つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2011.01.03
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カテゴリ: マネー・経済
えーとですね、この本は、大変いい本です。はじめに結論ありきではなく、事象を帰納的に分析していって読者にわかるよう説明しています。読んでいて『ソクラテスの弁明』を連想しました。少々ほめすぎでしょうか。

以下、自分の感想もまとめて内容を要約すると…


まず基本。
インフレ…お金に対してモノが少なくどんどん物価が上がる状態。
デフレ…お金に対してモノが余って売れない状態。売れないから売り上げが上がらない→給料が上がらない、下がる→物が買えない、買わない→売れない、というのがデフレ・スパイラル。

戦後このかた、昭和天皇が崩御されるまで、不動産価格の高騰も含めて、日本はずっとインフレでした。それが平成になってバブルがはじけてから、一転してデフレになりました。

景気がよくなれば問題は解決する、とみんなが言います。でも本当にそうでしょうか。確かに景気はよくなったり悪くなったり、循環するものです。しかしそれにしては、庶民の暮らし向きは、平成の好景気のときでさえ、あまり向上しませんでした。

小泉改革のせいだ、という声がします。あのせいで格差社会が広がったのだ、と。人件費が抑えられて、消費に回せなかったのだ、と。

いいところをついています。確かに、金は天下の回り物。国家を人体にたとえれば、お金という血液が体中をぐるぐる回ってこそ、人間は元気になるわけです。

そんなこといったって、日本には資源がないんだ。しいていえば人的資源があるだけだ。諸外国よりも品質が高いものをたくさんつくってバンバン海外に売って外貨を獲得しないと、日本にお金が入ってこないじゃないか。売るためには品質がよいだけじゃだめだ。安くなけりゃ中国や韓国に負けてしまう。人件費を抑えてコストダウンするしかないじゃないか。

確かに日本はものづくり国家です。外国にモノを買ってもらわなければ外貨を獲得できません。しかし今後10年20年たてば、どうでしょう。極端な話、今の日本を見ればわかりますが、生活に必要な家電製品、携帯電話、パソコン、車まで持ってしまったら、あと何を買うのでしょう。経済が成熟すれば、モノを買う市場は縮小していくのです。しかも彼らが買うのは、日本製品とは限りません。

ええとですね。
日本は資源国ではありませんから、モノを作って、商売人になるしかありません。問題は、外国からお金が入っても、それが消費に回らないことです。なぜか。少子高齢化のせいです。お年よりは将来の入院のためにひたすら貯金し、モノを買いません。人間にたとえれば、摂った栄養が体に回らず、皮下脂肪として蓄えられているようなものです。

景気の波以上に、激しい波が日本と日本人を押し寄せています。人口減少です。お年よりは、モノを買わない。現役世代はモノを買いますが、絶対数が減っています。少子化ですから、今後ますます絶対数が減ります。一方で団塊の世代が退職を迎えると、一気に高齢者が激増します。彼らはやはり将来の病気に備えて消費を控えますから、ますます皮下脂肪がたまります。



日本がインフレだったのは、働く人口が増加していたから。
今デフレなのは、働く人口が減って、お金が回っていないから。


そう考えるとすっきりしますね。

それなのに、日本企業は、モノをつくって生産性を上げることだけに汲々としています。
生産性を上げるのはいいことのようですが、給料が上がらないので、外国にモノを売って貿易黒字は増えても、庶民の暮らしむきはちっともよくなりません。お年寄りが保身に走っているからです。

そんなこといったって、年金生活者からお金をむしりとるのは、できませんよね。
病気や入院に備えてお金をためておくのは、もっともなことですから。

ところで、アメリカほどではありませんが、日本にも結構億万長者、というか富裕層がいます。でもその大半は、高齢者です。高齢者が亡くなれば、当然子供が相続しますが、さすが世界に冠たる長寿国日本、相続する子供の年齢は平均67歳です。人生、守りに入る歳ですね。かくて庶民からみれば莫大な財産を相続した彼らも、やはり将来の病気に備え、質素な生活を送り、経済の血液たるお金の血めぐり、じゃなかった金回りは滞り、景気もよくなりません。

今度の税制改革で、相続税の基礎控除額が減り、生前贈与をうながす方向にシフトされました。 これで少しは現状がよくなればいいのですが、どうでしょうね。たとえ少々相続税による税収が上がっても、医療福祉のための予算につかわれてしまうと思いますが、少しでも若い世代に所得が移転することによって、景気がよくなればと思います。

しかし、少々お金が入ってきたところで、将来への不安から、若い世代がモノを買うというわけでもなさそうです。となれば、高齢者がそれでも買いたくなるような商品を開発する、というのもひとつの方法です。と同時に、もうひとつ道があります。女性の市場の開拓です。

女性は男性よりもモノを買います。おいしいものにも目がありません。ただしそれはお金があればです。彼女たちにモノを買わせるためには、働く機会を現在より多く提供しなければなりません。何しろ日本の既婚者の半分は専業主婦です。玉の輿をのぞいて、専業主婦では、買いたいものも買えません。また、女性が社会に出ると子供を産まなくなるといいますが、それ以上に経済上の理由から、子供を産めないでいる主婦も多いのです。そういう意味では、民主党の高校授業料無償化はいい政策でした。

第三の方法は、外国人の観光客、短期滞在(定住)客を増やすことです。移民は文化の違いから、深刻な摩擦や対立の温床になります。いわば、副作用の強い劇薬です。しかし短期滞在客なら、地元にお金を落としてくれます。食べ物も売れ、工業製品も売れ、工芸品も売れ、旅館や温泉も賑わい、JRもバスもタクシーも景気がよくなります。留学生を増やすのも一法です。ただそのためには大学のカリキュラムを含め、教育機関の自助努力が必要ですが。

最後になりましたが、高齢者医療・福祉の問題について。今までのように現役世代が隠居世代を支えるという制度は、根本から見直さなければならないでしょう。今後は、 生年別共済 にするしかありません。要は、元気な高齢者が、介護や医療の必要な同年代の老人の費用を負担する、ということです。70代は70代、60代は60代、80代は80代と。勿論微調整は必要でしょうが、少なくとも人口激減社会においては、現役世代が一方的に高齢者の面倒を見る現在の医療保険制度よりも、ずっと国民に優しいものになっているでしょう。


…要約が長くなりました。またところどころ自分の意見を差し挟んでいます。どの辺がそうかということについては、ぜひ本書をお読みになってお確かめください。

最後にひとこと。
皇室は日本の象徴ですが、このままいけば皇室は日本とともに滅ぶでしょう。
座して死を待つより思い切った真の改革を望みます。


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Last updated  2011.01.03 20:46:16
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