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米国で「日本たたき」の急先鋒(きゅうせんぽう)と考えられていた米経済戦略研究所長クライド・プレストウィッツ氏の新著「Japan Restored(日本復興)」を読んでこの表現を連想した。
■「称賛」氏に豹変?
この本は昨年11月に米国で出版されるとワシントン・ポスト紙などで取り上げられたので早速電子版で読んでみたのだが、「日本たたき」氏が「日本称賛」氏に豹変したかのようだったからだ。
この本の記述は西暦2050年の日本の様子から始まる。このとき日本の総人口は1億5千万人、経済成長率は4・5%で国内総生産(GDP)は中国を抜き米国にも追いついて世界一になりつつある。医療技術で世界をリードし、ITやロボット、航空機産業でも他を寄せ付けず、21世紀は「日本の世紀」になっているとプレストウィッツ氏は予言している。
そのきっかけになったのが今年16年で、アべノミクスも行き詰まり経済が低迷する中でソニーが韓国のサムスン電子に吸収合併される。
外交的にも近隣諸国との関係がギクシャクして、尖閣諸島問題をめぐって中国と武力衝突の危機が訪れるが、米国は軍事費削減から日本駐在の米軍も引き揚げてしまう。
■婦人問題から着手
内外に行き詰まった状況を打開するために「国家活性化特別委員会」が組織される。興味あるのは、この特別委が まず取り組んだのが婦人問題 で、婦人の社会参加と育児奨励を推し進めた結果、医師の75%、CEO(最高経営責任者)の35%を女性が占め、その一方で出生率は2・3に増え少子高齢化を脱却しているとする。
次に特別委が取り組んだのが英語の普及 というのも意外だったが、英語教育の改善と企業の英語環境の整備で日本人のほとんどがバイリンガル(二言語話者)になり、経済だけでなく政治的にも国際化に大きく寄与するとしている。
そのほか特別委は、産業政策やエネルギー政策などにも新しい発想に基づく提言を行い、これが功を奏して日本の経済、産業が世界をリードするというのだ。
プレストウィッツ氏といえば、 日本は官僚とビジネスが手を組んだ独占的経済システムの異質な国であるという考え を持ち、レーガン政権の商務省審議官として日米貿易交渉で日本側を悩ませたことで知られた。
■指摘に一考の価値
そのプレストウィッツ氏のこの「豹変」ぶりだが、よく読むと同氏は必ずしも日本を称賛しているわけではなく、 今の日本が抱える解決すべき問題を指摘したもの ともいえる。
その解決策について、プレストウィッツ氏の指摘が全て正しいとはいえないが、日本の近未来を考察する上で一読に値するもののように思える。
(木村太郎、ジャーナリスト)
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