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私:フリードマン氏がソウルのホテルで身支度をしていると、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射し、東海岸沖に落下したというニュースが携帯に入るが、ホテルのシェルターへの避難警報を待ったが、警報はなく、朝食のビュッフェは大にぎわい。 A氏:韓国人の学生たちから「北朝鮮が攻撃したり戦争を仕掛けたりするとは思っていない」。「米国の人々の方が自分よりよっぽど北朝鮮のことで騒いでいる」という声を聞いたという。 私:それでフリードマン氏がわかったのは、米国が今、孤立した存在になっているということだという。 中国と韓国は考えを共有していて、両国が最も恐れているのは、北朝鮮の核ミサイルで吹き飛ばされることではなく、北朝鮮が経済制裁や米国による攻撃で崩壊してしまうことだという。 そうなれば、中国や韓国に難民や核物質がなだれ込み、多大な費用負担が生じ、中国にとっては、隣に核を保有する統一朝鮮が生まれる可能性もある。 A氏:一方、米国は北朝鮮が自分たちを吹き飛ばすのではないかと恐れていて、朝鮮半島の軍縮問題に詳しいロブ・リトワック氏は、トランプ米大統領によって破滅的な衝突に引きずり込まれるのではないかと韓国は恐れていると指摘。 韓国の研究者は「(北朝鮮の)金正恩氏よりトランプ氏を恐れる人もいる」と言う。 私:米国、韓国、中国は、北朝鮮をめぐり複雑な関係になっている。 中国と韓国は、北朝鮮が崩壊されては困るのであえて飢えさせない。 反撃されては困るのであえて攻撃しない。 米国も北朝鮮の核の脅威が本物だと認めることになるので金正恩氏と交渉しないし、そもそも約束を守る相手と思っていない。 A氏:フリードマン氏は、この状況から、中世の寓話を連想する。 その寓話とは、死刑を1年延ばしてくれたら王様の愛馬に歌を教え込むと約束し、罪人が命乞いに成功する話だ。 仲間に無理だと笑われると、罪人はこう答えた。「1年あればいろいろなことが起きる。王が死ぬかもしれないし、馬が死ぬかもしれない」。 私;これが各国の北朝鮮政策の現状で、「『何かが起きる』のを待っている。馬が歌い出すのを待つように」とフリードマン氏は言う。 あの米空母の日本海への展開はなんだったのか。 まさに「馬が歌い出すのを待つ」しかないとは名言だね。 最近では、韓国・文在寅政権はかなり本気で北朝鮮対策の一環として「2018年に開催される平昌冬季オリンピックに北朝鮮を平和裏に巻き込もう」とする動きを加速しているという。 「何かが起きる」のかね。 しかし「馬が歌う」ことはないだろう。
2017.06.26
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私:著者は、優れた業績を収める著名企業の経営者たちへのインタビューで、21世紀の「知識経済」に求められる働き手の資質として、「専門的知識の有無」がまったく挙がらないことに驚き、共通して重要とされたのは、「的を射た質問をする能力」「相手の目を見て対等に議論できること」、そして「他人と協調しながら仕事を成し遂げる能力」であったという。 A氏:その背景には、企業の組織構造や仕事の仕方の変化がある。 かつて大企業の組織は階層構造をなし、経営スタイルはトップダウンだったが、現在、組織はフラット化し、仕事はプロジェクトごとに部門の枠を超えたチーム編成で進められ、彼らは課題を与えられるものの、解決法は示されない。 中間管理的な仕事は減少する一方、製品・サービスの生産や顧客対応の最前線に立つ労働者は、現場で直接、思考力を働かせて課題を解決する能力が求められるようになっている。 私:著者のトニー・ワグナー氏は、米ハーバード大イノベーション研究所研究員で、同大学変革リーダーシップ・グループ研究所の創設者・共同ディレクターを歴任しているというが、ワグナー氏は、アメリカの学校教育をみると、現在学校で教えられている内容と、グローバルな知識経済で生きるのに必要な能力との間に、大きなギャップがあると指摘。 とくに公立学校は、知識の獲得を依然として主目的とし、その達成度を筆記試験でチェックする従来型から脱却できていないという。 A氏:21世紀型の優れた授業は、次の3つを含んでいるという。 第一は、つねに学び続ける能力の養成で、暗記よりも、論理的に考え分析する能力と、その結果を的確かつ巧みに文章、あるいは口頭で表現する力が重要。 第二は、学習の動機づけの養成で、議論、プロジェクト、実習、論文執筆などへの参加を通じ、疑問や興味を掘り下げる機会をもつことが、学習への動機づけとなる。 第三に、達成度は筆記試験ではなく、生徒の(口頭発表やエッセーなどの)パフォーマンスで評価することだが、筆記試験と異なって、パフォーマンス評価は難しい。 著者はしたがって今後は、評価基準(「パフォーマンス基準」)の研究開発に力を注がねばならないと強調する。 私:日本の新しい学習指導要領も、実は本書と同じ問題意識を共有している。 それで、連想するんだが、昨日のブログでふれた日本の若者の自殺が多いのは、このような自己肯定型の教育をうけていないためなのかね。 「売れてる本」欄では、汐街コナ〈著〉ゆうきゆう〈監修〉『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』をとりあげているが、ここでは、サーカスのゾウは足首のひもで地面の杭につながれているが、逃げ出そうと思えば力ずくで逃げ出せるはず。 しかし、小さいときから杭につながれているゾウは「抵抗してもムダ」という無力感が注入され、逃げる発想がなくなってしまうのだという。 A氏:今日の「働き方改革を問う」欄では「野放しのパワハラ、『殺してえ』上司から罵声」という見出しで、パワハラ問題をとりあげているね。 2015年1月28日、ヤマト運輸の長野県内の営業所で宅配ドライバーをしていた男性が行方不明になり、6日後に県内で遺体で見つかった。46歳だった。1月末ごろに自ら命を絶ったとみられる。 上司のパワハラの形跡があったという。 こないだの秘書に「ハゲ」などという暴言を吐いたという女性国会議員の問題と同様、このドライバーは上司の暴言を録音してあり、そこにドライバ-に対して「殺してえ」という暴言があったという。 私:人手不足だから、そんな企業から飛び出せばいいのに、何かの「ゾウの杭」で動けなかったのかね。
2017.06.25
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私:近年、15~34歳における死因の第1位が自殺の国は、先進7カ国で日本だけで、この層の人口10万人あたりの自殺者数は、日本は他の6カ国の平均の約2倍と、非常に深刻な状況にあるという。 A氏:日本で自殺が急増し、初めて年間3万人を超えた1998年当時は、中高年男性が目立ったが、2006年に自殺対策基本法がつくられ、ようやく社会的な対策が進み始め、ばらばらだった対策に連動性を持たせたり、相談機関が分野を超えて連携を図ったり、啓発活動を行ったりしたが、中高年の男性向けの対策が優先されて、若者向けは後回しになってきたという経緯がある。 私:全体の自殺者数が減る傾向にあるのは、社会的な対策が進んだことが大きく、ここ数年の減少は景気回復も影響しているようだが、若年層の下げ幅は小さく、景気がよくなっても、若者の自殺は深刻なままだ。 A氏:日本の若者は、自己肯定感が低く、日本社会に対する期待も失っている人が少なくないという。 日米中韓の研究機関が協力した「高校生の心と体の健康に関する調査報告書」(11年)によると、自分は価値がある、自分に満足しているという自己肯定感が、日本は極端に低いという。 長野県松本市などの調査では、小学生は自己肯定感が高いのに、中学、高校と、だんだん下がる傾向もわかるという。 国が16年に行った「自殺対策に関する意識調査」では、「生きていればいいことがある」に「そう思う」と答えた割合は、20代が最も低く、わずか37%で、08年の62%から大きく減っているという。 08年というとリーマンショックが起きた年で、09年から日本も不景気になるね。 その頃から、社会が変わってきたんだろうか。 私:清水氏は、自己肯定感が低くなると、過度に周りの評価を気にしがちとなり、評価を得ることが目的となり、自分の本意でないこともしてしまう。 そこまでやっても評価を得られないと、「何のために生きているのか」という感覚に陥る。これは、かつてより、若い世代に広がっている感覚のように思うという。 A氏:さらに、社会に出ると、就職活動での厳しい評価や長時間労働、不安定な雇用などにさらされる。 「死ぬくらいなら、会社をやめればいい」とも言われるが、まじめで責任感の強い人ほど、難しく、逃げ出さずに頑張り抜くことが善しとされる社会で、周りの評価や期待もあり、弱音を吐けない。 結果、どんどん追い込まれていき、若者たちからは「死にたい」ではなく「生きるのをやめたい」と、よく聞くという。 私:将来の夢や信頼関係、やりがいのある仕事や趣味などは、生きることを後押しする促進要因だが、一方で、将来への不安や絶望、過労や借金など、生きることを困難にさせる阻害要因もあり、後者が前者を上回ったときに、自殺のリスクは高まる。 A氏:阻害要因を取り除くことはある程度できても、促進要因を増やすのは容易ではないが、一つの方策として、命やくらしの危機に陥ったときの対処法を中学生のころから教えることが有効だと清水氏はいう。 私:常見氏も、長時間労働を問題にしている。 しかし、よく誤解されるのは高度成長時代は長時間労働で頑張ったというが、時間短縮運動で週6日制から、5日制へとしてきた。 職場もQCサークルのように皆で生産性をあげる活動が盛んだった。 A氏:それが「失われた20年」の頃から、非正規雇用が増加し、一方で、シャープや東芝に代表されるように、企業に革新の活力がなくなってきて、長時間労働が問題になり「働き方改革」が叫ばれる状態になっている。 若者が希望を持てる職場や社会にならないと、この問題は解決しないようだ。 スマホのゲームに熱中している状態ではどうしようもないね。 私:昨日の「国鉄改革」のブログではないが、あれから30年、非正規労働者が増え、ブラック企業の社会問題化、格差社会の出現など、社会全体が大きく変化し、何かの力で国の形を変える総仕上げの段階に入った時代の大きな流れが関係しているのだろうか。
2017.06.24
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私:神宮氏は、国鉄が民営化したとき、JR不採用となったが、不当労働行為として、運動を長年続けてきた。 国鉄改革は反対する労働者を容赦なく切り捨てる激痛を伴ったが、強権的な手法は、今の政治につながり、その痛みは社会に広まっていないかということで、神宮氏にインタビューしている。 神宮氏は、非正規労働者が増え、ブラック企業の社会問題化、格差社会の出現など、社会全体が大きく変化してきた今の政治や社会の状況は、国鉄改革が伏線にあったと考えている。 A氏:国鉄改革は「国の形」を変える壮大な仕掛けの原点で、国鉄の分割民営化を主導した中曽根元首相は、その後のインタビューで「国労(国鉄労働組合)が崩壊すれば、総評(日本労働組合総評議会)も崩壊するということを明確に意識してやった」と言っている。 総評、社会党をつぶして改憲へという大戦略を描いていたことがわかる。 そのために、護憲勢力の社会党を支え、最強の戦闘力を誇った国労を狙い撃ちしたのだという。 私:今年、もうすぐ100歳なのに元気な中曽根氏はテレビで改憲を訴えっていた。 今も執念を燃やしており、戦略通り、改憲が現実味を帯びてきたようで「ようやくここまで来たか」との思いだろうという。 国鉄改革では労働界が一枚岩になれず、国策である分割民営化に徹底的に反対した国労への視線は「やりすぎ」と冷ややかだったという。 A氏:神宮氏は、国鉄の経営が行き詰まった最大の原因は、あそこに、ここにと鉄道を引かせた「我田引鉄」の政治家だという。 加えて、国鉄は、戦争が終わった後の引き揚げ者らを大量に雇った労働福祉的な側面があり、ピーク時で約60万人の職員がいた。 国鉄改革当時では二十数万人で、自然減を待つ方策もあったが、それでも、政治は一気に押し切る道を選んだ。 私:そこで、国労悪玉論が登場し、国鉄のもつ問題点を「労働規律の乱れ」に矮小化し、追及されるべき政治の責任とすり替えた。 今の安倍首相がさかんに「印象操作」と言うが、国鉄改革時はまさに政府・国鉄経営陣が「労働規律の乱れ」という「印象操作」をした。 A氏;国鉄改革には旧陸軍参謀の瀬島龍三氏が深く関与したが、葛西氏ら改革を進めた国鉄官僚や政府指導者は単なる国労つぶしじゃなくて、10年、20年後の日本の仕組みを変えようとしていて、仕掛けが大きく、神宮氏は目先の労働条件の改善を求めてきた我々とは視点がまったく違うと思い知らされ、元軍人だから、どんな手を使ってでも勝つ、勝者が正義だと、戦略を練ったのだろうという。 私:国鉄改革から30年、今、もはや、「国労みたいに」と口に出すまでもなく「クビになったらどうする!」というのが現実で、労働者が権利や安全の確保を言い出しづらい。 労組に入るメリットを感じられないという人も多く、組合の組織率も低下が著しい状況が続いていて、社会全体が大きく変化した。 A氏:神宮氏は「労働者が団結して経営側と交渉していかなければ、ますます労働環境は悪化し、政府や経営側は自分たちの意に沿う形で憲法も労働組合も変えていこうという腹づもりで国労をつぶし、ここまできた」という。 そして、「闘争を続けた私たちから見ると、国の形を変える総仕上げの段階に入ったように感じます。やりたい放題を許さないためにも、労働組合の意義もそうですが、政府と国民との関係を多くの人にいま一度考え直してもらいたいですね」という。 私:安倍首相が、野党が弱いときに突然、解散して、与党3分の2を確保し、いきなり、20年までに改憲すると言い出しているね。 1強の勢いで、集団的自衛権も確立し、共謀罪法も成立し、神宮氏のいうように、国の形を変える総仕上げの段階に入ったようだね。 しかし、この段階で、加計学園問題のつまずきは痛いがね。
2017.06.23
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私:メイ首相が大勝を確信していた6月8日の英国総選挙は、コービン党首の労働党が怒濤の猛追し、与党の保守党の議席が過半数割れを起こし、大番狂わせの事態になったね。 ロンドン在住のブレイディみかこ氏は、その原因にふれている。 2019年4月からの税務年度までに、約30億ポンド(約4260億円)の教育予算が削減される方針を知り、英国の親たちは「学校を救え」という運動を全国で立ち上げて闘ってきて、総選挙での労働党の追い上げを可能にしたのは、彼らのような地べたの人びとだ。 この教育予算が争点の一つだったことはあまり知られていないと、ブレイディみかこ氏は指摘する。 A氏:終戦直後の1945年の総選挙で、アトリー政権は、医療、住宅、教育、福祉など、いわゆる「ブレッド&バター・イシュー」と呼ばれる、庶民の生活に根差した分野への大規模投資を行った。 当時は荒唐無稽と言われていた医療の大改革で、無料の国民医療制度、NHS(国民保健サービス)を設立した。 A氏:今回、労働党のコービン党首は、これにならいNES(国民教育サービス)の設立をマニフェストに盛り込み、初等、中等、高等教育だけでなく、幼児教育もこの枠に入れて、2歳児保育(週30時間までの上限付き)から大学までの無償教育を実現するという大胆な提案をした。 日本でも、高等教育の無償化やその財源をめぐる議論はあるが、この提案は先を行っている。 私:「あなたたちは、学校の一クラスの人数が増えているのを見てうれしいですか?」 これは45年の労働党の精神で、自分で考えられる市民を育てるということは教育者が十分な時間を一人一人の子供のために割くということであり、それを可能にする投資を国が行うということを意味する。 A氏:人に投資する政治は、若者たちの熱い支持を集めており、昨年のEU離脱の投票では、18歳から24歳の投票率は実は低く、「結果に不満なわりには投票しなかった」と批判されたが、今回は大学生が全国の学内投票所の前に長い列を作っていた。 NESの実現は、大学無償化を意味し、これは彼らにとって「荒唐無稽」ではなく、彼らの親たちは無料で大学に通えた世代なのだから。 私:保守党の緊縮財政で閉鎖になった成人教育カレッジの元教員たちや授業料値上げで中退した元学生たちも、労働党のマニフェストには顔を輝かせた。 2008年の金融危機以降の不景気と、緊縮財政下の7年間は終わりなきトンネルのようで、若者たちは「自分たちは損な世代なのだ」と諦め、大人たちも「もう昔とは違う」と俯き、そういう時代なんだと自分に言い聞かせてきた。 それが突然、そうじゃないんだと、昔できたことが今できないのは政治家が優先順位を変えてしまったからなんだ、と言う政治家が現れた。 コービン党首だ。 A氏:削減の政治は人々から希望を奪い、貧困と分断を押し広げたが、今こそ恐れずに未来に投資しなければ、人も国も暗い時代に沈む。 古くて新しい政治が支持を広げているのは、庶民こそ肌感覚でそれを知っているからだ。 私:欧州に古くて新しい政治の風が吹いているとブレイディみかこ氏はいう。
2017.06.22
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私:今、マスコミは、加計学園問題をめぐり、官邸と文部省との間のゴタゴタを報じているが、このため、受動喫煙をめぐる厚労省と自民党との間のゴタゴタが隠れてしまっているね。 A氏:受動喫煙対策は安倍首相も1月の施政方針で「徹底を進める」と表明していたが、現在まで首相官邸は調整に乗り出しておらず、厚労省と自民党との間の直接の対決になっているね。 私:塩崎氏は「日本で初めて伝統を破ることをどう考えるのか」と述べ、2020年の東京五輪・パラリンピックに間に合うよう議論を加速させる考えを示している。 しかし、政府・与党間の調整はこじれにこじれ、法案提出の見通しはたっていない。 A氏:通常国会中では、最後の協議となった先月24日の塩崎氏と自民党の茂木政調会長によるトップ会談で、塩崎氏は数年間の経過措置として、小規模な居酒屋などでの喫煙や分煙を認める案を示し、激変緩和策で党側に配慮したが、数年後に求めるのは「原則禁煙」だった。 私:要するに、塩崎氏は、あくまで最後は「原則禁煙」案だね。 対する茂木氏は、一定規模以下の店では「喫煙」などの表示をすれば喫煙できるという党の姿勢を堅持しつつ、数年後に法案を見直す案を示し、厚労省が求める「原則禁煙」に改める余地を残す形だったが、塩崎氏は拒否。 「最終的に原則屋内禁煙になる確約がない」と訴え、2時間にわたるトップ会談決裂。 A氏:もともと自民も一枚岩ではないので、前厚労相の田村政調会長代理らが調整して党側の案を一本化。 原則禁煙に慎重な議員らに配慮した案を5月に塩崎氏に提示した。 しかし、妥協しない塩崎氏に田村氏が「まとめる気があるのか」と怒鳴り、資料を投げつけたこともあったという。 私:主張を変えない塩崎氏は協議中の今月1日も厚労省の担当職員を集めて「党に理解を求める。ダメなら(受動喫煙対策の法案化は)お断りするつもりだ」と訴えた。 A氏:このブログでは、日本の「受動喫煙対策」は、WHOから「世界最低レベル」と指摘されていて、オリンピック開催都市は「原則禁煙」なのに着目し、果たして日本は「受動喫煙禁止」を実施できるかということで、「受動喫煙知的街道」ができたね。 「禁煙飲食店ルポ 意外に好評だった」、「受動喫煙対策、煙る永田町 飲食店規制、愛煙家の議員反発」、「『たばこってそんな関係あんの?』喫煙者減っても肺がん増えた 愛煙家・麻生財務相が言及」、「なくならぬ受動」、「WHO『喫煙場所で食事あり得ない』新橋の飲食店視察」、「受動喫煙対策 塩崎厚労相、自民妥協案に懸念」、 私:閣僚経験者の一人は「塩崎氏の心掛けが変わるか、ポストが変わるか。でないと法案はまとまらない」と見通しを語っているという。 塩崎氏は「心掛けが変わる」ことはないだろうから、そうなると自ら辞任するかもしれないね。 そうなると日本はWHOから笑われることになる。
