日本は「同盟国」ではなく「人質を取られた国」:映画『スノーデン』オリバー・ストーン監督インタビュー | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)
―― なぜいまスノーデンを映画にしたのか。
僕は自分が生きている時代に関心がある。その意味で、 1930 年代から 2013 年までのアメリカ現代史について『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』( 2012 年)というドキュメンタリー番組を制作したが、この 2013 年という時期はまさにオバマ政権が社会の監視体制を強めていた頃で、その番組の第 10 章は「監視社会」というテーマだった。
そしてその年の 6 月に突如、スノーデンがあの告発を行った。私自身もショックを受け、勇気ある行為に喝采も送ったが、まだその時点で映画化するつもりはなかった。
それが翌年 1 月、ロシアに亡命しているスノーデンのロシア人弁護士から連絡を受け、本人に会ってくれと言われた。その後 2 年間にわたって都合 9 回 本人とモスクワで話をするうち、彼の視点から映画にすべきだと考えるようになった。
彼と話していて感じたのは、とにかく非常に正直に誠実に、何があったのか、何が起きているのかを伝えたいということを大切にしていること。僕はその態度に接して、彼の話にとても説得力を感じた。
言ってみれば、彼の言葉、態度こそが、僕らにこの映画を作らせたのだと思っている。その意味では、この作品は僕のものではなく、 スノーデンの映画 だ。
まあ、キャラクターとしても、従来のいわゆるオリバー・ストーン映画の主役のキャラではないからね。彼自身も、自分は
1
日中部屋の中に籠っている猫のようなタイプだからと言っていたけどね。
――
スノーデンは
NSA
在職中の
2009
年、在日米軍の横田基地で勤務していた。映画では、日本の通信網を支配し、送電網やダム、交通機関などインフラ施設をコントロールする『
スリーパー・プログラム
』を仕掛けていたという本人の告白場面がある。日本列島の南から順に街全体の灯が消えていき、すべて真っ暗になる映像に、『日本が同盟国でなくなる日が来たら、
"
消灯
"
』というスノーデンの台詞
......
。これはどこまで真実なのか。
僕は、彼が語ったことはすべて真実だと考えている。 NSA は当初、すべてを監視したいと日本政府に申し入れたが、日本政府は拒絶したという。しかしそれでもかまわず盗聴・監視し、民間の様々なネットワークにプログラムを仕込んでいた、と彼は語っていた。
ただ、 原子力発電施設
に関しては彼の口からは何も聞いていないが、僕自身は、恐らく別のやり方で何かをしているのだと思っている。
また彼は、メキシコ、ブラジル、ベルギー、オーストリア、ドイツ、そしてイギリスも含んでいたと思うが、同じようなプログラムをすでに仕掛けているとも言っていた。これはもはやサイバー戦争だ。
2007
、
8
年ごろ、アメリカがイランの核施設を破壊するためにシステムに侵入し、コンピューター・ウイルスを仕込んだものの、途中で制御不能になり、施設の機能は一部停止させたが、ウイルスが世界中に拡散されてしまった事実が
2010
年に発覚した。
現実にそうしたサイバー戦争は始まっており、そのすべてをアメリカがリードしている。その事実に僕らはもっと目を向けるべきで、スノーデンはそこに気づかせてくれた。
日本を含めアメリカの同盟国と言われる国々は、僕は現実には同盟国ではなく「アメリカに人質を取られた国」だと思っている。日本ももし同盟関係から離れることになると、スノーデンが語ったような「脅し」を受ける事態になるのだという、極めてセンシティブな状況、問題であるということを日本の皆さんにもよく考えてほしい。
――
監督自身は、スノーデンの告発以前、
NSA
という組織についてどの程度の認識があったのか。
詳しい知識はなかったが、 2005 年、あるジャーナリストが『ニューヨーク・タイムズ』に NSA による監視体制についての記事を書いていた。当時のブッシュ大統領は、言葉も口汚い感じだったが悪い奴だったから(笑)、国民を監視することだってやるだろうな、という印象を受けた程度だった。
それから
8
