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BS各局で映画を再放送している。昔の評判の映画や最近封切られたばかりの映画も放映するときがある。時が経っていない映画は恐らく再配給できない興行成績しか上げられずにネットワークに売却されたのかもしれない。テレビで見る映画の扱いの便利なところは、録画しておいて後で見ることができる点である。落ち着いて鑑賞できるので、作品の細かいところがよくわかるのだ。
小津監督の作品が一挙一週間にわたって放映されたことがある。「東京物語」かっら始って「秋刀魚の味」まで小津監督の代表作である。東京物語に出ていた女優原節子のセリフの言い回しが、秋刀魚の味の岩下志麻と全く同じと言うのには気づかなかったが、これも連続で鑑賞したからこそだろう。女優に全く同じ演技指導をする監督、岩下は恐らくだが原の言い回しを何度も聴いて練習したに違いない。小津の演技指導はこまかいことで定評があるそうだ。エピソードに有名なのがある。どうしても彼がOKを出さないシーンがあった。何度も繰り返させられる女優が思い切って理由を聞くと、まばたきするタイミングが異なっているとの指摘。これは小津自身にも最初わからなかったそうだ。なぜ自分がこの演技を気に入らなかったのか。何度も彼女の演技をやり直させているうちにわかったそうである。このような監督の偏執的な演技指導のせいか、彼の作品は独特の小津ワールドと言われるまでに共通したものがあった。しかし反面、リアリズムを追求する点から行くと彼の作品は評価が分かれていた。安心して見れるのが小津監督の作品で、それ以上のものはなかったようだ。見事なまでに共通の各作品のかたちは、まさに上演回数を誇る演劇のそれとも言うべき精度まで練り上げられていた。見ようによってはマンネリであるが、何となくもう一度見たくなるような味を持っていると思う。
往年の名監督と言われる人は、最近のリバイバル風潮とあいまって,大した作品でもないのにほめそやされたりけなされたりと、口やかましい評論家たちの材料である。しかし、この人の作品なら劇場に行ってもいい、安心して人に勧められるというブランド感こそが映画人の骨頂だと思うのだ。映画だけではなく今の評論家たちは作品をじっくり味わうこともなく、ネットを検索して他人の嗜好を仕入れて自分なりにアレンジするものが多い。それはそれで悪くはないが、まず鑑賞する姿勢が大事だ。
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