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LTCMの創業者ジョン・メリウェザーは、ウォール街で最初に金融工学のポテンシャルに気づいたエグゼクティブのひとりである。
1994年2月、メリウェザーはロングターム・キャピタル・マネジメントを設立した。
LTCMの短い生涯を描いたベストセラー書籍の中で、著者のロジャー・ローウェンスタインは、このファンドが崩壊したのは思い上がりに対する罰だと述べている。突き詰めればそうかもしれない。だが、LTCMがリスクテークにいい加減だったというわけではない。
メリウェザーとパートナーたちは他人のお金を無責任に賭けていたのではなかった。むしろ大半のパートナーは、毎年の様に、みずからの稼ぎのほぼ全額を投資した。1997年秋には外部資本27億ドルを手放し、残る資金のほぼ3分の1がみずからの蓄えで構成されるようにした。組織を破壊させる多くの金融家と違って、LTCMのパートナーは慎重にならざるを得ない理由が十分過ぎるほどあった。
LTCMは、1980年代に生み出された想定最大損失額(VAR)という手法を利用した。これはマクロトレーダーの「暗算」をきちんとした式で表したものである。
メリウェザーたちはこの流動性リスクを真剣に検討した。彼らのファンドがロングターム・キャピタル・マネジメントと呼ばれたのには理由がある。市場が効率性を取り戻すには長期間かかる - その意味のロングタームである。
LTCMの破綻後は、こうした予防策も簡単に忘れ去られてしまった。メリウェザーとそのパートナーは、みずからのモデルを盲信したがゆえの犠牲者と見なされ、そのせいで、もう少し用心すれば同じような不幸は防げるのだと思われるようになった。
だが、真実はもっととらえがたく、もっと受け入れがたい。
LTCMのリスク管理は評論家の想像以上に繊細かつ高度だったし、その破綻の教訓とされるものには、LTCM自身がすでに実行していた処方箋が含まれている。破綻から10年ほどの間には、VARをストレステストで補完すべしとの声が何度も聞かれた。LTCMはすでにやっていた。
金融機関は流動性リスクに注意すべしとの声も聞かれた。LTCMはすでにやっていた。
それでもLTCMは破綻した。それはリスクの計算法が単純すぎるからではなく、正しい計算がとてつもなく難しいからだ。ポートフォリオのストレステストのためには、想定不可能な衝撃をことごとく想定しなければならない。
LTCMの破綻から本当に学ぶべき教訓は、彼らのリスク管理が単純すぎたということではない。どれだけ正しくリスクを把握しようとしても無理があるということである。
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