投資逍遥

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2006/01/22
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テーマ: お勧めの本(7347)
カテゴリ: 読書
この本は1994年に発行されました。
著者は1929年東京生まれで、幸田露伴の孫にあたり、更に言えば幸田文の娘にあたります。
この本を読もうとした理由は、幸田露伴をもっと知りたかったからです。
2005年12月31日の日記 に書きましたように、幸田露伴は一緒にいると胃潰瘍になるのではないかというくらい(笑)、言うことが細かくてしつこいというイメージをもちました。
それでは、ちょっと確認してみよう思ったわけです。
実際にこの本を読んでみると、予想通りの困ったじいさんであったようです(笑)。

以下に、 【この本からの引用】 【征野の感想】 という形で、少々書いてみます。


【この本からの引用】

昭和13年(1938年)、母は離婚して私を連れ祖父の元へ帰った。

【征野の感想】

著者が母(幸田文)とともに、露伴の元へ帰った時のことです。
著者は、当時9歳であったとのこと。

引用部の直後に、露伴が74~5歳、玉が9~10歳の頃のことが書かれています。
著者(玉)が、母に言いつけられて露伴のもとに薬を持って行き、訳の分からぬうちに露伴に叱られる場面が書かれています。

長すぎるのですが、そのまま書くと次のとおり。

「何を申し訳ないと思っているんだ、お前は何も考えないで、ただふわふわしている、申し訳などどこにもありはしない。
薬というものは恐ろしいものだ、正しく使われれば命を救うが量をあやまてば苦しみを人に与える。
何の考えも無しに薬を良いものだとだけ信じて人にすすめるとはどういうことだ。
昔、耆婆は釈迦の命の危かった時に秘薬を鼠に投げて釈迦の元へ走らせた、なのにバカな猫がその鼠を食ってしまったから間に合わず釈迦は亡くなったというが、しかし薬は劇薬でそれを飲んだために命を縮めたという説もある。
そもそも釈迦が死ぬような目に遭ったのは、(以下略)」という具合に叱られたそうです。

要するに、母の言いつけられたとおりに露伴の元に薬を持って行ったところ、著者(玉)が愚かなために露伴を苦しみ死させようとしている悪者になっていたとのこと。
小学生であった玉はもちろん涙をこぼしていたわけですが、これはちょっと辛すぎますね。


【この本からの引用】

市川市菅野1209番地、白幡神社の裏の小川を渡ると雑木の生えた荒地があり、胡瓜や茄子とうもろこしが植えられた畑に沿って、小さな同じ形の家が2列に並んでいた。

【征野の感想】

露伴一家(露伴・文・玉)は、戦中に空襲が激しくなったために疎開しました。
その間に、小石川の家は空襲で焼けてしまったとのこと。
疎開中は長野から伊豆に移り、更に千葉県の市川に移り、この市川が露伴の終焉の地になったとのこと。

私は現在市川に住んでいるので、この菅野はよく知っています。
かつては小川のある荒地であったとこの本には書かれていますが、今は住宅街になっており当時の面影は全くないですね。





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Last updated  2006/01/22 06:03:25 PM
コメント(4) | コメントを書く


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※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:『小石川の家』青木玉(講談社) 1  
免努苦齋  さん
こんにちは、幸せな投資家さんのところから来ました。

『小石川の家』という書名が眼に留まったので、書きこまさせて頂きます。

 露伴は、ぜひとも露伴自身の作品を読まれることをお勧めします。以下の拙サイトの文章でも少し触れましたが、幸田文、青木玉両女子の作品から伺える人物とは、全く違った文学者がそこには居ますので。


<small> <a href=" http://mendokusai.fc2web.com/dokushiroku-5.html" ; target="_blank"> http://mendokusai.fc2web.com/dokushiroku-5.html< ;/a></small>


『努力論』も、ぜひ「原書」を読まれることをお勧めします。この本の真価は、その内容よりもむしろその書き方にある。文体にある。うだうだ書いてはいるが、その精髄はその文章の感化力にある。そう思います。

  (2006/01/22 08:13:47 PM)

