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2012.01.23
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カテゴリ: 批評・随想
ちょっと古いけれど、昨年2011年10月10日 の読売新聞の見出しー『「全員検査」親心に配慮』

放射能拡散の影響で、甲状腺がんの罹患率が高まることはチェルノブイリの追跡調査でも明らかだけれど、新聞のこの書き方はいったいどういう神経から許されてしまうのか、わざわざ読みたくなくなるような見出しをなぜ通してしまうのか。

‘親心に配慮してやりましたよ’、目線はずいぶんと高いところにある。
‘配慮する必要はないのだけれど、みんながあんまりうるさいので仕方なくそうしてやったんです。’-「全員検査」のカッコはそれを表している。わざわざやる必要もないのに全員に検査をしてやっている。ありがたく施しを受けろ、と。

で、記事を読む限り、そのような意図は見受けられない。
当初三年後に検査開始としていた計画を前倒しした、とある。
高校生や子供の親が不安で気が変になりそうだから、検査を受けられることでひとまず安心した、福島県は「保護者の不安を少しでも和らげるのが最大の目的」、保護者の切実な思いを踏まえ、三年前倒しした、と言う。

福島県の応答が上の通りであるのなら、それはそれで問題である。
確かに親は心配だ。三年後は、臨床試験的には正しくても、細やかな医療という点では配慮に欠ける。
統計にのっとって三年後に検査したら、甲状腺がんは有意に増加する数値を示しました、やはり統計は正しかった…と書いたところで、ケアが遅れた被害者はモルモットとされただけで法令整備の時間のなかでさらに症状は放置されてしまう。過去の公害訴訟の事例を見ればわかるし、当局は当然そういう知識だってあるはずだ。

ではなぜこんな高飛車な見出しを書いたのか?
記事では行政、市民双方の意見をある程度反映させているのに。
それは、記事を書いた記者ではなく、それにこのような見出しをつけた編集部の責任者が、被害者ではなく、行政の肩をもっているからだ。さらには広告主であった東京電力への配慮からだ。
東京電力への配慮が行政擁護の直接的な動機なのかもしれない。
(同じ2011年10月10日の総合紙面の3面で‘チェルノブイリは被害認定 甲状腺がん福島は「発症率低い」’の見出し。これもまた記事本文と見出しに食い違いが。どうなっているのだろうか、編集部は?)
検査には莫大な予算がかかる。国や東京電力の補償がどうなるのかも不安だから、そのあたりに配慮しておおっぴらにこれから前向きに検査をすべきだ、と書ききれない。。

まともな編集者なら、検査を前倒しにしたこと、被害者がとりあえず安心はしたけれど、結果に対しては極めて不安であること、あるいはその結果が正しいかどうかさえわからない、そういう目線で見出しも書かれるのが良識的なジャーナリズムではないのか。
見出し次第で受け取る側の印象も変わる。

「甲状腺がん不安ー検査前倒しへ」

まともな神経をもっていればこんな見出しが書かれるのでは?

読売の見出しは、記事本文を精読させないように配慮に配慮を重ねたレトリックである…

こんなことがずいんと続くものだから、新聞を読むのが苦痛になってきました。読むべき鮮度の高い記事が、特に3.11以降、少なくなりました。
そういうわけで、『コボちゃん』目当てで購読し続けた読売は来春から東京新聞に乗り換えます。
さようなら、読売新聞。ジャイアンツファンでもなかったし。
新聞が、‘リアル’を再び伝えられる日は戻ってくるのでしょうか?

2012年1月23日。
3か月たっても状況は変わっていないので載せました。





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最終更新日  2012.01.23 17:06:00
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