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とはいえ、 自分たちに向けられた暴言と闘ってきた在日コリアンらは、法律の成立を大きな一歩 ととらえています。 日本政府は従来、「立法措置を検討しなければならないほどではない」として、問題に正面から向き合おうとしなかった のですから。これを機会に政府や自治体は、外国人と共に生きる社会に向けた政策を急ぐべきです。
ヘイトスピーチの根底にある差別の問題を考えるとき、大切なのは教育です。対策法は、国や自治体に、不当な差別的言動を解消するための教育活動を求めています。
最近の学生はインターネットで情報を集めます。韓国、中国、在日コリアンなどに関し根拠のないデマを信じ込んでいる学生が少なからずいます。歴史教育はもちろん、人権尊重の大切さ、差別は許されないということをきちんと教えるべきです。 どの課程や教科でいかに教えるか。文部科学省や教育委員会は、現場の教員や弁護士、差別を受けた当事者らの意見も採り入れ、法律を実効あるものにしてほしい。 市民、なかでも教員、公務員、警察官らの研修も必要です。
グローバル化が進み、・国内の外国人が増えています。非正規雇用が拡大し格差が広がるなか、「生活や社会が悪化しているのは外国人のせいだ」と思い込む人も出てくるかもしれません。先進国では、排外主義が勢いを増しているようです。 外国人犯罪を過剰に報道し不安をあおるメディアにも責任 があります。
日本は少子高齢化で人口が減っていきます。 持続可能な社会をつくるためには、定住型外国人、すなわち移民の受け入れを検討せざるを得ない。 そのとき、国民が外国人に対してネガティブな考えや差別意識を持っていては、建設的な議論が進まず、摩擦や衝突が生じる可能性もあります。意識を変えるには、息の長い働きかけが必要です。
日本は、植民地支配をした朝鮮半島からはもちろん、戦後も中国残留の日本人や家族、インドシナ難民、日系ブラジル人らを受け入れてきました。 しかし、様々な制度の壁や差別からそうした人々の能力を十分、発揮させることができず、貧困に追い込んだ例も少なくありません。失敗を繰り返してはなりません。
外国人の受け入れには、日本語学習や就労支援、子どもの教育などの基盤整備が欠かせません。現在の技能実習生のように単身者を低コストで受け入れ、人手不足をしのぐやり方は問題の先送りに過ぎません。ヘイトスピーチ対策は手始めでしかない。包括的な外国人政策が必要です。
(聞き手・桜井泉)
<すずき・えりこ:国士舘大学教授> 65年生まれ。社会学。外国人労働者・移民政策に詳しい。編著書に「東日本大震災と外国人移住者たち」。
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