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2007/05/23
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ピーター・ディキンスンの「キングとジョーカー」(King and Joker,1976)



「新しい本」(2006年訳)というつもりで借りたのだが,けっこう古い本(30年前)だった(サンリオSF文庫版がネットオークションでかなりの高値になったこともあったらしい)が,おもしろかった。

当時の英国王室の日常生活が描かれ,朝食の場でハムのかわりにがま蛙が入っていたことを皮切りにした一連のいたずら(ジョーク)とそれに絡んだ殺人事件が起こっていく。

ストーリーの中心となるのは,自ら公立の「オランダ・パーク綜合中学校」への進学の道を選び,探偵役でありながら実は父の国王であるビクター2世などの大人たちから「真実の聞かされ役」でもある13歳の王女ルイーズ。

と,以上でわかると思うが,「当時の英国王室」とは「現実の英国王室」とやや異なっている。

現エリザベス2世の祖父ジョージ5世が長兄エドワードの死とエドワードの婚約者であったメアリーと結婚したことにより,(名前の変遷はあるものの)今のウィンザー朝がある。
作者のディキスンはエドワードを奇跡的に死の淵から生還させ,メアリーと結婚させることによって「新しい」王朝を作り上げた。

しっかりした系図も示され,国王ビクター1世となったエドワードの子供たちから曾孫のルイーズまでの長期間にわたる乳母であり,物語の時点では死の直前にあるミス・ダードンの回想によって,その間の歴史の断片が語られる。

ロイヤル・ファミリーマニアではないので,王室関係の人物が実際の人物のカリカチャであるかどうかはわからなかったし,訳者の「ノート」にも山口雅也の解説にもその点については書かれていなかったが,さらっと語られる人物とたっぷり語られる人物と,チャーチルを始めとした実際にいた人物とがきちんと「虚構」の世界を作っていて,読み応えたっぷり。

「偽の歴史」を楽しむだけでなく,ジョークから始まり殺人事件に至るミステリとしても(残念ながら, 「最初にアリバイができた人間を疑え」 といういやな習性のために犯人の見当はついてしまったのだが)完成度は高い。

読み終わってしばらくしてから考えてみると キングとジョーカーがそっくりだったということで タイトルもピッタリだった。

調べてみたら,この作者の作品で訳されている本はほかにもあるようなので,ちょっと追いかけてみるつもりになっている。


 読了本(海外)  (ピーター・ディキンスン)からごらんください。

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Last updated  2007/05/23 12:23:29 AM
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