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◆静的な脅威から動的な脅威、静的な秩序から動的な秩序へ
-コンソーシアム型秩序と対IS有志国連合
▼変幻自在の国際秩序
冷戦終結から4半世紀が経った。冷戦時代の静的な脅威(挑戦)から動的な脅威(挑戦)に変質したとよく言われる。2012年2月2日の衆議院予算委員会で田中直紀防衛相に対し、自民党政権下で防衛相だった石破茂議員が、「どこに、どの様なものを、何のために、どれだけ、いつまでに、ということを陸海空きちんと説明ができるように持っておく。それが動的防衛カなんじゃないんですか」と諭した。だが実は「動的」というのは石破氏の理解をはるかに超える斬新な意味合いをもっている。それは喩えれば、グーグル検索で言葉を入れたとたん、瞬間に答えの画面が変わっていくような状況--。臨機応変な対応が、新しい安全保障の世界でも求められている。脅威(挑戦)が静的から動的に変質したのに伴い、国際秩序も静的から動的に変質した。冷戦時代の静的な同盟に変わって、「コンソーシアム型秩序」あるいは「コンソーシアム型国際協力」が、その受け皿になろうとしている。
コンソーシアムはビジネスの世界でよく使われる用語だが、軍事や人道援助の領域にもこのコンソーシアムの形態が持ち込まれるようになった。例を拳げれば、国連安保理決議に基づいてアフガニスタンに展開したISAF、同じくソマリア沖海賊対策がある。2014年9月、ウェールズNATO首脳会議と並行したパートナー国を加えた拡大会議で生まれた対IS有志国連会は、さらに進化した仕組みだ。
▼見たことがない戦争と平和の仕組み
上記のコンソーシアム型国際協力の具体例として、対IS有志国連合に焦点を絞る。同連合は国連安保理決議に基づかず、国連憲章第51条の個別・集団自衛権に依る米国主導の軍事作戦組織だ。いくつかの注目すべき点を挙げると
(1)各自が最も都会のよい形で参加する「協力安保」のコンセプトを一層徹底して採用。軍事作戦だが戦闘爆撃機で実際にIS側の攻撃作戦に加わる国、後方支援だけの国、ISの軍資金源を絶つ分野のみに参加する国などアラカルトの形態をとる。この融通性から参か約60カ国の大所帯となった。
(2) 日本はこれまで軍資金源を絶つ経済部門など非軍事な形の参加だったが、安保法成立で後方支援参加が可能 となる。
(3)ISの地域が広いばかりか、欧州などへ出戻りのテロリストの存在も含めると、戦争地域は世界規模に広がり得る。
(4)敵がISとその不特定の協力者ということならば作戦は果てがない
-などが挙げられる。また参加の度合いや参加する部門により指揮・管制・連絡へのアクセスを差別化するITシステムが存在するはずだ。有志諸国は例えばワシントンに集まらないでもバーチャルな連絡体制・会合によって常時、「連合軍」の一員として「見えない世界戦争」に参戦していることになる。
こうした新しい戦争の仕組みはアフガニスタンという限定地域で、ISAFとアルカイーダ及びタリバン掃討軍(OEF、永続する自由作戦)両作戦を一体化させる形で試された。その司令官だった米軍のアレン退役将軍が米国務省文民代表とともに対IS有志国連合のトップを務めているのは示唆的である。
安保法制を事実上取りまとめたといわれる兼原信克官房副長官補が外務省の後輩に、安保法制はホテルニューオータニ方式だと説明したという文章をどこかで読んだ。同ホテルに一階から入って歩いているうちに、いつの間にか二階になっている、という類の話で安保法制もそのようなカラクリだとの説明だったと記憶する。実は対IS有志国連合もそのようなシームレスな性格をもったコンソーシアムなのだ。ISを攻撃・殲滅するはずだった有志国連合は、やがて破壊し尽くされたシリアやイラクの復興開発のコンソーシアムへと変幻自在に変貌していくだろう。
(後半省略)
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