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さらに東電は8月18日の検討会で、凍土壁は海側が約99%、山側が約91%が0度以下になっているとし、護岸への地下水流入量が減少するとの見方を示した。この効果により、 今後は汚染水の汲み上げ量が1日70立方メートルになると数字を下げて予測 した。
だが東電が公表している汚染水のデータでは、凍土壁が凍結を始めた 4月以降の護岸付近からの汲み上げ量は1日あたり186立方メートル、想定の2倍以上 になる。更田委員は「70立方メートルを(護岸からの汲み上げ量の)目安とするなら、効果が見られない」と指摘した。それに続いて、前出の橘高教授から「破綻しているのなら代替策が必要なのではないか」という意見も出た。
◆やはり破綻した
汚染水全体の増加量は、今年1月から3月31日までは1日あたり約430立方メートル、4月1日から8月25日までは450立方メートルと、ほとんど変わっていない。他方、昨年の汚染水全体の増加量は1日あたり約500立方メートルだったので若干減少しているが、その要因が凍土壁なのか、それとも15年9月に始まった「サブドレン」の運用によるものなのかは判然としない。
さらに東電は、 建屋への地下水流入量が従来は1日あたり200立方メートルだったが、この7月には170立方メートルになった とも説明。だが、 7月は降雨量が前月比で8分の1程度だったため、減少の理由を凍土壁だけに求めるのは難 がある。
検討会での議論を受け、『朝日新開』(デジタル阪)は8月18日付で、「福島第一の凍土壁、凍りきらず有識者『計画は破綻』」と報じたが、東電は8月19日にHPに反論を掲載。今後は「さらに効果が現れる」と主張した。
また、東電の社内分社で、事故後の廃炉・汚染水対策を担当する福島第一廃炉推進力ンパニーのプレジデント・増田尚宏氏も8月25日の会見で、「9月末には凍土壁の効果が確認できる」との見通しを示した。しかし東電は今のところ、目論見がはずれた場合の代替策を準備していない。会見で増田氏は「サブドレンがある」と説明しているが、以前から運用している対策を代替策というのは、筋が通らない。
繰り返すように東電は、11年中に汚染水を処理すると宣言していた。それがいまだに増え続け、処分の目処は立たない。しかも8月には、凍土壁の一部が溶ける事態も起きている。規制委の田中俊一委員長は海洋放出の必要性を唱えているが、東電は放出を否定する一方で、タンクを永久に作り続けるわけにもいかないとも認めている。
解決の糸口が見えない汚染水問題は、これからどうなるのか。新潟の柏崎刈羽原発の再稼働を狙いながら、事故処理もままならない東電の迷走は、まだ続きそうだ。
<きの りゅういち・ライター。>
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