2017.06.21
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私:思想家・内田樹氏と言えば、リベラル派とみられ、過去には「立憲デモクラシーと天皇制は原理的に両立しない」と考えていたが、このほど、雑誌のインタビューで、自分は「天皇主義者」になったと宣言し、一部に驚きを与えたという。 右派的な用語で、アブない気配が漂うということで、この記事では、なぜ今“変心”なのかとまとめている。 内田氏はインタビュー記事の中で、今の天皇制システムの存在は政権の暴走を抑止し、国民を統合する貴重な機能を果たしていると高く評価し、昨年8月の「お言葉」で「天皇の務め」とされた各地への「旅」にも着目。 戦争犠牲者への「鎮魂」と災害被害者など傷ついた者への「慰藉」は、実は国民を統合するために非常に効果的な政治的行為なのだとした。 A氏:「変心」のきっかけは、昨夏の天皇の「お言葉」だという。 陛下自らが天皇の務めは鎮魂と慰藉の旅だとの解釈を示されたのに、保守派の中からは「余計なことはするな」「静かに国事行為だけをしていればよい」と言わんばかりの声が出たのに内田氏は驚いたという。 私:この保守派の考えは、皇室への素朴な崇敬の念すらなく、その存在をただの道具としてしか見ていないという。 ならば、陛下の新解釈を支持する内田氏本人こそが「天皇主義者」だと言ったつもりだという。 内田氏は「『国民は天皇への素朴な敬意の念を持っている』というフィクションを維持しなくて大丈夫なのか、と保守派に問いかけたかったのです。それなしに天皇制が統合機能を果たすことはありえないと思うので」という。 A氏:天皇制が高い統合力を持つ一因は、それが持つスピリチュアル(霊的)な性格にあり、内田氏は「選挙で選ばれた指導者などの世俗的な『国家の中心』とは別に、国家にはしばしば、宗教や文化を歴史的に継承する超越的で霊的な『中心』がある。日本の場合、それは天皇なのだと思う」という。 私:天皇を国民の上に置く意味での天皇主義ではなく、どのような天皇制を作り上げるか、みんなで議論できるのが立憲デモクラシーだと思っていると内田氏はいう。 A氏:戦後社会と天皇制に詳しい歴史学者・河西秀哉氏(神戸女子大学院准教授)の、「なぜ、日本人はこれほどまでに天皇を『尊敬』しているのか」と題する論考が今月、ネットで発表された。 NHKが5年ごとに実施する「日本人の意識」調査の河西準教授の分析によると、天皇にどんな感じを持っているかとの質問に、2003年ごろから「尊敬」との回答が増え始めたと指摘。 私:13年には34%に上昇し、最も多い「好感」(35%)に迫る勢いだという。 被災地を訪ねる天皇・皇后の姿が報道されたことなどで、共感に近い尊敬が広がったのだろうと考察される。 河西準教授は、「この尊敬には持続可能性はある」と述べ「カギは道徳的な行動が行われることと、それがマスメディアで伝えられること。後者が重要である点では、近代的な現象である」といい、そして、「霊性など近代以前から続く要素についても、そうした部分に国民が『権威』を感じ、尊敬につながっている可能性はある」という。 A氏:天皇は祭祀を行う存在でもあるので、霊的な側面の強調には危うさを感じる人が多いのではという考えに対し、内田氏は、「『危なっかしいものだから遠ざけておく』という考え方は、実は一番危ないのではないか。むしろそこを直視しないと、天皇制がどう機能しているかも、場合によってどう暴走に結びつくのかも分からない。できるだけ理解し、コントロールする方法を探した方がいい」という。 私:天皇制というは、つきつめると内田氏の「変心」のように、歴史を背負っており単純ではないね。
2017.06.20
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私:思想家・内田樹氏と言えば、リベラル派とみられ、過去には「立憲デモクラシーと天皇制は原理的に両立しない」と考えていたが、このほど、雑誌のインタビューで、自分は「天皇主義者」になったと宣言し、一部に驚きを与えたという。 右派的な用語で、アブない気配が漂うということで、この記事では、なぜ今“変心”なのかとまとめている。 内田氏はインタビュー記事の中で、今の天皇制システムの存在は政権の暴走を抑止し、国民を統合する貴重な機能を果たしていると高く評価し、昨年8月の「お言葉」で「天皇の務め」とされた各地への「旅」にも着目。 戦争犠牲者への「鎮魂」と災害被害者など傷ついた者への「慰藉」は、実は国民を統合するために非常に効果的な政治的行為なのだとした。 A氏:「変心」のきっかけは、昨夏の天皇の「お言葉」だという。 陛下自らが天皇の務めは鎮魂と慰藉の旅だとの解釈を示されたのに、保守派の中からは「余計なことはするな」「静かに国事行為だけをしていればよい」と言わんばかりの声が出たのに内田氏は驚いたという。 私:この保守派の考えは、皇室への素朴な崇敬の念すらなく、その存在をただの道具としてしか見ていないという。 ならば、陛下の新解釈を支持する内田氏本人こそが「天皇主義者」だと言ったつもりだという。 内田氏は「『国民は天皇への素朴な敬意の念を持っている』というフィクションを維持しなくて大丈夫なのか、と保守派に問いかけたかったのです。それなしに天皇制が統合機能を果たすことはありえないと思うので」という。 A氏:天皇制が高い統合力を持つ一因は、それが持つスピリチュアル(霊的)な性格にあり、内田氏は「選挙で選ばれた指導者などの世俗的な『国家の中心』とは別に、国家にはしばしば、宗教や文化を歴史的に継承する超越的で霊的な『中心』がある。日本の場合、それは天皇なのだと思う」という。 私:天皇を国民の上に置く意味での「天皇主義」ではなく、どのような天皇制を作り上げるか、みんなで議論できるのが立憲デモクラシーだと思っていると内田氏はいう。 A氏:戦後社会と天皇制に詳しい歴史学者・河西秀哉氏(神戸女子大学院准教授)の、「なぜ、日本人はこれほどまでに天皇を『尊敬』しているのか」と題する論考が今月、ネットで発表された。 NHKが5年ごとに実施する「日本人の意識」調査の河西準教授の分析によると、天皇にどんな感じを持っているかとの質問に、2003年ごろから「尊敬」との回答が増え始めたと指摘。 私:13年には34%に上昇し、最も多い「好感」(35%)に迫る勢いだという。 被災地を訪ねる天皇・皇后の姿が報道されたことなどで、共感に近い尊敬が広がったのだろうと考察される。 河西準教授は、「この尊敬には持続可能性はある」と述べ「カギは道徳的な行動が行われることと、それがマスメディアで伝えられること。後者が重要である点では、近代的な現象である」といい、そして、「霊性など近代以前から続く要素についても、そうした部分に国民が『権威』を感じ、尊敬につながっている可能性はある」という。 A氏:天皇は祭祀を行う存在でもあるので、霊的な側面の強調には危うさを感じる人が多いのではという考えに対し、内田氏は、「『危なっかしいものだから遠ざけておく』という考え方は、実は一番危ないのではないか。むしろそこを直視しないと、天皇制がどう機能しているかも、場合によってどう暴走に結びつくのかも分からない。できるだけ理解し、コントロールする方法を探した方がいい」という。 私:天皇制は、つきつめると歴史を背負っており、単純ではないね。
2017.06.20
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私:加計学園問題で、「怪文書」呼ばわりした文科省の文書の存在こそ、土壇場で一転して認めたが、これほど露骨に道理を踏みにじった政権と国会の惨状は、見たことがないと前田氏は厳しい。 「あったことを、なかったことにできない」という文科省の前川喜平・前事務次官の言葉が、最も強烈な印象として残っており、その指摘に向き合わずに前川氏の個人攻撃に走った政権の悪態には、国家ぐるみの隠蔽工作劇を見るかのような戦慄をおぼえたという。 私:政権が、加計学園問題も「共謀罪」」も、政権は強弁の乱打で疑問を封じる高圧路線をとり、会期延長を嫌った理由は、23日に告示される東京都議選への影響を意識してのことらしく、「乱暴な幕引きでも、支持率は高いから大丈夫」との算段があったとしたら、それは「愚かなこと」だと前田直人氏は指摘している。 A氏:事実、この前出氏の記事の後だが、国民もこれらの加計学園問題や「共謀罪」の政権の対応を前田氏同様に嫌ってか、共同通信が17、18両日に実施した世論調査で、内閣支持率は44.9%と前回5月の調査から10.5ポイント急落。 19日付の朝刊各紙に掲載された調査結果でも読売新聞と日経が49%、朝日41%、毎日36%と落ち込んだ。 私:その前に、朝日新聞は今月3、4日、東京都民を対象に世論調査をしたのだが、そこに大きな異変がひそんでいたことを前出氏は指摘している。 A氏:その世論調査では、まず政党支持率で、自民は37%、民進は8%、小池百合子知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」は3%の順で「自民1強」だが、これが、都議選の投票でどの政党の人に入れたいかをたずねる質問になると、「都民ファ」が自民と同率トップの27%に跳ね上がり、民進8%と続く。 私:さらに、注目すべきは、都議選に「大いに関心がある」と答えた44%の人たちの投票先で、「都民ファ」はこの層で35%と独走し、自民は15%。 さらに、無党派層や中高年層でも、自民をダブルスコア前後の大差で突き放している。 自民が投票に行く可能性が高い「大いに関心」層に嫌われているのは決定的な悪材料で、自民の支持構造は見た目よりずっと、もろくなっている可能性が高いと、前田氏は分析する。 このデータの違いを前田氏は「面従腹背」と言っている。 A氏:かつての自民は違い、4年前の都議選告示直後の調査をみると、自民は全体の投票先で22%だったが、「大いに関心」層ではさらに高い28%の支持を得て、選挙で圧勝。 だから、この4年間で、自民の体質は大きく変わったようだ。 私:政権が東京都議選への影響を意識して、「乱暴な幕引きでも、支持率は高いから大丈夫」との算段は、確かに「愚かなこと」になりそうだ。 すでに、共同通信をはじめ、世論調査では、各紙の政権支持率は、大きく下げているので、東京都議選への影響はマイナスとなるようだね。 前田氏は「愚かなこと」だというが、見方によると「国民をなめている」ともいえるね。 この「愚かな」国会解散の結果は、東京都議選にどのような影響を与えるだろうか。
2017.06.19
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私:バーチャルリアリティー(VR)技術が進んでいるね。 東京・池袋のサンシャイン60展望台にあるアトラクション「TOKYO弾丸フライト」は、360度見渡せるヘッドマウントディスプレー(HMD)をかぶり、画面内の街で猛スピードの急上昇と落下の感覚を体験でき、導入1年で6万人が楽しんだという。 A氏:頭の向きを感知し、画面内の画像が連動するHMDの基礎技術は1960年代に登場したが、近年になって急速に普及し始めた一因は、映像や音響が「脳をだます」ほど向上したことにあるという。 私:疑似空間を「本物っぽい」と人間が感じるためには、(1)様々な現象をコンピューターで計算、(2)その結果を「人間の五感」に反映する、 という2つの技術が必要だという。 コンピューターの処理能力のほうは飛躍的に高くなり、風になびく髪の動きや、猫の鳴き声など方向性を持つ音と周囲の虫の音を一緒に表現できる立体的な音作りができるようになった。 A氏:「五感」のほうは、全天周カメラを使えば現実の景色をVRに簡単に取り込め、最新のHMDでは頭の向きや位置を30個以上のセンサーで追跡、激しいスポーツを楽しんでも視界は揺らがなくなったという。 どんな映像や音楽も光と音の組み合わせだから、扱いやすい「視覚」と「聴覚」の研究が「五感」のなかで先行してきた。 私:「触覚」については、様々な感触を指先に伝える「3D触力覚技術」が開発され、石の壁が映し出された画面の前で、わずかに振動を続けるスティック型の装置を握り、装置を振って画面上の点を動かすとザラザラした石の壁を触っているような「触覚」の感触が伝わってくる。 「脳をだます」わけだ。 A氏: 指先に特殊な波形パターンの振動を与えると、その情報が脳・神経系で統合される時に錯覚が起こり、パターンによって、押されたり手応えを感じる「力覚」、硬さや柔らかさの「圧覚」、ツルツル、ザラザラといった「触覚」など感触が変わるという。 私:将来、寝たきりでもHMDで、「視覚」とともに外国の建物の石壁に触り「触覚」を楽しむこともできるだろう。 寝たきり老人も現実的な旅行を楽しむことができそうだね。 A氏:「味覚」のほうも、塩水を含んだ口の中に、特殊なストローでマイナスの電気刺激を与えると、電流が流れる間は塩味を感じず水のようになり、オフにした直後は普段より強く塩味を感じることができるという。 逆にプラスを与えると、味を感じる味蕾などを直接刺激して山椒のような「電気味」を感じるとされる。 私:脳は視野の中の欠けている部分を無意識に埋めるように、「五感」も相互に足りない情報を補う力が脳に備わっているので、「味覚」を「視覚+嗅覚」で補えるか研究が行われている。 実験で、バタークッキーを食べる際、HMDでチョココーティングの画像を重ねて、チョコの香りをかがせると、「チョコ味のクッキー」に味覚を変えることに成功した。 A氏:クッキーの大きさを実物より大きく見せれば、少ない枚数で同じ満腹感を感じさせることもできた。 食事制限のつらさを緩和できる技術につながるかもしれないという。 俺なんか「甘党」だが、血糖値が高いのでがまんしているが、HMDで「甘く無いもの」をたくさん食べて、脳の味覚をだまして、甘いものをたくさん食べたように感ずることができるかもね。 私:よく熱いものに触る時、手の触覚から脳に行く前に、脳は熱いと知覚していると言われるね。 「触覚」の伝達の前に「視覚」が先に「熱いもの」である知覚を補っているせいだろう。 「視覚+触覚」で、歩く体の感覚を変える研究もある。 HMDをつけて歩く人の映像の角度をずらしていくと、VR空間で「まっすぐ歩いている」と錯覚させながら、現実では直径40~50メートルの円の上でずっと歩かせることができる。 壁に手をそわせて「触覚」を加えることで、直径6メートルのコンパクトな円筒でも、まっすぐ歩くように錯覚させられるという。 小さな部屋を無限の世界に広げることが可能だという。 VR技術はVRの世界のためだけでなく、現実の我々や社会を変えられる可能性も秘めているといえる。 俺達が生きている間に、そういう色々なHMD体験ができるだろうか。
2017.06.18
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私:この欄は連載で、毎回、いろいろな人のコメントを掲載してきたが、今日はネットと政治の関係に詳しいジャーナリストの津田大介氏に、「共謀罪」法をめぐっては、SNS上でも賛否がわかれ、感情的なコメントの応酬もみられたことに関連してインタビューしている。 A氏:「共謀罪」については、ネットでも盛んに議論が交わされたが、反対意見が相次ぐ一方、「野党は審議拒否をするな」といった反対する側への批判も目立った。 でも、国会の議論を見れば、野党議員は法理論的な細かい指摘も行っていたのに、政権がまともに答えなかったというのが実情。 私:客観的な事実より、感情的な訴えかけの方が世論形成に影響を与える時代の「ポスト真実」の特徴が表れており、「共謀罪」がなければ「五輪を開けないと言っても過言ではない」といった明らかなウソが信用され、昔は無視されたような言説が、物言わぬ多数派を取り込みつつあると津田氏はいう。 A氏:ネットは議論のプラットフォームではなくなりつつあり、自分が信じたい結論が先にあり、それに合致する情報を探し出す。 特にツイッターでは、考えが近い人をフォローするから利用者の二極化が進み、政権を支持する人は「共謀罪」に賛成、支持しない人は反対とはっきり分かれる。 「経済政策では政権を支持するが、『共謀罪』には反対」という層は左右両方からたたかれ、どんどん細っていくという。 私:「共謀罪」をめぐる議論の本質は、「安全」と「人権」の関係にある。 テロ防止のためには自由が制約されるが、自由を優先すれば安全を確保しにくくなる。 「テロ防止のために警察が目を付けた人のメールや電話を見聞きしていいか?」という単純な話なのに、反発を恐れた政権はウソを重ねた。 A氏:過去に廃案になっていた「共謀罪」が「テロ等準備罪」と名前を変えて成立。 安全保障法制も「平和安全法制」と呼ぶことで、違う意味を持たせようとした。 決して正面から議論せず、迂回ルートで突破しようとするのが今の政権の特徴。 国民はなめられていると津田氏は指摘する。 私:一方、マスコミが否定した事実ほど信用する傾向にある人が3割程度いるというデータもあり、ファクトを突きつければ説得できる時代ではなくなったとみる。 津田氏は、「あいつは右だから」「左だから」と否定するのではなく、地味なやり方になるが、個人的な信頼関係を築いた上で、相手の世界観に沿って、主張を伝えていかなくてはならないと主張している。 A氏:この欄の囲み記事に、「朝日新聞デジタルでよく読まれた「共謀罪」の記事とネットの反応」というのがあり、興味を引くね。 「共謀罪」例示としての「ビールと弁当は花見、地図と双眼鏡は…」というのに対し、 ツイッターで寄せられたコメントは、「こんなデタラメな基準の法律は通してはいけない」 「そんなわかりやすいテロリストがいるかよ」とある。 私:「安全と自由の両立、議論不足」というこの欄への三浦瑠麗氏の寄稿には、ツイッターで寄せられたコメントは「こういう冷静な意見をきちんと言う人がもっと表にでて、もっと議論して欲しい」「『日本の警察がいかに抑制的か』って何を根拠に言ってるんだ?」とある。 これらの例では、ツイッターのコメントは比較的に冷静だね。 感情的な例もほしかったね。
2017.06.17
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私:韓国・釜山の森本康敬総領事が更迭されて問題になっている。 A氏:ソウルの日本大使館前に続き、釜山総領事館近くにも昨年末、慰安婦問題を象徴する少女像が立ち、安倍政権は対抗措置として長嶺安政・駐韓大使と森本氏を3カ月にわたって一時帰国させた。 私:一時帰国中の森本氏が旧知の記者と食事をした際の発言メモがなぜか流出。 森本氏が、自分は邦人保護などを担う総領事だから早く戻って仕事ができればいいといった発言を、別の社の記者が「政権批判」と問題視し、政府高官にご注進。 政府高官の逆鱗にふれ、任期わずか1年で異例の交代ということになったというわけだ。 人事は1日に発表され、菅官房長官は「通常の人事」と語ったが、産経新聞は「事実上の更迭」と報じた。 A氏:政権に弓を引くような言動は許さないとして、トップの意向に配慮して先に人事を断行。 箱田氏は、これまた、このごろ都にはやる「忖度」か、と厳しい。 もともと、森本発言は政権批判と思えないし、こんな理由で更迭されるなら公務員は仕事への意欲すら語れまいという。 私:森本氏本人は「事実関係を含めてノーコメント」の一点張りだが、この記者の「ご注進」が事実ならメディアのあり方としても重大な問題をはらむと、箱田氏はいう。 A氏:韓国でこの「更迭」はどう受け止められているのか。 森本氏と長年の付き合いがある韓国の元外交官は「日本の主張は頑固なほど曲げないが、韓国の意見にも耳を傾けて、『話し合おう』という気にさせてくれる人。残念だ」という。 釜山の与党関係者は「タフネゴシエーター(手ごわい交渉者)。彼がいなくなれば事態はさらに悪化するだろう」と今後の不安を口にしたという。 「忖度」からくる感情に走った劣悪な人事だね。 私:二国間で決めた条文や合意文が重要なのは当然だが、外交にはそのすき間を埋めるような努力が欠かせない。 信頼があれば相手の気持ちをやわらげられ、周辺取材で浮かび上がるのは、そこに汗するベテラン外交官の姿だ。 相手にガツンと言うのは得意だが、成果どころか逆に事態を悪化させ、アジア外交の厚みが、すり減っていると箱田氏は、この更迭を嘆いているね。 人事権を強く握った官邸が、やたらに気が食わないからと人事に手をつけると、官僚は萎縮するね。 森友問題では財務省、加計問題では文科省と、その底流に「忖度」による苦しい言い訳をする官僚の萎縮を感ずるね。
