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「毎日更新」読レポ第2079
カール・ロジャーズ
~カウセリングの原点~
著:諸富祥彦
発行:㈱KADOKWA
第6章 1955年ロジャーズとジャンドリン
ジャンドリン宅での 短い会話(2/2)
ジャンドリンの宅にうかがって、彼の哲学に関する対話の時間をとってもらえたとき、私は、せっかくのジャンドリンと真剣勝負できるチャンスなのだから、いわいる「質問」ではなく、自分自身の考えをぶつけてみようと思った。その時がやってきた。
私は言った。「ocurring (アキャーレ:発生している)と implying(インパーエン:暗示) の関係が時間を生成する、というあなたの考えに私はとても魅かれています」
ジャンドリン(ニコリと笑い)「そう、すべての出事は未来(implying(インパーエン:暗示))へと起こるのだ」
その後私は、「呼びかける時間」「挑発する時間」というその時の最大のテーマについてたずねた。このテーマは数年来、私の最大の関心事となっている。時間が呼びかける。時間が挑発してくる。この時間の呼びかけ、挑発にどう応えるか。そこに人生の最も重要な鍵がある。人生の充実や心の成熟、特に中高年の心理的成長の鍵がある。私はそう考えていた。けれどこの問題はうまく展開しない。私は思考の停止(ストッペイジ)を余儀なくされていた。
「時間が……呼びかけてくる……」と私がほんとうの関心を口にしたとき、ジャンドリンのお宅のリビングは、数分間、「思考の道場」になった。それは、関節技の解き方がわからず悶々としている若手の格闘家に、その道のマスターがやってきて、思いも寄らなかったヒントを与えてくれているようなものだった。
ジャンドリンは私に、 「普通の言葉を使って、新しことを語るのは無理だ」 と言った。 「時間が呼びかけるとは普通は考えられない。でもその言葉で、あなたが何か新しいことを語ろうとしていることは、わかる。しかし、その新しい何かを伝えるには、それにふさわしい新しい言葉をつくる必要があるのではないか」 。「え……新しい言葉……?」と戸惑いつつ、「でも、そんなやり方では誰にも理解してもらえない」と私が言うと、ジャンドリンは言った。 「誤解されることに比べれば、理解されないほうがずっといい。理解できないものは、問いとして、人のなかに残る。探究を引き出す。そのためには、既存の言葉に頼らずに、新しい言葉をつくったほうがいい」 「う……ん」(沈黙)。ジャンドリンと私の数分間のスパーリングはここで終わった。真剣勝負に出た私を、ジャンドリンはたしかにしっかりと受け止めてくれた。傍でこのやりとりを見ていた村里忠之さんは、「あれは諸富さんにTAEのガイドをしていたんだよ」と言った。私を「エッジでの思考」に導てくれた具体的例の一つとみなしてもいいだろう。 「時間についての新しい見方を提示しようとするのなら、あなたの言葉をリポジショニング(市場にすでに存在する自社商品を、その特長が生かせるように市場空間内で位置づけ直すこと)する工夫がもう一つ必要だね」 と教えてくれたわけだ。
いかがだろうか。TAEの特質が少しは具体的に伝わっただろうか。それは 単に「からだの感じに耳を澄ます」ことにとどまるものではない 。それは、 私たち現代人がまだ十分に育っていない内的な力をきたえ、新たな生き方と思考の仕方を切りひらいていくのを手助けしてくれる 。ジャンドリンの哲学の主著 『プロセスモデル』は、人類の内的な進化・成長の課題を示す鍛錬の書であり、私たちのこれからの方向を指し示す道しるべの書でもある と言えるだろう。
と著者は述べています。
ジャンドリンは私に「時間が呼びかけるとは普通は考えられない。でもその言葉で、あなたが何か新しいことを語ろうとしていることは、わかる。しかし、その新しい何かを伝えるには、それにふさわしい新しい言葉をつくる必要があるのではないか」。ジャントリンは言った。「誤解されることに比べれば、理解されないほうがずっといい。理解できないものは、問いとして、人のなかに残る。探究を引き出す。そのためには、既存の言葉に頼らずに、新しい言葉をつくったほうがいい」「時間についての新しい見方を提示しようとするのなら、あなたの言葉をリポジショニング(市場にすでに存在する自社商品を、その特長が生かせるように市場空間内で位置づけ直すこと)する工夫がもう一つ必要だね」とジャンドリンが教えてくれた。という内容でした。「毎日更新」読レポ第2245 承認欲求捨て… 2024.11.11
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