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facebookへのアクセスが規制されている中国で、企業がfacebookみたいにオンライン・プロモーションやブランディングに活用しているのが「開心網」。いまのところ「公式ファンページ」(ブランド・ページ)を設けているのは、外国ブランドが中心です。外国ブランド系のファンページのファンの数をまとめてみました(2011年6月24日現在)。中国での人気やビジネスの大きさが、ファンの数を比例するわけではありません。ブランドそのもののパワーだけではなく、インダストリーや、そのブランドのファンページへの取り組み方、ファンへのインセンティブなどが、定量的に大きな影響を及ぼすからです。とはいえ、中国のネットユーザーにおけるブランドのプレゼンスや、企業側のウェブ・マーケティングへの姿勢が、ある程度読み取れるのではないかと思います。半年後、1年後にどう変化しているかも、興味深いところです。どうぞ、ご参考まで。ピンクのフラグは、日本系のブランドです...。
2011.06.24
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ほんらい中国のネット企業には外国資本が出資できませんし、外国市場に上場もできません。インターネット産業は外資規制の領域になっているからです。厳密に言えば、インターネットによってコンテンツを発信しその対価として収益を得るようなビジネスモデルが対象ですが、ウェブサイトで様々な種類のコンテンツを発信するたびに、当局にお伺いを立てて「許可証(ビジネス・ライセンス)」をいただかなければならず、外資企業だとだろいろ邪魔されたりするので、実質的には中国国内資本の企業でなければ、中国でウェブビジネスをうまく進めていくことができない仕組みになっているのです。けれども、百度、SINA、SOHUをはじめ、中国の主要なネット企業は海外市場に上場していますし、多くのネット企業は中国国外のベンチャー・キャピタルや事業会社からファイナンシングをうけています。実際にそれができているのは、コントロール・アグリーメント((支配権合意書。中国語では「控制協議」と書く)という契約上のからくりがあるからです。この契約により、外資企業が資本関係を持たずに、中国国内資本のネット企業を実質支配できるとされているのです。外国資本を集めたり、外国市場に上場しようと考えている中国企業は、まず中国国外に持株会社をつくります。そして、その会社が資金調達を行うのです。中国国外の持株会社は、100%出資の子会社を中国国内につくります。この会社の株主は外国企業なので外資扱いになってしまいますが、この会社と元来の事業会社が様々な契約を締結することによって、結果的に中国国外の持株会社が元来の事業会社を実質支配する仕組みを作るわけです。一般的に元来の事業会社の株主は、その企業の中国人ファウンダーですから、中国国内資本の企業ということになります。コントロール・アグリーメントは、中国国内の企業と中国人株主との間で結ばれる、紳士協定みたいなものです。この当事者間の約束ごとを支持してくれる法的な根拠が中国にはありません。あくまでも当事者間同士の取り決めなのです。もちろん大抵の場合は、もし約束を破ったなら、事業会社の株式を持株会社に無償譲渡する、という条項を盛り込むことによって、リスクヘッジを施します。慎重な場合は、中国国内資本の事業会社の株式に質権を設定します。でも、このリスクヘッジ策そのものに矛盾があるのです。もし、事業会社やその株主が約束を破って、持株会社がその株式を取得したらどうなるでしょうか?持株会社は外資企業ですから、事業会社も外資企業になってしまいます。つまり外資規制に抵触してしまうので、ビジネス・ライセンスが剥奪されてしまうことになり兼ねないのです。こうしたストラクチャーを考え出し、中国国外の証券市場への上場を目指す中国企業に高値で売りつけたのは、世界的な監査法人や法律事務所です。彼らも法的にはグレーゾーンであることを当事者には説明しているのですが、コントロール・アグリーメントのリスクヘッジ策の非実効性については市場参加者に積極的には開示していませんでした。もちろん、公開されている情報をもとに考えれば、わかるような内容ではありますが。ともあれ、百度もSINAもSOHUもYoukuも当当網も人人網も、このような投資ストラクチャーとコントロール・アグリーメントによって、中国国外証券市場で上場を果たしているのです。アリババグループのトップであるジャック・マーが、その実質支配子会社であった第三者決済サービスのアリペイ(支付宝)を、取締役会の議決を経ずに、アリババグループから切り離した、とされる一件は、単純化すれば、上述のコントロールアグリーメントをアリペイ側が一方的に破棄した、という事象に置き換えられます。かつてのアリペイは外資規制のビジネス領域では無かったはずですが、恐らく中国における外資企業のさまざまな不利益を考慮して、アリババグループは、資本関係によってでは無く、コントロール・アグリーメントによって、アリペイを実質支配・完全子会社化していたのです。昨年、中国の中央銀行は、「非金融機関による決済サービスの管理弁法」を発表し、インターネットを利用した第三者決済サービスを許認可制にすることを決め、原則として中国国内企業でなければライセンスを与えない方針としました。【中国国内企業でなければライセンスを与えない】これは、前に述べたインターネット・サービス・プロバイダー、例えばNASDAQに上場している百度やSINAと同じ条件になった、ということであって、コントロール・アグリーメントによって支配権を外資企業である持株会社に譲っているにせよ、アリペイの事業会社は中国国内企業ですから、第三者決済サービスのライセンスを受ける条件は満たしていることになるはずです。ところが中央銀行は、コントロール・アグリーメントによって外国資本の持株会社に実質支配されている中国国内企業を、許認可の対象から外す方針を突きつけたようなのです。ライセンス申請時に重要な契約をすべて開示し、外国資本の影響力をも審査対象にする、と。こういったルールがドキュメントとなって公開されることはまずありません。一般にドキュメントとなった中国当局のルールは大雑把なもので、運用の子細は担当責任者次第なのです。これがいわゆる「人治主義」であり、担当責任者へのもてなし次第では有利に運用してもらえるので、腐敗の温床ともなっているわけです。最近Tencent傘下の第三者決済サービスであるテンペイ(財付通)が、かつてのアリペイ同様、コントロール・アグリーメントによって、香港上場企業であるTencentの実質支配を受けている、という業界関係者にとっては周知の事実が公になり、ライセンスが剥奪されるのではないか、という情報すら流れていますから、中国人民銀行による第三者決済サービスへの外国資本の影響力排除の方針は、確固たるものだと考えられます。アリババグループとアリペイの一件を、「ジャック・マーは約束を守らない、中国企業は信用できない」と問題を矮小化して捉えるべきでは無いと思います。想像するに、アリババグループ側も主要株主でありボード・シートを持つYahoo!やソフトバンクに対して、中央銀行の指針やコントロール・アグリーメントのリスクをきちんと説明していただろう、と。そしてYahoo!・ソフトバンク側はエビデンスを求めたのではないか、と。「アリペイは資本構成としては完璧に中国国内企業じゃないか、コントロール・アグリーメントを結んでいるとライセンスがもらえないなんて、誰が言っているのか、どこに書いてあるのか、エビデンスが無ければ納得できない...。」そうは言われも、「コントロール・アグリーメントが残ったままだと、ライセンスが下りません」なんて書かれたルールは無いわけですし、中央銀行に尋ねても曖昧な回答しか得られなかったのでしょう。中国のルール運用は「人治主義」。アメリカや日本の会社が求める確証など得られるはずが無いのです。中国国外の役員を説得できるような材料を揃えることはできなかったのでしょう。だから議決も行われなかった。そうしてYahoo!やソフトバンク、さらにはメディアまでが「ジャック・マーは、こうした中国の規制強化を悪用して、成長が期待されるアリペイを自分のモノにしようとしているのではないか...。」と疑心暗鬼に陥っていったのです。中国も未だにコントロール・アグリーメントによる事由は、ジャック・マーの一人芝居(言い訳)に過ぎない、との論調も多いのですが、中央銀行がコントロール・アグリーメントの解除をライセンス付与の条件とする、とアリペイに示唆したのは事実だと思われます。コントロール・アグリーメントによる外資規制対策が、中国政府関連機関から疑義を唱えられた、という事実こそ、この問題の本質と捉えるべきでしょう。上述のとおり、中国国外に上場している中国のインターネット関連企業はことごとくコントロール・アグリーメントによって、中国国内企業にしか付与されないライセンスを得てビジネスをしているわけです。中国当局が、「外資とコントロール・アグリーメントを締結している中国国内企業は外資企業と同等に扱う」と、運用方針を変えてしまえば、上場企業は事業会社を持たない、すなわちビジネスの実体を持たない持株会社に過ぎなくなってしまうわけです。このことが市場参加者にとって大きなリスクとなるため、アリペイのトラブルが広がって以来、中国国外に上場している中国のインターネット関連企業の株価が軒並み下がってしまったのです。自分の情報をGoogleで検索し、気に入らない結果が多かったことに腹を立て、Googleなど中国から追いだしてしまえ、と指示したとされる党中央政治局常務委員・李長春さんは、中国のインターネット関連ビジネス推進の旗振り役でもあり、環境に優しい産業としてさまざまな優遇政策を推し進めています。もちろん中国国内のインターネット産業成長には、中国国外からの投資資金が欠かせない、ということを彼らは十分承知していました。ですから、インターネットの主たる監督省庁である工業情報化部はコントロール・アグリーメントによる外資の参加をむしろ歓迎さえしていたわけです。この方針がすぐにでも転換されるとは思えないのですが、コントロール・アグリーメントによるライセンスの付与というグレイな状態は、中国当局による言論統制の強化のための格好のツールになることは間違いありません。体制に不利な情報を流布するようなことがあれば、コントロール・アグリーメントを盾にライセンスを取り上げることができてしまうのですから!アリペイのアリババグループ離脱事件が浮き彫りにした問題は、中国企業がビジネスルールを尊重しないこと、とか中国国外市場に上場する中国インターネット企業の企業価値に関するリスク、とか経済的な視点でしか、取り上げられていませんが、中国のインターネット企業は、当局の胸先三寸でその企業生命を絶たれる状況に常に置かれていることが露呈したことこそ、重要であって最大の恐怖なのです。人民に影響力を持つウェブサイトほど、中国政府の顔色を伺いながらビジネスを行っていかなければ、ならないのです。
2011.06.22
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ついでもあったので、中国のECプラットフォームの最新情報をまとめてみました。まず、1日あたりの来店者の推計から。Alexaなどのデータを元に独自にページビューやユニークユーザー数を算出しているChinazの直近1ヶ月の平均ユニークユーザー数を来店者数とみなしています。1位 淘宝網(TAOBAO) 約2億5,000万人2位 京東商城(360Buy) 約210万人3位 拍泊網(PaiPai) 約180万人 (Tencent)4位 アマゾン中国(卓越網) 約120万人5位 当当網(DangDang) 約100万人6位 VANCL(凡客誠品) 約100万人7位 拉手網 約82万人8位 美団網 約52万人9位 麦網(M18) 約45万人10位 一号店 約38万人淘宝網(TAOBAO)が圧倒的強さを堅持しているのが分かります。淘宝の来店者のうちB2Cモール(淘宝商城)は2割未満と推測されます。3位の拍泊網
2010.12.08
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中国でビジネスを円滑に進めるために、取引先や協力者個人に対して、金品を贈与する習慣があります。これは何も中国に限ったことではありません。日本でも接待は行われていますし、お年賀、お中元、お歳暮、昇格祝い、出産祝いなど金品を贈与する習慣あります。を条件に容認されているのです。役人に対する賄賂は別格としても、日本企業が中国で戸惑うのは、中国におけるや倫理観が日本のそれとズレているからでしょう。春節(新年)、中秋など季節の付け届けや結婚や出産のお祝いなどについては、金額の多い少ないを別とすれば日本人でもすんなりと受け入れられるはず。いっぽう、取引金額の一定割合を現金でお返しすることが慣習化している業界もあります。中国ではであっても、現在の日本企業においては個人に対するバックリベートという認識となり抵抗があるはずです。特にナーバスになるのは現金の授受でしょう。iPhoneのプレゼントや日本への招待旅行であれば容易に承認できますが、それとほぼ同額(3,000RMBとか10,000RMB)の現金を取引先の個人にお渡しするとなると、躊躇してしまうでしょう。けれども、受け取る側は現金のほうがありがたかったりするのです。中国で働いていると、20代の会社員が推定年収をはるかに超える高級車を乗り回していたり、年収の数十倍はするマンションを購入したというお話に出くわしたりすることがあると思います。親族の援助やローンもありますが、中国では会社の給与とは別にを得ている勤め人が、未だに多くいるのです。そのこそ、業務上有利な立場によって得られる現金なのです。中国の現金授受を含む交際接待費は、GDPの10%ほどの規模になるだろう、と言っている方もいます。善悪やモラルを言及するのは後回しにするとして、中国の日系企業が対応に苦心するのは、現金の会計処理でしょう。そもそもご贈答に寛容な中国では、企業規模や業種によりますが売上の0.5%程度が税法上の損金扱いとなりますから、日本よりも交際費に寛容と言えます。とはいえ、売上の0.5%程度で済まない場合が多いでしょう。損金扱い枠を超えてしまえば、使途不明金(利益)と見做され企業所得税が課せられてしまいます。しかも、中国税務は、發票(公給領収書)を信憑(エビデンス)とするので、個人に現金を贈る場合は、エビデンスが無いので全額使途不明金となってしまいます。税務当局も、現地企業や零細企業には甘い場合もありますが、外資系企業、まして大企業であれば厳しくチェックします。中国人財務経理責任者は、支払いを遅らせることと税金を少なくすることに、悦びを見出します。日本では内部統制やコンプライアンスへの過敏な対応が常識となっていますが、中国では中国人財務経理の方が中国ので対応しようと努力しています。まわりの会社が同様の処理をしているのに、日本企業だけが真っ正直に対応する必要はない、と言う論理です。ビジネス上個人への現金贈与も必要だとなれば、より税金を少なくする方法で会計処理したいと考えるのが、中国では財務経理責任者なのです。取引先や協力者個人に贈与するためのは、以下のような手口で準備されるのです。初歩的で無垢とも言えるのがでしょう。社員や知人に依頼して、プライベートな支出の際に必ず公給領収書を受け取ってもらい、会社として集めてしまう方法です。飲食代なら交際費になってしまいますが、事務用品や消耗品として処理できる領収書もあります。その領収書の額面金額が費用計上して、として活用するのです。社員の領収書集めにインセンティブを出す企業もあります。例えば、額面10,000RMB分集めたら300RMBプレゼントみたいに。また中国にお住まいの方ならご存かも知れませんが、公給領収書を売ってくれるお店もあります。偽物をつかまされるケースもありますが、本物を額面の10%くらいの金額で購入できることもあります。いずれにせよ、会社ぐるみでさまざまな手段で領収書を集め、費用として計上するという原始的方法です。もうひとつの手口は、社員の給与に上乗せするパターン。実際は月給5,000RMBなのに10,000RMB払っていると言うことにして、差額(年間ならば6万RMB)をにすると言う方法です。この方法は労働法が改正され、福利厚生が厳格に運用されるようになってからリクスが高くなりました。給与の額面が大きくなれば、福利厚生費も多く計上しなければならないからです。ただ実際はを基数に福利厚生費を計算している企業も多く、上積み分をボーナスやインセンティブとして処理することにより、余計な費用計上を逃れたりする場合もあります。更に大掛かりなのは、第三者の企業にマネーロンダリングしてもらう手口です。自社が影響力を維持出来ていて、ある程度の統制も効き、なおかつ税務当局などと良好な関係を持つ現地企業と組んでを作る方法です。簡単に言えば、その現地企業に架空または上乗せ発注して、現金を用意してもらう仕組みです。原価または費用として会計処理できるので、比較的多額なを用意することができます。いずれの手口の場合でも、準備できるよりやや多くの金額を費用や原価に計上することになりますが、使途不明金として課税させられるよりになるように、財務経理責任者は頑張るのです。付け加えるならば、贈与した相手個人に迷惑がかかってはいけないので、一切証拠は残さない、と言う暗黙のルールがありますが、このことがビジネス成長のためとに関与した日本人管理者の前途を危うくする要因にもなることが多々あります。いずれの場合も現在の日本では、不正経理操作として糾弾されるべき行為ですが、20年前30年前から日本の会社で働いていれば、きっと似たような不正行為に関わったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「日本も昔はこうだった....。中国も近いうちに変わるだろう。」日本企業のコンプライアンス担当者が、中国に来てよく口にします。10年前の私もそう思いました。けれども10年経ったいまも状況はあまり変わっていません。中国の日系企業の管理者として、こうした状況にどう対応するのか、はっきりと筋を通すことが求められます。現地のセールススタッフから「現生を用意できれば販路が思いっきり開けるんですが」と相談されたとき:「日本企業はコンプライアンスを重視するから、そのようなことは一切できない。会社が用意した贈答品でなんとか頑張れ。」と激励しますか?「うちの製品は品質がいい。バックリベート払ってまで取引する必要はない。」と突っぱねますか?それとも、熱心な部下のためにに関与しますか?ベストアンサーは無いように思えます。また、自分のスタッフが金品や供応を受ける立場であったら、どう対応しますか。ローカライゼーションが進んでいる企業であればあるほど、現地スタッフが要職に就くことになります。中国でも日本ので戦ってもらうことが美学なのでしょうか。欧米系の企業のほうが、どちらかと言うと中国のでうまくやっています感じは受けます。日本企業は潔癖症が多いですね。まぁ、清濁併せ呑むと言う考えも大切だと思います。※本文は、違法行為や脱税などを教唆したり支持するものではありません。念のため....。
2010.01.08
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仕事ネタの流用で恐縮ですが、面白いと思ったので載せてみます。以下は、DCCI(Data Center of China Internet)が、2009年6月までに中国全土約9万人の調査対象者に実施したインターネット調査の結果を、各商品のカテゴリーごとに、現在の所有状況、所有者の満足度、半年以内に購入意向がある人が購入しようと考えているブランドを数値化して並べたものです。私も日本人なので中国でも日本ブランドに頑張ってもらいたいと思って、日々仕事に励んでいるつもりですが、苦戦を強いられています。その中にあって大健闘しているのが、デジタルカメラですね。購入意向のトップ10ブランドのうち、6つが日本ブランドです。所有者の満足度もトップ5まで日本ブランドが独占しています。[デジタルカメラの購入意向ランキング]1位:Canon (所有シェア:2位/満足度:1位)2位:Sony (所有シェア:1位/満足度:2位)3位:Nikon (所有シェア:4位/満足度:3位)4位:Samsung (所有シェア:3位/満足度:8位)5位:Aigo (所有シェア:10位/満足度:7位)6位:Olympus (所有シェア:5位/満足度:5位)7位:Panasonic (所有シェア:6位/満足度:4位)8位:Kodak (所有シェア:7位/満足度:9位)9位:Fujifilm (所有シェア:8位/満足度:10位)10位:Benq (所有シェア:圏外/満足度:圏外)※所有シェア8位Casioそのいっぽうで、携帯電話はほぼ全滅と言う状況です。トップ10にSony Ericssonが入っていますが、Ericsson色が強くて日本ブランドと意識している中国の消費者は少ないのではないでしょうか。[携帯電話の購入意向ランキング]1位:NOKIA (所有シェア:1位/満足度:1位)2位:Samsung (所有シェア:2位/満足度:5位)3位:Sony Ericsson (所有シェア:4位/満足度:4位)4位:Dopod (所有シェア:6位/満足度:3位)5位:Motolora (所有シェア:3位/満足度:6位)6位:Apple (所有シェア:圏外/満足度:2位)7位:LG (所有シェア:7位/満足度:8位)8位:BlackBerry (所有シェア:圏外/満足度:圏外)9位:Lenovo (所有シェア:5位/満足度:7位)10位:Philips(所有シェア:圏外/満足度:4位)文系あたまの私には、デジカメもケータイも技術的には似たような仕組みにしか思えないのに、なぜこのような違いが生じたのでしょうか。モジュラー型製品ではあっても、DVDプレイヤーのようにコモデティ化してコスト競争で中国企業に太刀打ちできなかったようなタイプのものではないですから。デジタルカメラは、USBで繋ごうがSDカードを使おうが撮影という基本機能においてはスタンドアロンなのに対し、携帯電話はネットワークに繋がることこそ基本機能だ、と言う違いが引き起こした悲劇なのでしょうね。端末の良し悪しに関わらず、プラットフォームリーダーになれなかった日本の携帯電話のシステムが、国際競争力を著しく失わせてしまったのでしょう。いっぽうのデジカメは、例えばキレイに写すためのレンズの工夫など日本の職人芸が評価される、感性的要素が携帯電話より強いのかも知れません。総務省(旧郵政省)なのか経済産業省(旧通産省)なのかキノコの通信会社なのか分かりませんが、お陰さまで日本の携帯電話は酷いことになってしまったようです。参考までに、化粧品の所有率シェアも載せておきます。価格帯やメイクアップとかスキンケアとか区別せずに化粧品ブランドとして調査しているので、少しチグハグな感じはしますが、、欧米系ブランドが圧倒的な人気であることが分かります。驚きは、日本のDHCが所有者満足度でNo.1に輝いたことです。資生堂も満足度では第3位に入っています。[化粧品の購入意向ランキング]1位:L'oreal (所有シェア:1位/満足度:10位)2位:Olay=P&Gの中国向けブランド (所有シェア:2位/満足度:9位)3位:Lancome (所有シェア:圏外/満足度:4位)4位:Maybelline (所有シェア:7位/満足度:圏外)5位:Mary Kay=アメリカの直販コスメ (所有シェア:5位/満足度:圏外)6位:Amways (所有シェア:6位/満足度:圏外)7位:Avon (所有シェア:3位/満足度:圏外)8位:DHC (所有シェア:圏外/満足度:1位)9位:Nivea (所有シェア:4位/満足度:圏外)10位:Shiseido (所有シェア:圏外/満足度:3位)※所有シェア8位Mentholatun(満足度:6位)
2009.11.27
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最近日本のマスメディアなどでも、盛んに中国のEコマースが取り上げられています。確かに、中国のインターネット・ユーザーは3億3,800万人(09年6月・CNNIC発表)、Eコマースの市場規模は1,800億RMB(約2.5兆円・iResearch2009年予測値)で、毎年2倍近い成長を遂げています。国土が広大な中国マーケットをカバーするには、オンライン・ストアなどの無店舗販売のシステム構築が効率的でもあります。オンライン・ストアは、多数の実店舗や小売店網を整備する必要が無く、販売スタッフも用意する必要が無いので、一般的には参入障壁が低いと考えられています。もちろん、自社でシステムを用意したり、物流(納品の仕組み)を整備したりするには、それなりの覚悟が必要ですが、楽天市場のようなショッピング・モールなどに出店するのであれば、個人でも零細企業でも簡単に販路を拡大することが可能です。ご存知の通り、中国ではTAOBAO(淘宝網)がEコマースのプラットフォームとして最大かつ最強です。TAOBAOの一日の取引高は、中国最大の百貨店チェーンやいまや中国最大のDSチェーンといえるウォルマートの一日の売上を上回っています。こうした中、数多くの日本企業からTAOBAOに出店したい、とのお話が舞い込んできます。またネット上には「TAOBAO出店代行」をうたったサービスも数多く出現しています。でも、はっきり申しあげましょう。現時点では、中国に現地法人を持たない外国企業はTAOBAOに出店できません。厳密に申しあげれば、"個人"の資格として出店することは不可能ではありません。ただ、会社のビジネスとして出店するのはきわめて難しいと思ったほうが良いでしょう。TAOBAOは元来C2Cのプラットフォームなのです。つまり、個人による出店販売、購入者個人がリスクを持った上での購入が原則でした。つまり、ヤフオクみたいなものです。しかし、粗悪品、まがい物、詐欺などがあとを絶たず、企業による品質保証を受けられるサービスを求める利用者の声に押され、2年前にB2CプラットフォームであるTAOBAOショッピングモール(淘宝商城)をオープンさせたのです。TAOBAOショッピングモールはブランドショップとも呼ばれ、正規販売権を持つ企業しか出店できませんし、見込み客からのお問合せ対応やアフターサービス体制に対して厳しい条件がつきます。その分、利用者は安心して利用できますし、何よりも中国の公給領収書の発行を受けられますので、会社や役所の経費で何でも揃えることの多い中国の人たちにとっては利用し易くなったのです。TAOBAOを覗いていただければ一目瞭然ですが、まさに玉石混交。フェイク(偽物)、並行輸入品から、メーカー保証付きのデジタル製品、本物の高級ブランド品に至るまで、怪しげなものも確かなものも何でも売られているのです。TAOBAOショッピングモールは、正規品とアフターサービスを保証するB2Cのプラットフォームですから、普通のTAOBAO(C2Cプラットフォーム)のお店よりも断然集客力がありますし、売上も上がります。そうでなくとも、日頃からフェイク(偽物)やコピー商品、並行輸入品(非正規ルート販売品)に悩まされている日本企業であるならば、そうした怪しげな商品が並ぶ普通のTAOBAO(C2Cプラットフォーム)に出店するのでは意味が無いので、B2CのTAOBAOショッピングモールへの出店を望むはずです。ところが現時点で、TAOBAOショッピングモールには、中国国内で小売販売ができる資格を持った企業でなければ出店できません。ですから、少なくとも中国に現地法人を持っていなければ日本企業は出店できないのです。更に申しあげれば、中国国内で小売販売ができる資格というのが、外資系企業にとっては獲得しにくい状態になっています(厳密には、無店舗販売ライセンスと言う外資企業では更に取得しにくい資格すら必要と言えます)。もちろん、TAOBAOショッピングモールに出店するのではなく、自力でECサイトを立ち上げることも不可能とは言えません。けれども大きな覚悟が必要です。第一に、中国からアクセスできなくなることを覚悟しなければなりません。日本(中国国外)にホスティング(サーバーを設置)する場合、まず課題になるのは中国からのアクセス速度。ご存知の通り、中国にはゴールデン・シールド(金盾)というインターネット上の情報を検閲・制限するシステムがあるので、国外へのアクセスにボトルネックが存在します。ですから中国国内のサイトの場合、中国の利用者が快適にショッピングができません。更に怖いのは、いつアクセス禁止になっても文句が言えないのです。サイトに中国当局が秘かに定めるNGワードが含まれていたり、中国当局にとってよろしくないサイトがリンク先に含まれていたり、或いは中国当局に目をつけられているネットユーザーが頻繁に訪れたりすると、いつの間にか中国からアクセスできなくなったりします。極端な例ですが、ある日本企業のオンライン・ストア(日本でホスティング)は、トラフィックが急激に伸びた途端、中国からアクセスできなくなってしまったこともありました。第二に、売上代金を受け取れなくなったり、突然中国当局に税金を請求される覚悟をしなければなりません。まず、日本から中国にモノを売る立場の出店者は、日本の銀行口座に代金を送金してもらわなければなりません。中国では居住者か現地法人を設立しなければ、原則として銀行口座が開設できないからです。第三者型電子決済のプラットフォームとして、中国ではAlipay(支付宝)が最も普及しています。中国のお客さまが人民元で支払った代金を、Alipayが日本円か米ドルなどに変換して日本の銀行口座に送金してくれれば良いのですが、そんなに甘くありません。Alipayは日本への送金も可能と宣伝していたこともありましたが、実際のところ毎月10万円くらいまでが限度です。中国の外貨管理は厳しいので、人民元から日本円や米ドルなどの外貨への両替やその外貨を中国国外に送金する際の制約があります。商品の売買がきちんと証明できれば良いのですが、Alipayは決済代行をしているだけで日本の出店者と中国の購入者の取引に関わっているわけではありません。毎月10万円程度の売上しか日本で受け取れないとなると、企業として取り組むのは難しいでしょう。PaypalやVISAなど国際クレジットカードによる決済であれば、日本で代金を受け取れる可能性もより大きくなりますが、これらの決済方法を利用できるのはAlipay利用者の10分の1くらいですから、Alipayを導入しなければ売上も伸びない、というのが現状です。税金の問題は、輸入関税ではありません。日本から小口で直接購入者に商品を送るのであれば、一般的には個人輸入と判断されます。税関審査で輸入関税を求められることがありますが、数百元(日本円なら数千円)くらいの商品であれば、見逃される場合がほとんどです。課税を求められたとしても、中国で受取る側つまり購入者が納税することになります。購入者が納税せずに商品を受取らず、返品になるというリスクはあります。けれども、より大きなリスクは営業税や増値税(付加価値税)などの間接税や企業所得税などを中国側から請求される危険性があるということです。アメリカのAmazonに対して日本の国税当局が噛み付いたのと構造は一緒です。売買と言うビジネスが日本で発生したのか中国で発生したのかという解釈の問題ですが、下手をすると中国からの売上に対して中国での所得と言いがかりをつけられて、後になってから税金を払え、と言われかねません。このように考えていくと、日本からの遠隔操作で中国向けECでビジネスを行うのはリスクが大きく実入りが少ないお話ということになります。つまり、本格的に中国でオンラインでモノを売りたいというのであれば、中国に現地法人をセットアップして現地でのオペレーション体制を整えていくことが肝要だということです。それにはお金も時間も労力もかかりますが、広い中国に実際の販売網を築くことに比べたら、うんと安上がりなのです。中国のマーケットの大きさの魅力は、もはや上海、広東、北京などの都市部には無いのです。沿岸部や都市部にこだわっていては、かつての日本軍と同じ悲劇をうむことになりかねません。広い中国では、拠点を押さえるだけではダメなのです。点と点を結ぶ線でもダメです。面としてカバーしなければ、中国マーケットの魅力は激減してしまいます。"僻地のゲリラ戦"を生き抜くためには、拠点を押さえても勝ち得ません。そうした点において、広大な中国全地域に中間層向けの販売網を構築するのと同義のオンライン・ストアは、なお低リスクで高リターンが見込める戦術ですし、インターネットは極めて有効なマーケティング・ツールなのです。日本から遠隔操作でこそこそ行うようなものではありません。参入障壁は高くても、真剣に取り組むべきだと思うのです。
2009.11.22
