売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2024.06.01
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数日前I.F.I.ビジネススクールの教え子で「ユニクロ対ZARA」の著者齊藤孝浩さんと会食、テキスタイルデザイナー須藤玲子さんが出演したテレビ東京の番組「新美の巨人たち」のDVDを託しました。齋藤さんは中国アパレル関係者にセミナーのため杭州に出張予定があり、セミナー主催者の佐吉事業コンサルティング代表金時光(アーロン・ジン)さんに手渡ししてもらうためです。

今年3月金さんが来日した際、私は六本木AXIS地下にあるショップNUNOを案内、須藤さんが創作したテキスタイルの数々を見せながら、前職クールジャパン機構のオフィス応接室のカーテンやクッションなどをなぜ須藤さんデザインにしたのかを説明しました。そして、この秋に金さんチームが予定している中国アパレル経営者たちの訪日研修ツアー第2弾ではぜひ須藤さんのレクチャーをお願いしようとなりました。その事前資料として須藤さん出演のテレビ番組DVDを届けました。


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での「須藤玲子:NUNOの布づくり」展

中国アパレル経営者は売上至上主義者だけではありません。もっと魅力的な商品を作りたいという人もいれば、上質な素材を日本から調達したいと考える経営者もいます。私がよくセミナーでお話する「ブランドDNA」に真剣に耳を傾け、自分たちの仕事に何が欠けているかを自問自答する経営者は少なくありません。そういう経営者にテキスタイルの差別化、特徴ある独自のテキスタイルをつくることの大切さを説いてきました。単純にNUNOのテキスタイルを起用しましょうとは言いません、日本には優れたテキスタイルのプロがたくさん存在することを中国の関係者に伝えたいのです。

金さんチームが企画した4月の訪日研修ツアーでは、独特の世界観のテキスタイルを多く開発してきたミナペルホネン皆川明さんに講演してもらいました。皆川さんがどういう思いで日本のテキスタイルメーカーや布づくりの職人さんたちと仕事をしてきたのか、どういうプロセスでテキスタイルを作り上げているのかを話してもらいましたが、参加した経営者たちは皆川さんの話に共感、通常のセミナーよりたくさん質問がありました。その夜品川の居酒屋で参加者たちと会食したときも、彼らは皆川さんの講演のことを興奮気味に話してくれました。


4月の訪日研修ツアーで好評だった皆川明さんの講演

コロナウイルス以前も私はこうした中国業界関係者向けセミナーを何度もさせてもらいましたが、このときも彼らが日本のテキスタイルに関心が高いことを実感しました。あるツアーでは、本郷のセミナー会場から団体バスで銀座方面に移動する途中、婦人服アパレル女性経営者に「どこに行けば日本のテキスタイルサプライヤーの情報を得られるのでしょうか」と質問されました。ちょうど有楽町国際フォーラム前を通過するとき「現在こちらでプレミアムテキスタイル展を開催している。入場パスを差し上げますから、時間あればこれを持って視察してください」と私のパスを渡したこともありました。


国際フォーラムでのプレミアムテキスタイル展

上海のテキスタイル見本市には毎シーズン日本のメーカーがブースを出してはいますが、婦人服アパレルが集積する杭州や広州のメーカー関係者には情報が行き届いていないのかもしれません。聞くところによれば見本市では現地アパレルメーカーよりテキスタイルメーカーにサンプル生地の注文を受けることが少なくないようですから、日本のテキスタイル情報をアパレルブランド関係者に訴求する仕組みを考えた方がいいかもしれません。

昨晩、金さんからWeChatメッセージが入りました。杭州に入ったばかりの齋藤さんと同行者の金田有弘さん(同じくI.F.I.受講者の元ワールド)と会食する写真が添付されていました。今日から2日間、二人は中国アパレル業界人に現地セミナーをします。


