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私:12月8日の「日米開戦の日」は今も米国では特別な日だが、日本ではそう意識されていないという。 俺は、今でも朝、学校に行こうと家をでようとするとき、「西太平洋で戦争状態になった」という開戦のニュースを知った記憶が鮮明にあるね。 A氏:この「耕論」では、2人へのインタビュー記事が載っているが、歴史研究家・堀田江理女史のインタビューに興味を持ったね。 私:堀田江理女史が、この問題と直面したのは、東京から編入したニューヨーク近郊の高校でのことで、歴史の授業で級友に「なぜ日本は真珠湾を攻撃したの」と聞かれ、うまく説明できなかったことから、探求が始まったという。 米国では、太平洋戦争はだまし討ちによって余儀なくされた「大義のための戦い」と認識されがちだが、米読者に日本側の背景を伝えたいと、英語で本を出したのが3年前。 政治家や軍人の日記、回想録、政府内議事録、米公文書館の外交史料などを突き合わせ、書き進め、今年6月、その日本語版「1941 決意なき開戦」を刊行したという。 A氏:調べるにつれ、日本は戦争を避けられる機会を次々と逃し、選択肢を狭め、ほぼ勝算のない戦いになだれ込んだ、という思いを深めたという。 私:例えば、日独伊三国同盟だね。 1941年6月、ドイツがソ連と開戦したことは、日本が日独伊三国同盟から離脱する絶好の機会で、米政府との関係修復の大きな一歩となったはずだという。 しかし、日本はその可能性を積極的に検討せず、7月には南部仏領インドシナへの進駐を決定し、ルーズベルト米大統領は日本の撤兵と引き換えにインドシナの中立化を提案するが、政府はこれを黙殺し進駐を決行、米国は「冷水を浴びせられた」と態度を硬化。 撤退は屈辱的でも、後に来る開戦よりはるかに賢明な選択だったはずだ。 A氏:日本では開戦を、軍部の独走と考える人が多く、米国の対日石油輸出禁止や米、英、中、オランダによる「ABCD包囲網」で追い詰められた結果という被害者意識も共存しているが、実際は、要所要所で戦争回避とは異なる選択を続け、自ら後戻りを難しくしたと堀田江理女史は指摘する。 私:米国の工業生産能力は日本の74倍以上という政府機関の調査結果もあり、日米戦が圧倒的に不利なことは明白だ。 31年の満州事変から、新聞はこぞって軍部を支え、自己検閲を一度始めると、軌道修正は難しいもので、メディアの妥協も見過ごせない。 A氏:開戦は多くの公式、非公式の会議を経て下されたにもかかわらず、指導者層にことごとく当事者意識が欠けていたという。 東京電力福島第一原発の事故も新国立競技場の建設も、事後処理や決定過程が75年前と酷似している堀田江理女史はいう。 私:豊洲市場の建物の下に盛り土がない問題も同じで、小池東京都知事は「流れの中で、空気の中で進んでいった」と説明したが、責任の所在がわからない点で似ていて、開戦の決断を取り囲む状況を「空気」「雰囲気」でよく説明することはできるが、判断ミスや勇気の欠如は、自然発生せず、責任は、あくまでも人間にあると堀田江理女史は指摘する。 しかし、日本人の戦前から日本の「無責任論」的体質は丸山真男氏の指摘で有名で、「空気」も故山本七平氏の持論だね。 日独伊三国同盟も当時の松岡外相も後で、失敗だったと言っているね。 それに軍には「統帥権」があった。 マスコミも「軍国主義」で身動きが取れなかった。 司馬遼太郎は「この昭和の20年は、日本史上異常な時期だった」といっている。 その意味で、堀田江理女史はもっと戦前からの日本人の研究成果を参考にしてほしかったね。
2016.12.08
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私:OECDが6日、発表したところによると、72の国・地域の15歳が参加し、「読解力」「科学的リテラシー(活用する力)」「数学的リテラシー」の3分野を調べた2015年の国際的な学習到達度調査(PISA〈ピザ〉)で、日本の「読解力」の平均点が前回より低下したことがわかったが、一方、「科学」「数学」の2分野の平均点の順位は、現在の調査方法になって以降、いずれも過去最高だったという。 A氏:PISAの結果は、日本の学校教育に大きな影響を与えているね。 1998年に学習指導要領を改訂し、「詰め込み教育」から「ゆとり」教育路線に転換したが、2003年のPISAで順位が低下するという「PISAショック」で「脱ゆとり」路線に転換した。 私:今度も「読解力」の低下で「アクティブ・ラーニング」の強化が進むね。 このプログでも「小学英語、教科に 高校、「公共」新設 新指導要領まとめ案、「23日朝日新聞・日曜書評より」、「リベラルアーツ最前線 米国の作文教育から学ぶ」でふれてきた。 全国の学校で実践の機会が広がり、議論が進んでいる新学習指導要領でも重要な位置づけとなっている。 本来は言語活動を通じて探求的に学び、思考力や表現力を鍛えるのが目的の難易度の高い授業だが、単に机を「コの字」にし、話したいことを言って終わり、というケースも多い。 これでは思考力や表現力は身につかないし、生徒や児童にとっては楽しい授業だろうが、思考力を高めるレベルに達していない授業も多いという。 学習「量」の確保で学力向上は進んだが、今後は学びの「質」の向上が大きなテーマだ。 A氏:日本の読解力のレベルはだいたい8位程度とみるのが自然で、他国より移民が少なく、日本語を母語として育っている15歳の割合が高い中で楽観できる順位ではないという。 私:PISAの読解の対象は、図表を含む資料や説明文、紀行文など多岐にわたるのに、日本の中学、高校の国語では、現代と古典の文学作品の鑑賞を読解の中心に据えてきた。 PISA調査が始まってから文科省が推進してきた朝読書(あさどくしょ)でも、子どもたちが読んでいるのは児童文学やライトノベルが多く、「PISA型読解力」の向上には影響を及ぼしていないとみることができるという。 A氏:次の学習指導要領で、「論理国語」という選択科目の導入が検討され、大学入試改革でも記述式試験の実施が検討されている。 こうした動きが追い風になり、教員が国語という科目をより広くとらえ、生徒が日本語で書かれた様々な文章を正確に読み解き、評価した上で、自らの意見を記述できるよう指導する方向に進めて欲しいね。 私:今日、テレビでやっていたが、ある学校で新聞の記事を読み、これを100字くらいの原稿にまとめるという授業を紹介していたね。 次のPISAで、「読解力」の順位はあがるだろうか。
2016.12.07
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私:このブログの町山智浩著「99%対1% アメリカ格差ウォーズ」で、すでにトランプ氏の米大統領選以前から、既存メディアの退潮だけでなく、虚偽ニュースの拡大という新たな現象も指摘されていたね。 米メディアやネットで何があったのかということで、この記事では3者に聞いているが、3日前の「風」欄でもワシントンから山脇岳志氏が、「虚実の境ない世界、どこへ」と題して、トランプ氏の「ウソ」を危機感を持って指摘しているね。 A氏:山脇氏によると、2007年に発足し、政治家の発言の真偽をチェックしているウェブサイト「PolitiFact」では、トランプ氏の重要な発言の70%が「虚偽」か「おおむね虚偽」で、アンジー・ホラン編集長は「これまで調査した候補の中で最悪の記録。その候補に多くの人が投票したのは驚きだった」と話しているという。 私:イラク戦争を支持していたのに反対だったと言ったり、(ライバル候補だった)クルーズ上院議員の父親が、ケネディ大統領暗殺にかかわったかのような発言をしたりと、トランプ氏の虚偽発言は、挙げればきりがないという。 陰謀史観や虚偽の「ニュース」を流すウェブサイトもよく閲覧されフェイスブックなどのソーシャルメディアを通じて拡散し、多くの人々が信じた。 主要メディアの「ファクトチェック」は、世論形成にはあまり役にたたなかった。 A氏:山崎氏は、事実の報道に意味があると信じて30年も記者生活を送ってきたが、超大国の選挙戦で、うそも百回言えば真実になってしまうような姿を目の当たりにすると、本当に恐ろしくなったという。 私:3者のインタビューでもニーマン・ジャーナリズム研究所長・ジョシュア・ベントン氏と駿河台大学講師・八田真行氏も「ウソ」のニュースを問題にしているね。 ジョシュア・ベントン氏は、今回の米大統領選では、地方紙の衰退に象徴される米メディアのチェック機能低下が表面化する一方、ネット上では様々な虚偽ニュースが拡散し、トランプ氏の当選の背景には、こうした米メディアの構造問題があると指摘。 デジタル化で、新聞社のモデルは崩れ、今年、広告収入減は加速し、地方紙は特に打撃を受け、市議会を取材したり、調査報道で問題を掘り起こしたりする、民主主義の観点から考えて最も大切な情報が減っているという。 A氏:一方で、ウソの情報はあふれたという。 その構造を八田氏は、トランプ氏当選を後押ししたと言われるのが、既存の主流派保守へのオルタナティブ(もう一つの選択肢)としてネットで台頭した「オルタナ右翼」と呼ばれる一群だという。 トランプ氏自身もそうだが、オルタナ右翼は、ネットによる虚偽情報などの拡散に非常にたけていて、ネットでつい共有したくなる面白い画像などを使って、「クリントン氏陣営は悪魔崇拝に関与している」といった陰謀論を展開し、ネット炎上をつくり出して、存在感を拡大させたという。 私:オルタナ右翼が表舞台に出てきた背景には、ソーシャルメディアの広がりと既存メディアの退潮があるというが、これは、ジョシュア・ベントン氏と同じ指摘だね。 フェイスブックのユーザー数は17億9千万人で、米国の成人の44%がフェイスブックを通じてニュースに接するといわれる。 一方でマスメディアへの信頼度は急落し、共和党支持者の間ではわずか14%で、今や、フェイスブックこそがメディアだと八田氏はいう。 A氏:極端な考え方でも、フェイスブックなら情報発信できるし、仲間を見つけられ、そして仲間内で同じような偏った考えを先鋭化させていく。 ネットは若者が中心だが、ネット発の動きを、テレビなどが取り上げることで増幅され、高齢層にも届いたのだと思われると八田氏はいう。 私:オルタナ右翼の台頭は、見たいものだけを見る内向きの潮流を象徴していて、多様な価値の共有が前提となる民主主義の、機能不全のあらわれと言えるかもしれないと八田氏は指摘する。 3人目の松谷氏のコメントには「ウソ」情報にふれておらず、興味がなかったね。 とにかく、ネット情報だけで、ものごとを決めつける思考構造は危険だね。
2016.12.06
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私:この欄では今回は日本電産をとりあげているね。 日本電産は小型モーターで急成長し、HDD用やスマートフォン向けモーターなどでは世界トップシェアで2016年3月期の売上高は1兆1782億円。 従業員は約9万6千人。 A氏:シャープが台湾の鴻海精密工業に買収され、東芝は白物家電事業を中国企業に売却して、日本の企業の未来は厳しいのかという問いに、永守氏は、「世界ではナンバー1でないとつぶされる。生き残るには開発時間を短くして生産性を上げなければならないが、コストに合わないと製造を海外企業に丸投げし、自分のブランドだけポンと乗せて売る動きが目立った。丸投げは一時しのぎにすぎない。世界と戦う体制を整える経営に取り組まなかったのではないか」という。 私:日本電産は海外進出を強め、すでに33カ国・地域に製造や販売などの拠点があるが、2030年までに人口が1千万人以上いる75カ国・地域に増やすという。 日本では円高で慌てたり、英国がEUから抜けることが決まって騒ぎになったりするが、世界の主要市場すべてを相手にしていればリスクの削減にもつながり、米国、中国頼みは危ういという。 勝ち続けるために、いま必要な部品や技術ではなく、市場でこれから必要とされるものを大切にすることだという。 A氏:「働き方改革」にも力を入れていて、「社員には早く帰宅して自己啓発に力を入れてくれとお願いしている。利益を上げて雇用を守り、世界との競争に勝つことにつながるからだ。日本の社員は『長時間労働』の割に生産性が上がっていない。『働き方』を変えずに早く帰れば負けるだけだが、英語ができる社員が増えれば、出張に2人で行かせたり通訳を雇ったりせずにすむ。韓国のビジネスマンはふつうに2カ国語をしゃべるし、米国人も自己啓発を通じて高給をつかもうとしている」という。 「長時間労働」と生産性を結びつけて考えているね。 私:永守氏は「日本的な減点主義が日本の企業を弱くしたと思う。何かに挑戦して失敗するより何もしない方が良いという雰囲気は経営者にも充満している。1回の失敗でダメだと言い出したら、日本で経営者は育たない」と指摘しているね。 A氏:ところで、日本電産のトップもこのブログ「カルビー 女性奮闘、さくさく時短術」でとりあげたカルビーのトップも「長時間労働」は否定的だね。 進化しているカイシャのトップは共通しているね。 「長時間労働」の多い会社は、トップの社員に対する姿勢が問題で、したがって、カイシャも進化していないね。私:以下のように「長時間労働・知的街道」ができたね。 日本の過労死増加と労働時間の推移、「労働時間の経済分析・超高齢社会の働き方を展望する」、「電通過労死、見えぬ核心」、「長時間労働:1 悲鳴」4日朝日新聞・「フォーラム」欄+「『生産性の向上』こそが本質的な課題」、「働き方変わる? 都庁『残業ゼロ・午後8時退庁』へ挑む:電通の長時間労働状態化」など。
2016.12.05
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私:今度、この「フォーラム」欄で新しくとりあげたテーマは「長時間労働」。 この「フォーラム」欄では今まで、「中学校の部活動」「正社員という働き方」「子育ての理想と現実」と続けてきたが、これらのテーマには、ある共通の問題が横たわっていることが、読者の意見から伝わってきたということでその共通の問題である「長時間労働」のテーマをとりあげたという。 A氏:4回連載予定のうち、初回の今日は、多くの読者から寄せられた「長時間労働」の悲鳴の声が掲載されているね。 私:興味があったのは、この欄の中央にある囲み記事の黒田祥子・早大教授(労働経済学)の「本人の意思ではなく職場の規範」というよくまとまっているコメントだね。 日本人、イギリス人、ドイツ人で比べると、実労働時間だけでなく、希望する労働時間も日本人は長いという。 そこで、希望労働時間は何で決まるのかを検証した結果、一つは職場の評価基準で、「良い成果をあげるために働く時間を惜しまない人が評価される」職場に比べ、「一定の時間の中でできるだけ働くという人が評価される」職場では希望労働時間が週あたり1.61時間短いという。 A氏:労働の「生産性」をあげようとする人のほうが、当然、短いね。 私:次に顧客に無理難題を言われたときにどう対応するかだが、「無理してでもがんばる」職場の人は、「無理なので対応可能なスケジュールを提案する」職場の人よりも、希望労働時間が0.87時間長くなった。 A氏:これは、このブログの「過労をなくすには」でとりあげた「お客様は神様です」が「長時間労働」の原因だというネットニュース編集者・中川氏の意見がそうで、ネット広告業界の宿命だと言っていたね。 電通問題がそうだね。 私:日本から欧州に異動した人を調べると、労働時間が減り、有給休暇は増えていたが、欧州で働いた人にヒアリングした際、「効率的な働き方をして余暇も増えたなら、日本で浸透させて下さい」と言ったら、「それはできない」と言われたという。 理由は「みんなが『長時間労働』をしている職場で先に帰ることはできない」という。 A氏:雇用を守るために、いざという時の「のりしろ」として「長時間労働」をしてきたとも言われてきたが、「のりしろ」は最長でも1週間1時間程度で、日本型雇用慣行の良い部分を守るために「長時間労働」を続けるしかない、という理屈にはならないという。 私:黒田氏は、さらに「国が一定以上の残業はダメだと強権を発動しても、業務量が変わらなければサービス残業が増えるだけ」という。 そして、さらに「職場の意識改革は進んでいるから、労使に委ねればいいという意見もあるが、一人ひとりが変えたいと思っていても、みんながそうならないと変えることはできないから、国レベルでわかりやすい規制をつくり、企業や職場レベルでも働き方を変えていくという、合わせ技が必要だ」と指摘している。 A氏:君は、「長時間労働」は労働の「生産性」の視点で論ずるべきだとしていたが、今日の朝日新聞の書評の「ビジネス書」コーナーで取り上げていた、ちきりん氏〈著〉『自分の時間を取り戻そう』は、まさにそれで、「『生産性の向上』こそ、本質的な課題」としているね。 私:今年、厚労省は初の「過労死等防止対策白書」を作成し、政府は「働き方改革」と称して「長時間労働」の是正を図ろうとしているが、これに対し本書は「生産性の向上」こそが本質的な課題としているわけだ。 現代社会も「生産性」という観点から見ると問題だらけで、次なる経済成長の源になると本書は説いているという(評者・ジャーナリスト・小林雅一氏)。 そういえば、こないだ収益をあげて好調な1500円カットの理髪店チェーンの作業改善例をテレビでやっていたが、徹底的なムダな動作の削減だね。 そのために職場にある台車位置や用具の配置などきめ細かい変更をしていたね。 ムダな時間が減るのでカットの時間も短くなり、カット作業に集中できるのでカット時間も短くなるし、品質もよく、客の満足の向上にもなる。 まさに「お客様は神様」だよ、
2016.12.04
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私:このブログの「米大統領選 疑似共同体作る空気に危機感」でトランプ現象を予告するように幾つかの著書を紹介していたが、トランプ現象の主役は市民的紐帯を失ったまま、テレビやネットの前で「仲間」を見いだした人々でもあり、それはいわばメディア観客の「疑似共同体」だという。 町山智浩著『さらば白人国家アメリカ』は、この「疑似空間」における主観世界の風景を描き出し、やじうま的サービス精神と生来の正義感が持ち味の著者が、今回はアメリカで子育てもした一人の生活者としてのアメリカ描写は、トランプ現象への切迫した危機感が行間から伝わってくるとこの新聞欄で紹介していた。 テレビもネットもグローバルだが、本当の「空気」は、その地に足を着けてなければわからないのだと紹介されていたので、早速、この本を図書館に検索したが、当時は、まだ未購入なので、検索にひっかからず、代わりに2年前に刊行されたこの「99%対1% アメリカ格差ウォーズ」を借りることにしたわけだ。 A氏:図書館の内容案内には「アメリカでは、メディアの中立性などありえない。過激な報道やカネによる世論誘導があたりまえの国の実情をレポート!」とあるね。 私:最初は題名からして、アメリカの貧困者の話題が多いのかと思ったが、図書館の内容案内のように2009年から2012年にかけて、「アメリカ国内の過激な報道やカネによる世論誘導」が、続々と登場する。 特に共和党のウソを交えた過激なマスコミ報道は唖然とするね。 今度の大統領選挙戦でクリントンとトランプの討論会は下劣な非難合戦で、未だ、かってないひどい討論会だといわれたが、この本を読むと、実はアメリカのマスコミは、以前から、そういう低いレベルの過激な報道が中心だというのがわかるね。 A氏:俺は、この文庫本の最後の評論家・宮崎哲弥氏の「解説」を読ませてもらったが、次のように書いてあったね。 「ひょっとして、多くの人が『アメリカは少々乱暴のところもあるが、概ねフェアで、素晴らしく自由で、法の支配を重んずる国柄だ』と思っているのではなかろうか。 もし、そうならば完全な間違いである 本書を読み終えて、この蛇足的なページを眺めている人は先刻ご承知のはず。 アメリカは概ねアンフェアで、問題解決に暴力を用いがちで、何かというと自由を抑圧する強者の自由が幅をきかせ、しばしば法が無視される国柄なのだ」 私:その通りだね。 この本に描かれているアメリカは、例のティーパーティの活動が全盛時代で、オバマ大統領の貧しい人々のための健康保険であるオバマケアには徹底的に反対だね。 この法案に賛成した民主党議員には暴力もいとわない。 彼らは俺達の税金を稼ぎの少ない人に与える必要がないという徹底した自己責任論だね。 トランプ政権になったらオバマケアは消滅するかもしれない。 とにかく、日本のマスコミが伝えるアメリカの実態は、表面的なことはこの本を一読すればわかる。 町山氏は、2016年10月に「さらば白人国家アメリカ」を刊行しているが、図書館の紹介記事は「トランプ対ヒラリーが暴いた大国の黄昏。在米の著者が各地の「現場」で体感したサイレント・マジョリティの叫び」とある。 同時に「最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで」も刊行されている。 図書館の要旨には、「ハリウッドが封印しつづけた米国の恥部とは?映画史上最高の傑作がKKKを蘇らせた?ディズニーが東京大空襲をけしかけた?トランプは60年前に映画で予言されていた?暴走するアメリカ民主主義―その謎を解く鍵はすべてはハリウッド映画の中にあった! 映画評論家町山智浩氏のライフワーク、ついに結実!」とある。 日本のマスコミが伝えないアメリカを、さらに知るためにこの本も図書館に予約した。
2016.12.03
