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詩集を出している ことがわかり、今回取り上げる本が決まる。
「初めてのエッセイ集」 。 そして私が 彼女 の著作中、唯一読んだ作品である。
しかし、「聴きあう」という表現ほど、この絵の女たちにふさわしい言い方もない。この不思議な対面は、まるで、互いに静かに消し合うようでもあるのだ。(中略) 描かれているのは、女たちというより、透明な関係性なのではないかと思われてくる。 と書く。さらに、
いずれにしても、この世での役割が吹き飛んで真裸になった存在同士が、とけあおうとしているように感じられる。 と続く。
人と話しをしていて、話題がとぎれることがある。その瞬間のまの悪さが、私は実は、案外好きだ。話すことなど、もう何もない。-その虚空の中に身を置くと、ないことのかに、やがてゆっくり充ちてくるものがある。話題を探すのではない。私たちという存在が、こうしていつも、遠くからやってくるものに、手繰り寄せられ、探されるのだ。 と結ばれる。
さあ、話をしよう。
「いくつかの官能的なこと」には、ある夏の夜、小さなあつまりがあったときのことが語られる。だれかが「月がきれい」と言って、顔を上げようと思った瞬間、「月」と「まるで命令形のように男の人が言って、(みるようにと)、私のあごを急にしゃくり、くいっと月の方向へ向かせたのだった。 書き写していて気がついた。この作家の文章には読点が多い。それが作家の文体のリズムなのだろう。立ち止まり方の作法とでも言うべきか、軌跡の振り返り方と言うべきか。
突然、ひとにさわられて、いやではなかった。むしろ、不思議なエロティシズムをあごに感じて、今でも、なぜか、忘れがたい。
たった、それだけのことなのだ。しかしロマンティックな乱暴だった。
そのひとを、きらいではなかったけれど、それ以来、一度も会うことはない。からだは、ふしぎなことを覚えているものだ。」
いつか、夏の昼下がりの蕎麦屋で。 これだけを切り取ると、さながら詩のような。
「こびんいっぽん」
と注文した、男の声の涼しかったこと。
フェルメールの絵はまた、私にいつも糞尿の匂いを想像させるのだ。洋服やカーテンのひだの多い分厚い生地に鼻をあてて、くんくん匂いをかいでみたい。分泌物のむっとするすっぱいような匂いが、そこからたちあがってくる気がするのである。そしてそれは、この画家の絵の表面を覆う、清潔な空気感と少しも矛盾しない。 わからないでもない。絵の中の世界に入り込んでみたと想像してみると。が、やはり フェルメールの絵 に対する 「糞尿の匂い」 という表現には少々驚いた。おもしろい。
「沈黙を分けあえたという思い」 。 作家 は、 「沈黙」 や 「言葉にする含羞」 にも直接、間接問わずいくどか触れていて、響くものが少なくなかった。
屋上の金網に手をかけて、地上へ吸い込まれるように落ちていくボールを、じっと見ていた子供のころ(入滅ってあんな感じではないかしら)。拾いに行った子を待っていた時間、あの場所には始終、風が吹いていた。結局、あの子はどうしたのだったか。今も時々、あの子をまだ、待ち続けているような気持ちになる。 屋上はたしかに心地よい空間だ。頭上に無限に開けた空間と足元に広がる限られた平面。風が吹き抜け、空が透明で、遠くまで見える。屋上にいるときはいつも一人だった。自身に普段流れる時間をほんの少し別の視点から見直せるような心持ちになっていたのかもしれない。
追記2024・03・17
100days100bookcoversChallenge
の投稿記事を
100days 100bookcovers Challenge備忘録 (1日目~10日目)
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という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと
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追記
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