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父からの執拗な勧誘の末、ほぼ強引に決められてしまった。かつお自動車教習所入校日、当日。乗り込んだ『かつお自動車教習所』行きのスクールバスには、僕以外、学生の姿はありませんでした。学校案内にも、『閑散期』とでかでかと書かれていた通り。こんな辺鄙な時期、そして正午を少し回ったと言う時間帯に教習所へ通う人物は稀なのでしょう。通学用と銘打ったわりには、小さすぎるマイクロバスには僕と運転手さんの二人だけ。混んで来たら・・と気を使って最後部の一番隅に降ろした腰も危惧に終わりそうな感じでした。おはようございます。無意味な徹夜明け、まぐろです。さて、皆さんは、何か特別な予定のある前日はドキドキして眠れなかったことってありませんか?僕の場合、その帰来が強いようで・・「わ~い♪明日はデートだ~♪」とか「明日からは、新しい職場だぞ・・。」てな状況に置かれると脳のどっかから、いけない物質がドバドバ出てきて「ぬ・・ぬおお。。眠れないぃいぃぃ。」なんてパジャマを掻き毟ることもしばしば・・。これは、一種の神経症なのでしょうか?そんなこんなで、この日も三時間睡眠でありました。昼下がりの安穏とした時間。澄み渡った青空から降り注ぐ陽光が、秋口とは思えぬ暖かさを車内に投げかけています。僕の住んでいるトコロは、市街地より随分と離れた平野部分なので窓の外には延々と広がる田園が見渡せそれが長閑な雰囲気と共に流れて行きます。カーステレオから響く女性DJの可愛い声が陽だまりの様なスクールバスの空気を、更に和やかにしていました。これは・・僕に「寝ろ」って神様が仰っているのでしょうか?三時間の浅い眠りしか与えられなかった僕の瞼に田舎町の安穏とした風景が優しく凭れ掛かってきます。うとうと・・うとうと・・う~いかんいかん。父の話では、ものの二十分で教習所に着いてしまう短い道のり・・こんな所で、いびきをかいて運転手さんに起こされるなんて・・恥ずかしい真似・・。末代までの・・・。ぐ~不意に誰かに肩を揺さぶられたような感じがして目が覚めました。・・いったいどれくらい寝ていたのでしょう。未だ、スクールバスには誰も乗り込んできてはいないようです。人影は僕と運転手さんだけ。目的地に到着していない所を見ると眠っていたのは僅かな間だったのでしょうか?なにげなく携帯電話で時間を確かめる僕・・あれから・・一時間も経過しています・・。「なんで・・??」はっと我に返り周囲を見渡したところで僕は愕然としてしまいます。「ここ・・どこ?」左手には、上るには装備が必要なほどの断崖絶壁。先程までの暖かで燦々とした太陽は、右側から伸び周囲を取り囲む鬱蒼とした樹木群の抵抗に遮られモノトーンの色彩をスクールバス車内に落としています。山です。もろ山中です。もう一回、言いますね。僕の住んでいるトコロは、市街地より随分と離れた平野部分なです。こんな光景は、めったにお目にかかることは出来ません。そう・・車で一時間以上走らないと・・。ふと振り返ると、遥か遠方、木々の間からもう、とてつもなく小さくなってしまった僕の住む街が見えました。「あれ?確か・・車で20分程で着くはずじゃ・・。あれ?」何処か遠くで『ドナドナ』が流れるのを聞きながら寝ぼけ眼を右往左往させていると・・再び、誰かに肩を揺さぶられました。これが、曲りくねった山道が齎している遠心力だと気づいたときには時、既に遅し。「うえっ・・気持ち悪い。。。」乗り物に酔いやすい体質のもやしっ子には連続する急カーブは酷です。他人に邪魔にならないように・・と後部座席に乗ったことも災いして瞬時に落とされる阿鼻叫喚地獄。三半規管とストマックを、散々揺さぶり続けられ寝ぼけ眼は、次第に死んだ魚ような眼差しへと変貌です。一体、何処に連れて行かれているのかも分からない不安感もより拍車を掛けてくれました。「きっとオヤジは、僕をサーカスに売ったんだ。 目的地に着くと、鞭を手したに燕尾服の団長が とんぼの切り方を一から僕に叩き込むんだ~!!」などと・・既に冷静な思考が出来なくなった僕は仕方なく窓ガラスに額を押し付け薄暗い所を流れていく景色(主に緑)を呆然と眺めていることしか出来ませんでした。暫く行くと、不意に視界が開けました。樹木の群生が隠していた太陽が、僕の瞳に飛び込みます。急激に収縮された瞳孔に軽い眩暈を覚えながら突然広がった白い世界に、目を細めます。