2017.06.16
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私:もう、30年以上位前になるかね。 ブロイラーの工場を視察したことがあるが、工場内は流れ作業システムで、足をつかまれぶら下がったブロイラーが1羽ずつ移動して、逐次、各工程の作業者の前に流れ、そこで作業者は手羽裂きとか決まった部位を包丁で解体していた。 解体された部位は、コンベヤーで冷凍庫に流れていき、保管されていたね。 当時、その工場は、1日2万羽のブロイラーを解体していた。 A氏:まさに工場だね。 私:そのとき、工場の隅に見慣れない機械が放置されていたので、何の機械か聞くと、その工場の機械化にきている技術コンサルタントが、焼き鳥の串刺し作業を機械化できないか検討していた試作機で、失敗作だということだった。 A氏:そういえば、その頃、俺の知り合いの友人が、脱サラで焼き鳥屋をはじめたが、開店が6時頃なのに、3時頃から、パートとともにヤキトリの串刺しをするんだと聞いたことがある。 それほど、焼き鳥の串刺しは作業は大変なんだね。 私:ところが、今日の新聞で、「ロボットお助け 串刺し1時間6000本」という見出しには驚いたね。 センサーなどを利用したロボットで、串刺しの機械化に成功していたんだね。 コジマ技研工業(神奈川県)は、串刺し機の国内シェア8割超の企業だというが、冷凍肉を串に刺す速さを2倍にした最新機が目玉。 能力は、冷凍肉は1時間に3千本、生肉なら6千本で、手作業にこだわっていた小さな店が小型機を求めることも増えたという。 小嶋道弘社長は「パートが集まらず、やむなく自動化を選ぶようだ。人手不足は商機だ」と話すという。 A氏:さっき話した俺の知り合いの焼き鳥屋も人手不足で串刺しの準備作業が大変だったのが解消だね。 私:東京で16日まで開かれている国際食品工業展では、人手がかかる作業を補えるロボットや機械がお目見えし、過去最多となる789社が集まったという。 回転ずし業界向けに、シャリ玉を1時間あたり4800貫つくれる業界最速というロボット、1時間あたり5200個のいなりずしをつくれる機械、ギョーザを1個ずつ持ち上げてトレーに並べる仕事を任されているロボット、アームで弁当にごまをまくロボット。 コンビニのおにぎりをつくる工場でのロボット導入実例もあるという。 A氏:ロボットを「派遣」するビジネスも相次ぎ、川崎重工はリース大手と組み、デュアロのレンタルを手がける。 オリックスも16年からロボットのレンタル事業を始め、17年1月には常設のショールームを東京都町田市に開いたが、訪問者の8割がロボット利用経験がない会社からという。 私:食品業界の人手不足によるブラック化への解決策の一つになればいいね。
2017.06.15
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私:政府は2003年、年間500万人余だった訪日外国人を倍増させる「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始。 人口減で経済が縮む地方にも世界の旅行需要を取り込む「観光先進国」を目指し、16年には2千万人を突破。 勢いは加速し、今年4月には1カ月で257万人と過去最高を記録し、その余波が今、各地の観光地に表れ始めている。 A氏:この記事は観光客爆増に悲鳴をあげている京都を主にとりあげているね。 京都市によると、2015年の年間観光客数は5684万人、観光消費額は前年比約3割増の1兆円に迫り、いずれも過去最高。 空前のブームを迎えている外国人の宿泊客数は2年続けて前年比6~7割増え、316万人を記録し、この数は行政が把握できた分で、「違法民泊」を加えると実数はもっと多いとみられる。 米大手旅行誌の読者投票で2年連続世界1位の観光都市に選ばれたこともあり、欧米客が3割と多いのが特徴。 私:しかし、その急増する外国人観光客が住民の日常生活に思わぬ影響が出始めている。 市民が利用するバスは満員、「違法民泊」も増え、「もはや限界」「観光公害」という声が出るほど。 その陰でこの「公害」をさけ、市民が転出するので、人口が減り、行く末を憂える地区もあり、国が進める「観光立国」に死角はないかという。 A氏:石畳に白川のせせらぎが響く祇園新橋地区では、27年前から続けられてきた夜桜のライトアップを中止した。 理由は、花見客が多過ぎる状況で、人集めを続けることに不安を感じ、事故の心配もあり、地元では受け切れないと考えたからだという。 私:最近は、婚礼向け前撮り写真も、業者が海外からも続々とカップルを連れてくるため、着飾った男女が列をなす日もあり、民家の玄関先での撮影を注意してトラブルになったこともあり、頭を痛めているという。 A氏:京都市を南北に走る東大路通り。 夕方、清水道を下りた所のバス停付近には数十人の観光客らが狭い歩道に密集し、歩行者は車道に出ないと通れない状況。 多くが外国人で、大きなスーツケースを転がしている人もいる。 バスが満員で通過するのは日常茶飯事で、いつか事故が起きそうで怖いという。 私:高台寺や清水寺、三十三間堂を抱える京都市東山区。 人波でごった返す屈指の観光地の悩みは、実は「人口減少」で、4万人を割り、今やピーク時の半分ほど。 高齢化が背景にあり、「空き家」も増え続けていて、そこに広がっているのが「違法民泊」。 A氏:ネットの紹介サイトに登録されている市内の民泊は約5千。 15年の市の調査では民泊の9割が違法で、市が昨夏、民泊の通報窓口を設けたところ、「うるさくて眠れない」「誰がやっているのかわからず不安」などの苦情が今春までに1千件余り寄せられた。 「民泊の急増が人口減に拍車をかけないか」と恐れる住民も少なくない。 私:この2年で外国人観光客があまりにも急激に増え、うまく対応できずにひずみが出てきて、その原因が「違法民泊」だという。 本来ならば宿泊施設数でコントロールできる観光行政が、把握できない「違法民泊」の急拡大で十分に対応できていないという。 安倍政権は観光を成長戦略の柱と位置づけ、インバウンド(訪日外国人客)の更なる拡大を狙う。 目標が実現すれば、20年に2倍の4千万人、30年には3倍の6千万人の外国人が日本にやって来る。 A氏:リピーターになった目利きの外国人は、より京都人らしいライフスタイルを好み、その生活空間に入り込んでくる。 少ないうちはいいが、増えると地域社会は不安になる。 外国人は日本人が「いいな」と思うものに同調しようと、いわば「日本人ごっこ」をしにやって来るが、周りが外国人だらけになれば、まるでエセ京都人だらけのテーマパークだ。 そうなった瞬間、京都観光は崩壊し、いつまでも安泰とは言えない。 私:実際、2年連続世界1位だった米旅行誌の評価は昨年6位に下がり、日本人客の調査でも「混雑」を理由に満足度を下げているという。 俺は、今まで季節ごとに京都観光にはよく行ったが、この10年ほど、行かなくなっているうちに、かっての懐かしい京都観光が「観光公害」で変質してしまったようだね。
2017.06.14
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私:東芝約7200億円、日本郵政約3700億円。 いずれも海外で買収した原発会社関連や物流会社の「のれん」の価値が大きく下がり、両社が決算に損失として計上した金額。 堀篭俊材氏は、このように海外企業のM&A(企業買収・合併)の失敗で痛い目にあっているが、そこからは、相変わらず盛んな海外における「M&Aの落とし穴」がみえてくるとしている。 A氏:「のれん代」とは、例えば100億円で企業を買収し、その企業の資産価値が80億円あれば、残り20億円が「のれん代」として、買収した親会社の決算に計上される。 会社の「のれん代」にはブランド力だけでなく、経営者の手腕やビジネスモデルの優位性などがふくまれる。 私:やっかいなのは、買収された会社の業績が大きく悪化すると、「のれん」の価値が吹き飛んでしまう恐れがあることだ。 M&A助言会社、産業創成アドバイザリーの佐藤文昭社長は「日本企業は『性善説』に立って海外企業を買収するため、交渉相手のいうことを信じてしまいがちだ」と指摘。 また、「買収後の経営を買収先の経営陣にまかせる傾向もあり、親会社がきちんとマネジメントできないため、つまずいてしまう」という。 A氏:「のれん」の価値には、企業が将来いくら収益を生むかという予想もふくまれるが、その評価は難しいという。 私:M&A助言会社のレコフの調べでは、日本企業による海外企業のM&Aは昨年636件と過去最多を更新。 人口減に直面する日本市場は成熟期に入り、活路をもとめて海外企業を買収する日本企業が増えているという。 A氏:しかし、レコフの恩地祥光会長は、「日本企業は国内企業にも、もっと目を向けた方がいい。『ライバルに負けられない』『とにかく海外』といった動機で、きちんとした理念もなく、海外企業を買収すれば失敗する。まずは国内の再編を進めてから、世界に打って出ることが必要ではないか」という。 私:堀篭氏は、最後に「『日本第一主義』などというつもりはないが、何が何でも海外をめざす『グローバル・ファースト』もまた考えものである」と指摘している。 東芝や日本郵政の後、また、「M&Aの落とし穴」に落ちる日本企業が現れるだろうか。
2017.06.13
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私:憲法の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めた3年前の「閣議決定」は強い批判を受けたが、国会議員の質問主意書への答弁書も、「閣議決定」をするなど、「閣議決定」が国を動かすイメージは強いね。 A氏:「首相夫人は私人」と定義したのも「閣議決定」とはね。 私:朝日新聞の記事データベースで「閣議決定」を検索すると、2006年の第1次安倍内閣発足から2年半は約1300件だが、第3次安倍内閣発足から2年半は約2200件と、倍近い。 内閣法に基づき、首相が主宰し、原則毎週火、金曜に全閣僚が官邸に集り、時間はわずか十数分。 事前に官僚や与党内などで協議を重ねるからだ。 A氏:背景に「政府主導」の強化がある。 「政治主導」を強めるため、2001年、政務次官を廃止し副大臣と政務官を新設。 「官主導」だった政策立案も変化してきたという。 私:与党の変化もあり、かつては、「ねじれ国会」による「決められない政治」が続いた。 そのため、人気のない政策には反対する人が出てきて、1年しかもたない政権に忠誠を誓うより聞こえの良いことを言いたいと、一体感がなくなった。 それが、政権復帰後、「ねじれ」が解消すると、「決める政治」を志向するようになったという。 集団的自衛権の行使容認など、「閣議決定」の報道が増えた時期とも重なり、「議論しても、決まったら『一枚岩』でないといけないという反省がある」という。 A氏:しかし、一橋大の中北浩爾教授はその著『自民党――「一強」の実像』で、「首相の権力が強まるような図式が出来ている」と指摘。 長い行政改革の歴史から、意向が反映しやすい構造ができたからだ。 私:官僚は、内閣人事局が幹部人事を一手に握り、党は族議員や派閥の弱体化が進む。 「法の番人」として関門になるはずの内閣法制局の人事に手も入れた。 議論積み上げ型の意思決定ではなく、首相「一強」の意思による一枚岩ができあがり、「ひまわりが太陽を向いて動くのと同じように、『忖度』が働く」というわけだ。 A氏:「忖度」のはじまりだね。 しかし、あまりに内閣が強いと、三権分立も崩れかねない。 本来、国権の最高機関は「国会」。 私:「ねじれ」はブレーキが利き過ぎるが、「一強」はアクセルばかりの「決めすぎる政治」を生む。 「閣議」はそのバロメーターとも言えるが、バランス感覚が民主政治には必要だね。
2017.06.12
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私:この「ひもとく」欄は、とりあげたテーマに関連する書籍を紹介する欄だね。 今週は、「共謀罪」について、3冊紹介しているが、同時にこれが国会で治安維持法下の捜査がすべて適法だとする法相の答弁、参議院でも法相の事実上の答弁拒否や首相による法相の発言阻止などの異常事態に遭って、問題になっている「共謀罪」の反対理由のよくまとまった説明になっているね。 A氏:問題は国内だけでなく、国連特別報告者からの質問状が国連ウェブサイトに掲載され、これに、政府は回答せず、抗議の暴挙に出ていて、海外主要メディアも、日本の国会運営や犯罪捜査を疑問視している。 私:政府は同法案を「テロ等準備罪」処罰法案と呼ぶが、その内容が明らかになった当初、テロの文言は全く含まれておらず、その後「テロリズム集団その他」が加えられたが、テロ対策の内容が1カ条もないことには変わりがなく、テロとは無関係だという。 A氏:日本はテロ対策主要13国際条約をすべて批准し、国内法整備を終えている。 特に、東京五輪開催決定後の2014年に改正した「テロ資金提供処罰法」で、組織的なテロの準備行為は包括的に処罰対象であるから、今般の法案が付け加える内容は皆無であるという。 私:政府は同法案が「国連国際組織犯罪防止条約」の批准に必要だとするが、同条約は利益目的組織犯罪に対処するものであってテロには関係がない。 国連の公式立法ガイド執筆者もその旨を明言し、日本は現行法のままで批准できるとしているという。 政府はウソを言っていることになる。 A氏:事実、「国連国際組織犯罪防止条約」は網羅的な「共謀罪」処罰を義務づけておらず、国内法の基本原則に従った犯罪対策を要請するにすぎなく、「共謀罪」処罰発祥の地である英国でさえ、一定の人的範囲を適用除外としているし、米国にも一般的な「共謀罪」処罰のない地域があるという。 私:日本の場合、明治以来の伝統的組織犯罪対策である「共謀共同正犯」の法理(複数人で共謀し、1人が犯罪行為に出ると全員犯人となる)と、諸外国よりも広範な予備罪・危険犯(危険物等の取り扱い)などを組み合わせれば、条約には十分対応できるという。 A氏:それなのに、なんで、政府は、テロ対策にも条約締結にも必要のない立法を国会で十分な議論もないままに押し通そうとしているのかだね。 私:背景には、02年以降、犯罪の件数が半数未満に減少した一方で、人員が2万人増員されて仕事のない警察が権限拡大を強く求めていることと、米国の圧力とがあるとみられるという。 A氏:エドワード・スノーデンの指摘どおり、米国の諜報機関では日本語を十分に扱えないため、日本の警察が市民を監視して得た情報を入手できれば好都合であること。 すでに、米国は日本にそのための技術システムを提供したとされる。 米国の利益が本法案の背景にあるという。 私:本来、国連条約締結のためには、ドイツなどと同様に、「共謀罪」ではなく「結集罪」の処罰を(「破壊活動防止法」や「暴力団対策法」などを改正し)狭い範囲で設ければ足りたのに、犯罪の計画・準備段階にまで極端に捜査権限を拡大する法案が出されたのは、監視を広げるためにほかならない。 元警察職員執筆の原田宏二氏著『警察捜査の正体』では、自身の経験から、現在でも人々の通信記録が収集され、社会の至るところに公安警察が密かに入り込んでいるという。 法案が設ける277の犯罪類型は、国連条約の趣旨に反し、警察の職権濫用・暴行陵虐罪や商業賄賂罪を除外している。 あらゆる問題を国民に秘匿したままの立法は民主主義への挑戦であると、高山佳奈子氏は厳しくまとめている。 国民はテロ対策のためと思っているが、テロとは無関係とはね。 説明不十分という多くの世論は当然だね。
2017.06.11
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私:特例法で、天皇陛下の「生前退位」についての法律が決まった。 明治の旧皇室典範で「生前退位」を認めなかったのは、水戸学の国体論の影響が大きく、古代の天皇を理想とし、仏教伝来後の天皇は本来の姿ではないとし、「生前退位」も外国の考え方が入ってきた結果で、仏教伝来以前には「生前退位」など行われなかったのだから、認めるべきではないと考えた。 A氏:敗戦で、天皇は戦前のような絶対的な存在ではなくなり、このときに「生前退位」を認めてもよかったはずだが、政府は皇室典範の内容を実質的にあまり変えなかった。 「生前退位」制度も政府内では内々に検討されていたが、昭和天皇の戦争責任論に結びつくことを恐れて、つくらなかったという。 私:その後、政府は、「生前退位」制度をつくるのは手間がかかるし、昭和天皇自身にその気がないので、そのままになってきた。 それが、今回、天皇ご自身の「お気持ち」による問題提起がきっかけとなって、国民の意思として「生前退位」を認めるに至った。 古川隆久教授は、まず、今回の改正の最も大きな意味は、天皇制の歴史を通じて、初めて民主的な手続きによって「生前退位」が実現するということだという。 昨年8月の天皇の「お気持ち」の直後に臨時国会を開いて法案を成立させていたら、とうてい民主的な手続きとは言えなかったが、ワンクッション置き、有識者会議などで、「生前退位」反対も含め多様な意見を表に出したのがよかったという。 A氏:古川教授は、もう一つ評価できるのは、「生前退位」に関して意見が分かれていたことが採決にも反映され、衆院での採決が全会一致ではなかったことだという。 国民主権のもとでの天皇制のあり方を、再確認する機会になったと考えるべきで、初の民主的手順であり、マスメディアが発達し、誰もが情報を得られる状態で「生前退位」が行われるのは歴史上初めてで、いわば壮大な実験と考えるべきとしているね。 A氏:水林彪教授のほうは、まさに「生前退位」問題を日本史に遡って説明しているね。 私:日本史上、「生前退位」した天皇は、北朝を含めて60人を超え、確実に血統をたどれる継体天皇から昭和天皇に至るまで、水林教授の数え方では102人いて、約6割が「生前退位」。 幕末までは「生前退位」が原則になっていたと考えられるという。 A氏:「生前退位」の確かな初例は、697年の持統天皇の「生前退位」、すなわち文武天皇への「譲位」で、「天皇」という王号も、このころ定まったようだという。 それ以前の「天皇」は成年でかつ死ぬまで在位し、「譲位」制度は存在せず、即位するにも臣下の推挙が必要だった。 文武天皇のときから、天皇とその尊属からなる天皇家が、群臣推挙の制約なしに自律的に皇位継承を決定しうる「律令天皇制」が成立し、これが、天皇自らは政治を行わない「不親政」の原型となった、というのが水林教授の見解だという。 私:文武天皇のころ、中国から律令とともに皇帝制度が輸入され、それまでの伝統的な大王制が変質し、律令に基づく政治体制となる。 しかし、この「律令天皇制」は日本の貴族の層の厚さもあって中国的な専制とはならず、天皇の「生前退位」と「不親政」がセットで原則になる。 A氏:院政以後幕末までの天皇制も、「律令天皇制」のバリエーションで、権力を奪取した武家勢力は、ただちに秩序を正当化しなければならず、そのために権威として天皇を活用。 この間、宮中の祭祀は衰微した時期もあるが、それでも天皇制が消滅しなかったのは、権力秩序を法的に正当化する機能を持っていたから、そこに終始一貫した天皇制の本質があるように思えると小林教授はいう。 私:明治維新を経て「大日本帝国憲法」の定める天皇制は、天皇親政などの重要な点で、「律令天皇制」を改めるものだった。 そして、日本国憲法のもとでの「象徴天皇制」は、いっそう根本的な天皇制の変革となったが、現行の皇室典範は、「譲位」の禁止などいくつかの重要な点で、旧憲法下の旧典範を引き継いでいた。 A氏:今回の「生前退位」問題を考える時に、新憲法の理念にのっとるべきで、現代の天皇制において、「譲位」の否定、すなわち生涯現役であることを強制する皇室典範は、天皇個人にとって酷であり、「個人の尊重」という憲法の理念に反していると小林教授は指摘する。 私:また、憲法は単に「皇位は世襲」としているのに、皇室典範は男系・男子という要件を付加し、女性天皇を排除しているが、憲法は「両性の平等」を掲げているから、これも理念に反しているのではないかと小林教授は、新しい問題提起をしているね。 「皇室典範」はまだまだ、検討すべき問題があるね。