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『China Joy』(中国国際数碼互動娯楽展覧会(中国国際デジタル・インタラクティブ・エンタテイメント・エギジビジョン)(主催-中国新聞出版総署、中国科学技術省、中国工業情報化部、国家体育総局、中国国際貿易促進委員会、中国国家版権局、上海市人民政府)に行って来ました。会場の上海新国際展覧中心は、若いゲーマーでごった返ししていました。特に人気オンラインゲーム・オペレーターが集中したW1館は、東京の通勤ラッシュの電車の中のような大混雑。中国のオンラインゲーム人気を実感する光景でした。中国のネットユーザーは3億3,800万人(CNNIC:09年7月発表)。内64.2%がオンラインゲームを利用しているので、単純計算すると中国のオンラインゲーム・ユーザーは、2億1,700万人と言うことになります。ラッシュ時の通勤電車並みに大盛況のChina Joy会場China Joyでは、中国の有料ユーザー数が1,100万人を越える超人気のオンラインゲーム『World of Warcraft(魔獣世界)』の元オペレーター"The 9(第九城市)"と新オペレーター"Netease(網易)"が隣り合った位置にブースを構え話題になりました。『World of Warcraft(魔獣世界)』は、アメリカのBlizzard Entertainment社が開発し、美しい3Dグラフィックながら低スペックのパソコンでも楽しめるため、アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパや韓国、そして中国で巨大な固定ユーザーを抱える超人気オンラインゲームに成長しました。中国市場で『World of Warcraft(魔獣世界)』を大きく育ててきた"The 9(第九城市)"が、Blizzard Entertainment社からこの5月に突然中国でのオペレーション契約の打ち切りを告げられました。ポータルサイトを運営する"Netease(網易)"が、非常識なレヴニューシェア(収入の分配率)を提示して、中国でのオペレーション権を奪い取ったのです。"The 9(第九城市)"の『World of Warcraft(魔獣世界)』は6月で運営が中止されました。"Netease(網易)"はユーザーアカウントの移行作業に手間取っていて、7月末にようやくベータ版での運営を始める見通しとのこと。この1ヵ月半、ユーザーはゲームを楽しむことができない状況にああり、新オペレーター"Netease(網易)"への不満は爆発寸前でした。そうした中、China Joyの会場で"Netease(網易)"は"新生"『World of Warcraft(魔獣世界)』を必死にアピールしていましたが、ユーザーの反応は冷めた感じのものでした。きっと固定ユーザーを大きく減らしての再スタートとならざるを得ないでしょう。いっぽう『World of Warcraft(魔獣世界)』というキラーコンテンツを奪われた、向かい側の"The 9(第九城市)"のブースは、FIFA公認サッカーゲームを中心にプロモーション展開していましたが、『World of Warcraft(魔獣世界)』が抜けた穴を挽回するのは不可能でしょう。因縁のThe 9とNeteaseのブース日本では、ファミコンやプレステなどのコンソール・タイプのゲームが"テレビゲーム"のマーケットを作り、PSP、DS、PS3、Wiiなどに受け継がれて、オンライン対応となっていきました。『ドラゴンクエスト9』は任天堂DSを持っていなければ遊べません。しかも、スクエア・エニックスが販売するソフトウェアの収入の一部が任天堂に入って、ハードウェア事業の損失を補填(利益を上積み)する、と言う典型的な"囲い込み型"のビジネス・モデルでした。プレステ2で『ドラクエ8』を遊んでいた人が、『ドラゴンクエスト9』を遊ぶには、ハード(任天堂DS)とソフトで2万円以上の出費を余儀なくされるのです.....。エンタテインメントの初期費用に2万円も3万円も出せるのは、世界的に見ればごく少数の富裕層でしかありません。いっぽうパソコンとインターネット環境があれば楽しめるオンラインゲームは、初期費用はほぼ無料。パソコンを持たない人たちでも、韓国ならPCバン、中国ではネット・バーと呼ばれる"インターネット・カフェ"で、1時間100~200円程度で楽しめます。ゲームそのもののランニング・コストも、結構遊んで1ヶ月1,000円~2,000円くらいが標準です。新興国ではパソコンやインターネットの普及にあわせて、オンライン・ゲームの市場が発展してきたのです。中国でもPSPやWiiを楽しんでいる人たちがたくさんいますが、この人たちはあくまでも"富裕層"であって、世界的にみれば、オンラインゲームのマーケットのほうが圧倒的に大きいのです。そんな中、China Joyに出展していたゲームの中で、日本製はたった一つ(コーエーの『三国無双オンライン』)。しかも、中国のローカル・オペレーターへのライセンス供与と言うことで、日本ブランド(メーカー)としの出展は一社たりともありませんでした。7年前北京で開催されたChina Joyでは、日本のゲームソフトの会社が何社か出展していました。ファイナルファンタジーなど、日本のゲーム・キャラのコスプレ姿の来場者もたくさん目にしました。ところが、ことしのChina Joyでは日本産ゲーム・キャラは姿を消しました。オペレーター・ブースのステージでのデモンストレーションは、中国産か韓国産のゲームキャラクターのコスプレ。かつてのぎこち無さも消えて、メイン・トレンドとして確立した感すらあります。ゲームと言えば日本というのは、すっかり過去のお話になってしまいました。中国製ゲームの中国製キャラクターの中国人によるコスプレ・ショウコミック、アニメ、ゲームなどのコンテンツが、日本の基幹産業になる、などとおっしゃっている方がいますが、このままでは終わっちゃいますね、少なくともゲームは。コミックやアニメも同様の運命を歩むことになるかも知れません....。例えば、宮崎駿のアニメは中国でもたいへんな人気がありますが、正式に映画館で上映されたことも無ければ、正規版のDVDが流通しているわけでもありません。その理由をシンプルに言ってしまえば、海賊版やまがい物が横行する中国では、版権ビジネスで収益を刈り取るのが困難だ、と思い込んでいるからです。この考えは間違っています。日本ほど厳格に版権を収益化できないかも知れませんが、中国なら中国なりの収益化ビジネスモデルは存在するのです。かつて日本製品の輸出は、欧米など先進国向けに成功しました。そして、各国に一定比率で存在する"富裕層"向けに高品質の製品やサービスを提供することで成功をおさめてきました。中国マーケットに対しても、「富裕層を狙え」みたいな合言葉が日本企業内で浸透しているようです。中国の富裕層は確かに増えています。でも1億人とか2億人でしょう。インドは?中東は?アフリカは?と考えていくと、マーケットとして巨大かつポテンシャルが高く、真に魅力的なのは、新興国の富裕層ではなく、ボストン・コンサルティング・グループが"ネクスト・ビリオン"を呼んでいた、新興国における富裕層と貧困層の中間層向けマーケットなのだと思います。数年後には10億人規模の市場を形成するので"ネクスト・ビリオン"なのですが、このボリューム・ゾーンを狙っていかなければ、経済大国としての日本のプレゼンスは無くなってしまうでしょう。などという考えのままでは、日本のアニメやゲームなど日本のポップカルチャーもいずれは衰退してプレゼンスを失っていくことになるでしょうし、ビジネスとしても風化してしまうでしょう。ご存知の通り、日本のケータイは端末もコンテンツも世界的には苦戦を強いられています。端末メーカーは、通信オペレーターが決めたスペックに基づいて端末を用意し、コンテンツ・プロバイダーもほぼ統一された端末機能に最適化されたコンテンツを用意して、通信オペレーターが"公式サイト"というお墨付きを与える。こうしたビジネスモデルは、総務省(郵政省)や経産省(通産省)の強力な行政指導と、新興国の中間層一人当たりの月収と同じくらいの通信費やコンテンツ代を支出可能な富裕層が居てこそ成り立つわけで、島国ニッポンの特殊モデルに過ぎないのです。そんなビジネスモデルに甘んじてきた日本の端末メーカーもコンテンツ・プロバイダーも、海外では競争力が無いのです。日本型或いは先進国型或いは富裕層向けのビジネスモデルを見直すことこそ、沈み行く日本を立ち直らせるための唯一の処方箋ではないでしょうか。117億円もかけて"国立メディア芸術総合センター"を作ろうとする構想は、過去の遺物・産物を懐かしむ程度のものにしかなりません。日本の主幹産業として、アニメやゲームを育てていくと言うのであれば、ビジネスモデルの構造改革を側面から支援していくことこそ重要なのだと思います。それは貧困アニメーターを救い上げるなどと言う単純な話ではありません。単純労働の人件費など所詮新興国に敵うわけが無いのですから、指導系に切り替えていくとか。繊細なものづくりの部分は日本人固有の価値として尊重し保持しつつも、海外の非富裕層向けのビジネスを早急に整えていかなければ、家電、半導体、IT製品などに続いて、日本の誇るアニメやゲームも衰退化していくようで心配です。おまけ(China Joyのキャンペーン・ガール)
2009.07.27
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中国内地以外の株式市場に上場している中国のネット系企業の「勝ち負け」が明確になってきているような感じを受けています。「勝ち組」は、何と言っても世界最大シェアのインスタントメッセンジャーQQのプロバイダーで中国トップPVのポータルサイトのオペレーターでもあるTENCENT(騰詢)で、時価総額は2兆円を越えています。そして、お馴染み中国での実質シェアが80%を越える検索サイトのBAIDU(百度)。TAOBAO(淘宝)打倒のために立ち上げたC2C型のECモール"Youa"のほうは、なかなか軌道に乗っていない様子ですが、一時低迷した株価は復活の兆しを見せています。更には、ALIBABA(アリババ)。中国のECプラットフォームにおいて圧倒的なシェアをキープするTAOBAO(淘宝)やALIPAY(支付宝)も運営しているのに、意外に低めのバリュエーションではないか、とも思ってしまいます。いっぽう「負け組」の筆頭はFOCUS Media(分衆傅媒)と言い切ってよいでしょう。エレベータホールなどに設置したテレビモニターで広告を放映するディスプレイ・アドが一世を風靡して、中国のネット広告エージェンシーに次々とM&Aを仕掛けて膨張したFOCUS Mediaでしたが、2008年決算では巨額の貸倒損失を計上し、キャッシュフローが危うくなってきました。現業であったディスプレイ・アド事業をSINA(新浪網)に売却する計画を発表したものの、どうもご破算になってしまったようです。株価も一時期の10分の1。いよいよアブナイ企業の筆頭になりつつあります(参考=拙ブログ)。The 9 Limited (第九城市)は、稼ぎ柱であったオンラインゲーム"World of Warcraft(魔獣世界)"の運営権をNETEASE(網易)に奪われてしまいました。CCTV(中国中央電視台)のキャスター出身の美人CEOに代わってからの大失態で、苛酷なリストラの真っ最中です。FOCUS Mediaのディスプレイ・アド事業を買収しようと目論んだSINA(新浪)も「負け組」濃厚と言えそうです。QQ、SOHU、NETEASEといった主要ポータルが、インスタントメッセンジャー、オンラインゲーム、Eメールサービスなどからの収入をバランス良く取り込んでいるのに対し、SINA(新浪)はポータルサイトの広告収入の依存度が高いので、安定性や収益性のうえで課題があるわけです。ちなみに、ALIBABA(アリババ)の創業者・馬雲(Jack Ma)が"代用教師"から身を興した、と言うのは有名な出世話となっていますが、これはどちらかと言うと例外的で、多くの中国のネット系企業のトップは、スタンフォードやMITなどの修士課程で学んできた海外留学からの帰国組です(しかも、ほとんどアメリカ帰り)。日本のネット系企業がNASDAQなど海外市場での株式上場を目指さないのは、またどうしてもドメスティックで囲い込み的なビジネスモデルで留まっているのも、海外留学やビジネス経験の無い創業者やトップが多いからかもしれません(三木谷さんはハーバード出ですけど)。以下、主な中国ネット系企業のトップの経歴と時価総額。「海帰」(海外帰国組)は、中国語の発音が同じなので「ウミガメ」(海亀)です。TENCENT(QQ) - 世界最大シェアのインスタント・メッセンジャーと中国語最大PVのポータルサイト総裁・劉 [火只]平(ウミガメ・40代前半)ミシガン大学で電子工程を学び、スタンフォード大学で修士。HKSE(0700.HK) /時価総額:2兆2,500億円(180.5B HK$)BAIDU(百度) - 中国での検索エンジンシェア80%創業者・総裁兼CEO・李彦宏(ウミガメ・40歳)北京大学情報管理学部卒業、ニューヨーク州立大学バッファロー校にて修士号取得。2000年、BAIDUを設立。2005年、NASDAQ上場。NASDAQ(BIDU)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:1兆900億円(11.47B HK$)ALIBABA(アリババ) - 世界最大のB2Bプラットフォーム"ALIBABA"、中国最大のECプラットフォーム"TAOBAO"、Yahoo!中国創業者・馬雲(44歳)杭州師範学院外国語科卒業後、杭州電子科技大学で英語を教える。1999年、ALIBABAを創業。2006年、香港株式市場上場。HKSE(1688.HK)、フランクフルト、ミュンヘン、他 / 時価総額:1兆120億円(80.93B HK$)KINGSOFT(金山軟件) - ウィルス駆逐や翻訳ソフトの開発販売、オンラインゲーム運営創業者・董事兼CEO・求伯君(44歳)人民解放軍国貿科技大学情報システム科(短期大学卒業資格)。2000年、KINGSOFT董事長。2005年、香港株式市場に上場。HKSE(3888.HK)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:9,000億円(7.22B HK$)NETEASE(網易) - ポータルサイト大手、フリーメールサービス、オンラインゲーム運営共同創業者・CEO・丁磊(37歳)中国電子科技大学卒業。1997年にNETEASEを創立。2000年、CEOを退任しCTOとなる。2002年、NASDAQ上場。2005年、CEOに返り咲く。NASDAQ(NTES) / 時価総額:5,000億円(5.34B HK$)SOHU(捜狐) - ポータルサイト大手、オンラインゲーム運営創業者・CEO・張朝陽(ウミガメ・44歳)清華大学卒業後、MITで博士号を取得。1998年SOHUの前身となる愛特信公司を設立。2000年NASDAQ上場。NASDAQ(SOHU)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:2,300億円(2.45B US$)SINA(新浪) - ポータルサイト大手CEO兼董事総裁・曹国儀(ウミガメ・39歳)復旦大学卒業。オクラホマ大学コミュニケーション学修士、テキサス大学オースティン・ビジネススクールMBA。1999年、SINA財務副総裁。2006年、SINAのCEOに。NASDAQ(SINA) / 時価総額:1,700億円(1.77B US$)Perfect World(完美時空) - オンラインゲーム運営創業者・董事長総裁・池宇峰(37歳)清華大学化学系卒業。P&Gに入社後、1995年起業。2004年、Perfect World(完美時空)を創業。2009年、NASDAQ上場。NASDAQ(PFWD) / 時価総額:1,620億円(1.71B US$)FOCUS Media(分衆傅媒) - オフィスビル・高級マンション内におけるディスプレイ・アド、インターネット広告代理創業者・CEO・江南春(35歳)華東師範大学卒業。大学三年生のときに広告会社を起業する。2003年、FOCUS Mediaを創設。2005年、NASDAQ上場。NASDAQ(FNCN) /時価総額:1,050億円(1.09B US$)The 9 Limited (第九城市) - オンラインゲーム運営総裁・陳暁薇(ウミガメ・女性・多分41歳)ピッツバーグ大学でバイオ化学の博士号を取得。CCTVでキャスター及びプロデューサーを経て、バイオ薬品会社経営陣からネット系への転職。08年5月に総裁就任。NASDAQ(NCTY) /時価総額:230億円(242.96M US$)SHENDA TECH(盛大) - オンラインゲーム運営創業者・董事長兼CEO・陳天橋(35歳)上海の復旦大学卒業。1999年、盛大を創業。2005年、NASDAQ上場。NASDAQ(SDTH)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:220億円(224.4M US$)ちなみに、日本はというと....。ヤフー株式会社(ヤフージャパン)社長・井上雅博東京理科大学理学部卒業、ソフトバンクからヤフージャパンに。東証1部・JASDAQ(4689) / 時価総額:1兆7,500億円楽天株式会社創業者・代表取締役会長兼社長・三木谷浩史一橋大学商学部卒業、ハーバード大学にてMBAを取得。1997年、株式会社楽天を設立。JASDAQ(4755) / 時価総額:8,000億円株式会社ミクシィ創業者・代表取締役・笠原健治東京大学経済学部経営学科卒業。2004年、mixi開設。マザーズ(2121) / 時価総額:1,000億円株式会社サイバーエージェント創業者・代表取締役社長・藤田晋青山学院大学経営学部卒業、インテリジェンスに就職。1998年、サイバーエージェント設立。マザーズ(4751) / 時価総額:600億円こんなんだっけ.....。
2009.07.22
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映画『高興(Gao Xing)』(SINA映画=中国語)は西安のある陝西省出身の作家・賈平凹が自身の同級生の実話をモデルに書いた小説を原作に、テレビCF出身の映画監督・阿甘が映画化したもので、2009年の"お正月映画"として公開されました。陝西省の貧しい農村から"一肌上げよう"と地方都市・西安に出稼ぎに出て来た農民と、大学の入学資金を稼ぐためにいかがわしいサウナでマッサージ嬢をしている女の子の恋愛ストーリーを中心に、地方都市の表舞台で無いところで気強く活きていく農村出身者たちの群像コメディに仕上がっています。(原作では、この二人の恋愛が成就することは無かったようですが。)張藝謀監督の『活きる』や寧浩監督の『Crazy Stone』などで様々な役どころをソツ無く演じてきた郭涛が出稼ぎ農民の劉高興を、著書『水の彼方 ~Double Mono~』が最近日本でも翻訳出版された作家兼シンガーソングライター兼女優の田原がマッサージ嬢・孟夷純を演じています。弟分・五富とともに、憧れの街・西安に出てきた劉高興は、同郷の仲間に勧められて、廃品回収の仕事を始めます。北京の中心ではすっかり見ることも無くなりましたが、自転車でリアカーを引っ張って、空きカンやペットボトルから、壊れた家具やテレビまで、何でも引き取って回るお仕事です。数年前の北京では、500ミリリットルの空きペットボトル10本を0.5RMB(7円)ほどで引き取ってくれました。家電やベッドなど多少"値のはる"廃品が集まったとしても、1日100RMB(1,400円)ほどの利益が出るか出ないかの商売なのだろうと思います。それでも、劉高興は前向きに仕事に打ち込みます。同郷の仲間に借りたオンボロ倉庫の何一つ無い"自宅"の部屋も、次第に家財が増えていき、"お家"らしくなっていきます。余華の小説『兄弟』(兄弟 上 《文革篇》・兄弟 下 《開放経済篇》)の主人公・李光頭は、廃品回収業から身を興してチョー大金持ちになりました。劉高興はチョー大金持ちにはなりませんが、毎日を仲間とともに楽しく過ごし(「高興」は中国語で、"うれしい・楽しい"と言う意味です)、恋愛も成就させるのです。ステレオタイプに「経済格差の拡大」と「それがもたらす社会の歪み」などと叫んでいる評論家の皆さまにも、ぜひご覧になっていただきたい映画だと思いました。蓄えていた進学資金を盗まれて落胆していたマッサージ嬢・孟夷純に、劉高興がお金を援助する場面があります。百元札(1,400円)2~3枚をプレゼントする劉高興に、孟夷純は「あなたが何日もかけて稼いだお金をいただくわけにはいかない」と言います(結局はもらっちゃうのですが)。いっぽうで200~300RMB(3,000~4,000円)というお金は、いかがわしいマッサージ嬢ならば地方都市であっても、一人のお客さんにサービスすれば稼げるお金でもあります。飛行機好きの劉高興は、手作り飛行機で西安上空を飛ぶことによって、「多くの人の上に立つ」という弟分・五富の夢を叶えてやることになるのですが、ひょんなことからその飛行機のボディが広告メディアとして5,000RMB(7万円)で売れました。"広告主"であるIPOを間近に控えた地元の実業家にしてみれば、5,000RMB(7万円)は「一晩マージャンして負けるお金よりも安い」のですが、劉高興は警察に連行されたマッサージ嬢・孟夷純の"将来"を買い戻すことができました。中国には明らかに経済格差が存在します。汗と泥だらけになって一日中廃品回収をしても、せいぜい100~200RMB(2,000~3,000円)の収入にしかならないでしょう。けれども貧農地域で農業をしていたときより、10倍~100倍の現金収入アップです。毎日働けば、北京や上海の大学新卒初任給くらいにはなります。運が良ければ、小説『兄弟』の主人公・李光頭のように億万長者になって宇宙旅行に出かけることもできるのです。「格差の拡大」を統計的に証明している評論家は知りませんが、中国の"空気"として格差が固定化したり、拡大すると言う状況では無いと、私は感じています。テレビも洗濯機も冷蔵庫も無いような農家に、家電製品を普及させたいと「家電下郷」(大和総研による解説)という政策がとられました。農家が指定家電製品を指定販売店から購入すると13%の補助金が出るという制度です。これはGDP8%成長を死守するための景気対策として始められたのでは無く、金融危機が顕在化する前の2007年12月から試験的に始めている政策です。2008年だけで、9,200億RMB(13兆円)の家電製品がこの制度を利用して購入された、とも言われています。最近では、携帯電話やエアコン、バイク、パソコンなど、農村地域ではかなりの贅沢品と思われる製品への対象が拡大しており、結果として中国の"内需拡大"に貢献しています。もちろん、この制度を利用できるほどの現金収入が無く、未だ家電製品を購入することのできない貧困農民も多くいるでしょう。また高年齢や病弱のため、出稼ぎに出たくともできない"弱者"もいるでしょう。ただ私は現代中国の経済階層は、かなり流動性に富んでいると感じています。都市部のスピードには着いていけないかも知れませんが、農村部も総じて言えば豊かになってきています。そして、努力を惜しまなければ、運が良ければ、都市部でそれなりに豊かな暮らしをすることも可能でしょうし、事業を興してお金持ちになることもできます。もちろん、経済的に裕福なことだけが人間の幸せでは無いと思いますが、ある程度の水準の暮らしぶりができてこそ精神的なゆとりも生まれてくるものです。余華の小説『兄弟』の主人公・李光頭が、経済優先のため"弟"をはじめ精神的に大切なものを失ってしまったのに対し、映画『高興』の登場人物たちは、貧困からそこそこの暮らし向きができるようになって、友達や夢を大切にしながら活きようとしているのです。こうした姿は、富裕層にも貧困層にも共感をもって受け容れられたのでしょうし、私自身、中国の「経済格差」は必ずしも中国崩壊の主要因にはなり得ないだろう、と言う想いを強くしました。
2009.07.20
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田原(Tian Yuan)の『水の彼方 ~Double Mono~』は、私にとってはある意味で難解な作品でした。1985年生まれとは言え、16歳でHopscotch(跳房子)と言うバンドでデビューし、2年後には香港映画でメインキャストを演じ、著名な映画賞をも受賞した田原(Tian Yuan)を、「八〇后(中国の80年代生まれの若者)」の典型として語ることは無理があると思いますし、典型的な「八〇后」が田原(Tian Yuan)を支持しているか、というのも疑問です。といえば。『水の彼方 ~Double Mono~ 』の冒頭で語られる高校二年生の放課後の喧騒こそ、典型的なその時代の「八〇后」でしょう。映画『タイタニック』のディカプリオとウィンスレットの真似をして、船先に立ち手を広げセリーヌ・ディオンの『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』を歌うのも、私がイメージする典型的な「八〇后」です。「ニルヴァーナ」や岩井俊二の映画『スワロウテイル』ですら、私の理解している「八〇后」のイメージからみると少し尖っています。私に言わせれば、田原(Tian Yuan)は八〇后のサブカルチャーそのものです。冒頭の引用されている清代の怪奇小説『聊斎志異』の中の短編『水莽草』は田原(Tian Yuan)自身が「日本語版あとがき」で述べているとおり、同世代人にとってポピュラーなものではありません。ビートジェネレーションのユダヤ系アメリカ人作家・アレン・ギンズバーグの作品『リアリティ・サンドウィッチズ』にしても「八〇后」のバイブルとは言えないでしょう。出典を理解してからでは無いと読み進められないかも知れません。作品を更に難解にしている要因は、青春(心境)小説と幻想小説とのボーダレスな交錯と、突然の白昼夢、それに伴う時制や人称の転換にあると思います。もちろんこうした手法により、主人公・陳言の内面をよりデリケートでリッチに表現することができたのだと思います。泉京鹿さんが翻訳に取り組み始めて、2年近い歳月を経て、ようやく日本語版として完成させた苦労が分かる気持ちがします。原題『双生水莽』の一部となっている。主人公・陳言が日記に挟んでいる一本の根から二本の葉が伸びている水草がです。武漢市内を貫く長江(揚子江)の河岸の湿地で摘んだものなのです。田原自身は日本語あとがきで、前述の怪奇小説『聊斎志異』の短編『水莽草』の物語を田原自身の青春時代と結び付けています。小説の中でも、主人公・陳言がの合う仲間にお気に入りの物語として『水莽草』を語って聞かせたています。水莽草を食べて水莽鬼(亡霊)になり、好いてくれたオトコを身代わりにしてでも現実世界に帰るべきか葛藤しているのが陳言なのか、『水の彼方』を書いている田原自身なのか、こうした二重性が『水の彼方』の中で、作者・田原と主人公・陳言との関係をより複雑なものにしています。幸いにも田原本人にこの件について尋ねる機会がありましたが、「この作品は私自身のイメージから飛び出した言葉の物語」だとお答えいただきました。短編『水莽草』の美少女水莽鬼(亡霊)三娘のように、小悪魔的で小悪女的だったのは、 『水の彼方 ~Double Mono~ 』を書いた時の田原自身だったのでしょう。をはじめ、などのファンタジックな比喩的象徴が、『水の彼方』の文学性を強くするとともに、難解にもさせています。こうしたメタファーは、作品に詩的な生臭さ(泉さんは訳者あとがきでと述べています)を醸し出させ、作者のセクシャリティ(女性性)をいっそう強く引き出しています。いっぽうで、主人公・陳言の従兄弟との初恋のエピソードは、まるで綿矢りさの『蹴りたい背中』のように甘酸っぱい思春期小説風でもあり、舞台が北京に移ってから結末までの展開はスピーディかつ残酷で、ゴダールの『気狂いピエロ』を彷彿させてくれたりと、作者・田原或いは主人公・陳言の複数のパーソナリティが一つの小説に封じ込められている感じがします。『水の彼方』は、田原自身のにシンクロしたによって自動記述された、幻想的青春小説と言えるでしょう。1950年代アメリカの若者がサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(『水の彼方』では主人公・陳言自身中学2年生のときに読んでいる)を愛読し、大人の世界を自分自身の価値観で拒み通そうとする主人公の少年に共感したように、また村上龍の『限りなく透明に近いブルー』が1970年代の日本のサブカルチャーから若者の普遍的な虚脱感(村上は中国語版の解説でを書き記したように、『水の彼方 ~Double Mono~』は生活も風景も価値観も目まぐるしく変わる現代の中国を舞台に大人になる一歩手前の少女のモラトリアム体験を幻想的に描いたものだ、と私は勝手に解釈しています。第二次大戦後栄華を尽くした1950年代のアメリカ、GMのシボレー、ライ麦畑。高度経済成長期の日本、学生運動、オイルショック、限りなく透明に近いブルー。そして、21世紀初頭の中国。WTO加盟、富裕層の拡大、GMもTOYOTAも中国頼り。そうした中、次代を先んじて捉えているように行動しているように見えても、実は置いてけぼりにされている、若者のこころの内側。『水の彼方 ~Double Mono~』は、若者のこころの中に突如現われる空隙を満たす液体の如く、世界中の若者に読み継がれていくことでしょう。新世紀エヴァンゲリオンのLC.Lみたいに、血生臭くけれと心地良く。田原が音楽活動を本格的に再開するとのことで、たいへん楽しみにしています。『水の彼方 ~Double Mono~』の主人公・陳言と同様、ニルヴァーナが大好きだったという田原ですが、最近はまさに八〇后世代に人気のミュージシャン羽泉や李宇春を手掛ける音楽プロデューサー張亜東と組んで音作りをしているようです。張亜東作曲による『50 Seconds From Now』は、ヴェルベット・アンダーグラウンドのニコを彷彿させるアンニュイなヴォーカルで、冒頭に述べた八〇后サブカルチャー路線を証明してくれた感じです。田原は、私が大好きなテレビヴィジョンも大好きだそうで、『50 Seconds From Now』の歌詞やヴォーカルは詩人ギタリスト・トム・ヴァーレインの影響も伺われます。この秋にはアルバムが完成するとのことで、こちらのほうも大きな話題になって欲しいと願っています。■関連リンク■田原ブログ(新浪博客)八〇后(中国新人類・八〇后(バーリンホゥ)が日本経済の救世主になる! (洋泉社Biz)=次代高消費層として捉えている点では普遍的な八〇后を確認できると思います水莽草(青空文庫・田中貢太郎訳)アレン・ギンズバーグ(ウィキペディア)スワロウテイル [DVD](goo映画)気狂いピエロ [DVD]ウィキペディア限りなく透明に近いブルー(ウィキペディア)新世紀エヴァンゲリオンのLC.L(ウィキペディア)張亜東(C-POP)『50 Seconds From Now』(百度MP3の検索結果)ニコ(ウィキペディア)テレビヴィジョン(ウィキペディア)トム・ヴァーレイン(ウィキペディア)
2009.07.13