「つ・・着いたの??」しかし、そこに広がっていた風景は・・見渡す限りの・・墓場。墓場。墓場。それはもう、墓石・卒塔婆の原野。あの冷たい石の下には、数え切れない数の・・人骨。人骨。人骨。「だから!僕は一体、何処へ連れてかれるんだぁぁぁぁ~!!」・・教習所は、その墓場を越えた山の中腹にありました。入校式を終え、脱兎の如く自宅に戻ると父親に詰め寄ります。「お、おやじ!!めちゃめちゃ遠いじゃないかよ!! それに何!あの山!あの墓!!」二十分と聞いていたのに、一時間以上も掛かるなんて話が違うのにも程があります。しかし、その事実を突きつけても、父はしれっとしたもので「おお・・そんなに遠かったか。」なんてあくまでもマイペース。そして、続けざまに僕が気になって止まなかった彼の画策の全容を僕に告げるのでした。 「実はな、あの教習所には同僚の娘さんが勤めていてな。 お前の嫁さんにどうかなって。」「はぁ!?」「良かったら、食事にでも誘ってやってくれ~。」み・・見合い?これは見合いなの??「のおおおおお!! 余計なお世話だ~! くそ親父~!!」・・と、言うわけで通学・片道一時間という非常に面倒くさい『かつお自動車教習所』生活が始まりましたとさ・・。はたして、どうなることやら。。
Oct 29, 2003
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こんにちは、お久しぶりです。何事もままならない日々を送っております。まぐろです。実家暮らしに戻って、ほえほえっとした日々を送っていると一日の過ぎてゆく間隔が、恐ろしいほど早いですね。田んぼの畦道を散歩してみたり両親の趣味で揃えてある『釣りバカ日誌』の原作本61巻分を読破したりしている内にふと気づけば、半月が流れてしまいました。色々考えて戻ってきたのにこのままでは、三十路間近になって親のスネを齧っている寄生獣的な存在に成り下がってしまうこと請け合い。取り敢えず、先月の新聞配達のお給料が尽きるまでに次に控えるステージの臨戦態勢だけは整えておかねば・・と僕が最初に手をつけたのはそう・・自動車教習所です。交通機関が発達した東京に住んでる分には自動車の免許なんて、金の掛かる無用な長物にも思えていましたがこと、田舎暮らしともなると話が百八十度変わってきます。大動脈となる交通機関のバスなんかが、一時間に四本ではコンビニエンスストアに、うまい棒を買いにいくのにも骨が折れるのが現在の状況。まあ・・バイクでも買えば事たることですがこれからやろうと思っている仕事にも、少なからず必要になってくるので三十路の手習いと遅ればせながら、教習所通いの日々を選択いたしました。さて・・数ある自動車教習所から、どの学校を選択しようか?どうせならば、近場のほうが通学がめんどくさくなくって良いな?・・などと考えながら、県下に数ある教習所の中自宅から車で20分程にある二校に絞り込み自分的最終決議を纏める為に、取り寄せた資料なんかを机の上に並べ部屋に篭って、あれこれ考えていると・・話を聞きつけた父親がやってきました。なんでしょう?やけにニコニコと意味深な微笑を湛えております。「まぐろ、教習所に通うならワシの知り合いが勤める 『かつお自動車教習所』に通わんか?」「ん?かつお自動車教習所?」突然の申し出と、聞いたことのない学校名に首を傾げる僕。この『かつお』てのは仮名で、ココには地名が入るのですが・・。僕の頭の中の近隣地図には入っていない地名を冠しています。「遠いのは、嫌だよ。ほら近場にも教習所あるし・・。」「いや。お前が資料を取り寄せた教習所とそんなに距離も変わらないぞ。 それにスクールバスが、ウチのすぐ前を通っているから通学は楽だろ。 面倒くさい手続きは、こっちで全部やっておいてやるから 『かつお自動車教習所』に決めときなよ。 ほら、これも貰って来てやったから。」そういって、ニコニコを絶やさない父は『案内所』と書かれた一通の封筒を僕に手渡しました。既に、僕の名前に書かれた入校願書なども添えられております。・・・何なんでしょう?この段取りの早さは・・。そして彼の意味深な微笑みは・・。ウチの父親は、どちらかと言うと表情豊かで微笑の絶えない人なのですが普段、その笑顔を見慣れている僕はこの何処か『違和感を覚える笑み』に、何か裏があるように思えました。「考えとくよ・・。」そう、その場はお茶を濁してみました彼の勧誘はこの後もずっと尾を引き続け夕食に食卓においても、セールスは続くのでした。