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kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2014.10.14
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カテゴリ: 文芸
『神も仏もありませぬ』 では、北軽井沢での生活が描かれていたが、
 こちらでは、東京での生活が描かれている。
 相変わらずの一人暮らしで、母上もまだ御存命。
 妹さんやご子息も登場される。

 この作品では、2003年からの6年間の様子を知ることが出来るが、
 日々の暮らしの中にも、月日の流れが感じられる。
 途中で母上が亡くなられ、この作品群を書き終えた2年後に佐野さんも亡くなる。
 『神も仏もありませぬ』とは、その辺りの感触が違う。

   ***

  買ったのをすっかり忘れていた。
  少なくとも二カ月毎日、日に何度もそれを見ているのだ。
  背中の毛がゾロリと立った。(p.21)

すっかり呆けてしまった母親を、長年見続け、
自分自身にも、その兆候が次第に明確になっていくことを、
極度に恐れている佐野さん。
そして、夢を見る。

  次の瞬間見えているものが、全部白い迷彩服になって、
  迷彩服と脳がバーンとはじけて四方にとび散った。
  私の脳みそはとび散って、世界は白いまだらだらけになっていた。
  私の体も頭もとび散って、ただ白いもようがうようよと動くだけだった。
  夢の中で、あー母さんは今こうなっているのだ、知らなかったと思い、
  今母さんはこうなのだとわかり、そして、私は母さんと同じくらい呆けたのだと思った。
  不安とか恐怖を超えてその様な状態があることを誰も知らないのだとわかった。(p.128)

私は、この部分を、とてもリアルに感じてしまった。
「ただの夢じゃないか」と言える人が、羨ましいと思う。

  母さんは一日一日と少しずつ確かに人でなくなる。
  母さんは呆けてきれいになった。
  おかしなことに品までよくなった。
  正気の時は乱暴でがさつでパワフルだった。
  正気の時は私は母さんとの確執に苦しんだ。
  私は母さんが人でなくなり始めて、母さんを許した。
  正気の時に許せたらと思ったが、うまくいかないものだ。
  私だけ得をしたような気がする。
  「ねえ、あそこにほら白い人がいる」
  「どこに」
  「あそこ」。
  白い人などいなかった。(p.141)

そして、対人関係にも悩みを抱えている。
いつも言い争いになって、言い過ぎて、後味が悪くなり、云わなければよかったと落ちこむ。
自分自身でも「切れたら気狂いなのだ」と思っているのに。
私は、次の部分も、残念ながら、とてもリアルに感じてしまった。

  私なんか、よく友達が、付き合ってくれる、
  みんな私の事を我慢して我慢して付き合ってくれているのだ。
  あゝ始まった、始まったと思う事ばかりなのだろう。
  他人が何か意見を発表すると私は必ずくるりと他人の意見と反対の場所に飛んでゆくのだ。
  今思うとそれ以上云いつのって来る人は居なかった様に思う。
  それが大人ってもんだろう。
  わたしはどこで大人になりそこねたのだろう。
  どんどん落ちこんでゆく。(p.188)

  あー私は友達が一人も居なくなってしまう。
  もう嫌われ者の名前を聞いたら、「アアあの人ね」と云って笑われる。
  文房具屋のおやじみたいになっちまっているのだ。
  私は身もだえして汚い底なしの沼にとび込んだような気がした。(p.89)

そして、気になる記述を見つけた。

  あんたらも時間の問題なのよ。
  私はガンより神経症の方が何万倍もつらかった。(p.113)

  もう息子が二十五、六になっていた時、私は自律神経失調症とウツ病で、
  家でウンコ色の芋虫の様にころがっていた時、息子の友達が麻雀で遊んでくれた。(p.217)

そうか……
それは、知らなかったな……

  私は今、何の義務もない。
  子供は育ち上がり、母も二年前に死んだ。
  どうしてもやりたい仕事があって死にきれないと思う程、私は仕事が好きではない。
  二年と云われたら十数年私を苦しめたウツ病がほとんど消えた。
  人間は神秘だ。
  人生が急に充実して来た。
  毎日がとても楽しくて仕方ない。
  死ぬとわかるのは、自由の獲得と同じだと思う。(p.247)

私は、この部分については、まだリアルに感じることが出来ないでいる。 





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Last updated  2014.10.14 14:39:31
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