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営業収入において、CCTV(中国中央電視台)に続き、SMG(上海メディアグループ)を凌ぐ、中国第2のメディア・グループに成長した『Focus Media(分衆)』グループ。元々エレベータのポスターボード広告屋だった『Focus Media』が、薄型ディスプレイを取り入れて急成長し、NASDAQへ上場を果たし、中国の大手インターネットエージェンシーを買い捲った快進撃は、以前このブログでもご紹介したことがあったかと思います。その『Focus Media』が中核事業であるオフィスビルなどのディスプレイ広告事業を、中国のトップポータルサイトである『SINA(新浪網』に売却することを発表しました(Hexun Newsなど)。高収入・高消費の若者が集中する高級オフィスビルの"エレベータ待ち時間"に注目し、エレベータ周辺に薄型ディスプレイを取り付けてCFを放映する。『Focus Media』の成長はここから始まりました。NASDAQに上場すると、株式交換を利用して、中国のトップ・インターネットエージェンシー『Allyes(好耶)』を始め、大手ネット広告代理店を買収しまくり、インターネット・トラフィック情報などの調査会社『iResearch』なども傘下にしました。飛ぶ鳥をも落とす勢いだった『Focus Media』がつまづいたのは、携帯電話を利用したダイレクト・メール事業。携帯キャリア『China Mobile(中国移動通信)』のユーザー・個人情報を利用して、ターゲッティングの効いたマーケティング事業を始めたのですが、個人情報の商業流用ということで、世の中のバッシングを浴びてしまったのです(拙ブログに関連記事)。社会問題にまで発展し、中国でも個人情報保護法みたいなものが整備されるきっかけにもなりました。『Focus Media』は11月に携帯電話ダイレクト・メール事業から撤退、多額の損出を出してしまったのです。そもそも『Focus Media』は、株式交換を利用してM&Aを繰り返してきました。『Allyes』の買収価格は3億ドル(約300億円)と言われていますが、そのすべてを『Focus Media』が新たに発行する株券によって支払っているのです。世界的な金融危機で株価が下がれば、たまったものではありません。一時は100ドル近くあった『Focus Media』の株価は、6ドル以下まで下落しました。しかも、積極的に買収した会社群の財務状況が芳しくなく、ネット広告代理店では巨額の滞留売掛金が発覚。買収に要したのれん代の償却すら、ままならない状況に陥ったのです。しかも、事業清算となるとキャッシュに直接影響してしまうわけで、携帯電話ダイレクト・メール事業撤退と株価の低迷により、『Focus Media』は一気に資金難に陥ってしまったのです。12月に入り、業界筋では、『Focus Media』が『Allyes』を中核としたインターネット広告事業をGoogleに売却する、との噂がささやかれていました(Marbridge Dailyなど)。事実、『Focus Media』はGoogle傘下のDouble ClickやMSN(Microsoft)と売却話を進めていたようです。ところが『Focus Media』は自分が株式交換で『Allyes』を買収した際の3億ドル(約300億円)と言う条件を曲げずに、「このご時勢、自分の立場も弁えず何考えてるんだ」と一蹴されてしまったようです。同時進行で、ディスプレイ広告事業を『SINA(新浪網』に売却する交渉をしていたことになりますが、『SINA』も新株4,700万と株式交換ということになったようです。時価だと12億ドル(約1,200億円)ということになりますから、ディールクローズ予定の09年6月まで『SINA』の株価が現状維持してくれれば、『Focus Media』としては儲けモノになるかもしれません。中核のディスプレイ広告事業を売却後の『Focus Meida』には、インターネット広告事業くらいしか残りません。しかも、巨額な滞留売掛金とのれん代は残ったままです。08年の決算は監査法人が意見を保留する危険性も大きく、NASDAQ上場廃止の可能性すらあります。当然のことながら、『Focus Media』のファウンダー江南春はインターネット広告事業の売却先を探すのに躍起です。近い将来、『Focus Media』は事業会社を持たないペーパーカンパニーに成り下がってしまうことでしょう。それでも、江南春を始めとする『Focus Media』の設立メンバーたちは、『Focus Media』自体の上場益や『SINA』の株式など、巨額の財産を手に入れたことになります。そして、経済犯として司直の手を逃れるために、近い将来カナダあたりに逃亡してしまうのでしょう....。さて、買収したほうの『SINA』のほうはと言うと、買収後の営業収入は8億ドル(約800億円)を越え、CCTVの100億RMB(約1,400億円)には及ばないものの、SMG(上海メディアグループ)を凌ぐ、中国第2のメディア・グループとして君臨することになります。蛇足ながら、誰が見てもインサイダー取引と言える動きを『Focus Media』の株価がしていたことを指摘しておきましょう。『SINA』による『Focus Media』中核事業の買収が発表されたのは、22日のNASDAQ市場が開く前のことでした。ところが発表前の18日から『Focus Media』の株価が急激に上がり始めています。17日終値が8.37ドルに対し、19日終値10.98ドル(Yahoo! Finance)。片や『SINA』は19日終値29.23ドルまで変な動きはしておらず、買収発表後の22日始値が26.36ドルと、一気に下落しました(Yahoo! Finance)。『Focus Media』関係者のモラル、ってこんなものでしょう。
2008.12.24
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お友だちの坂之上洋子さんのブログに「品がなくて朝日新聞の連載却下されたブランド論」というエントリーがあって、楽しく読ませていただきました。坂之上さんのボツ原稿は、しっかり単行本に収められているようです。実は私も、日本の某金融機関のPR誌向けにコラムの執筆を依頼されたことがあったのですが、「品が無い」というよりは、コンプライアンス重視の日本の金融機関ではとても出せない内容だったのか、ボツになってしまいました。ほとぼりも冷めた頃ですし、せっかくなので初稿のままブログのほうで公開させていただきます。出資先の中国企業の会議室に入ると、普段なら整然としている空スペースに、使い古されたサーバーが山積にされた異常な光景に遭遇しました。その会社のCEOは「ちょうど今日、運び出してきたんだ」と上機嫌に説明します。その日は、その会社の売掛金の評価について話し合うことになっていたのです。私たちが出資しているインターネット広告エージェンシーは、前年比数倍と言う驚異的な売上の伸びを遂げていましたが、それと比例して売掛金の残高も増えていました。しかも支払期限を半年以上も過ぎた売掛金が全体の1割ほどを占めるようになっていたのです。ここまで放っておいたのも、以前北京で総経理を務めていた広告会社の売掛金の回収も遅延気味でしたが、期の節目ごとに”気合いを入れて”対策に臨めば何とか回収できたと言う”成功体験”があったからでした。とは言え、顧客の多くが日系企業だった前職の時とは異なり、そのインターネット広告会社のクライアントは大半が中国企業で、しかも例えばオンライン・ゲームなど、インターネット上でのサービスを提供している新興企業が多いのも不安材料でしたから、支払期限を過ぎた売掛金について一つ一つ回収状況を確認する作業を始めたところだったのです。会議室に山積にされたサーバーは、売掛金の”形”として顧客であったオンライン・ゲーム会社から強制執行で運び出してきたものでした。多くの日本企業の皆さんが、中国での売掛金の回収を心配されているのではないでしょうか。中国では、日本のように請求書を発行すれば自動的に期日めでに送金されるようなことは滅多にありません。中国企業の会計責任者は支払を遅らせれば遅らせるほど評価されるのです。ですから支払期限が過ぎても入金されない場合には、仕入れの責任者に支払を督促しても埒が空かず、会計責任者に支払をお願いしなければならないようなケースに遭遇します。とは言え、私の経験上、支払期限が過ぎた売掛金であっても回収不能になることは滅多にありません。取引先が倒産した場合や、契約書に不備があった場合は別として、それなりの努力が必要な場合もありますが、何とか回収できるものです。コンシュマー商品を製造・販売する日本企業の多くは、中国における売上代金回収リスクを過剰に警戒して、ホールセラーやリテーラーに対し現金取引を前提としてきました。これは堅実な方法ではありましたが、商品の販売チャネルを絞り込む結果となり、外資系量販店や資金力のあるリテーラーの店頭にしか日本製品が並ばない、と言う状況を生み出すことにも繋がりました。いくら商品力に自信があっても、コンシュマーが手軽に手に入れられる環境を整えなければ販売は伸びません。せっかくテレビを使って広告活動を行っても、身近な店先で商品が見つからなければコンシュマーは買うことができないのです。メディアを使った宣伝よりも、店先に商品が並んで、それを購入するコンシュマーがいて、購入者がその商品を評価して、或いは友人・知人に口コミで評判を伝播することによって、ブランド力や商品力は高まるものです。ですから私はかつてのクライアントに、何百万元ものお金をテレビ広告に費やするくらいなら、そのお金を売上代金が回収できなかったときの損金に充ててでも、販売チャネルとの取引条件を緩和してより多くの店先に商品を並べるべきだ、とお勧めしてきました。そうは言っても、売掛金の焦げ付きは販売責任者にとって不名誉なことですから、多くのクライアントはリスクが顕在化しない広告宣伝のほうを選んだものです。結果として、日本企業の商品の多くは都市部のコンビニやスーパーやデパートでしかお目にかかることができず、中国のマーケットを”面”として攻略することができずにいます。もちろん富裕者層が多く生活する都市部に、リソースを集中投下する方向が間違いとは言えないでしょう。農村部の貧困地帯で代用教員を務めることになった少女とその教え子のこどもたちを描いた張藝謀監督の映画『あの子を探して』に、チョーク一本ですら貴重な貧しい農村のよろずやで先生と子どもたちが一本のコカ・コーラを買い、みんなで回し飲みするシーンがあります。貧しい村で暮らす子どもたちにとっては高価で容易には買うことができない”憧れ”の飲み物も、実は中国のどこに行っても売っているのです。欧米のコンシュマー商品の多くは、都市型マーケティングから脱却して広大な中国を”面”として捉えた戦略を取っています。もちろん、ホールセラーやリテーラーに現金前払いを強いたのでは販売チャネルは広がりませんから、市場導入時には取引条件を緩やかにして、売掛金の焦げ付き覚悟でも配荷率を高めていきます。そして、商品がマーケットに浸透した途端に取引条件を厳しくするのです。コンシュマーが買いたがる商品に成長すれば、販売店は前払いで仕入れてでもその商品を店先に並べておく必要に迫られるはずだからです。このように、販売当初は回収リスク覚悟で拡販に努め、売上が大きくなってから回収リスクを小さくしていく、と言う方法で成功している商品は少なくありません。さて話を戻しますと、私たちが出資したインターネット広告エージェンシーの”不良債権”の8割は、支払期限を最長で1年以上もオーバーしたものの、なんとか回収することができました。残りの2割クライアントが倒産したり、夜逃げしたりしたため回収が危ぶまれたのですが、その一部は冒頭のサーバーで現物回収して公的競売によって債権とほぼ等価の現金にすることができました。この会社の法務部には弁護士資格を有する社員がいて、契約書類がしっかりしていました。法廷に持ち込まざるを得なかった事案についても、自社弁護士を増やして迅速できめ細かな対応が取れたため、訴訟が長引くことは無かったのです。相手先の倒産のため回収不能と諦めていた債権に関して、CEOはトンでもない”裏技”を行使しました。クライアント(広告主企業)から回収不能に陥ったことを盾に、仕入先であるメディアと交渉し、その分の代金を帳消しにしてもらったのです。つまりデフォルトとなった売掛金と相応分の買掛金をデフォルトにしたわけです。こうした対応は、商品であるメディアの直接原価がゼロに等しい広告業界だからできる技でしょう。無形の商品を販売する以上、売掛金が回収できなくなったからと言って在庫商品を引き上げてくるわけには行きませんから、業界全体の暗黙の了解のもと、広告主から回収できなくなった代金はメディア側が面倒をみてくれるという”セーフティ・ネット”が形成されているのです。インターネットに限らず、テレビ局や新聞・雑誌社などのメディアであっても、日頃お世話になっているエージェンシーに対してはこうした措置を取ることもあるようです。期限を過ぎた売掛金問題が一段落したとき、買掛金が心配になりました。案の定、支払期限を過ぎた買掛金がたくさん存在することが発覚….。会計責任者に尋ねると「取引先のメディアから、まだ督促を受けていないから大丈夫。」とのこと。中国では、まだキャッシュフローが流暢な状態とは言えません。若い経営者の中には、キャッシュフローの重要性を理解した上で、期限どおりの入金と支払の管理を重視する人たちが増えてきましたが、売掛金と買掛金の管理を軽視する企業がまだたくさんあることも事実です。現金取引を原則としたり与信管理を厳しくしたりしてリスクを減らす方法もありますが、ダイナミックに展開するためには信用取引が必要になることもあるでしょう。その場合、机上のキャッシュプランどおりには運ばないことを念頭に入れた、余裕を持った資金計画も大事になるでしょう。最後のほうは、依頼もとの金融機関にも気を使ったつもりだったのですけど....。
2008.09.15
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最近、日本のインターネット広告会社などが、中国語サイト向けのSEO(検索サイト最適化)サービスを売り込んだりしています。うん、確かに日本やアメリカではSEOが花盛りですね。GoogleやYahoo!の検索結果のできるだけ上位のクリックされ易い位置にウェブサイトのリンクを表示することができるか、これは見込み客をウェブサイトに呼び込むためには、たいへん重要な施策と言えるでしょう。中国関連のキーワードでググったときに、偶然にも自分のブログが検索結果の上位に表示されたりすると、何となく嬉しくなったりもします。いまは日本の大企業だけではなく、温泉旅館やブランドショップまでが、中国の人たち向けの中国語サイトを用意しているくらいですから、そうしたウェブサイトに見込み客を呼び込むための施策は注目に値するでしょう。ところが私は中国語サイト向けにSEOにあまりお金をかけることはお勧めしていません。答えは至ってシンプルで、SEOよりもリスティング広告(キーワード)を購入したほうが一般的に安く済むし確実だからです。まず、様々なデータにより若干の差異はありますが、中国のネットユーザーの6割から7割はネット検索に『百度(Baidu)』を利用しています。Googleを利用しているのは15%~20%程度。Yahoo!は10%くらいです。ですから、対象ウェブサイトに見込み客を呼び込むためには、まず『百度(Baidu)』の検索結果で"目立つ"ようにするのが重要になります。さて、その『百度(Baidu)』の検索結果画面をご覧になってみてください(リンクは「美白」と言うキーワードの検索結果です)。幅の広い左側の検索結果に、どうしても目が行き易くなると思います。Googleでは、オーガニックな(人為操作を加えていない)検索結果が左側に並びますから、『百度(Baidu)』でもそうかと思ってしまいそうですが、検索結果の上位はリスティング広告である場合が大半です。リスティング広告による表示なのか、オーガニックな検索結果なのかは、リンクURLの後にさりげなく表記されてはいます。「推広」と書いてあれば前者であり、「百度快照」と書いてあれば後者です。人気キーワードの場合、検索結果の1ページ目がすべてリスティング広告による表示であったりしてしまいます。幅の狭い右側の部分は、Googleで言うところの「スポンサーリンク」で、こちらもリスティング広告の表示です。一般にインターネット・ユーザーは、検索結果画面の左側のT&D(説明文)を読みながら、上から順に、自分が求めている情報がありそうなサイトを探して、クリックして行くわけです。SEO(検索サイト最適化)は、一般にオーガニックな(人為操作を加えていない)検索結果への対策です。ところが『百度(Baidu)』の場合、上述の通りオーガニックな検索結果より、リスティング広告の表示のほうが、上位になります。逆の言い方をするなら、左側の表示結果を上位にしたければ、リスティング広告を利用すれば良いのです。コストはどうでしょう?『百度(Baidu)』の左側検索結果のリスティング広告の料金は、Googleの「スポンサーリンク」とほぼ同様の仕組みで、1クリックあたりの金額(CPC)を広告主によるオークションによって決定されます。最低入札金額は0.3RMB(約5円)。大多数のキーワードは1RMB(約15円)以内で購入することが可能です。しかも、その多くは1RMB以内で検索結果ページの最上位に表示させることもできるのです。仮に、SEOのために3万RMB(約45万円)のお金を費やするのであれば、その3万RMBを『百度(Baidu)』のリスティング広告に費やしたほうが、確実に3万人のユーザーを目標のウェブサイトに呼び込むことができると言うわけです。ですから、中国語のウェブサイトに見込み客を呼び込みたいと言う企業の皆さまに、私はまず『百度(Baidu)』でのリスティング広告をお勧めします。もちろん、ウェブサイトを制作するにあたっては基本的なSEO施策は行うべきですが、日本と同じようにYahoo!やGoogle向けのSEO対策を多額のお金をかけてまで行うのは、費用対効果から考えても甚だ疑問だと言うことです。ちなみに、韓国語のウェブサイトについても同様なことがいえます。韓国のネットユーザーの約70%は、『NAVER』と言うポータルサイトを利用して検索しています。この『NAVER』の検索結果も上位表示部分は"Paid Search"と呼ばれ、Overtureの韓国法人が独占的に販売しているリスティング広告の一種なのです。日本企業向けに、中国語や韓国語のウェブサイトのSEOを売り込んでいるウェブ制作会社やネット広告会社がありますが、費用対効果を考えるのであれば、まずリスティング広告を始めてみるのが良いのではないでしょうか。
2008.08.23
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「来月からガソリンが値上がりします!!今すぐ、満タンにしておきましょう。」そんなケータイ・メール(ショートメール)が北京の自家用車所有者に送りつけられてきたそうです。日本では暫定税率の一時撤廃を見込んで、早くも4月1日からガソリンの値下げに踏み切ったガソリン・スタンドに車列ができたそうですが、中国・北京でも翌月からの値上げに対抗しようと、ガソリン・スタンドに車列ができたそうです。実はこのケータイ・メールが一種の"囮広告"であったことが判明しました。ガソリンに含まれる鉛など成分の規制が厳格になるため、在庫を早々に売り切ってしまおうと考えた石油会社の策略だったのです。中国でもケータイのダイレクト・メールにはイカガワしいものが多いので、中国の人たちは安易に信じたりしません。ところが、このメールは多くの人が信じてしまいました。なぜなら、発信元が100番から始まるケータイ・キャリア(=通信会社。日本ならDocomoやauやSoftbank)だったことと、メッセージの最後に大手石油会社の社名まで入っていたからです。この"囮広告"は2つの点から"効果的な"マーケティング手法だったといえます。まず、北京に住む自家用車所有者に絞り込んでダイレクト・メールを送ったということ。つまり、ガソリンが必要な消費者だけに照準を合わせた高度なターゲット・マーケティングだったと言えます。次に、ケータイ・キャリアがそのダイレクト・メールの発信元だったということ。スパム・メールが氾濫する中、疑わしい発信元からのメールであれば、フィルタリングに引っかかって受信すら拒否できるとか、仮に受信しても開かない(読まない)でゴミ箱行きとかできちゃうわけですが、さすがに100番(ケータイ・キャリア)が発信元だと何か重要な通知かと思って、多くの受信者が開いてしまうことになります。つまり"開封率"が極めて高いダイレクト・メールだったわけです。見込み客をできる限り絞り込んで、見られる可能性の高いメッセージを届けることこそ、究極のマーケティング・コミュニケーションと言えます。なぜこんなことができるか、結論から申しあげれば、ケータイ・キャリアが莫大な個人情報を集めていて、それを一部のケータイ・ダイレクト・メールの広告会社が利用できているからなのです。さすが情報管理と統制と個人の行動に目を光らせている中国だけあって、ケータイ・キャリアは契約者の氏名や住所のみならず、多くの情報を収集し管理しているようです。自家用車所有者ならば、例えばベンツを購入した、というような情報まで握っているようです。もちろん、性別や収入、学歴、趣味や嗜好性などの情報まで管理しちゃっている様子です。きっと通話を盗聴したり、メールやケータイ・サイトへの訪問利益を分析しているのでしょうね....。もちろん、ケータイ・キャリアを後から操っているのは中国の政府当局であることは言うまでもありませんけど。3月15日(かつては3月8日だったのですが...)は中国の「消費者の日(消費者権益日)」です。消費者保護の観点から、メディアが様々な特集を組みますから、日頃後ろめたいことをしている企業は恐々諤々としてこの日を迎えるわけです。いわゆる"偽装食品"や"品質不備"はこの日に叩かれるべき事象なのですが、日中関係がよろしくないときには、日本ブランドが批判の矢面に立たされたりしていました。ことしの「消費者の日」の"告発"番組の目玉は、CCTV(2チャンネル)が放送した"個人情報"に関する特集でした。エレベータ・ホールのディスプレイ広告から成長し、いまや中国トップのオンライン・エージェンシーをはじめ多数のメディア企業を傘下におさめるNASDAQ上場企業"FOCUS Media(分衆伝媒)"の子会社であるFOCUS Mobile(分衆無線)と言う広告会社が、中国のモバイルユーザー5億人のほぼ半数に関する様々な個人情報を利用してケータイ・ダイレクト・メールのビジネスをしている、と暴露したのです。その個人情報たるや、保険や金融商品の購入履歴、銀行の預金残高、住居のレベル(持ち家なら高級マンションなのかどうか)などまで含まれていたのです。FOCUS Mobile(分衆無線)はこうした個人情報を"売り"にして広告主を集めており、幹部社員が広告主に売り込んでいる様子を、生々しく隠し撮りされてしまい、CCTVで曝されてしまったわけです。このスキャンダルは、「短信門事件」("短信"はショートメールのこと。中国では"活力門事件"を呼ばれたライブドア事件に引っ掛けた感じです)として他のメディアやネットを通じて中国じゅうに広がりましたが、さすが中国のお国柄、そうした個人情報がどのように収集され管理されているのか、についてはほとんどスルー。そうした個人情報をビジネスに利用したFOCUS Mobile(分衆無線)と、片棒を担いだとみられたケータイ・キャリアに非難が集中したのです。特にメディアと広告ビジネスで"一人勝ち"状態のFOCUS Mediaは批判の矢面に立たされ、グループ・トップの江南春が謝罪声明を出すまでに至ったのです。今後はユーザーの事前承認を得たPermission Mailのみのビジネスにすると明言しましたが、果たしていかがなものでしょうか....。ちなみに、ネットのBBSなどに書き込まれたFOCUS Mediaに対する非難コメントは、キレイに削除されたり、或いは擁護のコメントによって薄められたりしたことは、言うまでもありません。元来、中国では個人情報に対する意識が極めて低く、同僚の給料から家の間取りまであっという間に筒抜けになるのが当たり前、と言う雰囲気でした。そのくらい口が軽い、というか情報管理の意識が浸透していなかったのです。まして当局が様々な手段で個人情報を収集している、と言う暗黙の了解と諦めがあるので、秘密の情報が公然と曝されなければ良し、と考えている人も多いようです。とは言え、最近ではこうした(たぶん当局が"治安維持"のために収集している)個人情報がビジネスに流用されるようになると、中国人民の不満も抑えきれなくなっていくでしょう。そこで、ようやく中国でもオンライン(ネット上)での個人情報などを保護するための「オンライン商業データ保護規定」を6月施行に向けて、準備しているようです。それにしても、"商業"って入っているところが中国っぽいですね。
2008.04.03
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中国のヤフオクとも言えるC2Cサイト、つまり個人ユーザー同士の売り買いサイトに「淘宝網(Taobao.com)」があります。淘宝網は先日、Yahoo!中国などとともに香港市場に上場した中国発の世界的B2Bサイト・Alibaba.com(アリババ)の傘下にあります。そのせいもあってか、厳密に個人同士の取引ばかりを集めているのではなく、メーカーや販売店が出店したりもしているので、「楽天市場」のほうに近いのかもしれません。5,000万人のアクティブな登録ユーザー、取引成約金額が1日平均1.8億RMB(約27億円)と、中国ではもっとも影響力のあるECサイトだと言えます。とある日本企業から相談を受けました。並行輸入或いは個人輸入された自社製品が「淘宝網」に出品されていて正規販売ルートに悪影響をもたらしているので、何とか対応してもらえないか、とのことでした。その日本企業は、最近中国に拠点を設け、日本で製造した製品を輸入する方法で中国でも販売を始めたところでした。広大な中国ですから販路を広げていくのは時間がかかります。まずは上海、北京など需要が見込める大都市中心に正規代理店(卸問屋)を決めて、販売し始めたようです。ところが、正規ルート経由の販売量が思いのほか伸びません。当初その日本企業は原因を製品が並んでいる小売店が少ないことと、広告やプロモーションが行き届いていないためだと考えたそうです。ところが、いろいろ調べてみると「淘宝網」に並行輸入品や個人輸入品が大量に出品されていて、なんと正規ルート経由より売れていることが判明したのです。その日本企業は、非正規製品が「淘宝網」で売られているから、正規ルートで売れないのだと考えたのです。なんとか、「淘宝網」での販売を止めさせられないか....。そのように考えたのです。その製品はかさ張らないので、日本に旅行などで出かけた人たちが日本で大量に買ってきて「淘宝網」に出品するケースもたくさんありましたが、"闇"の輸入業者が日本から大量に"密輸"して「淘宝網」で売りさばいている様子も伺えました。いずれにしても、「淘宝網」で販売されている製品のほとんどが"ニセモノ"ではなく、日本で製造され日本で販売されている正規の製品のようでした。ただ価格は、というと、「淘宝網」の価格のほうが正規ルートで販売されている製品より2割ほど安いのです。日本からの輸入製品ですから、正規ルートだと関税がかかりますし、流通・物流コストも多めに乗っかってきますから、高くなっちゃうのですね....。「淘宝網」でその製品を購入した方に、なぜ正規ルートの製品を買わないのか聞いてみました。まず多かったのは、「日本製だから安心感がある」と言う答えでした。日本向けの製品ですからパッケージは当然、日本語で表示されています。でも、中国向け輸出品は、中国市場向けに簡体字で表示されデザインされています。「日本製造」と表示されていても、きっと中国で製造しているのだろう、という意見でした。あとは当然のことながら価格です。でも実は最も顕著だったのは、購入者の多くが正規販売網が行き届いていない上海や北京以外の地方の人たちだったのです。つまり、近くで売っていないからネットで買った、と言うことです。ここで不思議に思うのは、なぜ中国で広告もプロモーションもほとんど行っていない製品がネットで大量に売れているのか、と言うことです。調べてみると、この「淘宝網」の口コミ効果で売れ出したのです。つまり、正規ルートで販売される前に、個人輸入で出品された製品を購入した人が、その製品の良さをコメントして、どんどん広がって、個人出品が増えて、売れ行きがいいのを知った"闇"の輸入業者も"密輸品"の出品を始めた、と言うストーリーだったのです。そして、この製品はほとんどプロモーションをしていないにもかかわらず、大量に広告やプロモーションをしている他のブランドに並んで、そのカテゴリーにおける「淘宝網」の売上ランキングのトップ10に入るブランドになっていたのです。さて「淘宝網」から、こうした不正規ルートの製品を追い出すことができるでしょうか?中国では「水貨(シュイホウ)」と呼ばれる"密輸品"に関しては、労力を惜しまず中国当局に働きかければ、もしかしたら追放することはできるかもしれません。脱税と言う違法行為を犯しているわけですから。でも、個人輸入の製品は無理でしょう。日本のヤフオクや楽天市場ですら、並行輸入や個人輸入のブランド品などがどんどん出品されているのですから、いずれにしても「淘宝網」への出品を断ち切ることは不可能に近いはずです。私はむしろ「淘宝網」と組むべきだと思っています。正規ルートの製品を「淘宝網」で堂々と販売する。日本と違って、卸問屋など正規流通網に気兼ねなどする必要は無いのです。そもそも正規の販売ルートから製品が横流しされて「淘宝網」などで売られているようなお国柄なのですから。それでも残る"価格格差"の問題は、流通コストが浮いた分で"特典"を付けるなどして対応すれば良いと思いますし、正規ルート版の「信頼性」や「安全性」などを「淘宝網」を使って積極的にアピールしていけば良いでしょう。中国語のパッケージが気に食わないみたいな意見が多いようなら、日本で販売されているパッケージをベースにデザインし直せば良いと思います。既にネット上で口コミの評判が形成されているわけですから、それに乗った販売戦略で臨めばきっとうまく行くと思います。そして何よりも、中国全土に、少なくとも地方都市までにでも販路を拡大させていくのは、時間もかかりますし管理にも手間がかかります。「淘宝網」のようなネットを使えば、簡単に"全国区"に進出できるのです。何度か他のブログでも取り上げましたが、日本のコンテンツホルダーは"海賊版"対策ができていない中国で"正規版"のDVDやCDを販売しても商売にならない、と思って二の足を踏みました。でも実際のところ、"海賊版"は安価なプロモーションの役割を果たしています。"海賊版"の「ドラえもん」のDVDが5RMB(約75円)で売っているのに、その10倍も値段のする最新作の映画にはたくさんのお客さんが入るのです。"海賊版"で被っただろう損出と知名度ゼロから始めるプロモーションの費用とどちらが大きいかと想像すれば、後者のほうが高くつくのは目に見えています。"海賊版"や"非正規ルート製品"が売れているということこそ、口コミ効果が利いていることであって、"正規製品"にも大きなチャンスがある、と捉えるくらいで無いと、この国で商売するのは難しいと思うのです。自然発生的な口コミ、販路を一気に拡大できるインターネット、どちらをとってもこの製品は売れると確信しました。後ろ向きに法廷闘争などして、時間とお金を浪費するよりは、この際割り切って流れに乗ったほうが、儲けられると思うのですけどね.....。
2008.01.25
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むかし自分がこのブログでどんなことを書いていたのか、振り返っていました。2005年6月8日のエントリーは" [速報]上海株底値脱出!いよいよ上がり始める!?"でした。その翌日の産経新聞は「上海株下落止まらず 国有株放出、不安誘う 『国際市場』へ険しい道」と言う記事を掲載していたようです(当時の記事が阿修羅というサイトに引用されていました)。中国の代表的な株式指数の上海総合株式指数が六日午前、一時的に一〇〇〇の大台を下回った。一〇〇〇を割り込んだのは一九九七年二月以来だ。相次ぐ企業不祥事による市場不信感に加え、先月から始まった国有の「非流通株」の放出などによる需給関係の悪化懸念や不動産価格抑制政策、繊維貿易問題など不安材料が重なったためだが、歯止めのない長期低落傾向に、国際マーケットとしての地位を得るには、多くの時間がかかりそうとの見方も広がっている。[中略]日本の市場関係者は、中国の株式市場も徐々に対外開放に向かうとの認識では一致している。ただ、「開放政策が一気に進まず、行ったり来たりを繰り返している」(村上氏)現状では、中国株式市場が国際的マーケットに育つ道のりは、まだ遠いともみている。(スミマセン、福島さん....)共同通信も「上海株、一時1000割れ 8年4カ月ぶり安値」と言うニュースを配信していました(同じく阿修羅の引用による)。中国の株式市場では、非流通の国有株を市場に放出する改革が先月9日から始まり、投資家の間に需給悪化懸念が広がっている。[中略]総合指数は2001年6月13日に終値で2242.42と史上最高値をつけた後は下降基調で、約4年にわたり低迷が続いている。ご承知の通り、上海株価指数は2005年6月6日、一時1,000ポイントを割る998.23に下落しました。しかし、その後徐々に上昇に転じ、昨年10月には6,000ポイントを越えました。その後やや下げましたが、それでも05年6月当時の5.5倍の水準です(ちなみにこの間、日経平均は1.3倍くらいになっています)。10年スパンでみると、この05年6月6日がまさに"底値"をつけたその日だったのです。にもかかわらず、上述の通り日本での報道は、中国株式の先行きをより暗くみるものがほとんどだったようです。1,000ポイントを切った上海株価指数を底値とみるアナリストは、少なくとも日本ではほぼ皆無だったのではないでしょうか。当時のニュース検索ができないのですが、この時期、中国でも明るい見通しを伝えたメディアやアナリストはほとんど無かったように記憶しています。上のチャートで一目瞭然です。結果として、ドンぴしゃりと言い当ててしまったことを別に自慢しようと思って取り上げたわけではありません。むしろ、分かりきったこととは言え、ちょっとぞっとしてしまいました。この時のエントリーでは、一切触れなかったのですが、この情報は中国の知人から耳打ちされたものだったのです。当時の彼は株などやっていませんでした。私がお遊び程度に中国株をやっていて、株価が低迷していることを、彼に嘆いたりしたことはありました。その彼が、私のところにやってきて、「明日から上がるから心配するなよ」と伝えてくれたのです。必ず上がるから、と翌日から彼もぎこちなくネットトレードを開始したのでした.....。彼には、金融政策関係の朋友(おともだち)がいたのです。このことが何を意味するか、もうお分かりですよね....。中国の株価なんて、ほぼ当局の思うがままになる、と言うことです。不思議かもしれませんが、中国では当たり前のことなんです。上海に上場している中国企業の大半の株式は国家が持っています。つまり、株価が上がれば国家が儲かる仕組みになっています。市場で流通しているのはほんの一握りですから、資金の流れを作れれば、株価は操作しやすいですね。でも、こうした情報で大儲けした朋友(おともだち)もたくさん居たことでしょう。私のほうは.....儲けていたら、こんなこと書きやしません!!