「この強引さ・・ただの人付き合いだけが理由じゃない。」あまりにもしつこいので、理由を問いただしてみてものらりくらりと言葉をはぐらかし要領を得ません。ますます怪しい・・。あまりにも怪しすぎるので、傍らで話を聞いていた母が「もしや、私の他にいい人でもいるの!! その関係のお誘い!?キーーー!!」などと、あらぬ誤解を持ち、仲良く喧嘩をおっ始める始末。おいおい・・。その後も、色々と探りを入れてみましたがついにその真意を知ることは出来ませんでした。なんだか、薄ら寒い不安感がなんかが纏わりついてきますね。しかし、もしも既にこの話がその教習所に勤める知り合いさんとやらの耳に入っている場合父親の顔を潰してしまうんじゃないかと言う危惧から・・「まあ・・近場なら良いか、送迎のバスもあるし。 何かあっても、実の息子の命までは取らないだろう。」・・などと、半ば無理やり自分に納得をさせて『かつお自動車教習所』に入校の手続きを取る事にしました。この選択が、物凄く面倒くさい教習所生活の始まりとなろうとは・・。
Oct 28, 2003
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「故郷よ!私は帰ってきた!!」 と・・言う事で、戻ってまいりました。 七年ぶりの郷里ということで、ふらふらと遊び歩きながら 実家に寄生しているまぐろです。 皆さんお久しぶりです。 うだうだと書きたいことは沢山ありますが・・ それには、最大の問題が・・。 そう・・ネットに繋げられる環境がいまだに整っていないのです。 ネット中毒者の僕のこと。 帰郷して一番に連絡を入れたのが、もともと使っていたプロバイダーさん宛て。 「この際だから、ADSL最速の26Mに契約し直そう。 あ・・実家の環境じゃ、ケーブルを引くのも大変だから 無線LANも必要だな・・。」 ・・などと快適なネット生活を夢見ていたのですが。 現実はとても残酷なもので。 プロバイダーの回答は 「工事に2・3週間掛かります。」とのこと まあ・・田舎だししょうがないかと、そこは妥協してみたんですが 「お宅がNTTよりも、3キロ以上は慣れていますので 26Mで申し込まれても、8Mくらいの速度しか出ませんし 無線LANも使えるかどうか分かりません。」 とのたまわれたときには 頬を伝う熱いものを堪える事が出来ませんでした・・。 おのれ!田舎め!!
Oct 27, 2003
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こちらの日記は、サブコンテンツ「なまけたろうと愉快な下僕達」に移動いたしました。
Oct 21, 2003
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Oct 20, 2003
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Oct 19, 2003
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去る・・平成十五年、七月。郷里に住む友人のお父さんが亡くなりました。僕の父とも、変わらない歳だったので超高齢化社会に変貌しつつある日本に於いては『早すぎる死』だったのかも知れません。大きな精神的支えを失って、落胆してはいないだろうかと連絡を取った僕に友人はこう告げました。「失わないと本当の意味に気付かないってコトも 沢山あるんだよ。 まぐろも、家族のことを考えたなら ずっと東京に住んでる訳にはいかないだろう?」微かな負い目を覚えながら生きたいように生きている僕には分かりすぎるほど、よく分かる言葉でした。家族・・。十代、二十代の男って奴はその集合体にかなりドライな考え方を持っている人も多いのではないのでしょうか?他聞に漏れず、僕自身もそうでした。「人の人生なんて、その人のものなのだから 僕は僕の人生を送ればいいし 両親は両親の人生を送ればいい。」心の底では間違ってると思いながら十代の頃は、そんな冷酷ともいえる考え方をしたものです。しかし、一年に一度の帰郷の度。徐々に老けて行く両親の背中を見るにつれこれ以上、自立に向けた通過儀礼って奴を繰り返す訳にも行かないコトはこの所、ひしひしと感じていました。「そうだな・・考えとくよ。」