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<田中倫夫記者>
テレビ番組のコメンテーターとしても活躍する、ジャーナリストの 青木理氏が出したのは『日本会議の正体』(平凡社・800円)。 第2次安倍内閣が発足以来、海外のメディアからも「国粋主義的かつ歴史修正的」(英エコノミスト)、「日本型ティーパーティー」(米CNN)、「1930年代の日本の帝国主義を擁護する強力な超国家主義団体」(仏ルモンド)と評される日本会議の姿を、取材と分析によって明らかにしようというものです。
インタビューに答えたのは、東京都議、杉並区議、新右翼団体元代表、神道政治連盟県本部長・・・。日本会議のルーツである宗教団体「生長の家」(現在は路線を変更)にまでさかのぽり調べます。
注目されるのは、首相以下20闇僚のうち16人が入会しているという、日本会議と一体の国会議員議連「日本会議国会議員懇談会」の存在。そのメンバーで第3次安倍再改造内閣の「目玉」とされる稲田朋美防衛相(取材当時は自民党政調会長)にもインタビューしています。
本書が問題にしているのは安倍内閣と日本会議の改憲に向けた「共振」ぶりです。「憲法改正1000万人署名運動」を掲げた日本会議系の改憲1万人大会に安倍首相が送ったビデオメッセージについて、「これほどあからさまに改憲を目指すと公言し、右派団体に向けて明確なメッセージを送った最高権力者は、戦後初めて」と警告します。
教科書問題に取り組む中で日本会議などの右派組織の研究を続けてきた 俵義文氏が出したのが『日本会議の全貌-知られざる巨大組織の実態』(花伝社・1200円) です。日本会議や「国会議員懇談会」の設立の経緯などを論述しつつ、教育の国家統制、教育基本法改悪、教科書問題などとの関わりを深く探求しているのが特徴です。
巻末に「日本会議」「神道政治連盟」「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」などの国会議員議連の名簿が掲載されています。
戦史・紛争史研究家の 山崎雅弘氏が出したのが『日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書・760円) です。
歴史研究の立場から、人脈・阻織、戦前・戦中を手本とする価値観を分析し、日本会議と安倍政権が「改憲」へと傾斜する動機が、かつて日本を戦争へと突き進ませた国家神道を支柱とする戦前体制への回帰にあることを浮き彫りにします。
『週刊金曜日』 成澤宗男氏が編著で出したのは『日本会議と神社本庁』(金曜日・1000円) です。宗教右派とナショナリズムの結びつきにスポットをあてています。
「神社と国家の関係はどう変化したか」「明治の天皇崇拝は神道の歴史では特殊」など、学者や神社宮司へのインタビューも興味深い。巻末に日本会議に関係する国会議員リストが付いています。
どの著書にも共通する関心は、日本会議の実像を見極めたいということです。著者の一人、青木理氏は話します。
「日本会議について幹部や国会議員ら多数に取材申し入れをしましたが、ことごとく拒絶されました。秘密主義というか、批判に対する極度の警戒意識を持っています。しかしそれは逆に彼らの弱点になるのではないか。これまでメディアがあまり役割を果たしてこなかったなかで、 いま出版で次々と取り上げられるのは、国民がその正体を見極めたいと思っているから ではないでしょうか」
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