮と韓国の艦船が交戦している。 ジョージ・W・ブッシュ政権の2年目、2002年の一般教書演説で大統領は朝鮮、イラク、イランを「悪の枢軸」と呼び、黄海で朝鮮と韓国が交戦した。その翌年にブッシュ・ジュニア政権は空母カール・ビンソンを中心とする艦隊を朝鮮半島に派遣、6機のF-117を韓国に移動させ、グアムにはB-1爆撃機とB-52爆撃機が配備させている。 2005年にブッシュ政権は5029をCONPLAN(概念計画)からOPLAN(作戦計画)に格上げしようとしたが、当時の韓国政府はこの方針に反対したという。ただ、今ではすでにOPLANになっているようだ。このほか、朝鮮への核攻撃を想定したCONPLAN 8022も存在している。 カーターが朝鮮攻撃を主張した2年後に李明博政権が誕生、一気に東アジアの軍事的な緊張が高まった。2009年10月に朝鮮側は韓国軍の艦艇が1日に10回も領海を侵犯していると抗議、その翌月に韓国海軍の艦艇と朝鮮の警備艇が交戦する事態になる。 WikiLeaksが公表した外交文書によると、韓国政府は10月に朝鮮が話し合いに戻ってくると判断していたようで、朝鮮側から軍事衝突を仕掛ける状況ではなかった可能性が高いと言えるだろう。日本で東京地検特捜部とマスコミが総掛かりで小沢一郎を攻撃しはじめたのもこの年だ。小沢の「同志」だった鳩山由紀夫も集中砲火を浴びる。 2010年3月には、韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域で韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没する。米韓が合同軍事演習「フォール・イーグル」を実施している最中の出来事だった。この沈没に関して5月頃から韓国政府は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始めるのだが、CIAの元高官でジョージ・H・W・ブッシュと親しく、駐韓大使も務めたドナルド・グレッグはこの朝鮮犯行説に疑問を投げかけている。 そして11月には問題の海域で軍事演習「ホグク(護国)」が実施され、アメリカの第31MEU(海兵隊遠征隊)や第7空軍が参加したと言われている。そして朝鮮軍の大延坪島砲撃につながる。 本ブログでは何度も書いたが、この延長線上に尖閣諸島/釣魚台群島の領有権問題がある。田中角栄政権で「棚上げ」していたものを引きずり下ろし、火をつけたのは海上保安庁。2010年9月に「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、漁船の船長を逮捕したのだが、この逮捕劇の責任者は国土交通大臣だった前原誠司。本来なら外務省が火消しを始めるのだが、前原はその月に外務大臣となった。 その翌年に東北地方の太平洋側を巨大地震が襲い、東電福島第一原発が事故を起こして大量の放射性物質(チェルノブイリ原発事故の数倍から数十倍)を環境中の放出、尖閣諸島どころではなくなる。この問題に再度、火をつけたのは東京都知事だった石原慎太郎である。 まず息子の石原伸晃が2011年12月にハドソン研究所で尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言、翌年4月には父親の石原慎太郎が「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで講演、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示して問題が再燃したのだ。 アシュトン・カーターが国防長官になるということは、石原親子や前原のようなメンタリティーの日本人を刺激し、東アジアを不安定化させる可能性がある。ネオコン/シオニストはアメリカの利益を考えないが、勿論、日本の利益も考えない。そのネオコン/シオニストに日本の「エリート」は個人的な利益で引っ張られている。
2014.12.03
イラクとシリアで戦闘を続けているIS(イスラム国、ISIS、ISIL、IEILとも表記)の部隊を戦闘機がイラク領内で空爆したと伝えられた。撮影された戦闘機はF-4ファントムだと見られる。中東でF-4を使っているのはトルコかイランしかない。説明が正しいなら、イランの戦闘機がイラク領空へ入り、クルド側と手を組んで攻撃した可能性が高い。 アメリカがイギリスなどを引き連れてイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒してからイラクとイランの関係は良くなっていた。残虐さを売り物にしているIS。ファルージャに続いてモスルを制圧、油田地帯を押さえたのだが、このように占領地を広げられた理由としてイラク軍の指揮官が戦闘を回避したことが挙げられている。 当時、首相だったノウリ・アル・マリキもそう考えたようで、メーディ・サビー・アル・ガラウィ中将、アブドゥル・ラーマン・ハンダル少将、ハッサン・アブドゥル・ラザク准将、ヒダヤト・アブドゥル・ラヒム准将を解任した。 このマリキにはさまざまな評価があるが、アメリカ軍の永続的な駐留やアメリカ兵の不逮捕特権を認めなかったことからアメリカ政府に嫌われていたことは確か。今年4月に行われた選挙でマリキを支える「法治国家連合」が第1勢力になったが、フアード・マアスーム大統領はマリキを首相に指名せず、ハイダル・アル・アバディを選んだ。指名の直後にジョー・バイデン米副大統領は歓迎の意を示したようで、この人選にはアメリカが介在しているのだろう。 ISの首切り場面を西側メディアがセンセーショナルに取り上げた後、アメリカ政府は「反イスラム国(IS)連合」を結成した。攻撃に参加するのはアメリカのほか、エジプト、イラク、ヨルダン、レバノン、そしてサウジアラビアやカタールを含むペルシャ湾岸の6カ国だという。ヨルダンにはアメリカ/NATOがISを軍事訓練した施設があり、サウジアラビアやカタールは彼らのスポンサーだ。 この連合は9月23日に空爆を実施、その「戦果」が宣伝されたが、当日、現地で取材していたCNNのアーワ・デイモンは別の情景を伝えている。ISの戦闘員は空爆の前に極秘情報を入手、攻撃の15から20日前に戦闘員は避難して住民の中に紛れ込んでいたと空爆の翌朝に伝えているのだ。 ISがアメリカ/NATOの訓練を受け、武器を提供され、サウジアラビアやカタールの資金で戦闘員を雇うだけでなく、トルコとイスラエルの協力で石油をEUへ売り、アフガン戦争時代にアメリカ/NATOが作り上げた麻薬密輸ルートで資金を稼いでいるという。この麻薬密輸にNATOが協力しているという情報もある。 イランのF4がイラク領内のISをアメリカ/NATOとは無関係な形で攻撃したとする情報が正しいなら、イラン、イラク、クルドがアメリカ離れをしている可能性もある。ISとアメリカ/NATOとの関係は有名で、本当にISを懸念しているなら、それが必然だろう。アメリカ軍は本気でISを攻撃する場合は、ホワイトハウスでネオコン/シオニストなど好戦派が主導権を奪われたとき。そうした兆候はまだ見られない。
