60ばーばの手習い帳

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June 1, 2026
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カテゴリ: 読みたい本
「ぼくは任意の一点なんかではない」
 団地アパートに住む友人の関口は、自分の部屋に自分そっくりな男が入っていくのを見てしまいます。同じような部屋が並ぶ団地、入居者の生活程度や年齢層も似たようなものです。
 画一化に不安を持った関口は、自分だけの「お守り」を持つことにします。

 冒頭の台詞は、関口の言葉です。「任意の一点」は、自分でなくても誰でもいいということ。関口が求めたのは「定点」として存在すること、ほかの誰でもない自分であることでした。
 この短編が描かれたころの社会背景が「団地アパート」に象徴される画一化だったのでしょう。
 関口は、ほかの誰もがまねできない「お守り」を持って「自分はほかの誰でもない自分」という確信を得たのですが、結末は…。

 「自分が自分以外の誰でもないという確信が持てずに、どうして自分の生活を大切にできるだろう」という関口の言葉はその通りだと思います。

 「お守り」は、誇れるような具体的な事や物である必要はありません。誇ろうと思っても、自分より上の人がいくらでもいます。自分が認めてあげられるものが自分の中にあればいい。
 仕事でちょっと頑張れた、今日のお化粧はうまくいった、カフェオレがおいしい、好きな本が読めた、好きな音楽が聴けた、…、生きることはささやかな日常の積み重ねです。でも、その一つ一つがかけがえのない人生なのです。

      引用および参照元:山川方夫『夏の葬列』集英社文庫から 『お守り』 








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Last updated  June 1, 2026 12:00:13 AM
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