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そう、私は無神論者だ。
──神様のおかげでね。
嘗て、そう云って質問者にニヤリと笑ってみせた希代の映画監督がおられたのでございます。
それが、ルイス・ブニュエル。
1900~1983年。
衝撃的なデビュー作はかの『アンダルシアの犬』。1928年作。
6才年上の悪友に誘われて観に行った高田馬場アートシアター。いまはもうないこの一風変わった小劇場では、『戦艦ポチョムキン』『ふくろうの森』『カリガリ博士』『母』『ノスフェラトウ』『黄金時代』『忘れられた人々』『やぶらみの暴君』等々、いまとなっては恐ろしく貴重な古い映像の宝箱でございました。
くもが『アンダルシアの犬』をみたのも、この小劇場。
先日、暴れん坊亮子さまともコメント合戦で話したのでございまするが、この小劇場ときたら、せいぜい50席くらいしかございませんで。
しかも、座布団寝ころび方式という、たいそうナイスな作りで。
毎週、繰り返されるオールナイトフィルム流しっぱなしは忍耐が必要です。
何故なら、フィルムのほとんどは無声映画だからっ(爆)
ひたすら無音での真夜中の6,7時間をご想像してくださいまし。
聞こえてくるのはカリカリという36ミリフィルムの回る音…。
そこに、殆ど10名前後しか以内観客たちの身じろぎする床ずれが時折、そうしてやがて、あくび、瞼をこする音、それから──いびきが加わるというヽ(´・`)ノ
そんな今となってはとても懐かしい思い出話はともかく。
『アンダルシアの犬』冒頭はこうです。
月の夜、それにときおり夜の雲がかぶさってはすぎてゆく。
そんな中、咥えタバコのあんちゃんが、ものぐさそうにひげ剃りナイフをシャキシャキといでおります。
そんなカットの狭間へ無声映画らしく。黒画面で解説文が出て参ります。──その10分前。
──そのまた15年後。まるででたらめな時間。
意味のない説明文。
なのに当然のようにして場面は同じ床屋さんらしくあんちゃんが準備するシーンが続いていたりして(笑)
それからあんちゃんは面倒くさそうに座ったご婦人へと手を伸ばし、
おもむろに瞼にさわり、カメラはご婦人の瞳へとズームアップ。サッとナイフが一閃。
眼球を引き裂いてゆく……。
そうこれが衝撃的な『アンダルシアの犬』冒頭でございます。
その後、フィルムはあやしくもエロスを感じさせる断片的なシーンが続いて行きます。
もう一度申します。
製作は1928年フランス。
これが如何に当時として、ショッキングであったかご想像下さいマシ。
ちなみにこの『アンダルシアの犬』。
共同製作でして、もう一人の協力者はあのサルバトール・ダリ。
ですから、如何にもシュールリアリズム。如何にもダリ。
そう思わせるシーンがてんこ盛り。
おかげをもちまして。
この映画を観て以来、くもはバケットなどの長~いフランスパンを観るにつけ、──山高帽の上にパンを載っけたおっさんを必ず、思い出しまする。
そして勿論、以来── フランスパン
は大好きです(@_@)/
その後、ルイス・ブニュエル監督は故郷スペインへ戻ったり、ハリウッドへちらっと行ったかと思えば、メキシコへ渡ったり。
転々とした末、最後にまたフランスへ戻り、そこで落ち着きます。
その間、短編も交え、山ほどの映画を製作。
代表作は以下の通り。
『アンダルシアの犬』
『黄金時代』
『荒野のシモン』
『糧なき大地』
『忘れられた人々』
『皆殺しのバラード』
『エル』
『ビリディアナ』
『小間使いの日記』
『昼顔』
『哀しみのトリスターナ』
『ブルジョワジーのひそやかな欲望』
『自由の幻想』
『銀河』
そして最後に『欲望のあいまいな対象』──。
その他にもくもが観ておらぬ、名の知れた作品もございまして。
ジツに多作多才な映画を作り出しました。
あまりに印象的な映画が多すぎてすべてを語るのは無理ですが、ルイス・ブニュエルさんの場合。
どうか、何かを観る機会がございましたら、完全に理解しようとするのだけは、やめといて下さいまし。
所詮、──無駄ですからヽ(´・`)ノ
最初にあげた、人を食った彼のコメントを思いだして下さいマシ。
ルイス・ブニュエルさんが希代の幻惑師だったのでごさいまする。
観客はだた座って、彼の綴る映画を、心のままに眺めるのが一番。
さもないと、脳細胞が皆殺しにされた気分を味わう羽目になるやもしれません。
実際、彼の映画を観て怒り狂った観客が劇場で発砲しまくったコトがございましたから(笑)
でもね。
そんなルイス・ブニュエルさんの映画、くもは大好きなんです、はい。
特に『皆殺しのバラード』はもう、クスクス笑いが止まりませんでした。
あ、さっき、ウィキペギアさんで念のためググってみました処、タイトルは『皆殺しの天使』になっておりました。
おそらくくもが観劇した当時呼ばれていたタイトルから、原題に忠実化したか何かで、呼び方が変わったのでしょう。
初期ドキュメンタリータッチの『糧なき大地』もくもが観た当時のタイトルとちょっと違うようですし、『忘れられた人々』も邦題はたしか変なタイトルつけられてましたですから。
彼の訃報を聞いたとき、なんだか世の中の楽しみが一個確実に減ったような気がしたものでございまする。
もし興味を覚えた方は、そうですね。
妖艶な美女と性の奇怪さ、遍歴を観たい方は『昼顔』や、『小間使いの日記』『哀しみのトリスターナ』辺りを。
シュールさを満喫したい方は『アンダルシアの犬』を。
胸が痛む少年の無惨を観たい方は『忘れられた人々』を。
キリスト教世界を皮肉っぽく鼻で笑いたい方は『銀河』や『皆殺しのバラード』を。
不条理なのに、やっぱりクスクススパイシーに笑いたければ、どうか『自由の幻想』『ブルジョワジーのひそやかな欲望』を。
そんな感じでしょうか。
くもにも未だに分類つきません(^_^;
仕方がないので概要だけをウッキウィキペギアさまの有難いレポーターさまに解説していただくしかない有様。
では、気になった方だけクリックジャンプをば→
ルイス・ブニュエルWikipedia
──でもどうしょうもなく、大好き(笑)v
そしてやはり大好きなフランスパンをかじる度、ちょっぴり塩辛く感じるのも、やはり一筋縄でいかないまま、異界へと鮮やかに去っていった、このルイス・ブニュエルさんをば思い出すせいなんぢゃないかなあと思います。
大好きなルイス・ブニュエルさん。
あなたがいなくなって、ちょっぴり世界の色が減った気がします。
無神論者と云ったあなたは今はもう、ただの土の一部ですか?
もしも逢える世界があったとしたら、どうか、一度で宜しいから、くもとお茶でもしてくださいませ。
数多おられた、いまはもう逢えない監督さんで、デートの申し込みがしてみたい方は、あなただけです。いなくなってほんとうに、…寂しいです──(-人-)
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