2014.12.02
アメリカ/NATOの戦略に従ってきたドイツの動きに変化が見られる。脅せば相手を思い通りにできるというアメリカ流の遣り方を突き詰めると、何をしでかすかわからない凶人だと思わせ、相手を従わせるという「凶人理論」になる。この「戦術」から離脱しようとしているのだろう。アメリカは「同盟国」からも見放され始めた。 今年の8月、ドイツの経済紙ハンデスブラットの発行人、ガボール・シュタイガートは「西側の間違った道」と題する評論を発表した。ウクライナが不安定化する中、「西側」は戦争熱に浮かされ、政府を率いる人びとは思考を停止して間違った道を歩み始めたと批判しているのだ。 彼が指摘しているように、アメリカ議会ではウクライナへの武器供与が議論され、ズビグネフ・ブレジンスキー元大統領補佐官は市民を武装させるように提案、ドイツ首相は厳しい対応をとる準備ができていると発言していた。こうした流れはドイツの利益に反しているとも主張しているが、その通りだろう。 この編集長は次のように問いかける:始まりはロシアがクリミアを侵略したためだったのか、それとも「西側」がウクライナを不安定化したためだったのか?ロシアが西へ領土を膨張させているのか、それともNATOが東へ拡大しているのか?ふたつの大国が同じ意図に動かされて無防備な第三国へ向かい、深夜、同じドアで遭遇し、内戦の第1段階で泥沼にはまり込んでいるのか? アメリカにとっての現実的な目的とヨーロッパにとってのそれは全く違うとも主張、バラク・オバマやヒラリー・クリントンは次の選挙で勝てるか、次の大統領を民主党から出せるかということに関心があるだけだとし、クリントンがウラジミル・プーチンをアドルフ・ヒトラーに準えたのは、外国のことに関心のないアメリカ人の多くが知っている外国人はヒトラーくらいだからだと切り捨てている。 また、ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者でヘルムート・コール首相の顧問を務めた経験もあるウド・ウルフコテはドイツの腐敗した編集者や記者の実態を自著の中で告発している。ドイツだけでなく多くの国のジャーナリストがCIAに買収され、例えば、人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開しているというのだが、その通りだろう。 そうした仕組みを作り挙げるため、アメリカの支配層はドイツの有力な新聞、雑誌、ラジオ、テレビのジャーナリストを顎足つきでアメリカに招待、取り込んでいくと指摘しているが、これは基本的に日本も同じ。そうして築かれた「交友関係」を通じてジャーナリストは洗脳されるわけだ。 もっとも、こうした指摘は昔からある。例えば、ウォーターゲート事件を調べた記者のひとり、カール・バーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞めた後、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) それによると、まだメディアの統制が緩かった当時でも400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。 アメリカでは1948年頃に情報活動や破壊活動を行う機関を創設している。1970年代まで存在すら知られていなかった秘密機関もあるが、そうした中、情報操作を目的とするプロジェクトもスタートした。 そのプロジェクトの中心にいたのは4名。ウォール街の弁護士で大戦中から破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、その側近で破壊工作を実行する極秘部隊OPCの局長だったフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) フィリップ・グラハムは1963年8月、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前に自殺、ワシントン・ポスト紙は妻のキャサリン・グラハムが引き継ぐ。ウォーターゲート事件の調査を指揮したということで、日本では「言論」の象徴として崇めている人も少なくないようだが、1988年にCIAの新人を前にして次のように語っている: 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」 彼女が考える「民主主義」とは特権階級のものにすぎず、庶民は主権者として扱われていない。これがアメリカ流の「民主主義」であり、「ジャーナリズム」だ。これはワシントン・ポスト紙だけではなく、ウォール・ストリート・ジャーナル紙にしろ、ニューヨーク・タイムズ紙にしろ、ロサンゼルス・タイムズ紙にしろ、同じこと。例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃する前に偽情報を流していた記者、ジュディス・ミラーはニューヨーク・タイムズ紙に所属していた。アメリカの「有力メディア」は単なるプロパガンダ機関にすぎなくなっている。有り難がっても仕方がない。
2014.12.01
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