医療用医薬品 0
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とても長い表題になってしまいました。毎日届く新着雑誌のレビューやプレスリリースはCOVID-19ばかりで嫌になりつつあるところにこんな文献が公開されました。”Population vs Individual Prediction of Poor Health From Results of Adverse Childhood Experiences Screening”JAMA Pediatr. Published online January 25, 2021. doi:10.1001/jamapediatrics.2020.5602Adverse Childhood Experiences ScreeningとはCDCの定義では以下の通りです。Adverse childhood experiences, or ACEs, are potentially traumatic events that occur in childhood (0-17 years). For example:- experiencing violence, abuse, or neglect- witnessing violence in the home or community- having a family member attempt or die by suicideAlso included are aspects of the child’s environment that can undermine their sense of safety, stability, and bonding such as growing up in a household with:- substance misues- mental health problems- instability due to parental separation or household members being in jail or prison細かいことがは別にして成人まで肉体的、精神的な虐待を受けたり、家族の誰かと別れたりするとACEsは高くなります。二つの大規模な疫学試験が行われました。内容はACEsが成人になってからの肉体的、精神的な病的状態に影響を与えているかどうかです。2,232人がACEsと18歳になったときの状態を調べられました。ACEが増えるごとに病的になるリスクは増えていくことが分かりました。1つ増えるごとに1.14(95%CI:1.01-1.18)リスクが増えました。しかも性別や社会的貧困度、健康問題の履歴などの明らかなリスク因子とは独立して、リスクが高くなっていました。しかし、個々のACEsから成人の健康状態を予測した場合にはROC曲線から求めた的中率は0.58とほとんど役に立たないことが分かりました。国民全体の健康度を上げるためにはACEsを低めることは有意義ですが、個人レベルではそれだけでは足りないということです。生活習慣病が将来の心血管死亡リスクを高めるというのは確かに明らかにしています。例えば肥満に高血圧が併発している場合にはリスクが増える事も明らかになっています。では、そのようなリスクを持つ人が心血管死亡になるかどうかは、なにも検討しないでランダムでなるかならないかを言ったのと同じであるというのは理解力不足でしょうか。個人が心血管死亡するかどうかを予測することができなければ、生活習慣病を治療するかどうか、あるいは別の疫学研究ではありますが、喫煙すれば肺がんか大腸癌かCOPDになるのを予想することができるかどうかはどうなんでしょう。きっとどこかで研究が行われて、予測が間違いないことが実証されているのでしょうね。(私はそんな研究は無いと思いますが)でないと、生活習慣病の治療に関して対象者に治療の合意が取ることは、リスクを説明してもダメですからね。まぁ、ここからは個人的な意見ですが、リスクで説明されても同意しないですよ、自覚症状が無ければ。私はね。高血圧の治療は拒否していますから、明確に拒否できるほど気が強くないので、降圧剤が処方されたらふらつきがでるということでお薬を飲むのを止めますから。ほんとのところはどうなっているのでしょう。
2021年01月28日
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ウイルスは変異するのが当たり前のようにいう人がいますが、エビデンスを示さなければ戯言です。どの部分が変異しやすいかによって、RNA-ワクチンの効果がいつまで続くかの問題になります。ウイルスはランダムに変異を起こして、その変異が生き延びるために必要であった場合にその変異株がドミナントになるという説が正しいのか、現状で生き残るのが難しくなってきたので、進化圧がかかり変異が起こるのかに関しては後者の方がわかりやすいような気がしますが、進化圧が何であるかは分からないことから前者の方が正しい気がします。変異したことによって生き残るのではなく、多様性を持つことによって環境の変化によって、その一部が生き残るというのが何となく私は気に入っていますが、これを証明するのは大変そうです。しかし、タスマニアデビルの感染性のがんによる絶滅の危機を自ら生き抜いたのは、多様性を保っていたからだと予想していますが、遺伝子解析なりの前後の差が明らかにならないと分かりません。話がそれました。今回はCOVID-19ウイルスの変異の話です。オーストリアでの研究が発表されました。「Genomic epidemiology of superspreading events in Austria reveals mutational dynamics and transmission properties of SARS-CoV-2 | Science Translational Medicine」という文献です。この文献ではクラスターの同定のために遺伝子解析が行われています。オーストリアは観光立国なので、ヨーロッパの流行のハブではないかという考えもあります。そのため、観光地とそのたの地域での遺伝子解析を行っています。結果として混雑した屋内イベントがスプレッダーイベントとして認識しています。また感染中に体の中で、変異がおこっている可能性も示唆されました。この研究はあくまでも経時的な遺伝子検査による変異を検討していることから、変異によってなにが起こるかは予想できません。日本では感染者数が毎日新記録を更新しています。しかし、都道府県別に新規感染者の数を眺めてみると、東北地方、北陸地方では感染拡大はなく、新規感染者が0の都道府県も見受けられます。PCR検査そのものが、比較的行われなかったこともあって、今回のような研究は日本では不可能かもしれません。しかし、オーストリアの人口は880万人で、日本で言えば東京都よりも少ない人口です。日本では保健所がクラスターを一つ一つ潰していったから感染者の数は少ないという意見もありますが、これもエビデンスがないので、よく分かりません。オーストリアでは検体の保存と共に感染経路の徹底的な調査が行われており、原因は屋内の混雑イベントとしています。日本ではGOTOをかたくなに政府が中止しないのは(医師会のGOTO中止は、大阪や関東圏での感染拡大で医療資源が不足しているからという訳の分からない理由からなので、否定はしませんが、原因をエビデンスレベルで述べて欲しいところ)実はオーストリアのようなデータを厚生労働省か国立感染症研究所が持っているからかな?しらんけど
2020年12月10日
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誤診のケース研究の記事がありました。睾丸の痛みは膵がんによるものであることを見逃したことに関するケース研究です。膵がんは誤診によって見逃されていることに関して引用します。膵癌は特異的な症状に乏しいため、早期発見が困難な悪性腫瘍です。膵癌患者を後ろ向きに検討した研究では、初期には31.3%が誤診されており、特に胆嚢疾患や逆流性食道炎と診断されていることが多いと報告されています1)。1)Douglas SS, Mary CM, Chong Z, et al. Initial Misdiagnosis of Proximal Pancreatic Adenocarcinoma Is Associated with Delay in Diagnosis and Advanced Stage at Presentation. J Gastrointest Surg. 2015 Oct; 19(10): 1813-21.この論文によれば誤診された膵がんでも、誤診なしに見つかった膵がんに比べた場合あまり変わりの無いことが示されています。特異的な症状がないことから早期発見が困難としていますが、以下記事の引用診断の半年前から25%の患者で腹部違和感を認めており、一方で、診断時に背部痛を自覚している患者は48%と半数未満と報告されています2原因不明の腹部違和感と背部痛に関して膵がんを疑って検査をすれば、もっと早く膵がんが見つかる可能性があるということではないでしょうか?記事の雑談サッカーの世界最優秀賞はバロンドールと言われています。フランス語でBallon d’Orです。Ballonは玉、d’Orが金ですから直訳すると球金(笑)
2020年12月10日
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横浜市立大学はScience Reportに論文を投稿しました。(Science Reportは査読雑誌ではありません。)タイトルは”The impact of smoking on male lower urinary tract symptoms (LUTS)”です。10,000人の男性にネットで喫煙状況と下部尿路症状を検討したものです。タバコを吸ったことのない人は下部尿路症状を訴えた人は少なかったですが、喫煙中と禁煙した人手は高くなっていましたが、喫煙中の人と禁煙した人での下部尿路症状を訴えた人の割合は禁煙した人でした。下部尿路症状は加齢に選って増える事がしられています。ガイドラインでは下部尿路障碍を治療対象として見いだすのは50歳以上の男性だけになっています。今回のデータがある程度の真実を満たしているのならば、診断対象を50歳以上としたガイドラインは改定する必要があります。加齢によって下部尿路症状が増えているかを見た文献では20歳代が全ての症状において症状が少なかったことが示されています。信頼度が高くない雑誌に投稿された文献とはいえ、若い年代ではタバコを吸うと、下部尿路症状が増えて、しかも禁煙するとかえって下部尿路症状がふえるという結果は衝撃的なものです。プレスリリースから引用タバコが悪者になっている病気は多々ありますが、禁煙することによって(禁煙期間が問題になりますが)病気は改善して、ある程度寿命を取り戻せると、禁煙論者は主張しています。今回の下部尿路症状に関しては寿命にはあまり関係ありませんが、QOLには大きく影響します。失禁があると外出はおっくうになります。頻尿も同じです。これは、横断的コホート研究(1時点でデータを集めて判断している)ので、なにかのバイアスや試験方法のミスで間違った結論が導かれているかもしれません。想定される原因は論文でも触れられていますが、まずは他の薬に関して調査を行っていないことです。ガイドラインにも下部尿路症状が副作用と報告されている薬が列挙されています。総合感冒薬も含まれていますが、総合感冒薬は長期間のみ可能性が少ないことから候補から外れるかもしれません。精神用薬や抗不安剤なども上げられていますが、20代での使用率が高いとは思いません。統計方法もMann–Whitney U test とスピアマンの相関係数を求めているだけなので、ちょっと難しい。症状を点数化しているので、背景因子を要因として解析し、喫煙あるいは禁煙が要因として有意であるかどうかを検定すべきかとも思います。ただし、年齢がふえると単調に増加するかは先ほど上げた文献ではそうなっているので、そのままにして禁煙あるいは喫煙が症状をどれぐらいふやすかを検討する方法もあると思います。まあ、なにか若い人でバイアスが入ったのではないかと考えられます。ガイドラインではこの年代の下部尿路症状は問題にしていないぐらいですから。しかし、こういった固定観念が病気を見逃している可能性があります。喫煙と下部尿路症状の関係を基礎的に研究すると述べられていますが、今までの若い人を何故のぞいたかの文献考察もあって良かったと思います。