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私:今、読んでいる佐伯氏の著書「さらば、資本主義」の全10章のうち、第2章は「朝日新聞」批判が載っているように、本来、保守派の佐伯氏は「産経新聞」に寄稿するのが順当のようだが、いつの間にか、朝日新聞のこの毎月の欄が定着しているね。 まさに朝日新聞にとっては「異論」だね。 A氏:今月は、この12月9日は夏目漱石の100回目の命日であることからか、漱石のことから始めている。 漱石は、ドイツのオイケンという学者が、近頃、人々は一方で自由や開放を望み、他方では秩序や組織を要求しているが、この矛盾するものを両方とも実現することは無理で、どちらかに片づけなければならないと言っているのを批判し、これは、一見したところもっともらしく聞こえるが、実は、こんなことは、この世界を傍観している学者の形式論に過ぎず、実際には、われわれは、日常生活のなかでこの背馳するふたつのことを両方行っているではないかという。 私:佐伯氏は、漱石は、オイケンを取りあげながら、学者の形式主義が、不完全な人間である「ふつうの人」つまり、市井の庶民の心理や経験から乖離してゆくことに不満をもらしていたという。 それにもかかわらず、社会を指導し、動かすものは、この学者の形式論なのであり、各種の専門的な知識人が、傍観者的に、理想的な社会を描き、そちらへ社会をひっぱっていこうとしても、「ふつうの人」は動かない、というわけで、つまり、エリート層と庶民の間に大きな懸隔ができてしまう。 A氏:最近の言葉では「分断」で、EU離脱を起こしたイギリスの「分断」、トランプ現象の米国の「分断」。 私:さらに、佐伯氏は、ここにもうひとつ、大事な問題が絡んでくるとして、それは、日本の指導的な学者や知識人などのエリート層は、多くの場合、西洋の学問を身に着けた人たちだ、という点であると指摘している。 その多くは、西洋社会を対象として得られた「理論」であり、それを日本社会に適用すればどうなるか。 学者やエリート知識人たちの「理論」はまったく庶民の現実からはかけ離れてしまうだろう。 それにもかかわらず、この方向で社会が動くなら、「理論」とは違う「現実」を生きている「ふつうの人々」はますます神経をすり減らしてゆくだろうという。 A氏:確かに、この20年ほどをみても、グローバル化へ向けた社会変革を説く専門的学者や官僚、ジャーナリズムなどのエリート知識層は、西洋(特に米国)発の学問や知識を母体にした合理主義で社会を「進歩」させようとしてきた。 そして、それがどうやらエリート層と庶民の間の大きな「分断」を生み出しており、その様相は、日本よりも、まずは、トランプ現象に翻弄される米国をみれば顕著であろうという。 もっとも、アメリカなどよりも社会の一体感のつよい日本では、エリート知識層だけではなく、「ふつうの人」の方も、西洋発の知識や思想を権威と考える傾向が強いと佐伯氏はいう。 私:佐伯氏は保守ではあるが、安倍政権の成長戦略には疑念をもっており、著書「さらば、資本主義」では脱成長を目指すべきとしているね。 成長戦略をしても成熟し、少子高齢化した日本社会では、個人需要は増えない。 アベノミクスが目指す「グローバリズム」「競争力」「成長追求」という価値観から転換すべきという。 「成長しなければ、幸せになれない」という幻想をすてるべきという。 これが、佐伯氏の保守思想ともいえるだろうか。
2016.12.02
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私:日銀が2013年4月に開始した「異次元金融緩和」は、当初宣言した2年間でインフレ率を2%に引き上げるという目標が実現できず、大規模な量的緩和を3年半にわたって継続・追加してきたが、その結果、日銀が市場に供給するお金の量が、膨大に積み上がっている。 A氏:日銀は9月に、これまでの政策の効果を評価し、政策の枠組みを「マイナス金利付き量的・質的緩和」から、短期のマイナス金利と長期金利の安定を組み合わせた「長短金利操作付き量的・質的緩和」へと修正を加えたね。 私:しかし、量的緩和自体は継続され、日銀は引き続き保有残高が1年間で80兆円増加するペースで、長期国債を買い入れ、その結果、他の資産購入の効果と合わせて、マネタリーベース(日銀券発行高と日銀当座預金の合計)は今後1年強で、日本の国内総生産(GDP)を超えるとされているという。 この増加は、文字通り次元を異にしていて、前年と比べた増加率は13年4月に20%を、11月には50%を上回り、14年2月をピークに増加率は下がっているが、16年9月でも20%を超える。 その結果、異次元緩和開始前の13年3月に135兆円だったマネタリーベースは、16年9月には408兆円と3倍以上に増加。 A氏:これだけジャブジャブカネを流しても、インフレ率の目立った上昇につながっていないことは、この間に世の中の人々が利用できるお金の量であるマネーストック(現金と預金の合計)の伸びが、緩やかであったことと対応する。 前年同月と比べた増加率は、異次元緩和前の2・5%前後から3・5%前後に上昇したが、その幅はわずかで、日銀が市場にお金をいくら供給しても、人々が利用できるお金はあまり増えなかった、と言える状況。 私:岡崎教授が問題にしているのは、仮に、今回導入された新しい金融政策の枠組みやその他の政策が功を奏して、インフレ率が上がりはじめた場合、マネーストックが急激に増加する可能性があり、そうなるとインフレ率が2%という目標を通り越して、急激な物価上昇につながる懸念があるということだね。 A氏:過去に、日本経済は、第2次世界大戦直後のハイパーインフレ(1946~48年)と、第1次石油危機前後の大インフレ(72~75年)を乗り越えて成長し、社会も大局的には安定した状態を保ってきた。 だから、問題ないという議論もあるが、これらのインフレが生じた当時と今日では、大きく異なる事情があり、それは、人口構成で、総人口に占める65歳以上の高齢者の比率は、1946年に5・6%、73年に7・5%、そして2016年には27・3%となり、今後確実に上昇していく。 少子高齢化の進行だね。 私:さまざまな資産のうち、もっともインフレに強いものの一つは人的資本、すなわち「働く能力」で、逆に弱いのは、預金や国債などの額面が固定されている金融資産だね。 かつてのインフレ時には、人口に占める高齢者の比率が低く、国民の大部分が「働く能力」を持っていたので、それまでの資産の蓄積を失っても、働くことによって、インフレに応じて上昇する賃金で暮らしを守ることができた。 しかし現在の日本は、蓄えてきた預金と年金に依存する多くの高齢者を抱えていて、そして年金積立金の40%程度は、インフレに弱い国内の債券で運用されている。 年寄りはインフレに弱い。 A氏:岡崎教授は、ここまで政策的にマネタリーベースを拡大させ、今後さらなる拡大をめざす以上、政府・日銀は、インフレ加速の可能性を念頭に置き、事前に対策を注意深く検討しておく必要があると指摘している。 私:もし有効な対策があるなら、インフレ加速の兆候に対してすみやかにそれを実行するべきで、そして有効な対策が見いだせないなら、異次元緩和の継続に固執するべきではないと教授はいう。 それは、日銀の金融政策の大転換だね。 しかし、これだけジャブジャブカネを流しても、人々が利用できるお金はあまり増えなかったというが、それでは、カネはどこに流れたのかね。 その説明がほしかったね。
2016.12.01
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私:まだ「初詣」の話題は早すぎるようだが、「初詣」の伝統についてこの記事はふれているね。 A氏:2009年まで公表していた全国の「初詣」の人出によると、正月三が日の全国の神社仏閣の参詣者は9939万人と、のべ人数ではあるが、国民の4分の3以上にあたるんだね。 私:これほどまでに定着した「初詣」だが、ふだん神社にお参りすることがなくても、この日だけは例外で、古来の習慣を守る数少ない伝統行事であると考える人も多いだろう。 俺も、ふだんは神社にお参りすることはないが、正月には、近所の小高い丘の上にある小さな神社に「初詣」をすることがある。 ふだんは無人に近いひっそりしたその神社は、正月三が日は、屋台が出たりして賑やかだね。 A氏:ところが、この新聞記事によると、「元旦に思い思いの寺社にお参りする」という意味での「初詣」は、江戸時代以前には存在しなかったのだという。 私:古くから行われていたのは、大みそかから一家の家長が氏神をまつる神社にこもって新しい年の神様をお迎えする「年ごもり」という習慣だ。 「初詣」はまず、鉄道の発展とともに郊外への散策を兼ねたレジャーとして普及し、都心で例外になったのは1920年に創建された明治神宮。 気軽な娯楽を求めた庶民のニーズに加え、ナショナリズムの高揚とも結びついた「初詣」は「単なる娯楽ではない正しさ」をも獲得し、さらに広く深く普及したという。 A氏:その意味では、「初詣」は明治以降に「創られた伝統」ではあるが、すでに百年以上の歴史があり、現代人にとっては、もう十分に「伝統行事」であるのだろう。 私:この「創られた伝統」という言葉は、イギリスの歴史家E.ホブズボウムらの1983年刊の編著書などで知られるようになった考え方で、長く受け継がれてきたと考えられてきた伝統の多くが、実際には近代に「国民文化」を創出するために発明されたものだと明らかにし、ヨーロッパでは19世紀末から20世紀初めにかけて伝統が「大量生産された」と説いたという。 日本では、大正から昭和の初めに多く誕生したという。 A氏:「初詣」だけでなく神前結婚式も明治に生み出された新しい習慣で、古来のやり方そのものに戻すことが不可能になったからこそ新しい時代に必要とされる形式が生まれたという。 私:作家の原田実氏は、「創られた伝統」には悪質なものもあり、文科省作成の道徳教材にも登場した「江戸しぐさ」は江戸の町人のしぐさから公共マナーを見習おうというものだが、実際の史料からわかる江戸文化とは相いれない内容で、現代人の考えた理想を江戸に投影し創作したものと考えるべきだという。 原田氏は、「いいことだからかまわない」という人もいるが、本当にいいことなら江戸時代から続いたというフィクションの伝統による権威づけは必要ないはずで、虚偽で道徳を教えるのは間違いだと厳しく批判しているね。歴史的な事実は先入観なしで、はっきり認識すべきだね。
2016.11.30
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私:このところ、一昨日のブログの「過労自死社会 働き方の前に生き方考えよう」と昨日のブログの「経済好循環に疑問符 全国主要100社景気アンケート」と「長時間労働知的街道」ができつつあるね。 A氏:この欄に掲示してある図によると、先進8カ国中、長時間労働者の割合で日本はトップで21.3%、 2位の米国は16.6%とガクンと下がり、ドイツは5位の10.1%で、最下位はオランダの8.9%。 私:ネットニュース編集者・中川氏は、「『お客様は神様』という考えを変えよう」という提言だね。 中川氏は、同じ広告の世界に身を置いた人間として、業界全体の構造的な問題は大きいと思うという。 これは、このブログの「電通過労死、見えぬ核心」津田大介氏寄稿で、津田氏が指摘していたように電通の自殺した女性のネット広告担当という仕事の特異性に着目した記事はごくわずかとあったが、この記事で中川氏が広告業界の特異性にふれているのは、偶然、その回答になっているようだね。 A氏:中川氏は、広告業界には、「お客様は神様」という文化が染みついていて、最大手の電通も、本質は「客に忠義を尽くす出入り業者」でしかないし、クライアントにいかに気に入られるかがすべてだという。 そのため、とにかく数が多い方がアピールになるという発想があり、4、5人ですむ打ち合わせでも、十数人のチーム全員で行くという。 必要もないのに付き合わされるから、どうしても「長時間労働」になってしまうという。 私:中川氏は、ぎりぎりの時間にクライアントから「ちょっと表現を変えて」などと求められても、「無理です」とは言えないし、写真だって、ソフトでいくらでも加工できる。 技術が発達すれば仕事は楽になるはずなのに、逆にやることは増えているという。 それで、俺が、ピンときたのは、俺達が見ているインターネット上の広告のおびただしい数と刻々変わる表現だね。 このおびただしい数と変化の裏に広告担当の「長時間労働」があるわけだ。 そのお客の多様でスピーディな過酷な要求に対応する広告業界の姿勢を中川氏は「お客様は神様です」と表現しているわけだ。 A氏:さらに、重要になるのが、同じ広告業界でも、下請け企業の過酷な実態にきちんと目を向けることだと中川氏はいう。 大手に比べて下請けは給料が低く、労働時間はもっと長いのが普通だが、「お客様は神様」という文化は共通だから、クライアントや元請けにかなり気をつかわなきゃいけないという。 私:中川氏は、解決策は、「コスト意識を持つこと。広告会社は必要以上の数の人間はチームに入れず、下請けまでを含めて、実際の働きに応じて利益を配分する。下請けの若手が書いたコピーが採用されたのなら、その人がたくさんお金をもらえるシステムにすること」だという。 そして、「お客様は神様」という意識と下請けの過酷さの両方を変えないと、どの業界でも「長時間労働」の改善にはなかなかつながらないと思うという。 しかし「お客様」も好きで広告業界をいじめているわけではなく、「お客様」も「顧客」という神様がいて、競争に勝たなくてはいけない。 だから、解決にならないと思うね。 あるいは、製造業で言う「過剰品質」のことを言っているのだろうか。 もっと客の立場からも問題点を掘り下げてほしいね。 A氏:2人目の安倍氏は、働きの「やりがい」や「好きかどうか」に関係なく、労働問題は労働問題として考えないと、いつまでも解決しないという。 規制と競争はバランスが大切だが、ここは規制強化の出番だという。 いまある労働時間規制を企業に順守させるだけでも、だいぶ「働き方」は変わるという。 私:3人目の津村氏のコメントは作家らしく過労や自殺に重きを置いたコメントで具体的な「働き方」の視点では参考にならなかったね。
2016.11.29
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私:朝日新聞が行った主要企業100社への景気アンケートでは、企業業績の改善が賃上げ、設備投資につながり、消費が拡大するという安倍政権が描く経済の好循環について否定的な意見が多かったという。 A氏:消費低迷の理由は、「将来不安」を挙げる声が最も多く、調査結果からはアベノミクスの恩恵が行き渡らず、将来への不安を強く持つ家計の姿が浮かぶとしている。 私:アンケートの回答で、俺が興味があったのは、昨日のブログでとりあげた「長時間労働」の問題だね。 A氏:アンケートでは、社会問題化している「長時間労働」の原因についても聞いているね。 最も多かった回答は「仕事優先の考えを持つ人が多い」で25社、ほぼ同数で「『長時間労働』を問題視しない職場の雰囲気」(24社)だったという。 何か他人事のような回答だね。 私:京セラの山口悟郎社長は「終身雇用、年金制度といった日本的な雇用環境を背景に『長時間労働』を美徳とする文化がある」と指摘し、「一般論として責任感が強いという部分があるのではないか」(三菱地所の片山浩常務)との声もあったという。 次に多かったのは「長時間労働者を評価する企業のシステム」の8社で、JTBの末永安生専務は「たくさん働いて成果を得た高度成長経済の成功体験が企業文化に残っているのではないか」というが、高度成長期には、製造業は生産性をあげ「長時間労働」を減らしたのではないかね。 A氏:日本の文化的背景を指摘する声もあり、ダイキン工業の宮住光太執行役員は「日本の企業は共同体としての意識が強く、社内調整に時間がかかり不要な残業につながっている。システムより文化の問題が大きいのではないか」と話しているというが、カルビー(「カルビー 女性奮闘、さくさく時短術」)のように企業によっては「長時間労働」をなくしているところもあるから、文化のせいにするのは、逃げだね。 私:以前、俺はある会社の業務改善の支援をしたことがあるが、そのとき、ムダの多い仕事を見出し、その職場の課長に「なんでこんなムダを放置しているのか」と聞いたら、「会社の文化です」と言ったね。 俺は「アナタが『文化』だ」と言って、すぐ目の前の仕事の改善したことがあったね。 抽象的な「文化」という言葉が、具体的な「働き方」から、眼をそらす言い訳になっているんだね。 電通だって、ウソの残業時間を報告するように上司が部下に要求するのはシステムの問題であって、やる気があればすぐ修正できることだね。 A氏:「業務の進め方」に言及したのは三菱ケミカルホールディングスの越智仁社長。 「必要性の低い会議や、調整事項の多さなど「長時間労働」を前提とした仕事のやり方が問題だ」と指摘している。[ 私:別欄で、「経営トップに聞く」欄で、ロイヤルHD・黒須社長が、「営業時間短く余暇を生む」として、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」の24時間営業の店舗は来年1月までにゼロとなるとしているが、「長時間労働」と「営業時間」を混同しているようだね。 もう一人、鹿島の押味社長は、「現場の悩み、拾い上げたい」として、電通の過労自殺はショックだったといい、「働き方を根本的に考えよう」という機運が高まり、10月、働き方改革に取組む組織を社内で立ち上げたという。 座長は社長で、「働け、働け」といってきた張本人が座長なのだから大変、今、必死だという。 鹿島は、生産性をあげながら、「長時間労働」の撲滅に期待できそうだね。 「長時間労働」は労働の生産性が低いことを示していると考えるべきだね。
2016.11.28
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私:この欄では常見氏が、「過労自死」の幾つかの本を紹介している。 常見氏は、電通の新入社員を殺したのは、会社と社会だと、自死事件の悲報に、そう考えたという。 『平成28年版過労死等防止対策白書』(厚生労働省)とともに手に取ってほしいのが『雇用身分社会』(森岡孝二著、岩波新書)と『ルポ 過労社会』(中澤誠著、ちくま新書)。 前者は雇用形態に関わらず、労働環境が劣化していることを明らかにしており、後者は過労社会を捉え、改革案を装った労働者不在の政策に警鐘を鳴らす良書だという。 A氏:本題の過労自死についての必読書は、『過労自殺 第二版』(岩波書店)で、今回の自死事件だけでなく、1991年にも起こった電通事件を担当した弁護士による決定版。 問題提起、事例だけでなく、「自殺予防の10箇条」など具体的な対処法まで示しているといい、自死には、会社への献身から殺される側面があることがわかるという。 私:明日は我が身と思う人、周りに倒れそうな人がいることもあるときに、助けとなるのが、お笑いコンビ松本ハウスの本『統合失調症がやってきた』と、『相方は、統合失調症』(松本キック著、幻冬舎)。 メンバーのハウス加賀谷は統合失調症で、人気に火がついた頃に、飲む薬の量が増え、ついには自死未遂事件を起こし、精神科病院に入院する。 10年にもわたり待ち続けた相方の松本キック。 活動再開後も道のりは平坦ではなかったが、大事な人のサインをどう読み取り、伴走するか、ヒントに満ちた本だという。 A氏:こんな時には「働き方」だけでなく、「生き方」を再考するべきで、海猫沢めろん〈著〉大和書房刊『頑張って生きるのが嫌な人のための本 ゆるく自由に生きるレッスン』は友人の自死を機に書かれた、気鋭の作家によるエッセーで、著者の緩く、優しい言葉が心にしみるという。 私:常見氏は、「人はなぜ働くのか」という問いと向き合い続けているが、自分自身は仕事の優先順位を下げ、「社畜」から「家畜」に変身したが、居心地は最高だという。 時代は「働き方改革」の大合唱だが、ワクワクしないのは、労働者の尊厳に無頓着だからで、労働者不在の「働かせ方改革」だという。 「働き方」の前に、「生き方」だ。 常見氏は、最後に言う、「会社や仕事で人が死なない、誰もが安心し認められて生きる『一億総安心労働社会』を創造せよ。殺すな。生きさせろ」。 しかし、「過労死」は「生き方」の問題だけだろうか。 欧米と比較して、何故、日本に特有な現象なのか。 同じ仕事を、日本と外国でして、外国の方が短時間で終わるという経験談もある。 日本のサービス業の生産性が低いのと関係があるはずで、その点を追求する視点も必要だったのでは思うね。 その視点で、このブログでは「日本の非効率 『うさぎ跳び』から卒業を」をとりあげている。 また、ブログ「好調なドイツ・その2」では、筆者の熊谷氏は、ドイツに22年前に移住したがドイツ人の労働時間の短さと効率的な働きに驚いたとある。 A氏:仕事の生産性をあげるには、俗に仕事の「ムダ、ムラ、ムリ」の「三ム(略してダラリ)」をなくすことだと言うが、製造業はそれで生産性をあげてきたはずだが、サービス業はどうなっているんかね。 私:「働き方改革」もその視点で進めて欲しいね。
2016.11.27