しかしこの時は、バイトとは言え信頼して任されている新聞配達の仕事や新たに東京でやってみたい仕事。また、ココにしか存在しないかけがえのないモノも傍に在りましたので簡単に彼の言葉に頷くわけにも行かず。お茶を濁して言葉を切ることしか僕には出来ませんでした。『大切な物は、その対象を喪失しないと本当の意味を理解出来ない。』或いはありふれた言葉なのもしれませんが・・これから父なき世代に立ち向かおうとする友人の姿勢には今までに僕の抱いてきた「家族」に対する感情を大きく揺さぶるような、重々しい説得力がありました。この後も、彼の言葉は僕の心に楔を打ち続ける事になるのです。時は流れ・・平成十五年、十月。自分の新たな開拓のため、長年続けていた仕事を辞ました。ちょうどプライベートでも、色々あって何もかも原点に戻ったような時だったので新たな分岐点を前に今まで歩いてきた道程を振り返ってみることにしました。彼の言葉が蘇ります。『大切な物は、その対象を喪失しないと本当の意味を理解出来ない。』僕の親父も、来年は還暦です。いつまでも目を背けてばかりもいられません。この日から、僕は自分と家族のあり方について考えるようになったのです。「はたして・・このまま東京に残り続けながら 自分のやりたい事をやることが正しいのか?」「もし、一端に食えるようになったとしても 両親の片方が、何らかの病気で動けなくなった時 僕は彼らを見捨てて自分の人生を謳歌する事が出来るのか?」「その時点で、郷里に帰って、家族を支えるとしても 一体僕は何歳だ? 果たして満足な就職口なんてあるのか?」「それならば、比較的動きの取れやすい三十路前の今。 一旦区切りをつけて、郷里で新境地の開拓に努めたほうが良いのでは?」「しかし、僕にはまだ、東京でやってみたい仕事もあるし 譲れない物だってあるだろう?」「何十年経て、逃れられない壁にぶつかった時 ここでもう一歩踏み込まなかった自分を、僕は許せるのか?」浮かんでは消える数限りない葛藤。どちらを選択しても、後悔しそうな袋小路。眠れない夜が僕を呪縛し自分の納得できる答えを模索する日々が幾日続いた事でしょう。ついに、僕が導き出した答えは・・。『せめて人間らしく』でした。「どちらを選択しても、後悔するのならば 誰かを傷つけるよりも 自分の身体に開いた穴を見つめていたほうがずっと良い。 それにココじゃなくても、生きてる限り きっと目標は見つかるはずだ。」それが僕の到達した最終結論でした。或いは、それは・・自我の確立だけを模索し続けたこれまでの僕との、離別だったのかも知れません。こうして僕は、長年住み慣れた東京の地を後にすることとなったのです・・。追記長々と・・そしてうだうだと・・書きましたが。これが僕が東京を離れ郷里に引っ込んだ理由でした。モラトリアムの戯言だとか逃避行動だとかただの甘えと言い訳だ!この野郎!!とか笑って頂いても結構です。ただ・・いざ郷里に戻って安心した両親の顔を見てるとあの時の選択は正しいものだったと思えたので恥を忍んで文章にしてみました。次なるステージは、新境地・新天地をそれぞれ開拓することです。それに対しての目標、方向性の確立など準備は着々と進んでおります。詳細はまた追ってご報告いたしたいと思います。
Oct 18, 2003
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突然ですが・・。今日を持って、僕は東京を離れることになりました。郷里に引っ込みます。色々考えての決断、なんですが・・色々考えすぎて・・物凄く時間がないことになっています。後・・数時間もすれば、引越し屋さんがやってくるというのに未だ部屋が片付いていません・・どうすんだ?これ?この所の、心境変化。東京最後の夜。なんかをはじめ・・「恐怖団地三部作」「まぐろ闘病記」「街で見かけた女優さん」「裏廃屋日記」「たろう二度目の引越し」配達日記および雑文等々文章にしたいのは、山ほど残ってるんですけど只今、恐ろしいほど立て込んでますので・・あしからずです。
Oct 17, 2003
