全16件 (16件中 1-16件目)
1
・中島京子さんとの出会いのきっかけは、辺境ライター高野秀行さんが書いた「辺境中毒」という本の「辺境読書のコーナーで、一番好きな小説家「ナカキョー」として紹介されていて興味を持ったことだった。「ナカキョー」さんは辺境読書には全然関係ないのだけど文章がとても好きだということだったと思うが、こんな出会いもあるのだなと今思えば懐かしい。・そういうわけでタイトルに魅かれた「妻が椎茸だったころ」が多分初読みで次が「ゴースト」だったかな?「長いお別れ」「小さいおうち」「のろのろ歩け」なども読んで2年ぶり6冊目の中島京子さん作品を図書館本で。ワシにとって「ナカキョー」さんは、のめり込んで読むようではないけど独特の世界観があってまた読んでみようかなと魅かれてしまう小説を書く作家。「小さいおうち」で直木賞を取られたのだけど、マイベストは認知症になった夫との生活を書いた「長いお別れ」だなと思っている。・で、この小説はまた「帝国図書館」が主人公という画期的な発想で、「ゴースト」と「小さいおうち」のテイストを合わせたような小説だったような気がするが、なかなか読み応えあり、読後感もまたなかなかだった。夢見る帝国図書館 [ 中島 京子 ]楽天で購入2020.1.27読了〇「図書館が主人公の小説を書くのはどう?」●上野のかつて帝国図書館であった子ども図書館の近くの公園で、と初めて出会った喜和子さんが「作家」である私に話したことが物語のスタート場面で、ラストシーンは・・・〇復員兵が図書館の前に立った。・・・「なんて名前?」「こんどは、小さな声でその子が答えた。「きわこ」●このラストシーンから物語はまた始まりに戻っていくのだ。という感じで小説は終わる。●理想に燃えながら始まった帝国図書館は、金策や政治や戦争に翻弄されながらもその理想を保つ努力を続け、たくさんの作家やいろいろな人たちとともに生きながらえてきた。娘が大学に入るのを待って九州の家を出て自由に生きてきた喜和子さんの奔放と思えた人生の真実が次第に解き明かされてくる・・・で、最後のシーンで終わるのだ。●小説半ばで喜和子さんが死んでしまったときにはびっくり!だったが、生きている喜和子さんの口から彼女の過去の人生を語られるよりは死後にほかに人の口からまたは創造として解き明かされていくほうがよかったのだろうなと思う。母親に半ば捨てられて預けられた親戚から逃げ出して東京で2人の復員兵と奇妙な同居をしていたこと、そのとき「兄さん」と図書館に行ったこと、「兄さん」が図書館の小説を書いていていろいろ話をしてくれたこと・・・ってやっぱり喜和子さん本人の記憶にはなかったり現実かどうかあいまいだったという設定で語られてこそということだったのかと思う。・この小説で出てきた帝国図書館にかかわった文人たちは、永井久一郎(永井荷風の父で帝国図書館の創立者)、幸田露伴、淡島寒月、夏目漱石、樋口一葉(図書館は彼女に恋したらしい)、谷崎潤一郎、芥川龍之介、宮沢賢治、宮本百合子、林芙美子・・〇「上野って、昔から、そういうとこ」「上野はいつだって、いろんな人を受け入れてきた場所よ」●というような喜和子さんの台詞がたびたびでてくるが、この上野愛は作家である中島さんの気持ちを代弁している可能性もあるなと思っている。・中島京子さんという作家、恋人や親友にはなれないけど気になるというか興味があるというか一緒にいると穏やかになれるような存在だという気がする。うまく言えないなあ・・・
2020.01.30
コメント(0)
●こんな本を書く作家って椎名誠しか知らなかったけどこんな人もいたんですね。というのが第1印象だったが、とにかく笑えた。やってることはかなりハードなんだけど笑える。「エンタメ・ノンフィクション」という新たなジャンルの提唱も面白いと思ったし、辺境読書で紹介された作家に興味を持って新たな作家との出会いのきっかけにもなった本。辺境中毒! (集英社文庫) [ 高野秀行 ]楽天で購入2013.8.24読了●なんでも自分で試してみないと気が済まずに辺境に出かけた体験を面白く紹介するのがスタイルの著者、今はミャンマーがお気に入り。アヘン栽培が盛んで紛争もあって危なそうなところなんだけど・・・・散髪屋に行ったら発電機用のガソリンを買ってくるまで待たされたり、中国から入って不法滞在、で帰るに帰れず、とはいえもう中国には戻れないので今度はタイに密入国・・・・何とか日本にたどり着く話などが軽く書かれてます。○松戸に住むUMA(Undefined mysterial animal)「マツドドン」とか・・・●対談も笑えますよ。○ボーイさんが首に蛇を巻いて登場・・・サクっと首を落として血をキュッキュッとグラスに絞って、そこに紹興酒を足して「食前酒でございます」とか●著者が提唱する「エンターテイメント・ノンフィクション(エンタメ・ノンフ)」分野の本が後半の「辺境読書」の項で紹介されているがどれも面白そう!たとえば「素晴らしきラジオ体操」(高橋秀実)、「世界屠畜旅行」(内澤旬子)などなど・・・対談のなかにも面白そうな本沢山でてきます。で、メモ取るのが面倒なので手元に置いておきたくなって結局本買っちゃいました。○「旅の指差し会話帳」は役に立つらしいので覚えておこうっと
2020.01.30
コメント(0)
「本の雑誌社」では一緒に仕事をしていたし「東ケト会」メンバーでもあった盟友の評論家の目黒さんが、椎名誠の全作品を対談で振り返るという企画を本にしたもの。この(壱)ではデビューしてから77作品までが取り上げられているのだが、サクサク読めて面白かった!本人に訊く(1) よろしく懐旧篇 [ 椎名誠 ]楽天で購入2020.1.25読了・「さらば国分寺書店のオババ」でデビューしたときワシは大学生で「変な作家が出てきたな」程度に存在は知っていたけど読んでなかったのだが、自分が社会人になってから読書にハマったきっかけが椎名さんだったと思う。椎名誠の本は手元にあるのを数えてみたら30冊くらい、その後は図書館で借りているので4-50冊くらい読んでるのかな?と思う。・「怪しい探検隊」シリーズ、とにかくカッコよかったし何より笑えた。それ以来、椎名さんの大ファンになってしまい「東ケト(東日本何でもケトばす会)」に触発されて作ったのがワシらの「名古屋HOT隊(変なおじさん登山隊)」なのだ。