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私:英国民は国家を取り戻すとして「EU離脱」(ブレグジット)を昨年の6月23日の国民投票で決めたが、その後はどうなっているかね。 離脱を選んだ背景に、格差拡大への不満があるとみているため、英国のメイ政権が、経済格差の解消に取り組み始めたという。 A氏:ハモンド英財務相は23日、「EU離脱」決定から初めてとなる予算編成方針を示す演説をしたが、格差問題に取り組む姿勢を強調したという。 具体的に、低所得者向けの社会保障給付制度で給付を手厚くし、25歳以上の法定最低賃金を1時間7・2ポンド(1008円)から7・5ポンドに引き上げると発表。 私:メイ首相もその2日前、大企業の首脳らが出席した英産業連盟の総会で、「変化を求める人々の要望に応えよう」と訴え、「労働者の声をしっかりと経営に取り入れるべきだ」と促し、高額批判が強まる経営者の報酬制度を含む企業統治のあり方について報告書をまとめる考えを示したという。 メイ政権が格差問題に力を入れるのは、格差に不満を募らせる国民が「EU離脱」を支持したという見方からだね。 A氏;「陶器のまち」として知られる英中部ストークオントレントの例をあげているが、ここは、国民投票で約7割が「EU離脱」を選んだ。 企業の海外移転などで陶器関連産業で働く人は15年前の約2万人から約4分の1に減り、シャッターを下ろした店も目立つという。 私:英シンクタンクのレゾリューション財団によると、仕事に就きながらも生活に苦しむ年間平均所得2万3300ポンド(約326万円)の「中低所得者層」は約580万世帯にのぼり、うち5分の2は、少なくとも15年間、その状況から抜け出せないままだという。 A氏:キャメロン前政権が進めた財政緊縮策も、格差拡大に拍車をかけた。 英国は2008年の金融危機を受けて税収の大幅減などに見舞われた結果、財政が悪化し、10年に就任したキャメロン前首相は財政再建のために増税や歳出カットの緊縮策に取り組んだのも影響している。 私:しかし、「EU離脱」決定の一因となった格差の解消に取り組むメイ政権に、「EU離脱」決定による景気減速による税収減などの影響が立ちはだかっているね。 英政府の借金は3月時点の予想より、今後5年間で約1220億ポンド(約17兆円)増える見通しだという。 A氏:景気減退による財政悪化は、格差問題への政策対応に影を落とすことになる。 板挟みだね。 私:英シンクタンクでは「中低所得者層を支える姿勢を示したわりには、今回の予算編成では十分にお金を回せていない」と指摘。 レゾリューション財団も「今回の予算で組んだ対策を実施しても、ポンド安による物価の上昇や賃金の伸び悩みで、所得分布で下から約3割の中低所得者層は実質所得が下がると予想する」という。 「EU離脱」は格差縮小の声が反映したものだろうが、一方で、景気減速で、格差解消のためのカネがなくなるとは、「EU離脱」は矛盾の選択だったのだろうか。 米国のトランプを支持した中間層も期待はずれになることも予想されるね。
2016.11.26
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私:今月の「池上彰の新聞ななめ読み」は、今回の米大統領選の世論調査の信頼度についてふれているね。 この池上氏の記事で、今回の米国世論調査の問題点がよく理解できるね。 A氏:大統領選の事前の多くの世論調査で「ヒラリー優位」となっていたのに、逆の結果になって、世論調査の信頼度が問題になった。 しかし、全米の総得票数は、民主党のヒラリー氏が、トランプ氏を上回っているから、世論調査通りだね。 私:問題は、米国の大統領選が言わば直接選挙ではなく、11月8日に行われたのは、各州に割り当てられている大統領選挙人を選ぶものだということだね。 こんな仕組みになっているため、総得票数が少なくても大統領に当選することがあるわけだ。 だから、米国の新聞社やテレビ局が実施した世論調査が間違ったのは、州ごとの調査ということになる。 A氏:そこで、州ごとの世論調査の方法の問題点の解説を各紙での「ななめ読み」となるね。 私:今回は、日経と読売のななめ読みだね。 池上氏はまず、日経をとりあげている。 以下は日経の解説。 「各社の調査対象は数百~数万人で、固定・携帯電話に無作為にかけて質問する手法をとる。 各社は投票する人種や年齢などを予想し、集めたデータを補正する。この予想がずれれば結果は大きく異なることになる。米メディアによると、同じデータを複数の専門家が補正した結果、勝者が正反対となることもあったという」。 さらに「回答率が1割以下にとどまることも、世論調査のぶれを大きくしている。質問に答えない『隠れトランプ支持者』の存在も指摘される」とある。 A氏:これに対し、池上氏は「回答率が1割以下にとどまる? それでは統計学的に意味のあるデータにはならない。 米国のメディアは、そんなに意味のない数字を報じていたのか」という。 それにしても回答率がなぜ1割以下にとどまるか、この日経記事ではわからないと池上氏はコメントして、読売の解説に移っているね。 私:読売の解説では、「問題点のひとつは、米国民のほとんどが所持する携帯電話に対し、世論調査で利用することが多い自動音声のコンピューター通話が法律上、活用できないことだ。このため、調査対象は固定電話に限られることになる」とある。 A氏:具体的に携帯電話と固定電話の問題が出てくるね。 日経の記事には「固定・携帯電話に無作為にかけて質問する」とあるが、携帯電話にかけるのか、かけないのか、どちらなのか、池上氏は疑問が湧くとして、読売の解説記事の続きを読みすすむ。 私:読売では、「国内では固定電話を持たず携帯電話しか所有していない人の割合が43%に上っているため、調査対象はさらに限定されることになる。 加えて、1970年代には世論調査に応じる人の割合が8割近かったとされるが、近年は8%にまで下落しており、調査として信頼できるサンプル数が確保できていないこともある」としている。 A氏:池上氏は、この読売の記事でなるほど、これなら回答率が低い理由がわかるというが、しかし、これでは世論調査の結果を報じるメディアの信頼が失われるとコメントしているね。 私:池上氏が最後にいうように、日本の世論調査の信頼性はどうなのか、他人事ではないね。 今、連日、マスコミで問題になっている韓国の大統領退任の世論調査もそうだね。
2016.11.25
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私:日本には西洋のような「革命」はないとされてきたが、織田信長でさえ正面から対決しなかった朝廷との戦争を制し、我が国固有の法を定めた男がいた。 彼こそが「日本史上上唯一、成功した革命家」とする社会学者の大澤真幸(まさち)氏の論考が、注目を集めているという。 A氏:大澤氏は「革命」の定義を、「社会の根本的な変革が、当の社会のメンバーによって意図的に引き起こされること」と規定し、大化改新や明治維新、戦後の民主化は外部からの衝撃や外圧に対する反応であり、「内発的な変動とは見なしえない」として除外しているね。 私:醍醐天皇や織田信長は一見、革命を実現したようにみえるが、志半ばに終わっているし、秀吉や家康により革命が成就したともいえそうだが、2人は関白や征夷大将軍に就くなど、朝廷という既存の権威に依存したから「反革命的」だね。 そして、大澤氏が、唯一成功した革命家と位置づけるのは、鎌倉幕府3代執権・北条泰時(1183~1242)だね。 A氏:泰時は、1221年の承久の乱で後鳥羽上皇の朝廷と対決。 武士が皇族と戦うには、上皇や皇太子らの命令に基づく「院宣」や「令旨」を必要としてきたが、泰時はそれなしに京都に攻め上って朝廷軍を倒し、泰時ら幕府による戦後処理も厳しく、後鳥羽ら3上皇を流罪にし、仲恭天皇を廃した。 朝廷の外の人間が皇室関係者を断罪したのは「日本史上、後にも先にもない」と大澤氏は指摘する。 幕府は朝廷の監視や西国支配の拠点として六波羅探題を設置し、東国と西国が統一された。 私:大澤氏は、さらに泰時が“武家の法典”ともいえる御成敗式目(貞永式目)を定めた点に注目する。 式目は御家人間の紛争を公平に裁く基準を明らかにし、関東の寺社について修理を推奨し、寺社についてわざわざ規定することで「寺社が幕府の支配下にある」と示した。 「日本史上初めての体系的な固有法」となり、その後も社会に広く浸透した。 A氏:実は、「泰時=唯一の革命家論」は大澤氏の独創ではなく、評論家の故山本七平氏は『日本的革命の哲学』(1982年)で、泰時が「天皇から権力を奪取してこれを虚位に置き」、御成敗式目という法律を「天皇の裁可も経ずに一方的に公布・施行」したと指摘していて、いまに至る象徴天皇制を泰時が創出したと評価しているという。 A氏:これに対して、大澤氏の新たな視点は、泰時が革命を実現できた理由を「論理」として考察した点にあり、既存の権力や秩序を壊す革命家は私利私欲に基づく行為でないことを示すために大義を必要とし、それは西欧では「唯一神」、中国では「天」の意志だった。 私:大澤氏は、だが日本では、そうした存在は天皇しかなく、天皇制までつぶしたら革命は大義なきものになり、民衆の支持を得られないので、そこで天皇・上皇を罰し、自ら法まで定めながらも天皇制は維持するという、「天皇制の否定的な活用」によって革命を実現した――という。 A氏:大澤氏の論考は「日本史のなぞ」(朝日新書)として刊行。 作家の松浦寿輝氏は「『革命』という概念をマルクス主義とは無縁の場所で復活させ、新鮮な感動がある。閉塞感が漂う日本だが、我々は主体的に行動できると実感できる。天皇退位問題が表面化した今、リアルな意味も持つ」と評価している。 私:大澤氏は執筆の動機について「東日本大震災後、脱原発など『この社会を変えたい』という機運が広がったのに結局変えられない。それはなぜかを考察したかった」とし、「天皇制や日米安保体制は微少な変更すらできないものだった。『革命』も可能なんだと発想を変えなければ、我々は自らの運命の主人になれない」と話しているという。 泰時のような政治家が今後日本に生まれるだろうか。 彼の生い立ちを知りたいものだね。 ウィキペディアによると、泰時は、人格的にも優れ、武家や公家の双方からの人望が厚かったと肯定的評価をされる傾向にあり、同時代では、古代中国の聖人君子(堯、舜)に例えて賞賛されているという。
2016.11.24
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私:トランプ現象で、米国の将来に悲観的なクルーグマン氏の「恐れおののく米国人へ あるべき姿へ戻る道、探ろう」とフリードマン氏の「トランプ氏勝利 居場所をなくした私たち」の2つの記事(いずれもNYタイムズ紙)をとりあげた。 一方、トランプ現象にそれなりの意味を述べているトッド氏の「深い分断、きしむ民主主義」と、シュトレーク氏の「グローバル化への反乱・自由市場の拡大、成長阻む格差生み、国家は形骸化」の論を対比してとりあげたね。 今日、とりあげるピケティ氏の論は、以上の各知識人の意見と比較すると、多少、バランスのとれたものだね。 A氏:ピケティ氏は、いきなり、トランプ氏が勝った要因は、何をおいても経済格差と地域格差が爆発的に拡大したことにあると明確に指摘しているね。 そして、何十年も前から米国で進むこの事態に、歴代の政権はしっかり対処してこなかったというわけだ。 昨日のブログのシュトレーク氏と同じ指摘だね。 私:さらに、金融業界との親密ぶりでクリントン氏に向けられた疑惑のまなざし、民主党とメディアのエリートたちの無能ぶりがダメ押しとなったという。 本選の得票数はクリントン氏が辛うじて上回っている(有権者約2億4千万人に対し、クリントン氏6231万票、トランプ氏6116万票=11月15日現在)が、最若年層と低所得層の投票率が低すぎ、勝敗を左右する州を制するに至らなかったとみている。 A氏:トランプ政権で何より悲惨なのは、トランプ氏の政策によって、不平等が生じる傾向がひたすら強まることで、現政権が苦労して低所得層にあてがったオバマケア(皆保険制度)を廃止し、企業の利益にかかる連邦法人税率を35%から15%に引き下げるということだという。 私:米国内の政治的対立はいよいよ民族問題の色を濃くし、新たな妥協点が見いだされない限り未来は見通せなくなっているという。 A氏:欧州が、そして世界が、今回の米大統領選の結果から学ぶべき最大の教訓は、一刻も早く、グローバリゼーションの方向性を根本的に変えることだとピケティ氏はいう。 今そこにある最大の脅威は、格差の増大と地球温暖化であり、この二つを迎え撃ち、公正で持続可能な発展モデルを打ち立てる国際協定を実現しなければならないという。 私:関税その他の通商障壁を軽減するような国際合意は、もうやめにし、例えば法人税率の下限や、罰則を伴う二酸化炭素(CO2)排出量の確固たる目標値を定め、なんの対価もない貿易自由化交渉など、もはやあってはならないという。 この観点からは、内容が貿易に限られ、財政面でも環境面でも拘束力を伴った方策がないという、10月末に調印されたEUとカナダの包括的経済・貿易協定(CETA)は時代遅れで、破棄すべきだという。 ここでは「投資家の保護」のためにはあらゆる手立てが講じられ、多国籍企業は国家を民間の仲裁機関に訴えられるようになり、開かれた公の法廷を回避できるわけだが、法的手続きにおける米国の帝国主義がますます強まり、米国のルールと義務を欧州企業に押しつけることになる。 A氏:ISDS条項だね(このブログ「TPPで訴訟リスク? 『ISDS条項』巡り論戦」)参照) 私:カナダはパリ協定に署名した数カ月後に貿易協定(CETA)を結んだが、温暖化対策にまったく触れない協定に意味はない。 さらに、ピケティ氏は言う。 「今こそ、グローバリゼーションの議論を政治が変えるべき時なのだ。貿易は善であろう。しかし、公正で持続可能な発展のためには、公共事業や社会基盤、教育や医療の制度もまた必要なので、公正な税制が欠かせない。 それなしでは、トランピズム(トランプ主義)がいたるところで勝利するだろう」。 ピケティ氏は、トッド氏やシュトレーク氏同様、グローバリゼーションに疑義を呈しているね。
2016.11.23
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私:トランプ氏が勝った米大統領選は、EU離脱を選んだ英国の国民投票に続いて、グローバル化に冷や水を浴びせかけた。 「いまこそ国家の出番だ」と説く鋭い資本主義批判で世界の注目を集めるドイツの社会学者、ヴォルフガング・シュトレーク氏へのインタビュー記事だね。 A氏:グローバル化の失敗についてはこのブログの「深い分断、きしむ民主主義」でとりあげたフランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏と同意見だね。 私:シュトレーク氏は、米大統領選はグローバル化の敗者による反乱で、国を開くことが、特定のエリートだけでなく全体の利益になるというイデオロギーへの反乱でもあるという。 そのような敗者たちはさげすまれ、政治からいずれ離れるというエリートたちの楽観は、一気にしぼんだという。 格差の広がりは、自由市場の拡大がもたらした当然の結果で、国際競争で生き残る、という旗印のもと、それぞれの国家は市場に従属するようになり、政府が労働者や産業を守ることが難しくなったとシュトレーク氏はいう。 A氏;たとえば北欧諸国のように、教育機会や所得の再分配で格差を和らげることができるはずだが、シュトレーク氏は スウェーデンは腐敗のない政府や労働市場、教育に対し、半世紀以上にわたり投資を続けてきた国であり、小国ゆえ、競争力と社会的平等を両立できるポジションを、世界経済の中に見つけることもできた、ごく例外的なケースであり、ほかの国が簡単にマネできるようなものではないという。 私:国家までが国際競争にさらされた結果、福祉国家であることがとても高くつくようになり、グローバル化した資本は、規制や労働組合、高税率といった「社会民主主義の檻」に我慢できなくなり、資本が動きやすくなる一方、働き手は簡単には移動できないから、資本がどんどん優位になり、こうした国家の「檻」が打ち破られてきたという。 低成長を放置すれば、分配をめぐる衝突に発展しかねないので、それを回避し、人々を黙らせておくために、様々なマネーの魔法によって「時間かせぎ」をしてきたとシュトレーク氏はいう。 今は中央銀行によるマネーの供給に頼りきりで、いずれも、先駆けたのは米国で、「時間かせぎ」の間に、危機は深刻さを増しているという。 A氏:米国は「金融空間」という新しい市場をつくたんだね。 これは、このブログでとりあげた「資本主義の終焉と歴史の危機」で水野和夫氏が詳細に指摘していることだね。 私:シュトレーク氏は、大きな傾向は日米欧とも同じだが、停滞を真っ先に経験したのが日本で、日本では長期雇用と年功賃金制が社会の安定の源だったのが、80年代以降、企業が競争力を失っても、政府の支えのもと銀行が融資を続けたのは、長期雇用に手をつけて「内戦」になるのを避けるためで、その結果が不良債権問題であり、長期停滞で、賃金は上がらず、非正規雇用へのシフトが進んだという。 やはり金融緩和に頼ったアベノミクスは、目標をまったく達成できずに失敗し、他の国も含め「時間かせぎ」はそろそろ限界で、いつかの時点で、借金取りが回収にやってくるという。 A氏:いま成長を阻んでいるのは格差で、お金は、それを使わないお金持ちのポケットにたまっているだけで、人々の不満が高まり政治が不安定化したことで、投資もしづらくなり、人を雇うよりも金融市場で投機的に利益を上げようという考え方が幅をきかせ、現金の山の上に富裕層が座ったまま、雇用が増えなければ、需要など生まれないという。 私:シュトレーク氏は、私たちがいま直面しているのは、国境のコントロールを失って国が形骸化する、現代国家そのものの危機なのであって、英国のEU離脱運動のかけ声は国家が「コントロールを取り戻せ」だったという。 金融緩和が行き詰まった後に危機を先送りできる手段は見当たらず、もし、ドラギ(欧州中央銀行総裁)が「答えがない」と言えば、翌朝には世界経済は大炎上だが、シュトレーク氏は「私は解決策はないと断言させてもらう」という。 出口のないジレンマに向き合うより、甘美な解決策を聞きたくなるものだが、それを求める態度こそトランプを生んだという。 A氏;毎日仕事に出かけ、子育てに追われる普通の人々が、政治から遠ざけられてきた。 富だけでなく、政治へのアクセスをめぐる格差の広がりが何をもたらしたのか、政治権力に真剣に考えさせるべきで、彼らは臆病なので、人々が立ち上がれば向き合わざるを得なくなると、シュトレーク氏はいう。 私;だから、シュトレーク氏は、トランプは問題解決にはほど遠いが、彼のおかげで、問題を否定し続けることはできなくなり、人々が利害を軸に集団をつくり、そのために進んで戦うという、生々しい意味での政治制度の復権があり、そこに氏はまだ、希望を持っているという。 これは、徹底的にトランプ批判のクルーグマン氏やフリードマン氏と違い、多少の希望はあるね。 トランプのTPP撤退で、健康保険制度のように日本国家が国民のために作った規制「檻」をTPPのISDS条項(「TPPで訴訟リスク? 『ISDS条項』巡り論戦」)で米国のグローバル大企業により崩壊されるのは避けられそうだね。 「国滅びてグローバル企業残る」(「壊れゆく日本という国」)ことはとりあえず避けられそうだね。
2016.11.22
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私:このブログの「恐れおののく米国人へ あるべき姿へ戻る道、探ろう」17日朝日新聞・「クルーグマン・コラム@NYタイムズ・11月11日付」で、トランプ政権への危機感をクルーグマン氏が述べていたが、この11月9日付のNYタイムズのフリードマン氏のコラム記事も同様にトラップ政権の不安を述べているね。 A氏:NYタイムズは、選挙期間中、クリントン支持だったからね。 今度は、トランプ政権の徹底的な批判活動を始めたようだね。 私:フリードマン氏は「トランプ氏の勝利に、私は63年の人生で最も強い恐れを感じている。政府が機能しなくなるほど社会が分断に陥るのではないかとーー」と述べている。 そして、人格や政策を抜本的に変え、選挙期間中と全く違う人間にならない限り、彼は勝者にはなり得ず、分断のかわりに癒やしを与えるべきだし、衝動的なうそのかわりに真実を語らなければならないし、思いつきではなく証拠に基づいて決定すべきだし、人々が聞きたいことではなく、聞く必要のあることを話すべきだという。 A氏:それは、困難な要求だが、困難だと思って、要求せざるを得ない。 私:相互依存の世界は、誰かが得をすれば誰かが損をするビジネスの「ゼロサム」の関係ではなく、ウィンウィンの関係があってこそのものだと認識すべきだという。 フリードマン氏は彼がそうなることを祈り、彼も、史上最悪の大統領になりたいわけではないだろうから、ベストの人材で周囲を固めるはずだ。 A氏:しかし、それは期待できるだろうか。 今、毎日、ニュースで報じられている人選が始まったトランプ政権の幹部は、フリードマン氏の意図に反したものになっているようだ。 私:トランプの勝利をどう説明したらいいのか、確かなことを言うにはまだ早いが、貿易赤字や所得格差の問題よりも、文化的な問題が影響し、米国民は今、居場所をなくしたような気分になっているとフリードマン氏はいう。 居場所がなくなることほど人々を怒らせ、混乱させるものはなく、米国はマイノリティーが過半数を占める国へと様変わりしつつあり、多くの白人中産階級の脅威となっているという。 A氏:また、急激な技術の進化が職場を様変わりさせ、仕事を奪われたり、生涯学び続けなければならない重圧にさらされたりする人たちがいる。 職場と地域社会という二つの大事なものがひっくり返れば、自称「強い男」の単純な解決策に人々がひかれるのも、驚くべきことではない。 私:フリードマン氏はいう。トランプが失敗すれば、私たちもみな失敗する。 だから、選挙戦で見てきたよりもトランプがいい人になっていることを祈る。 だが、今のところ、私は苦悩し、おびえている。そして初めて、米国で居場所をなくしたと感じている。 クルーグマン氏と同様に、トランプ政権に大きな危機感をもっているね。 英国が予想外のEU離脱を後悔しているように、米国の知識人はトランプ当選に後悔しているね。
2016.11.21
