《櫻井ジャーナル》

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2023.01.22
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 岩塩の採掘場を利用して築かれた全長200キロメートルという「地下要塞」があり、戦略的に重要な位置にあるソレダルを制圧したロシア軍は次の目標としてバフムート(アルチョモフスク)に狙いを定めているようだ。その間にキエフ政権側の軍事拠点を破壊、アメリカ/NATOは兵器の追加供給を強いられている。

 そのアメリカ/NATOは現在、ロシア軍の新たな軍事作戦がいつ、どのような形で始まるかを気にしているはずだ。ウラジミル・プーチン露大統領は昨年9月21日に部分的な動員を実施すると発表、集められた兵士のうち約8万人は早い段階でドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加、さらに20万人から50万人が訓練中だという。

 ウクライナでの戦闘は2010年の1月から2月にかけて実施された大統領選挙でアメリカと一線を画す立場のビクトル・ヤヌコビッチが勝利したところから始まる。

 この結果を懸念したアメリカ政府は7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)をキエフへ派遣、彼女はヤヌコビッチに対し、ロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、西側の植民地になることを望まないヤヌコビッチはこの要求を拒否した。そこからバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。

 その計画が指導したのは2013年11月、翌年の2月にネオ・ナチがヤヌコビッチ政権を倒した。このクーデターが始まるのは2013年11月。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で行われたカーニバル的な集会が始まりだ。

 12月になると集会への参加者は50万人に達したと言われているが、人が集まったところでネオ・ナチのグループが活動を始める。2月18日頃から棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めたのだ。この年の2月7日から23日にかけてロシアのソチでは冬期オリンピックが開催されていた。

 クーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権にほかならない。その際、混乱を話し合いで解決しようとしたEUについて国務次官補だったビクトリア・ヌランドはウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットに対し、電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。アメリカ政府は暴力でヤヌコビッチ政権を倒そうと決めていたのだ。

 アメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチはクーデターでキエフを制圧したものの、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民は反発し、クリミアはロシアと一体化する道を選び、ドンバスでは内戦が始まった。

 そのドンバスでの戦闘を停止するという名目でドイツやフランスを仲介者とする停戦交渉が行われ、ウクライナ、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)、ドネツク、ルガンスクの代表が2014年9月に協定書へ署名している。これが「ミンスク合意」だが、キエフ政権は合意を守らず、2015年2月に新たな合意、いわゆる「ミンスク2」が調印された。

 この合意について、アメリカの元政府高官を含む少なからぬ人が時間稼ぎに過ぎないと批判していたが、それが事実だとうことがここにきて明確になった。​ アンゲラ・メルケル元独首相 ​は12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語ったのだ。メルケルと同じようにミンスク合意の当事者だった​ フランソワ・オランド元仏大統領 ​もその事実を認めた。

 ​ ウクライナの議員として議会でクーデター計画の存在を指摘したオレグ・ツァロフ ​は昨年2月19日、緊急アピール「​ 大虐殺が準備されている ​」を出している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らしたのだ。

 キエフ軍の作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」で、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしているとツァロフは主張、SBU(ウクライナ保安庁)がネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。

 ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地を破壊されたと言われている。同時に​ ウクライナの生物兵器研究開発施設も狙われた ​。

 西側ではミンスク合意をアメリカ/NATOの時間稼ぎだと考え、プーチン政権を「甘い」と批判んする人もいた。その判断が正しかったことをメルケル元独首相やオランド元仏大統領は認めている。プーチン政権もどこかの時点でそれを認めざるをえなくなったのだろう。プーチン政権のアメリカとつながっている勢力はドンバスの問題でも「バランスの取れた取り組み」を主張し、西側に戦争の準備をする余裕を与えて事態を悪化させた。「特別軍事作戦を始動させたことでロシアは批難されるべき」で、ミンスク合意を尊重するべきだと今でも主張する人がいるが、それならばメルケルやオランドの発言をどう考えるのかを明らかにするべきだ。

 現在、ウクライナでNATO軍とロシア軍が本格的に軍事衝突する可能性が高まっている。短期的に見れば2010年の大統領選挙から始まるのだが、中期的に見ると1990年の約束が大きな意味を持つ。西側諸国はNATOを東へ拡大させないと約束していたのだ。

 例えば東西ドイツが1990年に統一される際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で国務長官を務めていたジェームズ・ベイカーはソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領やエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと語った。その事実の記録をジョージ・ワシントン大学のナショナル・セキュリティー・アーカイブは2017年12月に公開している。

 またドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているほか、ドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にシェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約したという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 しかし、アメリカ/NATOは勢力圏を東へ拡大させ、ウクライナに到達。そうした中、ジャック・シラク仏大統領の外交顧問を務めたモーリス・グルドー-モンターニュはウクライナをNATOへ受け入れることがモスクワにとって微妙な問題だと指摘、ヨーロッパにおける戦争の原因になる可能性があると警告している。ところがオバマ政権はウクライナでクーデターを実行、国を乗っ取った。





 オバマ政権で副大統領だったジョー・バイデンは2021年1月から大統領を務めているが、就任して間もない頃からプーチン大統領を愚弄、挑発、経済戦争を仕掛けてきた。

 その年の12月7日にプーチン大統領とオンライン会談を実施した際、プーチン大統領はバイデン大統領に対してNATOの東への拡大は止めるように求めたが、バイデンはウクライナのNATO加盟へロシアは口を出すなという態度を示した。

 同じようにEUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表(外相)は自分たちのことを決める権利を持っているのは自分たちであり、ロシアは口をはさむなと言っている。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長もロシア政府の要求を拒否している。






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最終更新日  2023.01.22 02:08:52


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