ところでこの「怪しい探検隊」シリーズは事実=ノンフィクションだと思っていたのに、フィクションも混ぜた私小説だったんですね!?これがこの本を読んで一番ショックだったことかもしれないが、30年以上たってから種明かしされて「そりゃそうかもしれないな」と今更納得もしている。そんなことでシーナマコト愛が失われてしまったりすることはないのだ。・椎名誠の本は「読んだことがあってまた読み返したいなというほど気に入っている本」「読んだことはあるんだけどもういいやと思う本」「読んだことがあるかどうか記憶があいまいな本」「読んだことはないけど読んでみたい本」「読んだことないしあんまり読みたいとも思わない本」の5種類に分類できることが分かった。読んだことがなくて読んでみたいと思った本は、「パタゴニア」「水域」「ひるめしのもんだい」「喰寝呑泄(くうねるのむだす)」だ。・目黒さんが全ての本を熟読しなおして付箋をつけまくり、事前にポイントをまとめて椎名さんに送って準備して対談に臨んだのに対して、本人は本を読み返すこともなく漫然と対談に望んでいるのが「らしいな」と思えた。目黒さんの歯に衣着せぬ感想も面白かったし、それを普通に受け入れる椎名さんにも好感がもてて面白い対談になっていた。こんなに遠慮のない対談って普通はないよな!?と思う。・シーナマコト愛、椎名誠への片思いを振り返って整理するのにちょうどいい感じの本だった。・そうそう、これだけは書いておかねばなるまい。というのは、「武装島田倉庫」「アドバード」など椎名さんが書いたSF作品はあまり好きではないということ。読みにくくて意味不明で気分が落ち着かないので苦手だ。本人も目黒さんも気に入っているみたいだけど残念ながら苦手だった。・あと、椎名誠と言えば乱暴者の青年時代を過ごした後、社会人になって出版関係の仕事をするようになってから突然に勢いで本を書いてみたら売れ出した、みたいに考えていたけど、特別収録されていた高校時代に書かれた作品「白い手」「赤い斑点のまむしの話」「突起」を読むとかなり完成度が高くて才能というか素質があったんだなと思った。まあ当然か!・こんなサイトがある→椎名誠「旅する文学館」 ここにアクセスすればこの本の内容は全て閲覧できるし、まだ読んでない(弐)の内容も閲覧できる。やっぱ紙の本がいいよねとも思うが、(弐)は図書館に蔵書がないので悩むところだが、この際(壱)(弐)まとめて購入して手元に置いておきたい衝動に駆られている。 この「旅する文学館」というタイトルが、今読んでいる「夢見る帝国図書館」(中島京子)とネーミングがちょっと似ていて驚いた。(当然なんの関係もない)・あと、椎名誠が「タイトル名人」であるという評価されていたが、も確かに言えるな、独特の言い回しも癖になるけど確かに、思わずタイトルで読みたくなってしまうんだよなと改めて気づかされた。
2020.01.26
コメント(0)
・エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座講座のを主催する小澤先生が青少年向けに書いた本。今年(2020年)の1月に名古屋で開催された講座に2年半ぶりに参加したときに購入した。折れない心を育てる いのちの授業 [ 小澤 竹俊 ]楽天で購入2020.1.22読了・小澤先生のパワーには全く恐れ入ってしまう。クリニックで在宅緩和ケアを中心にした医療を展開する傍らで、といいうか現在はおそらくこっちがメインなんだろうけど、毎週のように全国を飛び回って講習会を開催し、講演会もこなしながら、その上さらに子どもたちに向けた「いのちの授業」まで展開している。まさに、小澤先生に共鳴した周りのスタッフや全国つづ浦々の人々の協力があってのことだろうと思うのだけど、数年の間でこれだけ広がってきたということは、それだけ求められているということの裏返しなのだろうか。・「いのち」の問題や「不登校」、結局ルーツや解決(穏やかになる、分かってもらえたと思ってもらえるかなどかな?)は共通なのかもしれない。・この本を読んだ青少年がどう感じるのかは全く予想できないし、ちょっとネガティブな予想が浮かんだりもする。でも落ち込んだり落ち込みそうになったときに真剣に悩んだ人たちには共感して次の一歩を踏み出すヒントになるのかな?とも思う。なにせ、青少年たちとの関りが全くない今日この頃、娘や息子ももう中年、職場の若者たちは宇宙人かと・・・・講座のおさらいをするにはちょうど良かった。・講座の内容を予習・復習するには「死を前にした人にあなたは何ができますか」が超お勧めです。
2020.01.25
コメント(0)
落ち込みやすい女性の同僚がいて、彼女はジムに通って筋トレを中心にトレーニングしているのだけど最近は疲れて休日は眠ってばかりだというのでとても心配。 落ち込みやすい彼女には、以前読んだ本に「有酸素運動をするとオキシトシンやいろんなものが出てきて気分も体調も良くなるらしい」とか「親切もいいらしいよ」と書いてあったよと話したのだが、実は詳細は忘れてしまっているのだ そういう自分ももう20年近く前にうつ状態になったことがあって、それをきっかけにランニングを始めたのだけど、ここ数年、オーバーユースか老化かあちこち痛くなって走らなくなってから(それが原因かどうかは確定できないけど)また気分が落ち込み気味だった。で、あれこれ本を読んで考えたことがあるのでそれらの本を振り返りながら紹介してみたい。脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方 [ ジョン・J.レイティー ]楽天で購入2017.3.19読了●アメリカの落ちこぼれ高校の生徒に早朝運動プログラムを取り入れたら成績優秀になったという衝撃的なレポートが導入でめちゃくちゃ興味をそそられる●運動すると脳が活性化されて記憶力など冴えて来るらしいので仕事前の運動=通勤ランはルーチンにしようかなと思ったり、「うつ」や「老化」にも効くということだし治療だけでなく予防効果もあるとのこと。そういえば実生活の経験でも走らないと精神的に不調になるような気がする、心の不調や病気が実は脳に起こっていることの結果だと再認識できたというか、そもそも精神的な不調に陥った時にランニング事始めしたのだけどそれが回復のために良かったのかも?と今更気が付いた。●再開した通勤ランは仕事のためにも継続してていくつもり。