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【聞き手・黒田阿紗子】
◆社会保障、個人単位に
推計結果は、ほぼ予測の範囲内で驚きはない。高齢の夫婦が死別で単身になり、高齢の親と暮らす初老の子の世帯が親を失い単身になる。そして中高年の「単身高齢者予備軍」、つまり非婚の男女が高齢化する。これらが全て関わっている。
今のままでは男性の高齢単身世帯は「孤立」、女性の高齢単身世帯は「貧困」が深刻な問題になるだろう。孤立と貧困が重なるケースもあると思う。
家族は最強の社会関係資本(人と人の関係性を資本として捉える考え方)だが、結婚・出産しない人が増えた。 経済要因だと言われるが、その背景には保守的な結婚観がある。男性は「妻子を養わなければならないから経済力がつくまで結婚の資格がない」、女性は「家事・育児を全て背負わなければならない」というもので、これがある限り結婚のハードルは高い。
また、子どもが成長すれば家族は世帯分離をするのが当たり前になった。高齢者が家族に依存しなくてすむように、孤立と貧困を防ぐための税と社会保障制度の脱家族主義化が必要だ。
日本の社会保障制度は世帯単位制で、問題がある。東日本大震災では、被災者への支援金が世帯主にまとめて支給されたことに批判が集まったが、約10年後の新型コロナ対策(として1人10万円が支給された)特別定額給付金も、世帯主一括給付で変わらなかった。
世帯単位から個人単位にするには、戸籍制度を含めた抜本的な変更が必要なので、マイナンバー制度が導入された。しかし政府への信頼感の欠如と大きなミスで、また先送りされた。
もう一つ必要なのは、住宅対策だ。非正規雇用を増やしたため、これから高齢の低年金・無年金者が大量に出て、生活保護の申請が増えるだろう。安心して暮らせる住まいを確保する必要があるが、日本は公共住宅の供給が極端に少ない。
だから、増えている空き家を自治体が借り上げ、シェアハウスのようにして低家賃で貸していけばいい。東京の豊島区が先導して取り組んでいる。そこにケアマネジャー(介護支援専門員)を付ければ、孤立死は防ぐことができる。
一番恐れているのは、都会で高齢者が孤立し、貧困のうちに取り残されることだ。実例がある。新型コロナの感染が拡大した時、自宅で治療を受けられないまま亡くなる患者が相次いだ。あの「在宅療養という名の放置」を見て背筋が寒くなった。能登半島地震の被災地でも、避難所から半壊の家に戻った途端、支援が届かなくなった。家にいることが自己責任として放置された。
私は「在宅ひとり死」は不幸ではないと言ってきたが、これから出るのは「在宅難民」、つまり「在宅という名の放置」になりかねない。
人口統計はかなりの精度で当たるのに、もう何十年も政治は無為無策だった。 少子化対策と同じく時限は迫っている。
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