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敵基地攻撃能力の保有が検討されている。長年、米国は矛、日本は盾と言われてきた。敵基地攻撃能力を保有するなら、日米同盟が変貌する転換点になる。 実質的に専守防衛を見直すならそれに代わる新しい政策の基本原則を示すべきだ。
敵基地攻撃能力で日本が具体的に何をすることになるのか、明確にしなければならない。理論上は攻撃された後に敵基地をたたけば報復、攻撃される前にたたけば先制攻撃になる。 自民党提言には「指揮統制機能等も攻撃対象」とも書かれている。これは日本の基本戦略を大きく変えることになる。これまでの防衛政策の原理原則をひっくり返す可能性がある。 日米同盟の根幹に関わる問題でもあり日米間でもしっかりコミュニケーションをとらなければ、亀裂が入りかねない。
太平洋戦争ではアジアで1千万人以上が亡くなったとされる。アジア諸国の不信感が高まる恐れがある。相手国に必要以上に恐怖を与えないことは重要だ。
防衛費の問題では、日本に対する脅威への効果的な対処政策を策定してから予算をつけるべきだ。あらかじめ防衛費にGDP比2%を充てると決めるのは異例だ。防衛費を増やすにしても、ロシアによるウクライナ侵略の危機に乗じて「こういう時だから増やせるものは増やしてしまおう」というのは良くない。日本は同盟国のなかでひときわ大きい米軍駐留負担額を払ってもいる。
日本には1千兆円を超える国債発行残高がある。人口減少という大きな課題も抱えている。 日本が今直面しているのは社会の活力をどう維持していくかということではないか。 防衛費の増額は「2%ありき」ではなく、必要な額を積み上げていくべきで、国民への丁寧な説明を伴うべきだ。
(聞き手・佐藤裕介)
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政府が「国家安全保障戦略」などを改定する年末に向け安保戦略見直しの検討を進める中、さまざまな考えを持つ国会議員や有識者らの意見を今後も随時掲載していきます。
つちやま・じつお 青山学院大国際政治経済学部教授、同大副学長、国際安全保障学会会長などを務めた。福井県鯖江市出身。青山学院大法学部卒。メリーランド州立大学大学院修了。71歳。
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