精神衛生のため、ボケをはじめとした老化を遅らせるためにもほどほどでランニングは続けていこうと思います。●臨床的研究や生理学的研究の結果があれこれ書いてあるけど結論は表題の通りそのまま「運動で体だけでなく脳も鍛えられる」ということ、もっと簡潔に結論だけが分かりやすい本にすればいいのではとも思ったが、2009年に出版されて8年、あまり世の中の情報が変わってないのは効果がなかったのか企業の利潤に結び付かなかったからなのか?と勘繰りをいれたくなってしまった。脳からストレスを消す技術 セロトニンと涙が人生を変える (サンマーク文庫) [ 有田秀穂 ]楽天で購入2017.4.9読了〇心のストレスの正体は、「脳が神経伝達物質を通して感じるストレス」「ストレスには勝てないと気づくこと」●そう考えると何だか性格のせいだとか不器用だからとかというわけではないんだと気が楽になって冷静というか客観的に考えられそう。〇学習脳:ドーパミン、仕事脳:ノルアドレナリン、共感脳:セロトニン・・・三つのバランスを整えるセロトニン脳の安定が大切で、〇セロトニンを高める秘訣は「太陽の光」と「リズム運動」●ということなので通勤ランはいろんな意味でプラスな気がする。(この前読んだ「脳を鍛えるには運動しかない」とも合わせて合理的かも)〇ストレスが溜まっている状態というには交感神経緊張が高まっている状態・・・〇情動の涙が流れるとストレスが解消されるのは、脳内が交感神経の緊張状態から、副交感神経有意にスイッチングされるから○涙を流したときは「スッキリ」し、笑った場合は「元気が出る」という違いがあった○「これはいつ見ても泣いてしまう」という泣ける素材を・・・●なので「myこれは泣けるリスト」を作ろう!(本?コミック?映画?忙しいので30分以内で泣きたいかも?)と思ったのだけどイマイチいいものができていないのだ。GO WILD野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフ [ ジョン・J.レイティー ]楽天で購入2016.12.7読了●計らずしも6年前に読んで影響を受けた「BORNtoRUN(走るために生まれた)」の流れをくむシリーズという位置づけだと書かれてあった。農耕時代以降になって失われてしまった狩猟時代の生活こそが自然で、食事、運動、睡眠、思考・・・を野生化しようという内容。炭水化物やめたり走ったりしているけど全然野生化せずに腰痛やストレスに悩まされてるのはどうゆわけだ!走っても気持ちが高揚しないのはやりかたがまずいのか?諸悪の権限は酒か?●寝たら寝るほどいいらしいのでよく寝よう!部屋を暗くして・・・〇野生の体には癌も鬱も高血圧もない!?●狩猟時代にうつ病がなかったなんて証明できないだろうと思うし、もしうつ病になってもすぐ死んじゃっただろうと予想されるけど・・・〇自然は人間に無関心〇進化は人間個人の有利ではなく種の保存に有利な条件にはたらく・・・なるほど親切は脳に効く [ デイビッド・ハミルトン ]楽天で購入2017.4.20読了(正確には本書ではない)表題&〇 「幸せ物質オキシトシンで人生が変わる」●がエッセンスで、「親切」のほかにキーワードは「情け( 共感から生まれる )」「感謝」「許す」かな?●「許す」については「情けは人の為ならず」ということね。〇感謝日記をつける●良さそうかなと思って始めてます。が、それ自体が負担でオキシトシン減りそう!?〇小さないいこともね●親切にするだけではなく感動したり感情を表に出したりしたほうがオキシトシンが出ていいらしい。そりゃそうだろうなとは思うけど感情を表に出さないように生きて来たので今更は難しそう?●他者とつながるかぁ・・・分かるけどそれが辛く感じるときもあるし、離れてからまた群れに戻る時に勇気が必要だったりするしなぁ・・・とは言え自分の存在感やアイデンティティーを確認するのに人とのつながりが不可欠な要素であることは確かで、それを再認識できたことに価値がありそう。(残りの自分の人生にとってですけど、なるほど)●ビジネス本やこんなジャンルの本はあまり読まなかったんだけど・・・精神的に落ち込んだり仕事で考えることがあったりで今年になって何冊か読んだ。それなりにタメになった気もする。でもすぐ忘れちゃうんだな、たぶん。
2020.01.24
コメント(0)
エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を再受講することにしたので、講師の小澤先生が書かれた本、講座で学んだ内容がほぼそっくりそのまま本になっている感じの本なので予習というか、再読なので復習というか。前回受講は2017年の7月だったのでなんとあれからもう2年半もたってしまったのかと思うとびっくり。前回の講習で学んだことが多少なりとも身についていかされているのか?多少なりとも成長しているのか?改めて新たな発見はあるのか?が問われるリピーターとしての受講だ。死を前にした人に あなたは何ができますか? [ 小澤 竹俊 ]楽天で購入2017.8.13読了2020.1.20再読・実践ではあまり生かせてないような気がして反省しつつ再読したのだが・・・受講した感じではわりと覚えていて日頃意識しているかな? 身についているかも? と思えてちょっと安心する気持ちもあったのだが、講座でのロールプレイでそんな気持ちは見事に打ち砕かれたのだった。・1日目は悩みを持つ後輩(介護職や看護職など関係者)の相談に乗って答えるシチュエーションでのロールプレイがあって、本を読んだり講習で分かったような気になっていることが後輩にはうまく説明できない=結局は分かってないってことを再認識することになってしまった。とは言えこの再受講でブラッシュアップできればと思い2日目に突入したのだ。・2日目もまたグループワークとロールプレイの連続で疲労困憊したのだけど、この「これでもか、これでもか」という刷り込みが目的なのか?腹八分目のほうが助かるなとは個人的意見。精神的な体力のない人にとっては辛い講習で、講習後に頑張っていこうという余力というか意欲がわかなくなるのではと心配かも?・再読&再講習で、さすがにというか今更だけど全体像が見えてきたこともあるし、新たな気づきがけっこうあったのも収穫だった。