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正しい教えを求めて
釈尊が入滅すると、正法千年(または五百年)と像法千年(または五百年)を過ぎて末法に入り、正しい教えが衰滅していくと考えられていました。ここで言う千年、五百年という期間は大まかな目安にすぎません。
「正法」は、サンスクリット語でサッダルマ(正しい教え)、「像法」はサッダルマ・プラティルーバカ。プラティルーバカは形容詞で「似ている」、名詞で「やぶ医者」「山師」なので、像法は「正しい教えに似て非なるもの」を意味します。よって、像法は「正しい教え」が「似て非なる教え」に取って代わられる時代のことです。どんなに優れた普遍的思想であっても、後世には低俗なものにすり替える人が現れるということでしょう。
その像法を経て、正法が消滅させられるのが末法です。鎌倉時代初期は末法の世とされました。さまざまな厄災に見舞われ、幕府と朝廷の権力争いが続く混乱した末法の世を憂いて、日蓮は真の仏法を求め、原始仏教の原点に還るべく『法華経』を拠りどころにしました。
原始仏教とは、釈尊が線存していた時代から釈尊滅後の教団が分裂していた時代から釈尊滅後の教団が分裂する以前、ほぼアショーカ王(在位前二六八~前二三二)ごろまでの仏教を言います。その多くがスリランカに伝承されましたが、そこでは教団分裂後の権威主義化が見られず、改ざんもほとんど行われておらず、改ざん前の釈尊の教えがそのまま残る貴重な経典とされています。
釈尊滅後五百年ごろ編纂された『法華経』は、原始仏教の原点に還ることを主張する経典といえます。『法華経』のタイトルは、サンスクリット語で「サッダルマ・プンダリーカ・スト―ラ」と言います。「サット」が「正しい」、「ダルマ」が「教え(法)」、「プンダリーカ」が「白蓮華」、「スト―ラ」が「経典」を意味します。これを鳩摩羅什は「妙法蓮華経」と漢訳しました。私はサンスクリット語の文法から考え、「白蓮華」は「最も勝れたもの」という意味をもつことから「白蓮華のように最も勝れた正しい教え」と現代語訳しました。
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