2017.06.10
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私:一橋大学祭で10日に予定されていた作家の百田尚樹氏の講演会が、中止になった。 理由は、百田氏のこれまでの発言が「差別的だ」などとして学生らから抗議の声が上がったためだという。 A氏:予定していた演題は「現代社会におけるマスコミのあり方」で、学生でつくる実行委が昨年から企画し、副学長をトップとする学内組織が許可したもの。 「舌鋒鋭い」百田氏を呼べば盛り上がると考えたようだ。 私:これに対し、人種差別根絶をめざす一橋大生らでつくる「反レイシズム情報センター」(ARIC)が今年4月、抗議を表明し、大学祭での差別を禁止するガイドラインづくりや講演の中止を実行委に求めた。 確かに、百田氏は「舌鋒鋭い」が、言いたい放題のところがあり、2014年2月にあった東京都知事選の応援演説では、他の候補を「人間のくず」と中傷。 15年6月には自民党議員らの勉強会で「沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん」と発言。 昨年11月には、集団女性乱暴事件の犯人像をめぐって「在日外人たちではないかという気がする」とツイートし、「人種差別」と批判を浴びた。 A氏:ARICの代表は、「百田氏は差別を扇動してきた。講演会を開けば、大学が差別を容認することになる」と主張し、ネットで賛同する1万人以上の署名が集まったという。 私:これは「表現の自由」の問題がからむね。 実行委は「発言の場を奪うことは『表現の自由』という民主主義の根幹を揺るがす」として最初は、開催の意向だったが、その後も教員の有志約60人が「適切な処置」を求める要望書を大学側に出すなどしたため、今月2日に中止を発表。 A氏:一方の百田氏は、「たとえ権力でなくても、こうして発言の場を奪うのは『言論弾圧』ではないか」と反発。 中止決定後、実行委代表のツイッターには百田氏を支持する人たちから「圧力かけたバカ」といった非難のコメントが相次いだという。 私:表現規制に詳しい山田健太・専修大教授(言論法)は、実行委が判断したのなら自主規制の問題としながら、百田氏に賛同しないが、賛同する人もいるのだから、話す機会を奪うのではなく、講演を聴いておかしいと思えば議論するのが高等教育の場にふさわしい姿ではと言う。 講演の運営が難しいだろうが、それが正論かもしれない。 大学の広報室は、「学生が運営する行事であり、諸企画の立案、実施については学生の自主性を尊重している」としているという。
2017.06.09
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私:今日の朝日新聞の政治漫画で、加計学園問題で、文科省、官邸、自民党が「文書問題」をめぐり、これにメスを入れさせまいと理屈にならない言い訳をして、頑としてこの問題にメスをいれさせないことを「組織的隠蔽活動」とみなし、漫画では「世が世なら『共謀罪』だぞ!?」とセリフをつけているのは皮肉だね。 また、「文書」を狭義に規定する「岩盤規定」に穴をあけないといけないようだ。 その文科省の問題で、千葉大学高等教育研究機構教授・大西好宣氏が「文科省の天下り」で興味ある事実を寄稿しているね。 A氏:3月の参議院予算委員会のやりとりで、質問した野党議員が、大学の教授職に就いた文科省の元職員は最近3年半で15人おり、全員が博士号を持っていないという事実を指摘したことだね。 国土交通省と比較すると、国土交通省では、大学教授になった26人のうち少なくとも23人が博士号保持者で、この点で我が国の高等教育行政をつかさどる文科省との差が際立った。 しかも、この問題はマスコミにほとんど顧みられなかった。 私:大西教授は、この問題を三つに分けて整理している。 第一に、平成に入って以降文科省が推進してきた博士を増やすという大学院重点化政策を文科省自らが否定していることだ。 第二に、この政策の結果として、いわゆる高学歴ワーキングプアという負の側面を生じさせていることだ。 第三に、大学教授の資格を規定した大学設置基準第14条に、大学教授の資格として、博士号及び研究業績を有することという原則に続き、いわば補助的・例外的な「準ずる」規定があることだ。 これは、博士号がなくても、何か特別な能力を持っていたり、博士号取得者に準ずるような専門知識や研究業績があったりする場合には、それらを同等に扱おうという規定だ。 A氏:かつて我が国の大学には、文系を中心として極端なまでに博士号授与を制限するという慣習や文化があったため、「準ずる」規定には歴史的な役割があったが、多くの博士号取得者が生まれた現在、この規定の持つ肯定的な意義は薄れている。 逆に縁故などで規定が恣意的に運用され、本来は教授としてふさわしくない人物を採用してしまうリスクが高まっているのではないかと、大西教授は指摘する。 私:国交省の場合、技術系の博士号取得者が多いという事情があるにせよ、文科省の博士号ゼロという実態は明らかに異常であり、今こそ冷静な議論が必要であると大西教授は問題提起している。 残念ながら、文科省の天下り教授の博士号ゼロという原因についての説明はなかった。
2017.06.08
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私:「不動産」が「負動産」とは世相を反映した言い換えだね。 土地には「土地神話」という言葉があって、「不動産は買えば必ず値上がりする」「不動産には絶対の価値がある」というものだね。 これが、1980年代後半から1992年ごろまでの日本のバブル経済で、最高の価格となるね。 ところが、今、「不動産」は、不要となっても売れず、税金だけ払うというマイナスの価値、まさに「負動産」となるケースが増えている。 A氏:俺も田舎に放置されている空き地があり、買い手がなく、税金は安いとはいえ、ムダな出費になっている。 この問題について、西谷氏が、日本人と土地の関係を歴史の視点から興味ある情報を提供してくれている。 土地は日本人にとってずっと価値あるもので、古代末期、気候変動で洪水が多発し、土地は荒廃し、「大開墾時代」が始まる。 続く中世(11世紀~16世紀)の初期は、開発できる土地に比べ、百姓の労働力は希少のため、百姓は領主に隷属的ではなく、契約して耕作したとみるのが現在の通説。 「俺の土地」という意識はなく、気に入らなければよりよい条件の土地を求めて移動した。 私:やがて労働人口が増え、田畑になるべき土地は開墾し尽くされ、他方で、牛馬や鉄製農具が普及して農業の生産性が向上し、土地の価値が増加。 中世後期の室町時代には、金融業者が力を持ち、安定資産として土地を集め、富を生産する百姓に融資し、百姓も土地とのつながりを強め、実質的な土地所有が確立した。 ただ、土地に縛り付けられることはなく、「返上」もあった。 子どもの独立などで家の人手が減り、十分に耕せなくなった土地がお荷物になったのに合わせた「返上」もあり、「中世の家」は、「核家族」が基本だったことがわかってきたという。 「成人した男なのに母親の飯を食っている」となじる文書があるという。 A氏:直系の3世代が同居するのは江戸時代になってからで、時代が下り、戦後に「核家族」化が進んだのは中世に戻ったような感じがすると、西谷氏はいう。 もし、子どもが同居する家族が続いていれば、もっと所有地が活用され「負動産」問題は深刻にならなかっただろうという。 私:同じ「核家族」社会でも中世には「返上」で土地放棄が自由だったので「負動産」はなく、現代と違って、用水路などインフラ整備は領主、地主の負担で、土地が最大の多産財だったので、領主らが利用価値を保つ投資を当たり前に行っていた。 百姓は家のかたちに合わせて、コストを負わずに土地をやりとりできた。 必要な人に必要な土地が回りやすい、やわらかな仕組みだったという。 A氏:土地がマイナスの財になるという現在の事態は、日本の歴史では、前代未聞で、しかも、現代はがっちり所有権が守られている代わりに自由に手放せない。 民衆にとってはハードな制度だと西谷氏はいう。 私:高度成長での「核家族」化に加え、日本史始まって以来の少子高齢化が「負動産」問題をクローズアップしてきたんだね。 A氏:吉原氏は、アメリカでは、買い手がつかない不動産を寄付や低価で集め、再活用を図る公的な仲介組織があるそうで、日本政府の場合は、所有権はそのままに「利用権」などで自治体が土地の利用を進められる仕組みも検討しているが、利用が見込めない土地の扱いも検討すべきだという。 私:田處氏は、動産なら、粗大ゴミのようにコストを負担すれば捨てられるが、不動産も例えば一定額を払えば所有権を放棄できるといったルールをつくるべきだという。 捨て値でも買い手がつかない地方の老朽マンションもあり、大きな問題となる前に急いでルールを作る必要があると指摘している。 「中世はもっと柔軟だった」と西谷氏がいうように、中世の知恵に学んで、柔軟な制度を至急、作るべきだね。
2017.06.07
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私:昨年の米大統領選期間中、「ラストベルト」出身の作家・J・D・バンス氏の著作「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」が全米で話題になった。 自らの生い立ちを通し、トランプ氏を大統領に導いた「忘れられた人々」の暮らしぶりや考え方を描いているという。 そのバンス氏へのロングインタビューだね。 A氏:バンス氏は、オハイオ州のかつての鉄鋼業の町と、ケンタッキー州のアパラチア山脈一帯で労働者として働く一貧しい白人一家の出身。 「ヒルビリー(田舎者)」や「レッド・ネック(首筋が日焼けで赤くなる白人労働者)」と呼ばれた。 私:同じ国にいて、米国人は地理的、文化的な分断のため、都市の人々は自国で起きているバンス氏の一族のような暮らしを知らなかった。 社会問題は特定の人のものと考えていて、報道機関は都市圏に集中し、記者は外の問題に気付いていなかった。 バンス氏の一族のような日々の苦労を知って驚き、彼らの政治的な選択(トランプ氏の支持)はもっと衝撃だった。 A氏:白人労働者がトランプ氏を支持した理由について、バンス氏は、賃金のよい仕事が消え、薬物依存の割合、死亡率など、様々な指標も間違った方向に進んでいることで、人々は不満をためこみ、解決策を示せる誰かを探し求めてきたことをあげている。 トランプ氏の解決能力にはもっともな批判があるが、彼は問題があることを少なくとも認識し、その解決を訴えていて、その他の政治家は深刻さを知らなかったという。 私:2大政党は数十年にわたって白人労働者の期待に応えなかった。 経済や雇用の仕組み、働き方、必要となる教育の内容などが大きく変わったのに、どちらの政党も理解できておらず、トランプ氏は、少なくとも問題の所在や深刻さを理解しており、共和、民主の2大政党の主流派が退けられた。 A氏:トランプ政権にはウォール街出身のエリートが目立つのに、支持が離れないのは、大富豪が政権にいても支持者は怒らないが、暮らしぶりが上向かなければ怒り出すという。 私:本来、民主党は、労働者の政党だったが、民主党とこの一帯の白人労働者の間には文化的な隔離があり、指導層はカリフォルニアやニューヨーク、首都ワシントンなど大都市での暮らしが長く、オハイオ州東部とは隔離されている。 自らの支持層と時間を共に過ごし、真の懸念を理解し、同じ言葉を話さない限り、選挙で支持されない。 薬物汚染や失業など、自分たちの懸念を共有しない政治家には投票しない。 トランプ氏が勝利した重要州にウィスコンシン州があるが、民主党候補クリントン氏はここで選挙運動せず、多くの労働者から「よそ者」と見られてしまった。 A氏:著書では「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の重要さを強調しているが、残念なことに、バンス氏の体験的にも統計的にも地域社会における「ソーシャル・キャピタル」は弱まっているという。 バンス氏は「アメリカンドリーム」を「ラストベルト」から実現したが、一般的には豊かになる夢はすっかり色あせているという。 私:バンス氏はそれが最も心配な点だという。 1940年生まれの世代が親より裕福になる可能性は9割あったが、80年代の生まれになると5割まで落ちる。 今日の子どもたちには、ますます困難になっており、困ったことだという。 より多くの子に実現可能なものにしたいが、政府が完全に解決できる問題とはバンス氏は思わないという。 教会など、社会にある機関や慈善団体、非営利活動の取り組みが重要になるだろうという。 「分断」や「格差」の連鎖によりすでにアメリカ社会から「アメリカンドリーム」は消えつつあるのか。 トランプ大統領は、それを取り戻せるのか、もっと悪化するのか。 アメリカは大きな問題を抱えているね。。
2017.06.06
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私:9・11同時多発テロ後、テロの恐怖に対応するため、捜査機関の権限を拡大する愛国者法が成立し、これを根拠に、米国家安全保障局(NSA)は市民の通信記録などを収集、大規模な監視活動を始める。 この活動を内部告発したのが、エドワード・スノーデン氏。 市民の誰と会ったか、何を買ったか、どのウェブサイトを見たか、全行動を把握できるという。 A氏:一方で政府の活動は、明かせば安全が脅かされるとベールに覆われ、監視の実態も隠された。 政府からは市民の活動が丸見えだが、市民からは政府が見えないという、その非対称は何をもたらすのか。 スノーデン氏は「国民は、権力に反対する力を潰される。政府と国民の力のバランスが変わり、支配する者と、される者になる」と警鐘を鳴らす。 私:この米国の対テロの動きは、最近の日本の「特定秘密保護法」に「安全保障法制」、審議中の「共謀罪」の動きを連想させる。 いずれも安全が脅かされるから、危険を避けるためだからといった理由が挙げられた。 A氏:これに対し、政府の活動が隠される、市民が監視されるなどと批判が起きたが、内閣支持率は下がらない。 海外でのテロや核やミサイル実験など、不安にさらされている時、「安全のため」といわれると、「自由」や「人権」は二の次になるからだろうかと松下氏は懸念する。 私:市民が政府を監視する手立てはやせ細り、防衛省も財務省も文科省も、日報や交渉記録などを「廃棄した」「確認できない」と突っぱねる。 いや、「文書はある」という前文科事務次官は「出会い系」への出入りを暴かれ、信用ならぬやつだといわんばかりの人格攻撃を受けている。 さらに、一部メディアの報道ぶりは、「権力の監視」はどこへやら、いまや政権の広報かと見まがうばかりだという。 A氏:読売新聞のことかね。 興味あるのは、メディアの見出しは、「共謀罪」派VS「テロ等準備罪」派と真っ二つに分かれていることだね。 「テロ」という文字が入ると、「止むを得ない」という印象が先行するね。 私:ナチス・ドイツの国家元帥、ゲーリングは「人々は指導者の意のままになる。『我々は攻撃されかけている』といい、平和主義者を『愛国心に欠け、国を危険にさらしている』と非難する。それだけで良い」と言った。 そうしてナチスは全権を掌握し、戦争に突き進んだ。 忘れてはならない教訓であると松下氏は言う。 現代はやたらに戦争にはならないだろうが、「自由」と「人権」を失った国民からは国の成長力を期待できないだろうね。
2017.06.05
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私:この書評の見出しは「たいへんな勉強家、だから強い」とある。 著者は、将棋名人に連勝した将棋ソフト「ポナンザ」の開発者。 この本では、著者の説明がうまく、碁や将棋に関心がなくとも、いったいいま「人工知能」がどうなっているのか知りたいという人に、山本氏が分かりやすく教えてくれるという。 A氏:コンピュータは人間よりもはるかに先まで計算できるから強いのだとか、あるいは、いくら強くてもけっきょくは人間がプログラムするのだというのは誤解であるという。 もちろん、最初は人間がスタート地点を設定するが、あとはコンピュータが自分自身と対局を重ねて、勝利に結びつきやすい手を経験から把握していく。 私:論理的だから強いのではなく、たいへんな勉強家なのだね。 一兆もの対局経験をもつ人間なんていない。 著者は「人工知能」を「私たちの子供」と言う。 この子は自ら経験を積んで学んでいき、著者はそれを見守り、必要に応じて改良を試みるが、「人工知能」は、親をはるかに超えて成長していくのだという。 A氏:評者は、プロ棋士が「人工知能」に勝てない事態を苦々しく感じていたというが、それは間違いだという。 例えば車は人間より速いが、われわれはマラソンを楽しむ。 総合的にはいまでも人間が一番優秀なのかもしれないが、一番であることを人間のアイデンティティにする必要はない。 人間は、へぼだから、楽しいのだという。 私:棋士たちも、最初はへこんでいたが、コンピュータが開いてくれた囲碁や将棋の深さを、むしろ喜びをもって受け入れているという。 評者は「この本を読むと、コンピュータと人間の共存の未来に、少し明るい期待がもてそうな気がしてくる」という。 そうなると、囲碁や将棋は、人間間の勝負の世界と「人工知能」間の勝負の世界とは別だね。 今、20連勝している最年少プロ棋士、藤井聡太四段の活躍は、「人工知能」とは別の世界のことだね。
2017.06.04
