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この本の著者は、行為と自己認識に関する脳内メカニズムの研究をする「 認知神経科学 」という新しい分野の第一人者だという。
A氏 :子育てのことが書いてあるのかね。
私:
サブタイトルがちょっと営業的だね。
子育てもふれているが、成人についてもふれている。
もとの題名が「 The Learning Brain: Lessons for Education
」だから、「 学習する脳:教育への学習
」とでもいうのかね。
A氏 :例の小学校で英語をやるか、やらないかという議論があるが、脳科学的には有効なのかね。
私
:幼児教育については、 ある程度の効果はあるが、やりすぎは問題だと言っているね。
しかし、語学学習に関する脳の研究は新しい内容があったね。
それは 文法と意味(言葉)は脳内の異なる神経系によって処理されているらしいんだね。
だから、 子どもが英語を習い始めたのが4才でも7才でも12才でも意味のある単語(cat, house, car )を処理する脳の位置は同じだという。
A氏 :そうすると、別に小学生で英語を急がなくてもいいのかね。
私
:ところが文法が問題なんだね。
1才から3才で英語を学習すると文法処理( up, of, from などの語彙が関係する)は脳の左側が働く。
ところが 英語に初めて触れた時期が遅いほど、両側の大脳半球が強く活動する。
A氏 :要するに、英語に触れるのが遅いと文法を処理する脳の活動が違ってくるというわけか。
私
:そのため文法の成績がよくないという。
これは 文法の学習が身につけにくいということでなく、両側の脳を使うのでかえって難しい学習方法をとっていることが問題なのではないかという。
A氏: 文法は13才過ぎても学習できるが、効率は悪いということかね。
私:
この場合、週何時間くらいの学習が効果的かは実験していないようなので、小学校で英語をやるメリットまでは結論は出ないだろう。
しかし、この外国の研究をヒントに、日本では小学校の英語必修論は、「早いほど良い」という感覚的な論議でなく、 こういう科学的な側面からの研究も必要ではないかね。
一方、英語をペラペラしゃべって、中味がない人間に育ってもしょうがないだろうというのも一理あるね。
理想は両者を並行することかね。
何ごともバランスがむずかしいがね。
A氏 :暗記はよくないのかね。
私: この本では、暗記は脳科学が答えることができる問題だが、それを検証するような研究はまだ行なわれていないという。
俺たちの小学生時代は、 神武天皇から全部の天皇の名前を暗記したね。
それを戦後使わなくなって、もう60年たつが、 未だに10代目くらいまでは出てくるから、小さいときの暗記というのはすごいね。
ところで、この本は脳の学習一般論だから、成人の脳も扱っている。
老人の脳も老年になると多少能力は減退するが、脳は新しい情報を得ているという。
学ぶに遅すぎることはないという。
興味があったのは、 ロンドンのタクシー運転手 になるための学習だね。
A氏: ロンドンではタクシーの運転手になるにはロンドンの地理の知識テストがあるそうだね。
私:
そうだね、ロンドンの全部の道路と主要な建物を全部暗記が必要だ。
運転手について脳の研究をしたら、海馬後部の大きさが常人より大きかったという。
それは運転手になってからだという。
それから、睡眠と学習も関係があるね。
睡眠中の脳も活動している、再活性化している。 それから 30分から60分の昼寝も成績向上に貢献
するという。
A氏 :昼寝は長すぎるとダメらしいね。
私
:脳と情動も関係するね。
マシュマロのテスト
というのがある。
4才児を部屋に入れ、机の上にマシュマロを置く。
実験者は子どもに物を取りに行くので5分間、部屋を出るが、その間、 マシュマロを食べていけないという
。
そして、帰ってくるまでマシュマロを食べずにいれば、2つのマシュマロを食べえられると子どもに伝えた。
A氏 :4才だとほとんど食べるのではないの?
私:
ほとんどの子が食べてしまったそうだ。
この年齢の脳は 自制する前葉頭が成人ほどに完全に発達していない。
さらに興味があることは、 もっとも自制心のあった4才児が10才児に成長したときに、衝動的だったクラスメートに比較して学校の成績がよかったという。
自制心ある子どもは忍耐力、集中力において高得点であるだけでなく、認知テストや論理テストでも高得点であったという。
A氏 :自制心のないすぐ切れる子は学習でも社会生活でも問題なんだね。
私
:しかし、そのメカニズムの要因はまだわかっていない。
それと食事と脳の学習能力も重要だとしているね。
A氏 :最近、朝食を取らない小学生児童が増加して、自治体で朝食を給食していたところがあったね。
私
:少子化で子どもが減っているのに、その子どもに金があっても給食費を払わない、朝食は作らないという親がいる。
がめつい経営者のようだね。
一方で、ワーキングプアのように本当に金がなく、朝食を作れない家庭があるかもしれないね。