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2005年02月26日
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テーマ: ニュース(100344)
カテゴリ: ニュース
昨年秋に集英社発行の『週刊ヤングジャンプ』に連載された本宮ひろ志の『国が燃える』に対し、右翼が抗議して集英社に執拗に威嚇行為を行ったため、集英社は右翼の要求に屈して削除・訂正をするという事件がありました。
 この事件に関して、歴史家で都留文科大学教授の笠原十九司氏が、訂正箇所について、史実に照らして削除や修正が本当に必要であったのかどうか検証し、そのリポートを「週刊金票日」2月25日号に掲載しています。
 そのリポートによると、本宮ひろ志『国が燃える』の南京大虐殺に関する描写は、猪野瀬直樹監修・高梨正樹編集『目撃者が語る日中戦争』(人物往来社刊)に収録された証言記録にほぼ全面的に依拠しているとのことです。この本は1989年に出版されて以来、ただの一度も否定的な批判を受けたことがなかった、それだけ真実に裏打ちされた学問的にも優れた書籍であったことを、我々は留意する必要があるとしています。
 その上で、笠原氏は集英社と本宮氏が削除・修正した4カ所について、子細に検討して歴史学者の目から評価を述べています。例えば、『週刊ヤングジャンプ』第43号の108~109ページに描かれた『百人斬り競争』を連想させるシーンについては、更衣兵処刑の場面であるが、集英社の「訂正」では「百人斬り競争」を連想させ、係争中の名誉毀損裁判の「関係者の皆様には、深くお詫び」して当該シーンを削除するとしているわけです。ところが、歴史学者の笠原氏の目から見ると、「先入観無くこの場面を見れば、更衣兵の嫌疑をかけられた中国人を日本刀で処刑している場面であり、南京城内外で多くの日本軍部隊が行っていたことで、「百人斬り競争」とは関係ないシーンであるとのことです。日本軍兵士たちが集団で見物する前で、将校や下士官たちが腕の見せどころと、中国人の首を次々と斬り落とし、賞賛をあびる光景は、日本軍兵士たちの日記や回想録に多く記録されており、決して作り話ではないとのことです。
 また、厳密に言えば、歴史学として確認されているのは、日本刀での処刑は、中国人を座らせて首を斬る「据え物斬り」がほとんどで、本宮ひろ志氏が描いた『国が燃える』のように正面から袈裟斬りすることはあまりなかったようだとコメントしてます。
 そもそも「百人斬り競争」は二人の将校が南京に進撃途中に個別に行った競争であり、漫画に描かれたような集団処刑ではない。「百人斬り競争」の実態は、無抵抗の敗残兵、投降兵、農民を「据え物斬り」にした競争がほとんどである。その事実を証明する資料は多数収集されており、それどころか、二人の将校自身が後日「百人斬り」について自ら語っている。その上、戦後その一人の将校の父親が追悼集に寄稿して事実を語っている資料も存在しているのだそうです。
 従って、この部分に関しては削除や修正をする必要は全くないというのが、学問的立場からの見解です。あと3カ所についても、詳細に検討が加えられておりますが、興味がある方は是非、「週刊金曜日」を購読してほしいと思います。
 最後に、書いておきたいのは、同じ漫画でも、小林よしのりの『戦争論』は、南京大虐殺は東京裁判で捏造された日本の戦争犯罪の一つであり、南京虐殺の実態は「支那の攪乱工作兵」が南京市民を殺害、略奪、レイプして日本兵の仕業に見せかけたものだと、南京大虐殺否定のためのウソとデタラメを堂々と描いて、これがベストセラーになっているのに対して、史実と寸分違わない力作が右翼の妨害で削除・修正を強制されるという、こういう社会は病んでいると私は思います。






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最終更新日  2005年02月26日 21時26分15秒


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