2008.01.09
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1月1日から中国の"新労働法"が施行されました。これまでも「中華人民共和国労働法」はありましたが、その中の労働契約規定を改定させて独立した法律にしたものが、「中華人民共和国労働契約法」で、一般には"新労働法"と呼ばれています。主な改正ポイントを大雑把に挙げますと:(1)労働者と契約を結ばないで働かせると、2倍の賃金を支払わなければならない(2)いつまでも試用社員のままにしておいてはいけない(試用期間は1ヶ月以内)(3)就業規則は、労働者や労働組合と一緒に決めていかなければならない(4)労働契約期間中の解雇する場合は、必ず労働者に補償金を支払わなければならない(5)労働契約を2回更新すると(通常は3年以上働いていれば)、終身雇用扱いになれる(1)~(4)は、日系企業をはじめとする外資系企業の多くが、「そんなこと言われなくても既にやっているよ」という感じの内容です。労働者とは労働契約を結ぶでしょうし、1年契約の社員となら試用期間は1ヶ月と定めるでしょう。就業規則を、労働組合と詰めるかどうか別として、政府系の労務コンサルタントなどとは相談しているでしょう。会社都合で解雇する場合は、少なくとも勤続年数×1か月分の補償はしているでしょうし、"弱腰の"日本企業ならもっと支払っているはずです。ただ、労働者と終身雇用契約或いは1年以上の長期雇用契約を結んでいた企業は少なかったのではないでしょうか?既に対応していたことが多かったとは言え、日系企業の多くはこの"新労働法"施行に向けて、就業規則の見直しや"古株社員"への対応など、労務対策の準備を進めてきたに違いありません。少なくとも上場しているような日本企業はコンプライアンスが口癖になっていますから、"抜かりの無いように"頑張っているはずです。特に若手のホワイトカラーの間では、転職によるステップ・アップが当たり前の中国では、ひとつの会社に長期間(3年とか5年とか)勤めている労働者は多くありません。よほど会社にロイヤルティを持つ"スグレモノ"か、転職先の見つからないような"使えないクン"である場合が多いでしょう。ですから、「長年勤めている社員は終身雇用になる」という(5)のところが、この"新労働法"の肝だと感じていた企業も多かったはずです。さすがに、アメリカ系の企業は対応がドライでしたね。ウォルマートやP&Gなどは、"新労働法"により終身雇用の対象になってしまう"古株"のうち、いわゆる"使えないクン"を大量に解雇してしまいました。もちろん、"新労働法"施行前にです。中国系でも、政府のお膝元でいろいろと気遣いしている北京の清華大学付属の保育園の"古株"先生が終身雇用を目前に解雇された、ようなニュースが話題になっていました。ただ中国のローカル企業がすべてこの"新労働法"を守るか、と言うと、そんなことはあり得ません。この法律によって保護されるのは、中国の全労働者のせいぜい10%くらいなのでは無いでしょうか。農村部からの出稼ぎ労働力で成り立っている沿岸部の工場などがこの法律を守ったら、きっと一瞬にして中国は"世界の工場"の座を他の国に明け渡すことになってしまいます。中国の立場を悪くするような決まりを、当局が守りなさいとは言わないでしょう。ホワイトカラー系だってそうです。いまをときめく"ネット系"企業であっても、"新労働法"を完璧に遵守するのはごく少数派でしょう。NASDAQに上場しているような著名ネット企業で"働く"社員であっても、労働契約すら結んでいない場合だってあります。労働契約があっても、法律に準拠した社会保険制度を完備していないところだって多いです。上場企業ならばコンプライアンスが問われるだろうと思うでしょうが、上場しているのはたいてい海外の持ち株会社ですから、子会社、関連会社、孫会社の網の目を広げていけば、"足がつかない"ようになるのです。さて、労働者が訴えたらどうなるでしょう。その前に、訴えるような社員は要らない、と言われます。中国では優秀な人材が有り余っています。過酷な労働条件にも泣き寝入りして、働き続けなければならない人材がたくさんいるのです。もし、日系や外資企業が同じようなことをしたら、どうなるでしょう....。きっと労働者が訴えるでしょう。訴えると当局も見過ごすことはしないでしょう。きっと、労働仲裁委員会あたりに引きずり出されて、法外な賠償を求められることになるでしょう。同じような脱法行為が発覚して、賠償を問われる確率は、外資系企業のほうが中国企業の10,000倍くらい高いはずです。だから日系や欧米企業は、"新労働法"を遵守するほうに対応する必要があるのです。"新労働法"は外資と中国国内企業との労働コストの格差をさらに広げるでしょう。中国では、法律の上位概念として、国家を指導する"党"があることを忘れてはなりませんね。
2008.01.09
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ご多分にもれず中国でもBuz Marketing(バズ・マーケティング)が人気を集めています。もともと、中国では口コミの影響力が大きかったようで、インターネットが広く普及する前でも、認知経路などの調査をするとテレビなどのメディアと同じくらい「友人・知人から」という回答があったものです。最近は、「友人・知人」だけではなく「ネットの掲示板(BBS)」や「ブログ」が影響力を大きくしています。中国語では「口碑営銷」と言いますが、評判による売り込み(マーケティング活動)という意味になります。日本やアメリカでは、ブログが多く利用されました。影響力のあるブロガーに企業側が新製品のサンプルなどを提供して実際に試用してもらい、感想をブログに書いて貰うようなことから始まったのですが、企業側がブロガーに"謝礼"を支払うようになったり、企業側が成りすましブログを用意したりして、それが読者にバレたりしたために、炎上して逆効果になったケースもありました。掲示板(BBS)、商品案内サイト(ナビゲーション・サイト)、口コミサイトなどに、企業側が"よいしょ"コメントを書き込むタイプもありましたが、「やらせ」に警戒心を抱く日本では、逆効果になるケースが多いようです。中国では掲示板(BBS)がBuz Marketingの主要な舞台になっています。ブログのコメント欄よりは、大手ポータルサイトなどが運営しているBBSのほうが、少しだけ信頼性が高いと思っている人が多いからなのでしょう。口コミサイトやブログより、大手ポータルサイトのBBSのほうが、圧倒的に集客力が大きいという理由もあります。人海戦術の得意な中国だけあって、モニタリングから書き込みまですべて人力で代行してくれるBuz Marketingの会社がいくつかあって、大きいところでは全中国に1万人以上のネットワークを有して、クライアントに都合の良いストーリーになるようにBBSをコントロールしてくれます。中国の大きなBBSは書き込み側のIPアドレスも表示されたり、書き込む前に実名やIDを登録したりしなければならないので、様々な地方からより多くの人が参加しないと、すぐに「自作自演」だとバレてしまうので、巧妙にオペレーションする必要があります。良心的なBuz Marketing会社は、ネットワークされたコメンテイターに対象商品のサンプルや商品を理解するためのマニュアルなどを配布して、比較的オーガニックなコメントを書き込んでもらえるように努力していますが、ひどいところだと「本部」からメールで送られてきた文章をBBSに「コピペ」させる(貼り付けさせる)だけだったりします。受け取る側も、半分はこうした「やらせ」が行われている、という前提の中で、商品情報の参考にしているという感じでしょう。対象商品に好意を抱かせることができるかどうかは別として、知名度の低いブランドや商品の場合は、良くも悪くも話題になって多くの人たちの関心を引き付けられる、という点でそれなりの効果は得られると思います。むしろ中国では、ネット上のネガティブな評判を好転させるために、Buzを利用するケースが多いようです。放っておくとネガティブな情報が際限なく広がるのが、中国でも日本でもネットの特徴ではありますから。先日、中国最大のポータルサイトのニュース欄に、とある日本メーカーのネガティブな記事が掲載されてしました。日中関係が少し友好ムードになったとは言え、中国の皆さんはこうした話題が大好きで、併設されているBBSには瞬く間に"反日系"コメントがどんどん書き込まれていきました。このまま放置していたのでは、対象となった日本メーカーの評判が悪化するばかりか、日中関係にも影響しかねない....でも大丈夫!!この記事を掲載しているポータルサイトの"協力"を得て、この記事が"注目されないように"することができたのです。詳細はご説明できませんが、危機管理Buz Marketingの観点から"細工"を施した結果、対象記事そのものの削除はできませんでしたが、ニュース欄のトップページの目立つ位置にあった記事へのリンクをはずし、さらに"バックナンバーページ"から対象記事のタイトルやテーマ写真まで削除できました。つまり、なかなか対象記事にたどり着けないような状態を作り出すことができたことになります。すばやく対応できたので、他サイトへの転載も防げましたし、ニュース検索しても表示されない状況になりました。日本メーカーや日本という国そのものへの批判的論調となっていたBBSも、対象記事は"日本メーカーを非難しているのではなく中国のユーザー側にも問題がある"みたいな理性的な論調に変化していきました。ネガティブな情報は、"火"が大きくならないうちに、できるだけこっそり消してしまうのが一番です。日本では巨大広告代理店とお付き合いがなければ、なかなかこういう"技"を使えないものですが、中国では政府とか権力とかに頼らなくとも、意外とできちゃうものなのです。"バックナンバー"一覧で、第111号(赤い点線部分)だけ空欄に(リンクは残りましたが)
2007.12.08
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いま、中国ではオンライン・マガジンが"ホット"です。POCO(Alexaランキング300位台)をはじめ、ZCOM、ieBookなどのオンライン・マガジンを集めたポータルサイトがたくさんあり、そうしたポータルからたくさんのオンライン・マガジンを購読することができます。それらのマガジンは、実際に雑誌として販売されているものが多く、"電子版"としてリアルなペーパー仕様マガジンのサマリーであったり、コンセプトを同じくしながらも別編集になっていたりします。たとえば中国の最も売れている女性誌のひとつである中国の"Ray"(瑞麗)もオンライン・マガジン化されていて、上述のポータルサイトなどから無料で気軽に購読することができるのです。もちろん、雑誌社などとは別にオンライン・マガジンを提供している企業もあります。著名タレントが編集長を引き受けているものから、経済や自動車情報の専門誌など、とにかくたくさんのラインナップが揃っています。日本のオンライン・マガジンは専用のリーダーをインストールしないと表示できない場合が多いのですが、中国のオンライン・マガジンはウェブからダウンロードすれば誰でも見ることができるようなファイル形式になっています(多くはflashをexeファイル化しています)。日中のビジネス・モデルの違いが、オンライン・マガジンのファイル形式に如実に顕れていると言えます。日本の場合、有料のオンライン・マガジンが多いようで、購読料で稼ごうと言う魂胆です。誰でも読めるようなファイル形式だと、回し読みされてしまい、有料購読者が増えません。だから、プロバイダーは競い合って、独自のマガジン・リーダーを開発して、無駄なお金を使ってしまいます。挙句の果てに、お金を払うにはいまいちのオンライン・マガジンが多いので、なかなかポピュラーになりません。楽天のように、いわゆる"囲み込み系"を狙っているのですが、たぶん狙い通り行っていないようです。中国の場合、無料のオンライン・マガジンが多いので、コピーされようが回し読みされようが構わないのです。と言うより、むしろ大歓迎なわけです。なぜならば、広告収入をベースとするビジネスを狙っているからです。ですから、どんなPCでも表示できるようなファイル形式にして、メールに添付してお友達同志で転送しあったり、フラッシュ・メモリーでやり取りできるようにしています。一般に広告は、より多くの人に見てもらえれば、より多くの価値=値段がつきます。オンライン・マガジン=雑誌はクラス・メディアですから、購読者層がかなりセグメンテーションされます。より多くの見込み客により効率的に広告を表示することこそ、広告主がいつも求めて止まないことなのです。日本では、それなりのオンライン・マガジンを制作するのに、3ヶ月くらいの時間と数百万円のお金がかかるそうです。中国では、50ページくらいのオンライン・マガジンを制作するのに、3~4人のチームで1ヶ月で完成するそうです。リアルな雑誌のオンライン・マガジン化であれば、原稿と写真などの素材は使い回しができますから、コストのほとんどは人件費になります。きっと20万円とか30万円あればできちゃいますよね。もっとも最近は、動画系サイトが進化してしまって、オンライン・マガジンなど用済みだ、と言うご意見もあろうかと思いますが、読者の意思でページをめくれたり、リードから興味のある記事だけクリックして本文を楽しんだりできるので、基本的に流れっぱなしで視る側が時間をコントロールできないムービーとは違う魅力があるはずです。音楽だってムービーだって埋め込めるわけで、ムービーよりもずっとインタラクティブなコンテンツと言えるのではないでしょうか。しかも雑誌など、既にペーパーメディア向けのコンテンツをお持ちの方にとって、オンライン・マガジンは制作面での親和性が高いわけです。写真と文章が基本ですから....中国で最も人気のオンライン・マガジンの"KAILA(開[口]篇に[拉]=月刊)"は毎月1,100万件のダウンロードがあるそうです。これだけで、世界で最も発行部数の多い読売新聞を圧巻しているのですが、メール転送などで回し読みされる数を含めると、2,000万人以上にデリバリーされている計算になります。このオンライン・マガジンに挿入されている広告ページにしても、ペーパーの雑誌とは違ったさまざまな細工ができますから、メディアとしての価値は相当なものになると思います。ただ中国チックで悪質な(!?)オンライン・マガジンも氾濫しています。日本のグラビア・アイドルの写真集などは、スキャンされてそのままオンライン・マガジンとしてアップロードされたりしています(見るほうはありがたいのですが....)。exeファイル形式ですから故意、偶然にかかわらずウィルスがついてくることもありますし、その場合の被害は甚大です。こうした中国の"無防備さ"が背景にあるので、オンライン・マガジンが普及しているとも言えるでしょう。日本の雑誌社などコンテンツ・ホルダーはオンライン・マガジンには消極的ですね....。コストはかさむし、写真やモデルの版権処理も面倒だし、何のメリットも無い....むしろ本体(ペーパーの雑誌)の販売部数に悪影響を及ぼす、みたいに思ってらっしゃるのではないでしょうか?でも中国の主要雑誌の多くはオンライン・マガジンも発行して、さらに儲けようと試みているわけです。
2007.10.19
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ご存知かもしれませんが、私は97年から2006年まで日本の広告会社の中国の現地法人で、いわゆるシャチョーをしていました。その後、転職して現在は日本の、どちらかと言うとIT系企業で中国事業の立ち上げとメンテナンスを行っています。日本での業務が多領域に渡るため、中国でも複数のドメインで事業の立ち上げを担当しているのですが、転職先のいいところ(?)は、ゼロから立ち上げるのではなく、うまくいっていそうな現地の会社に出資して事業領域を埋めていこうと言う方針を持っていることです。これはがっちり勢力地図の固定した大手広告会社などには、なかなかできない"技"と言えるでしょう。したがって、中国に出張すると毎度のように、パートナーになってくれそうな各事業ドメインで評判の良い中国の新興企業を訪問したりもするわけです。自分でも驚いてしまったのは、ここ3回立て続けに"昔の部下"に遭遇してしまったことです。つまり出資交渉をしようと考えている企業の社長や副社長に面談に行くと、以前私がシャチョーをしていた中国の現地法人の元社員が出てきたりするのです。訪問先の企業はリサーチャーが事前に下調べをしてくれているため、私が"昔の部下"の会社を探し回っているわけではありません。まったくの偶然で、ほんとにビックリです。とある"昔の部下"は、私が中国に赴任してまもないころ、大学生でインターンに来ていて、何となく出来も良かったので、そのまま新卒で採用した男の子でした。新入社員ということもあり、前の会社では差ほど目立った感じではなかったのですが、こつこつと仕事をしていた感じは覚えていました。3年ぐらい経って、彼は自分の中国人上司が替わったことがきっかけで会社を辞めてしまいました。その後、同業に転職し、結婚式に呼ばれて以来、3~4年は音信不通の状態でした。売上高で中国10位台に入るネット・エージェンシーと資本提携について打診するために、その会社を訪ねると、応対したのは30を過ぎて、やや貫禄がついたものの表情には大学生のときの純真ささえ残る、その"昔の部下"でした。彼はちまたで企業価値2,000万US$(約23億円)と値がついてる企業の副社長にのし上がっていたのです.....。かつては数百RMBの経費のことでああこう言っていた彼と私が、数年後に何億円単位のM&A交渉をするなどと、思ってもみませんでした。3Dのヴァーチャル・ショッピング・モールで業界の注目を集めている新興企業を訪ねたときに、応対してくれた創業社長は別のやはり"昔の部下"でした。前の会社で働いていた頃から、彼は"やり手"だなと感じてはいて、いずれはライバル会社にでも引き抜かれるのではと思っていましたが、自分の得意なドメインから抜け出して、新しい発想で起業するタイプだとは思ってもみませんでした。今回はブランディング系の新興企業をいくつか訪問したのですが、やはり"昔の部下"が起業して社長を務めている会社がありました。ここは広告会社と事業領域が重なるので、何となく納得はしたのですが、昔の会社ではさほど輝きを見せなかった(或いは私が輝きを見出せなかった)彼女が、見違えるほど輝いていて、幾つか訪問した企業の中で、いちばんしっかりしていてうまく行っている感じを受けたのも事実です。中国の若者の転職は日常茶飯事です。まして広告業界はスタッフの流動が激しく、2~3年働いたらキャリアアップのため転職、と言うのが常識のようになっているので、元社員の誰々が競合の某某会社で重要ポストに抜擢された、などと聞いても、ちっとも驚きはしませんし、独立してこじんまりとした広告会社を始めている、なんて噂を聞くと応援に駆けつけたりもするのですが、かつての業界から進化して新しい事業領域で起業して成功していることを目の当たりにすると、ちょっと複雑な思いがします。しかも何の因果か対等或いは先方が有利な関係での交渉相手になってしまっているのですから....。まず思ったことは、お互い昔の会社時代、私は上司として彼(彼女)らに、理不尽な意地悪をして来なくて、ほんとに良かったなぁ、と言うことです。何年ぶりかで彼(彼女)らと再会したとき、(恐らく)お互いに昔の悪い思い出や印象が無かったと思うのです。もちろん、かつての会社を辞めたときには上司であった私に対しても多くの不満があったのでしょうが、それは恐らく許容の範囲内だったようで、少なくともひどい上司では無かったと思えるのです。次に思ったのは、私には適材適所で人材を育成していく能力が足りなかったのだ、と言うことです。最近出会った"昔の部下"には、新卒で採用した人も居ましたし、中堅でキャリア採用した人も居ましたが、昔の会社時代には彼(彼女)らの能力を十分に引き出すことは出来なかったと言えるでしょう。みんな私が最終面接をして採用を決めた人たちですから、裏を返せば人材を見抜くセンスはあったと言えるかも知れませんが、彼(彼女)らがここまで成長するとは思いもよりませんでした。繰り返しになりますが、中国の若手社員は常にキャリアアップを考えています。特に日本企業の場合、昇進や昇格にスピード感が不足しているため、手っ取り早い手段が転職と言うことになります。転職そのものを食い止めるような施策も当然必要ではありますが、あなたの"いまの部下"は転職するものだ、と言う前提で接することも必要だと思います。以前、中国に駐在していた頃、様々なケースを見聞きしました。ライバル会社に転職してしまった、と言うのは、最も幸福なケースかも知れません。私自身、少し厄介に感じたのは、クライアントに転職してしまった"昔の部下"です。かつての部下が、いつの間にかクライアントのマーケティング・マネージャーに転職してしまい"お客さま"になってしまったのです。恨みでも持たれていたら、意地悪されてしまうところでした。その"昔の部下"は広告発注者として公平な立場で、元の勤務先に接してくれましたが、かつての部下に売り込みに行くのは、あまりいいものではありません。かなり昔のお話ではありますが、ある日系メーカーで営業マネージャーをしていた人が、大手量販店に転職したケースなどは悲惨でした。その営業マネージャーは、日本人社長と日ごろから折り合いが悪かったようです。営業マネージャーの彼に言わせれば、社長は公平に業績を評価せず、理不尽に叱責することがしばしばで、幾つかのお得意さんには強いコネクションを持っていたにもかかわらず、"干されて"しまっていたようで、次第にその日本人社長と日系メーカーに恨みを持つようになったらしいのです。その日本人社長にしてみれば、不正をしている割には、理不尽な昇給を求めてきた、と言う感じになるのですが、この際どちらの言い分が真実なのかは、さほど重要なことでは無いように思えます。営業マネージャーだった彼は、大口取引先であった量販店でバイヤーのポジションを獲得すると、元の勤務先である日系メーカーにきつい取引条件を提示して、元上司の日本人社長を呼びつけ、条件を受け入れてもらえないと、その日系メーカーとの取引を打ち切ってしまったのです。大口取引先から取引を打ち切られた日系メーカーは、中国での有力な販路を失ってしまい、最終的には日本本社の役員まで担ぎ出して関係を修復せざるを得なかったのです。中国で働いている日本人の皆さん、あなたの"いまの部下"は将来、強力なライバルになるかも知れませんし、大切なお得意先になるかも知れませんし、大事な投資先の社長になるかもしれないのです。これは多かれ日本でも、中国以外の海外でも起こりうることですが、いまの中国ではその可能性が高いことを承知しておいて、現地のスタッフと接することも必要かもしれません。
2007.09.06
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北京オリンピックまでちょうどあと1年と言う8月8日の夜8時8分、天安門広場では"あと1年"の宴もたけなわの頃、私は北京で結構シビアなお仕事の打合せに参加していました。中国を代表するネット企業2社の若きCEO2名と、ある意味で日本を支配する大会社の経営企画室の人たちが、業務提携をするかしないかという打合せの場に、何故か"立ち会い"を求められてしまったのです。この打合せの中で、日本を代表するようなビジネスマンのお一人が、北京オリンピックまであと1年のその日のことを話題にし、この1年が最大のビジネス・チャンスであるようなことを口にしたのですが、北京の若きCEO二人は口を揃えて、「后奥運(ホウ・オウユン)=オリンピックの後」と言う言葉を使ったのが印象的でした。日本では、北京オリンピックまでが中国ビジネスのひとつの区切りで、その後の経済の収縮を懸念する意見が主流を占めているように思えます。2010年には上海で国際博覧会がありますが、その間をどう"食い繋ぐ"か、或いはそれまで中国の経済が成長基調でいれらるのか、或いは来年の北京オリンピックとともに中国のバブルは弾けて、それがトリガーとなって政体まで崩壊してしまうのではないかとか、仕事で中国に深く関わっている人たちですら自虐的で悲観な憶測を楽しんですらいるわけです。それでいて多くの日本の企業組織は、オリンピック後の対中国施策に有効と思える手を打つことも無く、ただ状況を見守るという姿勢で、その前、つまりオリンピックまでに稼げるだけ稼げればいいだろう、という雰囲気すら漂っています。ところが、どっぷりこんとオリンピック・バブルに浸っているのでは思えるウェブ系中国新興企業の若き経営者の多くは、意外と冷静に北京オリンピック以降のビジネス・プランを持っている感じを受けています。今週も北京で何人かとお会いしているのですが、「后奥運」という言葉をよく耳にします。オリンピック景気は当然折り込み済み、或いは既に刈り取り済み、或いは自身のビジネス・テリトリーには差ほど影響をもたらさない、など2008年の予測に関しては、日本の企業などが考えるほど熱くなっていません。むしろ、彼ら彼女らの多くは2008年8月以降に当然ながら来ると予想できる"祭りの後"の虚無感をどう埋めていくか、或いはどう利用するか、と言うことを既に考え尽くしている様子です。マクロ的にみれば、北京オリンピックを境に、海外からの資金の流入は減少傾向に向かうでしょう。中国国内企業にとってこれはある意味でチャンスになります。しかも、かつてのアメリカや日本がそうであったように、情報サービスのカテゴリーであれば、経済が低成長に移行しても、一回り大きく成長するとか頭ひとつ抜け出すような方向は十分見出せるでしょう。もっと小っちゃく考えるなら、他人(外国資本や競合他社)がお祭りに浮かれている間に力を蓄えとこう、みたいなキリギリスじゃなくて蟻クンみたいな経営者がたくさんいらっしゃるのだな、という感じです。そこのところは、中国の地に足が着きかねている日本などの"一見さん"とは大違いで、中国で一生喰っていこうと思っている彼ら彼女らだからこそ、当然のことながらもっと長いレンジの中で、いまの状態を冷静に分析することも可能なのでしょう。よくよく考えてみれば、いまさら北京オリンピックがどれほどの機会を作ってくれると言うのでしょう?共産党の政権にとっては、ナチス・ドイツのベルリン・オリンピックよろしくパブリック・リレーションの絶好の機会ではあるでしょう。観戦に普段より多くの外国人がやってきてお金を使っていってくれるでしょう。そのために、競技場もホテルもビルも道路もきれいにしているところです。でも、たかが"運動会"(奥運の"運"は運動会の"運"ですよ)じゃないですか。上海の人なんか冷ややかですし、北京の住民だって意外と冷静なものです。もちろん、これを機会に大儲けする輩も居なくは無いでしょうが、商業活動の持続性を考えれば反動に悩まされることになるはずです。とある日本の巨大広告会社であっても、株式を上場してしまうとワールドカップやオリンピックの翌年の前年割れ決算を"祭りの後"現象だと言い逃れしたとしても株価が持ち直すことは無いわけで、持続可能な成長を実現できる経営こそが求められている世の中になっているのです。北京オリンピックで一儲けしようと企んでいる日本の会社は星の数ほどあるでしょうが、一部の中国の若き経営者のように外的環境の変化を言い逃れにせずに済むように、ビジネス・プランを見据えることこそ、大切なのではないだろうか、と思う今日このごろでした....。
2007.08.31
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先週金曜日、三菱東京UFJ銀行深セン支店の日本人課長・勝部聡史さんは、彼の部下で25歳の中国人社員・シューさんの右頬にビンタを一発くらわせてしまいました。この様子をシューさんの中国人同僚も目撃していたため、勝部課長は即座に(頼んだモノを届けに来てくれたたシューさんがニヤけていたので)不愉快だったから殴った、と一応詫びを入れたそうですが、ビンタを受けたシューさんは納得することができません。そればかりか、この様子を見ていた別の日本人社員が、「勝部課長は君の上司なのだから、君を殴るのは当然だ」と言ったらしい....。勝部課長はかつてから部下を叱責し罵ることが多かったらしく、前日の朝にも彼に叱られた女性従業員は泣いてたそうです。終業時間が過ぎたにもかかわらず50人ほどの中国人従業員はそのままオフィスに居残り、「全中国人従業員心の声」というタイトルの抗議文をまとめ、全中国人従業員の署名をして支店長に提出しました。勝部課長に公開の場で謝罪させること、このような人物は中国で長く働かせないこと、こうした環境では安心して働けないので、三菱東京UFJ銀行は中国人従業員の人格を厳格に尊重する制度を整備すること、などを要求したものでした。ビンタをくらったシューさんは勝部課長に謝罪文書の提出と引責辞職を求めたそうです。記者の問い合わせに、副支店長は事実関係を認めた上で調査をして来週報告する、と述べたそうです。(四川新聞網に掲載された南方都市報の転載記事)この事件は複数のニュースサイトに掲載され、主要BBSでは日本人及び日本企業に対する非難の書き込みで盛り上がりを見せました。その後どうなったかというと、光明網の記事によれば、本店の重役が全面に出て解決にあたる方針で、日本上司が中国人部下にビンタをくらわせた事件は沈静化に向かう、らしいです。中国当局も日本との関係に気を遣って、日本人や日本企業への非難が広がらないようにと報道を抑制している感じなのは不幸中の幸いですが、もしこの情報がホントだとすると、中国における一社員の不祥事の解決のために、天下の三菱東京UFJ銀行は重役を送り込むわけで、勝部課長もタダでは済まないでしょうね。いまの世の中、日本の職場でも部下をビンタする上司など稀でしょう。しかも肉体労働の現場じゃなく、天下のメガバンクです。指導のためにちょっと語気を荒げただけでも、部下からパワハラだ、などと騒がれてしまいそうなものです。しかも赴任先の中国では、日本や日本人のことを良かれと思っていない人たちが多いのです。最近はどうか分かりませんが、去年の今頃までは旧日本軍の悪党ぶりを強調したテレビドラマが毎夜のごとく放映されていて、旧日本兵が善良な中国人を平手打ちするシーンこそ日本人の暴力性の象徴として、中国の人たちが見入っていたのです。そうした背景を少しでも分かっていたら、「不愉快だった」だけで中国人にビンタなどくらわせたりしなかったでしょうし、仮に自分を見失うほどの怒りか何かがあって部下を殴ってしまったとしても、「不愉快だったから」などと言い訳したりしなかったのでは無いでしょうか....まぁ、就職活動で知り合った女子大生に悪さをしようとする行員も居るようなメガバンクですから、こうした輩が存在するのも不思議ではないかもしれませんが....。中国人同士ですら職場で暴力沙汰になるとただでは済みません。互いのメンツをかけて、最後までどちらが正当でどちらに責任があるのか追及し続けますから、当事者のどちらかか或いは全員が職場を離れるような結果になることが多いのです。そうでなくとも、あなたの中国人部下は、あなたの細かな指示やチェック、中国人の能力を過小評価したような態度などで、鬱憤がたまっているかも知れないのです。英語を磨いて欧米企業への転職を企んでいるか、ビンタをくらって多額の賠償金を得て辞めてやるか、と思っている中国人社員が潜んでいることを忘れてはなりません。それにしても日本では、職場で上司が部下を殴ったくらいで、実名報道され、重役が事態の収拾に乗り出すようなことは、まず無いでしょう。しかし残念なことに、中国で勤務し中国人部下を持ってしまった三菱東京UFJ銀行の勝部聡史さんは、たいへん困難な状況に追い込まれてしまったわけです。この先、真っ暗でしょうねぇ....。日中関係が比較的良好なこの時期ですから、外交問題に発展することは無いと思いますが、中国で働く日本人の皆さん、どうかお気をつけください。
2007.07.30
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私はマトモに中国語のお勉強をしたことがありません。1997年、北京に赴任したときは、「にーはお」と「しぇえしぇ」しか知りませんでした。着任当日、取引先にお詫びに行く必要があって、「対不起」(すみません)という中国語を覚えました。前の職場では、赴任地での語学研修として1年間の費用を会社が持ってくれることことになっていましたので、日本語専攻の女子大生に毎週2回、終業後のオフィスに来ていただき、個人授業で学ぼうと目論見まてはみましたが、終業時間が見えないお仕事だったもので、1ヶ月も経たないうちに先生に逃げられてしまいました。それからは、中国語を正式にお勉強することを諦めてしまったのでした。それでも今は、中国語でお仕事をしています。取引先と中国語で交渉することもありますし、簡単な中国語のEメールだって送ることはできます。ま、9年近くも北京で仕事をしていたら当たり前なのかもしれませんが、学校なんかに通わなくとも独学で何とかなるものです。そうは言っても、英語同様、自分の中国語にはコンプレックスがあります。きっとチョーブロークンで、おネエ言葉になっているからです。中国語しか話せない皆さんの前なら堂々と中国語を使うのですが、きちんと中国語を話せる日本人の方が同席されている場合など、自分のいい加減な中国語が見透かされてしまう恥ずかしさで、途端に声が小さくなってしまいます。無鉄砲に外人とべらべら英語でしゃべるくせして、流暢な英語を話す日本人がいると、急に寡黙になるのと同じです。最近は中国エキスパートの日本人がどんどん輩出され、語学もきちんと身につけた日本人が中国で働くケースが多くなっているようです。中国への赴任が決まった後輩も、費用は全額会社持ちで3ヶ月間の語学留学を北京で楽しんでいます。現地で1年間もの語学研修を経てから着任させるという日本企業も増えているようです。もちろん、大学で中国語を専攻してきた人材もたくさんいらっしゃいます。その反面、中国語など話せなくとも中国でお仕事ができる環境も整ってきましたし、出張で頻繁に中国を訪れる日本のビジネスマン/ウーマンの中には、片言の中国語も話せない方々が少なくないようです。通訳を通しての商談、空港-オフィス-取引先-ホテルという行動範囲では、なかなか中国語を話す必要は無いでしょう。ナイトライフに積極的な男性であれば、出張とは言えそれなりに中国語を覚える機会はあるでしょうが....。出張ベースで中国を訪ねる日本人であっても、少しくらいの中国語は話せたほうが楽しいはずです。現地法人のスタッフと中国語で挨拶ができたり、取引先との会食で片言の中国語を使ったり、通訳やアシスタント抜きでこっそり買い物に出かけたり....と、コミュニケーションと行動の範囲が格段に広がるでしょう。そんな方にお勧めなのが、先日小学館から出版された『ガチャピン&ムックの中国語教室』です。ビートルズのポール・マッカートニーをモデルにしたとも言われるキグルミのガチャピン(Wikipedia)は、永遠に5歳というお子ちゃまでありながら、おそらく私から10歳ほど若い世代、つまりいまの30~40代前半のスーパーヒーローと言えるでしょう。だって....キグルミを着たまま、スキージャンプしちゃうんですよ。あれはテレビで見ていて、ほんとに感動しました。スキージャンプだけではありません。パートナーのムックとともに、ウェイクボード、カヌー、サンドバギー、ジェットホバー、スキューバダイビング、スノーボード、ミニバイク、モーグルスキー、モトクロス、ロッククライミング、空手、カートレース、サッカー、釣り、ボブスレー、自転車、バーテンダー、バイク、クレーンゲーム、ボーリング、チアリーディング、フィギュアスケートではアクセルジャンプを決め、宇宙旅行まで成し遂げたのです。ガチャピンの果敢なるチャレンジ(写真集)は、若い頃の私たちに夢と希望を与えてくれたものでした.....。ガチャピンとムックのチャレンジは、いつも本気度がスゴイのです。。今回は中国語にチャレンジしたわけで、付属のCDではガチャピンとムックによる本格的な中国語の発音を耳にすることができます。『ガチャピン&ムックの中国語教室』は、中国語学習の入門書と言えますが、発音とピンイン(中国式発音記号)を基本にしているところが魅力的です。出張などで何度か中国を訪ねると、簡単な挨拶や会話や単語などを耳から覚えていくことはできます。でも、中国語には日本人にとって聞き分けるが苦手な音があって、発音の基本を知っていないと、いつまでも区別がつけられないままで終わってしまいます。lとr、bとp、zhとch、anとangとenとeng、chiとqiなど、初期の段階で聞き分けることができると、区別して発音がしやすくなるわけです。この教科書では、中華料理や職業の名前といった、よく使う単語を使って、発音の基礎、似た音の区別を学んでいけます。声調とピンインの基礎ができていると、パソコンの中国語入力なども早く習得できちゃいます。お仕事で中国に関わるようになって、ちょっと中国語を始めてみようか、などとお考えの方は、まずガチャピンとムックと一緒に会話と発音の基礎から始めてみるのも、よろしいかと思います。
