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対策法ができる前の警察は、ヘイトデモの実施を優先させ、カウンターの人たちをためらいなく力ずくで排除していた。対応は明らかに変わりました。
対策法をふまえ、肇察庁が都道府県贅に対しヘイトスピーチにかかわる違法行為に厳正に対処するよう通達を出した影響は小さくないでしょう。法施行後、全国的にデモの数も減っています。もっとも、警察の対応は地域でばらつきがあり、まだ試行錯誤しているように見えます。
対策法自体に問題があることを、指摘しなければなりません。法律は「不当な差別的言動は許されない」と宣言しますが、ヘイトスピーチに関し「違法」「禁止する」とは明記していません。
また、適用の対象を「適法に居住する在日外国人とその子孫」に限定しています。不法滞在状態になった外国人労働者や難民申請者も現実にはいるが、条文からは対象に含まれないように読めます。アイヌ民族や沖縄の人たちへの差別的な言動にも目を向けるべきですし、ネット上の書き込みも野放しのままです。
法律に罰則規定を入れるかどうかは慎重に判断しなければなりませんが、この法律ではやはり不十分で、包括的な人種差別禁止法が必要です。
これまで、北海道から沖縄までヘイトスピーチの現場に数え切れないほど足を運んできました。 在日コリアンが、路上で暴言を浴び、ぼうぜんとしている姿を見て、深刻な被害の存在に気づきました。
「表現を仕事にする者が、ヘイトスピーチを規制する、などと軽々しく主張すべきではない。市民社会の力で対抗すべきだ」と言う弁護士もいます。でも私たちマジョリティーが、マイノリティーに「これも表現の自由。目を閉じて耳をふさいで、少し我慢して」というのは横暴です。被害者は「存在を否定され、本当に殺される」と、恐怖におびえています。
差別の言葉やデマが街で堂々と叫ばれると、「この程度なら言っても構わない」と人々の感覚をまひさせる。 「在日には特権がある」というデマを少なくない人たちが信じてしまう。 ヘイトスピーチは人間や社会を壊すのです。
先月の東京都知事選では外国人排斥を訴える候補が、悪質なヘイトスピーチをまき散らしました。公職選挙法で選挙の自由が保障されており、有効な対策を打ち出せないという課題も出てきました。
対策法を最大限生かし、改善もしていかねばなりません。地域の実情に応じて条例制定も検討すべきでしょう。
(聞き手・横井泉)
<やすだ こういち:ルポライター> 64年生まれ。外国人労働者問題などを取材してきた。著書に「ネットと愛国」「ヘイトスピーチ」など。ルポライター
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