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私:英国の総選挙は8日だね。 この選挙は、EUからの離脱交渉を前に、与党保守党が過半数を占める議会での「一強」をさらに強めたいというのがメイ氏の思惑だった。 A氏:ところが、5月初めの解散直後に20ポイント以上リードしていた野党労働党との支持率の差は、終盤に入り、ある調査では3ポイントまで接近。 私:あるポップソングの人気が急上昇していることが影響しているかもしれないという。 それは「ライアー(うそつき)・ライアー 総選挙2017」というソング。 英アマゾンの音楽ダウンロード部門で首位になった。 このソングは「解散総選挙はしません」と言い切るメイ首相の過去の発言と音楽を組み合わせ、総選挙に踏み切ったメイ氏を「信用できない。ノー、ノー、ノー」とこき下ろす。 「政治的中立」を理由に英BBCが放送を拒んだことで逆に話題を呼んでいるという。 A氏:当初、保守党の圧勝を織り込んでいた英メディアはもはや予測不能と言い出した。 それは、新たな不確定要素が、フェイスブック(FB)などのソーシャルメディア(SNS)が持つビッグデータの影響力だという。 保守党は前回15年の総選挙でFB広告費を野党の約10倍使った。 ある英コンサルティング会社が分析したところ、広告は激戦区での選挙結果に大きく影響し、保守党の予想外の大勝につながったという。 私:この手法は、昨年6月の国民投票でも使われ、EUからの離脱運動「ボート・リーブ(離脱に投票を)」を率いたドミニク・カミングス氏は「ほぼ全資金をデジタル分野につぎ込んだ英国初の投票運動だった」とブログで明かしているという。 A氏:有権者の個人情報はどう政党に流れるのかというと、政治広告の危険性を指摘するネット専門家ルイス・ナイトウェブ氏によると、FB上の何げないクイズがくせ者で、質問に答える前に「FBアカウントで登録」を押すと、自分に加え、「友だち」のプロフィル、何に「いいね」を押したかなどの個人情報の開示にすべて同意したことになるものがあるという。 私:そのクイズの背後にいるとみられているのが、データ分析会社で、政党がその個人情報をもとに有権者の年齢、住所、政治志向などに合わせたネガティブ広告を送る。 米大統領選でトランプ陣営に協力した分析会社は、米有権者約3千万人の個人情報をこうした手法で得ていたとみられていて、個人情報保護の制度を整えるより技術の進展の方が早い。 A氏:日本では先月末、「改正個人情報保護法」が施行され、個人を特定できないように情報を加工することを条件に、本人の同意がなくてもデータを外部に提供できるようになった。 分析会社へのお膳立てではないのか。特定の政治勢力が「匿名加工情報」を悪用しないか、気になると石合力氏はいう。 私:政治広告の危険性を指摘するネット専門家ルイス・ナイトウェブ氏は、「個人が取れる対策は二つ。広告ブロックのソフトを導入し、あまり『いいね』を押さないことです」という。 英国の総選挙はどうなるかは興味があるが、日本で一番近い選挙は7月2日の都議会選挙だが、俺は横浜市民なんで直接、関係ないが、都議選とSNSはどうからむかも興味があるね。
2017.06.03
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私:今月の佐伯氏のエッセイは、「人生フルーツ」というドキュメンタリー映画をみたことから始めている。 建築家、津端修一氏とその妻英子さんの日常生活の記録で、津端氏は、ニュータウンの一角に土地を購入し、小さな雑木林を作り、畑と果樹園を作り、毎日の食事は基本的に自給自足するという生活を送ってきた。 畑では70種類の野菜、果樹園では50種類の果物を育てているという。 映画は90歳になった修一氏と3歳年下の英子さんの日常を淡々と描いているのだが、しみじみとした感慨を与えてくれるという。 A氏:風が通り、鳥がやってきて、四季がめぐり、時には台風が襲いかかるが、そのすべてが循環しながら土地をはぐくみ草花や野菜を育て、この老夫婦の生活を支えている。 この夫婦の生活そのものも、この生命の循環のなかにあるように見えるという。 私:60年代でもまだ、都市の郊外や地方をゆけば、人々は自然の循環のなかで野菜をつくり、半ば自給しながら生活していたが、その後、60年代から70年代にかけての高度成長は終息し、80年代のバブル経済も崩壊した。 にもかかわらず、四季の移ろいや自然の息吹とともに生きることは今日たいへんに難しくなっている。 A氏:90年代になって、日本はほとんどゼロ成長に近い状態になっているにもかかわらず、われわれは、あいかわらず、より便利な生活を求め、より多くの富を求め、休日ともなればより遠くまで遊びに行かなければ満足できない。 政府も、AIやロボットによって、人間の労力をコンピューターや機械に置き換えようとし、住宅もITなどと結びつけられて生活環境そのものが自動化されつつある。 外国からは観光客を呼び込み、国内では消費需要の拡張に腐心しているが、それもこれも、経済成長のためであり、それはグローバル競争に勝つためだという。 A氏:佐伯氏は、こういう状況に対し、自然や四季の移ろいを肌で感じ、地域に根を下ろし、便利な機械や便利なシステムにできるだけ依存しない自立的生活が困難になってゆくのは、われわれの生活や経済のあり方としても本末転倒であろうという。 私:佐伯氏の持論の「成長第一主義」への異論だね。 佐伯氏は、この5月末に『経済成長主義への訣別』という本を出版。 これだけモノも資本も有り余っている今日の日本において、グローバル競争に勝つためにどうしても経済成長を、という「成長第一主義」の価値観には容易にはくみすることはできないという。 現実に経済成長が可能かどうかというより、問題は価値観なのであり、経済成長によって、「より便利に、より豊かに」の追求を第一義にしてきた戦後日本の価値観を疑いたいのだという。 A氏:われわれはグルメ情報を片手にうまいものの食べ歩きに精を出し、旅情報をもとに秘境まででかけ、株式市場の動向に一喜一憂し、医療情報や健康食品にやたら関心をもち、そしてそのあげくに、病院のベッドに縛り付けられて最後を迎えることになる。 こうした今日のわれわれの標準的な生と死は本当に幸せなものなのだろうか、と誰しもが思うだろうと佐伯氏はいう。 私:佐伯氏は、経済成長を否定する必要はないが、そのかたわらで、脱成長主義の生を部分的であれ、「人生フルーツ」の映画の建築家、津端修一氏のように採り入れることはできるはずであろうという。 この発想は、昆虫マニアの養老孟司氏が現代人に参勤交代を提唱しているのと似ているね。 考えてみると、医療技術がすすみ、ピンピンコロリで死にたいと思うと、医療情報や健康食品にやたら関心をもたざるを得ないね。 ついつい、健康サプルメントのCMに目が行くね。 アマゾンの宅配が便利だとついつい利用する。 成長主義の時代の波に抗するには相当の覚悟がいるね。
2017.06.02
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私:「カーボンプライシング」とは、CO2削減を促すために、CO2の排出に価格をつける制度で、環境省は今月から専門家による検討会で本格的に議論を始めるという。 A氏:具体的なもので代表的なのは、排出量に応じて税金をかける「炭素税」。 石炭や石油などの化石燃料を多く使うほど税金が高くなる。 税金を少なくしたい企業や家庭は再生可能エネルギーを使ったり省エネを進めたりして排出量が減るし、そうなれば省エネなどの技術革新も促されるというわけだ。 私:他には、「排出量取引」という制度もある。 まず、国全体のCO2排出量を設定し、それに基づいて企業に排出できる「枠」を割り当て、「枠」を超えた企業は、「枠」が余っている企業「枠」を買う。 CO2をたくさん出すと「枠」を買うお金がかかるし、減らせば「枠」を売って金が入るというわけだ。 「枠」は市場で売り買いして価格が決まるので、CO2の排出が多くなれば価格が上がるから、削減が進むと期待されるという考えだね。 A氏:「排出量取引」は欧州を中心に約40カ国と24地域が導入しているのに日本はまだで遅れている。 日本は「炭素税」に似た「地球温暖化対策税」があるけれど、他の国より税率が低く効果は小さい。 私:経産省や経済界は、CO2排出が多い鉄鋼業界などの負担が重く、国際競争力が落ちるとして消極的。 トランプ大統領も経済第一で「パリ協定」から脱出しようとしているね。 私:しかし、環境省は導入国では経済が成長していて両立できると主張している。 国際的に温暖化対策を進める「パリ協定」が去年発効し、CO2の大幅削減をめざすことになっている。 税の使い道なども含め、効果的で、かつ、日本にあう制度の実施を期待したいね。
2017.06.01
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私:日本国有鉄道や国鉄労働組合(国労)の歴史が単に昭和を代表しているだけでなく、革命の前哨戦のような光景を演じていると評者はいう。 昭和24(1949)年に公共企業体として発足した日本国有鉄道は、戦後すぐは兵士として徴兵された青年たちや海外からの帰還者などを積極的に雇用。 当初は憲法でスト権は保障されたが、GHQの命令でこのスト権は禁止され、昭和24年、過剰な人員の解雇(9万5千人)をめぐっての労使紛争やGHQの介入などに苦しんだ下山定則総裁の自殺(他殺説もあり)があった。 A氏:下山総裁の謎の死については、松本清張の「日本の黒い霧」があるね。 過剰な人員の解雇(9万5千人)をめぐってのGHQの介入に対し、生活に苦しむ職員を解雇をしたくないという下山総裁は板挟みで苦しむね。 私:これが後に映画化されるが、GHQの要求に従わなくてはならない下山総裁役の俳優(小林桂樹)が「これが戦争に負けたということなんですね」というセリフを大臣にしみじみと言うシーンがあったね。 A氏:その後、国鉄は収益性を無視して政治家の都合により路線をふやし、一方で「親方日の丸」意識での慢性赤字の事業体と化していった。 そして、労働現場での組合管理に近い状態、それに抗する当局側との対立。 その対立となれあいは戦後の縮図だと評者はいう。 私:とくに最盛期には50万人の組合員を擁した国労が中心になって現場協議制度が実施され、職場長の権限と権威は失われる。 当局はこれに対して生産性向上運動との名目によるマル生運動で応じるのだが、メディアもこのマル生運動には批判的だったために組合寄りの報道が行われる。 A氏:1970年頃に国鉄の順法闘争というのがあったね。 スト権がないから、安全運転と称してノロノロ運転をする闘争だ。 実際は、ストと同じ状態となり、1974年には、怒った乗客が駅を破壊し、占拠するという暴動も起きる。 私:国鉄労組は、スト権奪回のため75年11月に8日間のストを行ったね。 俺は、このとき東京の会社に通っていたが、横浜の自宅に帰れなくて、その会社のビルにある宿直室に泊まった記憶があるね。 あの当時は国鉄はやりたい放題だったね。 A氏:かって、国鉄の職場には「マルにする」という隠語があった。 小事故は現場で修復して知らん顔をしてしまう(マル秘にする)、という意味だね。 それを黙認し、あるいは積極的に隠蔽に加担する運転区長や機関区長は、人望が厚くなる。 私:こうしていくうちに、厖大な赤字や職場規律の乱れがやがて行財政改革の対象となり、分割・民営化へと進んでいく。 A氏:著者は長年、国鉄の推移を見つめてきた元新聞記者だが、こうした国鉄当局と組合(国労のほかに動労、鉄労、全施労など)の対立やその裏側の労使なれあいの実態を容赦なくえぐっていき、莫大な赤字を生む体質そのものに問題があると浮きぼりにしているという。 私:鈴木善幸内閣の行管庁長官の中曽根氏が、その後、首相となって第二臨調のもとに民営と合理化路線を軌道にのせるプロセスも詳しく書かれているという。 「昭和」の暗部を再びよみがえらせないための、この書の教訓、それは著者が本文中でなんどかにおわす「権力の横暴と権力への媚び」に対する怒りにあるのではないかと評者は指摘する。 最近、「忖度」などという言葉がはやりだしたが、官僚主導から政治主導となりつつある「平成の解体」はどうなるのだろうかね。
2017.05.31
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私:週刊誌的なニュースネタだが、慶応の新塾長の選出が不透明なことがとりあげられている。 A氏:学内の投票で長谷山彰・前常任理事は2位だったが、その後の学内の最高意思決定機関である20日の評議員会で、新塾長に長谷山氏が就任することに決定した。 なんで、1位の人が無視されたのかということだね。 私:4月16日の慶応の塾長選挙では、大学の10学部と「系列校」「職員」の計12部門がそれぞれ候補者を推薦し、今回は19人に上り、次に450人の教職員が2回投票。 結果は、1位は細田衛士・経済学部教授(230票)、2位は長谷山氏(213票)となった。 「組織内のコミュニケーション不足を改善する」などと主張した細田氏が、清家篤前塾長体制への批判票を集めたという。 A氏:ところが、学内外29人の委員でつくる「銓衡(選考)委員会」は、17日、清家氏の2期8年を支えた長谷山氏を評議員会に推薦。 20日の評議員会では、一部の評議員が「これまで教職員の得票1位が選ばれてきたが、その方針を変えたのか」などと疑問を呈したが、銓衡委の議長も兼ねる岩沙議長は「銓衡委として公平に判断した」などと述べ、最終的に長谷山氏の塾長就任が承認された。 「執行部と距離があった細田氏を選ぶのを嫌ったのでは」とみる教員もいるという。 私:長谷山氏は評議員会後の記者会見で「逆転」について問われ「私は塾長選の過程に全く関与していない」と明言を避けた。 慶応義塾広報室は「票数はあくまで参考資料の一つ。1位が塾長になるという規定も慣行も一切存在しない」と説明。 一方、投票で1位だった細田氏は「執行部から説明もなく、密室で塾長が決まってしまった」と話す。 A氏:一般論で言うと、日本私立学校振興・共済事業団の2013年の調査で、「選挙による選出」で学長を選ぶ私立大は35・9%。 一方、文科省によると、国立大ではかつて多くの大学が選挙で学長を選んでいたが、外部の意見が反映されない弊害も指摘されていて、04年の法人化以降、学外の委員も含む学長選考会議に決定権が移り、投票結果は「参考」扱いになっているという。 私:15年4月には学長の権限を強める「改正学校教育法」などが施行され、文科省は、国立大に学長選考で学内の投票結果をそのまま反映させるのは「不適切」と通知。 15年の佐賀大や13年の福岡教育大など学内投票で1位の候補者が学長に選ばれないケースも相次ぎ、15、16年度に学長選考を行った国立大のうち約4割の17大学は投票自体をせず、「脱選挙」も進むという。 A氏:文科省の施策に異議を唱えた「文系学部解体」の著者で、横浜国立大学の室井尚教授(哲学)は「学長の権限が強まり、多くの大学では教授がものを言えない状況だ。その上、投票で意思を示しても無視される。今後も学長選考を巡るごたごたは続くだろう」と言う。 私:慶応の今度の不透明な塾長決定は、その内部の「ごたごた」のあらわれのようだね。
2017.05.30
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私:今月始め、「私日本人でよかった」と日の丸を背景に女性が微笑むポスターが京都の街中に貼られているのが話題になった。 ポスターの発行元は神社本庁だという。 神社本庁の広報担当者は、「祝日の意義を啓発するために祝日に国旗を掲揚することを推進している」と、ポスター制作の意図を語ったという。 特に政治活動がからんだものでないらしい。 A氏:しかし、一方では、一部では憲法改正に向けた署名集めに協力するなど、改憲運動の「最前列」にいるかのようだということで、朝日は神社界の政治的な動きに焦点をあてた。 「神社神道」は、神社を中心とした神道で、信仰の対象は日本固有の神や神霊など。 現在、宗教法人の神社は約8万あり、神社本庁がほとんどを包括し、神職は約2万人で、複数の神社の宮司を兼ねる例も多い。 なお、神道には幕末以降に展開した「教派神道」や日常のなかで習俗として営まれる「民俗神道」などもある 私:しかし、「神社神道」は、改憲運動の「最前列」にいるかのようだが、各地を歩くと、必ずしも一枚岩ではなく、その多様なあり方がとりあげられている。 A氏:愛知県清須市にある日吉神社の三輪隆裕宮司は、「共謀罪は怖いです。絶対に認めてはいけません。安倍政権は基本的人権をどんどんつぶそうとしている」と語る。 三輪宮司は、神社本庁と協力関係にある神道政治連盟(神政連)の愛知県本部の役員だが、「誇りの持てる新憲法の制定」を目指す神政連とは意見が異なる。 私:三輪宮司は、日本は軍隊を持ってもいいと考えているが、文民統制が完全に守られ、国家権力を縛る立憲主義が保障されることが前提という。 また、「いまはルールをばかにする『反知性』の政治で、政治が国民をだます『教育勅語』の時代に戻そうとしていて、そんな政権下での憲法改正を認めるわけにはいきません」という。 A氏:改憲運動を展開する日本会議のホームページでは、役員欄には神社本庁や神政連のトップらの名が並び、神社界が一丸となって改憲に取り組んでいるような印象を持たれがちだ。 私:しかし、神社界は広く、東京都八王子市にある浅川金刀比羅神社の奥田靖二宮司は昨年4月、国会近くでの集会で、施行されたばかりの安保法の廃止を求める祝詞をあげた。 宗教界のほとんどは、先の大戦で戦争遂行に協力したが、戦後の1947年、神社本庁も加わって「全日本宗教平和会議」が開かれ、懺悔文には「身命を賭しても平和護持の運動を起こし、宗教の本領発揮に努むべきであった」とある。 あの誓いを忘れたのか、と奥田宮司は怒り、「祈るだけで平和は訪れません。『宗教の中立性』を口実にするなんてあり得ない。宗教者は無条件で、戦争反対の立場であるべきです」という。 A氏:神社界には、憲法で天皇を「元首」と定めるよう求める動きがあるが、埼玉県秩父市の秩父神社の薗田稔宮司は「象徴」でいいと考えている。 そのうえで「天皇が、国民の幸せを祈って執り行う神事が重要。それこそが天皇を国民統合の象徴とする根拠です」と話す。 いまは「宮中祭祀」は私的行為とされるが、国民のための「公共性」があることを認めてほしいという。 「『宮中祭祀』の公共性を憲法に加えるのが難しければ、皇室典範でもいい」という。 私:薗田宮司は、神道は共同体をつなぐ「祭りの宗教」であり、稲作に象徴される「イネの宗教」でもあると説明。 「農耕的な社会は平和がなくては成り立たない、平和あってこそのエコロジーで、それを前提にした宗教なのだから、万物のいのちを大事にすることが基本的なモチーフ。そこから『何としても戦争は避けるべきだ』という信念がある」といい、憲法9条1項(戦争放棄)は残したほうがいいと語る。 ただ、いわば「民族存立の自然権としての自衛のため」という限定的な意味での戦力は薗田宮司は容認する。 確かに現場の宮司の間には政権批判も含め右も左も多様な意見があるね。
2017.05.29
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私:2015年のドイツの年間労働時間(OECD調べ)は日本より25%も短いが、1人あたりGDP(購買力平価、IMF調べ)は、日本より17%大きい。 日本企業の社員の長時間労働は、それが経済成長にあまりつながっていないと評者はいう。 A氏:他方で東芝、電通、三菱自動車など日本を代表する大企業で組織ぐるみの不祥事が相次いでいて、自浄作用が働かなくなってしまった。 日本企業は構造的な大きな問題を抱えているのではないか?と心配になると評者は指摘する。 私:本書は日本企業が抱える諸問題に共通する「病根」があると主張し、個人が組織や集団から「分化」されておらず、共同体型組織に埋没してしまっている点に問題があるという。 個人の職務と権限が明確に決まっておらず、人事評価には上司の主観や裁量が入りやすいため、出世競争を勝ち抜くには「無際限・無定量」の忠誠と貢献が必要となる。 人間関係が濃密だと、不正が見逃され、意思決定が「空気」でなされる「集団無責任体制」にもなりやすい。 A氏:このブログの「『タテ社会』揺るがぬ50年・読み継がれる日本論」でふれたように日本は依然として「タテ社会」だね。 私:大量生産が重視された工業社会の時代には、日本の共同体組織はうまく機能したが、IT化が進むポスト工業化社会では、「規格外」で「天井」を突き抜ける意欲・能力を持った人材が必要だが、同調圧力が強いと「出る杭」は打たれやすい。 A氏:一方、28カ国で実施された仕事に対する正社員の「熱意」を尋ねた調査では、日本人は極端に低く最下位で、長く働くが、熱意に欠けるという状態に陥っているという。 長時間労働という「ぬるま湯」につかっているのだろうか。 私:評者は「企業の生産性を高めるには、社員の『内発的モチベーション』を高め、生き生きと働いてもらう必要があるだろう。そのために本書が推奨する『分化』の処方箋(職務・権限の明確化、雇用から独立自営に切り替える『社内独立制度』、副業の推奨など)は傾聴に値する」という。 A氏:それには、このブログの「働き方改革 転職が当たり前の社会に」でとりあげたように転職が自由にできる雇用制度を構築すべきだね。 私:たまたま今朝の「働き方改革を問う・3」の欄で「揺らぐ正社員像」と題する記事があり、その囲み記事「視点」で、転職しやすい環境を整える重要性を強調しているが、政府の「働き方改革実行計画」では転職のハードルを大幅に引き下げる方策は見当たらないと指摘している。 労使も腰が重いが、ライフステージに合わせて多様な働き方を選べる社会をつくるために、長期雇用の正社員を中心に据えてきた「日本型雇用システム」の見直しが、ポイントだね。 プレミアムフライデーなどという、お遊び感覚は問題外だね。