2007.07.06
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WPP、IPGと並ぶグローバル・メガ・エージェンシー・グループのオムニコム・グループが、中国の大手ネット広告会社創世奇跡(Wonder Ad)を買収した、というニュースが流れました(iResearch)。買収価格は2,000万US$との報道ですが、きっと出資比率は34%~49%の範囲内でしょうから、プレ・バリュエーション(買収交渉時の企業価値)として、4,000万~6,000万US$(約50~70億円)の値がついた、と考えてよいでしょう。ちなみに、この創世奇跡(Wonder Ad)の2006年の推定売上高は1億~1.3億RMB(約16~20億円)、営業利益は500万~1,000万RMB(約8,000~1億6,000万円)ですから、この会社の将来の成長を考慮せずに計算するなら、オムニコムは投資の回収に40~50年もかかることになります。中国のWeb関連会社はもちろんのこと、ネット広告会社も、内外からの投資バブルに沸いている感があります。記憶に新しいのは、2006年の時点で中国最大手のネット広告会社であった好邪(Allyes)が、エレベータホールのモニタ広告屋のFOCUS Mediaに、2億2,500万US$(約300億円)で完全買収された、という出来事でしょう(拙ブログ)。06年の好邪(Allyes)の売上高が推定で5億RBM(約80億円)、営業利益は2,000万~3,000万RMB(約3億~5億円)と想像できますので、投資回収に100年もかかるかもしれない、というとんでもなく高い金額で買収したといえなくもありません。企業価値の大雑把な計算の仕方として、営業利益マルティプルというのがありますが、上述2つの会社は1年間の本業で稼ぎ出す利益の50倍から100倍もの価値が認められた、というわけで、単純に考えると、チョー"バブル"な状況になっているのです....。こうした"買収バブル"を引き起こしている要因の一つは、中国のネット広告市場が引き続き、急成長するという期待感です。中国のネット広告市場は2006年時点で46億~60億RMB(約740億~1,000億円)といわれていて、まだ日本の3分の1程度です。けれども、成長率は44%と日本やアメリカより大きいわけです。しかも、今後数年間は30~40%台の成長が予測されているらしく、4~5年後の市場規模は3倍から4倍になると言われてます。もう一点は、中国の大手ネット広告会社は比較的営業利益率が高く、5~10%を超えているエージェンシーもあることです。いっぽう、世界的にみるとメディア取引の仲介を主業務とするエージェンシーの利益はどんどん低下する傾向にあります。あの天下の電通の営業利益率は3.3%でしかありません(とはいえ、この数字がいかに放漫経営の賜物かということには、あとで軽く触れることにします)。エージェンシー業務の中でも、メディア取引の仲介業務はあまり頭を使いません。ましてネット広告は実施や効果について客観的に"証明可能"ですので、テレビ広告を売り込むような"屁理屈"をクライアントに垂らしこむ必要性が少ないのです。ですから、若くてモチベーションの高いスタッフがいれば、案外回していけるものです。中国では、そーゆー人材の費用は、まだ高騰していないので、販売管理費を比較的安く抑えることができ、一定の営業利益が確保できているわけです。ウェブ・デザインなんかになると、そーゆーわけにも、いかなくなるのですけど.....。ですから、大手ネット広告会社への投資は、3年先の黒字化の目処すら立たないような、中国のあきれたWeb2.0企業のスタートアップなんかより、よほど堅実にリターンが望めるとも言えましょう。さらに、優良なグローバル・ブランドの広告主を取り込んでいるグローバル・メガ・エージェンシーの傘下となれば、更なる売上げの増大が期待できるわけです。電通やオーバーチェアの例を引くまでも無く、メディア取引はそのシェアを拡大すればするほど、コスト競争力が高まる仕組みになっています。たくさんの広告を集めれば、メディアの仕入れ値が安くなる仕組みだからです。ローカルのネット広告会社がグローバル・メガ・エージェンシーと提携すれば、営業利益率がさらに高まる可能性が高いわけです。ですから、日本であれほどメディアの取り扱いをかき集めている電通の営業利益率が3.3%というのは、国際的な常識から見てとてつもなく不思議なお話なわけなのです....。莫大な利益がどこかに消えてしまっているのに、そのおこぼれを授かっている持ち合い安定株主が多数派を占めているので、騒ぎにならないのでしょうかね。このように、中国の大手ネット広告会社の企業価値=買収価格は急騰しているのは、市場の拡大が見込まれ、(この種の業界としては)比較的高い営業利益率が確保され、資本提携やM&Aによるスケールメリットにより更なる営業利益が期待できる、という一応の理由があるからで、決して"バブル"とは言い切れない感じもするのです。例えば、今年の売上げが2億RMB(約32億円)、営業利益1,400万RMB(約2億2,000万円・営業利益率7%)のネット広告会社でも、向こう3年間35%の勢いで成長すると2010年の売上げは5億RMB(約80億円)になり、スケールメリットで営業利益率が10%に改善できるなら営業利益は5,000万RMB(8億円)になるという可能性を秘めていることになるわけで、50億円くらいで買収できるのであれば、かなりまともなお買い物と言えるでしょう。こうした優良な中国のローカル系ネット広告会社には、次々と資本提携やM&Aの話が舞い込んでいるようです。こうした話がまとまれば、創業者には一夜にして数億~10数億円のキャッシュが転がり込んでくるわけです。この種の創業者は30代前半の留学帰国組が多く、5~6年前に創業したばかりの頃には、一緒にお酒を飲み交わした知人も少なくありません....。なんと羨ましい限りぃ。もちろん、こうした"バブル"な風潮に便乗して、ベンチャー・キャピタルに"秀水市場"並みの売値を突きつけるような悪徳ネット広告会社もたくさん存在することを忘れてはなりません。先日訪問した、アフィリエート系のネット広告会社など、創業後3年間赤字続きで、向こう3年間も黒字化する見込みは無いというビジネス・プランを堂々とご披露しながら、中国でもアフィリエート系広告は急成長する、というだけの理由で、のほほんと1億RMB(約16億円)もの投資を求めてらっしゃいました。いくらネット広告の成長が見込めるとしても、あぁいうのに、引っかかっちゃうと、きっと大変なことになっちゃうでしょう。
2007.06.21
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とある中国の地方都市でボッタくられました。上海人と香港在住のマレーシア人と3人で、夜の街に繰り出そうとタクシーに乗り込んだのです。3人とも初めての訪問となるその都市には残念ながら日本語のフリーペーパーのような便利なツールが無いので、情報はホテルのコンシェルジュくらいからしか得られません。上海人の提案で、タクシーの運ちゃんに"良い店"を尋ねることにしたのです。中国には多少馴れているとは言え、日本人とマレーシア人は"客人"ですので、唯一の大陸出身者である上海人の彼が、私たち"客人"のために、タクシーの運ちゃんと相談し、案内されたお店の人と交渉してくれたのです。結果は散々でした。最初に行ったカラオケのサービスもいまいちで、当初約束した料金の二倍以上を請求されてしまいました。上海人の彼は、お店の"マミー"(女性従業員の管理者)やマネージャー(店長)を呼びつけて、あれこれ怒っていましたが、最後はお店の請求金額に従わざるを得なくなりました。ここで帰ればよいものを、私以外の二人は若いものですからおさまらず、やはり同じ運ちゃんに紹介してもらっていたサウナに寄ることになったのです.....。そして、ここでも酷い目に遭わされたのでした。(良い訳じみていますが、私は"大人"なので、またボラれると思い、早々にホテルに戻っておりました。)彼らの報告によると、サービスも料金体系もとんでもないものだったとのことで、マレーシア人の彼はお店の人と大喧嘩して、夜中の三時くらいにホテルに戻ってからも、悔しさと興奮で朝まで寝付かれなかった、とのことです。上海人の彼は事業開発のマネージメントをしているのですが、ビジネスの上で初めてとも言えるような困難に立たされていました。ポテンシャルの大きな提携先を自ら探し出して交渉も順調に進んでいたのですが、ここ最近提携相手の態度が変化してしまったのです。いま中国のWeb系の私企業は内外のVCの引き合いが多くバブっているのですが、この提携相手も"売り手市場"への変化に気がついたのでしょう。提携交渉の詰めが思い通りにならず、憤っているばかりか、提携相手に"騙された"などと愚痴をこぼすようになっていたのです。私が思うに、その上海人の彼は、大陸でのビジネスで大きな挫折を経験したことが無かったのだろうと。前職は、欧米系の大企業でセールスをしていたらしいのですが、お膳立てができているBtoBのルートセールスですから、大きなトラブルは無かったようです。その後、日本企業でキャリアアップしてマネージャーを務めるようになったのですが、"買い手"が強いマーケットに身を置いていたため、取引先の"裏切り"に遭うことなく順調に経験を積んできたのでしょう。確かに有能でスマートな上海人。上海であればウラのウラまで知っている遊び上手なヤング・エリートといった感じです。ですから、"アウェイ"とは言え地方都市でボッタくられた体験は、前述の提携相手とのトラブルと同じように、彼の"履歴書"の中ではあってはならないことだったのでしょう。「上海では、こんなことはあり得ない。」彼はそう言いましたが、自分のフィールドだけでビジネスが成り立つわけではありません。数日経って、ボッたくられたことが"笑い話"として話せるようになってから、私は彼にそう諭しました。聡明な彼は、理解してくれたようです。日本人が中国で騙されることがあっても、彼は中国では絶対騙されないと自信を持っていました。でも、ビジネスのフィールドが広がったり、環境が変化すれば、自分も"外地人"と同じなんだ、そう思ってビジネスに臨まなければならないんだ、と彼は理解したようです。地方都市でボラれた経験は、マレーシア人の彼の将来のビジネスにおいても、とても有益だったと思っています。彼は上海人の彼よりもっと若くて20代の前半。資産家の子息で日本に留学し社会に出たばかり。私に言わせれば"純粋培養"の王子様なのです。そんな彼が香港からではあるにせよ、いきなり大陸ビジネスに手を染めることになるのですから。有能な上海人は上海ではパーフェクトでしょう。同じように北京でのご接待は北京人にアレンジしてもらえば、何の不安もありません。でも、中国のスタッフを"アウェイ"(外地)に連れ出して、挫折を味合わせてみるのも悪くないと思います、夜のご案内だけではなく、ビジネスの世界でも....。日本人の中国での苦労を少しは理解してもらえるかもしれませんし、中国のスタッフにとっても、良い挫折経験になるかも知れません。ボラれることによって、ビジネスの上でも成長していくはずです....。
2007.05.16
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中国東北部遼寧省の大都市S市の共産党委員会書記(まぁ市長みたいなもの)兼遼寧省の常務委員でもあるC氏が上海にやってくるので時間を取ってほしい、そんなお仕事があったので、のこのこ出かけてしまいました。S市のハイテクパークから企業誘致のお誘いを受けたのは、ほんの1ヶ月前。ちょうどオフショアの開発拠点を中国で拡張する必要に迫られていたので、いろいろお話を聞くと、これがなかなか好条件。まぁ、数十億円もの投資をそんな短時間で決められないのが日本企業であるわけですが、こっちがモタモタしている間に、S市のほうからトップ・セールスかぁ、と思いつつ、指定された上海市内の外資系5つ星高級ホテルに赴いたわけです。指定された時間の30分ほど前にホテルのロビーに着くと、日本人や韓国人や欧米人を含むビジネスマンらしき5~6人の集団が10組以上もラウンジを占領していました。S市ハイテクパークの担当者が私たちを見つけて、ホテルの従業員を呼び、満席のラウンジに無理やり席を作らせました。周りを見渡すと、やっぱり知り合いの日系某IT関連会社の幹部も呼ばれていたようです。アポの時間を尋ねると、私たちと同じ時間。このラウンジに陣取っている人たちは、みんなS市の党書記に呼ばれて来た人たちだったのです。嫌な予感がしてきました....。S市の担当者は慌しく私たちの席にやって来ると、私たちの会社概要について念を入れて確認し、S市への進出メリットを繰り返し説明しました。この間、ロビーには更に多くの誘致検討企業の幹部がやって来て、ほぼ同数のS市担当者が対応にあたっていました。私たちのような誘致検討企業をボスである市の書記に紹介することで、この担当者たちは出世に繋がるんだろうなぁ、と思いつつ、担当者の描いたシナリオを元に、C書記との面談の構成などを考えていました。ようやく、コンベンション・ルームのある階に案内されたのですが、通されたのは"待合室"。そこには既に数十人の誘致検討企業の幹部たちが、病院の診察を待つが如く、S市書記との面談を待っていたのです。知った顔があったので、いろいろ尋ねてみると、外資のIT関連企業だけではなく、上海地区の中国企業にまで声をかけているようで、私たちのアポの時間と同じ時間に17もの誘致検討企業にアポを入れていたのです。ダブルブッキングどころの話ではありません。"待合室"の外のロビーにまで、誘致検討企業の人たちが溢れています。もう、何と言う段取りの悪さ....。当然のことながら、アポの時間が過ぎてもいっこうにお呼びがかかりません。コーヒーどころかミネラルウォーターすら出ない"待合室"で、いらいらしながら待っていると、ようやくS市の担当者がやってきて、「次にご案内します。ご覧のように時間が押しているので、5分しか時間が取れません。手短にお願いします。」とキター。そして、約束の時間から1時間以上過ぎて、ようやく"会談"の部屋に案内されたのです。S市側と誘致検討企業側は向かい合うようになっていて、双方の最前列にのみテーブルが置かれ、テーブルにはネームプレートが置かれていました。C書記とS市党委員や某区の区長など5名が最前列のテーブルに座りましたが、その後方には4列も椅子が並べられていて、30人以上の担当者(事務方)が座っているのです。5分の持ち時間ということなので、こちらから手っ取り早く優遇政策などのずうずうしいリクエストを並べ立てようと考えていたのですが、C書記の"挨拶"がなかなか止まりません....。東京、大阪だけでなく日本の5つの都市と直行便で結ばれているとか、空港からすごく近いとか、技術系の大学生を毎年10万人規模で輩出しているとか、日本語人材を毎年数万人規模で輩出しているとか、挙句の果てにおいしい日本料理のお店があって、特に刺身は日本で食べたものより新鮮だとか.....。こんな話は、ハイテクパークの主任や担当者から何度も聞かされてるわけで、いい加減C書記の話を遮って、こちらの要望を手短に伝えました。C書記の反応は、「要望は理解できた。主任や担当者がきちんと対応する。問題があれば、私に直接言ってください。」と言う、在り来たりで想定の範囲内のものでした。持ち時間の5分をはるかに越え、"会談"は20分近くに及びました。それでも、会談が終わってエレベータまで見送ってくれたS市の担当者はメンツが保てたようで、私たちに何度も何度もお礼をしてくれました。ご存知の通り、S市あたりはかつて重工業が盛んだったのですが、大部分が国有企業だったもので、この10年はすっかり業績が悪化し、潰れたり、規模を縮小したりしていて、失業者をどんどん産み出してしまいました。日系の某自動車メーカーも大規模なエンジン組立工場を持っているのですが、パッとしません。工場なんかと比べるとソフト開発なんて、あんまり地元にお金が落ちないと思って、大型の製造業やプラントなどの誘致に固執していたようですが、環境対策なんかが厳しくなってきていろいろ面倒ですし、同じ遼寧省のD市あたりはオフショアのソフト開発系企業の誘致に力を入れ、そこそこ成果を上げているので、中高年の失業者対策を諦め、ようやく重い腰を上げて、ソフト開発を中心としたIT関連企業の誘致に乗り出したという次第でしょう。それにしても保守的な東北部S市だけあって、華東・華南の地方都市と比較すると、スマートな売り込みではなかったですね。外資系企業が多く集まる上海にまで、C書記を連れ出したのは良かったものの、お客さんである私たち誘致検討企業をさんざん待たせるし、パワポやムービーでプレゼンテーションするわけでもなく、一方的に喋り捲るボスに金魚のフンのように何十人もの役人がついてきて.....。挙句の果てに、ご一行の皆さんはその外資系5つ星高級ホテルにご宿泊とのこと。誘致費用は、彼らの上海観光とご宿泊代に消えてしまうのでしょう。S市も、もう後がない感じで、企業誘致に必死なのは分からなくも無いのですが、これじゃあ先が心配です。
2007.05.13
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アジア・メディアは初値が672円、まぁこれは想定の範囲内だったのですが、その後買い注文が殺到し、上場二日目の4月27日の終値はなんと852円だとさ。公募価格から二日で33%も上昇しちゃいました。ちょっとショック。最近は、中国のネットやメディアの方々とお仕事をしているのですが、何だかすごくバブルです....。スタートアップ(設立)したばかりで向う1年は赤字見込みのネット系企業に、いきなり1,000万US$(12億円)規模のヴァリュエーション(企業価値算定)がついたりしちゃうのです....ふう。そんなんですから、マネージメント・クラスの人件費も高騰しています。ここのところ、北京でリクルーティングを行っています。一つはファイナンシャル・ディレクター(財務総監)、もう一つはビジネス・ディベロップメント・シニア・マネージャー(事業開発上級経理)。どちらも、手取りで月2万RMB(30万円強)が相場でした。所得税や福利厚生費やボーナス見込み分を計算すると、会社負担額は年間で40万RMB(約600万円)を越えてしまいます。インタビューを行ったキャンディティの中で、一番の高給取りは手取りの年収が60万RMB(約900万円)でした。3アメリカの大学でM.A.を取得し、中国とカナダの公認会計士(CPA)資格を持っていて、欧米系のメディア・エージェンシーでファイナンシャル・ディレクターを務めている、30代半ばの北京出身の女性でした。手取りの年収が60万RMBと言うと、会社負担は90万RMB(約1,400万円)を越えてしまうはずですが、特に吹っかけている様子も無く、そのくらいもらうのは当たり前、というご様子でした。事業開発系の人材でも、欧米系の会計事務所や法律事務所で働いている人たちは、30代前半でも平気で手取りで月3万RMB(45万円強)とかもらっているようです。まぁ、中国の日本企業で現地採用の中国人にこんなに払っているところは、ほとんど無いでしょうね。ただ、こういう人たち、レジメを見ると素晴らしい経歴ですし、インタビューしていてもしっかりしていて、人材としてはほんと魅力的ではありました。日本に戻ると、いまの会社、いろいろ事情があって、常時求人活動をやっているようで、職を求める中国人のレジュメがかなりストックされていました。国籍など関係なく、大学新卒の場合、年収はグロスで400万円弱くらいではないでしょうか。手取りにすると月20万円を切るくらいでしょう。日本の大学を卒業して、日本の会社で3~4年のキャリアを積んだ中国人でも、希望年収は400~500万円くらいだったりします。30代前半の社会人経験10年選手でも500~600万円くらいで働き甲斐のある職を探していたりします。こうした中国人を日本の本社で雇用して、中国に送り込んだほうが、現地で採用するより安く済んでしまいます。日本で採用すると、中国で働いてもらうときに、中国人であっても海外勤務扱いになり、諸手当や家賃補助などで費用がかさんでしまう企業が多いのかもしれませんが、こうした規定こそフレキシブルに運用しないと、逆に不公平を引き起こしちゃいます。北京出身の中国人が日本で採用され北京に赴任するときに、海外勤務手当てや家賃補助まで、日本出身の日本人並みに手立てしてあげる必要はあるでしょうか?現地採用の中国人との待遇格差が顕著になるだけではないでしょうか?日本の本社へのロイヤルティなども考慮すると、日本の本社で採用し、中国で勤務してもらうほうが有利であることは確かでしょう。しかも、現地採用のほうがコストセーブできる、というついこの間までの常識が、常識ではなくなりつつあるわけですから.....。ただ、日本で社会人経験がある人材が必ずしも優秀とは限りません。むしろ、中国で仕事の経験が無い(少ない)不利を考慮する必要があるでしょう。現地で働いていなければ得られない情報や経験はたくさんあります。たとえ日本の会社で中国のファイナンシャルの仕事をしていても、現地の税務当局などと直接遣り合う機会はほとんど無いでしょう。日本企業のトーン&マナーはわきまえていても、中国ではうまく機能しない場合が多いでしょう。マネージメント・クラスであれば、日本の本社採用にして現地に送り込んだほうが、現地で採用するより安く済む、と言う数年前では考えられないような状況になりつつありますが、いろいろ考慮すると、少し高くついても現地での経験が豊富な人材を雇用したほうが、うまく行くような感じもしております。
2007.04.27
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以前身を置いていたトラディッショナルな広告会社の人たちと食事をしました。とある大型広告主の中長期の広告扱いを決めるピッチング(複数の広告会社によるプレゼンテーション)の話題になったのですが、その準備のために田舎にお家を買える位のお金がかかったらしいのです。もちろん、その広告主の仕事が獲れれば年間数十億円の売上になるわけですから、投資と言うか開発費みたいなものです。その代わり、その広告主の仕事がよその広告会社に持って行かれれば、プレゼンテーションに費やしたお金は無駄になってしまうわけです。広告会社がピッチングの準備のためにかける費用の大半は、外部の著名なクリエイターやブランディングなどのコンサルタントやアドバイスをしてくれる"先生"やそうした会社に支払われます。特に大きなピッチングの場合、広告会社内部だけでは智恵も足りないし、広告主企業に対するインパクトも小さいので、外部の"先生"などを担ぎ出して共同作業で準備をしたりします。私が駆け出しの頃は、コピーライターが持てはやされていて、広告会社による"取り合い合戦"が繰り広げられたりしていましたが、いまは実績あるクリエイターが独立してつくったクリエイティブ・エージェンシーとかブランド・コンサルタントなどの協力を得て(実質的には、ほとんどの準備作業をこうしたところで行い、広告会社はちょっかい出すくらいの場合もあるのですが)、プレゼンテーションの準備を行うわけです。そして、こうした会社や"先生"個人に支払う報酬がプレゼンテーション準備費用の大半を占めたりるすのです。日本で大きなピッチングがあると、D-H-Aという広告会社上位3社はたいてい参加します。以前なら、プランやアイディアが採用されなくとも、ピッチングに参加すると"参加賞"として、メディア扱いの一部を分けてもらえたりしていたものですが、最近はピッチングで選ばれた1社だけに、すべての業務を依頼する傾向が強くなりました。ですから、ピッチングで敗北し広告を受注できなかった広告会社は、プレゼンテーションの準備費用を回収できません。そして、自分が準備に協力した(或いはアイディアや戦略を提供した)広告会社がピッチングに敗れたとしても、クリエイティブ・エージェンーやブランド・コンサルタントなどの"先生"は広告会社に請求書を突きつけて、多額の報酬を得る場合がほとんどです。つまり、自分(たち)のクリエイティブのアイディアやブランド/マーケティングのストラトジーが広告主に採用されようがされまいが、多くの"先生"たちはしっかりと報酬をゲットするのです(もちろん、採用された場合のほうが大きなビジネスになるわけですが....)。日本でも"成果主義"が徐々に浸透してきました。企業の人件費カットなどに悪用されるケースも多々ありますが、よい結果を出せば良い報酬が得られる、と言うのは人類のモチベーションに欠かせない鉄則でもあります。中国のセールス職は100%歩合制だったりします。ネット・メディアの台頭によって、広告効果が明確になり、広告やブランディングの世界でも"成果主義"が潮流になってきました。かつては、15秒CM1本いくら、と言う丼勘定が、視聴率1%を獲得するのにいくら、と言う取引になり、バナー広告を1回見てもらったらいくら(Cost Per View)からバナー広告をクリックして自社サイトまで誘導してくれたらいくら(Cost Per Click)に進化し、更にはネット上の広告からモノがいくら売れたらいくら(Cost Per Acquisition)と言う料金制度が浸透しているわけです。この「楽天広場」のアフィリエイトにしても、ブログをみてもらっただけでは一銭にもならず、商品やサービスを購入してもらって初めてポイントになるんですよね.....。欧米の広告主はもともと広告効果にシビアでした。効果的にメディア予算を配分するためにメディア・プランが進化しました。成果のあがらないメディアには広告が寄り付きません。クリエイティブ(広告表現)もそうです。これはネット・メディアで明確に数値化されます。同じ広告主が同じポータルサイトの同じポジションに同じサイズのバナー広告を掲出しても、広告表現が異なればクリックされる回数も違います。そして、そのデータはリアルタイムで確認できるのです。ですから、ネット系広告の人たちはクリエイターも含めて成果に敏感なのです。成果のあがらない広告ではお金が稼げないのですから.....。そのいっぽうで、トラディッショナルな広告業界で活躍し"先生"と呼ばれるようになった一部のクリエイターの人たちは、自身のアイディアが広告成果を上げるどころか、広告主から採用されず、世にも出ることも無いアイディアであっても、けっこうな報酬をもらっているわけです。大手広告会社が弱小クリエイティブ会社のリスクを肩代わりする、と言う昔ながらの商習慣が、いまもなお引き継がれているのも事実でしょう。こうした一方で、実力や機会に恵まれず貧乏生活を余儀なくされているクリエイターもいらっしゃるわけで、ある意味で"成果主義"の弊害なのかも知れません。けれども、日本の広告やクリエイティブ、ブランディングをリードするような"先生"たちまで、こんな甘い条件でピッチングに取り組んでいるのだとすると、先行きが暗い気持ちになってしまいました。既にがっぽり儲けたんだから、大きなピッチングに参加するときくらい、ハングリーな精神で取り組んでほしい、と思ってしまいました。広告は成果があがってナンボでしょう。
2007.04.25
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香港などを除く中国本土の企業として初めて(香港系資本と経営陣が上海に設立した新華ファイナンスが2004年に上場していますが)日本の株式市場に上場を果たす『アジア・メディア・カンパニー・リミテッド』。"ケーブルテレビ関連事業を手掛ける"などと2007年3月22日付けNIKKEI NETでは紹介していますが、実態は広告会社です。しかも、上場するアジア・メディアと言う会社は中国本土には存在しません。イギリス領バミューダで登記された持ち株会社なのです。これは主として中国の外資規制や海外市場上場障壁をクリアするために用いられるストラクチャーで、NASDAQに上場している百度(BAIDU)も新浪網(SINA.com)も分衆伝媒(Focus Media)も、中国の事業会社がIPOしたのではなく、イギリス領ヴァージン諸島やケイマン諸島などに登記されている持ち株会社が上場したのです。持ち株会社『アジア・メディア』傘下の事業会社には、地方CATV局の番組ガイド(の広告)を扱う『北京寛視網路技術有限公司』(以下『寛視ネット』)、BTV(北京電視台)などの広告枠を扱う『北京寛視神州広告有限公司』(以下『神州広告』)、そしてソフトウェアの開発や販売を行うことになっている『北京寛視軟件技術有限公司』(以下『寛視ソフト』)があります。2006年の『アジア・メディア』の連結売上は約34億円(2.2億RMB)で、純利益は8億6,000万円(5,500万RMB)、利益率は25%となかなか高収益ではありますが、『神州広告』によるテレビ広告レップの比率が約60%とダントツなのです。自社サイトでは、「中国におけるメディア・プラットホームを越えたテレビプログラム・ガイドソリューションとサービスの提供の先導者であります。」などと、地方CATVの番組ガイドや映画のテレビ局への配信などの事業を強調してはいますが、実態は広告会社(メディア・レップ)なのです。『アジア・メディア』の売上の6割を稼ぎ出しているのは『神州広告』ですが、実は『アジア・メディア』の子会社ではありません。『アジア・メディア』のCEOである崔建平さんが100%出資する中国独資企業なのです。『アジア・メディア』は自身のCEOであり『神州広告』の出資者でもある崔建平さんと出資持分質権設定契約や独占買取権契約などを結ぶことによって、『神州広告』を実質100%支配の会社として連結決算に取り込んでいるのです。なぜ、そんな面倒なストラクチャーになったのでしょう?まず第一に海外市場でのIPOを前提としたために親会社をイギリス領バミューダに置かなければならなかったこと、第二に最も"稼ぎ出す"業務セグメントが広告ライセンスを必要であったこと、第三に広告ライセンスは100%外資でも受けられるのですが、出資する外国の親会社がに3年以上の広告業務の実績を必要とすること、などの条件が重なったからでしょう。ですから、『神州広告』を設立する必要に迫られた際に、持ち株会社である『アジア・メディア』からの直接投資にすることができず、また広告業務の実績が無い"外資企業"扱いの『寛視ネット』や『寛視ソフト』の子会社にすることもできなかったのでしょう。『アジア・メディア』の"中核会社"とも言える『神州広告』が『アジア・メディア』と直接的な資本関係が無いという事実は、日本の投資家に少なからぬ不安を与えることになるでしょう。公募予想金額が600円~650円に対し、初値予想も600~640円(鉄拳制裁!IPO!! 萌えろ!初値予想!!IPOはノーリスク・ハイリターンといわれる…など)。ブックビルディングで当選しても、エースを引き当てた、と言う感動が得られるかは疑問と言えるでしょう。とは言え2007年の業績予測は、売上が前年比2.1倍、純利益も1.9倍の15億5,000円とのことなので、中国企業のIPO独特のストラクチャー・リスクを無視すれば、なかなかの成長株とも言えそうです。現にIPOにより調達を見込んでいる資金は約14億円(1億RMB弱)で、これを元手にプレペイメント(前払い)で優良なメディアの広告枠を仕入れることができれば、売上や利益が倍増するのも絵空事ではありません。『アジア・メディア』の株式のうち6.71%を電通(の関連会社)が持っています(NTTドコモも少し)。今回のIPOで60万株を放出するので3億6,000万円のキャッシュを手に入れることになります。まぁ、もっと多く注ぎこんでいたとは思いますが....。
2007.04.15
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NIKKEI NETの『中国ビジネス特集』に富士通総研の金堅敏さんという上席主任研究員のインタビュー記事が掲載されていました。タイトルは、「日本企業が中国でつまずく4つのポイント」。金さんのご意見の多くに、私は共感を得ました。まず日本企業の中国ビジネスは、自動車、デジカメ、コピー機を除くほとんどの分野で、うまく行っていない、との認識。このニュースサイトの主である日本経済新聞社やNHKをはじめ、多くのメジャーな日本のマスメディアが、中国市場における日本の活躍を伝えています。そのほとんどは、提灯記事或いは広告取引などメディアへの便宜供与と引き換えに伝えられたものと言っても言い過ぎではないでしょう。中国でつまずいている企業については、週刊誌などのマイナーなメディアが、やや大袈裟に伝えたりしています。こちらも、広告予算の少ない企業を対象としているか、或いはあまり広告収入に依存していないメディアによるものか、或いは根っからの中国嫌いのジャーナリストの手によるものか、いずれかが多い感じでしょう。大手企業が中国ビジネスで失敗したことを、教訓を込めてでも報道しているメジャーなメディアはほとんど無いでしょう(これも伏線)。金さんは、日本企業が"つまずく"ポイントとして4つ挙げているいますが、その一つめは製品やサービスを投入するポイントが遅れていること。つまり中国のマーケットの分析ができていない結果です。二つめは人材登用の問題、三つめは経営状況の本社との共有ができていないことで、四つめに挙げたのはPRや政府との関係作りが遅れていることです。つまり、コンシューマとのコミュニケーションが不足している、とも言えるわけです。現地調査に基づく、日中米企業の競争優位性によると、日本企業は製造技術や生産・品質管理での評価は高いようですが、ブランド力やマーケティング力での評価は低いのです。総合評価でもアメリカ系、ヨーロッパ系企業に大きく水をあけられ、第3位に甘んじていると言う状況です。ステキな技術や完璧とも言える品質管理のノウハウがあって、少し中国向けに作り変えれば、中国でも大儲けできるような製品やサービスを持っていたにも拘らず、マーケットを読み違えたばかりに、出し惜しみしてしまい商機を逸してしまった、と言う構造が見えてきます。もちろん、流通など様々な障壁があることも確かですが、中国のコンシューマの動向を予測できなかったこと、心を掴むようなコミュニケーションができていなかったことが、"つまずき"の大きな要因であったことは確かです。中国人の有能なマネージメントに委ねれば、こんなことにはならなかったかも知れません。でも、多くの日本企業はやすやすと中国人に会社を委ねたりはしない体質です(いや日本人であっても、社長やCEOの権限すら怪しいものです)。そうした状況において、マーケットの動向を予測し、マーケティングの提案をし、中国のコンシューマとの良好なタッチング・ポイント(接点)を創出するお手伝いをするのが、日本が誇る巨大広告会社であったりするはずなのです。ところが、電通(等)日本が誇る巨大広告会社って案外"内弁慶外味噌"だったりして、日本ではヤバいニュースを握りつぶすくらいのパワーを持っていても、海外ではそうでも無かったりします。唯一、日本の優良ブランドがクライアントとして着いて来てくれていることが強みでしょう。ですから中国など異邦の地において、政府やコンシューマとのリレーション・シップづくりに期待しても、日本のようにはうまく行かないのです。しかも、金さんがインタビューで指摘した"つまずく"日本企業の典型のように、主要人材はすべて日本から送り込まれてくるワケです。中国のマーケットとコンシューマにコミュニケーションしていかなければならないお仕事なのに.....。その反面、欧米系のいわゆる"メガ・エージェンシー"は、早くからローカル・マネジメントに取組み、中国マーケットに関するノウハウを蓄積していました。マーケットとしての中国が注目され始めた1990年代後半から数年前くらいまで、中国でモノやサービスを提供し始めた日本企業のほとんどは、中国でも電通(等)を頼りにしていたのです。そして、いくつかのメジャー・ブランドはひっそりと中国マーケットから撤退し、いくつかのメジャー・ブランドは欧米系の"メガ・エージェンシー"とともに再起を目指し、そして世界規模で電通と寝起きを共にすることを余儀なくされているいくつかのメガ・ブランドだけが、以前と比べると当然パワーアップした電通をパートナーとして中国のマーケットに挑んでいる、いまはそんな状況でしょう。もちろん、電通(等)を選んだ日本企業にこそ"つまずき"の最大の原因があるのでしょうが、電通(等)を選ぶのは海外旅行傷害保険に加入するようなもので、つまずいたとしても、社内的な責任は問われないですし、そのうえ、日本のマスメディアも報道も抑えてもらえるので、株価にもさほどひびかず、経営陣も泥をかぶらずに済んだのかもしれません。試しに、Googleで"携帯電話 中国 撤退"と検索してみてください。ウェブ検索ですと幾つかのニューサイトやブログ具体的なブランド入りで表示されますが、ニュース検索ですと本エントリーで取り上げたNIKKEI NETの記事くらいしか表示されないでしょう....。日本経済発展のため、中国ビジネスの失敗情報についても、積極的に報道してほしいものです。