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今週の日曜書評で、興味が湧いたのは、下記の1冊のみ。 マイケル・ブース〈著〉『限りなく完璧に近い人々 なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』・評者・加藤出(東短リサーチチーフエコノミスト) 評者は、スウェーデンとデンマークに最近行ってきたが、両国の社会保障は手厚いため、失業や老後の不安が原因で貯蓄する人は少なく、それゆえマイナス金利政策で預金金利が低下しても、日本のように高齢者の心配が高まる現象は起きていないという。 働く時間の短さも驚きで、昨年発表の調査では、デンマークの労働時間は週31・2時間。 日本語の「カロウシ」が彼の地では最近話題であり、それなのに彼ら1人あたりのGDP(購買力平価ベース)は日本より遥かに大きい。 国連の「世界幸福度レポート」では、デンマークを筆頭に北欧が上位を占めている。 どうして北欧はそんなに優れているのか?実際は社会に歪みが生じているのでは?と思っていたところ、本書に出くわしたと評者はいう。 とかく一括りにされがちな北欧だが、気質の違いや、ライバル意識、互いを馬鹿にするジョークなど興味深い話題が次々と出てきて、経済や社会制度の専門家ではない著者だが、人間観察眼は鋭く、他には見られない北欧論となっているという。 最終的に著者は、「西欧諸国は、自分たちの経済を破滅に追いやった野放図な資本主義に取って代わるものを求めている」だけに、北欧は「完璧」ではないが、彼らの「生き方、優先順位のつけ方と富の扱い方、社会をより良く公正に機能させる方法、仕事と私生活のバランスをとり、効果的に教育を身につけ、互いに支え合って生きる方法」に見習うべきだと結論づけている。 「働き方改革」が必要な我々にも、本書が示唆する点は多いと思われると評者はいう。 今、たまたま、15年に出版された保守の論客・佐伯啓思氏の「さらば、資本主義」を読んでいるが、下記のような言及がある。 競争に勝つために、企業はコストを下げる、そのため労働コストを下げる、賃金を下げ派遣などに切り替える。 雇用が不安定になれば、専業主婦だった女性もパートにでかけ、家族がバラバラになる。 競争は人をいっそう個人主義にして、他人との信頼をくずしていく。 人間とは、個人で生きるだけでなく、他者との信頼を基にした社会的存在とすれば、これは「人間破壊」だと佐伯氏はいう。 まさに、日本も「自分たちの経済を破滅に追いやった野放図な資本主義に取って代わるものを求めている」と論じていることになる。 「一億総活躍」や「働き方改革」は時代遅れということになろう。
2016.11.20
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私:こないだこのブログの「「『髪の毛の聖地』惜しむ JR北海道、増毛駅廃止で 高知『はげ』駅発、ラストツアーも」と「北の終着駅、最後のにぎわい 高倉健さん三回忌、映画舞台にファン 12月廃止の増毛駅」で、JR北・留萌線の留萌―増毛駅間が維持困難で12月5日に廃止することによる「増毛駅」廃止のニュースをとりあげたが、今日の新聞では、実は、JR北、路線半分が危機だと報じられているね。 A氏:JR北は18日、全路線の営業距離の約半分にあたる10路線13区間(1237・2キロ)について、もはや自社単独では維持できないと正式発表したね。 見直し対象の13区間は昨年度の1日1キロあたりの平均乗客が2千人未満で、3区間は1列車の平均乗客が10人と特に少なく、バスへの転換を協議するという。 残る10区間も駅の廃止や、自治体に線路維持を任せ、JRは運行に専念する「上下分離方式」などを協議し、2020年春までに合意を目指すという。 私:人口減少や自動車利用への転換で、利用客が減っているためだが、昨年度は全14路線が赤字、今年度の営業赤字は過去最大の440億円と予想。 安全投資などで国から1800億円の支援を受けるが、「バケツに穴の開いた状態」(島田社長)だという。 協議の相手となる自治体は道内の約3割の56市町村だが、大半が財政難で、バス転換や応分の負担に早速身構えていて、高橋知事は18日、「JR北は、徹底したコスト削減など最大限の自助努力を進め、拙速な対応をしないよう強く求める」との談話を出したという。 A氏:この厳しさは、全国の地方の鉄道も同様で、国土交通省の集計では人口減少や自動車利用へのシフトが背景に、2000年度以降、38路線754・4キロが廃止されたという。 中小民営鉄道などの「地域鉄道」は96あるが、昨年度、71事業者が鉄軌道事業で経常赤字で、JRも北海道、四国、九州はローカル線が多く事情は同じ。 私:将来的な廃線を否定しない発言が相次ぐ。 JR西は島根県江津市と広島県三次市を結ぶ三江線(108・1キロ)を18年春に廃止すると表明。 A氏:しかし、地元の路線存続の要望は強く、事業者は工夫を凝らしているところもある。 銚子電鉄(千葉県銚子市)は、鉄道利用客は昭和20年代には約240万人いたが、いまは約40万人。 「ぬれ煎餅」などの売り上げが3億8千万円あり、鉄道事業の赤字を補っていて、昨年は駅の命名権も販売し、お化け屋敷列車や電飾列車も走らせた。 私:「ぬれ煎餅」というのは、俺ははじめて聞いたが、煎餅の生地を焼いた直後の熱いうちに醤油に漬けることで、しっとりとした歯ざわりと濃厚な醤油味の煎餅となるのだという。 銚子の名物和菓子。 銚子市は、米の名産地であると共に醤油の名産地であり、古くから煎餅を作るところが多いという。 A氏:国は地域鉄道に、安全に関わる設備投資などの3分の1を補助している。 石井国交相は18日、JR北の方針を受け「国としても何ができるか検討したい」と述べたという。 私:これは安倍政権の「地方創生」とも関連するのではないかね。 こないだ、保守の論客佐伯啓思氏の「さらば、資本主義」(新潮新書)を読んでいたら、この本で「地方創生」にふれ、「『地方創生』を成長戦略といわれると、つい、何をバカな、といいたくなるのです。少なくともこの20年ほどでいえば、地方の衰退を招いた最大級の要因は「構造改革」という名の成長戦略だったからです」とあったね。 これからの全体としての人口減と都市への人口移動を考えると、成長戦略と「地方創生」は矛盾しそうだね。 東京オリンピックはいっそうの東京集中を引き起こすだろうね。
2016.11.19
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私:日銀の黒田総裁は、2013年春、物価上昇率2%を「2年程度で達成」と大見えを切ったが、その道筋すら見えない。 そこで、上記の3者にインタビューしてそのコメントを掲載しているね。 その中で、専門の上野氏のコメントが「『転進』やめ、負けを認めよ」として一番厳しいね。 黒田総裁は2013年春の就任時に「物価上昇率2%を2年で達成する」とデフレ脱却の目標を掲げ、異次元緩和に踏み切ったが、物価は上がらず、達成時期は何度も後ずれし、今月初めには「18年度ごろになる可能性が高い」と見通しを修正。 2年という短期決戦のはずが、5年以上におよぶ長期戦・持久戦に様相を変えている。 A氏:これを上野氏は、太平洋戦争で、旧日本海軍が短期決戦による勝利を目指して開戦に踏み切ったものの、目的を達することができないまま連合国軍に長期戦に引きずり込まれた姿とダブるという。 出来ないことを目指し、出口を考えずに無理やり金融緩和の洞穴に突っ込む姿勢は戦時中の日本軍のようだという。 私:よくないのは、長期戦になっている原因を原油安など外部環境のせいにし、失敗の責任を認めないことで、ミッドウェー海戦で大敗したのに、連合艦隊司令長官も、実行部隊の司令官も責任を取らなかったのと同じ構図だと指摘している。 戦略を決めるには、コントロールできない外部要因を明確にし、コントロールできる要因と区別するのが、常識だね。 ところが、「物価上昇率2%を2年で達成する」というときに「原油価格の変動はないものとする」「消費税増税の影響はないものとする」というコントロールできない外部要因を明確にしていないね。 A氏:9月の段階で「無条件降伏」し、インフレ目標を実現可能なレベルへ下げるべきで、副作用が大きいマイナス金利も、早めに撤回しておくべきだと上野氏は指摘する。 私:外部要因に責任転嫁せず、負けを認めて、目標を再設定することにしか勝機はなく、勝つ見込みのない持久戦を続ければ、いずれは兵糧が尽きると、歴史が教える教訓だと上野氏は、厳しく批判している。 A氏:2人目の松枝氏は、演出家らしく「『異次元緩和』が本質的な解決策ではなく、短期的な、見せかけの景気浮上策であることは、黒田さんはわかっていたんだと思います。わかっていながら、安倍さんから与えられた役割を演じていたんです」という。 私:日本経済を本当に立て直すには、目に見えるイノベーションが必要で、金融政策は環境を整えることはできまるが、イノベーションそのものを作り出せるわけではなく、金融政策が手詰まりになった今こそ、これからの日本をどうするかを真剣に議論すべきだと松枝氏はいう。 その通りで、未だに第3の矢が見えないね。 A氏:金融政策は国民の多数決ではできないから、専門家に判断を任せるしかないので、中央銀行の独立性が重要になり、その代わり、うまくいかなかったときの責任を明確にしなくてはいけないと松枝氏はいう。 私:さらに、松枝氏は、本来なら「2年で2%」を達成できなかったことについて、黒田さんは責任をとるべきで、安倍政権が書いたシナリオは、放っておくと行き詰まることは最初からわかっていたから、それに代わるシナリオを提示し、物語に決着をつけるのが、黒田さんがやるべき仕事で、総裁という主演男優を続ける以上は、その責任を果たしてもらいたいという。 3人目の山室氏は、江戸の研究者で、幕府がデフレで苦労したことにふれていたが、あまり参考にならなかったね。
2016.11.18
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私;今度の米国大統領選では、このブログの「鉛汚染と大統領選 環境政策、党派の違い鮮明」、「米大統領選の争点 気候問題、なぜ無視するのか」の「クルーグマン・コラム@NYタイムズ」で述べているように、クルーグマン氏は、徹底的な反トランプ、親クリントンだったが、選挙結果は期待に反したものになった。 A氏:当然、11月11日付の「「クルーグマン・コラム」ではトランプ攻撃は続いているね。 私:クルーグマン氏は、トランプ氏の選挙運動は、かつてないほど「ウソ」に満ちていて、この「ウソ」は政治的な代償を払うことなく、確かに多数の有権者の共感をも呼んだが、だからと言って、「ウソ」が真実に変わることはないという。 例えば、大都市のスラム街は記録的な犯罪が起きている戦闘地域ではないし、米国は世界一税金が高い国ではないし、さらには、気候変動は中国人が言い立てているデマではないという。 しかし、気候変動についてはクルーグマン氏の反論は正確でないね。 それは、トランプ氏の後ろには地球温暖化に否定的なシンクタンクがあり、その代表が、トランプ政権の環境保護局長官に抜擢される案があるとマスコミが報じているというからだ。 A氏:トランプ氏が、どれだけ大きな権力の後ろ盾を得たとしても、「ウソ」は「ウソ」だとクルーグマン氏は厳しいね。 私;さらに、クルーグマン氏は言う。 トランプ政権は米国と世界に多大な損害を与えることになるという。 残念ながら、最悪の4年間にとどまる話ではなく、今回の大統領選の結果がもたらす悪影響は、今後何十年、ことによると何世代も続くだろう。 とりわけ、気候変動の行方が懸念されるとクルーグマン氏は言う。 A氏:温室効果ガスの排出量に関する重大な世界的合意に達したばかりか、米国は再生可能エネルギーへの依存を大幅に高めるよう明確な政策方針を採ったが、それが、おそらく白紙に戻され、その損害は計り知れないという。 私:政治的には、とんでもない人たちが連邦最高裁判事になると見込まれ、各州政府は有権者をもっと抑圧できるような権力を持ち、最悪の場合、陰湿な人種差別が米国全土で標準となる可能性があり、市民の自由も心配しなければならず、ホワイトハウスはまもなく、明らかに権威主義的な衝動を持つ男に占有されるという。 A氏:トランプ氏の政策は、彼に投票した人々を救済することにはならないだろうし、それどころか、支持者たちの暮らしは、かなり悪化すると思われるが、このことは徐々に時間をかけて明らかになるから、新政権の政敵は、自分たちの正当性が近いうちに明白になるなどと期待しないほうがいいとクルーグマン氏はいう。 私:さらに、クルーグマン氏は言う。 では、私たち米国民はどうしたらいいのか? 心配し、恐怖におののく市民として、何をすべきなのか? 一つの素直な対応は、沈黙すること、政治に背を向けることで、世界は地獄へ向かっているが自分にできることは何一つない、ならば自分の庭の手入れだけしていればいい、と。 A氏:おそらく、米国は特別な国ではなく、一時代は築いたものの、いまや強権者に支配される堕落した国へと転がり落ちている途上にあるのかもしれないと厳しい。 私:米国のあるべき姿へと戻るのは、だれもが予想するより長く険しい道のりだろうし、うまくいかないかもしれない。でも、やってみるよりほかに、ないという。 クルーグマン氏はトランプ政権に対しては、かなり悲観的な予測をしているね。 さて、柔軟性もあるというトランプ政権の行方、すなわち、米国の行方はどうなるか。 クルーグマン氏の予測通りになるのか。
2016.11.17
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私:トランプ氏は、TPPに反対で、オバマ政権下での批准もなくなった。 もう一つの地球温暖化対策の国際ルールの「パリ協定」は批准されたが、これについては、温室効果ガス対策として、オバマ政権が国内対策の柱として導入を決めた火力発電所への新たな排出規制策にトランプ氏は猛反発し、選挙戦で国内の石炭産業などの保護を最優先する考えを訴えてきている。 そして、すでに環境基金への影響が出ているようだ。 A氏:モロッコで開かれている国連気候変動枠組条約締約国会議(COP22)の閣僚級会合が15日、始まったが、「パリ協定」から脱退を表明している米次期大統領のトランプ氏へ懸念が広がる中、協定に実効性を持たせるよう道筋をつけることが焦点になるようだ。 私:会議に先立ち、ジョナサン・パーシング米特使が記者会見し、「市場や民間資金は、自然エネルギーの導入など低炭素の解決策へと動いている。政策ではなく経済的な理由だ」と流れが変わらないことを強調し、「来週トランプ氏の政権移行チームと話し合う。その時に今度の政策が見えてくる」と話し、影響を推測するのは早いとの見方を示したという。 A氏:米国はすでに協定を締結済みなので、仕組み上4年間は脱退できない。 だが、政権交代後は政策担当者が入れ替わるため、参加各国は米特使の発言を額面通り受けとめていない。 米国が「パリ協定」を脱退するしないにかかわらず、各国がトランプ氏の影響を懸念しているのが資金に関する問題で、途上国の中には米国など先進国の資金援助を前提に、温室効果ガスの削減計画や、温暖化による影響の軽減策をたてているところがあるからだ。 私:米共和党はすでに、国連が設けた多国間基金「緑の気候基金」からの資金引き揚げに言及しているが、途上国の温暖化対策支援約100億ドルを先進国が約束する中、米国は30億ドルを占める。 5億ドルは今年拠出したが、残りは凍結されるおそれがあり、また、国連気候変動枠組み条約事務局への拠出金を「ただちに止める」としているという。 A氏:もうトランプ氏の動きが具体化しているようだね。 私:15日始まった、「パリ協定」の第1回締約国会合(CMA1)では、協定に実効性を持たせるための詳細ルールを決めるが、議論が煮詰まっておらず、いったん中断される見込みだと報じられている。 今後のトランプ氏の動きは不透明だが、温室効果ガスの削減に乗り出すかね。 俺としては、このブログの「崩れるTPP、誤算 日本、通商戦略再考へ:パリ協定に影響も 否定的な姿勢 米大統領にトランプ氏」の後半で述べたように、二酸化炭素ガスの削減は温室効果ガスの効果的な削減になるのか疑問に思っているがね。 「地球温暖化はでっち上げ」と公言したこともあるトランプ氏が今後もそれを言い出すのかね。
2016.11.16
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私:昨日のブログではトランプ氏の大統領当選を予測していたトッド氏の言を紹介したが、今日の朝日新聞では、映画監督のミケル・ムーア氏が、氏のブログで早くからトランプ氏の勝利を予言していたと報じている。 A氏:そのブログの「トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」(7月29日)は選挙の3カ月以上前に書かれたものだが、トランプ氏の当選が確実な情勢になると日本でも爆発的に読まれているという。 私:5つの理由とは、下記のようなものだね。 1.中西部の票読み。 ラストベルト(錆びついた工業地帯)の奴らは、EU離脱と同じことが起きることを歓迎していること。 2.怒れる白人、最後の抵抗。 我がアメリカ男性たちが主導してきた240年間の統治は、終わろうとしている。 一人の女性が、その座を引き継ごうとしている! なんでこんな事態になったんだ?! 3.ヒラリー問題。 ヒラリーはまったく人気がないし、有権者のほぼ70%が、ヒラリーを信用できないと言っているし、不誠実だと考えている。 ヒラリーは旧来の政治を象徴している。 4.意気消沈したサンダース支持者票。 彼らはトランプに投票しないだろう。 そのうち第三の政党に投票する奴もいるだろうが、多くは家の中だ。 5. ジェシー・ベンチュラ効果。 大勢の人間が疲弊した政治体制に怒っているから、大衆はトランプに同意するわけでもなく、トランプの偏狭な考えとかエゴを気に入っているとかでもなく、ただ、投票できるからっていうだけでトランプに投票する。 計画をぶち壊しにして、パパやママをこまらせてやろうっていうくらいの気持ちで、これをやる。 A氏:ジェシー・ベンチュラというのは、90年代に、ミネソタ州で知事に選ばれた人で、プロレスラーだね。 私:ムーア氏は、彼らが、ジェシー・ベンチュラは優秀な指導者で、政治的見識を持った人物だと思っていたら、彼に投票しなかっただろうという。 彼らは、ただ単にやってみただけで、ミネソタ州は、アメリカでも最も賢明な州の一つだが、一方でミネソタ州の人たちはブラックユーモアを好む。 そしてベンチュラに投票したのは、病んだ政治体制に対する、彼らなりの辛辣な悪ふざけだった。 これがトランプにも再び起こるとムーア氏は予言する。 A氏:ムーア氏が、あるトーク番組の帰り道、ある男がムーア氏を引き止め、「マイク、俺たちはトランプに投票しなきゃいけない。俺たちは大改造する必要がある」と言った。 トランプ大統領誕生は、まさに大改造になるだろうし、投票した人々の大部分は、外野席に座って、そんなリアリティ・ショーを見たいと思っている。 私:最後に、次回、どのようにしたらトランプを倒せるか、俺の考えを投稿するつもりだとムーア氏は述べている。
2016.11.15
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私:あまりにも軽く、あまりにも重い選挙だったというが、他方、民主主義が機能した結果だ、という声もあるが、嘆いているのは、政治家やメディア、大企業経営者など米国内のエリートや既得権益層で、その連中がふつうの人々の考えをわかっていなかっただけだという。 A氏:「トランプ氏は支離滅裂でも、支持する人たちの反乱には理がある」と選挙前に指摘したのは、フランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏だ。 働き盛りの白人の死亡率上昇などに注目し「米国は大転換のとば口に立っている」と波乱の可能性を示唆していた。 私:開票翌日、トッド氏に電話するとトッド氏は、「当然の結果」と話し、「生活水準が落ち、余命が短くなる。自由貿易による競争激化で不平等が募っているからだ。そう思う人が増えている白人層は有権者の4分の3。で、その人たちが自由貿易と移民を問題にした候補に票を投じた」という。 むしろ「奇妙なのは、みんなが驚いていること」とで、「問題は、なぜ指導層やメディア、学者には、そんな社会の現実が見えないのかという点だ」という。 A氏:トッド氏は、グローバル化の失敗や、世界各国の分断を早くから指摘し、このブログでも下記のように、「トッド氏知的街道」ができていたね。 「分断される世界」、「グローバル化『国家復活』導く」、「展望なき世界」、「行きづまるグローバル化」、「分断、格差、乗り越え未来へ・朝日地球会議2016」と続く。 私:このブログの中で「行きづまるグローバル化」では45歳から54歳までの米国の白人の死亡率は、1999年から上昇していて、自殺や麻薬、肥満といったことが原因で、生活レベルの低下、退職後の不安といった、グローバル化による低賃金の労働力をめぐる競争などが、多くの人にとって耐えがたくなっており、これは、グローバリゼーション・ファティーグ(グローバル化疲れ)なのだと氏は指摘し、トランプ現象もそれを反映していると述べている。 A氏:また、ブログ「分断、格差、乗り越え未来へ・朝日地球会議2016」では、メディアはトランプ氏を「ウソつきだ」とこきおろすが、社会学的に見れば、クリントン氏こそウソつきで、彼女は、候補者指名受諾の際、「世界が米国を必要としている」と演説したが、そんな現実はなく、むしろトランプ氏の「米国は世界に尊敬されていない、米国は苦しんでいる」という言葉の方が真実だと、トッド氏はいう。 私:これは、スティグリッツ氏も同様で「世界の99%を貧困にする経済」、「保守とリベラル、進む二極化・岐路の米国」、「今週の書評から、ジョセフ・E・スティグリッツ著『世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠』、「分断された米国 不平等は必然ではない」や「格差が深める米の分断」米国社会の変質を分析する社会学者、ロバート・パットナム氏へのロングインタビュー・」でもふれているね 指導層が現実を理解していれば、人々に寄り添いつつ、もっと理性的な候補を出せたかもしれないが、できないまま差別感情をあおって支持を集める人物に選挙を乗っ取られ、深刻な分断を放置した社会では民主主義はきしむという。 米国の転換は現実を直視した方向に進むのだろうか。