2017.05.28
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私:子どもの頃、どうやって入手したのか記憶にないが、ペットを飼うように、蚕を数匹飼ったことがある。 餌は桑の葉だが、郊外の農家の桑の木から、こっそりもいで供給していた。 大きくなると食欲はすごかったが、繭ができたときは子ども心に感動したね。 当時は、繭の生産を行っている農家は郊外に結構あったね。 A氏:繭の生産はピーク時の1930年代の約40万トンが、135トン(15年)まで激減した。 化学繊維が普及し、中国の安い生糸が入ってきて、養蚕を守るために70年代には生糸の輸入規制が始まったが、かえって関連産業が海外に移ることになり、いまや製糸工場といった関連産業は群馬、香川、長野各県などにそれぞれ数軒だけで、生産した糸は和服などに使われているという。 私:ところが、その「斜陽産業」と言われて久しい養蚕への新規参入が相次いでいるという。 2社の例をあげている。 まず、熊本県山鹿市に4月、国内最大の養蚕工場「あつまる山鹿シルク」ができた。 年間で繭を最大100トン生産できるといい、達成すれば、養蚕農家が約130戸ある群馬県(2015年47トン)を、一つの施設で超える。 社長の島田氏は「農業だけではなく、科学、医療でも幅広い役割を果たせる」と力をこめるという。 A氏:島田氏は、求人情報誌をだす「あつまるホールディングス」(熊本市)の社長が本業だが、14年初め、ある講演会で無菌ルームや人工飼料で蚕の飼育が可能と知り、「これは行ける。ライバルはいないし、空いた土地でできる手ごろな新規事業」と感じたのがきっかけだという。 私:飼料が桑の葉でなく、人工飼料になったのは大きな技術進歩だね。 無菌ルームでは、病気に弱い蚕を安定的に育て、高品質な繭を生産でき、従来のやり方では生産は年3、4回ほどだが、新たにつくった工場では最大24回できる。 昔に比べれば国産の糸も価格が下がり、輸入糸との価格差も小さいが、伊藤忠商事の子会社に売り先を探してもらっていて、高級衣料向けの生産を目指す。 A氏;技術進歩のおかげで、最近の研究では、蚕は遺伝子組換えや特殊なウイルスの力を借りて、人間に近い成分のたんぱく質を作ることが可能と判明。 将来的には大学と連携し、工場の一部を、手術で使う縫合糸や、すり減った軟骨の再生といった医療用の研究に使うアイデアもあるという。 繭の生産が軌道にのるにはまだ、3年ぐらいかかりそうだという。 A氏:もう1社、新潟県十日町市の和服加工販売「きものブレイン」(岡元社長)も15年末、無菌飼育の養蚕施設の試験操業を開始。 粉にした繭を混ぜ込んだ化粧品やせっけんなどを18年までに商品化し、百貨店への出店を目指す。 私:しかし、岡元社長は、着物用の生糸づくりを諦めたわけではなく、東大の研究機関と組み、特殊なホルモンを蚕に注入し、作り出す繭の量を通常の1・3倍に増やすことを可能にしたという。 岡元社長は、「このままでは伝統的な養蚕は途絶える。養蚕業維持には年1千トンの生産は必要だ」と言い、今の生産能力は年10トンだが、いずれ100トンにしたい考え。 今春にはそのための施設も確保し、自ら編み出した量産方法を同業他社に教え、養蚕の復活をもくろんでいる。 蚕が群れをなし、最後に繭が沢山できるという無菌工場は壮観だろうね。
2017.05.27
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私:今日のテレビは各局とも朝から、一斉に前川・前文部科学事務次官の昨日の記者会見と、この問題の解説を報じているね。 今月の「池上彰の新聞ななめ読み」では、池上氏はこの記者会見を含め、加計学園問題を早速よりあげているね。 A氏:まず、とりあげたのは5月16日の新聞各社のトップ記事の違いだね。 前日の夜7時のNHKニュースの「秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまが、大学時代の同級生の男性と婚約される見通し」という特ダネを受けて、新聞各紙は翌17日の朝刊で追い各紙1面トップで報じる中、異彩を放ったのが朝日だ。 私:朝日は、「眞子さま婚約へ」という記事は2番手で、1面トップに加計学園の新学部は「総理の意向」という別の特ダネをもってきた。 この朝日の独自路線の選択は、いい判断だと池上氏は評価している。 A氏:うがった見方をする人は、加計学園のクローズアップを避けるために、まだ正式に決まっていない「眞子さま婚約」を流したのではないかという。 私:加計学園の新学部に関し、安倍首相の意向が働いたかどうかが、最大の焦点で、それを示す内部文書が文科省の中にあったというスクープ。 A氏:朝日の特ダネに敏感に反応したのが毎日で、17日夕刊で、すぐに次のように、追いかけた。 「毎日新聞が文科省関係者から入手したA4判の文書によると、『獣医学部新設に係る内閣府の伝達事項』と題された文書には『平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい』『これは官邸の最高レベルが言っていること』と早期の開学を促す記述があった」。 私:朝日が報じた文書について、同日午前、菅官房長官は、怪文書扱いしたのを、池上氏は不思議な対応だという。 本来、このような重大な事実を推測させる文書の存在が報道されたら、「重大な問題を提起している。早速事実関係を調べてみたい」と答えるべきで、それが、怪文書扱いして調べようとしないのは、何か不都合なことがあるからではないかと思ってしまうと池上氏はいう。 A氏:朝日は、25日付朝刊で文科省の前川喜平前事務次官のインタビュー記事を掲載し、事務次官在職中、問題の文書を見たと証言したので、 怪文書ではなくなるが、松野文科相は25日の参議院文教科学委員会で、「すでに辞職された方の発言であり、文科省としてコメントする立場にない」と述べ、何としても認めたくないのを、池上氏は、教育行政のトップは、こういう人なのですと最後に厳しく批判している。 私:池上氏が予測していたように、その後の政府側の対応は、問題の本質でなく、前川氏は出会い系サイトに通っていたとか、天下り問題でその地位にしがみついていたとか、個人攻撃が始まるね。 痛いところを突かれると、あるレベルの人は問題の本質をぼかすために、こういうある意味、品のない対応をするね。 早速、出会い系サイト報道をした読売を池上氏はどうコメントするだろうか。
2017.05.26
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私:昨日、このブログでとりあげたフランスの新大統領マクロン氏については、ピケティ氏がその政策面を論じていたが、この遠藤乾教授のマクロン氏のコメントは、その人物に焦点をあてているね。 A氏:権力者になったばかりのマクロン氏への評論は、批判的になるのは普通のことかもしれないし、議会選の洗礼もまだで、多数を取れなければ手足が縛られる。 政策をみても前オランド政権と代わり映えしないと言われ、ロスチャイルド銀行での経歴からグローバル化の代理人だと揶揄され、39歳の若者に、フランス社会に走る深い亀裂を修復することができるのか、疑問視する声が後を絶たないという。 私:グローバル化が、不人気で、EUはつぶれると言われていた中で、マクロン氏は11人の候補者中唯一、開放経済と欧州統合の意義を堂々と肯定し、そのうえで選出された。 A氏:マクロン氏は、まったく批判を恐れていないようで、おそらく、独りになっても他の全員を説得しようとするタイプだと遠藤教授はみる。 私:政教分離(ライシテ)に傾く家庭で育つも、12歳で自ら洗礼を受けに出かけ、家族を含め周りがどれほど反対しようと、25歳年上の妻ブリジットとの愛を貫く。 ほとんどが翻意を迫るなか、大統領府高官や経済大臣の職を辞し、自前の政治運動に身を投ずる。 強い確信抜きには考えにくい行動だという。 A氏:避けられないグローバル化の下、フランスが一国では限界があるとマクロン氏はよく知っていて、それゆえにまず自国を構造改革したうえで、ドイツとEUを動かし、自国(民)に有利な環境を整えようとする。 失業寸前の労働者を目の前にしても、EUはフランスを保護するのであり、一層そのように作り替えねばならないと、マクロン氏はそう説くという。 私:この確信はより深く彼個人の知識経験に根ざしたものだという。 基本的に実務志向であるものの、おそらく彼は、思想的にはキリスト教左派の共同体的人格主義の潮流に位置づけられ、それによれば、個人と共同体は相互作用の中で初めてお互いに開花するという考えだ。 個人を重視する右派と共同体に傾く左派との対立はとけあって向上されねばならない。 A氏:これは、大陸欧州に典型的なイデオロギーで、この視角からすると、個人が過度に自由を享受する米国では共同体が後景に退く。 国家や社会が個人を圧迫するロシアやアジア諸国では、自由が消える。 対して欧州は、個人と社会、市場と衡平、競争と尊厳との間に均衡が成り立つ稀な場に映る。 私:国単位でも、欧州という枠のなかでフランスは開花し、そうなることで欧州も輝くから、それは、維持されねばならない。 統合や協調を進めるのに弁解は不要だ、となる。 珍しい大統領を得たと遠藤教授はいう。 もちろん、確信は傲慢と紙一重であり、逆機能しうるので、行方を注視したいという。 米国は、トランプという異色の大統領を迎えたが、フランスは別の意味で異色な大統領を迎えたことになるのかね。 しかし、この2人は対照的だね。 トランプ氏は70歳でグローバル化反対の保護主義者、行政経験がなく、イデオロギーなきビジネスデーラー型。 これに対し、マクロン氏は39歳の若さ、グローバル化の推進派、官僚経験のある実務型だが、一方で、欧州のイデオロギーを根底に持つイデオロギー型。
2017.05.25
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私:フランス大統領にエマニュエル・マクロン氏が選ばれたが、ピケティ氏は、新大統領(の公約)には的を射たものもあるが、全体的には生煮えで、ご都合主義だと批判的だね。 A氏:最も期待がもてる分野は、他の国よりはるかに複雑で難解なしくみになった社会保障制度を時代に合わせて見直し、一本化することだという。 年金はその極端な例だが、マクロン氏の公約では、年金制度の統合をめぐる記述はわずか1行で終わっている。 私:失業保険制度も、大きな課題。 労働法制では、バランスの取れた改革が打ち出された。 従来は「社会的に恵まれていない」という烙印だけが押されて放置されてきた学校に、追加的な資金を投じるということで、教育では、マクロン氏の公約は良い点をついているとしている。 しかし、「学校週4日制」という、他国にはない害の多い制度を復活させようとしていて、ここにも「マクロン主義」の煮えきらなさがうかがえ、「改革路線」をひとつまみ、「保守路線」をオタマに1杯といった具合だと、ピケティ氏は、皮肉っている。 A氏:全般的に、人材育成の具体的な投資戦略における全体ビジョンがわかりにくいが、これは非常に重要なテーマだとピケティ氏は指摘する。 フランスは現在、世界で労働生産性が最も高く、ドイツと同程度で、米国よりもはるかに格差の小さいモデルで実現している。 だが、この地位を維持できる保証はまったくないという。 ドイツとは逆にフランスの人口は増え続けており、学生数は人口よりさらに速い速度で増加している。 見合うだけの資金が振り向けられていれば、すばらしい話だがと、ピケティ氏はいう。 私:マクロン氏は、社会保障の財政と税制にはきわめて保守的で、すべてを社会保障目的税でまかなうという。 むしろ、所得税での源泉徴収を行うことこそ、今日の喫緊の課題で、外国に遅れること半世紀、ようやくフランスも源泉徴収を18年1月から始める準備が整った。 ところがマクロン氏はその延期を唱える。 A氏:また、マクロン氏は、累進税の概念を明らかに理解していないとピケティ氏はいう。 その証拠に、金融所得への課税上限を30%に定めるという。 同等に高い水準にある労働所得への課税上限は55%。 金融証券にかかる財産税は廃止する方向で、奇妙なことにマクロン氏の頭の中では、不動産投資より金融投資の方が「生産的」であるらしいとピケティ氏は批判的だ。 私:ピケティ氏は、最後に、欧州の改革にふれている。 最も重要な課題は、民主主義的に揺るぎがない機構をユーロ圏に創設し、将来の危機に対処できるようにすることだとピケティ氏は、持論を展開している。 政府首脳や財務大臣による密室でなく、公開の場での討議、それぞれの国で示される多様な意見、そして各国または欧州から選ばれた代表者による「ユーロ圏議会」の創設だ。 強力な民主的な機構が存在しないことこそ、欧州を脅かす最も深刻な危機で、残念ながら、今年のフランスとドイツの選挙によって難局を克服できるとの見通しは、まだ立っていないとピケティ氏は、この問題については悲観的だね。 EU全体としても、参加各国の国内でもまだ、多くの問題をかかえているね。
2017.05.24
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私:「AIの活用でユニクロは強くなれるか」の記事の中で、経済ジャーナリストの片山修氏は、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が打ち出した「『製造小売業』から『情報製造小売業』へ方針を紹介。 A氏:「情報製造小売業」とは、「つくったものを売る」のがこれまでの「製造小売業」だとすると、「情報プラットフォームをベースにAI(人工知能)などを活用して消費者のニーズをリアルタイムに把握して、商品に反映する」ことだそうだ。 私:要は、個人の好みが多様化する中、長すぎる商品サイクルをやめ、世の中のトレンドと新商品を限りなくマッチさせようという試みで、さらに、「世界中の顧客の購入履歴や店舗ごとの販売動向といったビッグデータをAIで解析」し、売れ筋の変化も予測していくとのこと。 A氏:柳井氏は「変化を受ける側になると滅びる。世の中に変わらされる前に、自らが変わる。周囲を変える原動力になる。新しいテクノロジーを駆使し、組織そのものを大胆に変革していく。情報製造小売業とは、そのようなものだと思います」という。 私:「製造小売業」から「情報製造小売業」への改革と実践の場である「有明プロジェクト」の拠点を、今年2月、東京・江東区有明に、オフィス兼物流拠点の「ユニクロ・シティ・トウキョウ」を構えた。 企画から販売までの全プロセスを同時進行させ、社員一人ひとりの働き方、工場や生産そのもののビジネス構造も変革していくのだという。 A氏:課題の一つは人材だと片山氏は指摘。 「ビジョンを現実の世界に落とし込んでいくのは人間」だからで、そんな人材をいかに育成できるか、ユニクロの正念場だという。 私:しかし、顧客のニーズの多様化を際限なく創り出すのは、顧客の欲望の拡大化で、いつか、壁が来るのではないかという気がする。 宅配便問題ではないが、人は「足るを知る」という知恵の拡大も必要なのではないかね。
2017.05.23
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私:40年前に「八甲田山」という映画を見たが、高倉健が主演だったね。 これは、1902年1月23日、日露戦争に備えた耐寒訓練などを目的に、旧陸軍青森第5連隊(青森隊)が八甲田越えの雪中行軍に出発し、1泊2日の予定だったが、記録的寒波と暴風雪にあい、参加した210人のうち199人が死亡するという壮烈な事件を映画化したものだね。 A氏:ところが、別ルートで八甲田越えした弘前第31連隊(弘前隊)は成功しているんだね。 弘前隊は遭難した青森隊が出発した3日前に弘前市を発ち、十和田湖を経由する反時計回りのコースをとり、区間ごとに地元住民に道案内させた。 八甲田連峰の横断には、ふもとの十和田市から20~30代の猟師ら7人が同行し、11泊12日全224キロの行軍を一人の死者も出さずに完遂させた。 私:しかし、旧陸軍により青森隊の悲劇が美談のように語られ、事件の2年後に生還者の後藤房之助伍長の銅像が建てられたのとは対照的に、弘前隊を率いた福島泰蔵大尉(1866~1905)の報告書は直後の部内報に掲載されず、封印された。 旧陸軍が、青森隊の失敗と比べられるのを恐れたためとみられ、地元の案内人については、福島大尉が「絶対に口外するな」と口止めし、地元でも知られることはなかった。 A氏:その後、案内人7人のうち1人が知人に話した経験談が地元紙に掲載されたことをきっかけに知られるようになり、1931年、地元青年団が7人を「七勇士」とたたえる石碑を建立し、小学校が7人の顔を彫ったトーテムポールを建てたり、活躍を伝える版画を作ったりするなどの活動があったが、地元だけの取り組みだったという。 私:この弘前隊を道案内した7人の地元の村人・「七勇士」の活躍を語り継ぐため、2年ほど前に地元の研究家らが「八甲田山雪中行軍を語り継ぐ会」を発足させ、これにより、7人への共感が広がりつつあるという。 昨年12月には十和田市が譲り受けた7人の石碑を修繕。 今後、小学校などでの「七人の勇者」の読み聞かせを通じ「地元の誇りを子どもたちに伝え、広げていきたい」という。 A氏:弘前隊に参加した間山仁助伍長の孫で、事件を研究する元喜氏は「青森隊は初日から暴風雪に遭った。映画は指揮の乱れを中心に描かれたが、冬の八甲田に対する情報が少なかったことが最大の要因だ」と分析しているという。 私:今でも、陸上自衛隊の演習があるが、事件があった1月23日周辺が演習日に選ばれることはほぼなく、それは翌24日は地元で「山の神の日」と呼ばれ、猟師が山に入ることを慎むほど、荒天が多いとされるためだ。 青森隊は、まさにその「山の神の日」にやられたわけだね。 弘前隊は、運良く、その3日前に出発しているし、八甲田山の雪をよく知るふもとの猟師ら7人の案内で、行進したのも成功の一因だろうね。
2017.05.22