2007.04.11
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2007年4月4日にGoogle(中国)は中国語の入力システム「Googleピンイン」を発表しました(Nikkei BP Net)。中国語入力システムは、日本語同様Microsoftが無料で提供しています。でも、あまり入力効率が良く無いようなので、別な入力システムを利用している方も多いようです。日本のATOKにあたるような有料の製品版としてはUNIS(清華紫光)があります。ほかにも、部首入力に似たウービー(五筆)のようなピンイン(日本語のローマ字入力のようなもの)以外の入力システムなど、ネット上で無料でダウンロードできるようなものもたくさんあります。フリーの中国語入力システムの中で人気が高いのが、捜狗輸入法(SOGOU Input System)です。これは、中国の老舗ポータルサイト「捜狐(SOHU)」の検索サイトである捜狗(SOGOU)が開発したもので、もちろんだれもが無料で利用できます。残念ながら日本語OSには対応しておらず(英語OS対応版はあります)、私は利用したことが無いのですが、自社調査によると単語変換の正確さはMicrosoft Pinyin IM 2007より25%も高いそうです。きっと、辞書がいいんだろうなぁ、と素人ながらにも思ったりしていました。こうした中、"言葉の魔術師"Googleが中国語入力システムを発表したと言うことで、中国でも期待が大きかったと思います。ところが......「Googleピンイン」の辞書データベースが盗用だったことが明らかになったそうです(CNET Japan)。しかも、こともあろうかGoogleがライバル視していたであろう捜狗輸入法(SOGOU Input System)からパクった、というから驚きです。Google自身も自社ブログで、4月4日の1st リリースには実験段階で使っていたGoogleのモノではないデータベースが含まれていたことを認め、ユーザーと捜狐(SOHU)に対するお詫びの意を表わしました。しかし、4月8日正午にリリースしたVer.1.0.17.0からは、Google独自で開発した辞書データベースを使用している、と表明したのです。これに対して、捜狐(SOHU)側は4月8日のバージョンも、変換一致率が80%近い。許容範囲は4割くらいだ~、最新バージョンもこ盗用だろう、と言っているそうです。ちなみに、百度(Baidu)とGoogle中国では検索結果が大きく異なります。最初のページの一致度は平均30%くらいでしょう。もちろん、SEOの効果に拠るところもありますが.....。さて、Googleが組織的・意図的に捜狗輸入法(SOGOU Input System)の辞書データベースをパクっのかは、疑問が残ります。個人的にはそうでないと信じたい気持ちです。ただGoogle自身も認めるように、1stリリースで捜狗(SOGOU)のデータベースが使われていたのは事実です。開発過程でダミーのように使っていた他社の辞書が、たとえ"試供品"とはいえ公にリリースされてしまうことなどあり得るでしょうか?担当者レベルの単純なミスだとしても、Googleの管理体制は非難されるべきでしょう。或いは、Googleですら、中国でビジネスをしているとパクり体質になってしまうのでしょうか?当然ソフトウェアも含まれる知的財産侵害でアメリカが中国をWTOに提訴したばかりだというのに(東京新聞)、こともあろうに今やそのアメリカを代表する企業とも言えるGoogleが中国企業の知的財産をパクるなんて....。Googleには、納得のいく事実の説明をお願いしたいものです。
2007.04.10
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中国のトップ携帯電話キャリアであるチャイナモバイル(中国移動)が2006年の業績を発表していました(自社サイト。それによると、純利益は660億RMB、日本円にするとほぼ1兆円だそうです。ニューヨーク市場に上場しているくらいだから、粉飾しているとも思えません。日本が誇る最優良企業と言われているトヨタ自動車の06年3月期の当期利益が1兆3,700億円でしたから、中国国内でしか稼いでいない企業としては、破格の収益率と言えるでしょう。ちなみに日本のトップ携帯キャリアであるNTTドコモは6,100億円(06年3月期)くらいなものです。まぁ日本では9,500万くらいの契約の取り合いで一喜一憂する状況ですが、チャイナモバイルの契約者数は既に3億を越えているのです。しかも、13億人すべてがケータイを持てるような環境にあるわけでは無いのですが、それでもあと2億か3億くらいのマーケットは残っています。毎月のARPU(1契約あたりの平均収入)は90RMB(約1,350円)ってところで、日本と比べたらかなり低いのですが、それでも3億を掛けると、270億RMB(約4,000億円)ものキャッシュが毎月毎月入ってくるのです。もちろん広い中国ですから、設備投資にも莫大なお金がかかりはしますが、中国ビジネスのウマミである"数の論理"が活かされていると言えるでしょう。チャイナモバイル・ユーザーの1%が月5RMB(約75円)のコンテンツを買ってくれれば、毎月1,500万RMB(約2億3,000万円)の収入になるわけで、日本のモバイル・コンテンツ屋さんもいろいろ頑張っているようですが、そこは中国、そう簡単にはよその国に分け前を譲ったりしてくれていないようです。さて、チャイナモバイルがドコモだとすると、auみたいな存在がチャイナユニコム(中国聯通)です。こちらもマーケットの拡大に乗じてある程度契約数を伸ばしてはいるのですが、都市部に特化したCDMAネットワーク構築が祟ってしまい、これからも成長が望めるはずの農村部ではチャイナモバイルに水を空けられる格好になっている様子です。チャイナモバイルの"一人勝ち"状態を逆手にとって(?)、胡散臭さが増しているのが3Gライセンス問題(参考:中国情報局)。来年8月の北京オリンピックのときには、3Gサービスが始まっていないと、ちょっとメンツが立たないかも知れない中華的事情もあるのですが、もう一つの中華的メンツであるTD-SCDMAという中国独自の規格(とは言っても、その技術の多くは欧米頼みらしいのですが)の"なすりあい"がキャリア間で繰り広げられているのです。中華的ご自慢の規格ならば率先して導入すると手を挙げればいいのに、どのキャリアも実用実験にすら消極的な状況でした。誰もババを引きたくないくらい、TD-SCDMAは怪しげなのでしょう。そんな中、TD-SCDMAの導入に二の足を踏んでいるモバイル・キャリアに脅しをかけるように、固定電話中心のキャリアであるチャイナテレコム(中国電信)にTD-SCDMAによる3Gライセンスをプレゼントしちゃおうみたいな話まであったようで、この際だからチャイナユニコムと合併すればぁ、みたいな、政府当局によるキャリア再編指導まで疑われるようになりました。モバイルに参入したいチャイナテレコム、このままでは泡沫キャリアになりかねないチャイナユニコムをうまく脅しつつ、王様であるチャイナモバイルにさっさと中国が誇るTD-SCDMAを導入してもらいたい、と言うのがきっと政府当局の本音であるわけで、年間10兆円もの純利益を出しているのなら、少しくらいコケてみるのも良いのではないか、と私としては思ったりもしています。
2007.04.01
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私はいわゆる"大手広告代理店"で長い間働き、この約9年間、中国・北京の現地法人の経営管理者をしていました。思うところがあって、この2月、デジタル・マーケティングなどを展開する"今風な"日本の会社に転職し、中国を中心とするアジアの事業展開を担当することになりました。いま取り組んでいるのは、中国におけるネット広告事業の立ち上げ。事業の立ち上げと言っても、スピード感を重視する"今風"の会社では、当然のことながら、既にうまく行っている、或いはこれからきっとうまく行きそうな会社への出資やM&Aと言う手法が優先されるわけです。1997年、私が北京に赴任したとき、現地法人は合弁会社として立ち上がったばかりでした。事業が軌道に乗るまで5年ほどかかり、私が帰任すると事業方針が見直しされることになりました。10年前に逆戻り、といった感じでしょう。新しい会社ではまず、ローカルの大手ネット広告会社に出資し、様子を見ながら出資比率を引き上げて子会社化し、最終的にはIPOを目指す、と言うストーリーを描いています。3年後の数値目標が明確に決められているにです。日本では、ネット系広告会社に対し、総合的な(オールドファッションな)広告会社を"リアル系"などと呼ぶことがあります。取り扱うメディアがネット上の"バーチャル"でものではなく、テレビや新聞・雑誌など"リアル"なもの中心だからでしょうが、幾ばくかのレスペクトを込めた言い方でもあり、その背景には電通に代表されるオールドファッションな広告会社が日本そのものを動かしている、と言う畏怖の念すらあるように思えます。いっぽう、中国では(欧米でも以前はそうであったように)総合的な(オールドファッションな)広告会社を"トラディッショナル"つまり"伝統的"といいます。中国や欧米ではネット系のメディアはテレビや新聞、雑誌などの"リアル系"メディアとほぼ横並びに捉えられており、単純に出自の順序から既存メディアを"トラディッショナル"と読んでいるに過ぎないのです。現に欧米のエージェンシー(広告会社)内部には、"リアル"と"バーチャル"のメディアに競争関係は原則として存在しないのです。これに対して、日本では"バーチャル"は"リアル"の下請け的ポジションに置かれている状況なのです。私としては、"リアル"とか"バーチャル"という区別に意味を感じず、最新のデジタル・テクノロジーを有効活用したマーケティング・サービスが目指せれば良いと考えているので、新聞やテレビの広告扱いから始まった日本の広告会社を"オールドファッション"、インターネットなどデジタル・テクノロジーの利用から始まった日本の広告会社(マーケティング・サービス会社)を"今風"と呼ぶことにしています。当然、様々な違いに驚かされるのですが、中国でのビジネス展開についても、考え方が大きく異なっています。日本の"オールドファッションな"広告会社と"今風な"広告会社の中国展開への取り組み方の違いを、私風に列挙してみたいと思います。"オールドファッションな"広告会社 ・政府系コネの力に過信 ・売上規模重視 ・現地法人の単体業績重視 ・日本のクライアントの受け皿機能を重視 ・本社からの経営陣の送り込み ・本社からの直接投資が基本 ・本社からのサポート費用に原価意識が欠如 ・単独展開(日本本社のブランドに依存) ・年寄りが多い(中国関連部門で私が一番年下でした!!)"今風な"広告会社 ・投資先の経営者(創業者)の能力に期待 ・最終利益重視 ・本社連結決算への影響重視 ・中国でのクライアント・リソースのマルチ展開を目指す ・現地経営陣の温存 ・タクスヘブンに合弁会社を設立し、間接的に投資(将来のIPOや売却を想定) ・本社からのサポート費用は現地法人の原価として明確に計上 ・マルチ展開(複数の現地企業に投資) ・若い(海外関連部門で私が一番年寄りになりましたぁ....)ほかにも挙げるとキリが無いのですが、どちらが良い方法なのかは、いまのところ判断できません。"オールドファッションな"会社は、会社としての判断が下るまで時間がかかり、"今風な"会社は速い、などとよく言われますが、これは会社の規模や組織づくりの違いに拠るところが多いのではないでしょうか?ただ、"今風な"会社は経営層から平社員までコスト意識が徹底されている感じがします。海外出張のとき、"オールドファッションな"会社では若造社員が平気でビジネス・クラスを使っていたりしましたが、"今風な"会社では経営者でも格安チケットを使ったりしています。もちろん、この状況は会社によって異なると思いますが、投資先企業に利益改善の指導を行う立場の会社として、当然の態度だとも言えるでしょう。
2007.03.17
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以前、エレベータ広告屋としてこちらのブログでも取り上げたことのあるFOCUS MEDIA(分衆媒伝)という、自社で設置した液晶モニタで広告を流す、スクリーン広告を手掛ける中国の広告会社が、中国最大のインターネット広告会社であるAllyes(好耶)を2.25億USドル(約300億円)で買収したそうです(eNet.com.cnほか)。2006年の中国のネット広告市場は60億RMB(約900億円=iResearch発表)くらいで、Allyes(好耶)は5億RMB(約75億円)ほどの売上があったと考えられ、売上高では中国トップのネット広告会社です。ちなみに、日本のネット広告市場はモバイルも含めて3,630億円(電通発表)。ネット広告会社トップのサイバーエージェントの06年の売上は250億円くらい(同社公開資料より)、時価総額は720億円くらいです。中国のネット広告市場は、日本の5分の1以下、トップ広告会社の売上は3分の1以下にも拘らず、買収価格(時価総額)は2分の1ちょっと、ということになります。とは言えインターネット広告の伸び率は、日本が30%程度なのに対し、中国は50%くらいですし、広告取引に電通や博報堂のような"オールド・エージェンシー"が介在することが少ない中国では、ネット広告会社の収益性も高いので、300億円のお買い物は、決して割高とは言えないでしょう。AllyesはアメリカのIT情報企業IDCのVC会社とNASDAQへのIPOを目指していたのですが、一足先に上場を果たしたFOCUS MEDIAからの買収を選んだわけです。IDCは7,500万USドル(約90億円)ものキャッシュを手に入れたことになります。これまでのFOCUS MEDIAは、どちらかと言うとロウ・テクでした。スクリーン広告で流す映像も、ネットワークで配信するのではなく、広告映像の入ったDVDを自転車に乗ったお兄ちゃんが一箇所ずつ取り替えて回る、といったものでした。メディアとして競合するためか、インターネット広告事業も泣かず飛ばず、といった感じだったのです。いっぽう、FOCUS MEDIAの最大の強みは、数多くのクライアントを抱えているということ。しかも、オフィスビルのエレベータホール前や高級量販店の店内に設置されているスクリーン広告のターゲットはインターネット広告のターゲットと一致していて、コラボレーション効果も高いと思われます。テレビ広告なんかで"無駄打ち"しなくとも、スクリーン広告からのネット誘導が可能ですから、広告主にとってもコストパフォーマンスの良いメディア・ミックスをワンストップで行えるようになるかもしれません。
2007.03.04
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"百度(Baidu)"は、中国大陸における検索サイトで約2/3という圧倒的なシェアを誇っています。いまのところ、GoogleもYahoo!も太刀打ちできません。国家権力から管理されるのはまだ許せるが、Googleみたいな"アメ公野郎"にあらゆる情報の支配をされることには耐えられないのという、中国人民の愛国心とか民族意識も少しは働いているのかもしれませんが、やはり便利だから支持されている、と言う側面が大きいのではないかと思います。キーワード検索だけではなく、ほとんどパクリとも言える様々なサービスにより、ポータル化を推進しているのです。例えば、Wikipediaみたいな"百度百科"、ブログサービス"百度空間"、「はてな」みたいな人力検索の"百度知道"、ソーシャル・ブックマークの"百度捜蔵"、Google Mapそっくりの"百度地図"、Gyaoみたいな"百度下?"、「2チャンネル」みたいなBBS"百度貼?"。もちろんGoogle同様にイメージ、ニュースの検索もあります。最近はYouTubeそっくりの動画検索"百度視頻捜索"まで始めてしまいました。これらのサービスの多くは、モバイルにも対応しています。中国ビジネスに関わる日本人にとって便利なのは、"百度法律捜索"。中央や政府の法律や規定などを、百度独自でデータベース化しています。個人的に重宝しているのは、"百度国学"。中国の古い書物を独自に電子化して、表示してくれるサービスです。『論語』も『西遊記』も『水滸伝』も全文を入手することができます。さて、こうした"百度"のサービス・メニューの中でも特に人気が高く、中国っぽいのが、"百度MP3"という音楽ファイル検索サービスです。楽曲名や歌い手からダイレクトに音楽ファイルを、直リンクでリストアップしてくれます。MP3ファイルだけではなく、歌詞やミュージック・クリップのFlashファイルまで教えてくれます。中国では当然のことながら、リンク先の多くが知的所有権を無視した違法サイトだったので、2005年9月の段階で、外資系の大手レコード会社が訴訟を起こしました。当初はレコード会社に有利とみられましたが、2006年末になって、一部の地方法院(裁判所)で百度側に有利な判断が示されました。そして2007年1月16日、原告の1社であったイギリス資本の大手レコード会社であるEMIは、百度と共同でプレスコンファレンスを開き、両者の提携を発表したのでした(MyComジャーナル/1月22日付け)。これは百度とEMIの和解、実質的には百度の勝利と言えるでしょう。で、どのような提携をするのかというと、百度は百度のサイト内にEMIミュージック・コーナーを設置し、その中でEMIグループの中国系アーティストの音楽を無料で試聴できるようになる、というものです。ただし、このサイトでは広告が表示されるとのこと。恐らく、簡単にはダウンロードできないようにして、広告収入が試聴料とバーターになるというプロモーションのスキームなのでしょう。結局のところ、百度の影響力にEMIが屈したということになるのではないでしょうか。ただ、今回の"和解"はYouTubeなど動画・音楽などのポータル・サイトに違法投稿され続けているコンテンツ・ホルダーに少なからぬ影響を与えるのではないかとも期待しています。違法なファイルのアップロード、それに対するライツ・ホルダーの削除要求、と言ういたちごっこから脱却したいと考えるなら、ライツ・ホルダーがプロモーションの一環として、YouTubeなどに合法的にコンテンツを提供するのも、一つの解決策でもあるはずです。この際だから日本のテレビ局も、広告付きで構わないのでYouTubeなどに自らのコンテンツの一部を積極的にアップロードしてみてはいかがでしょう。たくさんではないにせよ広告収入もあるでしょうし、番組宣伝やDVD化へのプロモーションにもなるのではないでしょうか?百度、本日の時価総額は、EMI(19億ポンド)とほぼ同じ38億ドル(約4,700億円=日テレとも同レベル)。
2007.02.15
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北京で中国人の知人が起こした会社を訪ねました。0歳から6歳までの乳幼児の両親をターゲットとするマーケティングとコミュニケーションの会社とでも言いましょうか。アウトプットとしては、ヴァイラル(クチコミ情報)をメインとしたポータルサイト、雑誌、ペイテレビ・チャンネルなどによって、ママやパパと子育て関係の商品やサービスを提供する企業との間に情報を流通させるというビジネスです。中国には6歳までの乳幼児が1億人近くいます。このうち約20%、2,000万人が貧困農村部以外に住んでいるそうです。そのうちの1割を顧客として取り組めれば200万人(世帯)。ペイテレビの視聴料を月10RMB(150円)として年間で120RMB、200万世帯なら2,400万RMB(約3億6,000万円)の収入になります。達成率3割とし、さらに広告収入や雑誌販売などの収入を控えめに見積もって、年間1億円ちょっとの収入があればペイできる、と言う比較的謙虚なビジネス・プランで進めているそうです。ご存知の通り、中国では"一人っ子政策"が続いていて、都市部の大部分の家庭では子どもを一人しか持てません。おのずと子どもにかける期待が大きく、期待に比例して子育てにかけるお金も大きくなります。0歳から6歳の子どもを持つ大都市の夫婦は1ヶ月あたり800RMB(約1万2,000円)以上費やしています。10RMBや20RMBくらいであれば、子育て情報に費やするのは惜しくないはず。雑誌などは既に出尽くした感じですが、ウェブやペイテレビ・チャンネルは発展途上の市場と言え、いいところに目をつけたなぁ、と言う感じです。オフィスを訪れて驚いたのは、こうしたサービスをすべてインハウス(自社内)で完結しようという姿勢です。つまり、アウトソーシングを一切考えていないのです。エディター(編集者)、記者、デザイナーはもちろんのこと、カメラマンや映像編集者、番組のディレクター、パーソナリティに至るまで、すべて自社で抱えているのです。設備も、ウェブやDTPの編集で使うパソコンはもちろんのこと、テレビカメラ、ライティング、スタジオまで、すべて一つのオフィスに収まっています。つまり、ポータルサイトもペイテレビの番組も雑誌もすべてワン・オフィスで完成してしまうのです(雑誌の印刷などはアウトソーシングしますが)。確かに、ビークルは違っても、情報の内容はウェブ、テレビ、雑誌ともほぼ同じはずです。昔と違って、1台のパソコンでウェブの制作もテレビ映像の編集も雑誌の編集もできちゃうのです。つまり、ウェブ制作事業もテレビ番組制作事業も雑誌編集事業も設備が共有できるということ。コンテンツ(行き交うデータ)は皆子育てに関するものですし。日本をはじめ欧米など多くの企業では、アウトソーシングを活用し、自社はコンパクトにするという経営が主流です。自社内で完結しようとすれば、多くの設備が必要になりますし、多くのスタッフを抱えることにもなります。商売がうまく行っている間は、コスト削減にも繋がるでしょうが、商売を縮小する必要が生じた場合、身動きが取れなくなってしまいます。固定資産が大きくなり、その償却のため利益が削られますし、余剰スタッフにも人件費がかかります。専門的な業務であればあるほど、スタッフの配置転換も難しくなります。こうしたリスクを回避するために、多くの企業はアウトソーシングします。ですから、工場を持たないメーカーやウェブ・デザイナーのいないウェブ制作会社などが存在します。日本の広告会社でテレビCMを作っていると思ったら大間違いです。アウトソーシングを重視する経営姿勢は株価向上のため、とも言われます。固定資産を小さく抑えることができ、豊富なキャッシュフローが生み出され、四半期や一年といった短いスパンで経営を管理し易いわけですから、EVA(Economic value added:投資した資本に対し一定の期間でどれだけのリターンを生み出すか)を重視する投資家にとっては魅力的な方向と言えるでしょう。経営者の知人に問い質してみると、中国の場合、サービス業を含むソフト系産業では、インハウス(自社完結型)のほうが有利だと考えているようです。いろいろ話したのですが、彼女の意見をまとめると、中国における固定資産と現金と人件費の関係にあるようです。中国では企業価値というと未だに固定資産を重視する傾向にあるとのこと。債権回収がシステマティックに行われていない中国においては、売掛金や買掛金といった帳簿上の資産や負債よりも、現金化可能な固定資産のほうが重視されているので、資本を固定資産化することを投資家は歓迎するそうです。ま、独自の技術だとか知的財産などが未だに価値として認められていないようなこの国ならではの事情かなぁ、と思います。次に、設備投資と比較して人材投資が圧倒的に安く済むということ。しかも、とりわけソフト系産業においては人材流動性が激しく、人件費を固定費として考える必要が無いということ。事業規模を縮小したときの社員削減コストも少なくて済みます。むしろ、成長性の無い会社なら自主的にスタッフが去っていきます。ですから中長期的にみれば、労働集約型のソフト系産業の場合、アウトソーシングに出さないでインハウスで行ったほうが圧倒的に有利、というのが彼女の主張でした。私としては納得できるような納得できないような感じですが、確かに知人の起こした会社は、複数の事業で設備やスタッフを共有できるフレームワークになっていて効率的です。しかも、オフィスのロビーがテレビ番組用スタジオと兼用になっていて、運転手さんが収録の音声スタッフ(マイク持ち)をやったりしていました(写真)。それでも、いきなり100人近いスタッフを抱え、この先大丈夫なのかなぁ、と心配もしつつ、日本の企業に居てはなかなか発想にこぎつけない、"自社完結主義"を応援したいと思っています。
2007.01.19
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久々の北京で中国中央電視台(CCTV)の5チャンネル(スポーツ専門チャンネル)のスポーツニュースをぼーっと視ていたのですが、驚いたことに、本編からCMに入る前のフィラー(次のコーナーの紹介を兼ねた画面)の右下に、「この後のCMは1分09秒です」と言うテロップが入っていました。中国のテレビ放送のCMブレイクは日本と比べると一般にかなり長めです。3分のときもありますし、15分のときもあります。CCTVの主要チャンネルや主要都市テレビ局のメイン・チャンネルのゴールデンタイムであれば、著名ブランドの見栄えのするCMもたくさん流れますが、そうでないチャンネルや時間帯では、ローカルの健康食品やダイエット器具、下半身系の薬品の下品っぽいCMがこれでもかこれでもかと続き、時には10分や15分のテレビショッピング番組が突然始まったりするので、多くの視聴者には評判がよろしくありません。ゴールデンタイムであったも、15分間のCMブレイクの間に、視聴率はCM開始直前の10分の1まで下がってしまうことがあるのです。CMブレイクはまさにトイレタイムかザッピングの時間になっているわけです。こうした状況の中で、視聴者にCMブレイクの時間をお知らせすることは、「トイレに行ったり他のチャンネルをつまみ視するのはいまのうちだよ、その代わりCMが明けたら、このチャンネルに戻ってきてね」と言っているようなものです(と広告に従事している人々は思ってしまうのではないでしょうか)。広告主や広告会社は怒ったりしないのでしょうか??(番組と番組の間のCMブレイクの大体の長さについては事前に表示するテレビ局は以前からありました)日本のテレビのCMブレイクは中国ほど長くありませんし、視聴者側でもある程度、時間が読めるようになっています。番組の中だったら60秒か90秒、番組と番組の間であっても3分間CMが続くことはほとんど無いということを、日本の視聴者は体験的に知っているように思えます。それでも、クライマックス直前でCMが入ってしまうドラマやバラエティー番組などで、次のCMブレイクが60秒なのか90秒なのかCM前にお知らせしてくれたら、視聴者にとってはかなり便利ではないでしょうか。60秒だったらお風呂のお湯を張りに行くとか、90秒だったらちょっとした洗い物を済ませてしまうとかできるわけです。久米宏さんが『ニュースステーション』をやっていた頃、「この後60秒CM行きます」などと頻繁に言っていました。視聴者にはちょっと便利かもしれませんが、広告主や広告会社にとってはありがたくない話です。CMブレイクが一定の長さではなく、しかも長めの中国のテレビ視聴者にとって、「この後のCMは○分○○秒です」と言う情報はたいへん便利だと思います。CCTV5チャンネルが、視聴者の利便のために行っているとすれば、たいしたものだと思います。テレビの広告メディアとしての価値は、こうしてどんどん小さくなっていくのでしょうか....?後日談。CCTV関係者にこの件を尋ねてみると、視聴者にCMを楽しく視てもらう為にこうしたらしい。「次のコーナーは60秒後です」って言い方なら、その間のCMブレイクは視なくてもいいように受け取られるかもしれないけど、「この後は60秒CMです」って言い方なら、CMを売り込んでいることになる、という"言い訳"。ついでに、も一つ驚いたこと。中国中央電視台(CCTV)にゴルフ・テニスの専門チャンネルができるようです。CCTVでバンバン予告CMを流してました。いちおう共産主義国家の国営テレビ局が、ブルジョア・スポーツの代表格とも言われたゴルフとテニスの専門チャンネルを始めるなんて、さずがは中国と、改めて感動してしまいました....。
2007.01.13
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まずはNetEaseの記事より。中国最大のインターネット検索サイトである『百度』が日本進出計画を発表しました。既に半年前から準備に取り掛かり、日本語とベトナム語に精通したサーチエンジンの技術者の人材も確保し始めています。『百度』の国際化戦略が正式に動き出しました。『百度在銭網絡技術公司』董事会主席兼CEOの李彦宏さんは昨日、2007年に日本の検索サイト市場に進出し、日本語による検索サービスを提供、国外においてGoogleやYahoo!などの巨頭との競争に挑む、と発表しました。李さんによると、日本進出のタイムラインは準備中ですが、すで日本人社員を雇用し始め、東京オフィス設立の準備を進めているとのこと。日本進出後は、アジアやその他の地区の市場に進出する計画もあるようです。『百度(Baidu = バイドゥ)』は中国で最も利用されている検索サイトです。2005年8月にはアメリカのNASDAQで株式公開を果たしました。とは言え、この『百度』が日本市場に殴り込みをかけることになったのには、ちょっとした台所事情があるようです。Alexaによると世界4位のアクセス数を誇る『百度』。中国での検索サイトのトラフィックでも、2位のGoogle(26.9%)を大きく引き離して、46.5%のシェアを誇る『百度』ではありますが、広告収入では中国トップのポータルサイトである『新浪網(SINA.com)』の7.38億RMBに大きく水を空けられており、『雅虎中国(Yahoo!)』とほぼ同じ3億RMB程度でしかないのです。これは中国のインターネット広告市場シェアの10%に届きません(以上iResearchのデータより)。中国のポータルサイトをご覧になっていただくとお分かりになると思うのですが、FlashやGIFアニメーションをコテコテに使ったPicture in Pictureなどの広告があちこちで輝いています。広告を出す側も見る側も、こうした派手派手な感じがお好き、と言うお国柄なのでしょう。いっぽう、『百度』のトップページも検索結果ページも、Googleに習って(か、真似てか)いたってシンプルで、バナー広告一つありません。検索画面の右側に、Googleで言えば"アドワーズ広告"(検索ワード連動型広告リンク)が表示される仕組みなのですが、その表示内容が意外と使えないのです。人気ワードになると競札で高値を付けてくれた広告主に売り渡すのでしょうが、どうも怪しげな企業(よく解釈するなら、いわゆる"ロングテール"のしっぽが、お金持ちだったりするのでしょう)ばかりが並んでしまって、必要とする情報にたどり着けないことが多いのです。こんなこともあって、中国ではユーザーが検索ワード(コンテンツ)連動型広告リンクをあまり信用しないようですし、大企業もあまり積極的に広告として利用していないようです。きっとそんなこともあって、アクセス数が多いのに中国ではあまり広告収入を得られていない『百度』は、なんとか日本で広告収入を確保しようと考えている感じです。確かに『百度』が中国と同じように日本でも利用数でトップシェアを確保できるとすれば、広告収入は中国のそれよりきっと多くなるとは思います。でも、『百度』ユーザーは、日本でそこまで増えるものでしょうか?『百度』の魅力はなんと言っても"MP3検索"です。音楽系のファイルだけではなく、Flashやrmファイルも対象となるので、MTV(ビデオクリップ)なんかも、かなり正確に探し出すことができるのです。2002年当時『捜狐(SOHU)』の検索サービスが圧倒的なシェアを誇っていたのに、短期間のうちに『百度』がトップシェアに躍り出たのは、"MP3検索"の人気が大きかったはずです。基本的には、『百度』によりリスト化された"MP3検索"の結果をクリックすると、直接音楽ファイルの再生が始まります。無料で試聴やダウンロードが可能なサイトのファイルに直接リンク付けされているのです。歌詞もテキストで提供していますが、こちらは明らかに『百度』サイト内のコンテンツになっています。日本でこんなサービスを提供できたら、あっという間に大人気になるでしょう。でも『百度』の"MP3検索"は、中国だからこそ(!?)できたサービス。検索結果から得られる音楽ファイルや転載されている歌詞の多くが、著作権をクリアにしていないものなのです。たどり着く音楽ファイルのほとんどは、著作権無視のサイトにアップロードされているものです。当然のことながら、国際レコード連盟などの著作権者団体は抗議しているわけですが、『百度』側は「対象ファイルをリスト化しているだけ」と主張しているようで、いまも係争中です。Youtube人気などで、ネットにおける著作権のハードルは随分下がりつつあるようにも思えるのですが、この"MP3検索"というサービスは、たくさんの音楽ファイルが無料でネット上に公開されていなければ、あまり役に立たないのです。日本では取締りが厳しいのか、倫理観が強いのか、著作権侵害が疑われるコンテンツは、ほとんど公開されていませんから、中国(人)のサイトを頼ることになるのでしょうか...。日本人が聴きたがりそうな音楽(最新の日本のポップスや洋楽)も、随分中国(人)のサイトにはアップロードされていますから...。とはいえ、日本でこんなサービスを提供したら、あっという間に大問題になってしまうでしょう。『百度』のCEO李彦宏さんは、中国語と日本語の類似性を指摘した上で「日本のサーチエンジンユーザーが既存サーチエンジンのユーザーフレンドリーな代替サービスとして百度の強力な日本語検索技術を認めてくれることに自信を持っている」(gooニュース)そうですが、うまく行きますでしょうか....。AlexaのGlobal Top10サイトのうち3つが中国語サイトです。これはやはり中国(語)のネットユーザー数が有利に働いているのであって、これらの中国語サイトが言語の壁を越えても優れていると言う結果ではないと思います。世界第3位のネットユーザー数を誇る日本(語)のサイトが一つも入っていないのは、やはりそれだけ日本の市場環境が厳しいとも解釈できるはずです。私としては、『百度』の日本市場進出が、簡単に成功するとは思えないのですが....。一時はNASDAQ公開時の半値まで下がっていた『百度』の株価は、9月あたりから急に上がり始めて、今週は公開当時の初値を越えました。個人的にはビミョーな感じ。