2016.11.14
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今週は、興味があったのはスティグリッツ氏著の次の1冊。 ジョセフ・E・スティグリッツ氏〈著〉『ユーロから始まる世界経済の大崩壊』評者・諸富徹(京大教授・経済学) スティグリッツ氏の著書についてはこのブログの「世界の99%を貧困にする経済」でもふれている。 また、書評では、「ジョセフ・E・スティグリッツ著『世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠』」を紹介している。 また、関連記事として「アベノミクスに欠けるもの」、「分断された米国 不平等は必然ではない」、「保守とリベラル、進む二極化・岐路の米国」とのエッセイもあり、今日の米国のトランプ現象を予告しているようだね。 この著では、米国でなく、英国のEU離脱や大量の難民到来に揺れる欧州の問題をとりあげている。 欧州の最大の問題は、低迷する欧州経済で、いまや各国で反EU感情が広がり、極右政党が伸長し、そこでは、長く続く経済的苦境が影を落としている。 ユーロ圏の実質GDP成長率(2007~15年)は、非ユーロ圏8・1%に対し、0・6%にとどまり、1人あたり実質GDP成長率(同)でみても、米国3・4%、日本1・6%に対し、ユーロ圏はマイナス1・8%と対照的。 スティグリッツ氏は、これは単なる偶然ではなく、ユーロこそがその原因だと結論づけ、統一通貨の試みが破綻の危機に瀕しており、欧州は「一層の欧州化」か、さもなくば「ユーロ解体」か、どちらかを選ばなければならないと警告する。 もし各国が独自通貨をもっていれば、危機に瀕した国々は自国通貨を切り下げ、輸出回復を図ることもできるが、ユーロ圏諸国は、金融政策と通貨政策の権限を放棄しており、しかも彼らは、財政赤字を対GDP比3%以内に抑えるよう義務づけられており、財政拡張もできない「手足を縛られた」状態だ。 欧州は、各国政府から経済政策の主権を奪う一方、EUにも十分な財源と権限を与えていない。 ならば、ドイツをはじめとする中心諸国が欧州経済の運営責任をもつべきだが、彼らにもその意思はなく、他方、欧州委員会、欧州中央銀行、IMFからなる「トロイカ」は、危機に直面した国々を救うどころか、借金返済を求め、緊縮財政と賃下げをのませた。結果、経済はさらに弱体化し、債務返済は遠のいた。 国民経済を破壊してでも債権回収に励む「トロイカ」への怒りが、本書の原点。 スティグリッツ氏は、欧州統合の理念自体は否定していないが、欧州が連帯して経済を再建する意思がないなら、ユーロを解体して為替レートの調整能力を復活させ、各国の裁量拡大を図るべきだと説く。 このブログでは、「ギリシャ危機 米共和党は教訓として学べ」(クルーグマン・コラム@NYタイムズ) で、クルーグマン氏も、ギリシャが独自通貨を持たなかったことが、危機の大きな原因であることを述べていたね。 「国民が通貨ユーロの奴隷になるのではなく、通貨ユーロが国民福祉に奉仕する経済を築かねばならない」という経済思想で貫かれた本書は、スティグリッツ氏の面目躍如だと評者は評価している。 しかし、それを実行するのには時間がかかるだろうし、来年のフランス大統領選もEU離脱問題がからみそうで、当分の間、ユーロ圏経済の問題は続きそうだね。
2016.11.13
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私: 鶴保庸介・沖縄北方相は11日、閣議後の記者会見でも沖縄県の米軍施設建設現場付近で機動隊員が「土人」と叫んだ問題をめぐり「差別と断定できない」とした発言を撤回しない考えを示し、「何度も同じことを繰り返すしかない」と強調したと報じられている。 A氏:これは当日の「社説」でうまくまとめられているね。 かつて国会で「土人」が論じられたことがあり、アイヌ民族を対象にした「北海道旧土人保護法」が1997年に廃止される前のことだ。 当時、法律の名称にある「土人」そのものが差別ではないかと問われた自民党の厚生相は「差別的な響き」だと認め、「現在の社会通念に照らして適当ではない」と明快に答えていたという。 私:今回も大阪府警は「軽率で不適切な発言で警察の信用を失墜させた」として機動隊員を処分し、菅官房長官は「発言は許すまじきこと」と指摘。 金田法相も「土人発言」は、「不当な差別的言動」だとの認識を示しているが、当の鶴保氏は差別としてキッパリと認めていない。 鶴保氏は内閣委で「現在、差別用語とされるようなものでも、過去には流布していたものも歴史的にはたくさんある」とも語ったという。 A氏:「ニコニコ大百科」では「土人」は次のように解説している。 「土人とは、『土着の元からそこに住んでいる人、原住民』といった意味の言葉。 しかし、現在では未開で野蛮であるというニュアンスから、メディアなどでは『差別語』として使われなくなっている。 かつては「北海道旧土人保護法」という法律もあったが、1997年「アイヌ文化振興法」の制定により廃止されている」 最近、大臣の素質を疑う「失言」が多いが、また、出たね。 しかも、今度は、意固地で頑固な性格か、自分の「日本語の単語」の不勉強を認めていない。 私:鶴保氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐる政府と沖縄県の訴訟について「注文はたった一つ、早く片づけてほしいということに尽きる」と語ったり、沖縄出身の自民党衆院議員のパーティーで、選挙結果と政府の沖縄振興策が「リンクしています」と述べたりしたという。 よく、こういう人をよりによって、安倍首相は沖縄担当相にしたもんだね。 民進党の江田憲司代表代行は「沖縄の方々と鶴保氏との信頼関係は完全になくなっている」と指摘し、辞任を要求した。 大体、「土人」という「差別語」は、俺達の子供の頃によく使われていたとおもうが、今の若い人は、「差別語」としても、「土人」そのものの単語自体も知っている人少ないのではないのかね。 皮肉ではないが、その「土人」という言葉をわざわざ、使った大阪府警の機動隊員は、大臣より博識だね。 「ニコニコ大百科」にあるように「差別語」として正確に使っている。 大阪では今もよく使われる「差別語」なのかね。 問題は、機動隊員に抵抗したから抵抗した相手に発言したという問題に転嫁せず、「土人」が「差別語」であるという日本語の正しい使い方を鶴保氏が知らないことを明確するだけのことだね。
2016.11.12
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私:今週の月曜日、12月5日に廃止となる「増毛駅」の記事をこのブログの「『髪の毛の聖地』惜しむ JR北海道、増毛駅廃止で 高知『はげ』駅発、ラストツアーも」でとりあげたが、3日後の10日の夕刊に再登場したね。 理由は、10日は、俳優の故・高倉健さんの三回忌にあたり、そのため主演映画「駅 STATION」(1981年)の舞台となったJR「増毛駅」が、ファンたちでにぎわいを見せているというわけだ。 A氏:駅の廃止まで1カ月を切り、名残を惜しむ観光客を、健さんゆかりの人が出迎えるという。 新聞記事によると、5日、日本海沿いを走る2両編成の列車が増毛駅に到着し、100人近い乗客が降り立ち、JR留萌線留萌―増毛間(16・7キロ)の12月4日の最終運行を前に混み合っているという。 私:映画に登場した駅前の「風待食堂」は、今は観光案内所として使われている。 訪れた札幌市の夫妻は「健さんの雰囲気は北国の終着駅とよく合う。増毛駅が無くなるのは本当に残念」と話したという。 元々雑貨店だった「風待食堂」の建物では、亡き夫と切り盛りしていた多田令子さん(77)が、訪れた人と撮影時の思い出話に花を咲かせる。 店をセットにした撮影中、撮影に使うラーメンを台所で作り、健さんがおいしそうに食べるのがうれしかったという。 「かっこよさが並の人と違った。気さくで冗談も言い、肩を抱いて写真撮影してくれたのを忘れられない」と感激が続いているという。 A氏:漁師や海産物の行商の女性で列車があふれ、にぎわいの中心だった駅がまもなく消える。 多田さんは「ファンは増毛の昔話にも興味を示してくれ、健さんの残してくれたものは大きいと改めて感じる。町の再出発も見守っていてほしい」と願っているという。 私:偶然、3日前の8日にBSテレ朝の、「秋の北海道旅行シリーズ」で「消え行く鉄路をだどる」をやっているのを見ることができたね。 列車の一番前にカメラが有り、線路を写しながら、列車は「増毛駅」に向かう。 目の前に線路をどんどん辿るシーンが続く。 列車が「増毛駅」に近づくと左にカーブして、右手に日本海が間近に見えるようになる。 A氏:増毛は港町なんだね。 私:テレビ映像の「増毛駅」の建物はは平屋で小さかったね。 駅前に「風待食堂」の建物があり、隣に大きな木造旅館で「富士屋」があった。 テレビでは、増毛出身の著名なシエフが建てたという「オーベルジュ」を紹介していた。 「オーベルジュ」とはレストランに宿泊施設がついたもので、だから、部屋は28室しかない。 温泉もあり映像では湯量豊かだったね。 このテレビ番組の最終画面は1両の電車が、「増毛駅」を出発し、次第にホームを後にして去っていく映像で終わっていた。 「増毛駅」よ、さようなら。 増毛の町は、どういう再出発をするのだろうか。
2016.11.11
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私:TPP最大の旗振り役だった肝心の米国で、TPP離脱を訴えるトランプ氏が大統領に決まった。 ところが、その翌日に日本では衆院通過をはかる間の悪さもあって、野党からは批判の声が出ているという。 急いで衆院通過をはかると、トランプ氏にケンカを売る話になりかねないね。 A氏:今朝、テレビで専門家が発言していたが、年末までのオバマ政権では、TPPを取り上げないことが決まっているので、TPP批准の可能性はゼロだという。 また、「パリ協定」が発効し、世界は脱炭素社会に向けて動き出した矢先に、「地球温暖化はでっち上げ」と公言したこともあるトランプ氏が、世界第2位の温室効果ガス排出国の米国の大統領に就くことになった。 新たな温暖化対策の国際的な枠組みを壊しかねない事態に、関係者には懸念が広がっているという。 私:TPPについては、米国国内でも反対が強い。 このブログの「TPP 消費者への深刻な脅威だ」米市民団体「パブリック・シチズン」創設者ラルフ・ネーダー氏のようにISD条項を主とする反発もあるね。 EUと米国の「TTP」版と言われる「TTIP」もこのブログの「『TTIP』EU内に反発 米との自由貿易協定、食の安全やISDS条項懸念」でふれた通り、反対が多く進んでいないね。 A氏:「パリ協定」については、温室効果ガス対策もトランプ氏は、オバマ政権が国内対策の柱として導入を決めた火力発電所への新たな排出規制策に猛反発し、選挙戦で国内の石炭産業などの保護を最優先する考えを訴えてきているね。 私:俺は、地球温暖化と温室効果ガスと二酸化炭素の因果関係がまだピンとこないのだが、トランプ氏は、それにはふれていないね。 すなわち、二酸化炭素の排出量を減らせば、温室効果ガスは減り、地球温暖化は防止できるというストーリーは信用できるのだろうか。 A氏:このブログでは、 「ニ酸化炭酸ガスは地球の温暖化と関係ないし、むしろ将来は寒冷化する」という考えをポイントにした、「地球温暖化知的街道」が下記のようにあるね。 「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」、1、2、3、「地球温暖化の陰に原発推進論」、「ほんとうの環境問題」、「地球温暖化キャンペーンの欺瞞」、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」、「恐怖の存在」、「地球はこれから寒冷化する」、地球環境についての社説コメント、「環境危機をあおってはいけない・地球環境のホントの実態」、「1秒の世界」、「『地球温暖化』論にだまされるな!」1、2、3、「地球温暖化の詐欺を暴く」、「日本一早い平成史・1989~2009」、「環境主義は本当に正しいか?・チェコ大統領が温暖化論争に警告する」、 「「たけしのTVタックル・極論スペシャル」、 私:当時、東工大の理学博士丸山茂徳氏は、「ニ酸化炭酸ガスは地球の温暖化と関係ないし、むしろ将来は寒冷化する」と言っていたね。 丸山氏は雲の活動を研究している学者によると雲の活動で、温度が上がることはあるというが、二酸化炭素との関係はないという。 むしろ、地球は今氷河期にあり、夏がより暑く、冬がより寒く、異常気象が多いというのは、地球の寒冷化の兆候であるという。 太陽活動の低下、過去の気候データから、2020年から気温は低下してくるだろうという。 トランプ勝利を「想定内」とした人もいるだろうが、自然現象を一方的に「想定内」とするのは危険だし、多数決で決めるのも問題だね。
2016.11.10
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私:「医療大麻を導入することで、約40兆円ある医療費が削減できる。我が国でも有効利用できるように研究したらどうか」と高樹沙耶女史は、参院選が公示された6月22日に新党改革から出馬して東京のJR新橋駅前で持論を訴えた。 結果は落選だが、その訴えは話題を呼んだね。 A氏:しかし、結局、本人は否定しているが、乾燥大麻を隠し持っていたとして逮捕されたね。 しかし、この逮捕で、この麻薬使用の提言を軽視してはならないだろうね。 私:もうあまりニュースとは言えないが今日の「ニュースQ3」でとりあげているね。 外国では使われているというが、医療活用を「解禁」した国や地域もあり、「がん」の激しい痛みを和らげたり、エイズ患者らの食欲を増進させたりする効果がある、との見方もあるためだという。 A氏:高樹女史は外国で使われているというが、米国では1996年、カリフォルニア州で医療目的の大麻の使用が合法化され、厚労省によると、連邦法は禁止しているが、現在は半数の25州と首都ワシントンで認められていて、ほかにもドイツ、オランダ、カナダなどが医療目的の使用を認めているという。 私:ただ、国立精神・神経医療研究センターの舩田正彦・依存性薬物研究室長は「米国でもまだ検証の段階。用法、用量の統一ルールが確立されているわけではない」という。 新党改革の荒井広幸前代表は国会で「薬用に限った研究開発」を提唱し、高樹容疑者の逮捕に「公認した責任者として心からおわび申し上げます」としつつも、「厳格な管理の下で効果や副作用を早く研究すべきだ。事件とは別に冷静に考えて」という。 A氏:しかし、厚労省は、国内では「医療用大麻」という定義は存在しないとの立場。 担当者は「人を対象にした臨床研究も含め、大麻の医療利用を認める状況にない」という。 世界保健機構(WHO)も医療用としての有効性に科学的根拠を認めていないという。 そう言えば、昨年、警視庁は、トヨタ自動車常務役員で米国人女性のジュリー・ ハンプ容疑者を米国から麻薬の錠剤を輸入したとして、麻薬取締法違反(輸入)容疑で逮捕したことがあったね。 同課によると、ハンプ容疑者は「麻薬を輸入したとは思っていない」と容疑を否認したが、結局、退任したね。 私:これは大麻ではなかったが、痛み止めに使っていたようで、国によって麻薬の意識が違うのかね。 A氏:日本でも医療目的での使用を求める声があり、「NPO法人医療大麻を考える会」(東京)の前田耕一代表は「難病患者らの治療の選択肢の一つにすべきだ」と訴えている。 会員の一人、神奈川県の山本正光氏は末期の肝臓がんになり、抗がん剤治療に効果がなかったため、大麻を自宅で栽培して治療目的で使用していたが、昨年12月に大麻取締法違反の疑いで逮捕された。 裁判では「『がん』は小さくなり、苦痛も減り、食欲も出た。どうして自分の命を救うために大麻を所持したことが罪になるのか理解できない」と無罪を主張したが、結審前の7月に58歳で亡くなったという。 私:WHOの薬物依存性専門委員を務める鈴木勉・星薬科大特任教授(精神薬理学)は「『がん』などの痛みの緩和には、すでにモルヒネなどの医療用麻薬があり、有効性と安全性が認められている」と語り、WHOは医療用麻薬の使用を推奨しているが、日本は海外と比べて使用量が大幅に少なく、鈴木氏は「まず、医療用麻薬の普及のほうが先決だ」と訴えているという。 高樹女史の提言は、それなりに検討の必要があるようだね。
2016.11.09
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私:新入社員の過労自殺に端を発する「電通の長時間労働を巡る問題」は7日、厚労省による強制捜査に発展したね。 このところ、マスコミが連日大きく扱って報じているが、捜査は異例のスピードで進んでいる。 A氏:今後の捜査で、違法な労働時間が見つかった部署の幹部らの事情聴取に乗り出す方針だという。 労働局幹部は「下位の職員が上位の職員に従うのが会社組織である以上、原因となる指示を出したのが誰かを調べるには上層部を追及する必要がある。『トカゲのしっぽ切り』になってはいけない」と解説しているという。 私:最終的には、会社の役員や労務管理の責任者の追及までいくだろうね。 しかし、このブログの「カルビー 女性奮闘、さくさく時短術」のカルビーの松本会長のようなトップがしっかりしていれば、こんなことは起きないね。 社長の経営理念とリーダーシップの欠如だね。 1991年に長時間労働で男性社員が自殺したのに、その後も改善がなく経営理念はそのまま。 A氏:その石井直社長が、7日、社内のホールに社員を集め、一連の事態や善後策について説明する集会を開いたね。 石井社長が一般社員に直接説明する機会を持つのは初めてだという。 石井社長は、終始険しい表情で、業務量の削減と業務プロセスの見直しを進め、社員の働き方の多様化や人材育成・人事評価・組織運営のあり方の見直しに取り組むと表明。 「社は大変厳しい局面にあるが、皆さんの力を結集してともに新しい電通をつくっていこう」と呼びかけ、不適正な労務管理への処分にも言及したが、社員が残業時間を減らしてウソの申告をする実態を認める発言はなかったという。 私:それが、一番核心的な問題なのに、これでは根本的改善はムリだとすぐわかる。 A氏:社員から事前に寄せられた質問に答える形で、「(労務管理の緊急改善策として打ち出した)午後10時以降の全館消灯は、準備期間もなく申し訳なかった。改善しながら、皆さんに納得してもらえる施策にしていきたい」と見直しを示唆する発言があり、業務量の削減については「どの業務を減らすかはここでは答えられない。業務に関する情報は相手先があること」と述べるにとどめたという。 私:「午後10時以降の全館消灯」は、「労務管理の改善策」とはコッケイだね。 これでは、社員が残業時間を減らしてウソの申告をする体質は改善されないよ。 10時消灯より、このウソの申告から、即、やめるべきで、順序が逆だね。 A氏:先月の立ち入り調査を受け、電通は(1)原則として最長で月50時間の時間外労働の上限を5時間引き下げ、(2)「私的情報収集」などの理由で会社にとどまることを禁止、(3)午後10時以降の業務原則禁止・全館消灯、といった労務管理の見直し策を打ち出したという。 私:電通は今回の問題を「労務管理」に矮小化しているが、基本的に効率的な仕事の管理が確立されていないことに気がついていないね。 A氏:社員からは「人員を増やしたわけでも、仕事量が減っているわけでもない。会社の対応は場当たり的だ」(中堅社員)などと冷めた声も出ていたという。 この社員は「『売り上げよりも、残業を減らせ』という勢いで、会社全体が浮足立っていて、ここまでくると経営に厳しい影響が出るかもしれない。社員の間では、東京五輪関係の仕事に支障が出ないか心配する声がある」と打ち明けたという。 私:この社員にも「ムダな仕事をなくそうという、発想がないから長時間労働になる」という基本理解がないね。 トヨタから、経営幹部を迎えたらどうかね。
2016.11.08