2020年11月27日
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小児喘息の発生率はヨーロッパと北アメリカの一部の地域で減少しているそうです。日本では1982年から2002年に小児喘息が20倍になったとの報告があります。また発症年齢は低年齢化していると記載されています。(2005年の文献なので、最近はどうか調べ切れていません。)なぜ小児喘息の発生率が下がったのかをカナダのブリティッシュコロンビア州でコホート研究を行って確認した文献が出ました。対象期間は2000年~2014年です。原因は抗生物質の使用量であるとの仮説を立てて、抗生物質の処方(1歳未満)と喘息の発生率の相関を検討しています。そのなかで糞便でサンプルで腸内細菌叢の検討を16S rRNA遺伝子シーケンシングデータを用いて検討しています。喘息発生率は2000年から2014年にかけて1000人あたり27.3人から1000人当たり20.2人に減少しました。この減少は乳児期(1歳未満)の抗生物質使用の減少と関連しており、乳児1000人あたり1253・8処方から489・1処方になりました。これは腸内細菌叢の多様性が保たれやすくなったことが糞便の分析から明らかになりました。この結果から考えると1歳未満の幼児に抗生物質を与えなければもっと小児喘息が減るのではないかとの意見が出るかもしれませんが、それは間違いです。抗生物質を与えなければ死亡する可能性のある小児もいるからです。コロナ感染症(新型でなく一般のコロナ感染症、いわゆるかぜです)や病原体を検出しないで上気道炎で抗生物質を投与するなど、抗生物質の誤用を避ける必要があるということです。現状では、腸内細菌叢に影響を与えないような抗生物質は存在しないので、必要最小限の使用にとどめることが必要ということです。抗生物質投与時に腸内細菌叢を守るような医薬品、食品が存在すれば小児喘息の発症率をさらに下げる可能性があります。医薬品の場合には、1歳未満の乳児を対象とした治験を行うことの難しさ及び抗生物質を投与する必要のある病気を持っていることの2点から治験実施可能性が小さくてを出すような製薬会社はいないと思います。可能性があるとすれば食品が考えられます。ヨーグルトなどが目に浮かびますが、全滅状態の腸内細菌叢に善玉菌だけを増やした場合にはなにが起こるか分かりません。推定される副作用としては自己免疫疾患が想定されます。しかしながら、動物実験できちんと腸内細菌叢が戻ることが確かめられたら、抗生物質投与時の腸内細菌叢の乱れを直すあるいは抑えるという形で特定疾病用保健食品の許可が下りるかもしれません。きちんとデータはを出すことが望まれます。機能性食品としての許可(ラベルとり)は幼児が対象なので、企業のモラルとしてやめて欲しいと思います。
2020年11月25日
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北海道、特に札幌でCOVID-19の感染者が急増しています。PCR検査の量が増えたので、陽性者が増えているのだといっている人には「PCR検査で陽性率が増えていることを踏まえていっているのか」と叫びそうになります。同じく「接待を伴う飲食」の割合が減り、「会食」の頻度が増えてきたので、外食ではマスクをしていない人を非国民のように指摘する。「一番の感染原因は家族内感染である事を無視するんじゃねぇ」に加えて「お前はあほかぁ」とつぶやいてしまう。そして無症状の感染者の隔離場所の不足から、家庭隔離を拡大する方向にもっていく、北海道知事、だれの提言きぃとんねん、あほちゃうと悪態をついてしまう。家族内感染が感染理由の半分近くを占めているのだから、無症状の患者の隔離を増やすべきで、それには医療従事者尾負担は増やすことになるが、重傷者用のベッドが埋まって、増築するよりもよっぽど短期間にい実施可能になるでしょう。ホテルをすべて隔離用の部屋として確保することにすれば、GOTOで北海道に雇用としても止まれないわけですから、GOTOで北海道にくる東京や大阪の人が減るでしょう。そうすればクラスターつぶしがもっと感染患者指数の増加を抑えるのに効果が出るでしょう。ちゃうか,、なんかまちごうとるぞとおもうぞ、しらんけど。ちょっと落ち着いて文献を紹介します。まず、今のところエビデンスとして成立しているものは少ないですが、いろいろな文献を網羅して、日本語で開設するというとんでもなく手間のかかる事をしてくれている文献Significant Scientific Evidences about COVID-19(日本語です)Toshiharu Furukawa, M.D., M.B.A., Ph.D. [2020年8月21日版感染症学会のホームページにあります。http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_sse_0825.pdf「The temporal association of introducing and lifting non-pharmaceutical interventions with the time-varying reproduction number (R) of SARS-CoV-2: a modelling study across 131 countries」Published:October 22, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30785-4今やっているロックダウンなどの効果を検証しています。エビデンスとしてはランクIIIの疫学的な研究ですが、これは二重盲検比較試験を行うわけにはいきませんから、現在のところ、信用できるデータだと思います。小学校の閉鎖は無駄であることが分かっただけでも、今後のCOVID-19感染症の対策を立てる際に都道府県知事や首相に諮問する人々にはぜひ読んでほしい文献です。評価項目はその対策の実施前と実施後の感染率の変化と対策終了時のその前後の感染率の比較です。「Russian COVID-19 vaccine is 92% effective, interim data suggest」https://www.healio.com/news/primary-care/20201111/russian-covid19-vaccine-is-92-effective-interim-data-suggest?utm_source=selligent&utm_medium=email&utm_campaign=news&m_bt=762929310610第3相試験の試験責任者に対するインタビュー記事なので、論文発表に比べれば信用度は低いですが、ファイザーの3000例予定の60数例の中間解析よりはもう少し信用できると思います。コロナ「誤情報」はなぜ、どこからどのように広まるのか? 研究https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/102600626/?P=1トランプのツイッターが原因となった、エビデンスがまだ確立していない薬に対する誤情報というものを扱っています。(有料会員でないので、尻切れトンボを読んで書いているので、誤情報を流しているかも知れません。)Significant Scientific Evidences about COVID-19に関しては新聞記者、コメンテイター各位にはぜひ読んでから記事を書くなり、コメントをするなりしてほしい。医師会特に会長はこれぐらいの論文は全部目に通したうえでの発言と普通は考えますので、馬鹿をさらさないでください。相変わらずこの本を読み続けています。証拠隠滅のために議事録を残さなかったので(冗談ですよ、知らんけど)聞き取りによって検証を行っています。対象を選ぶ際にバイパスが入っても読者に分からない。しかし、第3波の対策の取り方が、仕方なかったのか、誰かがさぼったのか、誰かが無知だったのか、誰かが境界性人格障害(他人の言葉が理解できず、違う意見に対しては首にするとか罵声を浴びせるかをする)だったのかが原因で成功あるいは失敗したかの追求先は明確になると思います。新型コロナ対応・民間臨時調査会 調査・検証報告書【電子書籍】[ 一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ ]価格:2750円 (2020/11/13時点)楽天で購入私見ですがこの状態下で国会の予算委員会においてCOVID-19対策以外のことを(これしかできないので)追求している、枝野立憲民主党、蓮舫立憲民主党代表代行兼国民運動・広報本部長,志位日本共産党委員長は、第3波で死亡例が増大した時には議員辞職ものだと思います。
2020年11月13日
