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2016年01月31日
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テーマ: ニュース(100340)
カテゴリ: 政治問題
 昨日の欄に引用した「日本の美懇談会」の記事の続きは、座長の津川雅彦氏以外の委員がどのような発言をしたか、それは今日の常識に照らしてどのように評価されるか、次のように論評している;




 串田氏は初めて歌舞伎の稽古場を訪れた場面を回顧し「何か血の中でわわっと騒いだ」「文化は遺伝子とか、血の中で思うものなのではないか」と述べた。

 ただ作家で歌人の須永朝彦氏は「串田さんは日本の芸能がどういう歴史をたどってきたか理解した上で語った方がいい」とくぎを刺す。「日本の芸能の始まりは雅楽と言われるが、国内で発祥したわけではない。 奈良時代ごろに中国や朝鮮から音楽や舞踊が入り、日本人の気質に合うように磨き上げられた。能楽の由来も、大陸から伝えられた物まねや曲芸など大衆芸能の『散楽』とされる」

 歌舞伎というと、血筋や家柄が重んじられるという印象があるが、それも近代以降のことという。

 約400年前に始まった歌舞伎は念仏踊りから発展したとされるが「 江戸時代の歌舞伎役者の社会的身分は極めて低く、跡継ぎも必ずしも親子ではなかった。 明治以降、そうした扱いに対する反動から、役者は芸術家志向を強め、ブランドイメージを高めるために実子を跡継ぎにするようになった」(須永氏)。

 今回の「日本の美」の有識者会議について、須永氏は「権力が芸術を管理しよ テとする状況は、ヒトラーがプロパガンダのために映画などを使った過去を想起させる」と冷ややかだ。

 さらに、NPO法人「J-Win」理事長を務める内永ゆか子委員は「宣教師がキリスト教を広めたように、宣教師的なエバンジェリスト(伝道者)の仕組みを考えてみてはどうか」という提案をしている。

 民族問題に詳しい評論家の太田昌国氏は「異民族の心の中に踏み入り、宗教的に征服する役割を果たす宣教師がソフトな侵略者であることば世界史の教訓」とし、欧州の強国が15世紀末以降に植民地政策を進める上で、宣教師を活用していたことを指摘。 「文化交流とは異なる文化の者同士が対等に出会うべきものなのに、エバンジェリストを持ち出すとは耳を疑う」

 懇談会で議論される「日本の美とは何か」などは価値判断に関わることで、多様な価値観を認めないことにもなりかねない。

 太田氏は「個人が属する国の文化をいいと思い、自慢するのは当然のこと。しかし、 国が冠をかぶせ、日本の心や誇りを政策にすることは多様性に反する。排外的、排他的なものになりかねず、文化の発想とは遠い 」と懸念した。


◆首相「お友達」色濃いメンバ-

 この有識者会議「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」のメンバーはどのように選ばれたのか。

 メンバーには、安倍昭恵首相夫人と親交のある作家の林真理子氏や、日本最大規模の右派団体「日本会議」のホームページにメッセージを寄せている茶道裏千家前家元の千玄室氏など、安倍首相の「お友達」色が濃い。

座長の俳優・津川雅彦氏は「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」で発起人を務めた。 津川氏はブログで首相を「政治家には勿体(もったい)ない程の、人徳と誠実さの持ち主」と持ち上げ、懇談会でも「文化宰相としてイメージアップを」と訴えた。

 その津川氏の過去の発言をさかのぼると、講演で特攻隊を「日本国のために我を拾てるという、誇り高い美意識」と賛美。雑誌の対談でも「男は徴兵に行き国を守る訓練をして一人前になれるんじゃないか」「日本人が駄目な人間だとプロパガンダし、謝罪ばかりさせようとする輩は、もう日本人をおりてもらいたい」などと発言している。

 こうした人選について、内閣官房の担当者は「日本文学や茶道など日本の伝統文化に精通している方々。官邸や座長の意向も踏まえた」とのみ説明した。

「日本の美」総合プロジェクト 懇談会メンバー
(敬称略)
津川 雅彦 俳優、演出家
内永ゆか子 NPO法人J-Win理事長
串田 和美 俳優、演出家
幸田 真音 作家
小林 忠  美術史学者、岡田美術館長
千  玄室 茶道裏千家前家元
林 真理子 作家
森口 邦彦 染色家、友禅作家


◆デスクメモ

 「日本がまさに世界の中心で輝く一年であります」。首相の年預所感に出てくる言葉だ。誇大妄想ぶりが心配だが、この延長線上に懇談会もあるのだろう。ただ、謙譲の精神こそ美徳と教わってきた世代にとり「日本はすごい!」という姿勢自体がはしたなく、耐え難い。異国の友人たちにどう釈明しようか。(牧)


2016年1月16日 東京新聞朝刊 11版S 26ページ「歴史 理解し発言を」から引用

 この記事で興味深いのは、津川雅彦が座長に起用された理由が、俳優としての経歴よりは「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」などというゴマすり団体を立ち上げたことが動機のようで、なるほど、そういう理由での人選となれば、これは必ずしも「文化に造詣の深い人物を選ぶ」という主旨から逸脱するのも無理はないということです。また、作家の林真理子氏は保守の論客としてつとに有名ですが、しかし、週刊文春などに掲載される辛口のエッセーなどからは、保守は保守でも合理的なマインドの持ち主のような印象を受けるので、「天孫降臨」をアニメに、とか、「伝統文化は血の遺伝子が継承する」などという狂信的な発言に接して、どういう顔をして聞いたのか、真顔で「ほんとうにそうでございますね」などと真剣に言えたのか、興味のあるところです。








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最終更新日  2016年01月31日 20時32分28秒


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