昨年12月杭州でのセミナー

齋藤さん経由で佐吉事業コンサルティング主催訪日研修団にセミナーをしたのが昨年9月。このとき金さんから中国での講演を依頼され、12月杭州を初めて訪問しました。ここで中国アパレル経営者から社内研修を頼まれ、上海と広州でそれぞれ研修したのが2月。さらに4月には訪日研修ツアー参加の経営者に再びセミナーを。来月には再び杭州に出張、今度はマーチャンダイジングではなくブランドビジネスの問題点と解決策を講演することになっています。

加えて、佐吉事業コンサルティングからはさらに2つ日本における研修プログラムの組み立てを頼まれています。1つは2月に社内研修をしたばかりの大手アパレルの日本研修、いまひとつは今年の訪日経営者研修ツアー第2弾です。前者が8月お盆明け、後者は9月中旬開催予定。

大手アパレル社員研修では、上海から東京経由でそのまま地方都市入り、産地の繊維メーカーの見学から始めます。他社とは違うものづくりをどうのように進めているのか、糸から製品までの一貫工場でなぜ自社ブランド事業を推進しているのか、やり手社長からものづくりの過程を見せてもらいながら教わるプログラム。工場見学後東京に移動、翌日はユニークな活動をしているデザイナーや若者文化を牽引してきた企業元幹部ら数名の講師にレクチャーをお願いしました。最後に日本研修の総括を私自身が担当します。

経営者研修第2弾では前述須藤玲子さんの講演とNUNO店舗視察をはじめ、かつて対談したことあるデザイナーや店頭展開の創意工夫を奨励するプロの事例研究、ブランドショップの視察などを計画。現在金さんらに代わって交渉しています。


2月上海でのセミナー

かつて日本で量販店がまだ整備されていなかった時代、多くのスーパーマーケット経営者は米国流通業に詳しい大学教授らに連れられ米国市場を歩き、米国企業からマーチャンダイジングやサプライチェーンマネジメントを学び、自分たちの小さな店を大きな量販店チェーンに伸ばした例がいくつもあります。日本のGMSもコンビニも元々は米国研修で学んだ当時の若き経営者らのやる気が実を結んだものでしょうが、日本流通業界の黎明期の意欲と同じものを現在の中国アパレル経営者に感じます。いま中国のアパレル業界人の勉強熱心な姿勢を目の当たりすると、流通業の先駆者たちのイメージがダブるのです。

昨年9月以降、中国でも日本でも中国業界関係者に向けたマーチャンダイジングやブランド戦略の研修がコンスタントに続いています。現時点でパリコレで世界のファッショントレンドを左右しそうな中国デザイナーはまだ登場していませんが、近未来はきっと70年代のケンゾーやイッセイミヤケ、80年代のコムデギャルソンやヨウジヤマモトのようなブランドが中国から登場するはずと信じレクチャーしています。

ニューヨーク出張のたび私はパーソンズデザイン学校で何回も特別講義をしましたが、クラスの大半は中国、台湾、韓国などアジア系学生でした。だからでしょう、20世紀末から今日までアナスイにはじまり、ヴィヴィアンタム、デレックラム、フィリップリム、アレキサンダーワン、ジェイソンウーなど中国系デザイナーがニューヨークコレクションで大活躍。ロンドンのセントマーチンはじめヨーロッパのファッションスクールもパーソンズ同様留学生の多くはアジア系です。彼らをサポートする、クリエーションを受け止めることができる経営者や投資家が増えたら、中国人スターデザイナーがパリコレで脚光を浴びることはありえる話でしょう。


日本で活躍する中国人デザイナーブランドVIVIANO

6,7年前広州で齋藤さんのセミナーに参加していた経営者のひとりは、現在急成長中企業として注目されているSHEINの創業者。売上規模を誇るSHEINのような大企業の誕生も重要でしょうが、世界からクリエーションで一目置かれる中国ブランドの誕生も重要なことだと思います。それに向けてやる気のある現地経営者にはものづくりとクリエーションの探究をしつこく説きたいです。





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Last updated  2024.06.01 22:49:37
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