・心の支えとは、病気になって(苦しみの中で)初めて気づくものだということ(明るい街では星はたくさん見えないが暗闇のある場所では星がたくさん見える)ということはすっかり忘れて意識できてなかったことに気づかされた。・前回の講習を受けてから「穏やかになる」ことが目標であることはずっと意識してきていたし、援助的コミュケーション「反復」「沈黙」と「問いかけ」もずいぶん実行してきたつもりだけど現実ではあまりうまくいった実感が薄かったが、患者さんから逃げない、自分の苦しみを分かってもらえている存在だとはある程度思ってもらえるようになったのではないかと気づいた。まだまだだけど捨てたもんでもない、まだまだこれから成長できそうだなと思ったのが最大の成果だなと思う。支えをキャッチするまでに至らなかったのはそれまでの援助的コミュニケーションが不十分だったのが原因ではないかと思い当たった。キャッチした支えを強める具体的な方策がとれなかったのは他職種協働への働きかけが不十分だったのかもしれない。まだまだ成長や改善の余地はありそうだ。・わかりにくい専門用語を避けるために「スピリチャルな苦痛」を「答えることのできない苦しみ」としたり、構造構成主義的(講習会で小澤先生は「現象学」と言われていた)な多面的なとらえ方を平易に説明し、スピリチャルな苦痛を考える村田先生のモデルの「時間存在」「関係存在」「自律存在」を「3つの支え」として平易に翻訳したりと、小澤先生の苦心というか工夫がよく分かった。関係存在が一番馴染みやすいと思っていたが、自立存在をクローズアップする考え方は臨床で応用するにはナイスだと思った。いかに具体化するかが最も重要だけど発想が貧困なワシにはこれが難しい。ベッドの場所や向きにこだわる訪問看護の責任者が身近にいるのだが、そういうことだったのかと改めて気づくことができた。〇苦しんでいる人の支えになろうとする自分自身が、支えを必要としている・日々のあれこれがを面倒くさく感じて自分自身の申請も早く終わればいいなと思っていたが、支えを探して認識(キャッチ)することが大切で緊急の課題かもと気づいたのが最大の成果なのかもしれない・2年半前に講習を受けた後でこの本を読んだ感想が見つかったので引用----------------------------------------------------------------------------------●在宅で緩和ケアにも関わっています。初めて小澤先生の「実践スピリチャルケア」を読んでから4年余り、「患者さんから逃げない」は心に残っていてそれなりには努力してきたつもり・・・●名古屋で開催されたエンドオブライフケア援助者養成講座を受講した直後に出版されたので即購入しました。エンドオブライフケア援助者養成講座のエッセンスと事例を通して具体的なアプローチがあってとても分かりやすい。事前に読んで予習するのも良し、復習するにも良し、援助士申請のためのレポート作成の参考書にも良し?講座の全体像も良く見えるようになりました。〇「苦しんでいる人は、自分の苦しみを分かってくれる人がいると嬉しい」●が自分にとって今回のキーワード、「分かってくれる人」になるべく努力しよう。●穏やかな最期を迎えてもらうための実践はなかなか思うようにはいきませんが経験を重ねてものにしていかねばと思います。------------------------------------------------------------------------------------
2020.01.20
コメント(0)
還暦になっ(てしまっ)た2019年の年末は八ヶ岳本沢温泉に1泊2日で忘年会登山に、明けて2020年1月3日は恒例の鈴鹿藤原岳避難小屋で新年会登山、どちらもピークは踏まない温泉や宴会目的の何だか老人会の旅行みたいな山行になってしまった。リハビリだと思っていたけどいつまでたってもリハビリって言って進歩がないのはやっぱり還暦になって体が「無理無理!」って言ってるのかなぁ・・・2019年12月28-29日前夜発1泊2日 八ヶ岳本沢温泉ツアー(ヤマレコの報告)ワシら名古屋HOT隊(変なおじさん登山隊)では恒例だった雪山テントで忘年会登山だったけど今年はテントはやめて小屋泊まり計画、しかもKたん師匠と二人きりになってしまった。みんな年を取ったというか歴史は変わろうとしてるんだなとも思うが、まだまだワシはリハビリ中だでまた返り咲きたいという気持ちもまだ捨てきれないのだ。道の駅こぶちざわで前泊したけどめっちゃ寒かった。風もあったけど結露が凍っていたので気温はずっと氷点下だったと思う。スタッドレスタイヤで稲子湯まで車で入って車を駐車して登山道へ・・・雪不足だと聞いていたが幸い登山道はしっかり雪があり、本沢温泉露天風呂も雪があって硫黄岳を見上げるシチュエーションは最高だったのだけど、脱衣所はないので決死の裸地獄であった。露天風呂の後は個人的2人で宴会 翌朝は本沢温泉外湯を攻め、露天風呂にも準備万端でリベンジ。硫黄岳チャレンジはやめて下山、稲子湯でまたひと風呂浴びるという温泉三昧老人会旅行ツアーになってしまったのだ。(来年はどこにの温泉にするかの~)2020年1月3日 鈴鹿藤原岳新年会山行(ヤマレコの報告) 恒例の山仲間の新年会山行。メインは避難小屋2階での鍋料理宴会、今年も無事に参加できて良かったです。とは言え下りの遅さを思い知らされた。来年も参加できる体力を維持したいものだと思う。今年はいったい何日山に入れるのだろう。これまでは仕事がボトルネックだったがこれからは体力的な衰えも考えねばなるまい。悲しいけど現実を受け入れよう。
2020.01.15
コメント(0)