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2020年5月7日に医薬品医療機器法に基づく特例承認制度で承認されたレムデシビルの第Ⅲ相試験の結果が報告されました。Remdesivir for the Treatment of Covid-19 — Final ReportOctober 8, 2020DOI: 10.1056/NEJMoa2007764レムデシブルは入院のCOVID-19患者の入院期間がプラセボが15日であったのを10日に統計学的に有意に短くしました。COVIC-19感染患者の重症度が低いと入院期間はプラセボでも短くなったが、レムデシブル投与によって各重症度でプラセボより短いデータがでましたが、ECMOが使用されているような重症患者では退院までの期間を短くすることはできなかった。しかし、プラセボの死亡率を統計学的に有意に下げることはできなかった。副作用はグレード3または4の有害事象は、レムデシビル群の273人の患者(51.3%)およびプラセボ群の295人(57.2%)で29日目またはそれ以前に発生しました(表S18)。41件のイベントがレムデシビルに関連していると調査員によって判断され、47件のイベントがプラセボに関連していると判断されました(表S17)。全患者の少なくとも5%で発生する最も一般的な非重篤な有害事象には、糸球体濾過率の低下、ヘモグロビンレベルの低下、リンパ球数の低下、呼吸不全、貧血、発熱、高血糖、血中クレアチニンレベルの上昇、および血糖値の上昇が含まれます(表S20)。これらの有害事象の発生率は、レムデシビル群とプラセボ群で概ね類似していた。有害事象はCovid-19感染によるものがほとんどで、プラセボと同じ発生率である事から、特に問題になるような副作用がないと思われます。ただし、これはCovid-19の症状が重篤である事から、レムデシビルの副作用が隠された可能性があります。また投与例数が273人なので統計学的には95%の確率で1%の発生率の副作用が1例発生するかどうかです。今後大規模に使われて重篤な副作用が発生しないという担保は得られていません。Covid-19に対する抗ウイルス薬レムデシブルの効果は、ウイルスが存在することによる病状に対しては有効であることが示されたと思います。しかし、ウイルスが体内の免疫機構に影響を与えてサイトカインシンドロームを起こしてしまうと無効であることが死亡率を下げることができなかったと思います。新型コロナウイルスが世界中に流行している中での厚生労働省のレムデシビルの特例承認は間違いなかったと言うことになるでしょう。しかし、検討することはまだまだ残っています。退院できた人はCovid-19が本当に消えているか、他の人に感染力をもたないかどうかが不明。ウイルスに感染した人に後遺症がでるということがいわれています。これに関して①C型慢性肝炎ウイルスのようにいったんウイルスは消えても肝細胞のどこかに隠れていて長い時間をかけて少しずつ肝臓に悪影響を与えている。②ウイルス感染により正常細胞が毒性物質を作るようになっているため、③単純にウイルスが排除されていないだけの三つぐらいが仮説として考えられます。今後は優先順位をつけて①から③のどれかあるいは複数が影響しているかどうかを研究する必要があります。①~③原因であった場合にはそれぞれ対応も変わると思うので、ワクチンの第Ⅲ相試験で測定項目を増やして明らかにする必要があるかもしれません。PCR検査の疑陽性に関する対策も必要かと思います。抗体検査をスクリーニング検査に用いてPCRを確定診断に限るあるいはその逆の方法をとるなど検査方法の一律化を図る必要があると思います。人の運は一生で決まっているのか?貧乏神が! 1【電子書籍】[ 助野嘉昭 ]価格:458円 (2020/10/13時点)楽天で購入
2020年10月13日
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半年ほど入院していましたので、コロナには無縁かと思っていましたが、再燃してきたみたいですね。各紙でデキサメタゾンがコロナに効果があるという記事が載っていました。重症患者さんの死亡率を下げると言う事がRECOVERY STUDYで明らかになりました。人工呼吸器などの治療を行った際にデキサメタゾンを投与すると死亡率が減ると言う事です。話題の人工心肺装置を使わなければならないような人は死亡率を40%から22%に下げました。人工呼吸だけでは25%が21%と死亡率を減りました。前記の二つの方法を使わなかった場合には死亡率に差がありませんでした。死亡率は各療法を始めてから28日後の死亡率で比較しています。デキサメタゾンはステロイドなので、炎症を抑えることによって死亡率を下げていると考えられます。コロナウイルスに対する効果に関してはないと思われます。ワクチンができるまでは感染が収まる事はないでしょう。参考:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.06.22.20137273v1
2020年07月22日
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私は人の顔を覚えるのが苦手で、かなり頻繁に会ってからでないと顔を覚えることができません。また、学生時代の同級生に会っても10年以上空いていると声をかけられても分かりません。これは脳のどこかに欠陥があるのではないかと思っていたのですが、過去の記憶に関して、それは記憶にないと判断する部位があることを東京大学が発見し論文にまとめました。 Reversible silencing of the frontopolar cortex selectively impairs metacognitive judgment on non-experience in primates.Kentaro Miyamoto, Rieko Setsuie, Takahiro Osada, Yasushi MiyashitaNeuron, 97, 980-989.e6 (2018) マカクサルを用いた実験で、記憶にないと確信する脳の部位は前頭極であることを磁気共鳴機能画像法によって明らかにしましいた。さらに前頭極を薬理学的に不活性化すると未知であることに対する判断に確信が持てなくなることでその仮説を裏付けています。過去に経験したかどうかの判断は神経中枢で行われており、結果としてはその部分と未経験かどうかを判断する前頭極との協調の度合いが高いほど未知を確信する力が強くなっていることも判明しています。前頭葉は哺乳類の中でも霊長類にのみに発達していることから、これは新しい経験だと判断できるのは霊長類だけかもしれません。認知症に関してはペットの長寿化によって犬やネコでも存在することが分かっています。だから認知そのものの前頭葉の働きはもう少し研究を進める必要があるかもしれません。つまり、確かに前頭葉が発達してる霊長類では未知であることの判断はそこで行われているかもしれませんが、ペットが他人と飼い主を区別することと今回の発見に差があるのかがよく分からないところです。この論文の仮説に従うと私は無知の知が発達しすぎ?(単に物覚えが悪いだけでしょうが)
2018年02月24日
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マウスによる実験ですが、Natureに「Inflammatory memory sensitizes skin epithelial stem cells to tissue damage」という文献が掲載されました。無料のアブストラクトしか読んでいないのですが、なかなか面白い発見です。皮膚のバリアは上皮幹細胞によって維持されていています。その役割は組織修復にあります。この組織修復に関しては最初の刺激に関する情報を記憶しており、次に刺激が来たときには修復に関する遺伝子の転写速度を上げることが分かりました。この機能に関しては皮膚常在性のマクロファージやT細胞とは無関係なものです。実際に役割を果たすのは最初の刺激で活性化されるストレス応答遺伝子でこの遺伝子は染色体をいじします。これがメモリーの働きを示して、次の刺激に対する遺伝子が急速に転写されることになります。このメモリーに対するエネルギーを供給しているのはAim2です。Aim2より下流のエフェクターはカスパーゼー1やインターロイキン1βを作ることを減弱することにより消費幹細胞が炎症を起こさないようにしているとのことです。これはストレスに対する応答性を高めて、炎症の発生を調節できますが、一方この感受性の増強はがんを含む自己免疫および過剰増殖性障害に対する感受性も高めてしまいます。つまり、皮膚が刺激を受け続けると修復機能はその刺激を記憶して、修復速度を高めることができると言うことです。日光を浴びすぎると皮膚癌のリスクが上がることや、感染を繰り返すと発病することになる菊池病などの疾患の発現機序に関して一つのヒントを与える可能性があります。上皮幹細胞の感受性を測定することによって、過剰になっている場合には、皮膚癌や菊池病の予防処置を取ることができる可能性があるという風に私は勘がます。
2017年10月30日
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CANTOS(Canakinumab Antiinflammatory Thrombosis Outcome Study)の結果がN Engl J Medに掲載されました。これは心筋梗塞の既往を有し、CRPが2mg/L以上の患者10,061例を対象にカナキヌマブプラセボと3用量のカナキヌマブ(50mg、150mg、300mg)の無作為化二重盲検下試験です。収容評価項目は非致死的心筋梗塞の発病、非致死的脳卒中の発病、心血管死亡です。48か月間投与してCRPは低下しています。主要評価項目ではプラセボ4.5件/100人・年、50mg 4.11件/100人・年、150mg 3.86件/100人・年、300mgでは3.90件/100人・年で、事前に規定した多重性調整域値(プラセボに対するハザード比0.83、95%CI0.73~0.95、P=0.005)を満たしたのは150mg投与群の0.85(95% CI 0.74~0.98,P=0.021)のみ。脂質に対する影響はなかった。カナキヌマブ全用量の全死亡のプラセボに対するハザード比 0.94,95% CI 0.83~1.06,P=0.31です。スポンサーはカナキヌマブ(商品名 イラリス)の製造販売元のノバルティスファーマです。文献の結論はAntiinflammatory therapy targeting the interleukin-1β innate immunity pathway with canakinumab at a dose of 150 mg every 3 months led to a significantly lower rate of recurrent cardiovascular events than placebo, independent of lipid-level lowering. (Funded by Novartis; CANTOS ClinicalTrials.gov number, NCT01327846.)です。はいそうですかというだけの試験と思います。臨床的には全く意味のない試験だと思います。脂質に影響を与えずに炎症を抑制することで心血管リスクの低下が動物実験で証明されたので、臨床試験を行ったものと思います。1年間に4.5人心血管リスクが実際に発現するのが3.86人に減ったということで、統計的に意味があるとしても3か月に1度150万払う人はいないでしょう。しかも、カナキヌマブを投与することによって致死的感染症の発生率が増えるので、総死亡率は変わらない(ハザード比0.94,95% CI 0.83~1.06,P=0.31)のですから。ディスカッションで触れているのかもしれませんが、金を出してまで読む気はしません。少し遅れて、CIRT(Cardiovascular Inflammation Reduction Trial)がカナキヌマブの代わりにメトトレキサートを使った試験が実施されています。この結果は同じようにでるかもしれません。しかし、MTXの作用機序は代謝拮抗薬ですので、副作用が多くて、試験継続が問題になり効果が出ないかもしれません。死亡率に関してはリウマチ患者ではメトトレキサートの使用、非使用で死亡率に差がないとの文献が出ています。これも、実際のエンドポイントの強さ(件/100人・年)と総死亡率を明らかにしないと、安いので、予防薬としてハザード比だけで%死亡率が低下と言うことが統計的に有意なことから、効能追加が認められてしまうかもしれません。
