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衆院予算委員会はきのう、安倍晋三首相と全閣僚が出席して、基本的質疑が行われ、2016年度予算案に関する実質審議が始まった。金銭授受問題が報じられた甘利明前経済再生担当相の閣僚辞任で、数日遅れのスタートだ。
首相が、稲田朋美自民党政調会長との質疑で言及したのが、9条2項改正論である。
9条は1項で戦争放棄、2項で戦力不保持を定めている。にもかかわらず自衛隊が存在しており、「現実に合わなくなっている9条2項をこのままにしておくことこそが立憲主義の空洞化だ」というのが稲田氏の指摘だ。
これに対し、首相は「7割の憲法学者が、自衛隊に対し憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだという考え方もある」と、9条2項改正の必要性を訴えた。
ちょっと待ってほしい。
集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法をめぐり、 多くの憲法学者らが憲法違反として反対の声を上げたにもかかわらず成立を強行したのは、当の安倍政権 ではなかったのか。
自衛隊は、日本が外国から急迫不正な侵害を受ける際、それを阻止するための必要最小限度の実力を保持する組織であり、戦力には該当しないというのが、自民党が長年、政権を担ってきた歴代内閣の見解である。
自衛隊を違憲とする意見があるのは確かだが、国会での議論の積み重ねを通じて定着した政府見解には、それなりの重みがある。
安倍政権が憲法学者の自衛隊違憲論を理由に9条2項の改正を主張するのなら、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定や安保関連法についても、憲法違反とする憲法学者の意見を受け入れて撤回、廃止すべきではないのか。
都合のいいときには憲法学者の意見を利用し、悪いときには無視する。これをご都合主義と言わずして何と言う。それこそ国民が憲法で権力を律する立憲主義を蔑(ないがし)ろにする行為ではないか。
憲法改正には国民の幅広い支持が必要だ。 9条2項を改正しなければ国民の平穏な暮らしが脅かされるほどの緊急性が今あるのか。 1955年の結党以来の党是だとはいえ、憲法改正自体が目的化していると危惧せざるを得ない。
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