昨日は約1年ぶりのマラソン大会、新日本スポーツ連盟の新春マラソンでハーフマラソンに参加した。 持病の腰痛に加えて膝まで痛くなって走れなくなっていたのだが、そのうちに足首まで痛くなりだして病院通いでリハビリしたりしていた。リハビリ通院もやめて痛みとは一生の付き合いだなと悟ってまたそれなりに走ろうと思って、新年の占い?とりあえず走ってることにしてエントリーしたのだ。なのに!「しまった、靴の中敷き忘れてしまった!」出走前に気づいたけどもう遅い!最近はワラーチなどというサンダルで走る人たちもいるし流行りの「ベアフットランニング」に近いじゃんと強がりながら、膝や足や腰に悪いような気はしたけどどういせ手遅れなので気にしないことにしてスターラインについた。 ここのところ、走るたびにワースト記録更新。去年の犬山ハーフでは初の2時間超だったけど、膝を心配してはじめゆっくり入りすぎたせいで後半でスピードアップしたけど間に合わなかったって感じだったので、今回ははじめから早めに走り出せばと思ったのだけど・・・「練習は嘘つかない」ってのは本当だねということと、年には勝てないね、という現実を思い知らされた21kmの走りだった。そりゃ練習してないんだから当たり前なんだけど長年の貯金を使い果たしてしまった感じ。ハーフが2時間切れなくなってしまった。今回もやはりワースト記録更新で、しかも走った後のダメージがひどい。それも健康的な筋肉痛じゃなくて腰痛悪化だったり足首の痛みだったり腰痛悪化だったり、こんなんじゃウルトラ復活どころかフルマラソンも厳しそうだなあ・・・でも、しかしとりあえず今年はフルマラソン復活にチャレンジするつもりだ。タイムは気にしない。
2020.01.13
コメント(0)
短篇「最後に臼が笑う」(Audible)が面白かったので読んでみた「カラフル」が、児童文学的ではあるのだけど還暦オヤジにも面白く感じられ、直木賞受賞作の本作品を図書館で見つけて単行本で読んだ。風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) [ 森絵都 ]楽天で購入2020.1.11読了・6篇の短編集、最初の「器を探して」はあまりピンと来なくて一度はドロップアウトしたのだけど、再読で2編目の「犬の散歩」で少し魅かれはじめて、3編目「守護神」でドはまりになって・・・一気読みだった。結果、最初の1編と最後の1編が自分的にはイマイチだと思うのだが(著者や編集者の感覚ズレてるってこと?)トータルとしては面白かった。この感覚は、若い頃にレコードアルバムを買って聴いたらそれなりにいいなと思ったのだけど、最初の1曲とラスト1曲はイマイチだった、しかもラスト1曲はアルバムタイトルだったみいな感じに似ているような気がした。「器を探して」 仕事に生きながら疑問を感じている女性が、秘書として器を探しに美濃を訪れ実生活とは切り離された世界で理想の美濃焼を探す。理想の瀬戸黒を見つけたが売ってもらえるかどかは焼き人のフィーリング次第だという〇男の瞳はあきらかにお茶ではないなにかを誘いかけていたが、それはお茶よりもむしろ自然なことのように思える。男の厚い指が土をこねるのを想像し・・・●なにかってあれですよね。あまり理解できないし共感できなかった。プロポーズを無視して出張にきているのにケーキを買って帰れば彼はたちどころに機嫌を直して微笑むだろうというラストにも納得がいかない。いったんここで読むのを挫折したのだけど・・・「犬の散歩」 ホステスの話かと思ったら、ホステスのバイトをしながら犬の里親を探すボランティアをする主婦の話だった。あまりペットには興味ないので・・・と思って読んでいたら〇「犬は私にとっての牛丼なんです」●っていうセリフで、えっどういうこと?とだんだん惹き込まれ・・・「守護神」で完全に持っていかれてしまった。主人公の裕介がチャラ男ではなくて本当は不器用な文学青年で、本当はレポートの代筆ではなくて自分の思いをぶちまけたいのだと理解したニシナミユキ。守護神がまさか(いわくつきの)二宮金次郎のことだったとは!「鐘の音」・TVで「さぶ」を見たせいか山本周五郎的かなと思った。仏像修復師、そんな昔から職業はあったのだろうけど初めて知った。そんな職人的な仕事が今でも同じ形で残っていることはないのかもしれない。ちょっとしたミステリーにもなっている人情ものだと理解した。「ジェネレーションX」・読みやすい、分かりやすい、面白いの3拍子。この作品がこれまでの森絵都作品に求めていたイメージ。「最近の若者は・・」とか「新人類」とか言われていたけどいつのまにか立場逆転。謝罪に向かう車中で電話をかけまくるやつが案外に謝罪の達人だった。電話も高校時代野球部の仲間が約束通り10年後に集まって試合をするためのトラブルに関するものだった。何とか9人そろうと思った矢先、一人参加できずにピンチ!っていうところで、主人公も実は高校球児だったって話「風に舞い上がるビニールシート」・タイトルになった短編作品なんだけど、残念ながら共感できなかったなと思う。そもそもフィールドに生きがいを感じているエドと結婚すべきではなかったし、結婚してからも自らがフィールドに行く生活を選択するという道があったのに・・・最後の最後で〇「アフガンに行かせてください」って言葉が出てある意味ハッピーエンドなんだろうけど遅すぎるぜ!と思ってしまった。
2020.01.12
コメント(0)
「本の雑誌」で2012年から2015年の間に掲載された同題の連載をまとめた本で、著者の津野海太郎さんが自らの老いを感じながら74歳から77歳の間に書いたことになる。ワシより21歳年上。世代が違うので「文化圏」が違うというか、著者の名前も知らなかったし話題になる文学関係の人たちの名前も知らなかったりなじみが薄い人がほとんどだったにも関わらず、昨年還暦を迎えた自分にとってはリアルに共感するところも多く最後まで読んでしまった。百歳までの読書術 [ 津野海太郎 ]楽天で購入2020.1.10読了・全体は3部構成で、「壱」は読書の歴史を踏まえた総説的なことを述べて、「弐」は自分の老いを自覚しながら生きる=読むことに気づき、「参」では老いを受け入れながらもこれから読書生活をどう閉じていこうかみたいなことを考える、大まかにいえばそんな感じの構成だと思う。・ワシの場合は、読書は大きな位置を占めてはいるけどそれがすべての人生ではないのだが、いや~何だか切実というかよく分かるなあ・・・という感じ、「文化圏」が違うのに何だか共感できてしまった。「本を捨てない人たち」「減らすのだって楽じゃない」・著者は4000冊を若い頃にやむなく処分したと書いてあったが、ワシは基本的に「本を捨てない人」だし、BookOffで本は買うけど売ったことはない人であるが、蔵書が何冊あるかなんて考えたこともなかった。で、数えてみようと思ったのだけどすぐに面倒になった。本がたくさん置いてあるロフトにシーズンオフの扇風機がたくさんあって邪魔で数えれられなかったのだ。でもだいたいは分かるコミック200冊以上?