Just the way you are

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2007.01.28
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カテゴリ: 演劇(野田秀樹)
【NODA・MAP 第12回公演】
 「ロープ」

作・演出/野田秀樹

Bunkamura シアター・コクーン
開演  14:00

<おもな出演者>
宮沢りえ  藤原竜也  渡辺えり子  橋本じゅん  宇梶剛士  三宅弘城
松村 誠  中村まこと  明星真由美  明楽哲典  AKIRA  野田秀樹

  舞台装置はシンプル。正面には、なぜか斜めったプロレスのリング。年季が入っておりうす汚れている。下手には、人1人入るのがやっとの小さな木の小屋があるが、出入り口がない。上手には粗末な板壁に木のドアが2枚。
よく見ると舞台奥の背景には黒の地に白くびっしりと英語の名前らしきものが描かれている…意味深。

 このボクシング・ジムの経営と同じように傾いた四角い「リング」を舞台に、ベトナム戦争の戦場と現在とが 交錯 しながら話は進んでゆく。単なるタイムスリップの話でないところが、ややこしい。
ジムの跡取り息子のノブナガは、表向きは「プロレスは八百長じゃない」と信じて引きこもりになったレスラーという設定。小屋の下方の差し入れ口から食事をもらう毎日だ。
その残飯を狙い、ノブナガを隠し撮りする怪しい一味の存在…。
か細い藤原君がプロレスラー役をやること自体八百長しかあり得ないじゃない!と思ったら、彼本人もパンフレットに同じことを書いていた。(笑)

リングの下にはプロレス実況中継がやたらと上手い、未来から来たという”コロボックル”の「タマシイ」(宮沢りえ)が棲み付いている。
タマシイを育てた父親は、ベトナムのある平和な村をたった4時間で滅ぼしたアメリカ兵。だが彼は、ベトナム女性から産まれたばかりの赤ん坊を受け取り、沖縄、そして本土返還後は東京へと身を隠すように逃亡し、とある小さな町のレスリングジムのリングの下に30年間も引きこもり、ひっそりと死んだという。
あり得ない…(笑)ある意味ファンタジーだね、これは。

 ある日のタッグマッチでノブナガが適役のグレイト今川を半殺しにした辺から、ストーリーは急速にベトナム戦争へとリンクし、「ロープ」の上には有刺鉄線が張られ、どこぞのうす汚れたジムが戦場と化す。ノブナガと覆面プロレスラー達は、いつの間にかアメリカ兵となり殺戮の鬼と化している。
ベトナム人虐殺の様子をリアルに実況するタマシイ。汚れのない存在のタマシイ@宮沢りえの口から発せられる(史実を元にしたであろう)残虐な仕打ちの数々は…「見えていないのに目を背けたくなる」ほど酷い。

「ロープ」に跳ね返された力は増幅し、さらなる暴力と狂気を生み出してゆく。
芝居のタイトルが、なぜ「リング」ではなくて「ロープ」なのか?
観続けるうちに意図するものが何となくではあるが、わかった気がした。

初めのうちは、今さらベトナム戦争?という気もしたけれど、米兵とベトコンとの過酷を極めた泥沼線は、「生きるか死ぬかの真剣勝負」という面で、プロレスの比喩としては最近の戦争(イラク戦等)よりもリアリティがあるかもね。
さらなる興奮を求めてプロレス中継=「演出されたストーリー」を観る者は、四角いテレビを通してイラク戦争やら同時多発テロ中継を(不謹慎ながらも興奮を覚えつつ)眺める現代人に通ずるという皮肉かな。

 ノブナガは戦場から逃亡する途中で、命尽き果てる寸前のベトナム女性から”びしょびしょのもの”(しかし限りなく温かく柔らかいもの)=「タマシイ」を受け取る。

終末シーンでのタマシイ@宮沢りえの台詞が心に残る。
「…あったことをなかったことにしてはいけない。(…中略)天気のいい朝、四時間で滅びたミライの村が無かったことになる時、あなた達の未来もなくなるよ。私はこのリングの下に「力」を語る為に棲みついたのじゃない。「無力」という力を語るために棲みついているの。人はいつも、取り返しのつかない「力」を使った後で「無力」ということに気づく。(…中略)私のミライは滅んだ。けれどもあなた達の未来はまだ、天気のいい朝に、四時間で滅んではいないのだから。」

我々は『あったことをなかったことに』してはいけないのだ。
そして、一方的に他者からの力にせよ、自らの意志にせよ命=タマシイを絶つことは、未来を滅ぼす行為だということを噛み締めるべきではないだろうか。


…そんなわけで、メッセージ的に重いゆえに色々と考えさせられ=楽しめました。出演者も野田秀樹ご本人、渡辺えり子、宇梶剛士などなど、屈強な(?)実力派揃いで素晴らしかったです。
でも個人的には、蜷川作品の藤原竜也の方が好きかな~。





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Last updated  2020.05.23 18:07:18
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