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肌を撫でる風に、凛としたものが混じるようになりました。いっそうの深みを増した青空にうろこ雲が広がってそのなんとも言えぬ郷愁感を絶妙に滲ませています。もう秋・・なんですね。この季節、ぶらぶら散歩なんかしていると鼻先を掠めるほのかな香りに出会います。ふと、その先を眺めると儚いくらいに小さく黄色い花。しかし確かに自分を主張するまるびを帯びた甘く不思議な香り・・。そう・・金木犀です。なんとも良い香りですね。ホント・・街中の金木犀を焼き払いたい気分ですよ。僕がこの匂いを嫌いになったのは、小学生の頃。当時、父がマイカーに設置した物は金木犀の芳香剤でした。「おとうさん。くるまがいいにいするね。」幼い頃のまぐろ少年は、まだ金木犀がどんな花なのかも知りませんでしたが初めて嗅ぐ甘い匂いが珍しく、とても喜んでいました。もともと三半規管が脆弱な僕は、車酔いし易い体質だったので長時間、慣性を帯びた車内でストマックを揺らし続けられると必ずと言っていいほど、汚らわしいものを巻き散らしながら絶命してしまうという車嫌いの子供でしたが・・。この甘い香りが嗅ぎたくて車内にこっそりと紛れ込んで遊んでいたりしたものです。しかし、ある日。事態が一変します。それは夏の日の出来事。ウチの一家は、お盆になると母方の実家に総出で帰省する習慣がありました。山道を車でひた走るのは苦手でしたがおじいちゃん、おばあちゃんは大好きだったので車酔い気持ち悪さとの闘いにも、エチケット袋片手に何とか耐え毎年、二時間半の道のりを通っていたのです。その日も例年と同じく山の斜面を蛇行するカーブの連続に責め上げられ真っ青な顔をしていた僕は、いつ堤防が決壊してもおかしくない状況でした。それでも窓さえ開けていれば、風が入ってきて幾分か緩和されます。ほのかに香る大好きな金木犀も込み上げてくるものを、必死で耐える僕には大いなる支えとなっていました。やがて・・郊外に下りてきた車は渋滞に掴まってしまいました。風は止まり、車内に凪が訪れます。うちのマイカーには、エアコンなんて高級なものは装備されてなく炎天下の夏には脱水症状の危険性の伴うデンジャラスビューティーな代物。ぴくりとも動かないこの状況下に置いて、車内の不快指数はどんどんと上がっていきます。ココまでは、毎年変わらぬ通過儀礼だったのですが今年は一味違いました。そうです。金木犀の芳香剤です。先程までは、速度がもたらしてくれる風が上手く匂いを拡散してくれていたので、全く気にならなかったのですが風が止み、殆ど車内に通気がなくなると今迄心地良かった金木犀の香りが、車内に充満し始めました。濃密なる甘美は、狭い箱の中でどんどん自己主張を始めます。うだる夏に、ミントなどの匂いで清涼感を得るなんて話をよく耳にしますがこの毒々しくも甘い匂いは、逆アロマテラピー。三半規管をしこたま打ちのめされて喘いでいるまぐろ少年の呼吸器を容赦なく塞いで行きます。大好きだった金木犀の匂いが牙を向いた瞬間でした。気持ち悪いので、たくさん息を吸い込もうとしますが鼻口から入ってくるのは、毒々しい甘さの金木犀。窓から顔を出し、何とか逃れようとしますがどんなに逃げても、追ってくる甘い香り・・。「うう・・気持ち悪いよ・・お母さん。」泣いた所で、周囲に立ち込めたこの香りはまぐろ少年を捕らえて離ししません。 そして当然のように訪れる決壊。狭い車内は、見事に地獄絵図に変貌を遂げるのでした・・。どうしょうか?わずか8,9歳の学童が深層心理にトラウマを刻み込むのには充分すぎると思うんですけど・・。それ以来、金木犀の匂いを嗅ぐとあの忌まわしき光景が、まざまざと蘇って来て気持ちが悪くなってしまいます。ああ・・今日もあらゆるお宅の軒先から黄色い悪魔がやって来る。
Oct 4, 2003
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今日は、可哀想な人の話をしましょう。新聞の印刷工場が、千葉に新しく建設されたと言うことでココ最近、専売所に新聞梱包が届く時間は毎日、三十分近くも遅れています。それでなくても、時間指定やら何やらで大忙しの配達なのに、もうしっちゃかめっちゃかです。おまけに、その日は休刊日前の金曜日と言うこともあって広告の量がいつもの三倍。週刊誌並みの厚さに膨れ上がった新聞は比例して自重を増しバイクさんを鬼の様な責め苦の世界へ誘います。図らずしもの牛歩戦術を強いられ全く持って、原動機付き自転車の本末転倒。そのロス分を埋めるためには、バイクさんに乗ってない時に走るしか方法はありませんでした。結局、満身相違の努力もむなしく配達が終わったのは、いつもより一時間も遅い午前七時半。え?自分が可哀想なのかって?