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◆全体主義は忍び足でやって来る
-新しい土俵内でいかに平和国家日本を保つか
▼民主選拳で政権を得たヒトラーのナチ党
2015年春先に亡くなった名古屋に住む叔母が、最後となった電話の会話で「また戦争が起こるような気がする」とポツリと洩らした。久しぶりに電藷をかけたのは、叔母がその正月に90歳になる直前のことだった。驚いて、どうしてそんなことを言うのかと尋ねると、「だって戦争(太平洋戦争)前と世の中の雰囲気がそっくりだもの」とまたポツリと言った。幼少期から私を可愛がってくれた叔母はロ数の少ない人で、人の悪口や噂話など決してしない堅実な人柄だっただけに、これを聞いて思わずドキッとした。日本だけでない。20年余り前、「アンネの日記」の書かれたオランダのナチ占領時代を取材した時、強制収容所の生還者の証言や第二次大戦開戦前の新聞によって窺い知った当時の雰囲気が、今の欧州とよく似ているのだ。1930年代にもベルリンなどでテロ事件が発生したりし、台頭したナチが着々とドイツ社会を制圧し戦争の準備を進めているのに、気の抜けたような危機感のない雰囲気が欧州諸国の社会全体に漂っていたようだ。 ナチの時代はテロ事件の騒ぎの中で、忍び足でやって来たのだった。
NATOの基本ドクトリンとなった「ハルメル報告」をまとめたベルギーのハルメル(仏語読みアルメル)元首相に冷戦終結直後会った時、80代後半という高齢に拘らず矍鑠(かくしゃく)として第二次大戦時代を回顧し、
「最も忘れてならないのはナチが民主選挙で選ばれ政権を掌握したことだ。暴力で軍事政権を樹立したわけではない」
と、民主主義に潜む脆さを警告した。テロ事件後、フランスの「国民戦線」をはじめとして、今後欧州諸国で極右政党の勢力伸長は止め難い。 極右・保守政党は「テロの脅威」を錦の御旗に掲げて、平和や融和の尊重や市民の各種の自由・知る権利などの大戦の反省から築いた「戦後レジーム」をことあるごとに押えつけていこうとしている。
▼国際コンソーシアム型秩序の土俵で活路を求める
中国は米主導の対IS有志国連合に入らず、台湾の参加を静観した。日本が「コンソーシアム型」の土俵外で我が道を行くのは今後一層困難になろう。そうとすれば コンソーシアムに参加する際の「契約内容」の事前審査とその契約の履行を継続監視する体制が、日本の国会を中心に必要 となる。このようなチェックは一切抜きで、安倍政権は対IS有志国連合にすでに参加している。当面はテロ勢力への資金源を絶つ部門に参加を限った限定参加だが、安保法発効に伴い軍事作戦の後方支援にも拡大される。 何よりも安保法と特定秘密保獲法の全面廃止が必要だ。 現実に難しいなら、さまざまなコンソーシアムへの日本の参加の「契約内容」の吟味と参加後の 活動内容監視の準備と情報入手と分析力 が鍵となる。 それを良識ある政党や報遺機関を中心に育てておく必要がある。 情報と知識がなければ人権、国民の利益や国益に対する不適正な活動の追及はできない。
▼真の脅威はテロでなく、暴走するコンソーシアム型国際秩序
小文冒頭に見たような 意図的なマスコミやソーシャルメディア総動員の世論形成、それに追い風を受けた政府の暴走をいかに食い止めるか。 その意味で欧州の難民、テロの問題は日本にとり対岸の火事ではない。「見えない世界戦争」は欧州だけでなく、世界全体を知らぬ間に巻き込み始めている。極言すれば本当の脅威はテロではない。脅威は、 コンソーシアム型秩序とその背後に見え隠れする国際規模で勢いを増す軍産複合体 に対し、「国際社会」の良職の制御の効かない状態が現実化しつつあることだ。頼みの国連のカは1961年、行動するハマーショルド事務総長の謎の飛行機墜落による死を機に急速に萎縮した。
今後は、安保法成立の強引な動きに危機意識を懐(いだ)き立ち上がった市民の行動にかかっている。良識ある政党は、眠っている多くの情報を発掘・活用する仕組みをつくり上げるべきだ。 優れた情報と知識は、政府の暴走を止める最大の武器である。 さらに中国、朝鮮半島の軍事脅威ばかり煽る政府を叱り、東アジアの信頼醸成措置の仕組みを一日も早くつくり上げ、相互の兵力削減により軍備管理・緊張緩和に取り組まねばならない。そうした良識ある、思い切った行動が現在の暴走政治を止め、平和大国・日本ならではの「この国のかたち」と道を維持・発展させていく最大の原動力だ。
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