フリーページ
「沖縄タイムズ」と「朝日新聞」が今月、沖縄を除く46度道府県知事への合同アンケート結果を報じた。沖縄駐留米軍の受け入れに関する質問に、大阪府の吉村洋文氏(維新共同代表)は「国から要請があった場合は市町村とも協議していく」と応えた。
維新は橋下徹氏が共同代表だった2013年にも、米軍輸送機オスプレイの訓練の一部を大阪府の八尾空港で引き受ける考えを示したことがある。地元が反対し、立ち消えになった。
今回の吉村氏はもっと慎重で、受け入れ意志の有無は選択肢を選ばず無回答。自由記述で、打診があればいったん検討すると答えたにすぎない。それだけで目立つのは、残りの45氏が全員、受け入れの「意志はない」と言い切るか無回答だったからだ。
45氏の中には、国政野党の支持を受ける知事もいる。だが、誰かが日米安保体制に反対しているという話はない。米軍基地の必要性も認めている(沖縄の玉城デニー氏もそうだ)。
問題は、基地の70%が沖縄に集中していること。圧倒的不平等を是正する再配置の話がくるなら、吉村氏のように少なくとも検討するのが筋ではないか。 安保体制の「恩恵」を享受しながら「負担」を言下に拒否する45氏は、この点において新自由主義とパフォーマンスの維新政治にも劣る。
「国と沖縄の間でどうにかしておいて」という本音を隠す定番の言い訳は「外交、防衛は国の専管事項だから」。今回の調査でもそう記す知事が目立った。しかし、外交と防衛が一義的に国の責任だとしても、その過程で住民の生命、財産、人権が脅かされるなら、抵抗することはむしろ自治体の責務であるはずだ。
だから沖縄県は辺野古新基地建設に反対し続けている。一方、国はあらゆる脱法的手段を駆使し、司法のお墨付きを得た。最終的に昨年末、史上初の代執行で県の権限を奪い、自ら工事続行を認める手続きをした。
この代執行について聞くと、岩手県の達増拓也氏だけが「どちらかといえば不適切」と答えた。「どちらともいえない」が25氏、「無回答」が17氏。「適切」も青森の宮下宗一郎、秋田の佐竹敬久、群馬の山本一太の3氏いた。圧倒的多数が静観している。
2000年の地方分権一括法で、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に変わった、はずだった。 沖縄県が再び国の「下」「従属的立場」に置かれた今、他府県は国と「対等・協力」な関係でいられるだろうか。
今国会に、地方自治法改正案が提出されている。非常事態の際、国が地方に指示を出して従わせることを可能にする。今でも感染症法など個別法に指示の仕組みがあるが、それを無限定に広げるものだ。
この地方自治の危機に、全国知事会は驚くほどおとなしい。指示の必要性に「理解」を示し、「必要最小限度」にするよう提言して終わっている。
2000年代の「闘う知事会」は歴史のかなだ。沖縄の自治破壊を座視してきた「闘わない知事」たちは、日本全体の自治破壊もまた、見過ごそうとしている。
<あべ・たかし>沖縄タイムス記者。
補選後の要望(20日の日記) 2024年05月20日
金権政治を成敗する(19日の日記) 2024年05月19日
新たな命が運ぶ絶望(18日の日記) 2024年05月18日
PR
キーワードサーチ
コメント新着