Re:『小石川の家』青木玉(講談社) 2  
免努苦齋 さん
承前

これは、ちょっと説明するのが難しい露伴の文章の魅力なのですが、征野さんはピアノを弾かれるという事なので、この事情は曲とその演奏の例で理解して頂けると思います。

 最近、クーべリックという指揮者のベートーベンの『運命』のCDを買い求めたのですが、これを拙サイトで次のように紹介しました。

「交響曲5番には鬼気迫る凄演は多いが、それらとは次元を異にした高みにある演奏で、広々とした伸びやかさの中にゆとりさえ感じられる何という充実した肯定的なベートーベンだろうか。この二つの演奏で聴かれるのは叱咤激励する強面のベートーベンではなく、元気付け勇気付けてやる気にさせる頼もしいベートーベンとでも言うべきか、それほどに徳のある演奏であります。」

 つまり、曲は同じでも演奏によってその効果には天と地ほどの違いがある訳で、『努力論』は露伴自身の「演奏」でなくてはその「元気付け勇気付けてやる気にさせる」真価は解らないと思うのです。中野孝次氏のものは読んだことはありませんが、残念ながら渡部昇一氏の「演奏」には、如何せんこの露伴の文章の感化力というものが再現出来ておりません。

 使われている語彙は中々と難しいのですが、なあに同じ日本人の書いた文章ですから、再三再四読めば解らない筈はありませんし、またそれだけの価値のある本だと思われます。


以上、露伴愛読者の妄言多謝。





(2006/01/22 08:16:44 PM)

Re[1]:『小石川の家』青木玉(講談社) 1(01/22)  
征野三朗  さん
免努苦齋 さん、こんばんは。
>こんにちは、幸せな投資家さんのところから来ました。

>『小石川の家』という書名が眼に留まったので、書きこまさせて頂きます。
> 
> 露伴は、ぜひとも露伴自身の作品を読まれることをお勧めします。以下の拙サイトの文章でも少し触れましたが、幸田文、青木玉両女子の作品から伺える人物とは、全く違った文学者がそこには居ますので。


> <small> <a href=" http://mendokusai.fc2web.com/dokushiroku-5.html" ; ; target="_blank"> http://mendokusai.fc2web.com/dokushiroku-5.html< ; ;/a></small>


>『努力論』も、ぜひ「原書」を読まれることをお勧めします。この本の真価は、その内容よりもむしろその書き方にある。文体にある。うだうだ書いてはいるが、その精髄はその文章の感化力にある。そう思います。

> 
-----
コメントありがとうございます。
努力論は読んでみたいのですが、いつものように、気がついたら忘れていた(笑)、ということになってしまうかもしれません。
やっぱり、難しいので(^。^ゞ
(2006/01/22 11:22:55 PM)

Re[1]:『小石川の家』青木玉(講談社) 2(01/22)  
征野三朗  さん
免努苦齋さん、こんばんは。
>承前

>これは、ちょっと説明するのが難しい露伴の文章の魅力なのですが、征野さんはピアノを弾かれるという事なので、この事情は曲とその演奏の例で理解して頂けると思います。

> 最近、クーべリックという指揮者のベートーベンの『運命』のCDを買い求めたのですが、これを拙サイトで次のように紹介しました。

>「交響曲5番には鬼気迫る凄演は多いが、それらとは次元を異にした高みにある演奏で、広々とした伸びやかさの中にゆとりさえ感じられる何という充実した肯定的なベートーベンだろうか。この二つの演奏で聴かれるのは叱咤激励する強面のベートーベンではなく、元気付け勇気付けてやる気にさせる頼もしいベートーベンとでも言うべきか、それほどに徳のある演奏であります。」

> つまり、曲は同じでも演奏によってその効果には天と地ほどの違いがある訳で、『努力論』は露伴自身の「演奏」でなくてはその「元気付け勇気付けてやる気にさせる」真価は解らないと思うのです。中野孝次氏のものは読んだことはありませんが、残念ながら渡部昇一氏の「演奏」には、如何せんこの露伴の文章の感化力というものが再現出来ておりません。

> 使われている語彙は中々と難しいのですが、なあに同じ日本人の書いた文章ですから、再三再四読めば解らない筈はありませんし、またそれだけの価値のある本だと思われます。


>以上、露伴愛読者の妄言多謝。
-----
熱気あふれるコメント、ありがとうございます。
『努力論』の推薦、大変ありがたく伺いました。

『努力論』は図書館でパラパラと見ただけで歯がたたないと判断しました。
しかし、免努苦齋さんのコメントでやや意欲がわいてきました。
まずは、書店で買ってみようと思います。 (2006/01/22 11:33:33 PM)

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