2006.12.06
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11日に時事通信社が北京から伝えたきたニュース。日本の大手新聞各社はスルーしちゃったようですが、ニュースサイトに転載されていました(Infoseek楽天ニュース)。【北京11日時事】中国に進出した日本企業の総経理(社長)を含めた邦人計4人が2005年以降、輸入品をめぐる関税逃れなど「普通貨物密輸罪」に問われ、上海などの裁判所で相次いで有罪判決を受けていることが11日分かった。中国に製品や部品を輸入する際、価格の過少申告や輸入物品の虚偽申告で関税などを逃れようとしており、上海では今年9月、日本企業で総経理だった男性が懲役2年の実刑判決と350万元(約5250万円)の罰金を科され、控訴中で現在も拘束されている。関税逃れと言うことで摘発され、実刑判決を受け、拘束されている日本企業の総経理(経営責任者)が中国にいらっしゃると言う話です。"脱税行為"だから犯罪なのですが、きっとビジネスを成り立たせていく上で仕方なく行った行為なんだと思います。中国で製造やアッセンブリーを行っているメーカーさんにとっては、日本などから中国に輸入される原材料やパーツを、いかにスムーズに通関を通すかが命綱です。通関でもたついて予定期日を過ぎても原材料やパーツが工場に届かなければ、ラインは止まってしまいます。それでも、工場の労働者にはお給料を払わなければなりません。出荷も遅れるわけですから、販売店や顧客からの信頼を失い、多大な損害が生じることになります。日本のように、ある程度システマティックに通関業務が行われ、陸揚げされて中何日で通関完了と読めるのなら良いのですが、中国の場合はそんな甘くはありません。税関の方と"仲良し"にしていれば優先的に通してもらえたりしますが、"仲良しでない"と逆に意地悪をされてなかなか通してもらえないかもしれません。ときどき日本の時代劇で、関所のお役人さんに"袖の下"を渡してこっそり通してもらうようなシーンを見かけますが、まぁあ~いう感じもアリなのです。ですから、中国外からの輸入品を扱う企業の多くは、税関の方と"仲良し"になるために、ご飯をご馳走したり、キャバクラにご招待したり、最新のケータイをプレゼントしたり、本社のあるアメリカや日本やヨーロッパの国に視察旅行にお連れしたりします。これは贈賄行為とも言えますし、イケないことだと分かってはいるのでしょうが、「ウチの会社だけはそんなことはしない」と正義を振りかざしたとしても、通関が滞るだけ。ライバル企業のほうは税関の方と仲良くしているわけですから、仲良くしていなければ不利を被る可能性が大きくなります。通関業務をスムーズにしていただくための税関当局との"関係作り"あたりまでですと、まだ"グレイゾーン"なのかもしれません。けれども、企業側にも税関当局にも、更なる"欲"が出ちゃうわけです。企業側は関税をできるだけ安く済ませたいですし、税関の方はリッチな企業の皆さんともっと仲良くしたいと思っちゃうわけです。ライバル他社のように、輸入品の価値を過少申告したでも見逃してくれる、ような"理想的関係"を税関当局と築くことができれば、価格競争力までアップするはずです。本社から課せられた中国でのミッションを達成しようと真剣に頑張っている日本人マネージメントならば、そうしちゃうかもしれません。過少申告とか虚偽申請までいっちゃうと、さすがにグレイとは言い難いわけで、時事通信社の報道にあるように、"普通貨物密輸容疑"などで摘発されたりしまうのです。税関にもグルになっている方がいると思うのですが、そういう方々が収賄で摘発されたのかどうかは不明です(たぶん何らかの処分は受けてると思いますけど)。とりわけ税関-密輸となると、『アモイ事件(遠華密輸事件)』が有名です。7年前に発覚した事件でありながら、カナダに逃げ延びた主犯格の頼昌星さんが、中国共産党中央政治局常務委員で江沢民さんの仲間だった賈慶林さんのことを、胡錦濤さんたちにチクるのではないか、と言うことで、最近また話題を醸し出しているようですが(産経新聞中国総局記者・福島香織さんのブログ『北京趣聞博客』にわかり易い解説記事があります)、当局も過敏に反応しているのかもしれません。この手の脱法行為に関しては、日本企業だけではなく、中国企業も欧米企業も様々なところでいろいろと摘発されていますから、日本企業の総経理が実刑を喰らった、と言う日本向けのニュースだけで、また「日本企業潰しだぁ」などと決めつかないほうが良いと思いますけど。私が北京でお勤めしてたときは、あまり税関とはご縁が無くて助かりましたが、税務当局や工商行政管理局などのお役人さんと"仲良く"しておく必要はありました。ライバル他社がお役人と仲良くして優遇されているのに、こちらがキレイごとを通して意地悪されてしまっては、競争力に差がつき、大きな不利を被りかねませんから、これはもうある程度やるしかなかったのです。実刑になってしまった日本人総経理の場合もきっとそうだと思うのですが、日本人の責任者が率先して、お役人を接待しようと贈り物をしようとか、言い出すことはほとんど無いと思います。多くの場合、中国人の幹部やマネージャーが言いだしっぺであるはずです。「Aさんとの関係を強化するとうまく行く。私の知人のBさんが仲介できる。ライバル社はCさんと仲良くしているようだが、Aさんのほうが"実力がある"からライバル社より有利にしてもらえる....。」まぁ、例えばこんな感じでしょうか。もちろん、接待の場に日本人の責任者が連れ出されることも多いでしょうが、"実弾攻撃"のほうは中国人の幹部やマネージャーが"汚れ役"を演じるわけです(ピンハネなどによって"役得"になる場合もありそうですが)。日本人総経理はギリギリの判断を迫られるでしょう。日本の本社はコンプライアンス強化と言ってきているわけですし、"工作資金"の財務処理だって考えなければなりません。日本人の責任者に相談すれば「ダメだ」と言われると思い、或いは日本人をトラブルに巻き込まれたくないと言う気遣いから、中国人幹部が独断で"工作"を行う事だってあるはずです。日本人が直接関わっていないケースも多いはずです。それでも大規模な摘発があれば、経営責任者である日本人総経理(社長)が責任を問われることになるでしょう。「宮内さんが勝手に行ったことで、私は知りませんでした。」という感じで主張しても、総経理(社長)という肩書きを持っていたら、簡単には納得してもらえないでしょう。私は中国における違法行為や脱法行為を奨励する意図はありませんが、いまの中国で経済活動を行っていき、それなりの成果を挙げるためには、怪しげと思う領域に足を踏み込む必要が生じることになるかもしれません。日本の独資を含む中国の法人で総経理である日本人は相当な覚悟が必要だと思います。できることなら、信頼できる中国人幹部に総経理(社長)というタイトルを明け渡し、自らは董事長(会長)か副董事長(副会長)に棚上げされるのが良いかもしれません。総経理には日常的な業務の責任がありますが、董事長や副董事長にはありませんから。またこうしたコンプライアンス上のリスクを回避するために、日本側は敢えてマジョリティーを取らない(出資比率を50%未満におさえる)というのも手だと思います。中国人同士の話し合いで丸くおさめてもらいましょう.....。
2006.11.14
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日本のテレビCMは15秒が基本になっています。番組の中で放送CMは30秒が多いのですが、番組と番組の間に放送される"スポット"と呼ばれるCMはほとんどが15秒です。放送時間帯に柔軟性のある"スポット"のほうが回数も多くなり易いので、CMのクリエイターは15秒を基本にアイディアを考えることが多いのです。中国では15秒CMは日本ほど多くありません。5秒、15秒、30秒、60秒といろんな長さのテレビCMが放送されています。特に5秒や30秒のCMが日本と比較すると多く放送されています。ゴールデンタイムでも放送される欧米系のブランドを中心にした60秒CMは見応えがありますが、ブランドや企業の名前を叫ぶだけの5秒CMが立て続けに何本も続くと、ウンザリしちゃいます。だからなのでしょうか?なんと、中国中央電視台(CCTV)が、7.5秒のテレビCMを導入することになったです。60秒(1分)を半分にして30秒、また半分にして15秒、それをまた半分にして7.5秒と言うわけです....。はたまた、15秒を3等分してセールスするより、半分にしたほうが手間がかからないのでしょうか?儲かるからでしょうか?7.5秒のCMを採用するのは、CCTV-1チャンネルで毎日午後7時から放送されるニュース番組『新聞聯播』の直後の広告枠で、レギュラーのテレビCM枠としては中国で最も高い時間帯です。この広告枠には"定価"が設定されておらず、11月18日にオークションが開かれ、最も高い金額で入札した企業が放送する権利を獲得すると言う仕組みです(厳密には、曜日や期間、CM枠内での放送順など、様々なパラメータが加わって競札にかけられるのですが)。CCTVのウエブサイトではこの7.5秒CMを"自画自賛"して売り込みに賢明なご様子です。『7.5秒テレビCMは、中国のテレビ広告のレギュラー・フォーマットになるだろう!!』7.5秒テレビ広告枠は、市場環境、広告主の需要、さらに視聴者も含め、広範囲にフィージビリティ・スタディを行った結果、誕生したのです。7.5秒テレビCMこそ、中国のテレビ広告のレギュラー・フォーマットとなり、テレビ広告の歴史に新たな1ページを刻むことになるでしょう。『7.5秒:ブランド時代のテレビ広告のフォーマット』5秒のテレビスポットは、中国のテレビ広告の中において、ブランディングの補完という重要な役割を演じてきました。しかし、メディア環境が変化し、情報の量的激増と分散化が進む中で、広告メッセージ伝達の最適化を目指した場合、5秒スポットは7.5秒に取って代わられるでしょう。7.5秒スポットこそ、広告フォーマットの多様化に拍車をかけるのです!!単独利用---5秒よりもオーディエンスの認知と記憶は高まるはずですし、クリエイティブのアイディアも広がるでしょう。コンビネーションでの利用---15秒スポットや30秒や60秒の長尺CMと組み合わせて利用する方法。7.5秒はゴールデンタイムなどで利用し、告知的機能に絞り、他の時間帯の長尺CMを放送します。5秒CMが守備的だとすると、7.5秒CMは攻撃的と言えるでしょう。7.5秒をティーザー(キーメッセージを隠した予告広告)に利用し、長尺CMに期待を集めさせるのも面白いでしょう。とにかく、クリエイティブのアイディア次第です。CCTVはテレビ局なので、テレビ以外のメディアと併用しましょうなんて言えないとは思いますが、インターネット経由で、より詳細な情報やメッセージを獲得したり、ブランドの擬似体験が可能になった現在の環境において、テレビ広告の果たす役割も変化しています。オーディエンスの細分化が苦手なテレビ広告を"メッセージのばら撒き役"として機能させるとするなら、頻度(広告の放送回数)を稼ぐことが必要でしょう。広くばら撒くコミュニケーションですから、ほんとうに届いて欲しいオーディエンスに的中させるためには、頻度が必要なのです。いっぽう、インターネットではテレビよりも深いコミュニケーションが可能ですし、コストも安くつくはずなので、メッセージ量やコミュニケーションの深さは、インターネットに任せてしまえば良いわけです。こうしたメディア・ミックスにおいて、コストパフォーマンスを考慮すれば、15秒や30秒のテレビ広告ではなくて、5秒とか7.5秒といった短時間のテレビ広告でも構わないはずです。つまり、オーディエンスのアテンションを引くようなキーワードを埋め込んだ5秒や7.5秒のテレビ広告で頻繁に放送し、そのキーワードに関心を持ったオーディエンスがググるなどしてインターネットでより多くのメッセージを得ると手法ならば、30秒CMを1回やるより、15秒CMを2回やるより、7.5秒CMを4回或いは5秒CMを6回放送したほうが、パフォーマンスに優れているはずです。でも、それだったら5秒CMでいいんじゃないの?わざわざ7.5秒の広告枠なんか設けなくとも....。と言う疑問に対しても、一応CCTVは答えています。『7.5秒テレビスポットは、パフォーマンスが優れている!!』最新の脳神経化学の研究によると、記憶すべき事象が発生して7~8秒後に、大脳の血流と酸素量のシグナルは最大限に上昇します。また北京師範大学心理学院の研究者によると、最良の広告効果を得られる最短時間は7~8秒とのこと。短期的な記憶に留めるべき事象は、発生と同時に忘却が開始されますが、6~9秒あたりからは安定していきます。CCTVのサイトでは、血流と酸素量や忘却曲線のグラフまで持ち出して、5秒スポットよりも7.5秒スポットのほうが効果的であることを主張しています。広告効果や効率については様々な数値や指標で測れるようになりました。テレビ広告では視聴率や放送回数をパフォーマンスの指標としてプランニングや事後評価に利用します。ところが、CMの秒数(長さ)と効果や効率の関係にはいまだに定説が存在せず、広告料金と直接関係する要素でありながら、科学的な分析と議論を避ける傾向にすらありました。この問題を単純化するなら、「30秒CMは15秒CMの2倍効果があるか?」ということです。これは新聞広告などにも言えるわけで、例えば全頁広告が全5段(1/3頁)広告の3倍以上の効果があるのか定説がありません。広告効果と広告料金が合理的に符合しなければ納得してもらえない現在の広告環境において、媒体社や広告会社にとって不都合な議論でもあるからです。この場合、7.5秒スポットの効果が5秒スポットの1.5倍以上で、料金が1.5倍未満であるなら、広告主にとってパフォーマンスが優れている、と言えるのでしょうが、実証するのが難しいでしょう。そもそも、テレビCMの効果は秒数よりもクリエイティブにより依存する、と言われたりするわけで、クリエイターのご意見も参考にしなければなりません。というわけで、欧米系広告プロダクションのクリエイティブ・ディレクターが7.5秒広告を一応賞賛する意見をCCTVのサイトに寄稿しています。タイトルの『ほんとに不思議な7.5秒』というタイトルには、戸惑いの様子も感じますけど....。私たちクリエイターにとって60秒が理想的な長さで、30秒は標準的、15秒が何とか受け容れられる長さで、5秒だと感動をクリエイトすることはできません。でもテレビCMの短時間化とローコスト化は時代の流れでもあり、最近のカンヌ(広告フェスティバル)でゴールド(金賞)を獲得したテレビCMの大部分が短尺(15秒)の作品になっています。例えば、北京オリンピックのスポンサーである『青島ビール』が、アーチェリー、陸上競技、バスケットの3種目を使って20秒のテレビCMを用意するくらいなら、「酔う」という一語にメッセージを集約させて7.5秒のCMにしたほうがインパクトが強まるかも知れません。7.5秒は5秒と比較してより多くのクリエイティブなスペースがあるし、10秒と比較すると鋭いし力がこもる感じがします。7.5秒であっても、様々なクリエイティブの手法が利用できるはずです。ブランドや商品中心の訴求ももちろん有りですが、ストーリーもつくれますし、ユーモアがあるのも、オーディエンスに考え込ませることも可能です。ローコストになるとは言いたくないけどね.。確かに5秒だと、企業名かブランド名か商品名のいずれかと、タグライン(企業やブランドの端的な説明文)くらいしか入りませんが、7.5秒だとちょっとした工夫ができそうな感じがします。いま流行りの広告主サイト誘導型のテレビCMにも効果的に利用できるかもしれません。そして、何よりもロゴのCGと企業名かブランド名だけの耳障りな5秒CMが中国のテレビから減ると言うことは、オーディエンスにとって歓迎すべきことかもしれません。
2006.11.12
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中国では90年代初頭以降、日本のテレビドラマがあまり放映されていません。江沢民さんが反日を推し進めるために日本のテレビ番組を締め出したとか、プロセスにおいては、様々な推測が可能ではあります。しかし、この数年間の状況を冷静に考えてみると、市場原理に基づく結果である、と言うのが真っ当だと思うのです。日本のテレビドラマが中国で放映されないのは、中国当局の"意地悪"によるものでは(ほとんど)無いと言うことです。先端技術の輸出が振るわなくなったいま、コンテンツこそ日本の輸出品の花形になる、と経済産業省あたりが張り切っちゃっているのですが、テレビドラマにしても映画にしてもゲームにしてもアニメにしても、フツーの商品とほぼ同様の仕組みで取引されるわけです。シンプルに言ってしまえば、需要と価格合理性があれば取引が成立するのです。中国において、日本のテレビ番組があまり放映されないのは、この関係が成り立たないからです。スゴク単純化すると、日本のテレビアニメ: 中国での需要=有 / 価格合理性=無日本のテレビドラマ: 中国での需要=無 / 価格合理性=無だから、取引が成立せず放映されていない、と言うのが事実でしょう。2005年に、CCTVを除く中国のテレビ局で放映されたテレビドラマは時間換算で約9,000時間。内1/3にあたる約2,000時間は外国製ドラマ(中国の立場で言えば、輸入ドラマ)を放映できるのです。ところが、実際放映された外国製テレビドラマはローカル局全体で70作品(シリーズ)、約1,200時間程度に過ぎません。しかも、この70作品の中で日本のドラマは1作品のみでした(2005年に許可され放映された作品なので、過年度に輸入許可を得て再放送などで放映されている作品を除きます)。なんと韓国作品が28、香港作品が18、台湾作品が15、シンガポール作品が5、インド、イタリア、アメリカ作品がそれぞれ1つでした。なぜ韓国作品がこんなに多いのでしょうか?それは需要と価格合理性が有るからです。前回のエントリーでご紹介しましたとおり、中国のテレビドラマ視聴者層の中心は35歳以上の女性(主婦)です。高学歴でも無ければ"小金持ち層"でも無い人たちなのです。日本でも韓流ブームが韓国ドラマから火がつきました。韓国ドラマはストーリーが比較的シンプルで、登場人物の行動や心の動きも予想される範囲内である場合が多いので、日本でも主婦層を中心に人気が高まりました。高学歴、"小金持ち"という部分は置いておいて、やはり中国でも主婦層が受け入れ易い"つくり"であったのでしょう。しかも、1作品あたり60分弱で最低20話はありますから、連続ドラマを1日あたり2~3話連続して毎日放映するという、中国の標準的な番組編成であっても、1週間以上は放映を続けることができるのです。さらに、(これは想像の域を出ませんが)日本のテレビドラマより合理的な値段で購入できるのでしょう。これだけ韓国ドラマの比率が突出したのは、市場原理に基づく結果と言えるでしょう。ですから、最近では中国当局が"規制"に乗り出す動きもあるようです。特定の国家の番組だけが多く放映されるようになるのは、中国に限らずどこの国でもあまりよろしくないお話でしょうし。こうした規制の動きに対して、韓国側は、中国との共同制作やキャスト、スタッフ、スクリプトの単体販売などの方法で乗り切ろうとしています。努力してるんです。いっぽう最近の日本のテレビドラマのほとんどは、F1層向けに準備されています。F1層と言うのは20~34歳までの若い女性のことで、この人たちの中で話題になれば、若い男性もおじさんもおばさんも、みんなついてきてくれると考えがあったのです。また、日本の都市生活者でなければ共感しにくい設定である場合が多く、心を動かすようなストーリーは"クサイ"と言われて敬遠されがちです。しかも、日本のテレビドラマは通常11~12話で完結してしまいます。中国の標準的な番組編成なら、月曜日に放送が始まって土曜日には最終回が来てしまうので、話題作りができないうちに終わっちゃうのです。さらに、番組の値段が高い安いと言う前に、日本のテレビドラマを中国で放映するとなると日本側のほうに障壁が多いわけです。海外への番組販売を前提に制作されているケースが未だに少なく、権利や承諾を一つずつ詰めていかなければならなかったり、人気タレントやそのマネージメント事務所に頼ったキャスティングが多いため、そのタレント売り出しの海外戦略に左右されて、"海賊版王国"と言われている中国が敬遠されたりしてしまうのです。また、"ものづくり"にこだわる日本だからこそなのかもしれませんが、翻訳された現地版についても日本の作り手がしっかりと管理したがります。こうして、自ずと時間とコストがかかってしまい、結果的に買い手にとって合理的な値段で番組を販売することができなくなるケースが多いのです。そして、何よりも日本のテレビドラマに関わっている人たちの多くは、中国での放映=中国への番組販売に関して消極的です。こんなワケですから、日本のテレビドラマが中国でほとんど放映されないことを、中国当局の"意地悪"によるものだと考えるのは止めるべきです。このことは、テレビドラマだけではなく、テレビアニメにも言えます。日本のメディアは一時期「中国当局が日本のアニメを締め出した。」「日本を狙い撃ちにした。」などと報道していましたが、日本だけを狙い撃ちにしているわけではありません。例えば日本が製鉄業を守るためセーフガードを発動して、最大の輸入元が中国だった、みたいなお話なのです。しかも、テレビドラマと同様に、テレビアニメに関わっている人たちの多くは、中国での放映=中国への番組販売に関して、消極的です。日本人は、近代以降の自国の歴史、とりわけアジアに対して自虐的である必要は無いと思うのと同じくらい、中国におけるビジネス上の障壁を中国当局の政治的思惑に帰する被害妄想は止めたほうが良いと思います。しかも、自虐史観を非難する方に被害妄想になられる方が多いのは不思議な感じすらしてしまいます。外国とビジネスをする以上、日本国内で完結するお仕事よりも障壁が高いのは当然でしょう。実際には"意地悪"されることだってたくさんありますが、根本要因を中国と言う国家そのものだと決め付けてしまうのは、あまりにも短絡的に思えたりします。そうした日本人の甘えの中にこそ、チャイナ・リスクが潜んでいるのでは無いでしょうか。ちょっと話が飛躍しすぎてしまいました....。
2006.10.31
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先日、中国のテレビドラマ業界の実力者が日本に売り込みにやってきました。日本のテレビ・ドラマを含む映像コンテンツ業界の皆さんを前に、中国のテレビ・ドラマの状況などを話してくれました。中国に居た頃は当たり前だと思っていたお話も、日本に住んでしまうと新鮮に思えてしまいます。中国におけるテレビ番組の視聴傾向を、マス(数量)的に述べてしまえば、(1)ニュース・報道番組 (2)連続ドラマ (3)エンタテインメント(主として視聴者参加型) (4)スポーツ中継 (5)ドキュメンタリー (6)インタビューもの の順で人気が高い(=視聴率を稼いでいる)ということになります。2005年に中国で放映された新作テレビドラマは約1万2,000話。1日あたり約33話という計算になります。仮に日本でNHK総合と民放5ネットの6チャンネルが毎日20時から23時までの3時間に54分ドラマを3話ずつ放送したとしても、1日18話で年間で6,570話になります。日本では、実際はバラエティ番組や報道番組もたくさんありますから、年間1万2,000話という新作ドラマのが如何に多いかお分かりいただけると思います。その中国のテレビドラマ業界の第一人者が暴露してしまいました。「テレビドラマ視聴者層の中心は35歳以上の女性(主婦)です。高学歴でも無ければ"小金持ち層"でも無い人たちなのです。」なぜこうした発言が飛び出したのかについては、次回のエントリーにでも譲ることにしますが、これはデータでも裏付けられています。確かに連続ドラマは全体として高い視聴率をとっています。ところが、20代で大卒以上で月収4,000RMB以上でなどと対象を絞り込んでいくと、連続ドラマの視聴率は決して高くないことが分かります。中国でテレビCMをたくさん流している、日本ブランド商品といえば、自動車、電気製品(家電も情報機器も含む)、次いでトイレタリー、食品です。前二者は都市部を中心とした"小金持ち"若者が購入層の中心です。また、一般にはcommodity(日用品)とされる後二者ではありますが、トイレ掃除の洗剤や牛乳や納豆のテレビCMを行っている日本ブランドはありません。トイレタリーなら都会の"小金持ち"をターゲットにした高級シャンプー、食品なら主婦ではなく若者をターゲットにしたペットボトルの飲み物などです。つまり、中国でマーケティング・コストをたくさん出している日本ブランドの商品とは、中国の連続ドラマを見る人たちが購入するような商品ではないということです。多くの広告関係者はこのことに気づき、テレビCMの放映時間を連続ドラマからニュース・報道番組やエンタテインメント番組、スポーツ番組などにに移動するようになりました。ところが、最もテレビCMを視てもらいたい層(ほとんどの日本ブランドの場合、20代の"小金持ち層")は、テレビそのものを視ていないようなのです。中国のテレビドラマのプロデューサー氏はまたも正直に暴露してくれました。「(都市部に住む)高学歴、ホワイトカラーのテレビ視聴時間はどんどん少なくなっています。」仕事を終えて、同僚や友人と食事或いはお酒を飲み、帰宅は21時か22時、帰宅後はネットで情報チェック。週末など時間にゆとりがある時は、海賊版のDVDかネットで映画を楽しむ....。と言う感じの生活をしている人たちが非常に多いので、テレビCMはほとんど効きめ無しなのです。こうした状況を、中国の現地でマーケティング活動に関わる皆さんの多くは実感されているのですが、はっきりと「テレビ広告はほとんど効きませんよ」とは言いにくかったわけです。多くの広告会社はテレビCMを進めたほうが利鞘が大きいわけですし、広告主企業の担当者の多くはテレビCMが他のビークルより準備作業がシンプルで、失敗がばれるリスクが小さいと考えているからです(これは日本国内と同じ状況です)。でも先日、中国のテレビ業界の大物の方までがはっきりおっしゃったのです。中国で、クルマやデジカメやフラットテレビやノートパソコンや機能性シャンプーや高級スキンケアなどを売ろうと考えている日本企業の皆さん、テレビ広告はほとんど効きめが無いかもしれませんよ。最近は日本でもテレビCMの効果について議論がなされつつありますが、まあ、中国の状況のほうがもっとわかり易いと思います。テレビってどういうメディアなのか....。次回はコンテンツ篇を予定しています。
2006.10.30
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とある国際的な競技会にエントリーするための費用がまだ6,000万円足りないというスポーツ選手Aさんのために関係者が集いました。かつて彼自らが稼いだお金や仲間の支援によって競技会に参加してきたのですが、世界の頂点となる某国際大会に参加するとなると、ケタ違いのお金が必要となるのです。その大会は来年の年明け早々に開幕するので、もうほとんど時間がありません。その打ち合わせに集まった人たちは皆、Aさんの才能を認め、将来を期待する方々です。私はAさんとは初対面でしたが、そのほかのメンバーとは以前お仕事などでご一緒したことがあり、ほぼ10年ぶりの再会という感じです。そんなこともあり、近況報告みたいなところから打ち合わせが始まりました。10年前は、その競技の映像を撮影して編集したりしていたBさんは、その後ネットで映像を配信する事業を始めて大成功されていました。他にも手広く事業をされていて、とある途上国の金鉱の採掘権を購入したところ、黄金小判がザックザクとは行かないまでも、砂金の含有量が極めて高い鉱脈を得た、と言うお話でした。少なくとも200億円くらいの埋蔵量は確認できたそうです。ただその国から金を持ち出すことが難しいらしく、いまはその方法をどうするかで苦労しているそうです….。10年前は、イベントのプロデューサーをされていたCさんですが、その後、ビジネス・スクールでMBAを取られ、モルガン系だかサックスマン系だかの仲間とともに『環境ファウンド』を始めるそうです。いまのお金持ちは、ヴァージンのブランソン会長のように、地球や地域にやさしい何かをしたがっている(すべきだ)から、運用益の一部を砂漠化防止などのために活かせるようなファウンドを創設して、とりあえず2,000億円くらいを集める予定だそうです。みなさん、私が中国で丁稚奉公している間に随分成功なされたものだと感心してしまいました。そして、いよいよAさんが来年1月に迫る国際競技会にエントリーするための資金をどうするか、という本題に移りましたが、途端に皆さんの口数が少なくなってしまいました。沈黙を破ったのは、私と同業の広告会社のDさん。この手のビジネスを手掛けて20年以上のベテランです。実質1ヶ月と時間の無い中、いまさら広告効果とかプロモーションなどの観点からスポンサーを探すのは無理なので、知己の大企業のトップやオーナーに片っ端からお願いするしかないだろう、と極めて現実的な意見でした。長年この競技と関わり、常にスポンサー探しで苦労しているAさんにしてみれば、Dさんに言われなくとも分かっているお話です。最も一般的で現実的な方法ですから、Aさん自身が動けるところは皆お願いに回っているのです。それでも、6,000万円ショートしているので、相談しているわけです。重い空気が漂う中、Dさんはようやく「ぼくも一緒に動くから」と言う、Aさんにとっては少しばかり励みになる言葉を発したのです。Dさんはこの種の競技によくスポンサードしてくれる企業のトップに太いパイプを持っているのですが、所詮サラリーマン。時間的にも、また様々な事情から、会社として約束することが出来ないため、個人として応援する、と言う曖昧な言い方しかできなかったのです。私もサラリーマン。気持ち的には良く分かります….。その後もミーティングは盛り上がらず、最悪は借金を背負ってでもエントリーするというAさんに、それでは次回以降継続できなくなる、と誰か。だからこそ、今回何とかしなければ、と言う趣旨の打ち合わせなのに。ついに、ネット映像配信で成功しているアイディアマンのBさんが口を開きました。すぐにブログを立ち上げよう。まず、その国際大会へのAさんの”想い”、資金面を含めた準備段階での苦労話を発信しよう。それでドネーション(寄付)を募る。競技の状況はナマで配信しよう。寄付してくれた人たちには、ナマの写真とメッセージを送ってあげる。システムはみんなウチで対応する。ま、最近ハヤリの、でも実現性が高く、話題にのればバケそうなお話です。映像使用権などクリアしなければならない問題も多いのですが、そこはその道のプロが集まっていますから、解決のためのアイディアも出てきましたし、関係者のウェブや個人のブログなどにリンクを仕掛けて行けば、1日に数万インプレッションは期待できるだろう、などと議論も白熱してきました。ところで、どれくらいの資金が集まるだろうか…。踏んではならない地雷を踏んでしまったのは、旧知の成功に唖然とするしかなかった中国帰りの私でした。一口1万円くらいで、150人くらい参加すればいいほうじゃないかな。とはこのアイディアを提供してくれたBさんのお言葉。Aさんはあと6,000万円集めなければならないのです。場が重くなったまま、お開きになってしまいました。中国で9年も働いていた私にとって、6,000万円の個人スポンサーと言う話も、ちょっと大き過ぎたのですが、200億円の埋蔵金とか、2,000億円のファウンドの話がフツーに交わされるミーティングでしたから、Aさんの悩みもきっと解決するのかなぁ、と思いきや、結末としてはネットで150万円集められればいいみたいな話で尻切れトンボでした。中国では随分と大きなお話を良く聞かされたものですから、1割くらいの値踏みで聞く習慣を身につけました。1,000万元の儲け話を50万元とか100万元くらいに置き換えて考えてみると言うことです。もし、ほんとうに1,000万元の儲け話だったとしたら、これはスゴイと感動すればいい。しかも、ほんとうに大きなお話がときどき転がっていたりしますから意外です。日本に戻って1ヶ月が経ちますが、このあたりは中国に居た頃と同じように、値踏みしておいたほうが良いかもしれない、と思うきょうこの頃でした。
2006.10.18
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すっかり騙されてしまいました。中国の[女圭]哈哈(Wahaha)という大手食品メーカーがこの6月頃、中国国内市場向けに発売を始めた『コーヒー・コーラ(珈琲可楽・Coffee Cola)』のお話です。コーヒーっぽい味のするコーラです。これは、いかにも中国っぽい怪しげな商品だと思い、7月30日の「ぺきん日記」というブログにも書かせていただきました。北京のスーパーなどではエンドに対象にディスプレイされていて、初夏にたくさんの新商品が発売されては、数ヶ月で消えていくという中国のペットボトル飲料市場において、今シーズンのヒット商品だったと言えるでしょう。[女圭]哈哈(Wa Ha Ha)は、フランスの大手食品メーカー「ダノン」などの出資も受け入れていますが、1998年には「中国人のためのコーラ」と称して『非常可楽(Feichang Cola)』を発売し、ナショナリズムに訴えたマーケティング展開をしてきました(表向きは....)。そんなこともあって、『コーヒー・コーラ」』こそはきっとオリジナルなのかなぁと思っておりました。ところが、中国オリジナルと謳いつつ『コカ・コーラ』そっくりな『非常可楽(Feichang Cola)』に続いて、『コーヒー・コーラ」』も"パクり商品"だという疑惑が極めて高くなりました。クールなウェブ・キャンペーンを探していたら、『Coca-Cola Blak』なるサイトに遭遇しました。ボトルのデザイン、特にテクスチャーのパターンとカラリングなんかは、『コーヒー・コーラ」』とほぼそっくり。もちろん、コーヒー・フレイバーのコカコーラです。なんとこの『Coca-Cola Blak』、ことしの4月下旬にはアメリカで発売を開始していたようです(コカコーラ社のプレスリリース)。更に調べてみると、昨年2005年末には発売がアナウンスされ、2006年1月にフランスで先行発売されていたことも分かりました(「コーラ白書」/2005年12月9日)。「コーラ白書」などによると、世界的にはペプシに追い込まれているコカコーラ社が若者向けの起爆剤として、またラインナップの強化として発売を決めたそうですが、コーヒー風味のコーラは過去にもコカコーラ社以外で発売されたことがあったようです。ですから、『Coca-Cola Blak』自体がパクり商品とも言えなくも無さそうですが....。ともあれ、ペットボトルのパッケージデザインを見る限り、Wahahaの『コーヒー・コーラ』はコカコーラ社の『Coca-Cola Blak』のコピー商品としか言いようが無い感じです。限りなく黒に近いと言ってよろしいでしょう。前述しましたが、[女圭]哈哈(Wahaha)は中国の人たちの民族意識に訴えるマーケティングを行い伸びてきました。『非常可楽(Feichang Cola)』を発売するときは、強力なグローバル・ブランドである『コカコーラ』との対決姿勢を明確に打ち出していたはずです((Wahaha ウェブサイトの沿革を参照)。それなのに、ライバルとして戦いを挑んだはずのコカコーラ社の新商品をほぼ丸ごとパクっていたとは、何とも情けない民族のホコリと言えるのではないでしょうか....。とは言え、見過ごせないのはこのスピード感。"パクり"と言えば、フツーは外国など他地域のマーケットである程度成功したモノを真似る、と言うのが私などの感覚です。逆の言い方をすれば、外国で流行しているものを真似るからこそ、"パクり"だとバレてしまうわけです。インターネットをはじめとする様々なメディアを通じて外国からの情報がほとんどタイムギャップ無しで伝わってくる、いまの中国ではありますが、フランスで発売されて数ヶ月後、本土アメリカで発売されるとほぼ同時くらいに商品化されたのですから、『コーヒー・コーラ』が『Coca-Cola Blak』のコピー商品であると気づいた方は、ごく少数だったのでは無いかと思います。少なくとも私は、きのう『Coca-Cola Blak』のウェブサイトを発見するまではWahahaのオリジナル商品だと思っていました。封切映画の海賊版DVDなども、非常に早いタイミングで市場に出回っています。配給会社がその映画のプロモーションをしている最中に、海賊版DVDを世に出せば、正規版プロモーションに便乗して売上を伸ばすことも出来るのでしょう(いっぽうで、海賊版DVDが出回ることが映画本体のプロモーションに一役買っているという観方もできなくはありません)。日本のテレビドラマやアニメも、放映1週間後くらいには中国のウェブサイトで無料で見ることが出来たりします。ちゃんと中国語で字幕までつけているわけですから、ホントにたいしたものだと感心してしまいます。『コーヒー・コーラ』が先に出たことによって、コカコーラ社は中国市場で『Coca-Cola Blak』を出しにくくなったでしょう。きっと法的な対応など準備をしている間に、『コーヒー・コーラ』のほうが話題になってしまった、と言う状況ではないでしょうか。トップダウンやコンパクトな組織だからこそ為せる業ではないかと思いますが、汚い技でも先手必勝なのでしょう。"パクり"は別としても、こうした中国の"スピード感"について、日本企業はまだまだ学ぶべき点が多いように思えます。
