マンハッタン狩猟蟹の逃げ場

マンハッタン狩猟蟹の逃げ場

2008年09月08日
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カテゴリ: 2008年08~12月読書
[1] 読書日記


  読んでいないので書かないのではなく、
  どうせ毎日読んでいるので一々書くのが面倒になり、
  しばらく「読書日記」を書いていなかったが、
  何となく書きたくなったので再開。

  ここ最近読んだ海外ミステリ(翻訳ミステリ)の感想を、まとめて。




フレッド・ヴァルガス 「青チョークの男」(創元推理文庫)

    パリ市街地で連日、路上のガラクタが青チョークで描かれた円で囲まれるという
    出来事が発生する。誰もが悪戯と決め付け放置していたこの事件に、パリ第五区
    警察の警察署長アダムスベルグだけが、不吉な予感を感じていた……。    

    というような感じに物語がスタートする本書。
    関東の方に遠出した際に、その移動の車中にて読了。

    味のある語り口と、
    上記アダムスベルグを筆頭とした独特の登場人物造詣にはまり、
    軽く作者のファンになった。

    旅行からの帰還の後、同作者の既刊本をすぐに買い求める。


フレッド・ヴァルガス 「死者を起こせ」(創元推理文庫)

    ある朝突然、自分の家の庭に、全く憶えのない木が植えられていて気味が悪いので、
    地面を掘ってもらえないかと、隣人の老女の頼まれた、ボロ館に暮らす三人の歴史
    学者と元刑事。木の下を掘っても何も出ては来なかったが、しばらくして依頼人の
    老女がその姿を消してしまった……。

    と、「日常の謎」+「奇妙な味」風ミステリを皮切りとしながら、
    事態が殺人事件へと発展していく展開は、上記「青チョークの男」と同様。

    登場人物造詣は、やはり独特かつ個性的。
    今回読んだ作者の3作品の中で、ミステリとしてはこれが好み。


フレッド・ヴァルガス 「論理は右手に」(創元推理文庫)

    パリの街路樹の根元にあった犬の糞から現れた人骨。元内務省調査員のケルヴェレ
    ールは、ボロ館に住む歴史学者たちの力を借り、調査に乗り出す。

    という始まりで、上記「死者を起こせ」と同じシリーズの第二弾ながら、
    主人公かつ物語のけん引役が新たな登場人物に変わっている変り種。
    前作では、歴史学者の一人が主人公格だった。

    名前だけの登場であるが、上記「青チョークの男」の主人公であるアダムズベルグ
    が出てきており、3作品は地続きの世界観であったことが明らかになった。


ロン・ファウスト 「死人は二度と目覚めない」(ハヤカワ・ミステリ文庫)

    弁護士の使い走りとして働く主人公が、まもなく莫大な遺産を相続するある男の
    捜索を依頼される。男がクルーザーに乗って洋上に出ていることを突き止めるも、
    クルーザーに男の姿はなく、そこにはヤギの死体が転がり、近くの海中からは、
    重石をつけて沈められた多数のダッ○ワイフと、女性の死体が発見された……。

    という概要に惹かれて、本書を購入するも、
    当初の謎(意外性)が読み進むにつれて逓減していく作品だった。

    ミステリという範疇ながら、読み終わってみれば、
    こちらが思い描き、読みたかったミステリのジャンルとは微妙に違った、
    というのが率直な感想。

    こちらに理解力が足りない為か、タイトルの意味(理由)もよくわからなかった。


ジョン・リドリー 「地獄じゃどいつもタバコを喫う」(角川文庫)

    偶然にも、自殺した直後のカリスマ・ミュージシャンの未発表テープと、マフィア
    から盗んだヘロインを手に入れてしまった、コンビニ店員のパリス。テープを狙う
    エージェントと、マフィアの差し向けた殺し屋に追われ、パリスはロスからラスベ
    ガスへと車を走らせる……。

    という概要が全ての、血と硝煙が吹きすさぶパルプ・ノワール。

    ドミノ倒しの如く死体が量産されていく筋立てと、
    その死体の山を築き上げていくタフな殺し屋のキャラが良い。
    物語が転がりはじめたなら、一気に最後まで読んでしまいたくなる類の作品。


ジェイムズ・スウェイン 「カジノを罠にかけろ」(文春文庫)

    カジノのブラックジャックで大勝連勝を続ける謎の男。カジノ・コンサルタントの
    トニー・ヴァレンタインはイカサマであると確信するも、その手口が見抜けない。
    それに、イカサマだとわかる不審な行動は、カジノ側に目を付けられることは分か
    っているはずなのに、何故その男はそんなにも派手に振る舞うのか……。

    という、イカサマ師と、イカサマハンターの対決を扱ったギャンブル・ミステリ。
    「地獄じゃどいつもタバコを喫う」の最後の舞台がラスベガスだったことの連想か
    ら、ラスベガスのカジノが舞台のこの作品を読了。

    中盤で多少、集中力は切れるも、全体としてはミステリとして面白い作品。
一人称とはすなわち嘘発見器にすぎない ことがわかる。


ウィリアム・モール 「ハマースミスのうじ虫」(創元推理文庫)

    < 合法と非合法の境目を澄すまし顔で歩いている人間 >の観察・蒐集を趣味とする
    キャソン・デューカーは、「バゴット」と名乗り、クラブの仲間を恐喝した、
    全く特徴のない男を、広いロンドンの中から見つけ出し、狩り出す為に行動し、
    罠を仕掛ける……。

    という、「追うもの」と「追われるもの」を描き、
    読了の上記後半3作品と似たような構図の作品ながら、比較すると、
    全く派手さに欠ける、オフビートなテンポ、筋立て、語り口な作品。

    だけど、今回の7作品の中では一番の好み。
    抜群に面白かった。





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最終更新日  2008年09月09日 03時29分52秒
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