小説やエッセイ、登山関係の本に仕事である医学医療関係の本などで1000冊以上はあると思うが2000冊はないような気がする。素人にしては多いかも?死んだらただのゴミになってしまうので少しずつ整理したいと思うがなかなか踏ん切りがつかない(特にコミックは白土三平や手塚治虫などどうしても手放せない)。「路上読書の終わり」・著者は多忙を極めた現役時代、本は路上で読むのが主体だったらしいが、加齢とともにその習慣は消滅して定年後は机で読むことで新たな発見があったようなことも書かれていた。歩きスマホに対して世間の目が厳しい昨今であるから、路上読書もあまりよろしくないのではないかと心配しつつ最近やってみたりもしたが、路上ではAudibleで耳からの路上読書がいいのではないかと思っている。これは便利ですよ。〇遅読がよくて速読はだめなのか 〇「正しい読書」なんてあるの?・なるほどな、自分のスタイルでやればいいでしょってことね!本によってスタイルを変えるとかね。〇本を増やさない方法 〇近所の図書館を使いこなす 〇退職老人、図書館へ行く・頑固な読書人にとっては図書館で借りた本を読むなどとはと拒否感があるようだけど、ワシは全然ないのでけっこうなヘビーユーザーになってる。ただし、歴史的文献みたいなものはほとんど借りないのだけどそういう分野にもチャレンジしてみようかなとちょっとだけ思った。ヤマ関係の本は少し借りてるな。〇60代は、今思うとホンの短い過渡期だったな。50代と70代のあいだに頼りなくかかった橋。つまり過渡期。どうもそれ以上のものではなかったような気がする。*影響を受けて今までの読書遍歴をまとめてみた・小学生のころガッコの図書館でかりたSFをよく読んでいたことは覚えているが読んだ本の名前や作家はは全く覚えてない・小学校5年生で転校してからは友達に借りた楳図かずおの恐怖コミックを読んでいた。あとは巨人の星やあしたのジョーなどのコミックやTVアニメかな・中学に入ってからは、また友達に借りた平井和正のウルフガイシリーズや横溝正史を読んでいた記憶あり、あとはなぜか布団の中で読んで泣いていた記憶のある「アンクルトムの小屋」、「宮本武蔵」(吉川英治)が思い出される。・高校のころは本読まなかったなあ・・・・大学に入ってからは反動でたくさん本を読みだした。遠藤周作、大江健三郎、太宰治、高橋和己、庄司薫、サルトル、サガン、マルクス、レーニン、思い出せないけどもっとたくさん読んだ。グレアム・グリーン「情事の終わり」ももう一度読んでみたい思い出の本。・社会人になってからはまた読書の幅が大きく広がった。椎名誠から始まったのかな?その後、ミステリーや時代小説、医療や科学の本、コミックなど読みながら35年以上たち、まだまだ知らない作家や知らない世界がありそうな気がして飲んだくれながら本の海でおぼれつつふらふらして生存しているのだ。
2020.01.11
コメント(0)
・老いをテーマに選んだ14人の作家の漫画集。読んだことがあるのは、手塚治虫、水木しげる、岡野雄一、つげ義春、白土三平の5人だけで、他の9人は全く知らない漫画家さん。それぞれに味わい深いが理解できないものもあったかな?老境まんが (ちくま文庫 やー50-3) [ 山田 英生 ]楽天で購入2020.1.9読了・認知症がテーマの「四」、介護する息子の視点から見た岡野さんのペコロスシリーズは既読で面白いのは分かっていたが、本人の視点から見た2作品の、「5月の風の下」(うらたじゅん)と「田辺のつる」(高野文子)はまた哀愁を感じて興味を持った。高野さんの作品が1980年発表だったって驚きを感じる。・でも一番好きなのはやっぱ白土三平「ざしきわらし」だな。生き延びた下忍の話でたぶんこれまでに何度か読んだことがあるはずだけど忘れてしまっている。なのに何度読んでもいいなと感じるって我ながら馬鹿だなとも思うけど、だからいい作品、好きな作家と言えるんじゃないかと思ったりもする。
2020.01.09
コメント(0)
前作「最後の医者は桜を見上げて君を想う」が思いのほか良かったので、続編が出ていると知ってさっそく図書館で借りた。それなりに面白かったが、期待以上ではなかったかな?という印象とかいいつつレビューには力が入ってしまった。最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上) (TO文庫) [ 二宮敦人 ]楽天で購入2020.1.5読了最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下) (TO文庫) [ 二宮敦人 ]楽天で購入2020.1.7読了・前作のおさらいから・・・〇癌でありながら癌の根治を目指さず、ただ発話能力の維持だけを目的とした手術は、福原の信条とは反するものであった。だが、あのときはただ友のため、音山という人間のため、福原はメスを持ったのだ。それが正しかったのか、過ちだったのか、勝利と呼んでいいのかはたまた敗北と呼ぶべきなのか、未だに答えは分からなかった。●前作で「最後まであきらめない医師」であった福原は院長である父親の指示に従わなかったために閑職に追いやられ、「患者に死を選ぶ権利があるという医師」で「死神」呼ばれていた桐子は病院を去ってビルの1室で開業したが患者は来ない・・・●3章からなる中編の連作という形、第1章ではエイズに感染したカップルの話で、再び福原と桐子が交わることになり、第2章は病院が舞台で子供時代の桐子と福原(カズ君としか書かれてなかったが、たぶんそうだろうなと途中から気付く)の母との話、福原とその母、父との思い出の話、第3章は認知症を患った福原の父の主治医となった桐子が、福原と父の和解を考える・・・簡単に言うとそんな3部構成。●疾患的にも、癌だけじゃなくエイズも取り上げたかと思ったら最後は認知症と、いいところをついているなと思った。第1章「とあるチャラ男の死」:自分がHIVに感染していると知った美穂は同棲中の駿太にそのことを告げて別れ、福原のもとで治療して良好な経過をとる。駿太は受診を拒否していたが最後になって桐原を受診するがすでにエイズの末期。〇「はい。どうぞ」「・・・いいんだな?桐子先生。やって、いいんだね」「こりゃありがたい。先生のお墨付きがもらえるとはね。了解、心置きなくやってくるよ!」●ウィルスをまき散らすっていくらなんでもそりゃまずいだろ!エイズの感染拡大は阻止せねばなるまい!