2017年10月24日
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私は知りませんでした。プラセボ群で副作用が見られることをNoceba効果と言うそうです。プラセボ効果に含まれると思っていましたが、効果はプラセボ効果、副作用はNoceba効果と言うそうです。サイエンスの記事によれば、インフォームドコンセントにおける有害事象に関係している事は明らかになっています。さらに中枢神経の痛みや圧力、温度による刺激に対する反応系にプラセボが影響を与えていることも明らかにされています。今回の論文では薬剤の価格がNocebo効果に影響を与えていることを臨床試験で証明しています。(例数が不足なので、検出力に問題があるような気がしますが、そこまで計算する気はありません。)一つ賢くなりました。参考Nocebo effects can make you feel pain Science 06 Oct 2017:Vol. 358, Issue 6359, pp. 44DOI: 10.1126/science.aap8488Interactions between brain and spinal cord mediate value effects in nocebo hyperalgesiaScience 06 Oct 2017:Vol. 358, Issue 6359, pp. 105-108DOI: 10.1126/science.aan1221
2017年10月21日
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少し前に人間ドック学会と循環器学会で血圧についての議論が起こっていたのは記憶に新しいところです。今後RWD(Real World Data)を用いる時には、臨床検査値の正常値よりも測定方法に関する標準化が必要になってきますが、そこはおいといて、正常値の定義。一般的には病気と判断するための最低値あるいは最高値が正常値の上限、下限でしょう。しかし、もう一つ基準値という考え方があります。健康人の2.5パーセンタイルから97.5パーセンタイルを取ることになります。これは母数によって変化するものでありますし、なにを以て健康とするかの定義が難しい部分があります。従って、人間ドックなどでは施設基準値というものが採用される場合があります。この方法であれば、施設内での比較では問題なく行うことができます。外注の場合には外注先の基準値が存在します。The Rotterdam Study(オランダの疫学研究、1989年に開始し、7,983人が登録され、2000年には3,011人、2006年には3,932人が追加されて、3年から5年ごとに健康状態を評価するもの)のデータから、FT4にとTSHに関して生存率と心血管イベントによって、基準値の変更を求めた論文が出ました。Arjola Bano et al. Association of Thyroid Function With Life Expectancy With and Without Cardiovascular Disease: The Rotterdam Study. JAMA Intern Med. Published online September 18, 2017. doi:10.1001/jamainternmed.2017.4836 です。これは疫学の面から口を出しすぎでしょう。他の因子も検討する必要がありますし。Rotterdam Studyの一つの切り口を示した論文としては意味があるとは思いますが。
2017年10月16日
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「Aging affects the balance of neural entrainment and top-down neural modulation in the listening brain」Nature Communications 8, Article number: 15801 (2017)https://www.nature.com/articles/ncomms15801によると高齢者ではノイズキャンセル効果が低下していることと、リズムに同調する神経の刺激が低下していることによって耳が聞こえにくくなっていると主張しています。試験例数は20名の成人(18から31歳)と20名の高齢者(61から77歳)での研究です。例数が少ないということと、高齢者の定義が比較的若いので、実際にはどのあたりから変化していくのかはよく分かりません。(データをばらつきを個々にプロットしているなど良心的ではありますが)補聴器などを必要としない、健康なヒトを各年代100例ずつぐらい集めて同じ実験をしてみればもっとはっきりするでしょう。「モスキート音」が聞こえなくなると、若くないという話とは少し会わないので、このあたりを詰めると軽度難聴に関するサプリメントの可能性が見えてくるかもしれません。
2017年07月09日
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幻肢痛は失った足や手に痛みを感じる病気です。失った手足の機能を訓練すると幻肢痛は減弱することから、手足の機能を動かす脳の訓練により痛みが消える可能性を追求した研究があったが、失敗に終わっています。大阪大学と帝人ファーマ、国際電気通信等のグループはブレイン・マシン・インターフェース技術を用いた義手を作成し(体と手は物理的にはつながっておらず、脳の活動によって義手を動かす)、患者を訓練することによって義手を動かすと幻肢痛の減弱に成功したとの事です。可能性としては、義手を動かそうとしているときに、脳の情報が増えて、その結果、幻肢痛の活動が減ったと仮定しています。存在を認識が上回ったということでしょうか。
2016年10月28日
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新聞記事だけでオリジナルの文献を探すのはとても面倒なことが多いです。読者の大多数はオリジナル文献まで欲していないから新聞で満足しているということなのでしょうが、せめて投稿雑誌ぐらいは載せてほしいものです。新聞記事のもとになった大学や企業の研究にはほとんど投稿した文献名、親切なところでは投稿論文のリンク先まで載っているので、そんな手間でもないとは思いますが。学会発表は比較的何月何日のなんとか学会で発表と記載されていますが。抄録入手は学会員だけしかできない学会も多く、ほんまかいなと思っても確認しようがないというか、とりあえず、特許先行権を取るために発表している研究と、とても論文にはできない内容をと学会に発表しておくというのがありますから。特にがんに関する緩和療法に用いるサプリメントなどは学会発表だけを繰り返して、論文は基礎しかないものが目立ちます。もと製薬会社勤めとしてはこいつらがん患者に対する説明責任を果たしていないと嫌な気分になります。制がん剤はできれば二重盲検で少なくとも比較試験で既存の治療を上回る結果を出さないと薬にはなりませんし、一回だけの比較試験では僅差であれば、繰り返し行われるなかで、使われなくなってしまうと思います。
2016年10月02日
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電子カルテシステム内に構築した臨床決断支援システム出典:文献 医療情報学 33(2): 69-77,2014 聖路加病院で行われた臨床決断支援(Clinical Decision Suport:CDS)システムを電子カルテシステムに搭載し、その利用率と支援率を評価した文献。 検討されたCDSは具体例はステロイド連続投与患者への骨粗鬆症予防薬の処方を支援するもの。通知条件は当日外来受診予定の患者、過去一年以内に外来でプレドニンを処方した診療科を受診予定の患者、過去3か月以内に外来でビタミンDの処方がないの3条件を満たし、以下のいずれかの条件を満たす患者。1)過去1年以内に、外来小胞にて6回プレドニン7.5mg以上を処方、プレドニン7.5mgの最終処方が3か月以内2)過去3か月以内に、外来で3回連続プレドニン7.5mg以上を処方、外来で3回連続プレドニン7.5mgを処方された際の合計処方日数が14日以上 不要を選択した場合にはその理由を入力する画面が立ち上がる。その他のCDSとしては治験実施中患者の入院通知、難病外来患者に対する療養指導記録、ペースメーカー挿入患者に対する療養指導記録、てんかん患者への療養指導記録、経鼻的持続陽圧呼吸療法患者に対する療養指導記録、院内尿路感染予防を目的とした膀胱留置カテーテルの抜去。 通知条件に合致したのは、1,710件。患者の不来院は82件。実行は76.4%、無視は10.8%であった。 臨床決断支援システムはそれをわざわざ起動すること無く、日常業務の中で、表示されることが使用頻度の高まりにつながる。今回のシステムは電子カルテシステム内に構築することにより、通知の認識率は高率を示している。 不要理由を入力する画面はシステムの精度を確認するために必要なものではあるが、診断を行うものにとっては手間の増加につながる。無視の10.8%をどう解釈するかが問題となる。医療事務的に必要な療養し同記録作成のリマインダーとは異なり、予防薬の処方に関してはエビデンスの蓄積により、変化が起こる可能性が高い、システム的には柔軟な取り扱いが必要であり、医学知識の更新に伴うシステムのメンテナンスに関しては、SOPを定めて実施する必要がある。医学知識の更新に伴う変化に関しては、その更新の評価をどのようにして行うかが問題として残る。
2014年11月04日
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のどの渇いたショウジョウバエが感じる水の報償の神経類似性出典: Nature Neuroscience (2014) doi:10.1038/nn.3827 2014年9月28日、ロックフェラー大学の研究者がNature Neurosicenceのオンライン版に公開した文献で、ショウジョウバエは普段は水を報償としてとらえないが、のどが渇いているときは水を報償と感じる。この水を報償と感じる神経回路は砂糖や食物を対象と感じる神経回路とは異なることを明らかにした。 のどを乾いているときに、ショウジョウバエは報償として感じる行動に加えて、水を探す独特の行動を示した。この研究はショウジョウバエが哺乳類と同様に、報酬を「欲し」、価値を「学び」、その報酬を「好む」ということを心理的(行動学的に)区別できることを明らかにした。 このような、wanting、learning、likingという要素に摂食行動を評価できるのような行動を取るのは、これらのニューロンが独自の集団を持っていることを示唆している。 好きなことをやるために色々学ぶということに関しては高等動物の行動と考えられてきたが、ショウジョウバエの段階でもそれらの神経経路が用意されていることが明らかになった。
2014年09月30日