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私:一昨日のブログ「歴史の輪郭、ぼやける怖さ・多和田葉子のベルリン通信」で、ドイツではナチス政権が人種、思想、宗教を理由に差別、迫害、殺人を行ったこと、言論の自由を侵害したこと、ナショナリズムを煽って侵略戦争を行ったことは、どんなに政治的立場が違っていても一応みんな認めてきたはずだった。 ところが、それを平気で否定するような演説が現れ、支持者を得るようになってきたと報じていたが、この本も敗戦後に何の反省もないナチ政権下の裁判官の態度を徹底的に批判しているという。 A氏:著者はドイツのジャーナリスト、編集者だが、著者がこの書を執筆中に何度も 「今さらナチスの過去について書く意味があるのか?」と聞かれたというが、この本では、ナチスに協力した自分を時代の犠牲者とみなし、後悔の念もないという、裁判官を追及しているという。 私:この評伝の主人公のローラント・フライスラーは、ナチス・ドイツの独裁下で国家反逆行為などを裁く人民法廷の長官を務め、ナチスに抵抗した学生グループ「白バラ」やヒトラー暗殺未遂事件の被告らに死刑判決を下した裁判官。 この本では、著者は、フライスラーの評伝として、ナチスの恐怖政治と完全に一体化した法律家の狂信的な行動を描くだけにとどまらない。 多くの裁判官が、人道的な刑法を廃絶して国家の権利を第一とするナチスの法支配に「嬉々として」従った経緯を克明にたどり、敗戦後に何の反省もない彼らの態度を批判し徹底的に指摘しているという。 A氏:1934年創設の人民法廷による死刑判決は5243件。 本書では、第2次大戦中の43、44年にフライスラーが関わった判決文10件を代表例として紹介している。 「一般市民」が職場の同僚らに何げなくもらした体制への不平不満が「死に値する大罪」と見なされた。 判決文は不条理劇の脚本のようだが、悪夢のような世界は現実にあった出来事だという。 日本の国会で討議された「共謀罪」に登場する「一般市民」もドイツでも登場していたんだね。 それに最初は、共産主義者を対象にした日本の「治安維持法」が、「一般市民」反政府的発言まで適用拡大していく経過にも似ているね。 私:しかし、著者は、これがフライスラーの「悪魔的性格」によるものではなく、「ナチスの法解釈をとりわけ几帳面に実践したひとりの執行人に過ぎなかった」ことを指摘する。 フライスラーは45年2月のベルリン空襲で死亡したが、人民法廷に関わった他の法律家たちは戦後どうなったか。 多くの者がナチス政権下の法に従っただけとして処罰を免れ、復職まで許された。 A氏:法律家たちはナチスに協力した自分を時代の犠牲者とみなし、後悔の念もなく、どの国、どの時代にも現れそうな無責任体質の人々で、ナチス時代が現代と地続きなのではないかと思わせるという。 私:自己正当化のあまり「歴史健忘症」に陥りがちな我が国の傾向にあらがうため、本書を読む意味があることは間違いないと評者は言う。
2017.05.21
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私:今週初めに北京で「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」会議が、開かれた。 今回、北京にやってきたのは約130カ国の代表で、うち首脳は29人にも上った。 背景にあるのは、中国の巨大な経済力で、今後5年間で約17兆円をシルクロード地域に投資するという。 A氏:古谷浩一氏は、この会議で、各国の首脳たちは順番に、習氏の前に進み、1人ずつ握手をして記念撮影をするという儀式に参加させられたのを見て、頭に浮かんだのは、故宮博物院所蔵の絵に描かれていた中国皇帝の謁見の光景だったという。 私:まさに「朝貢外交」のイメージだね。 中国国営テレビは約40分間もこの様子を生中継で伝え続け、しかも、同じ儀式は各国首脳たちが会場に入るたびに、2日間で2度、繰り返されたという。 A氏:古来、中国の皇帝は、周辺の国々に経済的な恩恵を与えることと引き換えに、緩やかな従属関係を求め、これによって中国への侵略を防ごうとし、言うことを聞かない国に対しては交易を止め、経済制裁を科した。 私:今回の会議後、中国政府シンクタンクの研究者が、「中国は外国に対して『433』で臨むべきだ」といった。 4は経済、3と3は政治と軍事で、政治や軍事は何かと摩擦が生じるから、「相手国の国民感情も配慮し、まずは経済重視だ」という意味だという。 ただ、研究者の考えのミソは、3と3を足すと6になることで、一見、経済重視ではあるが、実は政治・軍事の比重の方が大きいということで、習氏は何も「もの言わざれども」、一帯一路構想における本音はこの辺にあるように思えてならないと古谷氏はいう。 A氏:そう言えば、話が少し変わるが、こないだテレビで、ハリウッド映画の有名スターであるリチャード・ギヤがこのところ、大作に出演しなくなった。 原因は、彼が反中国発言をしたことにあるという。 今、ハリウッドの大作には中国マネーがあるという。 リチャード・ギヤは、中国マネーに嫌われたのかもね。 私:中国マネーの力は気づかないうちに、いろいろなところで、その力を発揮しているんだね。
2017.05.20
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私:多和田葉子氏は1960年、東京生まれで、小説家、詩人。 82年からドイツに住み、現在ベルリン在住で、93年、「犬婿入り」で芥川賞を受賞し、2011年、『雪の練習生』で野間文芸賞、ドイツ語での文学活動に対し、16年度のクライスト賞を受賞。 今、世界は国の行方を左右する大きな選挙が相次ぐ欧州を注目している。 そこで、朝日新聞は、多和田氏に欧州情勢を交えた現場の状況を寄稿をしてもらい、随時掲載するという。 今回が、その第1回の寄稿だね。 A氏:今回の寄稿の出だしのタクシー運転手の話は、面白かったね。 運転手は「福島の原発事故故って本当は起こらず、あれは事故に見せかけてイスラエルが秘密兵器の実験を行った」と多和田氏に話しかけるんだね。 多和田氏が「どこでそんな話、読んだんですか?」と聞くと「インターネットからだ」といい、信じているようだという。 陰謀史観の一種だね。 私:さらにその運転手は「1945年、広島に落ちたのも本当は原爆じゃなくて普通の爆弾だった」という。 タクシーを降りる時、運転手は携帯を取り出して、「原子爆弾は存在しない」という見出しの付いたサイトを見せてくれたが、方程式や図面などを取り入れた膨大な英語のサイトだったという。 本来、ドイツでは史実を歪めることは法律違反になっていて、例えば「ホロコーストはなかった」で検索すると「ホロコーストはなかったという嘘」というサイトしか出てこないというが、実際には、このタクシーの運転手のような情報がはばをきかしているようだ。 A氏;多和田氏は、今、ドイツ社会が揺らいでいるのは、難民を受け入れたからでもテロ事件が起こったからでもないという。 保守も革新も同意していた歴史の輪郭が次の世代に伝わりにくくなってきたからだという。 私:ナチス政権が人種、思想、宗教を理由に差別、迫害、殺人を行ったこと、言論の自由を侵害したこと、ナショナリズムを煽って侵略戦争を行ったことは、どんなに政治的立場が違っていても一応みんな認めてきたはずだった。 ところが、それを平気で否定するような演説が現れ、支持者を得るようになってきたと報じている。 A氏:多和田氏は、フランスの大統領選を評して、「マクロンが選挙戦の最後に声をからして強調していたのは、ヨーロッパが連帯することがいかに大切かという一点だった。 フランスはマクロンを選んだというより、EUを選んだのではないかと思う」という。 私:EUを選ぶことはナショナリズムにノーを唱えることであり、第二次世界大戦のような惨事を二度と繰り返さない、という決意の表れでもある。 そのためには、第二次世界大戦がどういう戦争だったかという認識を共有する必要がある。 もしも、多和田氏を乗せたタクシーの運転手のように、広島に原爆が落ちたという事実さえ認めない人間が増えていくようなことがあれば、我々は携帯を見ながら運転するドライバーの車に乗せられた客と同じで、大変危険な未来に突入することになるだろうと、多和田氏は警告する。 それは欧州だけでなく、日本も同じ危険性をはらんでいるね。 A氏:3年ほど前にこのブログでもとりあげた「陰謀史観」秦郁彦著というのがあり、「大東亜戦争はすべて天皇の強力なリーダーシップによるものだ」という「天皇陰謀論」、「張作霖爆殺はソ連工作員によるもの」、「ルーズベルトが真珠湾攻撃を事前に知っていたが放置した真珠湾攻撃陰謀説」、「日米戦争はソ連の策略というコミンテルン陰謀史観」、「ユダヤ陰謀史観」まである。 私:最近では、森友学園問題で「教育勅語」が問題になったが、敗戦直後の48年6月には、衆参両院で、「教育勅語」の排除・失効の確認が決議され、「教育勅語」が「神話的国体観」に基づいている事実は、明らかに基本的人権を損ない、国際的にも疑念を残すとして謄本を回収し、排除を完了するとした。 ところが、最近では「教育勅語」には、いい箇所もあるとして、復活気味なのも、ドイツ同様、敗戦後、歴史の輪郭が次の世代に伝わりにくくなってきたせいかね。
2017.05.19
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私:山極寿一氏は京都大学総長・ゴリラが専門の霊長類学者で著書に「『サル化』する人間社会」などがある。 ところで、先進的な医療が急速に進む背景には、人類の進化の歴史が深く関わっていて、人類は遺伝的多様性が低いため、数多くの遺伝的疾患を抱えることになったのだという指摘は興味があるね。 世界人口は70億を超えるが、遺伝子をたどると1万人程度の共通のご先祖さまに行き着く。 A氏:それは、人類の祖先がアフリカ大陸を出てユーラシアやオーストラリア、南北アメリカ大陸へ広がる前に、いったん極端に人口が減ったためだ。 私:ところが、人間に最も近縁なチンパンジーはアフリカに約30万頭いるが、10万頭から枝分かれしたものだ。 祖先の母集団が十分に大きければ、交配を繰り返す中で弱い遺伝子は淘汰されるが、小さいと悪影響を持つ遺伝子が淘汰されずに残る可能性がある。 だから、人より強い遺伝子を持つチンパンジーは、現代人を悩ませるアルツハイマー、リウマチ性関節炎、ぜんそく、子宮内膜症、心筋梗塞、熱帯性マラリア、HIVなどに縁がないのだという。 A氏:逆に、人間はこれらの病気治療にむかって、医療技術が進み、「ゲノム編集」という遺伝子操作の先端技術が生まれる。 「ゲノム編集」とは、酵素を用いてDNA鎖を切断し、そこに別のDNAを組み入れる遺伝子操作の技術。 既にイネやトマトなど栽培植物、ブタなどの家畜、マダイやトラフグなどの魚に応用され、成長が速く収量が多いものが作り出されている。 筋ジストロフィーや白血病など遺伝性の難病治療や、寄生虫の遺伝子を組み換えて感染症を根絶する効果も期待されているという。 私:さらに、2014年には、中国で世界初の遺伝子組換えサルが誕生。 15年からはやはり中国で、ヒトの受精卵の遺伝子操作が試みられ、昨年は臨床応用に向けた研究も始まり、英国でも昨年からヒトの受精卵に「ゲノム編集」が使われることになった。 こうなると、親が望むような特徴を持つ子どもを作ることもできる。 A氏:山極氏は、この寄稿文の書き出しを、「3年後の東京五輪に、遺伝子操作で競技に必要な筋力だけを増強させたアスリートが登場するのも、夢物語と片付けられない。欧米や中国での人体への応用を見ていると、そう感じる」としている。 私:「ゲノム編集」は、ヒトの生き方に新しい可能性を開く夢の技術だが、生命をめぐる仕組みを根本から変えかねない危険をはらむので、厚労省は受精卵と生殖細胞の遺伝子改変を禁止している。 「『ゲノム編集』や再生医療技術は、治療だけでなく、ヒトの命の始まりや遺伝的シナリオに手を加える可能性を広く持つので、地球に誕生した命のつながりを恣意的に変えることが私たちに許されるのか。 人類が神の領域に踏み込む技術を持った今、確かな哲学と倫理の創出が求められている」と山極氏は警告している。
2017.05.18
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私:敗戦と占領で、高揚した日本主義に終止符が打たれ、アイデンティティーが喪失され、戦後「日本とは何か」が問われ、日本人論が盛んになった。 その中で日本の社会構造を説明した名著として内外に知られるものに中根氏の『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)がある。 出版後、50年を迎えたというが、若い時、自分の身の回りを見ながら、納得してよく読んだのを思い出すね。 今も読み継がれ、117万部に達するという。 A氏:この本で最初、ショックだったのは、日本では、記者やエンジニアといった「職種」」よりも「○○社に所属する者だ」という意識が強いことを挙げてあったことだね。 自分の「職種」をいわず、「ソニーに勤めています」「東芝で働いています」だね。 欧米やインドでは「資格」が重視されるが、日本では会社などの「場」が重視される、と指摘した。 私:この体質が、今、問題になっている「同一労働・同一賃金」というヨコの横断的な「職種」や「資格」の明確化を阻んでいるね。 A氏:「資格」が同質であることをベースにした集団が「ヨコ」の関係にあるのだとすれば、日本の集団と組織は「タテ」の関係で構成されていて、「親分・子分」の関係性や入社年次などの「序列」がその典型。 海外では、戦後日本の奇跡的な高度成長を支えた「会社人間」や「年功序列」の背景を説明する理論としても注目された。 私:半世紀たった今も、1億人もいる大きな社会は、そう簡単には変わらず、「タテ社会」という見立てに変わりはないと中根氏は明言する。 中根氏は、タテの関係性が健在であることを感じた最近の事例として、電通の女性社員の過労自殺事件を挙げ、「感情的な一体感を要請される職場は、運よく人間関係がよければ思いやりのある場になるが、悪ければ逃げ場のない場になる。会社を超えたヨコのつながりがなければ、外へ救いを求めることもできません」という。 A氏:「もし自説に理論的な整合性がないと発見したときはもちろん修正します」とそう語りながらも、中根氏は意気軒高だという。 私:原子力ムラの存在、長時間労働、そして天下り、「忖度」などなどあるね。 高度成長期に完成した「タテ社会」的雇用構造。 これは、このブログの「働き方改革 転職が当たり前の社会に」でとりあげたように、新卒時に一括採用され、辞令一つでどこへでも転勤し、長時間の残業や職種転換もいとわず、代わりに長期雇用が保障され、年齢とともに役職と賃金が上がる、そんな正社員を中核に据えたシステムだったね。 これが、経済の停滞が長引くと企業は正社員の採用を抑え、一般に低賃金で雇用保障も弱い非正規社員が働き手の4割ほどに達し、転職市場は十分に整備されず、中途採用で正社員になるのは難しい事態が生まれる。 一方、職場がブラックでも正社員の多くは、今の会社で踏ん張り、過労死やストレスによる精神疾患といった悲劇も後を絶たない。 A氏:経済の停滞とともにこれから脱し「働き方改革」をしようとすると、「タテ社会」がブレーキになっているね。 私:労働時間や転勤の有無といった選択肢を多様化することに加え、転職しやすい環境を整え、滅私奉公に苦痛を感じる正社員や不本意ながら非正規社員を続ける人が、自らの意思で会社を移り、自分に合った働き方ができる正社員として中途採用されるようになれば、職場の「タテ社会」は崩壊し、日本型は欧米型に近づくことになる。 「タテ社会」は世界のグローバル化に呑み込まれるのだろうか。
2017.05.17
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私:「共謀罪」の趣旨を含んだ組織的犯罪処罰法改正案をめぐる衆院法務委員会の審議が大詰めだが、懸念される「『市民』への不当な捜査」の議論は平行線のままと報じている。 12日の衆院法務委員会で、「捜査の前段階の尾行は違法か」との野党の質問に対し、政府側は「警察活動としてどの範囲が許されるのかということについては答えられない」という答弁。 A氏:「一般人は捜査対象にならない」とする政府と、「『一般人』も犯罪があったかどうかを判断するための捜査が及ぶ」とする民進党などとの議論は深まっていないね。 立命館大の松宮孝明教授(刑事法)は「建前では許されないけど、現実はどうなのか、という点が多くの人にとって不安のもとなのに、これでは実質、ゼロ回答だ」と批判。 私:議論が進んでいない主な論点は、「『一般市民』が捜査対象になるかでは、政府側は「捜査対象にならない」が、野党側は「捜査対象になる」だ。 また、処罰対象となる「準備行為」と通常の行為の区別については、政府側は「犯罪の計画に基づくかどうか、携帯品や外形的事情で区別」とするが、野党側は「内心を調べなければ区別できない」という。 A氏:政府答弁のなかに「酒を持っていったら花見だが、双眼鏡を持っていったら準備行為だ」だという、とんでもない答弁もあったという。 私:「一般人」や「一般市民」の区別も曖昧だね。 テロリストは「一般人」や「一般市民」がなるものだし、その心の変化はわからない。 A氏:以前、このブログの「革マル派、実名特定ってどういうこと?」で共産主義による暴力革命をめざす、「革マル派」と「一般人」との関係にふれているね。 」 私:「革マル派」には実名を明かさない体質があり、「革マル派」を担当した経験がある捜査員は「目的地に向かう時はタクシーを3回乗り換えたり、いったん逆方向の電車に乗ったりする」とその密行ぶりを証言。 警視庁によると今も盗聴器を設置したり警察無線の傍受を試みたりする部門があるという。 捜査関係者の話しでは、対立相手と見なす警察につけいる隙を与えないため、「革マル派」のほとんどは匿名で活動し、私生活でも結婚や運転免許の取得、実名での賃貸契約も避け「一般人」を装うという徹底ぶりで、公の機関などに「痕跡」を残さないという。 A氏:政府は「テロ対策」という大義名分を言うのでなく、「監視により、幅広く犯罪を取り締まるので、監視権限を捜査機関にもっと委ねてほしい」といい、一方で権力乱用の歯止めをかける方法をさだめるべきだね。 私:今後、大詰めで実のある議論がされるのだろうか。
2017.05.16
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私:藻谷浩介氏は、2010年に著書「デフレの正体」で一挙に知られるようになり、このブルグでも「デフレの正体・経済は『人口の波』で動く」で5日間にわたり、取り上げたね。 A氏:君はそれ以来、藻谷ファンだね。 商店街が日本各地で繁栄を極めたのは1980年代初頭までで、かつての商店街のほとんどが、今や空き店舗の並ぶ「シャッター街」で、それどころか、空き地だらけの中心市街地も珍しくない。 私:藻谷氏は、原因に挙げられるのが、無料駐車場付きの郊外型大型店との競争に敗れたことと、旧態依然の品ぞろえが顧客ニーズと合わず、コンビニや専門量販店に負けてしまったことだという。 その理由は二つ。まず、第1の理由として、家族経営化した店の後継者育成の失敗があげられるという。 戦前の商店は奉公人を抱えた零細企業体で、優秀な従業員が店を継いだり、のれん分けして独立したりしていたが、戦後は家族だけで経営する店が増え、しかも「不安定な店を継ぐより、子どもはサラリーマンや公務員に」という風潮が強まっていき、そのため、商売が成り立っている店ですら続々と後継者不在で閉店していったのだという。 A氏:さらに重要なのが第2の理由で、地権者の努力不足だと、藻谷氏は指摘する。 商店街に土地や建物を持つオーナーたちの多くは、高度成長期に貸しビル経営やアパート経営にも手を出していき、そちらの収入がメインとなった結果、商売の努力を怠り、後継者不在で生まれた空き店舗には、不合理に高い家賃をつけたまま放置してきた。 私:そうこうしている間にシャッター街化が進み、結局不動産収入も下がる一方となってしまったのだが、その頃にはかつてのオーナー層の高齢化が進み、悪循環を脱する自助努力は怠られたまま。 シャッター街も、急増している空き家も、耕作放棄地や放置山林も、問題の根は地権者の不作為にあるのと藻谷氏はいう。 A氏:さらに2000年代になると、生産年齢人口の減少に伴って消費総額が減退していき、商店街のかつてのライバル、都心大型店はもちろん、郊外の大型店も淘汰の時代を迎えた。 コンビニや通販の伸長が巨大モールすら脅かし、さらにコンビニも統廃合の波を浴びている。 私:そんな中で、商店街を再評価する機運も起き始めた。 加えて、資本も経営経験も乏しい若者、特に女性が起業する場として、商店街の意義が見直されている。 A氏;とはいえ、一度、完全に機能停止した商店街を再起動するのはとても難しいことだね。 私:鍵は、外部の若い血を入れて新陳代謝を起こすことで、そのために必要なのは、やる気のある若者が少ない資金でも店を借りられる仕組みだ。 地権者の不労所得を増やす家賃補助ではなく、改装支援や経営ノウハウ支援が重要なだと藻谷氏は、指摘する。 地方都市の商店街の再起動は「地方創生」活動の中核として重要だろう。
