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岸田文雄首相の米議会演説と日米共同声明の意味を、杉山晋輔元駐米大使は17日、日本記者クラブでこう解説した。外務省とすり合わせて会見に臨んだというから、政府見解の代弁である。問題は、何をどこまで守るのか。
日本の国土・国民だけでなく、自由と民主主義・市場経済・人権・法の支配といった理念を守るというが、今や米国内でさえ、それらは格差や分断、二重基準や大国の独善によって揺らいでいる。
まして杉山氏は、聞き逃せない核心をしれっと言った。
「この同盟に基づいて、日米安全保障条約に依拠する場合も、そうでない場合も、日本近傍の地域、北朝鮮や台湾海峡の平和と安定のため米国と戦うと共に、グローバルに米国のパートナーとしてやっていくことを表明した」
安保条約の対象範囲でない地域や情勢でも、地球上のあらゆる事態に米国と共に命を懸ける?
米国の世界戦略に巻き込まれる恐れについて、杉山氏は「概念が分からない。日本の平和に重大な影響があるから、自分のためにいろいろやるんで、何も嫌々巻き込まれるんじゃない。嫌ならやらないんですよ」と言う。
共同声明は、中国とフィリピンが衝突する南シナ海「紛争」について「中国の力と威圧に強く反対する」と明記した。すでに米海兵隊が常駐している。自衛隊も加勢を求められるのか。
翌日、防衛官僚出身の柳沢協二元内閣官房副長官補(安全保障担当)に会った。 「自衛隊が米インド太平洋軍の一翼を担って出動するかのようだ。政治メッセージではとどまらなくなる。そんな余力はないし、かえって日本有事を近づけかねない」 と批判する。
台湾有事でも、日本が事前協議で在日米軍基地からの戦闘機発進に応じれば日本参戦を意味する。 米軍の要請を断れば同盟崩壊だ。 「どちらも嫌だから、絶対に戦争にしない外交をするしかない」。ところが、当の元外交官は「銃を取れ、命を懸けろ」と言う。
政治家がぼんやりしていると、こういう倒錯が起きる。首相や与党だけではない。国会で、野党の過半は会談結果を評価した。
柳沢氏は「国防とは国が国民を守るのではなく、国民が国を守ること。守りたい国を作るのは政治の役割。戦争になったら何を失い何を得るのか、政治家は説明すべきだ」と説く。
(専門編集委員)
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