と思ったが、風俗店で間際に不能になってしまうのだが、〇俺まさか。ほっとしてるのか・・・?(●駿太、ほんとは気が小さい良い奴なんだよ)〇「いません」●救急搬送された先で母親以外の連絡先を聞かれて駿太は答えた。美穂に会いたかったはずなのにその名を出さなかったのが彼の最後の愛情だったのだ。切ないけどいい話。〇希望はどこかにあったはずだよ。見つけられたかどうか、確かめられるすべはないけれど・カタツムリが小道具として端々に登場していた。第2章「とある母親の死」〇私が教えてあげる。君はね、まだ諦めてないんだ。諦めたいくらい疲れてるけど・・・だから頑張っている私が羨ましくて、腹が立って、私に文句を言いたくなった。そうでしょ」〇自分が思っている以上に、生きたがってる。絵梨の言葉が頭の中で木霊する。●重症のアレルギー疾患になって生きることをあきらめて醒めている少年桐子の隣のベッドに入院していた若いお母さんの絵梨はがんの末期なのに理解できないというか根拠のない前向き思考で妙に明るい。反発を感じていた桐子もだんだん心を開いてく。信じてみたくなるがやはり最期は死んでしまう。〇「諦めてもいいんだよ」 しかし、絵梨は全く正反対の言葉を桐子に贈った。●桐子の中で何かが変わったのだろう、答えのないはずの「生きることの意味」を感じたのではないかと思う。●息子カズに対する絵梨の愛情、絵梨と夫の愛情関係、カズからみた父親への反抗心は、第3章への布石にもなっていたのだ。第3章「とある医者の死」●カズの父親である七十字病院院長の福原父が認知症になり、福原息子は主治医を桐子に依頼する。福原息子は父親には冷たい感情しか持てず、父に代わって院長になるべくあれこれ動いていた。〇不治の病だからといってひるむ桐子ではない。むしろ不治だからこそ、残された命を悔いなく使うため、患者ととことんまで向き合うべきだと思っているし、これまでずっとそうしてきた。●振り返ってみるとこの文章が第3章の背骨だったんだと思い当たった。(この本、前作も併せてこのシリーズの背骨かもしれない。)〇「彼にしてやれるのは安楽死さ。リハビリだの、投薬だの、可哀そうじゃないか。・・・無理して生かして、それで何をさせる?金稼ぎ以外に何の楽しみもない、あいつに」●認知症になって過去に意識が飛んでしまう福原父に付き合って話したことをノートに取った桐子、最初は拒否していたがノートを目にしてた福原息子は父親の人間としての不器用さや愛情や戸惑いを知る。そして一か八かの手術を執刀、手術は成功したがやがて父は最期を迎える。●福原父の視点から書かれた部分がたくさんあるが、認知症本人の感覚としてリアルだと感じた。といっても経験はないので分からないのだけど、そんな気がするだけなのだが・・・
2020.01.09
コメント(0)
・在宅で患者さんやご家族に最期までお付き合いする仕事をしている医師であることもあり、関連しそうな本はできるだけ手あたり次第に読むようにしている。タイトルや表紙のデザインからしてもっとラノベっぽいと思って読み始めた本だった。・ところがどっこい、構成もしっかりしていて不自然さがない(医師としてはツッコミどころ多々あるけど)、描写もしかりしていて平面的ではない印象で意外だった。最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫) [ 二宮敦人 ]楽天で購入2018.3.22読了●最期の看取りに多く関わる仕事をしているけど(というか「だから」?)、桐子の考え方には同調しながらも、彼の突き放した言葉には違和感を感じていた。福原の考え方はまあよくあるけど本気でそう思っている医者がどれだけいるかは??最後まで読んでやっと、そうか両極端を描いてラストに持っていく物語だったんだと分かった。〇「おとやませんせいは、まよってくれました」●涙、中途半端だと言っていた音山が実は、癌になって死を覚悟して重要な役割を果たすという構成には納得。●何だか悔しいと思うほど良い作品だったと思う。●「文献なんか読んでんじゃねぇ」「検査データなんか見てんじゃねぇ」 「そん患者のところに行け」と言われていた研修医時代を思い出した。今になってやっとわかった、患者さんと一緒に考えて悩むことが大事だってこと。
2020.01.08
コメント(0)
荻原さんはもう6冊目くらい?箸休め的に読んでみようかと図書館で借りた本。裏表紙にの説明に「短編の名手」と書いてあったが確かにそうかも?今更ながらと思った。その名手が書いた本は、「傷んだ心に効く8つの短篇集」といううたい文句だった。冷蔵庫を抱きしめて (新潮文庫) [ 荻原 浩 ]楽天で購入20201.4読了「ヒット・アンド・アウェイ」:読み始めはDV男から逃げ出せない母と子供の話が痛くいて読むのが辛かったけど、母親がストレス解消のために?でボクシングジムに入って・・・って話。〇「ちょっと冷蔵庫のドアにぶつけちゃって。」・・・「教えてやるよ。おたくの冷蔵庫を、ぶっ飛ばす方法」●で、予想通りの結末にはスカッとすっきり気分爽快!前半の暗くて痛い部分、読むのも辛かったのを我慢して読んだからこその爽快感なのだと思う。結局、この本で一番好きな作品だった。やっぱ「短編小説の名手」なのか?「冷蔵庫を抱きしめて」:結婚してから夫との食事の趣味の違いに適応できずに拒食症が再発した女性の話。夫は全てを受け入れて・・・ハッピーエンドなんだけど、タイトル作品としては役不足かな?「アナザーフェイス」:自分と同じ顔の人間が身近で生活している、ドッペルゲンガー?実際に出会ったら消滅してしまう?こんな不条理なというかホラー的なものも書くんですね。「顔も見たくないのに」:チャラチャラした顔だけ男と別れてせいせいして顔も見たくないと思っていたらその男が売れっ子になってTV画面に出まくってそのうちに人気がなくなって・・・ラストの落ちもちょっとだけいいなって感じ。結局は馬鹿な男だけど憎めないっていうオチの短篇だけど読後感が良かった。「マスク」:マスクをすると自分の表情が相手に読めなくなるという安心感に頼り切ってしまい、マスクが外せなくなってついにはゴーグルまでつける始末で、ついに会社は首になる。恋人には見捨てられずに彼女の紹介で得た仕事、地方のゆるキャラ着ぐるみの仕事をしながら人に素顔をさらすのが怖かったのに「俺を見てくれ」と着ぐるみの中で叫ぶというオチ。