言わせてもらいますが

言わせてもらいますが

2015.05.12
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カテゴリ: 積ん読くずし
ルポライターが実際にタクシー運転手として勤務して、その実態を報告する。
変なお客や、サービス業としてはあまりにも低レベルな運転手たちといった
ルポと、タクシー業界全体に対する分析の大きく2つの内容が記されている。

運転手のレベルとしては、ベビーカーのお客様に対して、運転席から出もしないで
トランクを開けるだけしかしない、ということと客待ちに関するマナーの悪さが
際立っている。現代において、立ちションで異臭がすることで名指しされる層が
いるのはタクシー業界だけといってもいいのではないか。

これに対しては、単なる注意ではなく業界全体として、必罰の姿勢で臨むことを
提言している。実際に罰則が機能した例として、銀座におけるタクシー乗車箇所の
固定化をあげている。

路上禁煙を全く守らないことと合わせて早急に対策を打つことで何の問題もない
といえるだろう。

それよりも経済的に大きな関心を呼んでいるのは、タクシー特措法についてである。
これは、競争激化区域におけるタクシーの過当競争を避けるために、減車を推進する
ことである。

これについて、自由主義経済からの観点から時代に逆行する政策であり、消費者に
対してしわ寄せを及ぼし兼ねないという点が指摘されている。基本的にはこの論に
組するものだけれど、実際のタクシー運転手の境遇や、消費者サービスを考えた
場合に、何の改善策も打ち出さないことは問題だと考える。

タクシー売上を考えた場合に、売上総額が一定として、運転手の所得を増やすには
タクシーの減車をするしかない、というのは短絡的ではないか。元々自由化を
行った背景には、売上総額の向上が業界競争の激化によってもたらされるはずという
狙いがあったはずなのだ。この点が1つと、もう1つは労働者と経営者の労使関係と
して現在の歩合給というシステムの不合理性について、考えるべきではないか。

タクシーにおいて各社や各ドライバーに対するサービスレベルの差と売上の差が直結
しないのは、タクシーを使う側の評価と使う機会が対応していないからだ。ホテルで
あれば、リッチ、サービス、価格を元に利用者が明示的にホテルを選別する。
だが、流しのタクシーを拾う場合に、その選別性は有効に働くのか。また、タクシー
乗り場でその選別性は有効といえるのだろうか。

ここで、選別性が有効でないという考えに立てば、利用者に選択の余地がないことに
なり、鉄道やバスと同様の地域(極めて小規模)独占、あるいは寡占という形態とし、
許認可の権限を高めて、利用者と事業者のバランスを取るという、いかにも官僚的な
解決策になる。

この選別性を取り入れる仕組みは、実は海外ではもたらされている。そうUberである。
既得権益者としてのタクシー業者を守る意味で、日本ではUberによる個人事業者の営業
運転は規制されている。しかし、2種免許を持ち、地理試験に合格した個人が、包括的な
保険とともに営業する道筋を設けることは十分に考慮すべきではないか。

この本には、無線営業の強さによるタクシー運転手の待遇さが語られていたが、これを
会社レベルではなく、個人レベルに還元することがITの価値ではないのか。

もう1つは、歩合制による労使関係である。ある意味、どんなにタクシー運転手の
支払給与が少なく、生活に支障をきたすものであっても、タクシー会社は最低限の
黒字が保証されるような仕組みになっており、どう考えてもリスクが公平ではない。

さらに大阪では、リース契約方式という形態があり、より会社のリスクが限定されている
仕組みも幅をきかせている。あまりにも最低限の給与が保証されていない、拘束時間が
長い勤務形態にメスを入れることが労働管理の役所の任務ではないのか。

日本の完了の会社を管理しようという規制ありきのガバナンスではなく、会社間の
自由競争を優先しながら、消費者と労働者の権利をいかに守るかというガバナンスが
高度な自由民主主義社会ではないのか。

などと考えた一冊でした。





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最終更新日  2015.05.12 21:15:15
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