言わせてもらいますが

言わせてもらいますが

2015.05.12
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カテゴリ: 積ん読くずし
佐藤優といえば、田中真紀子と鈴木宗男の戦いの余波で外務省を辞めざるを
得なくなった人ではあるが、数々のラジオ番組を通じてなかなか面白い、
そしてきちんとした教養がある人ではないかと思っていた。

インターネットの時代になって、知識はすぐに得られるけれども、教養となる
まで自分の中で醸成できることが逆に大きな価値になっていると思う。
この教養が足りない人が、上っ面の情報に流されたりする。

グローバルに組み合わさった世の中で、単純に隣国をあげへつらったりすること
や排斥的な風潮に陥ることは、理論的に証明するものではなく、直感的に
おかしいと思うものだけれど、これは教養に根差すのもだと考える。

この教養の基礎として学ぶべきものが、歴史である。その歴史の重要性について
アナロジーという観点から論を展開しているのが本書であり、まさに、その点に
おいて我が意を得たり、なのだ。

そして、この本の最大のポイントは、アナロジーの観点から現代を読み解くことに
あり、そこに大きな価値がある。さらに、現代日本において、有るべき姿の共有に
対するインテリジェンスの努力不足という指摘も価値があるものとするのだ。

ただし、このあるべき姿において、文明世界の発展や、共産主義的イデオロギー
という一時代を築いたものほどに広まっているだけのものがなく、そこに大きな
消失を抱えているところが問題点の深さを示している。自分も、明確に論理立て
された回答を見出すには至っておらず、せいぜい個別の問題に対して自分なりの
教養と倫理観において、責任を持って感想を述べるだけの意思がある程度なのだ。
逆にいえば、一つの思想に凝り固まっていないともいえ、この状態に満足している
自分もいる。ここを突きつめたくてしょうがないのであれば、それなりの論客に
なっているのかもしれない。

その他で、面白かったところは、現代の各国の状況分析における、イギリスと
アメリカの特性に言及しているところであった。イギリスの目に見えないものに
対する共有感と、アメリカにおける欧州では失意に終わった文明への信頼感に
対して、新たな知識を得られたことを幸福に思う。

受験として世界史をするのであれば、その前にこの本を読むことはきっと
立体的な勉強につながるものとして、推薦するのだ。





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最終更新日  2015.05.12 21:03:18
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