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Characterization of the molecular mechanisms underlying increased ischemic damage in the aldehyde dehydrogenase 2 genetic polymorphism using a human induced pluripotent stem cell model system.出典:文献書誌事項:Sci Transl Med 24 September 2014:Vol. 6, Issue 255, p. 255ra130 Sci. Transl. Med. DOI: 10.1126/scitranslmed.3009027 2014年9月24日、スタンフォード大学はアルデヒド脱水素酵素の活性が弱くなる遺伝子異常を持つヒトの心臓では、心筋梗塞などの酸化ストレスが働いた場合に、アルデヒド脱水酵素による抗酸化作用が十分に働かないことを発表した。 この発表はScience Translational Medicine誌で行われた。 アルデヒド脱水素酵素は心筋の抗酸化作用以外に、アルコール代謝物であるアルデヒドの肝臓での解毒に関与している。 アルデヒド脱水素酵素の1塩基変異は欧米人に比べて、モンゴロイドに多いことが知られている。このSNPsは飲酒のに対する強さを下げる。 臨床的にはお酒の弱いヒトは心筋梗塞が重症化することが知られていた。アルデヒド脱水素酵素の活性が関与することが経験的に知られていた。動物実験では確認されていなかった。 今回、アルデヒド脱水素酵素のSNPsをもつ患者のiPS細胞より、 心筋細胞を誘導し検討した結果、酸化ストレスに関するアルデヒド脱水素酵素の働きが弱いことが明らかになった。 この発見は心筋梗塞に対する新薬の開発やテーラーメードの心筋梗塞の治療に道を開く可能性がある。
2014年09月29日
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敗血症治療のための体外血液浄化装置出典:文献 ハーバード大学のワース(Wyss)研究所は、2014年9月14日、Nature Medicine Onlineで敗血症治療の血液浄化装置について発表した。この装置は、脾臓が持続的に感染因子を最初に特定することなく、血液から病原体や毒素を取り除くことから、発想している。 補体の活性化や凝集なしに広い範囲の病原体や毒素をとらえることのできる人工オプソニン(マンノース結合レシチン(MBL))でコーティングしたナノサイズのビーズに磁性を与えたものを感染を受けた患者の血流と混合する。磁石がオプソニンと結合した病原体や毒素を引き寄せ、浄化した血液を再び、患者に戻す。人工脾臓の効果はグラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌あるいはエンドトキシンを毎時1.25リッターまでの流速で人工脾臓モデルで取り除くことができることを、In Vitroで確認できた。Staphylococcus aureus や Escherichia coli に感染したラットでも、人工脾臓は90%以上の細菌を血中から取り除き、病原体や臓器中の免疫細胞の浸潤や免疫系のサイトカインの血中濃度を低下させ、エンドトキシンショックモデルでは5時間の治療で人工脾臓は生存率を高めた。磁石を利用するところがこの研究の味噌というところでしょうか。何でもくっつくビーズに血液を流し、磁力でそのビーズとビーズに付着した病原体や毒素を取り除くという発想はなかなかできない、(少なくとも私は思いつかなかった) エボラに手を出さず地道に敗血症の治療の実現に取り組んで欲しいと思います。
2014年09月16日
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緑内障のCanaloplasty(シュレム管形成術)後のデスメ膜剥離 発生率と対処出典:文献 緑内障でCanaloplastyを行った場合のデスメ膜剥離(DMD)の発生率と対処に関して報告。 Tulane Glaucoma ServicesにおいてCanaloplasty施行後にDMDが発生したすべての患者を見直した。1年間の事後観察(視力、眼圧および緑内障の薬物治療)を分析に含めた。 DMDの発生率は7.4%(162眼中12眼)。10眼は3mm以下であった。角膜内出血は58%(7/12)でのこりは網膜内の粘弾性(HealonGV)だけであった。2例で5~6mmに達して、角膜の変性が起こり手術が必要であった。 それほどCanaloplastyは危険な手術ではない。 日本ではほとんど行われない手術です。ちょっと興味だけでアブストラクトを紹介しました。
2014年08月28日
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Suicide tourism: a pilot study on the Swiss phenomenon出典:文献Suicide tourism: a pilot study on the Swiss phenomenonJ Med Ethics doi:10.1136/medethics-2014-102091 Published Online First 20 August 2014 2014年8月20日、スイスのチューリッヒ大学の尊厳死ツアーに関する論文が「Journal of Medical Ethics」にOnlineで掲載された。 スイスでは法律が尊厳死に対して明確に規制していない。そのため、法で禁止されている国々からの人々の流入(尊厳死ツアー)を招いている。 今回の研究では2008年から2012年までのチューリッヒ法医学データベースを用いてスイス人以外の自殺幇助に関して検討した。例数は611例で、国の数は31カ国。約半分がドイツ(43.9%)続いてUK(20.6%)、3位がフランス(10.8%)であった。上位3カ国はいずれも尊厳死に厳しい条件がある。 今回の結果は先行する研究(1990年から2000年、2001年から2004年)に比べると、癌(37.2%)よりも神経疾患(47.4%)の割合が高く、リューマチ(24.6%)も対象者の診断名が多かった(診断名は対象1人に対して、複数ある場合あり) 癌の末期患者の痛みを取る治療に関しては格段の進歩があったので、癌の割合が減ったのでしょうか。神経疾患は徳洲会のドンの病気とかでしょうか。リューマチは1990年、2001年の研究では10%以下ですが、倍増です。 理由がよく分かりません。死者の個人情報は遺族の個人情報に影響を与える場合を除けば、個人情報保護法案では取り扱われていないので、日本でも尊厳死に関して、死因に対してきちんとしたデータベースがあれば統計を取ることは可能なはずです。
2014年08月26日
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大規模なニューロンの記録用の次元削減法総説: Dimensionality reduction for large-scale neural recordingsNature Neuroscience(2014)doi:10.1038/nn.3776 Published online24 August 2014 ほとんどの知覚、認識、情動は多くのニューロンの相互作用を利用している。最近、経時的あるいは刺激によって発生するニューロンの膨大な記録を行う方法が急速に開発されて、実用化に繋がっている。 個々のニューロンの働きをこえて、ニューロンの記録の塊を研究することによってどのような科学的な知見を得ることができるかが鍵となる。 この総説では神経科学の分野で次元削減法をどのように使うか、自分のデータをどのように処理するかを探すことができることを目的としたものである。 集団としてのニューロンの動きを解析するための方法論に関する総説です。本文が必要な場合は3,300円です。
2014年08月26日
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Regulation of the hepatitis C virus RNA replicase by endogenous lipid peroxidation.出典:文献 C型肝炎ウイルスはほかのRNAウイルスとは異なり,脂質の過酸化による小胞体膜の傷害によりウイルス複製がきわめて繊細に抑制されること,また,脂質の過酸化の一部は2型スフィンゴシンキナーゼにより制御されていることを見い出した.細胞における脂質の過酸化を抑制すると,ウイルス複製複合体を構成する非構造タンパク質を標的とする直接作用型の抗ウイルス剤の50%有効濃度が特異的に上昇したことから,脂質の過酸化によりウイルス複製複合体の立体構造が制御されていることが示唆された.さらに,脂質の過酸化への耐性にかかわるアミノ酸変異をプロテアーゼ補因子NS4AおよびRNAポリメラーゼNS5Bの小胞体膜貫通領域あるいは小胞体膜に近接した部位に見い出し,また,耐性の獲得が効率的なウイルス複製に重要であることを明らかにした. 複数の異なる遺伝子型のC型肝炎ウイルス株も脂質の過酸化に対する感受性をもつことが確かめられたことから,典型的な野生型のC型肝炎ウイルス株の複製は細胞における脂質の過酸化により負に制御されており,そのことが肝臓における長期的な潜伏感染を促進していると考えられた.だそうです。
2014年08月22日
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出典:文献 チオプリンは自己免疫疾患によく使われる薬だが、致命的な白血球減少症を引き起こす可能性がある。この白血球減少症はチオプリンの代謝酵素遺伝子の変異と関連がある。アジア人ではTPMT変異の割合が低いが、チオプリンによる白血球減少症の発生率はヨーロッパ人よりも高い。 チオプリンの治療を受けた987人の韓国人を対象に遺伝子同定を行った。NUDT15のSNPがチオプリンによる早期の白血球減少と強く相関することを見いだした。韓国人における、チオプリンによる早期の白血球減少症に対するこの遺伝子変異の感受性は89.4%で、特異性は93.2%を示した。(TPMT変異の感受性は12.1%、特異性は97.6%)非常に少数であるが、ヨーロッパ人系の炎症性大腸炎の患者においても、このSNPはチオプリンによる白血球減少症と強く相関していた。NUDT15は異なった人種でチオプリンによる白血球減少症に対する薬理遺伝子学的決定因子である。 アザチオプリンの白血球減少症に新しいSNPが見つかったとい言うことです。TPMTは薬理学的にも想定されるSNPですが、NUDT15もプリン体の代謝に係わる酵素をに関連していそうです。(抄録だけではよく分かりません。http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=NUDT15をみてもよく分からない。 白血球減少症が起こらない人にはアザチオプリンをもっと使っていいことになるのでしょうか?B型肝炎ウイルスに関してはチェックをすれば分かりますし。下痢に関してはどうでしょうか、イリノテカンの様に誰かすでに研究済?