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私:JR北海道は6月下旬、留萌線の留萌―増毛(ましけ)駅間を12月5日に廃止すると発表。 利用者が少ないことなどから、路線の維持は困難と判断し、増毛駅など8駅が役割を終えるね。 しかし、新聞がこれをとりあげたのには、故・高倉健の主演映画「駅 STATION」(1981年)をよく知らないとピンとこないかもね。 A氏:君は、この故・高倉健の主演映画「駅 STATION」を気に入っており、10年前のブログに『駅 STATION』と高倉健があり、さらに14年に高倉健氏の死去にふれたブログの「高倉健死去」でも映画「駅 STATION」のことをふれているね。 私:「増毛駅」は、映画「駅 STATION」の舞台になったんだね。 この映画以外に、「増毛駅」は、その字面から「髪の毛の聖地」としても親しまれてきたという。 それに目をつけた日本旅行は9月下旬から「これで最後!! 半家(はげ)から増毛の旅」と銘打った11月17日新大阪駅発のツアーを売り出したという。 A氏:JR四国予土線の「半家(はげ)駅」(高知)の読みに着目して、「はげ」から、「増毛」とつなげたんだね。 同社の広報担当者は「『はげ』に始まり『増毛』に終わる希望に満ちた旅。ただのおもしろツアーではありません」と力説するという。 「半家(はげ)駅」から「増毛駅」へ、寝台特急サンライズ瀬戸、北海道新幹線を乗り継いで4泊5日で巡るツアーで、費用は17万5千円~19万円。 すでに定員25人の半分程度が埋まったという。 私: 頭髪にからむ鉄道の話題はほかにもあり、銚子電鉄(千葉県銚子市)の「髪毛黒生(かみのけくろはえ)駅」は、正式には「笠上黒生(かさがみくろはえ)駅」だが、ヘアケア商品の製造・販売会社が命名権を取得して昨年12月に名づけたという。 担当者は「『増毛駅』の廃止は寂しい限りだが、なくなる増毛の分もがんばる」と話しているという。 俺にとっては、「駅・STATION」のラストシーンで「増毛駅」が出てくるのが、まだ、目の前に浮かぶね。 この映画は1982年の日本アカデミー賞最優秀作品賞、主演の高倉健は最優秀主演男優賞を受けているね。 高倉健は警官役だね。 映画のラストシーンは、12月31日の大晦日の夜で、主人公の高倉健は「増毛駅」から札幌に帰るところで、最後は、無人のホームの暗い映像で終わる。 バックミュージックに紅白歌合戦の八代あきの「舟唄」がながれる。 ジーンとくるね。 高倉健も逝去し、12月5日には「増毛駅」もなくなるとは、寂しくなるね。 DVDに録画してある「駅・STATION」を久振りにみるか。
2016.11.07
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私:1853年7月、米国ペリー艦隊は、突然やってきたと多くの人が受け取ったが、実は幕府は1年前に来航を予告されていた。 52年7月、長崎・出島のオランダ商館長が「別段風説書」と呼ばれる文書を長崎奉行に提出した中に、米国政府が日本に使節を送る計画が示されていたという。 しかし、 幕府は海防関係の諸大名らと内々に対応を協議したが、財政難のため防衛強化は行われなかった。 A氏:すでに、ペリーは琉球王国に港の確保を説く意見書を米国政府に提出し、大統領の裁可を得ており、小笠原諸島父島の植民地計画もあった。 対メキシコ戦争(1846~48年)に勝利した米国は、太平洋岸に領土を拡大。 さらに、対中国貿易を増やすため、カリフォルニアと上海を結ぶ北太平洋横断航路を計画。 その海上交通の要衝にある琉球王国は、当時、薩摩藩の支配を受ける一方、中国王朝にも朝貢していた。 私:ここで今日の「沖縄問題」がすでに登場するね。 53年5月、那覇に初来航したペリーは半ば強引に首里城を訪問し、調査隊が各地に派遣され、石炭の試掘や土地の測量、天文観測などを実施し、将来米国船が寄港する際に役立つ情報を集めたが、このとき、隊員らと住民とのトラブルも起きた。 53年12月、恩納村で隊員1人が通行中の人々を銃撃し、男女3人を負傷させ、54年6月、那覇で酒に酔った水兵が女性を刃物で脅して乱暴し、怒った住民たちに石で殴り殺されている。 A氏:著書『ペリー来航』で琉球の事件について記した横浜開港資料館の西川武臣副館長は「現在の沖縄問題の原点はペリー来航にある」と主張する。 もし、幕府がペリーの要求に応じず、下田や箱館(函館)を開港していなかったら、琉球は、ペリーの支配下におかれただろうか。 私:54年、再び黒船で来航したペリーは幕府と日米和親条約を結び、58年、米、蘭、露など5カ国と修好通商条約が結ばれ、59年に横浜、長崎、箱館が開港する。 再来航したとき、ペリー艦隊は幕府への献上品として米国の工業製品を横浜村(横浜市)に陸揚げした。 現在の神奈川県庁付近に1周100メートル以上の線路を敷設し、10分の1大の蒸気機関車を試運転し、また、横浜村の応接所から現在のJR桜木町駅付近の約1キロの地点を電線で結び、電信の送受信の実験も公開。 さらに随行カメラマンが500枚近くの銀板写真を撮影し、現存する6枚は日本最古の写真とされる。 これらは、西洋社会の工業化をみせつけることで、日本に鎖国の時代の終わりを悟らせようとしたのではないかと推察されるという。 A氏:ペリーは、陸路も使い帰国しているね。 私:任務を終えたペリーは艦隊の指揮権を次席の士官に譲り、1854年9月、まず船で香港からスエズに到着後、鉄道でアレクサンドリアへ向かい、再び船で地中海を渡ってイタリアのトリエステに上陸し、鉄道に乗り換えてウィーン、ベルリンを経てオランダのハーグへ。 そして、船でイギリスに渡ってから大西洋を蒸気船で横断し、ニューヨークに戻ったのは、55年1月のことだったという。 ペリーは、黒船の恐怖だけでなく、蒸気機関車を試運転したり、電信の送受信の実験をしたり、銀板写真を撮影したりで、現物で、幕府に力を示していたんだね。
2016.11.06
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私:「いじめ」防止を話し合ってきた文科省の有識者会議が同省への提言をまとめ、今後、提言が「いじめ」防止対策推進法の改正につながる可能性もあるという。 「『いじめ』防止の提言」とは、「いじめ」を教職員の業務の最優先事項に位置づけ、「いじめ」の情報共有が義務であると周知▽「いじめ」の認知件数が少ない都道府県に文科省が個別指導する▽学校の「『いじめ』対策組織」に外部の人材の参画を進める――などを盛り込んだものだという。 A氏:この提言に対する教育評論家の尾木直樹氏の満足度は高く、最大のポイントは、教職員には「いじめ」の情報を学校の対策組織に報告・共有する義務があると改めて強調し、懲戒処分に言及した点だという。 私:尾木氏は、教職員の日常業務で、自殺予防と「いじめ」への対応を最優先に位置づけるよう促すことが盛り込まれた点も評価したいといい、「いじめ」対策は命にかかわるもので、職員会議や学年会議、部活指導などより圧倒的に大事だからだという。 「いじめ」対策組織の先生が朝礼であいさつするなど、今回、組織の存在を子どもや保護者に知らせる取り組みが盛り込まれたが、こんなことを3年たって書かないといけないのは恥ずかしいと思うと尾木氏はいう。 A氏:尾木氏は、「『いじめ』という言葉を使わず指導する」と提言に入ったのは画期的で、現場での長年の経験からいえば、「お前、それいじめだぞ」と言っても、ほとんどの子は認めず、本当にふざけているつもりの子が圧倒的に多いという。 だから「いじめ」という言葉を使わず、相手の子のつらさを理解させることが大事で、こんなに苦しんでいるんだよ、君がされたらつらいでしょ、だからもうやめようよ、君ならできるよ、と持っていくのだという。 内容で迫り、納得して申し訳なかった、と理解できるようにするべきだという。 A氏:「いじめ」防止対策推進法を改正して盛り込むべきだと考える点として、尾木氏は、「いじめ」への対応を最優先に位置づけたこと、情報共有、それと児童生徒の主体的な参画、の三つだと考えると指摘しているね。 私:しかし、これらは、「いじめ」が起きてからの話に主眼が置かれているね。 昨日のブログの「中等教育の再生 『脱ゆとり』で解決するのか」で、佐伯氏が指摘しているように、昨年度の小中高のいじめ件数は過去最多で22万件を上回り、小学校では、「いじめ」、暴力、不登校すべて過去最多となり、その一因に「脱ゆとり」あげているような原因の追及がないように感じたね。 A氏:このブログでは「いじめ」の原因にもふれた「『いじめ』関連知的街道」が以下のようにできているね。 「たけしの日本教育白書」、 イジメとゼロトレランス、「野球を学問する」、「教室内(スクール)カースト」、猪瀬都知事・乙武洋匡(都教育委員)対談、「体罰、いじめと日本文化の源流」、「第一線のデータ・ごまかし流行の世相」 私:人間は、集団で群れて生きているが、弱者への「いじめ」は宿命みたいなものだね。 「コミュニケーション操作系のいじめ」については、「生徒を閉鎖空間に閉じ込める学級制度がある限り、手立てが乏しい。原則絶望的であると考える必要がある。極論を言えば学級制度の廃止だ」という専門家もいるね。
2016.11.05
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私:任期終了間近のオバマ大統領の支持率は50%台と高いという。 渡辺氏は、そのオバマ時代とは何だったのかを、次の米大統領が決まる前に、あらためて考えてみたいという。 オバマ大統領に関して最も印象的なのは、強靱な理想主義者であると同時に、冷徹な現実主義者であるという点であるという。 A氏:例えば、5月の広島訪問は、現実主義の立場に立てば、現職米大統領の被爆地訪問は政治的リスクでしかないが、究極の目標としての「核兵器なき世界」という理想主義なしではあり得ない大胆な行動だったという。 その一方で、実現するにあたっては、数年かけて入念に布石を打ち、国内外の世論とタイミングを慎重に見定めたという。 私:同様に、再生可能エネルギーや環境技術の重要性についても、一昔前の「環境運動」とは異なり、産業競争力や国家安全保障、ひいては米国の倫理的権威の回復のためという位置付けがなされ、単なる理想として終わらせることなく、ハードパワー(軍事・経済力)とソフトパワー(規範力)の源泉と捉えることで、現実との取り結びを図ったという。 A氏:理想なき現実主義も、現実なき理想主義も、不毛であるという信念。 理想主義と現実主義という二項対立の昇華にこそ「オバマイズム」の本質と真骨頂があった気がすると渡辺氏は指摘する。 私:もう一つ印象的なのは、新たな時代の変化に合致するよう、彼が米国の自画像(アイデンティティー)を刷新しようとした点だという。 就任演説で無宗教者の尊厳を擁護したこと、米大統領として初めて同性婚支持を表明したことなど、白人やキリスト教徒の比率が低下し、人口構成や価値観が多様化する米社会を象徴するものだね。 A氏:格差拡大や中流層の没落、リーマンショックなど、「自由」の名の下に社会正義がむしばまれている状況を是正すべく、金融規制改革や医療保険制度改革(オバマケア)など、連邦政府による規制や関与を強化したね。 真の「自由」のためには、放任主義ではなく、政府の一定の介入が必要だとする米国流のリベラリズムの再生だね 私:しかし、その分、保守派からの反発はすさまじかった。 次に対外的には、「米国は世界の警察官ではない」と公言し、第2次世界大戦後の米国の自己認識を修正したね。 それは、孤立主義と同義ではなく、歴史的なパリ協定の締結に見られる気候変動への対策や核拡散防止といったグローバルな課題では、むしろ先導的な役割を果たした。 A氏:もっとも、オバマ外交への批判には、「世界の警察官」という往年の米国イメージにとらわれすぎているものも少なくない。 「弱腰外交」と批判する側から説得力のある代替案が提示されているかというと心もとないと渡辺氏はいう。 また、政治経験が浅いまま一気に大統領の座を射止めたことや、孤高と思弁を好む性格もあり、泥臭い根回しや駆け引きが不得手な面があげられよう。 私:しかし、この8年間、大きな醜聞もなく、清廉潔白かつ冷静沈着な態度を貫いた点には保守派からも称賛する声がある。 演説ではつねに独立宣言や合衆国憲法の精神に立ち返り、民主主義における調査報道の重要性を繰り返し説いたのもオバマだった。 トランプとの落差に困惑を禁じ得ないと渡辺氏はいう。 A氏:オバマ旋風が世界を席巻した8年前、日本でも「オバマ本」が平積みされ、オバマの演説は多くの英語学習教材にもなった。 他国の指導者では考えられない特異な光景だったが、そうした時代はもう来ないのかもしれないと渡辺氏はいう。 私:米大統領が辛うじて輝きを放っていた最後の時代。 それがオバマ時代だったのではないか。 現在の大統領選直前の喧騒のなか、そんな思いが心をかすめると渡辺氏はいう。 まさに泥仕合となっているクリントン、トランプ氏の大統領選をみていると、オバマ時代がなつかしくなるだろうね。
2016.11.04
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私:佐伯氏は「さらば、資本主義」(新潮新書)を昨年出版しているが、本来、保守の論客だね。 今月は、日本の中等教育の問題をとりあげていて、まず、有名なフィンランドの教育改革にふれているね。 A氏:このブログでも数年前に「フィンランド教育知的街道」ができていたね。 「競争やめたら学力世界一・フィンランド教育の成功」福田誠治著・06年5月朝日新聞社刊・2の1、2の2、「受けてみたフィンランドの教育」、「教育立国フィンランド流 教師の育て方」、「フィンランドを世界一に導いた100の社会改革」 私:佐伯氏は フィンランドの教育改革について、2003年のOECDのPISA(学習到達度調査)でいきなりトップに躍り出た理由を教育大臣にインタビューすると、宿題を廃止して、放課後は外で遊ぶように指令を出した、すると学力が上がったとして、いつも勉強ばかりしていては頭もはたらかなくなるでしょう、と言った言葉を引用しているね。 A氏;佐伯氏は、かたや日本では、国際的な学力順位が低下したといい、教科書を分厚くして、授業時間を増やし、英語は小学校から始めるなっていて、学力低下の原因は、授業がまだ足りないからだ、というのが問題だと指摘している。 私:PISAのランクを上げるため「もっと授業を」ということになっていて、こうなると、学力的にできる生徒とできない生徒の差はいっそう開き、できない生徒はますます学校が面白くなくなり、学校間でも格差ができ、学力向上の方針が、いじめや校内暴力をいっそう激化する結果につながりかねないという。 A氏:昨年度の小中高のいじめ件数は過去最多で22万件を上回り、暴力行為も約5万7千件でこれも増加し、小中の不登校は12万6千人で3年連続増加。 小学校では、いじめ、暴力、不登校すべて過去最多となったことを問題視しているね。 私:佐伯氏は、今日の中等教育はあまりに問題を含みすぎており、どこから手を付ければよいのか、途方に暮れるといった状態にあり、ストレスを抱えているのは教師も同じで、先の、暴力行為の14%が教師に向けられているという事実をみても、今日の学校の状況が推し量られるという。 A氏:佐伯氏は、また、公立中学校の教師の負担は、教職という職種からすると想像を絶するような忙しさで、週に25時間の授業をしつつ、それぞれの業務のほかに、部活、会議、素行不良生徒への対応等が続き、帰宅は深夜近くになるという。 ある調査によると、フィンランドの教師の学校滞在時間が1日あたり7時間なのに対して、日本は平均11時間半におよぶ、という。 私:そこへもってきて、日本では土曜、日曜も部活のために出なければならない。 OECDの調査によると、加盟国の週平均勤務時間が約38時間で、日本は54時間にもなっていて、多い教師はこれをはるかに超えるだろうという。 A氏:佐伯氏は、おそらく日本において学力レベルでトップクラスの子供たちは世界水準でもトップレベルで、彼らは多くの機会にめぐまれその多くは充実した学校生活を送っているのかもしれない。 しかし、平均から下へかけては、学校自体が面白くなくなってしまい、しかも、いじめや校内暴力、不登校の場合、子供からすれば、家庭がうまくいかず居場所がなくなっているケースが多く、これは、学校だけの問題ではなく社会問題でもあると指摘する。 私:佐伯氏は、フィンランド方式は、人口550万人ほどの国と日本の比較はあまり意味はないし、フィンランド方式を日本に持ち込むのは無理であろうが、フィンランド方式とは、一種の「ゆとり教育」であり、平均以下の子供の底上げを狙って個々の子供に合わせた学習を採用するものであったとしている。 日本は逆に「脱ゆとり」で、ますます子供にも教師にも負担を強いる方向へ向かっており、一度、どこに問題があるのか、現場の教師の見解も含めて大規模な調査と議論を行うべきときであろうと提案しているね。 A氏:しかし、1998年の改訂で学習内容を3割削減した「ゆとり教育」路線を2010年ころまで進めていたのではないのかね。 そして、それが、国際学力の調査で順位が下がった原因とされ、08年改訂で修正し、「脱ゆとり」路線に変わったのではないのかね。 私:その「ゆとり教育」は、詰め込み教育に反対していた日教組や教育者、経済界などの有識者などから支持され、2010年台初期まで実施されていたんだが、生徒の学力が低下していると指摘され、批判されるようになり、「脱ゆとり」になったのではないのかね。 佐伯氏には、「脱ゆとり」の失敗でなく、その前にやった「ゆとり教育」の失敗をもっと追及してもらいたかったね。
2016.11.03
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A氏:昨日、このブログで、TPPで重要な問題である「ISDS条項」にマスコミがあまりふれていないと指摘していたが、日経ではこれにふれ、知的所有権、ホルモン飼料で育てた肉類、遺伝子組換え食品などの具体例をあげ、まだ審議不十分で参議院での審議に持ち越されるだろうと報じていたね。 私:今朝の朝日新聞は、TPPの「大西洋版」ともいえる、EU加盟28カ国と米国の「環大西洋貿易投資協定(TTIP)」との比較を通じて、「ISDS条項」にもふれているね。 TTIPは、締結されれば、関係国の国内総生産(GDP)で世界の約半分を占め、TPPをしのぐ巨大経済圏となる。 A氏:欧州らしく、「秘密交渉」への批判は強く、EUの行政を担う欧州委員会は15年、EU側の提案資料などをネット上に公開し、その他の非公開資料も欧州議会などの議員に限って閲覧できるようにした。 秘密交渉で進められたTPPと違い、TTIPは、交渉過程がある程度公開されていることが、関心の高さにつながっているようで、米国主導のルールに組み込まれることや、食の安全が脅かされることへの危惧を抱いた市民が反対の声を上げていて、自由貿易交渉が難航を極めているという。 私:欧州各地で反対デモが続き、当初はオバマ米大統領が退任する来年1月までの合意を目標としていたが、すでに断念され、ドイツのガブリエル副首相兼経済・エネルギー相は8月下旬、「米国との交渉は事実上失敗した」などと発言したという。 A氏:TTIPへの最も強い批判の対象は、やはり、TPPにも含まれている「ISDS条項」だね。 もう一つの焦点が食の安全性で、EUは遺伝子組換え技術を利用した食品などに独自の規制を設けているのに対し、米国は「科学的根拠がない」などとして規制の撤廃を求めているが、ドイツ国内の世論調査では9割以上が食の安全性について「欧州の基準のほうが信頼できる」と考えており、交渉には、こうした民意が反映されているとみられる。 私:この記事の「考論」欄で、「独に広がる反グローバリズム」と題して、ベルリン自由大学大学院、コネリア・ライヤー助教授のコメントを以下のように載せている。 日本ではTPPに対して、農業団体を中心に反対運動があったが、ドイツではTTIPに対して、より広い層に反発が広がっていて、市場を重視する米国への反発、反グローバリズムの意識が日本より強いという。 A氏;TPPが秘密交渉で進められたのに比べ、TTIPではEU側が情報を公開しているので、市民にとって批判の材料が整っていることもあるね。 現在の自由貿易の仕組みの下では、メリットを享受できるのが大企業とそこに働く人々だけに限られており、格差は広がるばかり。 私:日欧と比較すると、安全保障上の構図が影響しているという。 日本は中国と相対する上で、米国を必要としているため、貿易交渉で強く出ることができなかったのではないか。 一方、欧州はNATOに参加する形で安全保障の面で米国と関わっており、直接的な影響は日本ほど強くないという点が有利に働いているという。 TPPも、TTIPもグローバリズム批判がからんで先が読めないね。
2016.11.02
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私:政府がTPP法案の今国会での成立を急いでいるのは、次期大統領候補者2人が反対なので、11月8日の大統領選までにせめて衆院を通過させ、次期大統領に再交渉を要求されても応じる考えがないことを示しつつ、オバマ政権には残り任期のうちの批准を後押しできると考えているからだね。 A氏:しかし、米議会の反対論は根強く、日本の思惑通りにことが運ぶか不透明だね。 協定参加の12カ国で国内手続きを完了させた国はこれまでゼロだね。 私:俺がTPPで一番、気になるのは「ISDS条項」だね。 このブログでも「ISDS条項」知的街道ができている。 TPP・世論調査の矛盾 、「TPP・インドネシアから見える『壁』」 、 ISD(S)条項の問題、浜矩子氏の金融緩和毒薬論、「TPPを歩く」、「TPP 消費者への深刻な脅威だ」、などとある。 やはり、TPPの中で、一番問題は「ISDS条項」だね。 A氏:新聞でも、31日は外国企業と現地政府の紛争解決の方法「ISDS条項」などについて与野党が議論したと報じている。 審議では、公明党の中川康洋氏が「(日本政府が賠償を求められるといった)様々な懸念の声も聞かれる」と指摘。 私:こうした見方について、石原TPP担当相は「(食の安全や環境保護など)公共の福祉目的の措置が提訴されることは考えられない。むしろ日本企業の海外展開に重要な制度だ」と主張し、参考人質疑では与党推薦の鈴木五十三弁護士が「ISDSは投資家と受け入れ国の論争の場。投資仲裁のよき模範となりうる」と評価。 A氏:一方、野党推薦の岩月浩二弁護士は、他の経済協定にも同種の条項があって米国企業の勝訴が多いことを説明。 「(米国企業が)日本政府に対して使わないわけはない」と述べ、さらに、大規模パイプラインの建設許可を温暖化対策の観点から拒んだ米国政府がカナダ企業から150億ドル(1兆5千億円)を支払うよう訴えられた事例を紹介し、政府が多額の賠償責任を負う可能性を心配したという。 私:マスコミはTPPの強行採決ばかり報じて、日本国民の安全を脅かす恐れのある「ISDS条項」に焦点を合わせた報道をあまりしていないね。