「カメレオンの地色」:やっと巡り合った理想の男性を部屋に迎えて慣れない料理をふるまうことになって部屋を片付け始めたのだが・・・片付けられなくて積もり積もった地層を掘っていくうちに過去に付き合った男たちが思い出され、人に合わせるカメレオンのような生活になる前の自分の地層までたどり着く。そして理想の男性だと思っていた男を受け入れるのをやめてしまう。報われないかもしれないけどハッピーエンドだと思う。「それは言わない約束でしょう」:ストレス?思ったことが知らないうちに声として漏れてしまうようになったというありそうだけど本当はありえない話。結局開き直って解決するっていう力業だけどすっきりする。やっぱ「短編小説の名手」なのかもしれないと思う。「エンドロールは最後まで」:いい話。結婚できない女じゃなくて結婚しない女で生きようと思った矢先に出会いがあって、海外支援に燃える医師だと思っていたら実は医師ではなくて、ダマされたのかとおもったけどでも・・・最近は心を入れ替えて映画はエンドロールは最後まで見てから席を立つようになりました。
2020.01.07
コメント(0)
・直木賞受賞、戦後の沖縄が舞台になっている話らしいということで興味を持って予約した図書館本。毎度のことながら散々待った挙句にこのタイミングですか?ってときに順番が回ってくるのだけど、今年は「宝島」読書で年越しするハメになった。・フィクションではあるのだけど、沖縄について無知だったことを反省させられる作品だった。ワシは戦後生まれの日本人で、沖縄返還の時は小学生だった。沖縄の基地にまつわる事件のことや辺野古の問題にまつわる政治的動き、沖縄の人たちの気持ちと内地の人たちの感覚(政治家だけでなく一般国民も含めて)のズレみたいなものに今まであまり気が付かずにいたことを反省させられた。コザ暴動小学校米軍機墜落事故・そうはいっても、小難しい政治の話や社会運動の話はストーリーの一部ではあるが、それを理解しなくてももちろん十分楽しめる。B級ヤクザ映画っぽいと言えばそうなんだけど・・・・ところで著者の真藤順丈さんは東京生まれと書いてあるが、なぜこの作品を書くに至ったのか、沖縄の言葉や文化、歴史に詳しいのは取材しただけではなくて何か理由があるのではないかとか考えてしまう。著者インタビューはこちら(ぜひ読んでね!)宝島 [ 真藤 順丈 ]楽天で購入2020.1.1読了・終戦直後、沖縄の米軍基地から盗みを働く「戦果アギヤー」だったヒーローのオンちゃんが消息不明となる。弟のレイ、彼女のヤマコ、仲間のグスクの3人がオンちゃんの消息を負いながらも別々な人生を歩みながら沖縄の歴史の中で絡むストーリーは飽きさせない、次々とページをめくる手が止まらずに年を越してしまった。・「予定にない戦果」とは?逃げた米軍兵士が沖縄の女性に孕ませた赤ん坊の存在が米軍にとってそんなに「奪われちゃならないもの」極秘の重要機密だったというのはちょっと解せないというか弱い感じかなとも思うけどまあ良しとしよう。・主人公3人の他ではなんとウタの存在がめっちゃ大きかったのだ。というか最後になってそれが分かるのだが、だからちょっと強引だった「予定にない戦果」の種明かしにも納得するのだ。・オンちゃんは確かにゴザの基地から逃げ出していた。逆境を乗り越えて沖縄に帰ってきていたけど、見つけた時にはガマの中で骸骨になっていた。いい人だった 優しくて強い人だった。オンちゃんに救われたウタも悩みながら一生懸命生きていた。悲しい結末ではあるけど心温まる話だった。やっぱりB級ヤクザ映画とは全然違うなと、結末まで読んでわかるのだった。・スピード感、沖縄の言葉っていうだけでなくて、何だか人をおちょくったような軽い言い回しの地の文(「カフー」の連発とかいろいろ・・・)が独特だと思ったけど、これもウチナー魂なんだろうか?(答えは保留)・もう1回読みなおすのはちょっと・・・だけどということでAudibleで聞き直しているところ。長かったが、確かに壮大な物語だったなと思う。全部聞き終わればまた感想も変わったり深くなったりするのかもしれない。〇そもそも教養があって、法や人権を重んじられる人間は兵士に向いてない。素朴な田舎者をためらいなく敵を殺せる機械に変えるのが軍隊というところだから。世界のどの戦場でも最前線に送り込まれる海兵隊員は、そのあたりをみっちりと叩きこまれる。●米民政府のアーヴィンがグスクを諜報員に誘うときに語った言葉だけど、現実なんだろうなと思う。今現在でも同じような形で現在進行形で現実なんだろうと思う。アメリカーはいつも戦争をしていないと気がすまない国だってのも同様に現実だと思った。
2020.01.06
コメント(0)
・還暦の年の目標であった固い本(「健康格差」)を何とか年内に読了できたご褒美として選んだ完全娯楽の小説。任侠病院 (中公文庫) [ 今野敏 ]楽天で購入2019.12.31読了・今野敏さんはSTシリーズしか知らない、しかもそのほとんどがAudibleなのだが、彼の作品なら読めば肩も凝らずに楽しめるだろうことは予想できた、タイトルからして病院を舞台とした作品らしいのでチョイスした図書館本。阿岐本組のオヤジ(組長)が本屋とか学校を立て直すというシリーズもので、今回はその病院編というわけで、最後には病院のスタッフたちと協力しながらヤクザと繋がるなんちゃらエイジェンシーという会社を追い出して病院が立ち直るというお話。事務所の立ち退き運動も絡んだりして・・・・予想通り楽しめた。というと予想以上でもなかったってことだが、やっぱ面白かった。目的通りに楽しませていただきました。2019年最後の1冊。〇阿岐本に拾われて、この事務所に転がり込んだとき、なんだかようやく落ち着ける場所が見つかった気がした●任侠ってなんだろ?とか思ったりしたが、特殊な能力を持った人たちが自分の居場所としている阿岐本組はSTシリーズにちょっと似ているなと思った。STは警視庁だけど。〇「こんなもので、ごめんね」・・・「とんでもない。俺にとっては、ごちそうだ」●お母さんが買ってくれたたこ焼きの思い出は切ない。・ドタバタしていると言えなくもないけど、人情味あふれる面白い作品だったと思う。また、ちょっと気楽に完全娯楽小説を読みたいときにはシリーズ他の作品も読んでみたい。
2020.01.04
コメント(0)
全16件 (16件中 1-16件目)
1