2014年08月11日
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ナルコレプシーとインフルエンザワクチンの関係のキーになる文献取り下げ 出典:文献Science 1 August 2014: Vol. 345 no. 6196 p. 498 DOI: 10.1126/science.345.6196.498 2009年のインフルエンザの流行の後、ヨーロッパでPandemrixと呼ぶH1N1ワクチンの摂取を受けた子供が約150,000人に1人の割合でナルコレプシーを発病した。ナルコレプシーが頻発したことに対しては、Pandemrixを使うことで生じたH1N1の断片が、特定の弱さがある小児において自己免疫反応の引き金になっているという説明が主力であった多くの研究者がこの仮説を実証するために努力を重ねた。しかし、今週(2014, August,1)その努力に暗雲が立ちこめた。Stanford Universityの研究者たちが、この免疫学的仮説を最初に明らかにしたScience Translational Medicine, published 18 December 2013の文献を取り下げたからだ。発表以降、いくつかの研究が行われたが、その説明の一番重要ところを再現することができなかった。 本文が有料なので、ここまでしか分かりません。2009年のインフルエンザの流行は色々と誤報が流れましたが、それがまだ続いている?しかしpandemic対応に「Pandemrix」のネーミングに違和感があるのは私だけでしょうか?
2014年08月03日
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108の総合失調症関連の遺伝子座の生物学的側面 出典:文献 日本では藤田保健衛生大学が参加しているSchizophrenia Working Group of the Psychiatric Genomics Consortiumは総合失調症患者36,989人と対照群113,075人のゲノム解析を行い、108の遺伝子座が総合失調症に関連していることを明らかにしました。 108の遺伝子座のうち、75%が蛋白質をコードする遺伝子を含み(40%が単一遺伝子)、その他の遺伝子座の8%では遺伝子のサイズが20kbいないであった。DRD2を含む、総合失調症の病因論と治療の主要仮説に関連のある新規な関係が明らかになった。多くの遺伝子はグルタミン酸神経伝達とシナプス可塑性に関与した。 発見されたSNP群を治療に応用するために、いくつかのSNPの組み合わせを検討したが、検出力が十分な組あわせはなかった。 免疫に関する遺伝子座とSNPsに関連性のあることが示唆された。 強引な力業という感じもしますが、ミレニアムプロジェクトのマッピングも応用まで来たというところでしょうか。疾患までにはもう一山ありそうですが、発病例4万近く、平常人11万弱のゲノム解析を行うことが可能と言うことはすごいことだと思います。 オリジナル文献も公開されています。
2014年07月25日
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出典:N Engl J Med 2014; 370:e40June 26, 2014DOI: 10.1056/NEJMicm1313137 だから、エアバッグは危ないという記事ではなく、網膜剥離の映像を勉強するための記事です。 参考までに状況 17 歳の女児が、 エアバッグが作動した自動車事故の直後に、両眼に霧視(blurred vision)と異物感(sensation of a foreign body)が生じたため救急部を受診した。彼女が高速道路で急な減速による追突事故に遭ったときにシートベルトを着用していた。他の傷は全くなかった。 写真はフルオレセイン染色が掲載されていて、確かに網膜に傷と剥離所見があります。興味ある方は上記のリンク先をご覧ください。
2014年06月26日
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Temporal disease trajectories condensed from population-wide registry data covering 6.2 million patientsNature Communications 5, Article number: 4022 doi:10.1038/ncomms5022 薬の効果の予測には今の患者の状態から病気がどう進行するかを前もって知ることは欠かせない。病気と特定の時期の病気の進行(torajectories)に関してのは、少数の病気のに焦点を当てたものか、数年を超えない、時間等いう概念の欠落した大規模な研究がほとんどである。 我々はデンマークの全人口をカバーしている電子的な健康登録から得たデータを用いて特定の時期の病気の進行に関する解析を行った。・・・ 拙訳を見せても仕方がないので、これぐらいして、興味のある方はこの文献はフリーですので、オリジナルを当たってください。 お勧めします。 特定の病気をターゲットにしている場合には、例え大規模試験を行っても、バイアスが入るとの意見です。メガデータを処理する方法(これがぴんとこないので、訳がうまくいかない)を使えば、病理学的な(Pathologies)なカテゴリー分けを超えたカテゴリーを見いだすことができ、それを用いることにより、逆にテーラーメードの病気の転帰を予測できるとしています。 以下は妄想。 全国民を網羅した医療データといえば、わが国は国民皆保険制度を取っています。また、そのデータはすべてではありませんが、電子化されています。だから日本でもこれは、政府が許しさえすれば病名、通院日、入院日等有用なビックデータが入手できる はずなのですが、けっこうこれは国民皆保険制度のバイアスが係ったデータです。 スタチンの投与を行った人の保険データを病院の協力をえて入手し、心筋梗塞の発生率をスタチン別に解析しようとしたのですが、保険データでは心筋梗塞の発生日が特定できないデータが多く、ある条件をつけて一定の基準で抜き出しましたが、5年分のデータで解析した結果と翌年もう1年足して同様の解析を行ったところ、逆の結果が出ることになりました。詳細なデータおよび解析の堅牢性の話は別にしても、1年延びても新規にスタチンを投与された人はそれほど増えているわけではなく、理由は不明でした。結構データをクリーニングプログラムも大層なものだっただけに 残念だった記憶があります まぁ日本では600例ぐらいの疫学試験で最初の2年間はデータベースシステムも稼働していない状況で、日本の中の大学で一番のところが音頭取ってやっているわけですから
2014年06月26日
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非癌性疼痛患者のオピオイド誘発性便秘に対するナロキセゴール 出典:文献 オピオイド誘発性便秘は,高頻度にみられる消耗性疾患である.われわれは,オピオイド誘発性便秘の治療薬として,経口末梢性μオピオイド受容体拮抗薬であるナロキセゴール(naloxegol)の有効性と安全性を検討した. ナロキセゴールはプラセボと比較して,オピオイドによる鎮痛作用を低下させることなく,有意に高い治療効果を示した.ナロキセゴールはモルヒネ受容体に対する抑制剤ナロゾンにポリエチレングリコールを結合させた薬剤で、ナロゾンはモルヒネ受容体に対する阻害剤で,ポリエチレングリコール結合により,中枢には届かず,中間にとどまることにより,モルヒネの便秘を抑えます。 ティーエスワンのオキソン酸みたいなもんです。 この薬の目の付け所はすごいのですが,思ったほど効いてない。(プラセボには勝ってはいるので,薬効はあるのですが) 非がん性疼痛のオピオイド使用って日本ではそんなに使われているのでしょうか?ご存じの方教えてください。
2014年06月20日
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Bioluminescent sensor proteins for point-of-care therapeutic drug monitoring出典:文献 光を利用して治療中の薬物濃度を監視することによって有害な過剰投与や非効率な過少投与を発見する新しい方法が、今週のオンライン版に掲載の研究論文で明らかにされる。この方法の簡単さは、診断試験室以外での薬物治療の監視において特に有用と考えられる。 Kai Johnssonたちは、タンパク質と人工的成分の両者によって構成される大型センサー分子の要素として発光タンパク質を採用し、その分子を血液検体に投入した。薬物分子の非存在下でこのセンサー系が発するのは赤色光である。しかし、薬物と結合するとセンサーの光は青色に変わり、赤色光と青色光との比率は薬物の濃度に依存する。研究チームは、広く使用されている6種類の医薬品でその系が機能することを示した。そのシグナルは1滴の血液からでも市販のデジタルカメラを利用して検出されることから、この方法は、インフラの未発達な開発途上地域や患者の自宅での使用に応用することができる可能性が示唆された。ジギタリスは今でも教科書に載っているような血液濃度を監視する必要のある薬ですが、これの方法が実用化されれば非常にすばらしい。
2014年06月09日
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急性呼吸切迫症候群関連の敗血症に対するロスバスタチン出典: 文献急性呼吸切迫症候群(ARDS)において、肺や他の臓器の炎症は致死的な臓器不全の原因となる。3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductaseの阻害剤は炎症反応を調節できる。之までの観察研究からスタチンは敗血症の患者の転帰を改善することが示唆されている。我々はそれをランダム化試験で検討した。結果はプラセボ投与群と変わらなかった。スタチンの他の疾患に対するランダム化試験でまた効果が否定されました。
