ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年09月04日
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旗師とは、初めて聞くことばでしたが、店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う人のことです。
大英博物館の元研究員であり、今は東都芸術大学の教授であるプロフェッサーD(元夫でもある)に薫陶を受けた陶子は、若いながら業界で高い評価を確立しつつありました。

ところが橘薫堂にまんまと贋作をつかまされてしまったことから、自分のプライドをかけて「目利き殺し」を仕掛け返すため、贋作に手を染める決意を固めるのです。

さらに橘薫堂の外商の女性が変死体で発見されたことから、陶子は捜査する殺人事件にも巻き込まれてしまいます。


まず、骨董業界の事情が興味深かったですね。
ここに描かれている骨董品業界は面白いというより、恐ろしい世界だという印象です。
関わる人々はみな狐、いや、まさに魑魅魍魎です。
偽物をつかまされても「目利き」が悪くて騙された方が悪い ということになってしまうのですから。

その中で一人奮闘する陶子は痛々しいくらい。、

パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズを読んでいてケイ・スカーペッタにも言いたくなったことですが、
どうしてそこまでやらなくては行けないの?と思ってしまいました。
身体が悲鳴をあげていてもぎりぎりまで頑張る、泣き言も言わずに。
もうハードボイルドの世界です。

そしてもう一つ興味を惹かれたのが贋作を作る過程。
贋作作りを依頼される「天才」の老人もまた個性的かつ魅力的でした。
800年前の材料にこだわり、環境にこだわる製造過程の話は鬼気迫るものがありました。


この作品は、古美術を扱っていながら難解ではなく、特殊な業界の事情が面白い上に、コンゲームにはらはらさせられ、緊張感があってとても楽しめました。

狐罠  狐罠:北森鴻







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最終更新日  2005年09月05日 09時16分03秒
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