いえいえ・・僕が目撃した方に比べれば新聞が重いなんてのは、子供の駄々と同じようなものです。時計の針は、既に七時を回っていました。普段なら閑散としてるこの通りも会社に出勤するため人達の姿が、ちらほらと見え始めバス停に並んだり、コンビニで朝食を買い込んだりと街が目覚めていく様子に一役買っていました。僕はそんな人たちを横目で見ながらマンションを配るために、バイクさんに積んだ新聞を数えていました。いつもより到着時間が遅くこの場所のこんな顔を見るのは初めてのことですがあまり珍しくない在りがちで平和な風景・・。しかし・・そんな平穏は突如、奇妙な掛け声によって破られるのです。「うほっ!うほっ!うほっ!うほっ!」「!?」ふと見ると・・車道を挟んだ対岸の歩道を、男が走っています。「うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ!」否・・正確に言うと、競歩のような物凄い早歩きでずんずんと進んでいるのです。昨今の健康ブームで、早朝からウォーキングしている方ならよく見かけるのですが・・この男は異常すぎました。「うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ!」そう・・その掛け声。いや、あれは掛け声と言うのでしょうか?マンションの林立している朝の閑静な住宅街にその男の猛りは轟き渡る位の半端じゃない声量で「うほうほ」言いながら突き進んでおります。「うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ!」その風貌も何処か異様です。既に読み漁った後なのか、裏返しになったスポーツ新聞を脇にはさみ五厘に丸められた頭を上下に揺らせながら進む男のシルエットは限りない猫背です。奇声と相まって、ダーウィンの進化論が頭をよぎりました。「うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ!」こんなコアな光景に出くわした時、人はどんな行動を取るのでしょうか?新聞配達という職業柄なのか?はたまた僕がそういう資質を持ち合わせているからなのか?詳しい事は定かではありませんが色んな奇人変人を目撃してきて、ある程度免疫のある僕でさえ度肝を抜かれ暫く、その場で彼の動きを目で追うことしか出来なくなってしまいました。え?可哀想なのはこの男かって?そんな不謹慎なこと思っても口に出してはいけません。しかし・・僕が驚いたのは彼の出現だけではありませんでした。この驚天動地な状況に置かれながら不気味にも周囲の人たちは、皆、沈黙を守っているのです。バス亭で、お気に入りの小説を読む女子高生。何事も無いように、急ぎ足で男とすれ違うサラリーマン。誰もが男を、あまり気にも留めないような感じでおのおのの忙しい朝を自分のために使っています。彼が見えているのは、ひょっとして僕だけ?もしやあれは妖精さん?一瞬、自分の頭が規格外になってしまったのではないかと疑ってしまいましたが・・ここで、ふと思い出したことが。以前、僕が廃屋生活をしていた頃友人が部屋に遊びに来たことがありました。隣の魚女が、発狂して暴れ回っているのを初めて体験した友人は半ば失禁状態で恐れ慄いていたのですが「いつものことだよ」と僕は涼しい顔をしている僕でゲームに興じる僕に対しても狂気を覚えたらしいのです。もしかしたら、今この状況はあの時と酷似しているのではないでしょうか?「・・そうか、この人はこの時間帯。この界隈の名物なんだ。」変な人でも、毎日見ていれば次第に慣れてくる。たまたま、配達の遅れてココに辿り着いた僕だけが非日常的に感じているだけあって、いつもココにいる人にとってはあの男の存在も含めて、日常の一環なのに違い無いのかも知れません。そう考えると、皆の無関心さが納得出来ました。明日もこの時間になれば、彼に会えるのかな?なんて、漠然と考えながら「うほうほ」進む男を目で追っていると・・男の進路上にある路地裏から一人のOLさんが出てくるところでした。少し寝坊でもしてしまったのでしょうか?なんだか腕時計を気にして、酷く急いでいるようです。バス停のある通りに駆け足で、飛びだしてしまいました。・・・・。そう・・。この日、一番可哀想だったのは・・。おそらく、僕と同じでこの状況になれていない感じの彼女です。「うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ! うほっ!