2016.11.01
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私:明日から11月、11月8日の米大統領選がいよいよ近づいてきたね。 A氏:このブログの大統領選知的街道でもとりあげてきたが、今度の米国大統領選でのトランプ現象は、底流にアメリカの社会変化があるんだね。 私:NYタイムズは、反トランプだが、このコラムの記事もそれを反映しているね。 米国社会に停滞感があるとして、近く発表される調査結果では、一般的な世帯の資産額は1984年と比べ14%減。 裕福な人とそれ以外の人の平均余命の差も広がり、ひとり親や親のない子は70年代から倍増し、中流家庭の学生や貧しい学生は大学を中退するのが当たり前になっているという。 A氏:日本も似たような状況だね。 私:しかし、筆者は それなのに、国民は停滞に伴う問題の緊急性を十分に自覚していなかったが、この1年、米国の人々のいらだちの深さと広さが浮き彫りになったという。 最も生産的だったのは、人種差別が進歩を阻害するという点に光を当てた「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」と呼ばれる運動。 一方、最も危険だったのは、ドナルド・トランプ氏が大統領選候補の指名を獲得したことで、彼は民族的な憎悪をあおり、経済面での欲求不満を利用して政治的支持を集めた。 A氏:筆者は、米国が今直ちにすべきことは、トランプ氏を拒否することだが、それだけでは十分ではなく、拒否するだけなら、「トランプ主義」はもっと抜け目のない代表者とともに戻ってくるだろうという。 私:真の解決策とは、大多数の米国人にとって生活の質を向上させるものでなければならないと筆者は指摘する。 それは、より質が高く、平等な学校を意味し、より公平な税制を意味する。 司法制度の改革を進め、労働者に十分な賃金を支払うよう力を入れることでもある。 筆者は今の風潮が続けば、米国はすべての人にとって生活しにくい場所になるだろうと警告している。 A氏:トランプ氏の発言は、大統領選と同時に行われる連邦議会上院選にも影響し、民主党が過半数をうかがう勢いで、現在、過半数を持つ共和党は、過半数失う可能性があり、苦戦しているという。 私:上院の構成変化はTPPや最高裁人事の行方にも大きな影響を及ぼす可能性があるね。 ところで、間際になって、クリントン氏のメール問題で、FBIの捜査再開が報じられたが、FBIは、公表せず捜査を進め、選挙後に重大な事実が見つかった場合の問題性を考慮して公表に踏み切ったとみられるという。 まだ、両者の支持率に大きな差がないが、今度の大統領選は、米国の停滞を反映して、どうなるか、予測がつかないね。
2016.10.31
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私:この欄では、関連する著書3冊をとりあげて論じているね。 ところで、8年前にオバマ大統領を誕生させたあの熱狂と興奮はどこにいったのかね。 「初めての女性大統領」を実現するはずの、民主党のクリントンは反乱する若年層の不支持に苦しみ、対する共和党も“獅子身中の虫”トランプの跳梁で四分五裂。 さらに、全米では警察の過剰暴力への抗議が吹き荒れている。 なぜこんなことになってしまったのだろう。 生井氏は、背景になるポイントは三つあり、それは「人種」、「階級」、そして「メディア」であるという。 A氏:人種問題については、オバマは「初めての黒人大統領」といわれるが、彼自身は当初から人種を争点にせず、差別の克服と融和を呼びかけたが、そこに白人保守派からの「黒人大統領を実現させたアメリカは既に人種問題を克服した」とする論理がからみつき、「脱人種」の理念が「人種問題を脱した」と読み替えられ、転倒させられたという。 私:被差別の立場にあった黒人層が「割れた」契機が、差別是正措置(アファーマティブアクション)で、都会の黒人地区が貧困と犯罪で苦しむ中、成功を手にした一部の黒人中流層の間で、是正措置はかえって「人種の誇り」を奪い、福祉へ依存させるとした議論が生まれたという。 10年は茶会党(ティーパーティー)の跋扈が物議をかもした年だが、「自助」や「自己責任」をさけぶ黒人保守派が突きつけた問いは茶会党より手ごわいという。 A氏:黒人層も割れたんだね。 ところで今回の選挙戦では、トランプ支持層が「低学歴・白人・男性」中心だと報じられたが、これは「新下層階級」と重なるという。 高潔な義務感のない高学歴集団が「見かけ倒しのエリート」をなし、労働者階級は貧困に沈んで「結婚、勤勉、正直、信仰」と無縁の「新下層」に転落したという見方もあるという。 この危機が白人社会を直撃し、昔ながらの地縁を介した堅実な庶民のアメリカが消滅したとう。 私:おそらく今日のトランプ現象の主役はこうして市民的紐帯を失ったまま、テレビやネットの前で「仲間」を見いだした人々でもあり、それはいわばメディア観客の「疑似共同体」だという。 この欄で最後に取り上げられた町山智浩著『さらば白人国家アメリカ』はこの「疑似空間」における主観世界の風景を描き出し、やじうま的サービス精神と生来の正義感が持ち味の著者が、今回はアメリカで子育てもした一人の生活者としてのアメリカ描写は、トランプ現象への切迫した危機感が行間から伝わってくるという。 テレビもネットもグローバルだが、本当の「空気」は、その地に足を着けてなければわからないのだと生井氏はいう。 早速、この本を図書館に検索したが、まだ未購入なのか検索にひっかからず、代わりに2年前に刊行された町山智浩著「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」を借りることにした。 図書館の内容案内には「アメリカでは、メディアの中立性などありえない。過激な報道やカネによる世論誘導があたりまえの国の実情をレポート!」とある。 予約者がすでに2名いるので、手に入るのは早くて2週間後になるだろう。
2016.10.30
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A氏:このブログでは、大学問題の「知的街道」で、まず、「『文系学部廃止』の衝撃」、その1、その2、その3で、文学部をとりあげたが、問題は文系だけでなく、理系にもあることが指摘されたね。 それが、まず、医学部の問題として大学病院の医療ミスの多発からこのブログで「大学病院革命」をとりあげられ、カナダやアメリカの大学には医学部はなく、医者になりたいものは、4年制の大学で、「リベラルアーツ」を学び、それを卒業して医学専門のメディカルスクールに行く。 そして、治療の腕があがれば、他の大学病院に呼ばれてでも治療をする。 私:理系の「リベラルアーツ」学習の登場だね。 そして、極め付きは、このブログの「東工大、集う文系の達人 中島岳志氏・磯崎憲一郎氏ら次々教授陣に 教養重視の伝統」だね。 東工大は、 理工系の国立大なのに、中島岳志、池上彰、磯崎憲一郎の各氏ら著名な人文社会系学者、文化人を、次々と教授陣に招き入れている。 全国的に文系学科を巡る状況は厳しくなっているが、東工大は「リベラルアーツ」の充実で志のある学生の育成にあたるという。 A氏:「リベラルアーツ」とは ギリシャ・ローマ時代の自由7科(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)を源流とする、人間を自由へと解き放つ人間形成のための学問を指す。 私:今日の朝日新聞の「記者有論」欄の筆者・三浦俊章氏は、この欄で米国の「リベラルアーツ」の視察団に同行してみてきた報告をしているね 「リベラルアーツ」は「一般教養」と訳されるが、実態は、訳語から連想される雑多な科目の寄せ集めとはまったく違い、三浦氏自身、特派員の仕事や米国の大学での研究員生活を通じて、多少知っているつもりだったが、「リベラルアーツ」教育の濃密さは予想以上のものだったという。 A氏:訪問先はプリンストン(ニュージャージー州)、スワスモア(ペンシルベニア州)、カールトン(ミネソタ州)、ポモナ(カリフォルニア州)の4校。 4校に共通するのは、思考の訓練の場としての作文教育で、単なる作文講座ではなく、個々の学生の興味、専門に応じて細やかな指導が進められ、カリキュラム全体が書く力の養成で貫かれていたという。 私:ポモナ大のオクストビー学長は、「いまトップ企業が求めるのは、コンピューター科学を専攻しながら、英文学を学ぶような人材です」という。 人間の理解やコミュニケーション能力が基本で、プリンストン大の幹部も「何を学ぶにせよ、卒業時には、いい文章を書けるようになっています」と請け負ったという。 A氏:週60時間の学習を前提にした宿題の量は半端ではなく、日本の大学を選ばず、東大、慶応、早稲田を中退して来た日本の学生に会ったが、勉強ざんまいの生活を送る彼らが語ったのは、一方通行になりがちな日本の授業への不満と、双方向性を重視する米国の教育の魅力だったという。 ポモナ大で見た新入生向けの授業は、アニメ、小説などを通じて現代日本文化などを学ぶコースで、十数人単位のクラスは、教員との質疑でたえず発言を求められ、1学期に4本のリポートを書かせ、作文指導には、上級生とリサーチを助ける図書館スタッフも加わるという双方向性だね。 私:彼らのような学生は少数だが、年々増えていて、自分の力だけを頼りに挑戦する姿はたのもしいが、日本の大学に魅力が乏しいことが一因であるとすれば、深刻で、大学教育に何を求めるのか。米国の作文重視は、大きなヒントになると三浦氏は指摘する。 日本でもこのブログの「読解力伸ばせ、産学連携 国立情報学研究所・教育企業、新研究所設立へ」や、「プログラミング 小学生全員に必要か」と、「23日朝日新聞・日曜書評より」でとりあげられた読売新聞教育部〈著〉『大学入試改革 海外と日本の現場から』にあるように、20年度から小中高校で順次始まる次期学習指導要領の目玉は、「アクティブ・ラーニング(能動的学習)」で、明治以来の詰め込み教育から脱却し、対話型の21世紀型学習に大転換するという画期的なものなるという記事は参考になったね。 しかし、米国ではすでに大きく先行しているね。
2016.10.29
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私:日本最大の広告会社・電通の女性新入社員(当時24歳)が昨年末に自殺したのは過労が原因であるとして9月30日、労災が認められたね。 A氏:自殺を巡る一連の報道でクローズアップされたのは「月100時間」を超える残業時間だが、津田大介氏は、残業時間だけが独り歩きし、問題の核心が見えにくくなってしまっていると、この欄で指摘しているね。 私:俺もそう思うね。 朝日新聞は、「電通、過労自殺再び」というタイトルで、27日、28日と2日、上、下連載で特集していたが、27日の連載「上」では、「終業と退館、記録にずれ」「社員『上司指示でウソの時間申告』」と題して報告している。 28日の連載「下」では、「『鬼十則』の風土、今も」「最高裁判決の教訓 どこに」とまとめているね。 A氏:「鬼十則」とは「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂まではーーー」という、電通4代目社長で、「広告の親」と呼ばれた故吉田秀雄氏が1951年に書いたという10カ条の遺訓「鬼十則」の1節だという。 長時間労働を助長しかねない企業風土のもとになっているようだね。 私:それは、経営理念から来る長時間労働の原因だね。 このブログの「カルビー 女性奮闘、さくさく時短術」でふれたカルビーの松本会長のような経営理念による企業風土では、長時間労働問題は起きないね。 A氏:津田氏は、報道が過重労働に集中しているとして、もう少し多角的に論じられないものかと問題提起しているね。 私:津田氏は、マスコミがあまりふれていない1つの見方として、自殺した女性の具体的な仕事の内容の視点から、見ようとしているね。 自殺した女性のネット広告担当という仕事の特異性に着目した記事はごくわずかだという。 彼女の仕事は完成させて納品したら終了するテレビや雑誌の広告と異なり、広告表示用キーワードの調整やスケジュール管理といった運用を常時行う必要があり、これが担当者の負担を大きくしているという。 負担に応じて人月単位で依頼先に料金を請求するような仕組みに変えない限り、過重労働はなくならないという。 A氏:俺は、こういう業界の経験がないので、津田氏のネット広告の特異性の解説はよく理解出来なかったが、過重労働を誘発しやすい仕事なら、もっと、管理の工夫がされているべきだね。 私:もう一つの視点は、マスコミ報道に電通のマネジメント(労務管理)についての視点が少ないことだね。 部下の残業時間について係長、課長は、部下の仕事量についてどういう管理責任を感じているのだろうか。 部下のマネジメントを本当にしているのだろうか。 もっとも「社員『上司指示でウソの時間申告』」と朝日新聞が報じていたのであれば、完全にマネジメント放棄ということかね。 1991年8月に、電通に入社して2年目のラジオ局(当時)の男性社員が自宅で自殺して、最高裁の判決で電通は反省したはずなのにマネジメントは変わっていなかったんだね。 朝日新聞が、「最高裁判決の教訓 どこに」と報じたようにーーー。 A氏:批判の高まりを受け電通は午後10時の全館消灯を実施したが、これだけで解決するような単純な問題ではなく、同社に過剰な要求をする依頼主や業務の絶対量が減らない限り、単に社員が自宅に仕事を持ち帰ってサービス残業するだけだね。 私:ついでに、津田氏が、指摘しているのは、若い女性社員特有の問題――パワハラやセクハラに遭いやすく、泣き寝入りせざるを得ない日本の古い労務環境だね。 26日発表の16年の世界各国男女平等ランキング「ジェンダーギャップ指数」で日本の順位は144カ国中111位と過去最低レベル。 A氏:これも、このブログの「カルビー 女性奮闘、さくさく時短術」を見習うべきだね。 私:津田氏は最後に「前途ある若者の死を無駄にしてはいけない。報道で浮き彫りにできていない論点を直視し、本件をきっかけに様々な仕組みを改革できなければ日本に未来はない。彼女を死に追いやったのは、解決方法がわかっているのにそれを長年意図的に放置してきた我々全員なのだから」と指摘している。 電通の問題は、このブログの「ホーソン実験以後の社員重視経営の『取り戻し』」でふれたように、ブラック企業の多発にみられる日本企業のマネジメントの劣化の氷山の一角だね。
2016.10.28
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私:フランスは来年春に大統領選や国民議会(下院)選挙があるが、ピケティ氏によるとフランス経済はよくないようだね。 A氏:(フランスを含む)ユーロ諸国は、2017年にはようやく07年の経済活動のレベルに持ち直す見込みだが、地域や社会階層の格差拡大を伴っており、とりわけ若者と低所得層は不完全雇用の度合いが高くなっているが、中国はもちろんのこと、08年の世界金融危機の発端の国であった米国も、柔軟な財政政策で景気を立て直したのに、一方のフランスは07年末の失業率は7%程度だったが、今年末は10%ほどが見込まれているという。 私:08年以降なぜ爆発的に失業が増えたのかというと、答えは緊縮財政で、より正確には財政赤字の削減を急ぎ過ぎたことにあるとピケティ氏は指摘する。 その結果、11~13年のユーロ圏の景気は急激に悪化し、今ようやく復調しているという。 A氏:来年春のフランスの大統領選や国民議会(下院)選挙では右派が勝利する可能性が高く、彼らが財政赤字の削減を急ぐ様子がないのは、この観点から見ると、良いニュースだが、本当に良いニュースにするには二つの条件を満たす必要があるとピケティ氏はいう。 まず、赤字の削減を急がないことで生じた「余裕」を、社会で最も立場が弱い人たちを守ることやそういう人たちの将来のための投資にあてるべきで、富裕税の廃止など、高所得者を対象にした大幅減税にこのお金をあててはならないという。 私:富裕層優遇は時代錯誤というのはピケティ氏の持論だね。 労働者を対象とした税負担の軽減を構造的に進めていくべきで、ようやく、左派が成立させた所得税の源泉徴収の仕組みを、右派が廃止に追い込むという愚に陥らないことも必要だという。 彼らが税や社会システムの近代化に関わり、将来世代のため年金制度の一元化を進めていくとさらによいであろうという。 A氏:さらに重要な二つ目の条件とは、右派と左派が共に、EUの予算基準の見直しのための代案を出すことだとピケティ氏は指摘する。 EU基準を毎度のように違反しているのに何も代案を示さないのはおかしい。 私:基準が厳しすぎるのだね。 機械的に基準をあてはめるという、いわば民主主義の「脱法行為」のようなことを続けると、経済の不測の事態に対応できなくなるということで、11~13年に、経済が再び停滞してしまったのはこのためだったという。 現行の基準では財政赤字はGDP(国内総生産)の最大0.5%以内の抑制が求められため、金利が上がり始めるとすぐに、数十年間にわたって、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の巨額の黒字化が必要になってくる。 参考のために書くと、EU圏内の学生の交流を促すプログラム「エラスムス」の年間予算は20億ユーロ(約2300億円)なのに対し、欧州の債務にかかる金利はすでに年間2千億ユーロ(約23兆円)に上るという。 A氏:1950年代、ドイツとフランスが過去の負債を帳消しにし、将来への投資を実現したことが欧州の復興につながったが、今ではこの事実が忘れ去られているという。 フランスの右派は非常に厳しい状況の中で政権に就こうとしているが、ピケティ氏は、この難局を乗り切る力量があることに期待している。 私:来春のフランスの選挙はどうなるのか、ピケティ氏が期待する右派が勝つのか、目が離せないね。
2016.10.27
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私:今週の「カイシャの進化」は、「ソフトバンクグループ」をとりあげているね。 「ソフトバンクグループ」の孫社長は今年7月4日、エーゲ海に臨むトルコの景勝地マルマリスで、英半導体設計会社ARM(アーム)ホールディングスのスチュアート・チェンバース会長(当時)とサイモン・シガースCEO(最高経営責任者)をランチに招き、打ち解けた雰囲気のなか料理を楽しんでいると、孫氏が切り出した。 「我が社なら御社の事業を加速できる。だから買収したい」。 日本企業として過去最高の3・3兆円の巨額買収という大勝負に出た瞬間だった。 それは、彼が10年越しで温めていた案だった。 A氏:パソコンのCPUは米インテルが制したが、携帯電話やスマートフォンの9割以上にアームが設計した中核回路(コア)が搭載されており、アームは低消費電力で小型化できる利点から携帯むけ回路設計で頭角を現し、今やアームのコアが組み込まれた半導体の年間出荷数は148億個以上にもなるという。 孫氏は、保有する中国ネット通販大手アリババ株を一部売却するなど2兆円余の軍資金を用意すると、一気に動き出した。 A氏:アームは1990年、英コンピューター会社から独立した12人のエンジニアが創業し、半導体業界でその成り立ちは特異。 インテルや東芝など半導体メーカーは開発から製造、販売まで自社で担う垂直統合型が一般的だが、アームは設計に特化し、回路の設計図をメーカーに売り、製品に搭載されたコアの知的財産権の使用料も収入源となり、量産工場は持たない。 売上高営業利益率は40%という好業績ぶりで、企図せずに進化したビジネスモデルとなった。 5~10年先の製品の回路設計に、いま取り組んでいるという。 私:シガース氏はソフトバンクとの相乗効果について「まったくない」と即答。 むしろ、孫社長は「次に何が来るのか」と非常に気にして、アームに集まる情報で未来を予測でき、ライフスタイルがどう変わるのか予見できるようになり、アームは孫氏にとって未来を見通す「千里眼」になりそうだという。 A氏:孫氏はこれまで「時間差」に商機を見いだしてきた。 インベーダーゲームで先手を打って稼ぎ、ネット検索のヤフーに出資するなど、事業を立ち上げたりして業容を拡大し、ネットの波は新興国にも広がるとみてアリババなど中国やインドのネット企業にも投資し、巨額の含み益を手にしてきた。 私:変化の際の目利きには自信があり、「I oT」に「人工知能」、そして「自動運転」で車はスパコン並みになると孫氏。 そのときにアームという「千里眼」があれば、成長分野への先行投資の確度が高まる。サウジアラビアの政府系ファンドと組んで10兆円ファンドを創設したのも、そうした文脈の延長線上にあるという。 A氏:ソフトバンクは9月、「ARM事業推進室」を設置。 元同社経営戦略担当部長で、アマゾンジャパンに転じた田中錬氏を呼び戻し、担当幹部に任じ、孫、田中両氏はアーム幹部を交え、「人工知能」や「I oT」にどう対応し、どんな分野に投資すべきか、毎週のように話し合っているという。 私:「I oT」と「人工知能」は、アームの力が生かされる高集積度の半導体の固まり。 膨大な情報を集め、即座に処理できる技術が整うと、有望視される製品の一つが実は「自動翻訳機」だ。 孫氏もそれに気づいていて、100件以上の特許をもつ孫氏は、相手の話す外国語がメガネに翻訳されて表示されるアイデアを思いつき、「メガネ型表示装置」の特許を取得した。 彼が留学中に初めて取り組んだビジネスは、後にシャープに1億円余で売れた「音声つき電子辞書」の開発だったという。 「姿形は変わっても情報革命を志向する点は40年間変わらないんです」と孫氏は言うという。 そういう「自動翻訳機」ができれば、日本人は英語に苦しむことはなくなるかもね。