年後にスノーデンの告発が出たわけだが、その時初めて、具体的な証拠が大量に提示された。だから、
2005
年当時からうすうす知っていたことが初めて事実として突き付けられた感じで、驚きというよりもショックを受けた。
むしろ驚いたのは、
2013
年当時のオバマ大統領が、スノーデンの告発に対して「大したことではない」と言ったこと。
結局、オバマは単なる飾り物で弱い男でしかなかった。ブッシュ時代のそうした悪しき状況を何も変えなかった。透明性もまったくなく改革も何も行われなかった。
――
映画を作るうえで参考にした資料はあるか。
1960
年代から実際に NSA
に勤務していたジェイムズ・バムフォードが書いた『パズル・パレス ―
超スパイ機関 NSA
の全貌』( 1986
年)や『すべては傍受されている ―
米国国家安全保障局の正体』( 2003
年)などの本は、 NSA
の活動実態を知るうえで非常に参考になった。
また、内部告発サイト『ウィキリークス』創設者ジュリアン・アサンジの功績も忘れてはならない。 2010 年、イラクで情報分析官として米陸軍に勤務していたチェルシー・マニングという軍人(後に不名誉除隊)が大量の機密情報をウィキリークスに流出させた内部告発事件があった。
告発には 2007
年に米軍ヘリがイラク・バグダッドで複数の民間人を射殺する映像や、グアンタナモ収容所の収監者らに対する虐待の報告書なども含まれ、国際的に衝撃を与えた。こうした勇気ある行為を支えたのがアサンジで、スノーデンの告発も大きく助けられている。
日本は第 2 次世界大戦以後、とにもかくにもアメリカに従順で、アメリカのメディアのことを信用しがちである。これはアジア全体にも言えることだが、ヨーロッパはそうではない。そういう意味で、僕は日本にはまだ主権がないのだという印象を持っている。
実は今回の映画は、単にスノーデンの物語ではなく、世界の現状はこうなっているのだということを切り取って皆さんにお見せしている作品だと思っている。
だから、日本にももっとアメリカに対して疑問を感じてほしい。
僕が『 プラトーン 』や『 7 月 4 日に生まれて 』を撮っていた 1980 年代末くらいまでは、ああいう作品で米政府側はアメリカの強さを肯定的に描いてくれたと勝手に思っていたようだ。僕自身は、むしろそうではない面を描いていたのだがね。
ところが、 1991 年の『 JFK 』から完全に反応が変わった。実際、たとえばそれまで閉鎖されていた ハリウッドの CIA 支部 が突如、活動を再開させた。恐らく、映画の持つ力に彼らも気づいたのだと思う。僕の周りのプロデューサーたちにも、簡単に言ってしまえばもっとアメリカ万歳というような映画を作るべきだと政府筋が言ってくるようになった。
確かにその後、いわゆるアメリカを肯定するような映画、たとえば『ブラックホーク・ダウン』『プライベート・ライアン』『パール・ハーバー』『アルゴ』といったような作品が推奨され、金銭面も含めて軍や政府の大きな協力のもとに作られていった。
つまり、
CIA
や
NSA
のような諜報機関などによる右傾化がどんどん進められていった。そして、愚かな若い映画製作者らがその罠にはまり、自分たちの国の歴史も知らないままそういう作品を作り続けていった。
だからこそ、僕は『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』という作品を作ったのだ。
日本は「同盟国」ではなく「人質を取られた国」、
日本にはまだ主権がない
もし、今もスリーパー・プログラムが有効なら、まさに人質に取られた国ですね。
米軍基地は、特に首都圏のそれは諜報機関の最前線でありサイバー攻撃の拠点でもあるのですね。
映画のハワイの地下基地の様子も驚きでした。
スノーデンは正直で誠実、出世に興味がないゆえに、これはおかしいと感じたのでしょう。
自分のプログラムがほかの目的に転用され、NSAの監視行為が安全保障のためだけでないことも気づいて
やむにやまれず行動に出たというのがよく描かれていました。
米国が中国のファーウェイを締め出そうとしているのも、支配できないIT企業の存在を認めないということからなのでしょう。
ポセイドン・アドベンチャー 2024.05.31 コメント(5)
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