うほっ!うほっ!うほっ!」「ぎゃあああああ!!」久しぶりに、リアルな人の悲鳴を聞いたような気がしました。無理もありません。大通りに出たその瞬間の死角から丸刈りの大男が「うほうほ」言いながら物凄い勢いで突貫してきたんですから。遠目で見ると、彼女の耳にヘッドフォンの様なものが見て取れます。あれのお陰で、状況把握が出来なくなっていたお陰で大音声で迫り来る危機を認識できなかったが彼女の敗因でしょう。さて・・こんな状況。あなたならどうしますか。OLさんは余程、パニックになったのでしょうか?迷うことなく『うほうほ男』からダッシュで逃げ出しました。しかし・・所詮はパニックが故の行為。逃げ出した方向は、まさしく『うほうほ男』の進路上でございます。案の定、人通りの中奇声を上げながら進む男が女性の悲鳴ごときで怯む訳もなく・・。『OLvs変態男・白熱のデットヒート』の図・・完成。二人は一進一退の攻防を繰り広げながら先の角を曲がり、僕の視界から消えていってしまいました。・・コントか?お前ら?・・と、言うわけでとっても可哀想な人の話でした。
Oct 3, 2003
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不覚にも・・僕が軸足を180度回転させる下段回し蹴りで水平線の彼方まで蹴り飛ばしてしまった三毛猫さん。先日、朝刊休憩中にいつものように煙草くわえて、ブランコにぶらぶら揺られてると・・にゃーにゃー鳴きながらやって来てくれました。「なはは~♪お前、バカだろ~ 一度、自分を蹴った人間くらい覚えとけよ~」・・と、擦り寄ってくる三毛猫さんをとっ捕まえて両前足の第一関節をむんずと掴み三毛猫さんの肉球のついた先っぽを彼女の意思とは関係なく、ぺこぺこさせて遊びました。内心は、ほっとしているまぐろです。こんばんは。なんか・・動物ネタばかりのような気もしますけど今日も犬ネタでございます。ここ最近、とっても仲良くしてもらっている白いワンちゃん。あまりにも色白なので、勝手に由緒ある家柄のご令嬢だと勝手に淡い恋心を抱いていたのですがその名前が、聞くも勇ましき『ゴン太』だったと分かりまぐろは、傷心の旅に出てしまったのが前回までのあらすじ。集金時期に、一度。飼い主さんの立会いの下、本気で遊んでやったのが幸いして昨今では、朝刊配達で顔を合わせる度に彼の「遊んで、遊んで」攻勢が激化の一途を辿っています。先日も、僕が姿を見せると何処からともなく、テニスボールを口一杯にくわえて登場。「なに?これで遊ぶの?」仕事中ではありましたが、お客さんの犬に頼まれたら仕方ありません。・・と言う名目でちょっぴり配達をサボって遊ぶことにしました。さすがに人様の庭先で、遠投をぶちかます訳も行きませんので彼の死角に、ポトンと落とす『宝探しゲーム』にでも興じようと、咥えたボールに手を伸ばしたところ・・。ゴン太の奴。離す気配がありません。まぐろ「こら!離さないと遊べないだろ!」ゴン太「あががが。あががが。」まぐろ「おのれ、くぬぬぬ。。」ゴン太「あががが。あががが。」まぐろ「くぬぬ。」ゴン太「あがが。」まだ明け切らぬ、薄暗い風景の中。一個のテニスボールを奪い合う、一人と一匹。・・とまあ、毎朝、仲良くやってます。なんだか、弟分が出来た心境で僕も嬉しいところではあったんですが・・。先日二人の間柄に微妙な変化が。。いつものように、軒先のお邪魔するとかまって光線出しながら、じゃれついて来るゴン太。一頻り、鼻先を撫でたり分厚い肉球をぶにりぶにりとやってるとふいに、奥に引っ込むゴン太。「あれ?今まで、飽きるまで撫でさせてくれてたのにな~ どうしたのかな~」なんて覗き込んで見ると・・ゴン太は自分の犬小屋から、何やら咥えて持って来てくれました。また、テニスボールかな?・・と、彼が咥えている物を見てみると。そこには少し萎びているものの繊細な紅色した花びら。「なはは、何持って来てるの~」と頭を撫でてやりましたが何処となく、ゴン太の瞳が潤んでいるように思えます。はっ!!こ、これはまさか!!俗に言う『恋の告白』って奴ですか??だ、駄目よ。僕と君の間には決して越えることの出来ない性別って壁が高く聳え立ってるんですものっ!!・・お~い、自分~!!帰って来~い!!冗談はさておき、どうやらこれはゴン太の宝物の一つのようですね。「うんうん。ありがとね~いいもの見せてくれて」・・といつもより丁寧に頭を撫でてやるとゴン太は満足げに、花びらを小屋に仕舞いに行くのでした。・・よかった。宝物が魚の頭や。白骨じゃなくて。。今度はどんな宝物を見せてくれるのかと、ゴン太の所に行く楽しみが一つ増えました。
