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2016.04.20
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カテゴリ: 自閉症関連

 自閉症17歳の居場所 個性奏でるピアノ 各地で演奏=神戸支局・五十嵐朋子




旋律に合わせて上体が揺れる。

指の動きが穏やかになると、その表情に笑みが浮かんだ。

全身で音楽を味わっているように見える。


各地のコンサートで活躍する高校生ピアニスト、

末近功也(こうや)さん(17)=神戸市西区。

自閉症や知的障害があるが、音大生が挑戦するような難曲を弾きこなす。


言葉で表現することは苦手でも、

演奏からはピアノを愛するひたむきな気持ちが伝わってきた。


 昨年9月、岡山県倉敷市であった「風の音コンサート」。

障害のある人たちによるステージの最後に、末近さんが登場した。

背筋を伸ばして一礼し、深く息を吸ってショパン作曲の「英雄ポロネーズ」を弾き始める。

圧倒的な技量に会場が息をのむ。

弾き終わり、一礼する様子は、自信に満ちていた。


障害のあるピアニスト仲間とともに、月2、3回程度、

各地のコンサートに出向いている。


 末近さんは兵庫県立阪神昆陽特別支援学校(伊丹市)の3年生。

2歳で自閉症と診断され、知的障害は中度という。


2歳10カ月から神戸市の療育施設に通い、

年長から一般の幼稚園に入園。


小学校、中学校では支援学級で学んだ。

現在は職業科で就職を目指して実習などに励んでいる。


 音楽は、生まれたときから常に身近にあった。

母百合子さん(50)はピアノ講師。姉紗菜さん(21)もピアノを習い、

家には自動演奏機能のついたピアノがあった。

幼い末近さんは、好きな曲のテープを繰り返し聞いては喜んでいた。


 だが、ピアノを習うまでには時間が必要だった。

障害の特性で、じっとしていられない。


5歳で話すより先に筆談ができるようになるなど言葉が遅く、

会話や人の指示を受けることが苦手だった。

両手の指を1、2本ずつ使って、耳で覚えた童謡などを弾く程度だった。


 小学2年の時、転機が訪れた。

学校でもらった簡単な音楽教材で音符を覚え、

家の楽譜が一気に読めるようになったのだ。


ピアノを弾く百合子さんの脇に立ち、楽譜をめくるようになった。

ショパンの「スケルツォ第2番」を百合子さんが弾き始めると、

隣で一緒にメロディーを奏で、うまくいくと跳びはねた。

 落ち着きが出始めた小3から、本格的なレッスンを受けるようになった。

正しい指遣いを教わると、ぐんぐん上達した。

発表会で楽しそうに弾く姿を見て、

父良浩さん(50)と百合子さんはプロを目指す学生が競う

「県学生ピアノコンクール」に小4から出場させた。

特別支援学校からの出場はただ一人。

高2の昨年、初めて銅賞を受賞した。



自分に自信を


 「自分に自信を持って生きられるように」。

両親がずっと心を配ってきたことだ。

小さい頃は多動で、

「いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているような感じだった」

と百合子さんは振り返る。


障害の特性でこだわりが強く、見通しの立たないことが苦手。


食事や風呂の時間が遅れるとパニックになることもあった。

聴覚も敏感で、

嫌いな人混みのざわめきやデパートの館内放送の電子音で、

動けなくなったこともあった。


 一方、得意なことには集中力を発揮した。

小2で2桁のかけ算が好きになり、

99×99から11×11までの式と答えを書き連ねて覚えた。


小5で世界地図をきれいに色分けして描いた。

中学生時代は楽譜を写すことに熱中した。


英語も得意で、2年前には英検3級に合格。

パソコン検定にも複数合格した。

 今、百合子さんは「いろいろな人が支えてくれた」と思い返す。

小学生の頃、末近さんが帰り道で動けなくなっていると、同じ学校の子が電話をくれた。

紗菜さんの友人は、障害を理解し一緒に遊んでくれた。


言葉の代わり

 末近さんのピアノへの取り組みには特徴がある。

練習は1日約1時間半と多くない。

最初から最後まで弾き通したいというこだわりがあるため、

指の運びの難しい部分だけというやり方はしない。

それでも、たいていの曲は1週間から10日もすれば弾けるという。

暗譜も早く、演奏に10分以上かかるような長い曲でも、

弾けるようになった頃には覚えている。

 両親は「もともと素早い動作が得意で、足も速い。

時間の感覚が私たちとは違うのかもしれない」と不思議がる。

新曲に取りかかる前、

徹底的にCDで曲を聞き込んでピアノに向かうスタイルで、

強く曲をイメージしているようだ。

 「国際障害者ピアノフェスティバル」(2013年)などに参加し、

ダウン症、自閉症、聴覚障害など、障害のあるピアニストたちとの交流が始まった。

今年3月には米国でも演奏した。

今、ピアノは末近さんにとって、社会とのつながりを作る「居場所」になっている。

良浩さんは

「苦手なことが多いことは本人も分かっているが、

演奏で拍手をもらうことが自信につながっている」

と話す。

 数年前、末近さんが練習中に涙を流したことがあった。

コンクール直前、完璧の出来で1曲を弾き終えた瞬間だった。

言葉では表現できない「うまくなりたい」という思いがあふれたのか。

自分なりに葛藤や失敗を乗り越えながら、

真剣にピアノと向き合っている証しだった。

 今、年間20ステージ以上をこなす。

その姿はひたむきだ。ピアノへの思いを直接聞いてみたかったが、

会話が苦手な末近さんは、私が話しかけても答えてくれない。

そこで、得意な英語で聞いてみた。

「ピアノを弾いている時、幸せですか」。

末近さんは首を何度も縦に振った。

 今月、障害者差別解消法が施行された。

障害がある人たちが暮らしやすい社会をつくるため、

差別解消に努めるよう求めている。

 障害は「ハンディキャップ」と言われる。

しかし、少なくとも末近さんの障害は

得意と苦手の差がはっきりしている」という個性だと実感した。

演奏から感動をもらうかわりに、

その個性を少しでも理解することが「お返し」になるのではないか。そんな思いを強くした。


 ■ことば

自閉症

 生まれつきの脳の機能障害で、発達障害の一種。コミュニケーションが難しい▽言葉が遅い▽パターン化した行動を好む−−といった特徴がある。症状は多様で、皮膚感覚や聴覚などが敏感なこともある。軽い人も含めて「自閉症スペクトラム」と呼ばれ、約100人に1人が当てはまるとされる。


[毎日新聞  http://mainichi.jp/classic/articles/20160427/ddf/012/040/011000c ]







自分の居場所ができると、それだけで安心できて、

更にまたパワーアップするのでしょうね。









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Last updated  2016.05.04 09:10:08
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