約束さ永遠のミステリ~ 妄想と考察と日常の闇鍋

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2025年12月28日
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テーマ: 読書感想文(758)
カテゴリ: 読書感想
今回感想を書くのは、三津田信三の『水魑の如き沈むもの』である。
水神を祀る四つの村。奇怪な雨乞いの儀式。湖上の密室殺人。神男たちは次々と……奈良の山奥、波美地方の水魑様を祀る四つの村で、数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われる。儀式の日、この地を訪れていた刀城言耶の眼前で起こる不可能犯罪。今, 神男連続殺人の幕が切って落された。ホラーとミステリの見事な融合。シリーズ集大成と言える第10回本格ミステリ大賞に輝く第五長編。(Amazonより引用)
刀城言耶(とうじょう げんや)は小説家であり、怪奇研究家であり、探偵でもある。先輩の阿武隈川烏の紹介で、担当編集者の祖父江偲と共に、雨乞いの儀式――作中では「増儀(ぞうぎ)」と呼ばれる儀式の取材に行く。儀式が行われる波美の地では「水魑(みずち)様」と呼ばれる水神が信仰されていた。儀式を取り仕切る水利組合、中国から引き揚げてきた不思議な力を持つ親子、美しい娘を巡る人間関係と、様々な要素が絡み合う中で、儀式の担い手である「神男(かみおとこ)」が殺害されてしまう。
水使神社の傲慢な当主・龍璽によって、祖父江を人質に取られてしまった刀城は、警察の手も借りずに事件の謎を解くことになる。しかし、そんな刀城の奮闘もむなしく、神社の宮司たちは次々と殺されていく。何度も推理をしてはそれを練り直し、刀城が最後に出した結論は驚くべきものだった。なんと、生贄として捧げられたはずの少女、小夜子こそが連続殺人事件の犯人だと言うのだ。もっとも、推理の裏付けも取れぬまま、波美の地は鉄砲水で流されてしまう。全ては水の底に沈んでしまったが、その地に残った人々は新しく生活を始めていく。刀城はせめて、彼らに穏やかな生活が訪れることを願うのであった。
和風ホラーの雰囲気が漂う物語だが、推理小説としてもしっかり成り立っている。探偵である刀城は天才型ではない。とにかく色々な推理を出しては考察し、少しずつ真実に近づいていく。謎を紙に書き出し、思いついた推理は片っ端から披露しては、関係者の意見を聞いて何度も修正する。検証を繰り返していく過程は、探偵というよりも学者のようだ。むしろ、怪奇について考察する過程を推理に応用しているのかもしれない。
私自身も妖怪が大好きなので、刀城には非常に好感が持てた。また、水魑様や泥女、一つ目蔵などの怪異の要素も、設定がかなり細かく作り込まれている。推理によっても怪異の存在は否定されず、理屈では説明できない「あやふやな存在」として、しっかりとそこに在る。今村昌弘『屍人荘の殺人』以降、怪異と推理の二本立ての魅力にはまってしまった私にとって、本作はたまらない。私はホラーは苦手だが、文化としての妖怪や怪異は大好きだ。実存を信じたくはないが、話を読み、考察するのはとても楽しいのである。京極夏彦の「京極堂」シリーズを思い出すが、あちらが「不思議なことなど何もない(憑物落とし)」としているのに対し、こちらは「不思議なこともあるが、推理もできる」といった絶妙な距離感である。
三津田信三氏の作品は以前『首無の如き祟るもの』も読んだが、あちらも非常に面白かった。首なし死体と村に伝わる「淡首様」の伝説という、古風なミステリ好きなら読まずにはいられないテーマだ。推理部分だけでなく、淡首様の成り立ちや目的など、考察の余地がたくさんあった。もう図書館に返却してしまったので詳細は書かないが、こちらも妖しさに満ちた素晴らしいミステリーである。
なお、終盤に登場する「正子」の正体については、読者の間でも小夜子説と正一説があるようだ。個人的には正一説を支持したい。理由の一つは、正一が聞いた予言で「あねがしぬ」と言及されていたこと。もう一つは、流石に小夜子が正子として振る舞った場合、数年前まで村にいた少女の顔を誰も見分けられないというのは、人相の面で無理があるのではないかと思うからだ。とはいえ、もし小夜子が本当に死んでいたとしたら、それはあまりに悲しい。正子の正体が小夜子であっても一向に構わないし、結局のところ、小夜子と正一の二人が幸せになってくれるのであれば、真相がどちらであってもかまわない。
私はすっかり三津田信三氏のファンになってしまったので、今回も追加で二冊ほど借りてきた。こちらも出来れば感想を書きたい。ただ、表紙が美麗ながらもめちゃくちゃ怖いので、夜中に読むのはやめておこうと思う。





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最終更新日  2025年12月28日 13時36分27秒
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