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つい、ぐずぐずと手を出し兼ねてた、ジルさんメインの番外編。だって、読んだら絶対、また口悔しくなるし…実際、なったし…(滂沱)有能で美麗で絶品ツンなジルさんのお相手が、あのおじさまだったのも驚きだったけど、何より、その過酷な生い立ちが…まぁ、海賊になるくらいだから、普通に幸福なワケはないけど。で、悠々自適な御仁とばかり思ってたおじさまにも、裏があったとは、流石、ジルさんのお相手に相応しい!水壬さんにしては珍しく、おじさまキャラが控えめだったコルセーア(セサームさまとヤーニくんはアダルトであって、おじさまキャラではないぞ)、とうとう満を持して、おじさまがメインを取った。目出度い♪ 目出度い♪で、ニヤリとしたのが、おじさまに対する秘めた想いを抱きつつ、純真無垢な貫き通し方ではなく、美味しいトコは戴いてる強かさ!!!流石、ジルさん♪♪♪これ、遊佐サンの、ありとあらゆる芝居が聴けたなぁ…もちろん、ジル少年も遊佐サンに演って戴きますとも!!!若気の至りな相手には、今が旬のアタリに、絶品な若造ぶりを聴かせて貰わねばね、主役なジルさんへのご祝儀だもの!!!おじさまは、すっかりマオがメインキャラになってらした御方に、ここぞとばかり渋いトコロをお聴かせ戴きましょうよ…でも、どんなに熱望しても、どんなに無念でも、どうせ夢なんだから(号泣)、我が侭な妄想も許してほしい。たとえば、花田さんだったら、どんなに食えない御仁になっただろう…のら~りくら~りと美味な怠惰に翻弄されて、最後の最後、狡猾に甘く解されて…はぁ~~~聴きたいねぇ~~~(最早、泪も枯れた)兎にも角にも、待望のジルさん主役作は、些か淋しかったコルセーアファンにとって、嬉しい逸品だった。 『梟の眼~コルセーア外伝~』 2012年6月 リンクスロマンス 水壬 楓子 * 御園 えりい
May 17, 2013
水壬楓子さんの、『コルセーア ~記憶の鼓動~』を読みました。このシリーズとしては久しぶりの新刊であり、また物語が本格的に動き出す一つ前という事もあって、登場人物たちのキャラクター的な確認や、今後の展開の為に必要な設定や人物の登場などが意図された、御趣向たっぷりな作品でした…海賊プレヴェーサの統領付き参謀であるカナーレは、重い過去を背負っています。その上、統領の姉であるアウラの懐妊という事実を突きつけられ、カナーレは未来に怯えを抱きます。精神的に不安定な状態であった時に、激しい嵐によって海に投げ出されたカナーレは、記憶喪失という状態に陥ります。それまでの一切を記憶と共に葬り去り、新たな人間として生き始める事も可能であった時に、強引に現在に引き戻し、改めて未来に立ち向かわせるべくカナーレを掴み上げたのは、伝説の海賊といわれるアヤースでした…あとがきで水壬さんが書いてらっしゃいますが、「今までで、一番コメディ色が強い」一作になっています。各国の権力闘争を背景に記憶喪失モノや血胤モノの趣向を混ぜた物語は、深刻さよりもむしろエンターティンメントに徹して、各キャラクターの特徴や物語の舞台を鮮やかに描いています。それはちょうど歌舞伎の‘顔見世狂言’のようで、その華やかさに酔いながら改めてこの物語と向き合うのに相応しい形だったと思います。何しろ、物語の最初と最後はカナーレとアヤースの絡みというサービス振りで、ますますカナーレは艶やかで、ますますアヤースは執着を深めています…前作で、チラリと顔出しした程度のキャラクターながら、わざわざドラマCDで遊佐浩二さんにアテさせた事が大きな意味をもたせたアヤースの副官であるジルが、とうとう本領発揮しています。これがもう、その有能振りから強かさと狡猾さ、そして美しさと妖しさまでたっぷりと魅せてくれるのですから、もう愉しくて!愉しくて!これがCD化された際には、遊佐さんの音色でアレやコレや聴けると思うと、ますます嬉しくなってしまいました。サイバーさん、是非ともよろしく…今回、その役者っぷりの見事さといえば、アウラの右に出る者はいません。発端となる懐妊騒動は、この物語の大きな胎動を身をもって表し、そして大詰めの一番良い場面に颯爽と現れる見事さは、もう惚れ惚れとするばかり。そして、カナーレには怯えをもたらした新たな生命は、未来に確実に光となる事を確信させ、まさに堂々たる立役者振りでした。今後の物語にとっても、アウラの存在が大きく印象付けられ、こうなるとプレヴェーサの統領であるレティは、そうとう頑張らないと…姉の手駒にならないように…今回は、ピサールの御二方のご登場はなく、それが少々残念ではありますが…でも、セサーム様の存在は、カナーレにとって更に更に大きく深くなっており、アヤースとしてはますます精神的な錘にもなっていそうで、それも今後の愉しみになっています。できれば番外などで、ピサールの御二方の物語を、がっつりたっぷりお願いしたいのですが。セサーム様はもちろんの事、大宰相閣下にも甘やかな幸福を味わわせて差し上げたいし…とにかく、役者は着々と揃っています。物語の世界は、大きく動き出しています。来年早々にも続きを拝読できるようで、愉しみでなりません… 『コルセーア ~記憶の鼓動~』 2007年9月 リンクスロマンス 水壬 楓子 * 御園 えりい