2014年06月05日
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Simvastatinの中等症から重症のCOPD増悪予防効果出典:文献疫学的な研究ではスタチンは、慢性閉塞性肺障害(COPD) の増悪の重度、入院の割合、生存率を改善することが示されている。我々はsimvastatinの効果を、大規模、ランダム試験で前向きに研究を行った。結果はプラセボと変わるものではなかった。 疫学的に言われていることが、RCTをやったら否定されるという例です。ただ、部分的に効く集団があるかどうかはまだ残っているかもしれません。スタチンは薬理作用的にホルモン環境に影響を与えて、前立腺癌等にトライされています。結果はポジなものも存在します。予防薬の場合には医学経済学的な視点が必要になると思います。主薬より副作用防止薬の方が高いのは、理屈は分かりますが何となく変な感じがします。また、その治療効果を得るためには何人の人がいるかと言うこと(副作用が発生しない人)がどれぐらい必要かも知りたいところです。
2014年06月05日
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プソイドギンセノシドF11は抗腫瘍効果に影響することなく、シスプラチンの腎属性を生体内で軽減する。出典:Scientific Reports 4, Article number: 4986 doi:10.1038/srep04986シスプラチンは腎毒性のために臨床的な使用は厳しく制限されている。本研究ではプソイドギンセノシドF11がシスプラチンにより誘導される腎毒性を軽減できるかどうかを検討した。これを明らかにするためにシスプラチンが引き起こす急性腎毒性の動物実験モデルを作成した。プソイドギンセノシドF11の前投与はシスプラチンの腎毒性を軽減した。また動物実験モデルではシスプラチンの抗腫瘍効果を減ずるというよりも増強した。 プソイドギンセノシドF11は朝鮮人参から抽出された化合物で抗酸化作用を有しています。シスプラチンの腎毒性は過酸化作用によることといわれていることから、この実験が行われたと思います。シスプラチンの腎毒性は尿細管上皮細胞内に移行後蓄積し、主に近位尿細管終末部を障害する。尿細管上皮のアポトーシスがフリーラジカルスカベンジャーによる軽減することが報告されていることから腎障害の発現には活性酸素が関与すると考えられています。 エダラボンは強力なラジカルスカベンジャーで急性脳血管治療薬として臨床応用されていますが、腎機能が低下している場合に重篤な腎不全が発生しています。そのため臨床応用には難しくなっています。NACやグルタチオンなどのラジカルスカベンジャーも有用と考えられますが、臨床的なエビデンスはありません。今回のプソイドギンセノシドF11も動物実験モデルなので、エビデンスとはなりません。腎障害発生時に低マグネシウム血症がいわれていることから、Mgを補充するレジメンが臨床試験で検討され、良好な結果を得ています。腎障害を減らしたプラチナ製剤としてはカルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンがあります。カルボプラチン、ネダプラチンでは腎障害が減っていますが、骨髄抑制が増加しています。オキサリプラチンは大腸癌の併用療法の一つとしてその効果が認められています。 合成は日本で行われましたが、抗腫瘍剤として評価を定めたのは欧州です。
2014年05月29日
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喫煙妊婦の新生児の肺機能に対するビタミンCの影響 RCT出典:JAMA. 2014;311(20):2074-2082. doi:10.1001/jama.2014.5217. 妊娠中の母親の喫煙はその子の肺の成長に悪影響を与え、出生後の肺機能の低下と喘息のリスクを上昇する。霊長類のモデルで、肺の成長と出生後の肺機能に対するニコチンの子宮内での影響をビタミンCは防止した。喫煙妊婦をビタミンC投与群(n=76)とプラセボ投与群(n=83)、非喫煙妊婦n=76で試験を行った。ビタミンCの投与量は500mg/日。妊娠中の喫煙はビタミンCによって新生児の肺機能を改善することが示された。 非喫煙の1歳児のデータがないのが少し寂しいです。ビタミンCを取っていればたばこ吸っても大丈夫かどうかはビタミンC投与喫煙群と非喫煙妊婦群で比較するべきと思います。どうしてもたばこを止められないかたはせめてビタミンCを取りましょうということでしょうか。止めることができるヒトは止めましょう。禁煙治療はニコチン補充療法の場合は胎児に対する影響はあると思われます。
2014年05月29日
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消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド 改訂版出典: プレスリリース 国内における内視鏡の洗浄・消毒のガイドラインとして、2008年5月に「消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン」初版が公開されました。このガイドラインは「消化器消毒法ガイドライン(1995年 日本消化器内視鏡学会甲信越支部感染対策委員会)」「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(1996年 日本消化器内視鏡技師会消毒委員会)」「消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドライン(1998年 日本消化器内視鏡学会消毒委員会)」の記載を基本とし、その後の新しいエビデンスを踏まえて作成されました。本ガイドラインは初版発行から約5年経過したこと、また米国の消化器内視鏡マルチソサエティガイドラインが改訂されたことから見直しが行われ、改訂版である「消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド」が2013年7月10日に公開されました。今回の改訂版の名称には、「ガイドライン」ではなく「実践ガイド」という表記が用いられています。これは、昨今の「ガイドライン」の策定は厳密なエビデンスに基づくこと、作成者だけでなく評価者を同時に設置することなど綿密な作成過程が要求される傾向がありますが、今回の改訂版は前述の3学会の専門家による合意を中心に作成されていることから、名称を「実践ガイド」としています。本実践ガイドは、第1章から第6章で構成され、各章ごとにさらに推奨事項、その解説が示されています。勧告事項の実証性水準が示され、「推奨度I(必須の要件であり、すべての施設において実践すべき事項)」「推奨度II(現状では必須と位置づけるものではないが、実施が望ましい事項)」の2つに分類されています。以下、各章の内容及び今回の改訂で新設された項目、変更について示します。 内視鏡室での感染対策は、患者への感染防止のみならず、スコープを取扱う医療従事者への感染防止に対しても配慮することが重要となります。各施設において、本実践ガイドを基に施設の実情に合わせたマニュアルを検討・作成し、それを確実に遵守することにより患者、医療従事者双方に対し、検査・処置等の安全が確保できるよう努めることが望まれています。ガイドライン、標準手順書が出たときはマニュアルを作ることが大切です。
2014年05月27日
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今回は初めから斜体です。(個人的な意見を記載しただけで、引用したものを否定するものではありません)糖尿病受診中断マニュアルが公開されています。これは厚生労働科学研究「患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と均てん化に関する研究-合併症予防と受診中断抑止の視点から」の糖尿病受診中断対策包括ガイドの抜粋です。ガイド マニュアル中断率は年8%で様々な手段で介入を行うと、その率は減少できています。その手段に関しては栄養指導、療法指導受診時間の融通性残薬がある場合は経済的負担が高い可能性があるので、低薬価あるいは後発医薬品の使用を考慮する。薬剤を中止できそうな場合でも、その後の受診中止を考慮して慎重に考慮する受診勧奨を行う、電話、郵便物、メール年2~3回尿アルブミン値の検査年1回眼科検診足の診察禁煙指導で、何か受診を勝手にやめると何か悪いことが起こるのか?に対する回答はガイドの12ページにこう書かれています。 「 受診中断を防ぐことによる医学的な利益については、データが十分ではなく定量的な評価が困難であるが、受診中断者はその後合併症が生じてから受診を再会することが多いことを考えると、年間 26万人、10年間で 260 万人の受診中断を防ぐことにより、かなりの数の合併症を予防する ことが可能であることが予測される。」 医学的な利益に関しては定量的には評価されておらず、合併症が生じてから受診を再開することを根拠にしていますが、これは印象評価で医師がそういうヒトと再会していてい、印象が強いからそう思っている、そのまま受診しないヒトがどれぐらいいるかが分からないので、本来は根拠になりません。 いくつかの論文引用され、下記のように記載されています。受診中断者の血糖コントロールは、継続通院者と比較すると不良である。