Oct 2, 2003
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たろう「おはようございます。 あなたの『こころのアイドル』なまけたろうです。」たろう「まぐろさんは、相変わらず倒れたままで 黒ずんだり、嫌なにおいを放ったりしております。 そろそろ粗大ゴミの回収・・たろう「ぎゃああっ!!」どもども、お久しぶりです。まぐろです。相変わらず浮き沈みの激しい人生を送っております。人間不思議なもので、どんなにくたばっていても腹は減るし、眠くもなる。ちゃんと息も出来るし、季節だって分かる。何となく「ああ・・僕、生きてんだな~」とつまらない事で納得しているうちにふと気づけば、既に10月・・。気づかない間に、肌寒くなってましたね。さてさて。。最初は『二週間程』と言う約束で、舞い戻った新聞屋生活もあれよあれよと言う間に、三度目の集金ロードに終了。予定では、バイト仲間君は八日に退院となってますが・・果たしてどうなることやら・・。改めて、うちの専売所の蟻地獄に恐れおののいちゃったりしています。。そんな三ヶ月目の集金、真っ只中での出来事。「9月16日の新聞が入ってなかったわよ。」・・と仰ったのはこの日、初めて集金に伺ったお客さんでした。見るからに神経質そうな中年女性は眉間にしわを寄せながら、僕を睨みつけています。いくら鈍感な僕にも一見してお怒りの雰囲気と分かりました。「え!?・・入ってませんでしたか?」不意に口をついた言葉。しまった・・と思ったときは後の祭り。「入ってなかったから言ってるんじゃない!しっかり配達してよね!」あわあわ・・眉間の皺が更なる渓谷に。新聞を長く配っていると、不着しちゃう傾向があるお宅とそうでないお宅が見えてきて前者のお宅は、なるだけ気を使って配達しているようにはしているんですが・・この苦情を頂いたお宅は、マンションの最上階に一件だけ入っているお宅。突き当たりという個性的な位置に存在しているため限りなく後者のお客さんのはずなんですけど。しかし、この所考え事が多くて上の空に成りがちの配達だったので自信は限りなくありません。現に、今朝の朝刊を入れたかどうかも定かではないのです。なによりお客さんが「入ってない」と仰るなら事実、入ってなかったんでしょう。この場合、僕がやるべきことはただ一つ。平謝りに謝って、その日の新聞代金を自腹で補填する以外に方法はありません。最悪、不着が引き金となって契約破棄なんてことになったら営業の担当さんに申し訳が立ちませんし・・すぐさま「今月の購読料は一日の新聞代を引いた値段で結構ですので・・。」と伝え「申し訳ございませんでした。」をマシンガンのように連呼しました。献身的(?)なお詫びを重ねた末。なんとかお怒りは鎮めて頂けたようで・・「今度から気をつけてね」なんて言葉で事態は収拾に向かいました。ま・・文字に書き起こすと温かみのある科白ですがお客さんが発した実際のニュアンスはもっと冷水を浴びせかけるような感じでした。当然のように最後の「申し訳ございませんでした」も言い終わらないうちに扉はバタンと閉じられます。頭を下げたままの姿勢で切り捨てられた様に、その場に取り残される僕。ふぅ・・冷や汗を流しつつも何とか最悪の事態は回避できて一安心。まぁ・・長いことやってればこんな修羅場も数だけはこなしています。それに、今回は己が仕出かしたの失敗だから仕方が無いとそう自分に言い聞かせ次なる集金先に向けて奮起を促そうとしました。しかし・・どうしても心に引っ掛かってるものが・・。なんか、腑に落ちないな・・。それが、何かはハッキリと分かりませんが自分の中で釈然としないものが渦巻いています。なんだろ・・。なんか・・とてつもない言いがかりをつけられている気がする。ふと見てみた携帯電話のスケジュール表。そこに書いてあったあまりの事実に僕はがっくりと膝を落としてしまうのです。9月16日火曜日のスケジュール。休刊日。朝刊届かなくて当たり前ですよ!!ぼ、僕の小銭返せ~!!気づかない自分も自分ですけど。。
Oct 1, 2003
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