October 14, 2007
水壬楓子さんの『クランクイン』を読みました。前作の『ラブシーン』で約束された、ハッピーエンドに向う二人の姿を読む事が出来て、嬉しかったです。瀬野千波は、アメリカでこつこつと実績を積み重ね、そして大作の準主役に抜擢され、映画のために造られた巨大な撮影地に来ています。片山依光とは、電話ばかりで、もう2年近く実際には会っていませんでした。千波は、まだ心の疵が癒え切らない実感があって、その事が依光にとって重荷になる事を畏れて、逢えずにいるのです。そんなある日、とうとう依光が撮影地にやって来て、改めて二人は向かい合います。撮影地を活き活きと動き回り、人々の輪に入り、そして鮮やかな存在感を示す依光の姿に、千波は依光を意識すれば意識するほど、‘別れ’が頭から離れなくなってしまいます。また、異国で自分の居場所を築き上げていく千波の姿を目の当たりにした依光にも、同様の葛藤がありました。帰国の朝、全てを一つの脚本に託し、依光は撮影地を去っていきました…アリゾナとカリフォルニアの境辺りに築かれた、映画の為の巨大な架空都市が、物語の前半「ロケーション」の舞台です。映画がお好きで良くご覧になってらっしゃる水壬さんだからこその、この壮大なセットでの描写が圧巻で、またその中で働く人々…監督や撮影スタッフ、俳優やメイク・衣裳等裏方、etc.…が活き活きと動き回り、実に面白いのです。そして、だからこそ、余計に際立つのです、千波の孤独が…実力だけが頼りの異国の地で、一人懸命に生きてきた千波の成果と、そして孤独と癒えぬ疵と、心の支えとなっている依光の存在の大きさが判り、胸が痛かったです。依光は、全く揺るぎのない大きな存在としてあり続けます。それがまた、千波には心苦しさにもなり、依光の為にこそ別れる事を考え続けるようになってしまう姿が、哀しかったです。でも、千波の依光を想う心も揺るぎはなくて、あとは、ほんのちょっと切欠があれば良かったのです。そして、その切欠は、依光の実父である木佐監督の脚本だったわけですが。初めて父親が息子にとって有意義な事をした結果となるのですが、木佐監督にしてみたら例によって自分の欲求のままなわけで、その滑稽さが千波の前途に光を感じさせて、嬉しい‘小道具’でした。大作映画の主演俳優が、千波の前途の為に新しい恋を促してみたり、依光に別れを唆してみたり、なかなか美味しい脇役っぷりです。これで華やかな三角関係になって、派手やかなアテ馬となりそうなところですが、そのあたり水壬さんは実に潔くあっさりと切り上げてしまいます。あくまでも、この物語は千波と依光二人の物語であるという事です。そして、千波は帰国を決意するのでした。物語の後半「クランクイン」は、木佐監督の新作映画の‘クランクイン’までに至る‘前夜’を描いているのですが、千波の日本における戦いの日々の‘クランクイン’でもあります。やはり、心ないマスコミや一般大衆に曝され、千波には辛い事が起こるわけですが、依光は少々荒療治的に千波を表舞台へ引っ張り出してしまいます。「ロケーション」のアメリカ的な大きさに比べ、「クランクイン」の日本的な矮小さが実に対照的で、そういう舞台感もこの物語の面白さになっています。そして、今度こそ全て乗り来っていく千波の姿と、それを支える依光の姿に胸が熱くなります。千波の帰国を待ち侘びていた人々にも支えられ、千波は本当の強さを身につけていったのでしょう。もう、決して孤独ではないのです。最後の最後に、依光の身内という難敵が表れるものの、千波と依光の揺るぎなさの証明になっただけに過ぎません。巻末の「PV」は、前作で‘ラブシーン’を撮影した直後の、木佐監督と野田を描いています。木佐監督の駄々っ子ぶりは言うまでもなく、それに諾々と寄り添っていく野田の姿もまた言うまでもありません。これはこれで、この上ない伴侶という事です。木佐が、「俺なら殺してたな…」と、ぼそっと本音を洩らすシーンが大好きです。これは、この駄々っ子にしてみれば最高のプロポーズだと思うのです。