Schectman JM, Schorling JB, Voss JD 2008 Appointment adherence and disparities in outcomes among patients with diabetes. J Gen Intern Med 23:1685-1687Hammersley MS, Holland MR, Walford S, Thorn PA 1985 What happens to defaulters from a diabetic clinic? Br Med J (Clin Res Ed) 291:1330-1332 Jacobson AM, Adler AG, Derby L, Anderson BJ, Wolfsdorf JI 1991 Clinic attendance and glycemic control. Study of contrasting groups of patients with IDDM. Diabetes Care 14:599-601アルコールの多飲の習慣や喫煙習慣のある 2型糖尿病患者が受診中断を行い易いことが明らかになっておりGraber AL, Davidson P, Brown AW, McRae JR, Woolridge K 1992 Dropout and relapse during diabetes care. Diabetes Care 15:1477-1483増田千春, 大野清美, 尾山芳子, 大野洋子, 炭山久美子, 沢寿賀子, 門井美保子, 飯沼笑子, 松下盛子, 塩崎正美, 福本佐衛子 1983 糖尿病患者通院中断の要因について―その一考察―. 看護技術 29:95-99 古賀明美, 松岡緑, 山地洋子 2003 受診中断中にある糖尿病患者の療養生活および治療の認識―継続者との比較―. 日本糖尿病教育・看護学会誌 7:15-23受診中断のハイリスク群は合併症発症のハイリスク群であることが推定される岡田泰助, 奥平真紀, 内潟安子, 倉繁隆信, 岩本安彦 2000 学校検尿と治療中断が 18 歳未満発見 2型糖尿病の合併症に与える影響. 糖尿病 43:131-137奥平真紀, 内潟安子, 岡田泰助,岩本安彦 2003 検診と治療中断が型糖尿病合併症に及ぼす影響. 糖尿病 46:781-785 杉本英克, 中石滋雄, 磯谷治彦, 大石まり子, 大橋博, 奥口文宣, 加藤光敏, 栗林伸一, - 14 - 福田正博, 宮川高一, 山名泰生, 土井邦紘, 伊藤眞 2013 通院中 2 型糖尿病患者における中断歴に関する多施設調査. 糖尿病 56:744-752 若い 2型糖尿病患者を対象とした研究ではあるが、受診中断者がその後の合併症を発症しやすいというデータも存在する岡田泰助, 奥平真紀, 内潟安子, 倉繁隆信, 岩本安彦 2000 学校検尿と治療中断が 18 歳未満発見 2型糖尿病の合併症に与える影響. 糖尿病 43:131-137 中断した場合に合併症の発生率が高いのは結局18歳未満の2型糖尿病だけが定量的に検討されています。 糖尿病治療を否定するわけではありませんが、なぜずっと薬を飲み続けなければならないのかの積極的なデータがないのでちょっと気になります。 最近、病的肥満の糖尿病患者さんの場合は、胃を小さくする方が、薬剤治療継続よりも合併症の発生率が低く、HbA1cの目標値達成率も高かった、慢性疾患のRCTに関して服薬遵守に関してはデータが不十分である、一人の合併症発症予防をえるためには50人以上の患者が必要(50は100だったかもしれません)って文献を読んだからかもしれません。 ガイドラインには「薬剤を中止できそうな場合も、その後の受診中断の可能性を考慮して慎重に判断する。」と書いてあります。慎重に対処するというのは具体的にはどういうことでしょうか。年に2~3回は受診すべきことをちゃんと守らせるということだと思いますが、受診中断リスクの高いヒトは中止しないとも読めるのでもう少し具体的な記載がほしいと思いました。 かかりつけ医が実際に機能することによってかなり解決するような気がします。 何かあったらそのお医者さんに行くとすれば年数回は受診する可能性は高いと思います。コレに年1回の健康診断が入れば経過観察は可能かと思います。
2014年05月26日
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Baraitric Surgery versus Intensive Medical Therapy for Diabetes 3-Year Outcomes. 出典:N. E. J. M. コントロール不能の2型糖尿病を有する肥満患者を内科的治療単独、内科的治療+(胃バイパス術or 胃切除術)に無作為に割り付けて、3年間の観察を行った。主要評価項目はHbA1c 6%以下とした。 3年の追跡調査を終了したのは91%、主要評価項目を満たしたのは単独5%に対して胃バイパス術併用では38%、胃切除術では24%であった。 これは胃切除がいいというよりも、薬剤治療よりも食事治療の方が効果が大きいということを示唆しているのではないかと思います。(本文に違うことが書いてあったらごめんなさい。アブストラクトしか無料じゃないので)
2014年05月24日
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The mathematician versus the malignacy出典:文献 書誌事項:Nature Medicine 20, 460–463 (2014) doi:10.1038/nm0514-460癌の治療は長い間最大耐用量を決められたスケジュールに従って患者に投与することだった。 命を延ばすような倫理的な取り組み方法はないのだろうか。一人の数学的生物学者の理論は現在の腫瘍に退行する武器を改良するかどうかを現在臨床的に検討されている。 現在の標準的な投与法による治療は確かに癌患者の生存に寄与しているが、癌の治療にアメリカだけでも800億円が使われている。この背景から、その投与スケジュールは本当に患者にとって最適の結果を生んでいるのか?投与スケジュールを変えることでもっと良い結果がえら得るのでないかという疑問を持つことは有用である。最大容量を用いることは、薬剤に対する耐性をうんでいるようなものであるというひともいる。癌の成長曲線を数式化し、最適な投与スケジュールを検討している数学的生物学者がいる。 このあと、肺がんやGioblastomaの話がでてきますが、この画像の数式を見てついていけなくなったのでリライトはここまで、すいません。
2014年05月24日
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Mystery around drug adherence still plagues medical literature出典: Nature Medicine 20, 455 (2014)新薬の臨床試験のゴールドスタンダードは無作為化試験あるいはRCTである。でも患者ボランティアがどの程度その試験で薬を飲んでいるかどうかが分からないままでは、その結果はどれぐらい信じられますか?2007年では6つの慢性的な疾患の経口投与で行った192のRCT試験のうち33%しか服薬遵守状況を開示していないことが報告されている。(Am. J. Med. Sci. 334, 248–254, 2007)その傾向は2010年になっても変わらない。服薬状況が分からないと、実薬群で有意な結果が出なかった場合に、効果を高めに見積もったのか、副作用なのか、用量が多すぎたのかなどがすべて可能性があり、ほんとのことのことが分からなくなる。 FDAはいまのところ、服薬状況の把握についてのガイドラインはあまり強いものではない。しかし、強化する予定はある。CONSORTはITTの立場から、服薬状況を重視していない。しかしいつの日かRCTにおける薬剤を詳述するために服薬状況の定義と標準が新薬開発に関わる各分野が合意する日が来ると考えている。 ITTの立場だと対照群に割り付けられた患者ボランティアが実薬を飲んだことが分かったとしても、対照群として処理されます。降圧剤、糖尿病用薬、脳梗塞予防薬等だけでも何とかならんかという気がしますが、 1日1回とかで服薬が遵守されるということがあるぐらいなので、合意する日は私の生きている間はきそうにもないような気がします。今回のリライトで明らかな誤訳がある場合はお知らせいただけると幸いです。
2014年05月23日
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Effects of Green Tea Gargling on the Prevention of Influenza Infection in High School Students: A Randomized Controlled Study出典:PLoS ONE 9(5): e96373. doi:10.1371/journal.pone.0096373 この研究は薬食生命科学総合学府薬学研究院(医薬品情報解析学講座)が企画し、掛川・小笠地区6高校、掛川茶商協同組合、掛川市立総合病院、菊川市立総合病院および静岡県の協力により行われました。緑茶のカテキンが抗インフルエンザ活性を有することは研究室レベルでは明らかにされている。人ではまだエビデンスはない。学校発のアウトブレークという形で学生はインフルエンザの拡散に重要な役割を果たしている。学生間のインフルエンザの感染を防ぐことは流行、爆発的流行の頻度を減らすことに重要である。臨床試験はランダム化非盲検試験で行われ、757名のデータで緑茶と水のうがいの効果を調べた。1日3回の緑茶のうがいはインフルエンザの感染防止効果は統計学的に有意ではなかった。有意差が出なかった原因に関しては以下の点と考察している。 例数に設計に用いた発病率と実際の発病率に差があった。うがいよりも日常的なお茶の摂取量が多かった。 この試験の難しさは、インフルエンザの流行に結果がかなり左右されることだと考えられます。また日常的に飲んでいるお茶を想定しなかった点はこの試験結果をほぼ無駄にしていると考えらえる。
2014年05月22日
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