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宿を後にして
途中龍王峡を歩いた。
日川沿いの遊歩道には
誰も人影はなかった。
軽やかに歩く彼女の後を、
追うように歩く僕の姿は少し
滑稽だったかもしれない。
美しいこの流れが、長篠の合戦の後
最後の武田家の侍女達16名が自害して果てた
「三日血川」と呼ばれた歴史の川とは
とても思えない。
人に会わず、熊にも会わず
二人だけの散策を経て、武田勝頼主従が眠る景徳院に向かった。
景徳院は、かつて徳川家康が勝頼たちの霊を鎮めるために
建立した当時は壮大な七堂伽藍が展開されていたという由緒ある寺だが、
いま寂然とした境内には、暑い日差しと蝉しぐれだけが溢れて
墓石の前に佇んで参拝しているのも僕たちだけだった。
~甲斐の国破れて山河はあり、夏深く草木茂り、兵どもが夢の跡~
向き合う歴史は、遥か遠くにあるが、悲しみは消えることがないのだ。