野田なら、木佐に殺されてこそ本望だろうし…続く「おまえじゃなくてよかったと思ったよ」は、木佐の駄々っ子ぶりが遺憾なく発揮された言わずもがなの一言で、これで、依光が如何に木佐など足元にも依れぬ男かの証明でもあります。でも、野田にとっては、これもまた嬉しさと愛しさを感じざるを得ない一言で、だから野田にとって本当に幸せな一編だったというわけです…物語は、木佐監督の映画製作発表のステージに向う、千波と依光の後姿で幕が下ります。ステージ上の煌々と照らされたスポットライトは、彼らの前途の明るさに他なりません。何よりもハッピーエンドを望まれた作品の結末に実に相応しく、本当に嬉しかったです… 『クランクイン』 2007年5月 リンクスロマンス 水壬 楓子 * 水名瀬 雅良
June 6, 2007
普段、ノベルス派でありコミックス派なので、めったに雑誌を買う事はありません。でも、どうしても気になる作品が掲載されている為に、‘小説リンクス6月号’を買いました。水壬楓子さんの、『ファイナルカット』が読みたかったのです。『ファイナルカット』は、端正な30台の俳優と無頼派な40台の映画監督が主人公です。この物語は、先に出版された『ラブシーン』のリンク作品となっています。『ラブシーン』は、同じ劇団出身で、売れっ子となった俳優と、時代劇専門で好んで斬られ役を演っている俳優の物語でした。二人は現在も同居していて、そして身体の関係もあるのですが、それは互いに助け合ってきた劇団時代の名残の、あくまでもドライなものだと売れっ子になった俳優は思っていましたし、また斬られ役の俳優は彼がそう思えるように身を処してきました。鬼才を謳われる映画監督の新作に売れっ子になった俳優は抜擢されますが、その現場で、過去に自分を手酷く捨てた有名俳優と再会します。有名俳優は、今や押しも推されぬ俳優となったかつての自分の玩具に手を出そうとしますが、その卑劣なやり方は暴かれ、そして映画からも降板させられます。有名俳優に代わって演ずる事になったのは、斬られ役専門だった俳優でしたが、その演技力は高く、映画も俳優達も成功を収めます。と、ここまでなら間違いなくサクセス・ストーリーで、彼らの希望に満ちた将来を想像させて終了という事になるのですが、後半部に波乱が訪れ、そしてタイトルの『ラブシーン』がどれ程の状況と意味を持っているかを知らされます。つまり、降板させられた有名俳優の反撃が、売れっ子になった俳優に対して実に凄惨な方法で実行されるのです。今や人気も実力も兼ね備えた斬られ役専門だった俳優は、心身共に汚され傷つき果てた人気俳優を、文字通り全身全霊で支えますが、でも、彼にも限界がありました。劇団時代、まだ相手が自分の事を知らない当時から、彼は相手の事を見つめてきました。だから、誰よりも相手の事を熟知しているという認識があって、決して弱い人間ではない、絶対立ち直るという確信が、一瞬の隙を招いてしまったのです。幸いにも、彼は間に合い、あくまでも二人で未来に向かって進むべく、ある手段をとります。凄惨な事件や、二人がとる手段にしても、読み手の好悪がハッキリと分かれる事でしょう。そのラストも、決して晴れ晴れとは思い切れない、ほろ苦さがあります。ただ、あの二人なら、常に並び立ち将来に向けて歩き続けて行くに違いないと思わせるものが、確かにありました。‘ラブシーン’を撮ったのは、鬼才を謳われる、無頼派の映画監督です。監督が、どのような精神を持ってその画を撮ったのか、それは監督の人となりを知らなくては想像が出来ないと思った為に、今回の『ファイナルカット』を読みたかったのです。物語は、『ラブシーン』で二人の俳優が抜擢された映画の、その主演と監督の前日譚となるのですが、主演俳優の視点で語られる分、監督の一筋縄でいかない曲者振りがますます伝わってきます。主演俳優は、監督と出会ってしまったがゆえに、人生を大きく変化させてしまい、監督を愛するがゆえに、監督に対する全ての望みを諦めてしまっているのですが、最後の最後にこの監督の本音が現され、えてして無頼は含羞でもある事を思わされます。『ファイナルカット』を読んで、決して素直ではなく、全く可愛くもない監督なのですが、想いが内包されつつもただひたすらに‘ラブシーン’な映像を、この男なら撮るのだろうなぁと思う事が出来ました。この後に、『ラブシーン』の二人の続編が決定しているそうです。物語の結末は、やっぱりハッピーエンドであって欲しいと、私は思います。 『ラブシーン』 2006年3月 リンクスロマンス 『ファイナルカット』 2006年5月 小説リンクス6月号 水壬 楓子 * 水無瀬 雅良
May 12, 2006
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