2017.05.15
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私:文科省の調査では、公立中学校で6割が「過労死ライン」に達しているという。 何を改めればいいのか、3氏にインタビューしている。 具体的な改善方法にふれたのは山口氏と小川氏で内容的には同じ改善方法をとりあげている。 A氏:先に、実状をデータで示している小川氏の説明からとりあげると、教員の時間外労働が一向に減らず、文科省が4月末に発表した教員勤務実態調査では、10年前より勤務時間が長くなり、過労死ラインとされる1カ月の時間外労働が80時間を超える教員が、小学校で約3割、中学校で約6割になっているという。 私:小川氏は、原因を2つあげている。 一つ目の原因は、日本の教員の働き方で、米英では教員の労働時間は授業時数をベースに決められ、生活指導などは専門スタッフが担っており、教員は授業中心の仕事だという。 A氏:「分業」による古典的な効率化だね。 私:ところが、日本は、学級活動や学校行事などを通じて社会性を身につけさせる取り組みも担っていて、そのため非常に広範囲で多くの業務を抱え込んでいるわけだ。 OECDの調査では、日本の教員が授業に費やす時間の割合は少なく、小学校で全勤務時間の37%、中学校で32%。米英では50%を超えているという。 A氏:2つ目の原因は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)という法律の存在だ。 教員の仕事の「特殊性」を理由に時間外勤務手当は支払わず、代わりに月給の4%にあたる教職調整額を一律支給すると定めているが、これが、実態とかけ離れていることだと小川氏は指摘しているね。 私:管理者は手当を支払う必要がないために、「特給法」は勤務時間をしっかり管理するという意識を希薄化させていることになる。 新しい学習指導要領では教員の負担がさらに増え、いままで通りに授業以外の仕事も続けさせるなら、受け持つ授業数を減らすなど、個々の授業に専念できるような負担軽減策を講じるべきだと小川氏はいう。 A氏:近年、英国でも授業以外の業務で忙しくなり、授業以外の業務を担う職員を増やしたり、担当授業時間数の10%ほどを授業準備や答案採点の時間として法定労働時間内に組み込んだりしているので、参考にすべきだという。 「働き方改革」で、国会では労働基準法の改正作業が始まるが、「給特法」はこの機に廃止すべきで、問題の本質に手を入れなければ、教員の負担は減らないと小川氏はいう。 その通りで、「分業による効率化」のように仕事そのものに手を入れなくてはね。 私:「分業による効率化」を実践したのが元民間人小学校長の山口照美氏だね。 あるとき、山口氏の学校に日本語のわからない外国人の子が何人も転入してきた。 これらの子どもの対応は教員の負荷になる。 山口氏は、日本の学校や教員は、人の力、外の力を借りるのは苦手で、日本の学校文化にはないという。 そこで山口氏は、その「文化」を破り、外国人の子とコミュニケーションをとるために、近くの日本語学校に支援をお願いしたところ、留学生がインターシップで来てくれ、外国人の子が親にも言わない悩みを学生に打ち明けるようになるなど副次的な効果もあったという。 A氏:山口氏は、校長の裁量で動かせる予算で、1時間ごとの時給で授業をする先生にも来てもらった。 親の介護などの事情で早期退職したベテラン教師たちに音楽と理科、家庭科をお願いしたが、1時間のためにしっかり準備してよい授業をしてくれ、理科の先生は「自分が担任をしていた時にはできなかった授業ができました」と言っていたという。 私:中学の部活の管理もスポーツ選手経験のある外部の中高年者にでも任せたらどうかね。 山口氏は、「学校はもうちょっと、外に「助けて」と言った方がいいですね。学校としての本来の教育活動はしっかりやる。それ以外の可能な部分は、外部やプロの力を借りるのです。文科省も推進する方向の『チーム学校』です。チームマネジメントが学校づくりのカギだと思います」という。 教員の「働き方改革」とは、時間管理でなく、教員の仕事そのものの「分業」による「チーム学校」の推進だね。 並行して、「分業」した業務をまとめるマネジメント力向上が効率をあげるポイントになるだろう。
2017.05.14
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私:「働き方改革」を「最大のチャレンジ」と位置づけてPRに励んだ安倍政権が3月末にまとめた「実行計画」には、罰則付きの残業時間規制の新設といった内容が盛り込まれ、法改正の準備が進むという。 A氏:相変わらずの外枠ばかりの内容で仕事そのものの生産性向上やイノベーションに対する具体策がないね。 私:この庄司氏の記事は、その意味で興味ある「働き方改革」への視点だね。 庄司氏は、罰則付きの残業時間規制の新設というだけで我々の働き方ががらりと変わるわけではなく、時代に合わなくなった「日本型雇用システム」にメスを入れる具体策はほとんど示されていないと問題点を的確に指摘しているね。 A氏:新卒時に一括採用され、辞令一つでどこへでも転勤し、長時間の残業や職種転換もいとわず、代わりに長期雇用が保障され、年齢とともに役職と賃金が上がる、そんな正社員を中核に据えたシステムは高度成長期に大企業を中心に確立。 私:しかし、経済の停滞が長引くと企業は正社員の採用を抑え、一般に低賃金で雇用保障も弱い非正規社員が働き手の4割ほどに達し、転職市場は十分に整備されず、中途採用で正社員になるのは難しい。 一方、職場がブラックでも正社員の多くは、今の会社で踏ん張り、過労死やストレスによる精神疾患といった悲劇も後を絶たない。 A氏:無限定な正社員か、不安定すぎる非正規社員か。 極端な二者択一を迫る古いシステムは限界で、労働時間や転勤の有無といった選択肢を多様化することに加え、転職しやすい環境を整えるべきだと庄司氏はいう。 正社員のクビを切りやすくするということではなく、滅私奉公に苦痛を感じる正社員や不本意ながら非正規社員を続ける人が、自らの意思で会社を移り、自分に合った働き方ができる正社員として中途採用される。 それが当たり前になれば伸び盛りの企業・産業に人材が集まりやすくなり、日本経済の成長力の底上げにもつながると庄司氏は指摘する。 私:そのためには、企業の枠を超えた人脈づくりや仕事上のスキルの共通化につながる業界合同研修会や、産業別・職種別に再就職をあっせんする仕組みの創設を提言するというアイデアを幅広く検討していくべきだという。 転職者の出入りが増え働き方が多様化すれば、企業は人材確保のため待遇や職場環境の改善努力をいっそう迫られ、人事管理も複雑になり、改革のハードルは低くないが、もう避けては通れないと庄司氏は強調する。 A氏:しかし、その雇用制度は、新卒時に一括採用がなく、中間職の移動が多い、アメリカ型の雇用の姿ではなかったのかね。 アメリカでは企業間の人材移動で、人材が多様化し、イノベーションの基礎にもなっている。 これは、このブログの「イノベーションへの道」や、「18日・朝日新聞・日曜読書欄より」や、「22日の朝日新聞・日曜書評より」で紹介した、山口栄一氏〈著〉『イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機』でも、同じような指摘があるね。 私:日本は戦後、終身雇用制度で、高度成長し、先進国に追いついたが、次のイノベーションが必要な段階で、終身雇用制度がブレーキとなったようだね。 長時間労働制限などの小手先の対策では、「働き方改革」の効果は期待できないね。
2017.05.13
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私:昨日のブログ「『沈黙の声』から見える仏大統領選」に続き、今日も大統領選により新大統領を迎えたフランスにふれたい。 野崎歓氏は、東大教授で専門は仏文学で、著書に「フランス文学と愛」「夢の共有 文学と翻訳と映画のはざまで」などがあり、映画評論も手がけるという。 A氏:戦後、仏大統領は特別なオーラを放つ存在で、共和国精神の体現者で、ナチズムと戦ったレジスタンスの精神の後継者とされ、その「重み」ゆえ、ミッテラン元大統領は政治風刺で時に「神」と呼ばれたほど。 今回の大統領選挙結果は、低調な経済への不満を募らせたフランスが、「重み」をかなぐり捨ててしまったようにも見えるが、実際はもっと根深く、元々、共和国精神が抱えてきた「闇」が顕在化したと、野崎氏は見ているという。 私:共和国精神はフランス人の誇りで、今なお、市役所に行けば、「自由・平等・友愛」という言葉が飾られており、国境を超えて様々な価値観を受容してきたことで、音楽・絵画・映画などの文化も開花した。 日本人のフランスに対する憧れはこうした歴史に根ざすし、他国にとってもそれは同様。 A氏:しかし、フランスの文化が目をそらしてきたことも実は多く、例えば今回の選挙でも争点になった移民の問題。 ルペン氏の「自国第一主義」は共和国精神の「闇」と表裏一体。 私:見てこなかった現実が顕在化したとき、向き合う作業には時間がかかり、フランスは今その過渡期のただ中にいるという。 数年前まで全く無名だったマクロン氏を大統領に選んだのは危機の中でのフランスなりの回答であり、楽観的すぎるかもしれないが、自由検討の精神を発揮して、フランスはこの危機を乗り越えると思っていると野崎氏は予測しているね。 A氏:これに対し、一方のマルセル・ゴーシェ氏は悲観的だね。 ゴーシェ氏は、フランス社会科学高等研究院名誉教授で、近著に「新世界」「フランスの不幸を理解する」などがあり、邦訳に「代表制の政治哲学」などがある。 私:ゴーシェ氏は、言う。 「この大統領選挙で民主主義はある面では機能しました。なぜなら仏社会の問題を暴いてみせたから。 しかし、機能しなかったとも言える。新しい政府は問題の解決という約束を果たせないだろうと思うからです。それどころか、問題は深刻化するかもしれない」と。 さらに「印象深いのは、マクロン氏の支持者も含め大多数の人たちが状況はよくなるまいと確信していることです。新大統領についていこうという熱狂はない。人々はよりひどくない方に投票しただけです」という。 A氏:ゴーシェ氏は、この選挙があらわにしたのは仏社会の分断で、そこにはいくつもの次元があり、まず、まず世代の問題として、若者は仕事を見つけるのにとても苦労している一方、社会は高齢化していて年金も医療も重荷となりつつあり、若い人たちにその負担がのしかかっており、若い人はこのシステムで高齢者が受けている恩恵を、自分たちは受けられないと思っていると指摘している。 私:地域的にも分断があり、都市部と違い、小さな地方の町村では、人々はないがしろにされていると感じているし、また、大企業社員の生活の方が、中小企業社員より守られている。 加えて、右翼勢力の伸長を招いた移民の問題があり、そこから生じる重荷を背負うのは、いちばん貧しい人たちだという。 A氏:さらに、 グローバル化が事情を複雑にし、高学歴だったり資格を持っていたりする一部の人には有利な時代になる一方、労働者をもっと賃金の安い国との競争に放り込み、生活をさらに深刻にし、彼らがそこに気付いて現状に抵抗しようとするのは避けがたいことだと、ゴーシェ氏はいう。 私:共和主義、民主主義はグローバル時代にそれがうまくいかない。 欧州統合でわかったのは、民主主義は国という枠の中だけでしか機能しないということだが、人々が直面しているのはグローバル化が原因となっている問題。 だから、ルペン氏や第1回投票まで候補だったメランション氏への強い支持に表れたように、人々はグローバルからナショナルな枠組みに傾いているとゴーシェ氏はいう。 A氏:新大統領のマクロン氏が分断を埋めて国民を統合できるか、それこそ彼にとっての最大の課題だが、ゴーシェ氏は懐疑的だという。 私:米国もフランスも含め世界の政治がどう変わるのか、ますます読めなくなったね。
2017.05.12
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私:森千香子氏は、このブログの第16回大佛次郎論壇賞 『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』森千香子氏で、とりあげたね。 その森氏が、今度の仏大統領選について、興味ある視点から寄稿しているね。 A氏:森氏は、棄権者が多かったことに視点を置いている。 仏大統領選は通常、予選より決選の投票率が高いが、今回は決選で下がり、1969年以来最低の決選投票率(74・56%)。 棄権者数は1210万でルペン投票者数(1060万)を上回り、白票・無効票を投じた人(407万)も加えると有権者の34%、つまり3分の1以上がどちらの候補も選ばなかったことになる。 私:「棄権はルペン支持と一緒だ。反ルペン票を投ぜよ」との批判も起きた しかし、森氏によると、棄権者は、郊外などの貧しい地区に住む、移民出自の有権者の割合が極めて高いという事実はほとんど注目されなかったという。 全国で最も貧困率と移民比率の高いパリ郊外セーヌサンドニ県は、高棄権率の県でもあり、今回の決選投票も棄権と白票をあわせると棄権は4割に達したという A氏:筆者の旧知の友人で、アルジェリア移民2世のナイマは、予選を棄権した理由を「11人の候補全員が白人、9人が男性、残り女性2人のうち1人は極右、もう1人の極左は反イスラム発言ばかり。誰もが自分とあまりにかけ離れていて、投票できる人がいない」という。 私:移民差別は国民戦線だけではなく、社会全体に根を下ろし、日常の一部。 大政党の政治家たちも差別を煽ってきて、そのくせ、今になって「ルペンを止めるために投票しろ」なんてふざけている、と思う人は多いという。 A氏;昨今、グローバリゼーションの敗者が排外主義に走るという分析が散見されるが、その一方で社会の最底辺に滞留する有権者の中には沈黙し、政治から事実上排除された状態にある人が実に多いと森氏はいう。 私:森氏は、民主主義が直面する最大の問題は「ポピュリズムの台頭」ではなく、ポピュリズムにさえも背を向け、既存の制度内では自らを政治から排除してしまうしかない人々の増大ではないかと指摘。 この「沈黙の声」に耳を傾け、そこから言葉を掬い取る技法を創造できるかどうかに、民主主義の未来はかかっていて、これは日本社会とも地続きの課題であるとしている。
2017.05.11
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私:小池都知事は、3月の都議会で自民都議の質問に答える形で「グローバル人材の育成の観点からも、国旗や国歌を大切にする心を育むことこそ重要」などとし、看護専門学校や首都大学東京の入学・卒業式での国歌斉唱を「望んでいきたい」と述べていた。 A氏:もともと、小池氏は憲法改正を求める「日本会議」の国会議員懇談会の副会長も務め、都知事選直後は「ここ数年は(日本会議と)距離を置いているが、日本の国益、伝統、歴史は大切にするという点では賛成している」と語っていたという。 国政選挙の候補者に朝日新聞と東京大学の研究室が共同で実施しているアンケートでも小池氏は、「憲法改正」「防衛力の強化」「集団的自衛権の行使」について2009、12、14年でいずれも「賛成」だったという。 私:この3月の都議会での小池都知事の国歌斉唱の発言を受け、その月末に、関係者によると、看護専門学校の校長が集まる会議で、入学式で君が代を歌うことを申し合わせたという。 都の関係者は「知事が答弁したことなので。まあ、今はやりの『忖度』なのかもしれませんけど」という。 A氏:そして、4月10日にあった入学式があった都立広尾看護専門学校(渋谷区)では、「国歌斉唱。ご起立ください」となり、「君が代」の演奏が流れ、新入生と在校生が歌い出した。 都によると、他の看護専門学校でも国歌斉唱があり、今回が初という。 私:小池都知事の「要望」が向かった首都大学東京は、4月7日の入学式は小池都知事も出席したが、国歌斉唱はなかった。 大学の担当者は、直接指示されたわけでもなく、例年通りの対応にしたとした。 小池都知事周辺は今回の都議会の答弁を「個人的な思いを強調したものではない」と思想が反映されたものではないとみる。 しかし、劇場型の都政運営で注目を集める小池都知事だが、これを契機に、思想面も含む政策全般に都民は目を配るべきだろうという見方も出ている。
2017.05.10
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私:「世界最低レベル」(世界保健機構・WHO)と言われている日本の受動喫煙対策。 だが、海外から多くの旅行客らが訪れる2020年の東京五輪・パラリンピックなどを前に、国は対策を強化したい考えだが難航している。 A氏:WHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長が、世界保健デーの4月7日に合わせて来日し、塩崎厚労相を訪ね、公共の場での屋内完全禁煙を要請する文書を渡した。 WHOのマーガレット・チャン事務局長による厚労相宛ての文書は、受動喫煙のない東京五輪の実施や、飲食店や事業所を含む公共の場での国レベルでの禁煙を求めている。 これに対し、国際レベルまでにアップしようとする厚労省案に国会議員の中にも反対論が多いね。 そこで、このブログではその攻防をとりあげ、下記のように「受動喫煙知的街道」ができたね。 「禁煙飲食店ルポ 意外に好評だった」、「受動喫煙対策、煙る永田町 飲食店規制、愛煙家の議員反発」、「『たばこってそんな関係あんの?』喫煙者減っても肺がん増えた 愛煙家・麻生財務相が言及」、「なくならぬ受動」、「WHO『喫煙場所で食事あり得ない』新橋の飲食店視察」など。 私:9日、受動喫煙対策を強化する法改正案をめぐり、塩崎厚生労働相は閣議後会見で、自民党が小規模飲食店は「分煙」などと表示すれば喫煙を認める妥協案をまとめたことについて「いくつかの大きな課題が指摘されている」と懸念を示したと報じている。 A氏:厚労省は、床面積30平方メートル以下のバーやスナック以外の飲食店を屋内禁煙とする案を検討してきたが、自民党は8日、党内の規制強化派と慎重派双方の議員連盟トップらが話し合い、妥協案で合意。 飲食店を原則屋内禁煙とする厚労省案からは後退する内容で、調整は難航が予想される。 まだ、反対勢力の活動が活発だね。 私:WHO要求を満たし、世界に恥じない五輪・パラリンピックにしようとする「愛国心」がないとはね。 「憲法改正」同様、2020年までにやろうとする「受動喫煙」は中途半端なものになりそうだね。 国会議員は関係団体の代表だけでなく、世界に対し国を代表し国をレベルアップする役割もあるが、内向きな点は「ジャパンファースト」だね。 「受動喫煙」と問題は小さいようだが、日本の国際的な知的レベルの問題解決能力の象徴的なテストケースでもあるね。 テストに合格できるか、今後も成り行きを見守りたい。
2017.05.09
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