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「地区行事 一枚噛(か)んだら 逃げられない」
「家建てる 前に噂(うわさ)が 流れてる」
・・・等々、日本の田舎のそこはかとない可笑(おか)しみと怖さがぎゅっと詰まっている (1)TV Bros.編集部編『イナカ川柳-農作業しなくてよいはウソだった』 (文芸春秋1296円)。高齢化、同調圧力の強さ、国道沿いの大規模店舗群・・・といった、「地方創生」的観点からは見えてこないリアリティーが迫ってきます。そして、
「マイルドじゃ なくてただただ どヤンキー」
という川柳が伝えるのは、ヤンキーのリアル。マイルドでないヤンキーも、いる所にはいるのです。
マイルドヤンキーとは、 (2)原田曜平『ヤンキー経済』 (幻冬舎新書・842円)に詳しい概念。不良性はそれほどではないけれど、地元意識等の保守的傾向が強い若者層を示します。上昇意欲は低め、仲間や家族が大好き・・・といった感じでしょうか。どヤンキーのように大人に抵抗することなく、おとなしくイオンにたむろするという彼らの消費行動を、本書は解きます。
元々は「北部アメリカ人」を示す言葉である「ヤンキー」、日本ではなぜか、昔で言う「ツッパリ」を表す言葉として定着しました。が、今のアメリカでは、日本語で言うところの「ヤンキー」的性質の人がおおいに目立っていて、それがドナルド・トランプ氏です。
(3)町山智浩『トランプがローリングストーンズでやってきた』 (文芸春秋・1080円)は、アメリカ在住の著者が、アメリカのさまざまな珍現象、珍人物のことを紹介する書。アメリカの振れ幅の広さを痛感するとともに、アメリカが日本の先行指標だとするならば、「日本もいずれこうなるのか?」と、不穏な気持ちに。
ここではトランプ氏の過激な言動も取り上げられていますが、そんな彼の姿を「ヤンキー」と思って見ると、説明がつく気が。その変わった髪形も、衣服の末端など一部を極端に肥大させることを好むヤンキーのそれと共通していますし、排他的な地元第一主義、極端な言動を好むところも、ヤンキー的ではありませんか。
してみると 日本語の「ヤンキー」が示す意味も、実はそう的外れではなかったのかもしれません。 「ヤンキー」が大統領になることが現実味を増しているアメリカという国が、世界の中心なのだか世界のイナカなのだか、わからなくなってきました。
酒井順子(さかい・じゆんこ) エッセイスト。最近、地元密着型になってきた。・・・ヤンキ-化?
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