2016.10.26
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私:リチャード・ハース氏は、米有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)の会長。 氏は、大統領選の醜悪な様相に懸念している。 米国のイメージにかかわり、個別の政策に異論はあっても、米国が他国から尊敬される国であってほしいと思い、それが、米国の影響力の一つの形だからだという。 A氏:TPPを批准できておらず、インフラや移民制度も近代化できず、財政赤字問題も処理できないという事実も、米国の信頼性への疑問につながっていて、米国政治の機能不全の深まりと、北朝鮮や中国の問題など世界中で難しい問題が同時に生じていることなど、非常に心配な組み合わせだという。 私:外交について、氏は、クリントン氏は、貿易を除いては、伝統的なアメリカの外交政策の枠内にいると思うが、TPPへの反対は残念で、当選したら、自由貿易を支持する道を探ってほしいと思うという。 トランプ氏は戦後の米国の外交政策の主流の外側にいて、彼は、米国が世界と関わることによって利益を得る、という考えに懐疑的。 彼はコストを誇張し、良き同盟や、欧州や太平洋での安定性によって米国が享受する戦略的利益を過小評価しているように見えるという。 米国が世界への介入をより少なくすれば、世界がより混乱し、その混乱の結果から、米国が逃れることはできず、米国は、不介入によって、逆に、ずっと多くの犠牲を払うことになるという。 A氏:シリアで化学兵器が使用された後に、オバマ氏が前言を撤回した(武力行使をしなかった)のは誤りで、米軍をイラクから撤退させることにも、氏は反対したという。 イラクに侵攻したブッシュ大統領の全く異なった種類の失敗に対して、オバマ氏は過剰に反応したとみる。 私:米国の「孤立主義の誘惑」が強まっているのは、イラク・アフガニスタン戦争では、200万人以上のアメリカ人が動員され、多数の人命が犠牲になり膨大な費用がかかったにもかかわらず、その成果が見えず、米国が失ったものと、得たものの間には、巨大な不均衡があるという。 (世界金融危機の起きた)2008年以降、経済的な難局が続いていて、正規雇用者の割合は、08年以前の水準に戻っていないからという。 A氏:しかし、米国は、戦後、自らが成し遂げたことから、多くの利益も得てきた。 日本や韓国との関係もそうだし、冷戦下や冷戦後も欧州への支援や協力関係は、米国にとってもプラス。 世界との関与を減らすことで、米国が何を失うのか、それを説明できていないのは問題だという。 私:大統領選終了後、新政権誕生までにTPPが議会で承認される可能性について、氏は、トランプ氏が当選すれば、おそらく可能性はゼロで、クリントン氏なら少しは可能性があるかもしれないが、クリントン氏の場合、より現実的なシナリオは、2、3年、議会と大統領との間で対話がなされることで、共通理解が生まれれば、TPPについての投票も可能かもしれないという。 氏は、議会も政府も格差で分断された状態が続き、保護貿易、孤立主義の圧力は続くだろうとみている。 A氏:中低所得者層の怒りが、孤立主義への支持につながっているのではという考えに対して、氏は、社会には、常に不平等が存在してきたが、階層が固定されず流動化していれば良いのだが、ここ10年か20年、多くの米国人は上の階層に行くのが難しいと感じているため、大きな憤りを感じ、保護主義、孤立主義的傾向が強まっているとみている。 必要なのは、階層を上れることを、現実化することで、そのためには、米国人が受けられる教育や職業訓練の質の向上が重要だという。 私:トランプ氏の日本が在日米軍の駐留経費をもっと払うべきだとの主張に対して、氏は、「日本が米軍の駐留経費の負担を少し増やせるのなら、それは歓迎ですが、より重要だと思うのは、日本の国際的な役割の増大だと思います」としている。 日本は、オバマ大統領に賭けてTPPの国会承認を急いでいるが、米国の「孤立主義の誘惑」をかわせるだろうか。
2016.10.25
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今週は、書評欄よりは読売新聞教育部〈著〉『大学入試改革 海外と日本の現場から』と、「著者に会いたい」欄からは、ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(上・下)の2点に興味を持った。 1.読売新聞教育部〈著〉『大学入試改革 海外と日本の現場から』・評・諸富徹(京大教授・経済学) 2020年度から小中高校で順次始まる次期学習指導要領の目玉は、「アクティブ・ラーニング(能動的学習)」で、明治以来の詰め込み教育から脱却し、対話型の21世紀型学習に大転換するという画期的なもの。 だが、大学入試が旧来型のままなら、大学合格のために受験生は結局、知識の多寡を競わされるので、大学入試改革なしには「能動的学習」は完結しない。 本書は、世界から注目される米国の大学入試、それに範をとった台湾、韓国における入試改革、そして日本でも始まった大学入試改革を、国際比較の中で丁寧に描く優れたリポートだという。 米国の大学入試が日本と大きく異なるのは、入試の点数といった単一尺度ではなく、エッセー(小論文)、高校の成績と課外活動の報告、面接など様々な材料を用い、多角的に人物を評価する点だという。 多様な価値観、経験、考え方をもつ学生を受け入れ、そこから刺激と新しいアイデアが生まれ、大学をさらなる発展に導くというわけだ。 こうした入試を行うため、米国の大学は多数の優秀な入試専門スタッフを雇用し、彼らに学生選抜の権限を与え、入試業務に専念させている。 よい入試を行うには、それにふさわしい投資が必要だというわけだ。 日本の大学も近年、推薦・AO入試の拡大など入試改革が進展し、優秀な学生獲得で成果を上げ始めた。 背景には、学生のバックグラウンドの均質化、入学後の学習意欲の低迷、そして主体的・能動的な学習への不適応といった現状への大学側の危機感があり、大学合格で燃え尽きる受験秀才ではなく、入学後も高い意欲をもつ潜在力豊かな学生を見出すには、その選抜方法の変革は不可避であろうと評者は指摘する。 学生だけでなく、昨日のブログの「タレントの自由とは 事務所、強い影響力 SMAP解散から考える」で扱った「個性なきタレント」を連想すして、日本の若者の自立性を促進する社会を望みたいね。 2.ユヴァル・ノア・ハラリ氏著『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(上・下)・文・吉川一樹氏 中世ヨーロッパの軍事史を専門とする研究者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が「一つの時代、事件ではなく歴史の全体像を示したい」と挑んだこの労作は48カ国で出版され、世界的ベストセラーになったという。 著者が影響を受けた著書に、やはり人類史というテーマに取り組んだジャレド・ダイアモンド氏の『銃・病原菌・鉄』を挙げる。 「大きな問いに対して科学的な方法で答えている。しかも一般の人にも分かるストーリーにして。執筆の一つのモデルになった」。 氏に2度会い、刺激を受けたという。 この『銃・病原菌・鉄』は、下記のようにこのブログで8日間にわたり要点をまとめている。 下巻が 6の1、6の2、6の3、6の4、6の5、6の6。 上巻が、2の1、2の2。 本書は人類の歩みを、言語獲得による「認知革命」、農耕を始める「農業革命」、そしてヨーロッパ発の「科学革命」を軸に論じた。 ユニークなのは、大変革が人々の幸福にどう関係したかという視点で、たとえば農業革命によって、人々は狩猟採集より過酷な単純労働を強いられ、一面では不幸になったと考える。 「人類は、より大きな力を得ることにはたけているが、その力を幸せに転換する能力は高くない」と喝破する。 未来に楽観的か、悲観的かと著者に尋ねると、一度スルーされた。 「リアリストとしては前もって評価することは難しい」というのが真意だったそうだ。 歴史家は、「人工知能」や「遺伝子工学」が起こすであろう「今までで最大の革命」の姿を見定めようとしていると吉川氏はいう。 「人工知能」や「遺伝子工学」は、「科学革命」の次の新しい「革命」になるのだろうか。
2016.10.24
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私:SMAP解散については、ジャニーズ事務所は一連の経緯について「取材には応じられない」としているが、背景には独立をめぐる問題があったようだね。 A氏:お笑いコンビ・爆笑問題は1990年、当時所属していた事務所から独立したが、その後テレビの仕事が激減。 現在所属する事務所「タイタン」の社長で太田さんの妻の光代さんは「事務所が作った人気を自分たちのものと勘違いした。仕事は事務所が取ってきた『事務所の枠』で、本人たちの実力ではなかった」と話しているという。 私:元大手事務所関係者は「独立や移籍をしたら、しばらく干されるのは避けられない」とし、人気が出た直後に独立されると、事務所は人材の発掘や育成、宣伝などに投じた資金を回収できないからだという。 A氏:大手事務所がよく使うのが『共演NG』というカードというのがあるという。 テレビ局に「○○さんが出るならうちのタレントは出演させられない」と告げるというものだね。 大手事務所がドラマの出演者や主題歌、脚本にまで口を出すなど番組制作への関与が年々強まっており、ドラマで事務所の意向に反した俳優を使おうとしても、別のバラエティー番組でその事務所のタレントが使えなくなるという。 私:大手事務所は多数の番組にタレントを送り込んでいて、例えば、ジャニーズ事務所と吉本興業のタレントが主役や司会を務める主な番組は、NHKと在京キー局で週に計100番組を超えるという。 A氏:こうした寡占化の現状について、日本テレビの大久保好男社長は9月の定例会見で、テレビ局が自ら新しい才能を育てることも重要といい、テレビ朝日の早河洋会長は「スターとは大衆が決めるもの。事務所の影響力に右往左往しているかのように思われるのは残念」と話したという。 私:これでは、政界の自民党独占同様、テレビ界は大手事務所独占だね。 海外では、仏紙ルモンドが、SMAP解散を「今後のソロ活動で数々の困難が待ち受けている」などと報じたという。 日米のエンタメ業界に詳しい放送プロデューサーのデープ・スペクター氏は、「日本のタレントの多くは経験も技術もない素人。仕事を得られるのはプロダクションのおかげで、力関係で下になるのは当然」と指摘し、「米国では俳優や歌手らタレントがあくまでも主導権を握り、マネジャーを雇う」という。 A氏:米国で映画の制作や監督をしている細谷佳史氏は、映画やテレビの俳優らが所属する俳優組合の存在を挙げ、経験が少ない俳優は組合に入れないなど、実力主義が徹底されていて、演技力や知名度を持つ人気俳優が移籍問題で仕事を失うことは想定しにくいという。 私:このSMAP問題は、このブログでも「SMAPの謝罪」でとりあげているが、そこで、ジャーナリストで政治メディア「ポリタス」編集長の津田大介氏は、「今回の騒動は単なる芸能ゴシップではなく、雇用者が被雇用者や取引先に圧力をかけ独立を阻害するパワハラ・独占禁止法的な問題、―一企業が公共の電波を私用することを許したテレビ局のガバナンス・独立性の問題、経験を重ねた年長者が固定観念に囚われ、若い才能を潰す組織構造――今の日本が抱える様々な社会的閉塞を象徴する出来事だ」と論評していたね。 また、米ロサンゼルス在住の映画ジャーナリスト猿渡由紀氏は「こんな騒動は、アメリカでは絶対に起こり得ない」と書いていたね。 日米の違いが、これほど違う業界はないのではないか。 個性の育成を重視するアメリカ社会はさすがだね。
2016.10.23
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私:民放各局の昼の番組は、知事会見や都議会の生中継など「小池劇場」の状態が続いているね。 背景には、ネット時代の各局の思惑や視聴者の傾向、小池氏のメディア戦略が絡みあうとして、この記事はそこに焦点をあてている。 A氏:18日午後、日本テレビ系、TBS系、フジテレビ系の報道・情報番組は、一斉に都庁での小池氏とIOCのトーマス・バッハ会長との約40分に及んだ会談の一部始終を、各局ともCMをほとんど入れずに報じたね。 私:「情報ライブ ミヤネ屋」は約2時間の放送時間で、野菜価格高騰や芸能情報も扱う予定だったがで、バッハ会長会談でポイントになる発言が出たことなどから、放送中に「これで押し切ろう」と予定を変更。 午後2~4時の時間帯は、10年前に放送が始まったミヤネ屋の人気が根強く、他局はドラマの再放送が多かったが、こうしたなか、TBSとフジが昨春、都政の話題を番組の中心に据え、小池氏が都知事に就任した8月から9月7日までの平均視聴率は関東地区8・4%、関西地区8・5%と、5%で合格点と言われる時間帯だが、10%を超える日もあったという。生の情報番組を復活し、生放送でテレビの強みを発揮しようと各局はもくろむ。 A氏:午後2時台は記者会見が開かれることも多く、小池都政はこうしたテレビ側の思惑にもぴたりとはまったことになるね。 私:小池氏のメディア利用の巧みさを指摘する声もあるという。 小泉元首相や橋下前大阪市長などテレビが好んで取り上げた政治家と比較し「小池氏の方が上」だという。 「無礼な質問も受け流し、最後にニコッと笑う。おじさんたちを悪役の『越後屋』に見せてしまう。つまらないドラマよりよほど面白い」という。 密室でおじさんたちが物事を決めているという政治へのあきらめから、風向きが変わったが、これを機に、普通の人が政治を考える動きが進むことができればいいことだね。 A氏:一方、メディアと政治の関係に詳しい稲葉哲郎・一橋大教授(社会心理学)は「メディアは知事が打ち出す話題に乗るだけでなく、過去の発言や公約と照らし合わせ、長期的にチェックしていくべきだ」釘も刺しているという。 私:しかし、当分、豊洲市場問題とオリンピック問題はテレビニュースの中心課題であることは続くだろうね。 俺は都民ではないが、多額の税金がどう使われるか、他人事ではないね。 それこそ、小池氏とともにブラックボックスをマスコミは破壊してもらいたいものだ。
2016.10.22
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私:カルタビアーノ氏は、1980年代、米スタンフォード大経営大学院を卒業した若い技術者として、ハイテク分野での米国の優位に、日本がとって代わろうとしているのを目にし、日本は世界から学び、そして追い抜いて、他国は追いつこうと苦しんでいたという。 A氏:ところが、現在は、シリコンバレーの光景は大きく異なり、日本企業の存在感は縮小し、米国企業はデータ分析、機械学習、ソーシャルネットワークなど成長著しく利益率が大きい分野で優位を取り戻し、日本はこうした最先端分野全てで後れをとっているという。 私:これは、このブログの「16日朝日新聞・日曜書評から」で、宮地ゆう〈著〉『シリコンバレーで起きている本当のこと』の本で、著者はシリコンバレー的な活気が日本に足りないことを懸念していて、インド系移民が互助組織的なネットワークを構築して同地域で近年大躍進している様子と対照的だと指摘しているが、同じ指摘だね。 A氏:カルタビアーノ氏は、日本に熟練した人材がいないということではなく、携帯電話のインターネットはNTTドコモとDDIが日本でスタートしており、2000年に、カメラ付き携帯を最初に作ったのはシャープだったという。 人工知能分野ですら、第5世代コンピューターでお金と人材をつぎ込んだのは日本企業と日本政府だったという。 私:ではなぜ日本は立ち遅れたのか。 カルタビアーノ氏は、多くの理由があるが、根本的と思われるのはオープンさに欠けることだという。 グーグルはスマートフォンの基本ソフト(OS)アンドロイドを公開しているし、いまやAIのツールも公開し始めている。 フェイスブックはデータセンターの基本設計を他社がコピーできるよう公開している。 A氏:日本は製造業の分野でも、遅れているという。 フォックスフォンやフレクストロニクスといった委託製造会社を使う動きが遅く、系列会社を好むため、日本のコスト構造は高いままで、供給網は需要の変化への反応が鈍いという。 私:これは必ずしも、カルタビアーノ氏の言うことは完全ではないね。 日本の製造業は、低コストを求め、中国や東南アジアに展開し、国内は「空洞化」した、 東南アジアに展開した製造工程は「サプライチェーン」と呼ばれるようにリンクしていた。 A氏:カルタビアーノ氏は、日本が変わるために、第一に、日本企業はシリコンバレーでの存在感を増し、アップグレードする必要があるという。 第二に日本企業は「日本らしさ」を薄めるべきで、成功する連携を築くためには、日本企業は世界最高の技術やマネジメントの才人を雇い、自社に定着させ、活躍させることができなければならないという。 私:それもカルタビアーノ氏が言うまでもなく、楽天やユニクロのように、英語を社内公用語にしたり、外国人の採用をしている会社が増加しつつあるね。 カルビーのように女性の積極的な登用を手始めに人事の「多様化」を進めているところもある。 カルタビアーノ氏は、日本企業は外国企業の買収を、企業資産やテクノロジーを得るためだけではなく、現地のトップの人材を取り込むために活用すべきで、それが、国際的に相互につながった世界に合わせて、日本企業の文化を変えていくことにつながるのだからという。 しかし、シャープは鴻海傘下に入り、今度、日産ゴーン社長が三菱自工会長になるなど、変化は進んでいるね。 だが、一昨日のブログの「ホーソン実験以後の社員重視経営の『取り戻し』」でふれた通り、「日本企業は文化を変える」のでなく、1980年代頃の日本企業の力を「取り戻す」べきだね。
2016.10.21
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私:神流川県茅ケ崎で開かれたサーフボードの上に立ち、パドルをこいでタイムを競う「スタンドアップパドルボード(SUP)」の国際大会で、当日の9月10日午前8時から、主催する地元のNPO法人「スタンドアップパドルユニオン」が、Tシャツ約360枚を外国人16人や中学生を含む選手170人、スタッフに配った。 A氏:同県の30代男性はTシャツを素肌に直接着て、参加した18キロのレースで、10キロを過ぎたあたりでピリッとした刺激をわきに感じ、ゴール手前の午後4時ごろには呼吸も苦しくなり、ゴール後は上半身が「ガスバーナーであぶられるような激痛」で、シャワーで20分ほど体を洗ったが、結局救急車で病院に運ばれた。 私:診断は薬品による「化学熱傷」で、胸や背中に赤紫色のやけど痕が残り、治療を受けており、体にどんな影響があるか不安だという。 湘南藤沢徳洲会病院(同県藤沢市)の皮膚科では約20人を診察。 数人は重傷で、背中の一部の表皮がはがれ落ちた患者もおり、診察した医師は「重傷者は皮膚が元に戻るまで約1カ月かかる可能性がある」という。 A氏:主催のNPO法人は、ロゴなどを印刷する際に使った薬剤の一成分「塩化ジデシルジメチルアンモニウム」が原因と考えられるとする報告書を公表。 国立医薬品食品衛生研究所によると、濃度などにもよるが、肌に直接つけば化学熱傷を起こすおそれがあり、大量の水で洗い流す必要がある成分だという。 私:この薬剤の製造元は三洋化成工業(京都市)で、広報部によると、食品工場の床の殺菌剤や靴下の抗菌処理剤として低濃度で使われており、「用途をすべては把握できていないが、衣類の印刷時に使うのは初めて聞いた」という。 A氏:なぜTシャツの印刷に使ったのか。 三洋化成工業の薬剤を購入したのは松井色素化学工業所(京都市)。 約1年半前から、インクの発色を良くする「前処理剤」として販売。 この「前処理剤」を、島精機製作所(和歌山市)が、印刷機器とともに星美製作所(茅ヶ崎市)へ販売。 私:どうやら、「前処理剤」の不適切な使用が原因のようだね。 オリジナルTシャツの発注は祭りやイベントにつきものだが、「前処理剤」の濃度や使用手順が適正だったかも検証が必要だとあるTシャツ製造業者は指摘しているという。 A氏:30社が加盟する一般社団法人日本オリジナルTシャツ協会の谷本昌英会長は「今回のような事故は過去に聞いたことがない。協会加盟社で材料の安全性を確かめるよう徹底する」と話しているという。 私:肝心のTシャツを印刷した地元の星美製作所はホームページに「深くお詫び申し上げます」と記載だけで、「前処理剤」の使用の有無、濃度管理などにふれておらず、説明責任を果たしておらず、最悪の管理状態を示している。 現場の濃度記録を見ればすぐわかることだが、そのレベルの現場作業管理がされていないということか。 「前処理剤」を間違って使用した明確な原因がまだよくわからないので、印刷されたTシャッツの着用は要注意だね。
2016.10.20
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