2006.10.05
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中国の輸入検疫検査で重金属が含まれと発表されたSK-IIの問題を、多くの日本メディアがそうであるように、中国による日本バッシングの一環だと片付けてしまうのは、容易いことです。でも、SK-IIはアメリカのP&G社のサブ・ブランドですし、中国での発売元はP&G社の中国法人(宝潔公司)ですし、返品の手続きのことで上海市民が抗議に押し寄せ、破壊行為に及んだのも、P&G社のオフィスです。しかも9月25日になって、香港でのテレビ報道を紹介する形で「SK-IIに続き、4大ブランドの化粧品にも検出されてはならない物質が」という記事が新華網に掲載されました。Clinique、Lancome、Christian Dior、EsteeLauderです。このうち、EsteeLauderは日本で製造されているようですが、一般の中国人にとっては欧米ブランドと言う認識でしょう。9月26日にはSK-II騒動の火付け役でもあった人民日報が弁明じみた記事を掲載しました((新華網への転載記事)。輸入製品の品質管理における品質検査部門の成果を自画自賛する内容で、「外国ブランドの"国民を越える待遇"時代は終結した。」と。文字通り解釈するなら、ということになります。これまでは中国国産品の品質は怪しかったのでチェックを厳しくしてきたけど....ということなのか、これまでは外国ブランドの品質管理はしっかりしていたけど....ということなのか、そこまでは読み取れませんが、いずれにしても中国における品質検査の"ダブル・スタンダード"を認めるような内容であることは確かです。ただ、最近の中国における品質問題は、日本を狙い撃ちしているとか、外国ブランドを狙い撃ちしている、と言う被害者意識だけでは片付かないのではないでしょうか。中国国産ブランドだって批難に曝されることがあるのです。9月26日には、天津市工商行政管理局の検査で、国民的ブランドである"[女圭]哈哈(Wa Ha Ha = 実際はフランスのダノンの資本が入っています)"や"農夫山泉"を含む5種類の機能性飲料が成分表示などに問題があるとして"ブラックリスト"入りしたことが報道されています(SOHU:解放網からの転載記事 / 深セン新聞網からの転載記事)。この"ブラックリスト"の中には、日本の"ポカリスエット"も掲げられてしまっているのですが、これをまた「日本バッシング」とか「外国ブランド排斥の動き」などと言って済ませることはできないでしょう....。原因や背景はともあれ、こうした問題に曝された場合、日本的な考え方では対応が難しいと思います。日本のような"防波堤"が存在しないからです。まず第1にメディア。日本の場合、大型広告主であればあるほどメディアは企業にやさしく対応します。たくさん広告費を払ってくれる企業の不祥事はあまり大きく取り上げられません。ところが中国では、大型広告主であっても油断できないのです。広告費の力で記事を抑えることは難しいと考えたほうが良いでしょう。日本とはメディアの構造が違います。全国紙(中央紙)がスルーしても、どこかの地方紙が取り上げるでしょう。テレビ局も同じです。企業の不祥事は一般人にとっては興味深いネタですから、どこかの地方テレビ局や新聞などで話題になると、瞬く間にニュースサイトや新聞などに転載されてしまいます。ニュースサイトはたくさんありますから、広告で抑えようなどと考えるのは無理でしょう。視聴率や発行部数やアクセス数を稼ぐことが、いまの中国の多くのメディアが目指していることです。第2に流通・販売網。日本であれば、メーカー側が非を認め自主的に販売を中止するか、消費者側の不満が相当高まら無い限り、販売店が勝手に問題商品を撤去するようなことは少ないと思います。問題が発覚するとメーカーの営業担当が販売店を回って、「困難な状況ですがよろしくお願いします」などと頭を下げて挨拶すれば、長い付き合いとか温情とやらで、なんとか繋がったりするものです。ところが中国では、問題が報道されると、事の真偽を確認する前に、販売店の独自の判断で販売を中止するケースが多いのです。そして第3は消費者です。メディアも販売網も防波堤にならないのは、消費者意識が日本とは異なるからです。元来品質の悪い商品に囲まれて成長してきた消費者ですから、多くの人たちは品質には敏感です。そして少しでも問題があると徹底的に抗議します。少しくらいいいやとか今回だけだろうから大目にみよう、みたいな日本人的思考にはならない人たちが大半だと思ったほうが良いでしょう。品質に問題がある商品を売っていたとなると販売店も攻撃されますから、敏感です。真っ先に崩壊するのは販売網だと考えたほうが良いかもしれません。また著名ブランドであればあるほど、成功しているとか儲かっているようなイメージを持たれています。でも(日本もそうですが)、自分が成功したり儲かっている(と思っている)消費者などごく少数ですから、著名ブランドの問題が発覚すると、ヤッカミも手伝って、そうした話題に興味が集まりますから、メディアはこの手のネタを取り上げたがるのです。そもそも品質管理を徹底して問題を起こさなければ良いのでしょうが、品質問題"発祥の地"は、中央・地方の国家商工行政管理局やその傘下の品質監督検査機関の"お役所"です。ここをコントロールすることは、メディアや流通・販売網や消費者をコントロールすること以上に困難なわけです。こうしたリスクを念頭に入れながら、メディア、流通・販売網、消費者とのリレーションシップを考慮しながら、コツコツと防波堤を築いていき、二次的被害を最小限に食い止める準備をしておくことが大切なのではないでしょうか。
2006.09.26
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先週の8月22日頃、「NECのケータイ電話の辞書に中国人を侮辱する言葉が含まれている」と言うニュースがネットを中心に広く流れました。このニュースは、NECが2004年に生産・販売したGSM携帯電話"730"に関するもので、安徽省の地方紙『新案晩報』への投書から端を発したようです。安徽省宿州市の李某さんが、新しくNECケータイを買い、付属する辞書をいじっていたら、中国人を侮辱する"中国狗"(狗は犬の意味)という言葉が含まれていた、という事で『新案晩報』へ投書し記事になりました(『中国金融網』の転載記事)。この記事は数多くのニュースサイトに転載されるようになり、いくつかの人気BBSには、このニュースに関連して、NECや日本ブランドの製品に対する反発のメッセージが数多く書き込まれました。"中国狗"という言葉をめぐっては、実は3年前に大きな出来事がありました。中国国内企業である中電通信公司が生産販売した"CECT"というブランドのケータイ電話の英文起動メッセージが"Hellow Chow"と表示されることに、中国国民から反発が起きたのです。英語の"Chow"は中国語に訳すと"中国狗"になります("チャウチャウ"のことなのか不明ですが、元来"chow"という英語は中国語を起源としているようです)。CECT側は"可愛いペット"の意味だったと釈明しましたが、直ちにこの起動メッセージを変更することにしました。これは、中国国内企業の問題であるにもかかわらず、ネットのBBSなどでは「日本人が仕掛けたものだ!」ということになってしまい、"抗日活動"の根拠の一つにされてしまったりもしました。この出来事は雑誌『セールスとマーケット』が選ぶ「2003年度十大企業危機PR」のひとつにも挙げられています(雑誌『セールスとマーケット』ウェブサイト)。今度の出来事に関してNECはほぼ沈黙を通したようですが、騒ぎが大きくなり出した8月23日に、中国の電子辞書のトップメーカーである金山公司の総裁が複数のメディアに対して「"中国狗"には侮辱的な意味は無いと思うが、中国国民の感情に配慮して"技術的処理"を行う」と発言し、金山公司が編集する電子辞書のデータから"中国狗"という言葉を削除する方針を明らかにしました『金融界』ウェブサイト)。実は、問題となりかけたNECのケータイ電話の辞書は、この金山公司が提供したものだったのです。NECは中国の電子辞書トップメーカーである金山公司の辞書をケータイに組み込んでいたわけです。それで、金山公司が先手を打って対応に乗り出したのでしょう。"中国狗"と言う言葉をめぐる騒ぎは、これで収まるのか、引き続き"日本ブランド攻撃"の根拠の一つにされていくのか、いまのところは何ともいえません。とは言え、ここ1週間のネット上の報道やBBSでのメッセージを通じて、一部の中国人の間に「NECのケータイが中国人を侮辱した」と言うイメージが植えつけられたのは事実でしょう。この出来事を知って、ソニー製パソコン用バッテリーの問題を思い出しました。過熱して発火事故を引き起こしたとして、アメリカのDELLがソニー製バッテリーを使用している自社ブランドのノートPC410万台をリコールしたという話です。この問題はAppleやLenovoなどDELL以外のノートPCにまで波及しました。多くの報道に触れてみると、不具合のあるバッテリーをパソコンメーカーに供給したソニーだけが深く傷ついてしまい、そのバッテリーを採用したノートPCのメーカーは被害者的な雰囲気になっているように思えます。ところが中国における今回のNECのケータイ電話の辞書問題では、不都合とも受け止められる辞書データをNECに供給した金山公司はほとんど傷つくことなく、寧ろ堂々とした潔いイメージさえ形成することに成功し、その辞書を採用したNECのイメージが随分と損なわれてしまったように思えるわけです。製造物責任云々の法的議論は別にして、やはりパブリック・リレーションが大きく影響しているのでしょう。NECの出来事の場合、「辞書は中国企業である金山公司のものだ」などと声高に宣言したとしてもマイナス効果だったかもしれません。ただ金山公司がトップ(総裁)自らメディアに説明したように、迅速な対応で"削除"の方針を表明したなら、傷は浅くて済んだのかもしれません。いずれにしても、中国における日本ブランドのパブリック・リレーションやメディア対策は、ビミョーかつ難しいものです。ところで"中国狗"と言う言葉。旧日本軍が中国人を侮辱する意味で使ったとされますが、金山公司の辞書の説明文(英語の"chow"に対応する中国語)としては「中国の犬」ということになっています。"中国狗"に対する言葉としては"日本猪"(猪は豚の意味)。この言葉は、明らかに日本人を侮辱する言葉として認識されています。個人的には、ブタといわれるよりイヌと呼ばれたほうが、まだましにも思えるのですが....。
2006.08.30
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北京でコンサルタント会社を起業されている平田総経理さんのブログに、2005年の一年間に北京市と上海市を訪れた外国人の数に関する興味深いデータが紹介されていましたので、引用させたいただきます。 北京市上海市日本人450,020人1,089,672人アメリカ人465,301人 451,543人韓国人 453,479人422,641人このデータによると、2005年に上海市を訪れた日本人の数は、北京市の2倍以上でした。また、北京市には、日本人もアメリカ人も韓国人も同じくらいの人数が訪れましたが、上海市には、日本人がアメリカ人や韓国人の2倍以上も多く訪れた、と言うこともわかります。平田総経理さんによると、このデータの出典はそれぞれ北京旅游局、上海市旅游事業管理委員会とのことです。それぞれの市を訪れた外国人の統計ですから、出張者も旅行者も含まれています。ちなみに、日系航空会社の方からお聞きした話ですと、東京-北京便の場合、ビジネス客と観光客の比率は4:6、東京-上海便の場合、6:4くらいだそうです(中国系航空会社の場合は、観光客の比率が増えるそうです)。2005年10月時点のこの二都市に居住(在留)している日本人の数は、外務省の発表によると、上海市が40,264人、北京市が10,890人で、2倍どころか4倍です。この統計は在留届の提出者が対象で、私の周りの駐在員ですら多くの方が在留届を提出していない感じなので、実際の長期滞在者は二都市ともこのデータの2~3倍になるのではないか、と思います。これらデータから推察できるのは、日本人はビジネスも観光旅行も上海中心ということ。日本人にとって中国と言えば上海なのです。以前このブログでも取り上げたことがありますが、コンシュマー向け製品やサービスを提供する日系企業の多くは、"中国進出=上海進出"のように考えています。"=(イコール)"でなくとも、中国の巨大なマーケットに挑むためには、まず上海を制する、と言うお考えで臨んでいる日系企業が大多数では無いでしょうか。いっぽう北京はビジネスに関して、例えば許認可などの交渉を中国当局と行うためには重要な都市です。首都であり政治都市でもありますから、内外のメディアが集中するのも北京です。けれどもマーケットとして捉えた場合、日本企業や日本人にとっては難しい都市でもあるのです。ですから、多くの日系企業は上海でのロウンチが成功してから北京への進出を考えます。観光はどうでしょう?北京も上海も中国の長い歴史の中では新しい都市と言えますが、北京のほうがより古い歴史を持ちます。北京には万里の長城や故宮など6つもの世界遺産がありますが、上海及びその周辺にはユネスコの目録に登録された世界遺産はひとつもありません。一般的に考えると、"観光資源"は北京のほうが上海よりも豊富ではないかと思います。しかし、有効な資料が見つからなかったのですが、上掲のデータや航空会社の方のお話を総合しますと、観光で訪れる日本人も、やはり北京よりは上海のほうが多いのでは無いかと思います。私の実感ですが、北京の観光地では日本人と差ほど多く出会いません。また観光地やホテルなどで見かける日本人観光客の年齢層は比較的高い感じです。それに対して、家族連れの韓国人や白人バックパッカーの若者は良く見かけたりします。いっぽう上海はバンドや淮海路・南京路あたりでも、観光旅行と思しき日本人の若い人たちを良く見かけたりします。上海は、ちょいと異国情緒を感じさせるアーバン・スタイルのツアーを楽しむことができるので、日本の若者がたくさん訪れるのでしょう。日本語対応のホテルやレストランも上海のほうが北京より圧倒的に多いように思えます。こうした「上海ブーム」は日本に限ったこと、と言えそうです。日本のみならず、アメリカでもヨーロッパでも韓国でも中国への関心が高まっています。観光もそうでしょうが、やはりビジネス上の関心と関わりが強くなっているはずです。冒頭のデータに立ち戻ると、上海市を訪れる人数が北京市の2倍以上というのは日本だけです。アメリカ人は若干ですが北京市を訪れる人数のほうが上海市より多くなっています。韓国人の場合、地理的要因も考えられますが、やはり北京市を訪れる人数のほうが上海市より多いのです。つまり、中国と経済的関わりの深い国の中で「上海ブーム」なのは日本だけ。アメリカや韓国は北京と上海はほぼ同等の扱いと言うことになります。ビジネスについて考えてみると、アメリカのマーケット構造は中国のそれと比較的近いものがあります。所得格差や地域や人種(民族)による嗜好の相違が大きいのです。アメリカ系の企業にとって中国は、日本企業が思い悩むほど特殊なマーケットではないのです。ですから、"まずは上海"のようなことをあまり行いません。初めっから"中国全体"を見据えて乗り込む場合が多いのです。多くのアメリカ系企業は、上海市場を極端に重視するような戦略は取りません。中国全体のビジネスを考えた場合、上海を極端なまでに重視する多くの日本企業の戦略が必ずしも成功するかどうか疑問です。日本企業が活躍できるのは上海とその周辺のエリアのみで、中国のほかの都市や地域はアメリカやヨーロッパの企業が牛耳ることになってしまう....。いつか、そんなときがやってくるかも知れません。少なくとも都市部においては、地方であっても購買力はどんどん増しています。中国で企業活動する外資系企業は、13億人のマーケットは無理としても、5億、6億のマーケットで勝負するほうが魅力的だと思うのです。上海エリア、多く見積もって1億のマーケットに甘んじることになってしまっては、せっかくの苦労も水の泡。欧米や韓国企業に、上海以外の他のエリアを丸ごと持って行かれてしまうでしょう。もう既に、そんな雰囲気すら漂っていますが....。日本だけの「上海ブーム」。ちょっと考え直してみる必要があるのではないでしょうか....。
2006.08.11
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前回はスクリーンセーバーにグラビアアイドルの画像を使っていたことで、ローカルスタッフからの評判を下げてしまった日本人社員のエピソードを取り上げましたが、ある意味で極端な事例だったかもしれません。企業文化、職場の雰囲気、日本人スタッフとローカルスタッフとの日常的な関係などによっては、まったく問題にならない場合もあるでしょう。でも、余りにもデリカシーを欠いてしまい問題化してしまったケースもありますので、今回はそんなお話を書いてみたいと思います。[実話:その1]ある地方都市の日系企業・日本人総経理は、"非合法な夜の遊び"が大好きでした。そして、彼の部下の中に、日本語が良くできて地元の"夜の世界"にも詳しい男性ローカルスタッフが居ました。日本人総経理はそのローカルスタッフと毎晩のように”夜の世界"へ繰り出しました。日本人総経理にしてみれば、会社の部下を連れて部下の馴染みの場所へ遊びに出かける、と言う感じだったのでしょう。そのうち日本人総経理だけではなく、日本の本社からの出張者や取引先の日本人なども、そのローカルスタッフの"コネ"で遊ぶようになりました。そのローカルスタッフにしてみれば、"金払いの良い日本人顧客"をたくさん"夜の世界"に紹介する機会を得ることになったのです。"優良な顧客"を抱えたそのローカルスタッフのところには、"仕事"を求める女の子が集まるようになりました。そして、その日系企業のローカルスタッフは、公安に摘発されてしまいます。自分自身や会社への波及を怖れた日本人総経理は、何とか拘留中のそのローカルスタッフと連絡をとり、会社関係者が"顧客"だったことを自白しないように懇願しました。ローカルスタッフは2年間の拘置刑になりました。日本人総経理は、そのローカルスタッフを解雇せず、刑務所にいる間の給与も全額支払うことにしたそうです......。[実話:その2]北京の某日系企業・日本人総経理には、どこに出かけるにも通訳兼秘書の女性ローカルスタッフと一緒でした。そんな彼でも、夕食以降の"夜のご接待"には女性ローカルスタッフを連れて行くことはありませんでした。日本人総経理はどちらかと言うと真面目なタイプで、"夜のご接待"もスナックをはしごする程度で"非合法や夜の遊び"に積極的に関わるタイプではなかった感じです。通訳兼秘書の女性ローカルスタッフは、接待などで食事に付き合うのは"仕事"と割り切り、どんなに遅くなっても接待の夕食には付き合い、早朝には日本に戻る出張者を空港まで送り届けるような、しっかりしたスタッフという印象です。ある日、日本人総経理は女性ローカルスタッフとともに取引先の日本人を夕食で接待しました。食事の際、取引先の日本人はその女性ローカルスタッフを褒め称えたそうです。「しっかりしている」とか「仕事ができる」あたりまでなら良いのでしょうが、恐らく「キレイだね」とか「可愛いね」みたいな言葉も出たのでしょう。食事が終わって、日本人総経理は「もう少し、飲みに行きませんか。」と取引先の日本人をスナックに誘いました。取引先の日本人は「いいねぇ。○○さん(女性ローカルスタッフの名前)も一緒に行くよね。」と答えたそうです。いつもなら「我々男同士で行きましょう。」とか「日本人だけにしましょう。」と言って、女性ローカルスタッフを先に帰していた日本人総経理なのですが、この日ばかりは「○○さん、申し訳ないけど、もう一軒だけ付き合って。仕事だから。」と女性ローカルスタッフを説得して、スナックにも付き合ってもらいました。スナックに着いてから、取引先の日本人はサービス係の女の子を相手にもせず、その女性ローカルスタッフを口説きまくっていたそうです。最終的に、その女性ローカルスタッフは"お店の女の子"と同じように扱わてしまい、日本人総経理が何とか取引先の日本人をなだめてお開きになったそうです。暫らくして、その女性ローカルスタッフは日本人総経理に辞表を提出し、会社を去りました.....。[実話:その3]日系企業の日本人マネージャーは、ときどき部下の男性ローカルスタッフと"夜遊び"に出かけました。一緒に食事をしたり、流行のバーやクラブに行ったり、そして時には"非合法な夜の遊び"も一緒しました。そんな風に仲良くしていた部下であっても、さまざまな事情でリストラの対象になる場合があります。その日本人マネージャーも部門再編成のため、一緒に"夜遊び"をしていた部下のローカルスタッフに"クビ"(実際には労働契約の更改を行わないこと)を言い渡すことになりました。一緒に"悪さ"した仲ですから、とても言い難かったそうですが、ローカルスタッフは「そういう事情ならば仕方が無い」と比較的冷静に受け止めてくれたそうです。その後、その日本人マネージャーは自らが"クビ"にしたローカルスタッフが、自分の"悪さ"を現地法人のトップや日本の本社にチクルのでは無いか、と心配で仕方が無かったそうです。幸いにも"クビ"になったローカルスタッフは以前より高い給料の仕事を見つけることができたようで、日本人マネージャーの"非合法な夜の遊び"のことを密告するようなことはありませんでした....。[実話:その2]のようなケースは、何も中国に限った事では無いと思います。でも[実話:その1]や[実話:その3]のように"非合法な夜の遊び"にローカルスタッフを巻き込むことは、日本人にとっても中国人にとっても大きなリスクとなるのは確かだと思います。どうしても必要な場合は、こっそりとひっそりと対応するのが良いでしょう。
2006.08.08
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きょうは本人の許可を得て、北京で働く知人の失敗体験を披露します。彼は20代後半でなかなかの二枚目、日系企業で6人の現地社員を率いるチーム・リーダーをしています。現地採用ではありますが、駐在員のおじさんたちより仕事もできるし、中国の事情を理解しているし、若い現地のスタッフとも同年代なので、現地社員からの評判も良く、信頼されていて、大人気です。ところが、ほんの些細な出来事で、うまく行っていた現地スタッフとの距離ができてしまったとこと。評判も信頼もがた落ちになったと彼自身は感じているようです。いつものようにノートパソコンの画面でを使って、チームのメンバーと社内ミーティングしていたときのこと。ディスカッションが長くなり、パソコンのスクリーン・セーバーが起動しました。彼のパソコンのスクリーン・セーバーは、日本の某グラビアアイドルの写真を集めたものです。その写真のスライド・ショーを見ていた女性スタッフがディスカッションを遮って「○○さん、この娘すきなの?」と尋ねてきました。彼は「うん、大好き。」と。今度は別の女性スタッフが「誰なの?」と尋ねてきて、彼は「xxxxって言うんだ。日本で人気あるんだよ。」などと答えたそうです。男性スタッフは「可愛いじゃん。」とか「ボクの好みじゃない。」とかコメントしていたようですが、最初に尋ねてきた女性スタッフが「○○さんって彼女いるんですよね、こういうの良くないと思います。恥ずかしいです。」と言うと、一瞬みんなシーンとなってしまったそうです。すぐにミーティングは再開しましたが、その後のディスカッションに熱意が失われたように彼は感じたそうです。その後、言いだしっぺの女性スタッフを中心に、彼を軽蔑するという意見が社内に広がりました。いままで友だちのように食事や遊びを一緒にしていた現地スタッフにも、あまり誘われなくなり、彼が食事に誘っても、かつてのように部下全員が揃って参加することは無くなってしまいました。いままでは毎回参加していた女性スタッフは、何か用事を作ってオフでの付き合いを避けるようになりました。実際の仕事に影響が出ているのか彼に尋ねると、直接的には影響していないと思うが、あの一件以来、男性スタッフを含めて現地スタッフと距離ができてしまったようだし、チームのミーティングもいまいち盛り上がりに欠ける、とのことでした。先日、彼に問題のスクリーンセーバーを見せてもらいました。グラビアアイドルとは言え、顔のアップやフツーの服を着た写真が中心で、一部水着の写真があるくらいです。ま、バストを強調したような写真もありましたが、下着姿でもないですし....このレベルで"アウト"だったら、私のスクリーンセーバーなんてセクラハで訴えられてしまうでしょう。私物とは言え仕事で使うパソコンなので、下着姿やセミヌードの写真は敢えてスクリーンセーバーから外した、と言う彼は、なかなかのしっかり者だと感心してしまいました。あの一件以来、評判が落ちたことに関して、納得し切れないで居た彼に相談を受けた私でしたが、その時の私には説明がつきませんでした。しばらく考えてみると、ポイントは3つありそうです。第1に、彼がほぼパーフェクトな日本人社員であったこと。私の知る限り、仕事はしっかりこなしますし、現地社員にも駐在員の上司にも取引先にも気配りしています。かと言って堅物ではなく、現地社員をオシャレな店に連れて行ったり、スタッフとサッカーチームをつくったり、オフの部分でもうまくやっていました。日本の本社からやってきた駐在員たちが頼りない感じなので、より一層引き立って見えたのかもしれません。ですから、ほんの些細なネガティブな出来事であっても、パーフェクトであればあるほど、信頼が高ければ高いほど、現地社員に与えたインパクトが大きかったのでしょう。これは中国に限ったことではありませんが。第2に、彼に彼女がいること。しかも多くのスタッフがそのことを良く知っていたことが、影響していると思います。彼にはとても仲の良い日本人の彼女がいて、現地スタッフと食事をするときなど彼女を連れてきて、アツアツぶりを見せつけたりしていました。それ自体、まったく問題では無いと思いますが、そんな大切な彼女がいるのに、スクリーンセーバーにアイドルとは言え別の女の子の写真を使っていたことが、特に女性スタッフにとってネガティブな印象を与えたのではないでしょうか。北京で働く女の子は、"花心(浮気癖)"の男性を軽蔑する傾向が強くあります。逆に彼女や家庭を大切にしている男性は尊敬されています。スクリーンセーバーを見た女性スタッフが「○○さんって彼女いるんですよね」と言ったことが、そのことを物語っているように思えるのです。これを裏付けるわけでもありませんが、ウチの現地スタッフのパソコンの壁紙は、男性の場合、彼女や子どもや家族の写真を使っているケースが圧倒的に多いです。女性の場合はペットの犬だったり、ハローキティちゃんだったりしますが、アイドルやモデルの写真は見たことがありません。若いスタッフとは言え、中国人は家族や恋人を尊重し、その関係を大切にしている人を尊敬する、と言うことを忘れてはならないのです。第3は、やはり北京(中国)は日本と比べるとまだ保守的である、と考えるべきです。日本に帰るたびにエッチな雑誌をおみやげに求めてくるようなウチの若い男性現地スタッフたちに、私のスクリーンセーバーをチャックしてもらいました。ほぼパーフェクトな彼とは違って、私のスクリーンセーバーは下着姿とセミヌードまであり、です。ウチの男性現地スタッフの意見をまとめると、一人で見る分には全然問題ないし(過激じゃなくて)つまらないくらいだけど、たとえ男の友達であっても、この類の写真を見せ合ったりすることには若干の抵抗がある、とのこと。まして会社で女性社員に見せるような写真では無い、との判断でした。「中国はまだ保守的だから...」と現地スタッフが付け加えました。秘かに憧れるアイドルの写真あたりも含めてこの類のモノ、特に水着の写真などはあくまでもプライベートで秘かに楽しむもの、よほど親しい友人同士でないと見せ合ったりもしない、と言うことのようです。しかも、恋人や家庭がある場合は一層注意が必要なのでしょう。ただ、このことは中国が保守的というよりは、日本が開放的過ぎると言った方が良いのかも知れません。ヌード写真が掲載された雑誌をパブリックな場所で読むことにさほど抵抗を感じないのは日本人男性くらいだと言います(韓国人男性にもその傾向があるそうですが)。北京首都空港に海外から到着した飛行機の清掃で一番人気が高いのが、日本からの到着便だそうです。清掃員にしてみるとエッチな雑誌をいっぱい手に入れることができますから。先ほど例の彼に連絡してみると、スクリーンセーバーを彼女の写真に換えたとのこと。きっと私と同じような方向で原因分析したのでしょう。早く信頼回復できますよう願っています。
2006.07.25
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航空便が拡充されて、日帰りはさすがに無理としても、1泊の北京出張なんて方も多いようですが、せっかく北京にお越しになるのであれば、せめて北京の概要くらい掴んで帰られたほうが良いと思います。空港-高級ホテル-現地オフィス-高級レストラン-空港、だけの行動パターンでは、北京を見てきたことにはなりません。多重構造のマーケットや人々の生活を少しでも感じ取ることは、ビジネスでほんの少しでも中国に関わる皆さんにとっては、必ずプラスに働くはずです。なかなかお時間が裂けないお忙しい方であっても、30分でも1時間でもいいので、時間を作って、一層充実した北京出張にしていただきたいものです。以下、北京にご出張される方に、できればトライしていただきたいことを挙げてみます。人民元を持ち歩きましょう。出張期間中、クレジットカードで済ませようと思えば不可能ではないかもしれません。会社のクルマで移動して高級レストランやデパートで食事や買い物をするだけならば、現金を出し入れする必要はありません。でもタクシーに乗ったり、夜遊びをするには現金が必要です。駐在員に立て替えさせるのは止めて欲しいものです。また、せっかく北京にいらっしゃったのですから、できるだけ庶民的な場所で現金を使ってみるのも、当地の金銭感覚やマーケットを知る上で良いことです。人民元を持ち歩きましょう。成田でも北京のホテルでも両替できますが、北京首都空港でバゲージを待つ間に両替することも出来ます。それに、北京でのクレジットカード払いは、日本ほど安全とは言えません。「ニーハオ!」くらいの挨拶はしましょう。空港の入国審査、ホテルのチェックイン、レストラン、自社の現地オフィスなど、中国人と接するときには、「ニーハオ!」くらい中国語でトライしてみてください。あんまりしつこいのも何ですが、初めてあった方に「ニーハオ!」と挨拶するのはとても良いことだと思います。あなたの「ニーハオ!」が、日本人の、日本のイメージを変えることができるはずです。現地オフィスに立ち寄りましょう。北京に出先がある企業の方でも、取引先やホテルなどで打ち合わせを行い、現地のオフィスに立ち寄らずに帰られてしまう方が意外と多いようです。特に日本本社のトップや役員の方などは多忙なのかもしれませんが、ぜひ現地オフィスに立ち寄って様子をご覧になったほうがよろしいと思います。ほんの少しの時間であっても、自社のオフィスや工場に立ち寄れば、現地の苦労や問題点も少しは見えてくるかもしれませんし、現地のスタッフもきっと悪い気はしないはずです。現地スタッフとコミュニケーションしましょう。現地オフィスに立ち寄っても、日本人社員とばかり打ち合わせをして、現地スタッフとはコミュニケーションせずに帰られてしまう方が多いようです。自社の支店、現地法人、合弁会社で、現地スタッフの立場は異なると思いますが、いわば北京の同僚として後輩として現地スタッフと接することは、お互いにとってきっとプラスになるはずです。言葉の障壁があるかもしれませんが、ちょっと挨拶を交わしたり、或いは通訳に手伝ってもらったりして、積極的にコミュニケーションをとってみましょう。長い滞在の場合は、日本人とばかり行動せずに、一回くらいは現地スタッフと食事をする機会を持ってみてはいかがでしょうか。少しは街を歩きましょう。マーケット視察ということで、自社製品を販売しているお店に立ち寄る方は多いようですが、それだけでは北京のマーケットや人たちの暮らしにまで触れたことにはなりません。デパートやスーパーなら、できれば庶民的なところにも足を運ばれるのが良いと思います。太平洋百貨やイトーヨーカ堂、カルフールに加え、藍島百貨と京客隆あたりに立ち寄るのがよろしいかと思います。北京は道路も、建物と建物の間もだだっ広いので、移動は自動車に頼りがちになると思いますが、ほんの10分でも街を歩くことをお勧めします。交道口東(南)大街あたりであれば、庶民生活に近づくことができますし、鼓楼もみることができ、後海でのお食事にも便利です。西単大街や中関村大街もお勧めです。飲み物を道端の売店(小売部)で買ってみましょう。北京は乾燥しているので喉が渇きます。ペットボトルのミネラルウォーターや飲み物は持ち歩いたほうが良いと思います。ホテルのミニバーなどに用意されていると思いますし、売ってもいると思いますが、ぜひ道端の小さなお店で買ってみてください。ホテルとは値段も品揃えもまったく違い、ちょっとした驚きが体験できると思います。食事のパターンを工夫しましょう。5つ星ホテルの中などの高級レストランで夕食をとっても日本と比べると割安感があるはずです。でも本場の中国料理で無い場合が多いのです。中国料理と言っても、広東料理、四川料理、山東料理など地域ごとに特徴があり、北京ではあらゆる地域の中国料理が楽しめます。本格的な中国料理は専門店で召し上がるのが良いでしょう。超高級店から最も庶民的なお店まで、値段もサービスも雰囲気もピンキリです。ぜひいろいろなパターンにトライして、フツーの北京感覚を掴んでいただきたいものです。北京のオフィスや工場に社員向け食堂があるような場合には、昼食を一度そこで食べてみることをお勧めします。短い滞在だからといって、本格的な餃子と北京ダックと酢豚とチャーハンと杏仁豆腐を食べれるレストランに連れて行ってほしい、などとアテンド役の駐在員にリクエストするのだけは勘弁してください。何でもあるようなレストランは、一昔前の日本のデパートのレストランみたいなもので、本格的な料理は期待できませんから。
2006.07.24
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